画像記録装置及びその制御方法
【課題】ノズル列のつなぎ位置において記録素子のピッチが不適正にならないように各ノズル列の位置を正確に位置決めすることを不要としつつマルチパス記録における高解像度化を実現し、画質劣化を減少させる技術を提供する。
【解決手段】記録ユニット17は、主走査方向に配列されたノズル列18を有する短尺記録ヘッド28のノズルを一部重複して複数を配置し、記録媒体8に記録を行う。搬送機構4は、記録媒体8を、短尺記録ヘッド28と対向する位置に複数回の搬送を行う。記録ユニット移動制御部24は、搬送機構4が記録媒体8を記録ユニット17まで搬送させている間に、吐出ノズル列方向に記録ユニット17を移動させる。記録データ制御部23は、記録媒体8の伸縮に応じて、つなぎ部の吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する。ノズル列記録制御部22は、決定した補正値と上位装置から通知されるジョブ情報とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御する。
【解決手段】記録ユニット17は、主走査方向に配列されたノズル列18を有する短尺記録ヘッド28のノズルを一部重複して複数を配置し、記録媒体8に記録を行う。搬送機構4は、記録媒体8を、短尺記録ヘッド28と対向する位置に複数回の搬送を行う。記録ユニット移動制御部24は、搬送機構4が記録媒体8を記録ユニット17まで搬送させている間に、吐出ノズル列方向に記録ユニット17を移動させる。記録データ制御部23は、記録媒体8の伸縮に応じて、つなぎ部の吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する。ノズル列記録制御部22は、決定した補正値と上位装置から通知されるジョブ情報とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録技術に関し、特に、短尺記録ヘッドを複数個配置して1つの長尺記録ヘッドを形成した画像記録装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙等の記録媒体に対して記録データの記録を行う画像記録装置としては、例えば、インクジェット方式のフルライン型画像記録装置が広く知られている。
フルライン型画像記録装置では、インクの液滴を吐出する複数のノズルからなるノズル列(記録ヘッド)が、インク色ごとに配設されている。ノズル列は、記録媒体が搬送される搬送方向(副走査方向)に対して直交する主走査方向に、記録媒体の幅以上の長さに亘って形成される。インク色ごとのノズル列は、副走査方向に関して所定の間隔に離間し、且つ記録媒体に対してノズル列が対向するように配設されている。
【0003】
このようなノズル列を有する画像記録装置では、記録媒体とノズル列を有するラインヘッドとをノズル配列方向と略直交する方向に相対移動させることにより、すなわち、副走査方向に相対移動させることにより、記録媒体の前面に記録処理を行うことができる。したがって、このような画像記録装置では、迅速に且つキャリッジの移動や記録媒体の間欠的な搬送等を行わない簡易な動作で、記録処理を行うことができる。一方、ラインヘッドには、短尺な記録ヘッドに比べ、コストが高い、歩留まりが悪い、信頼性が低い等の課題があることが知られている。
【0004】
これらの課題を解決するために、一方向に配列された短尺ノズル列をノズル配列方向に複数配列して吐出ノズルを形成するラインヘッドを備える画像記録装置がある。このようなラインヘッドは、コスト、歩留まり、信頼性等の短尺ノズル列の利点を活かしつつ、ラインヘッドの利点をも併せ持っている。
【0005】
しかし、このようなラインヘッドを有する画像記録装置では、上述した短尺ノズル列によるラインヘッドを備えることにより、短尺ノズル列のつなぎ部にスジ状の濃度ムラや白抜き等が発生し易いという問題が生じている。そこで、短尺ノズル列のつなぎ部に発生するスジ状の濃度ムラや白抜き等を減少させる種々の技術が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、隣接する2個の短尺ヘッドを一部重複するように位置させる技術が提供されている。これによれば、つなぎ位置においては短尺ヘッドに並べられた記録素子のピッチが不適正にならないようにそれぞれの短尺ノズル列の位置を正確に位置決めする必要がない。これにより、色や濃度にムラ等のない高画質な画像を記録することができる。
【0007】
特許文献1等において開示されている画像記録装置によれば、記録媒体の幅方向の画像解像度が記録ヘッドのノズルピッチに依存するため、高解像度化がしにくい。また、インク吐出口(ノズル)からのインク吐出体積(吐出量)や吐出方向は、個々のインク吐出口によりばらつきがある。このため、記録ドットの大きさやドットの位置にばらつきが生じ、画質の劣化が生じるという問題が生じている。そこで、記録ドットの大きさや位置のばらつきを減少させる種々の技術が提供されている。
【0008】
例えば、特許文献2には、インクヘッドを移動させながら所望の解像度に対応する位置でインクヘッドの各吐出ノズルからインクを吐出させて記録媒体に画像を形成する技術が提供されている。これによれば、所望の解像度に対応した画像形成を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−144542号公報
【特許文献2】特開2003−62989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されている技術によれば、つなぎ位置における色や濃度のムラ等を解消しているものの、ノズルピッチ以上の高解像度を実現することができない。また、個々のインク吐出口による記録ドットの大きさやドット位置のばらつきによる画質の劣化に関しては、記載されていない。
【0011】
特許文献2に記載されている技術によれば、一方向に配列された短尺ノズル列をノズル配列方向に複数配列させて吐出ノズルを形成しているラインヘッドのつなぎ位置における画質の劣化については記載されていない。
【0012】
本発明は、前述した課題に鑑みて、隣り合わせるノズル列のつなぎ位置において記録素子のピッチが不適正にならないように各ノズル列の位置を正確に位置決めすることを不要としつつ、マルチパス記録における高解像度化を実現し、画質の劣化を減少させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る装置は、記録媒体の搬送方向に対して略直交する一の方向に配列された吐出ノズルの列を有する短尺記録ヘッドのノズルを一部重複して複数を配置し、該記録媒体に記録を行う記録部と、前記記録媒体を、前記短尺記録ヘッドと対向する位置に複数回の搬送を行う搬送部と、前記搬送部が前記記録媒体を前記記録部まで搬送させている間に、前記吐出ノズルの列方向に前記記録部を移動させる移動制御部と、前記記録媒体の伸縮に応じて、前記短尺記録ヘッドの重複するつなぎ部の前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する記録データ制御部と、上位装置から通知されるジョブ情報と前記記録データ制御部において決定した補正値とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御するノズル列記録制御部と、を備える。
【0014】
本発明の一態様に係る方法は、記録媒体の搬送方向に対して略直交する方向に配列された吐出ノズルの列を有する短尺記録ヘッドのノズルを、一部重複して複数を配置し、該記録媒体に記録を行う記録部を備える画像記録装置の制御方法であって、前記記録媒体を、前記短尺記録ヘッドと対向する位置に複数回の搬送を行い、前記記録媒体を前記記録部まで搬送させている間に、前記吐出ノズルの列方向に前記記録部を移動させ、前記記録媒体の伸縮に応じて、前記短尺記録ヘッドの重複するつなぎ部の前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定し、上位装置から通知されるジョブ情報と前記補正値とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、隣り合わせるノズル列のつなぎ位置において記録素子のピッチが不適正にならないように各ノズル列の位置を正確に位置決めすることを不要としつつ、マルチパス記録における高解像度化を実現し、画質の劣化を減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る画像記録装置の構成を概念的に示したブロック図である。
【図2】実施形態に係る画像記録装置の各構成要素の配置図である。
【図3】画像記録部の記録ユニットの構成例を示す図である。
【図4】記録ユニットの主走査方向の移動について説明する図である。
【図5】マルチパス記録方法を説明する図である。
【図6】マルチパス記録のヘッドつなぎ部での着弾位置と記録媒体の伸張による画質劣化及び画質劣化を防止する補正の一例を示す図である。
【図7】マルチパス記録のヘッドつなぎ部での着弾位置と記録媒体の伸張による画質劣化及び画質劣化を防止する補正の他の例を示す図である。
【図8】実施形態に係る画像記録装置による画像記録を実行するために制御部が行う制御処理を示したフローチャートである。
【図9】つなぎ位置のノズル列重複部補正値を格納するテーブルの構成例を示す図である。
【図10】実施形態に係る画像記録装置による画像記録を実行するために制御部が行う他の制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、記録媒体の搬送方向と直交する方向を「X方向」または「主走査方向」、記録媒体の搬送方向を「Y方向」または「副走査方向」と称し、X方向及びY方向のどちらにも直交する方向を「Z方向」と称することとする。
【0018】
図1は、本実施形態に係る画像記録装置の構成を概念的に示したブロック図であり、図2は、本実施形態に係る画像記録装置1の各構成要素の配置図である。まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る画像記録装置1の構成について説明する。
【0019】
図1に示すとおり、本実施形態に係る画像記録装置1は、給送部2、記録媒体検出部3、搬送機構4、回収部5、画像記録部6、制御部7及び図1においては不図示のクリーニング部を有する。画像記録装置1は、ネットワークを介して接続されている上位装置20からの画像記録の開始の指示にしたがって、記録媒体8に記録処理を行う。
【0020】
給送部2は、記録媒体8を給送して搬送する。記録媒体検出部3は、記録媒体8の例えば先端等の端部を検出する。搬送機構4は、給送部2から受け渡された記録媒体8を画像記録部6(の短尺記録ヘッド28)と対向する位置に複数回の搬送を行う。画像記録部6は、記録媒体8が搬送経路を搬送される過程において、画像を記録する記録処理を行う。回収部5は、画像記録された記録媒体8を画像記録装置1の外へ排出し、収納する。図1においては不図示のクリーニング部は、安定した画像記録を行うため、画像記録部6のクリーニングを行う。制御部7は、画像記録装置1の全体の制御を行う。
【0021】
画像記録装置1の各構成要素について更に詳しく説明する。
給送部2は、給送トレイ9と給送駆動部10とを有する。給送トレイ9は、記録媒体8を収容し、給送カセット等で構成される。給送駆動部10は、給送トレイ9に収容された最上面の記録媒体8に当接して1枚ずつ記録媒体8を取り出し、搬送機構4に受け渡しを行う。給送駆動部10は、例えば、給送ローラで構成される。
【0022】
搬送機構4は、ドラム11、記録媒体検出部3、剥離部12、搬送情報生成部13、不図示の帯電ローラ及び除電器を有する。帯電ローラは、記録媒体8をドラム11の表面に案内するとともに、記録媒体8に電荷を与えることで記録媒体8をドラム11の表面に吸着させる。ドラム11は、印字時に記録媒体8を巻き付けて搬送するために用いる。図2においては矢印Aで示す方向に一定速度で回転可能な搬送駆動部14のモータにより駆動される。
【0023】
搬送情報生成部13は、ドラム11の相対的回転角を検出する。搬送情報生成部13は、例えばロータリエンコーダを備えて構成され、記録媒体8の搬送情報としてのパルス信号をドラム11が所定量回動するごとに生成し、制御部7へ出力する。したがって、搬送情報生成部13が出力するパルス信号は、記録媒体8の搬送距離を示す。
【0024】
ドラム11は、中空アルミ円筒と両側面のフランジとからなり、円筒表面は、絶縁コート処理されている。また、ドラム11は、スラスト方向のガタが発生しないように構成されている。
【0025】
記録媒体8は、搬送機構4によって画像記録部6と対向する位置にまで搬送された後、除電器に対向する位置まで搬送される。除電器は、記録媒体8に帯電した電荷を除去することで、ドラム11に吸着されている記録媒体8の吸着力をなくすはたらきをする。剥離部12の先端は、図2に示すように、ドラム11の表面に、記録媒体8の厚みに最小限の余裕を持たせた僅かな間隙を有するように設けられている。剥離部12は、除電器により吸着力がなくなりドラム11から僅かに浮き上がった記録媒体8をドラム11から剥離するとともに、回収部5へ記録媒体8を案内する。
【0026】
記録媒体検出部3は、記録媒体8の搬送経路上において、給送部2よりも下流であって、画像記録部6よりも上流に設けられ、記録媒体8の端部の位置検出を行う。記録媒体検出部3は、例えば、光学式の反射型センサ、または静電容量型センサ等の中からいずれかをその一部に備えて構成される。記録媒体検出部3は、検出した記録媒体8の端部に係わる検出情報を制御部7に通知する。
【0027】
回収部5は、収納トレイ15と、排出駆動部16とを有する。収納トレイ15は、排出された記録媒体8を収納する。排出駆動部16は、搬送機構4が搬送してくる記録媒体8を画像記録装置1外に排出するものであり、例えば、排出ローラ対で構成される。
【0028】
画像記録部6は、少なくとも1つ以上の記録ユニット17−1〜17−nを備える。実施例では、n個の記録ユニット17を備える。記録ユニット17−1〜17−nは、ノズル列18−1〜18−mと、ノズル列駆動部19−1〜19−mとを備える(但し、n、mは2以上の整数)。nとmの関係については、図3を参照して説明する。
【0029】
短尺記録ヘッド28のノズル列18−1〜18−mには、インクを吐出する複数のノズルが、主走査方向(X方向)に沿って一部を重複させて直線状に配置される。ノズル列18−1〜18−mは、画像記録装置1の設計に基づき、記録媒体8の最大幅を超える長さに亘って主走査方向に配設される。ノズル列18−1〜18−mは、それぞれノズル列駆動部19−1〜19−mからの駆動信号にしたがって、複数のノズルからインク滴を吐出し、記録媒体8に記録処理を行う。
【0030】
ノズル列駆動部19−1〜19−mは、制御部7から記録データ情報に基づいて送られてくる制御信号にしたがって、各ノズルを駆動する駆動信号を、ノズル列18−1〜18−mにそれぞれ出力する。
【0031】
制御部7は、図1においては不図示の処理回路と、記録データ制御部23、ノズル列記録制御部22、記録ユニット移動制御部24及び記憶部21を有する。不図示の処理回路は、演算処理装置における例えばMPU(Microprocessor Unit)を含み、制御機能及び演算機能を有する。
【0032】
記憶部21は、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、MPUのワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)と、不揮発メモリとを有する。記憶部21は、画像記録装置1の制御プログラムを記憶するとともに、画像記録装置1の制御に関する設定値や画像記録情報等の必要なデータを記憶する。制御部7のMPUは、記憶部21から制御プログラムを読み出して実行することにより、画像記録装置1の各構成要素の制御を行い、ノズル列記録制御部22等の機能が実現される。
【0033】
記録ユニット移動制御部24は、マルチパス記録を行うときに、パス記録の間に記録ユニット17を主走査方向(X方向)に移動制御する。記録ユニット17の移動量は、画像の解像度に応じて設定する。
【0034】
記録データ制御部23は、上位装置20から受信した画像データを、ジョブ情報と予め記憶部21に記憶されているジョブ情報に対応した設定値とに基づいて、記録処理が可能な記録データへと変換する処理を行って、記録データを画像記録部6へ転送する。記録データ制御部23における画像データ変換処理は、ノズル列18ごとのデータ配分やデータの位置あわせ、並びに記録濃度変換等の公知の処理を含む。また、本実施形態に係る画像記録装置1の記録データ制御部23は、記録媒体8の伸張に応じて、記録ユニット17の短尺記録ヘッド28のノズルが重複するつなぎ部において各ノズルから吐出させるインクの打ち込み量(記録ドロップ数)の補正値を決定する。補正値の決定方法については、後述する。
【0035】
ノズル列記録制御部22は、記憶部21から読み出した設定値に基づき、ノズル列18−1〜18−mの制御を行う。具体的には、ノズル列記録制御部22は、上位装置20から通知されるジョブ情報に基づいて、インクの吐出タイミングを制御し、記録媒体8に記録処理を行うときの副走査方向(Y方向)の記録位置を決定する制御を行う。また、ノズル列記録制御部22は、上位装置20から通知されたジョブ情報と記録データ制御部23から通知される各ノズルから吐出させるインクの打ち込み量(記録ドロップ数)とに基づき、ノズル列18−1〜18−mの各ノズルからのインクの吐出を制御する。
【0036】
ここで、上位装置20は、例えばコンピュータであり、本実施形態に係る画像記録装置1に記録処理を行わせる。上位装置20は、本実施形態に係る画像記録装置1の外部機器として、例えばLAN(Local Area Network)等のネットワークを介して画像記録装置1と接続されている。
【0037】
上位装置20は、画像記録装置1に対し、記録処理に関する情報として、ジョブ情報を通知する。ジョブ情報は、記録媒体8に対して記録処理を行う際の画像記録情報を含む。画像記録情報は、記録媒体8のサイズ(用紙サイズ)及び種類、記録速度、マルチパス記録回数、記録画像サイズ情報、解像度、濃度、色情報、上位装置20のメモリに保持した画像データのアドレス情報等を含む。
【0038】
また、上位装置20は、R(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)からなる多階調画像データを、画像記録装置1において出力可能なC、M及びY並びにKからなる階調値へと変換する擬似階調変換処理等の画像データ処理を行う。上位装置20は、このような処理を施した画像データを、画像記録装置1へ転送する。
【0039】
画像記録装置1の制御部7は、上位装置20からジョブ情報を通知されると、受け取ったジョブ情報を記憶部21に記憶させる。
次に、上記の構成の画像記録装置1による記録処理動作について説明する。
【0040】
図2においては不図示の制御部7は、記録処理開始の指示を上位装置20から受け取ると、搬送機構4の搬送駆動部14を制御して、ドラム11の回転を開始させる。続いて、制御部7は、給送部2の給送駆動部10を制御して、給送トレイ9に積載された記録媒体8を1枚ずつピックアップさせて搬送機構4へと受け渡し、搬送させる。
【0041】
搬送機構4へ受け渡された記録媒体8は、帯電ローラによって帯電されドラム11に吸着されることで、ドラム11の回転に伴って搬送される。記録媒体検出部3は、搬送経路上を搬送されてきた記録媒体8の先端を検出し、検出情報を制御部7に通知する。具体的には、記録媒体検出部3は、先端を検出したことを示す先端エッジ信号を制御部7へ出力する。制御部7は、受信した先端エッジ信号を、記録処理タイミングを生成するためのトリガ信号として利用する。
【0042】
制御部7は、画像記録部6のノズル列18−1〜18−mにインク吐出を開始させるためのタイミングの情報を、予め記憶部21に記憶している。このタイミングの情報とは、搬送情報生成部13が生成する搬送情報であるパルス信号の数値であり、パルス信号の数値は、記録媒体検出部3からノズル列18−1〜18−mの距離に対応する。
【0043】
制御部7は、上記の記録媒体8の先端エッジ信号を記録媒体検出部3から受信すると、受信した信号についてのパルス信号を計数する。制御部7のノズル列記録制御部22は、計数したパルス信号の数値と、記憶部21に記憶しているパルス信号の数値との一致を検出する。そして、ノズル列記録制御部22は、一致を検出したタイミングで、画像記録部6のノズル列駆動部19−1〜19−mを制御して、ノズル列18−1〜18−mからインクを吐出させてドラム11に吸着されている記録媒体8への記録処理を行わせる。
【0044】
この後、上位装置20から通知されたジョブ情報に含まれるマルチパス記録回数Nに応じて、ドラム11をN回転させ、N回のマルチパス記録を行う。
記録処理がなされた後、記録媒体8は、搬送機構4の除電器と対向する位置まで搬送される。除電器は、記録媒体8に帯電した電荷を除去することにより、ドラム11に吸着された状態にある記録媒体8の吸着力をなくすはたらきをする。上述したとおり、搬送機構4の剥離部12は、先端部がドラム11の表面に、記録媒体8の厚みに最小限の余裕を持たせた僅かな間隙を有して配置されている。剥離部12は、吸着力がなくなりドラム11から僅かに浮き上がった記録媒体8をドラム11から剥離するとともに、記録媒体8を回収部5へと案内する。搬送機構4の下流側に設けられた回収部5へと受け渡された記録媒体8は、回収部5の排出駆動部16に挟持されて搬送経路の更に下流へと搬送され、収納トレイ15に収納される。
【0045】
ドラム11への記録媒体8の吸着手段としては、上記に示す例の他に、ドラム11の円周に多数の貫通穴を設けることとしてもよい。この場合、ドラム11内を負圧にすることで、記録媒体8をドラム11の円周面に吸着させる。
【0046】
本実施形態に係る画像記録装置1のうち、画像記録部6の記録ユニット17の構成及びその動作について、図3を参照して更に詳しく説明する。
図3は、画像記録部6の記録ユニット17の構成例を示す図である。図3においては、例えば1色のインクに対応する記録ユニット17−1、17−2の主走査方向の端部を一部重複させて、副走査方向に沿ってそれぞれ離間させて配設させることでラインヘッドを構成している。記録ユニット17−1及び記録ユニット17−2は、それぞれ主走査方向に関して独立して移動可能に設置される。但し、本実施形態に係る画像記録装置1においては、記録ユニット17は、K、C、M及びYの色ごとに一体となって主走査方向に関して移動して、記録媒体8への記録を行う。詳しくは図6等を参照して説明する。
【0047】
記録ユニット17−1〜17−nは、複数のノズル列18−1〜18−mを例えば図2に示すように、ドラム11の円周に沿って配置する。図2においては、4色のインクに対応する態様として、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)及びY(イエロー)の色ごとに記録ユニット17−1〜17−nを2つずつ配設した場合を示す。nは、画像記録部6に設ける記録ユニット17の総数を表し、図2に示す実施例では、n=8である。mは、インク色には係わりなく、画像記録部6に設けるノズル列18の総数を表し、図3に示す実施例では、1色あたり6個のノズル列18を配置しており、m=6(個/1色)×4(色)=24(個)である。
【0048】
各色の記録ユニット17−1〜17−8は、副走査方向に沿って互いに離間して配設されている。記録ユニット17−1〜17−8は、搬送経路上の設置位置に対応するタイミングでノズル列18−1〜18−24をそれぞれ駆動させることで、記録媒体8への記録処理を行う。ノズル列18−1〜18−24の駆動タイミングは、記録媒体検出部3で記録媒体8を検出してからノズル列18−1〜18〜24のそれぞれまでの距離は、搬送情報生成部13により搬送情報として生成されるパルス信号をカウントすることにより得られる。搬送情報生成部13において生成するパルス信号を、例えば600dpi(≒42μm)等の間隔で発生させることで、記録するドットの配置間隔を決定する。
【0049】
ノズル列駆動部19−1〜19−24は、上位装置20から受信した画像記録情報に基づいて、ノズル列18−1〜18−24のノズルの中からインクを吐出させるノズルを選択する。ノズル列駆動部19−1〜19−24は、制御部7のノズル列記録制御部22が生成するインク吐出タイミング制御信号により決定されるタイミングで選択したノズルを駆動し、インク吐出を行わせる。
【0050】
なお、上記の記録ユニットの説明においては、主走査方向に離間させてノズル列を配置される記録ユニットのそれぞれについては「記録ユニット17−1」「記録ユニット17−n」等と表記している。一方、ある色についての記録ユニット、すなわち、図3の例では記録ユニット17−1と記録ユニット17−2から構成され、一体となって主走査方向に移動する一単位の記録ユニットについては「記録ユニット17」と表記している。以下の説明においても、同様の方法で表記することとする。
【0051】
次に、図4や図5を参照して、マルチパス記録について説明する。
図4は、記録ユニット17の主走査方向の移動について説明する図である。主走査方向であるX方向、及び副走査方向であるY方向と直交するZ方向を図示している。図4においては、紙面手前方向が記録媒体8の搬送経路の上流方向であり、ドラム11は回転軸Rを中心として、B方向に回転する。
【0052】
記録ユニット17の記録媒体8を介してドラム11と対向する位置には、各々がノズル列18を備える複数の短尺記録ヘッド28が、記録媒体8の幅方向(主走査方向)に亘り配置されている。記録媒体8は、ドラム11に吸着されて記録ユニット17に対向して搬送される。
【0053】
なお、図4においては、説明の簡略化のため、1つの記録ユニット17及び1つの記録ユニット移動機構27の組のみを示しているが、他の記録ユニット17及び記録ユニット移動機構27の組も同様に、ドラム11の周方向に並列に配置されている。
【0054】
記録ユニット17の各々には記録ユニット移動機構27が設けられ、記録ユニット17の各々は、互いに独立に主走査方向における変位が制御される。記録ユニット移動機構27は、記録ユニットホルダ25及びリニアモータ26を備える。
【0055】
記録ユニットホルダ25は、図4においては不図示の装置筐体に対して主走査方向(図4においてはC方向)に移動自在に設けられ、記録ユニット17を支持する。
リニアモータ26は、記録ユニットホルダ25の一端が接続されている。リニアモータ26が主走査方向の直線的な駆動動作を行うことで、記録ユニットホルダ25に支持された記録ユニット17の、主走査方向の任意の位置への水平移動(図4においてはC方向の移動)や、その位置決めがなされる。リニアモータ26による記録ユニット17の主走査方向における移動方向及び移動量については、制御部7の記録ユニット移動制御部24により制御される。
【0056】
本実施形態に係る画像記録装置1は、記録ユニット移動制御部24の制御により記録ユニット17を主走査方向に移動させ、マルチパス記録を行う。次に、マルチパス記録について説明する。
【0057】
図5は、マルチパス記録方法を説明する図である。説明の簡単のため、ここでは、マルチパス記録回数N=2の場合を例に説明する。
図5(a)は、1パス目の記録を示す図である。ドラム11に吸着された記録媒体8が、ドラム11の回転に伴って、記録ユニット17に対向する位置まで搬送されてくる。まず、ドラム11の1回転目には、記録媒体8に対して1パス目の記録を行う。1パス目の記録においては、ノズル間隔dに等しい間隔で主走査方向にインク滴によるドットが記録される。
【0058】
図5においてはある記録ユニット17のみを示すが、図2等に示すとおり、C、M及びY並びにKの4色それぞれについて記録ユニット17が設けられている。各記録ユニット17において各色の記録が行われると、記録媒体8は、ドラム11に吸着されたまま、もう1回転する。そして、記録媒体8は、再度、図5の記録ユニット17と対向する位置まで搬送される。
【0059】
記録媒体8への1パス目の記録終了後、再び記録媒体8が図5の記録ユニット17に対向する位置にまで搬送されるまでの間に、図1の記録ユニット移動制御部24は、記録ユニット17を主走査方向に関してノズル間隔dの半分となるd/2相当の距離分移動させる。続いて、記録媒体8に2パス目の記録が行われる。
【0060】
図5(b)は、2パス目の記録を示す図である。上記のとおり、記録ユニット17は1パス目の記録のときと比較して、主走査方向にd/2相当の距離だけ移動しているので、2パス目の記録は、1パス目で記録されたドット間になされる。このようにして、ノズル間隔dの2倍の解像度の補間印字を行うことが可能となる。例えば、ノズル間隔dが300dpi(≒85μm)相当とすると、記録画像は、N=2のマルチパス記録により、主走査方向に関して600dpi(≒42μm)で記録することが可能となる。
【0061】
同様に、1回あたりの主走査方向に関する記録ユニット17の移動量をd/N(ノズル間隔dに対してN分の1)、記録媒体1枚あたりの印字回数をN(Nは2以上の任意の整数)とすることで、ノズル間隔dのN倍の解像度の補間印字を行うことができる。
【0062】
記録媒体8に記録を行う際に記録媒体8の表面に着弾したインクは、記録媒体8の内部に浸透し、定着する。このとき、インクに含まれる水分が記録媒体8に吸収されることによって、記録媒体8が膨張(伸張)する。特に、本実施形態に係る画像記録装置1のように、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置では、記録媒体8の幅方向(主走査方向、X方向)に亘って1回の走査(パス)で記録を行うため、記録媒体8に対するインクの打ち込み量が多く、急激な記録媒体8の膨張(伸張)が起こり易い。ラインヘッド方式のインクジェット記録装置でマルチパス記録を行う場合は、所定のパスでの記録において、記録媒体8が膨張(伸張)し、パス間のインク着弾位置が乱れることによって画質劣化を生じることがある。本実施形態に係る画像記録装置1は、隣り合わせる短尺記録ヘッド28のノズル列が重複する箇所において、記録素子のピッチが不適正にならないよう、以下に説明するような補正値を求め、求めた補正値に基づき記録処理を行う。
【0063】
図6は、マルチパス記録のヘッドつなぎ部での着弾位置と記録媒体8の伸張による画質劣化及び画質劣化を防止する補正の一例を示す図である。このうち、図6(a)〜図6(d)は、図3の記録ユニット17の一部を拡大した概念図であり、マルチパス記録における各パスでのヘッドの位置を示す図である。図6(e)〜図6(g)は、マルチパス記録により記録されるドットの位置を示す図である。図6を参照して、本実施形態に係る画像記録装置1が、短尺記録ヘッド28のつなぎ部におけるマルチパス記録の補正を行う方法について説明する。
【0064】
図6(a)は、マルチパス記録の1パス目のヘッド位置を示す。ノズルピッチはpとする。図6(a)〜図6(d)においては、ヘッドAの使用ノズルを斜線で、ヘッドBの使用ノズルを横線で示し、未使用のノズルについては白抜きで示している。
【0065】
本来は、左側のヘッドAのノズル及び右側のヘッドBのノズルの位置関係は、記録媒体8の搬送方向(副走査方向)に平行方向に関しては、同一線上に配置されるのが理想である。しかし、両ノズルの位置関係を精確に調整するのは困難であるため、実施例では、図6(a)等に示すように、ヘッドAとヘッドBとの隣接するノズルのピッチ間隔をδとして許容する。
【0066】
マルチパス記録回数をN回とすると、ヘッドAのノズルの位置とヘッドBのノズルの位置との間隔は、(1/N)×p+δである。図6においては、マルチパス回数N=4の場合を示す。この場合は、図中左側のヘッドAのノズル位置と右側のヘッドBのノズル位置とのノズル間隔は、(1/4)×p+δである。
【0067】
図6(b)は、マルチパス記録の2パス目のヘッド位置を示す。ヘッドA及びヘッドBのつなぎ部を含む記録ユニット17の全体が、図6(a)の1パス目の位置に対して(1/4)×pだけ主走査方向に移動している。なお、つなぎ部とは、短尺記録ヘッド28間でノズルが重複している部分をいい、以下の説明においては、つなぎ位置とは、マルチパス記録により記録される主走査方向に並ぶドットのうち、つなぎ部の一のヘッドによるドットから次のヘッドによるドットへと切り替わる位置をいう。
【0068】
図6(c)及び図6(d)についても同様に、ヘッドAとヘッドBのつなぎ部を含む記録ユニット17の全体が、それぞれ図6(b)及び図6(c)の位置に対して(1/4)×pずつ主走査方向に移動している。
【0069】
図6(e)は、記録媒体8に伸張がない場合のインクの着弾位置を説明する図である。図6(e)においては、記録媒体8とヘッドとを4回相対走査して、4パスによるマルチパス記録で記録処理を行う場合の、あるラインのインクの着弾位置を丸印で示す。丸印中の数字は、インク滴がマルチパス記録の何パス目に記録されたものであるかを示す。ヘッドAから吐出されたインク滴は斜線で、ヘッドBから吐出されたインク滴は横線で示している。なお、図6(e)においては、記録媒体8の幅方向(主走査方向)の中心は、図示するドットに対して右方にあるものとする。図6(f)及び図6(g)についても同様とする。
【0070】
上記のとおり、ここでは、ノズル間隔pに対し、パス間で(1/4)×pずつ主走査方向に記録ユニット17を移動させて記録を行っていることにより、ドット間隔は(1/4)×pである。
【0071】
ここで、例えば図3の記録ユニット17には、6つの短尺記録ヘッド28が含まれ、つなぎ部は、5箇所存在する。このうち、図6(e)に示すヘッドAとヘッドBのつなぎ部については、左側のヘッドAにより1パス目で記録されたドットD1までを記録し、その右側のドットD2は、右側のヘッドBの4パス目で記録されたドットとなっている。ドットD1−D2の間隔は上記δであり、δは、以下の式(1)を満たす。
δ<(1/4)×p (1)
【0072】
なお、つなぎ部において各ドットをいずれのヘッドに割り当てるかについては、つなぎ位置Jにおいて記録素子のピッチが不適正なものとならないように、上記のような組み合わせとする場合がある。なお、このような組み合わせは、各短尺記録ヘッド28のノズル列18の位置を正確に位置決めしない場合に設定可能である。
【0073】
図6(e)に示す例では、つなぎ位置Jのドットを小さく変更することにより、つなぎ位置Jの濃度を均一にしている。これは、式(1)に示すとおり、つなぎ位置Jに関して左右のドットの間隔δが、あるパスのドットと次のパスのドットとの間隔(1/4)×pよりも小さいことに基づく。このようなつなぎ位置Jのドットの濃度を調整するために、実施例では、記録ドットを階調出力できる記録ヘッド、例えば、マルチドロップタイプのインクジェット記録ヘッドを用いて、ノズル列が重複する部(ノズル列重複部)の補正を行う。これにより、巨視的な画像濃度を均一にすることができる。
【0074】
図6(f)は、記録媒体8が左側に伸張した場合のインクの着弾位置を説明する図である。図6(f)においては、インクに含まれる水分が記録媒体8に吸収されることによって、つなぎ位置Jに白スジが発生した様子を示す。
【0075】
記録媒体8の伸張の大きさは、記録時のインクの打ち込み量と記録媒体8の性質に依存することが、実験結果から判明している。特に、記録媒体8の種類によっては、例えばコピー用紙等の普通紙では、インク滴による伸張が起きやすい。一方で、例えばフィルムや特殊なコーティングを施した用紙では、殆ど膨張(伸張)は起きない傾向にある。インクの打ち込み量との記録媒体8の伸張の大きさとの関係については、実験によれば、インクの打ち込み量が6.7nl/mm2の場合、ある普通紙では約0.03%、幅297mmのA4サイズの用紙では、90μmの膨張(伸張)が発生した。また、実験によれば、記録媒体8の伸張は、記録媒体8の幅方向の中心から両端に向かう方向で発生する。
【0076】
記録媒体8の伸張の発生に対して特段の補正を行わない場合には、図6(f)に示すように、マルチパス記録により記録媒体8とヘッドとを相対走査する都度、記録媒体8の伸張が発生し、インク着弾位置にずれが生じる。最終パスである4パス目で記録されるドットの位置を基準とすると、1パス目で記録されるドットが最もずれが大きく、図6(e)の位置と比べて、図中左側にd1移動している。2パス目及び3パス目で記録されるドットのずれを、それぞれd2及びd3とする。ずれ量の大小関係は、以下の式(2)を満たす。
d1>d2>d3 (2)
これは、ずれ量は、先に着弾したインク滴の方が、最後の4パス目のインク滴の着弾までの時間が長くなるため、伸張量も大きくなることによる。ここでは、4パス目で記録されるドットの位置を基準としているため、「4パス目で記録されるドットのずれ量=0」としている。
【0077】
図6(e)の場合と同様に、図6(f)では、ヘッドAとヘッドBのつなぎ位置においては、左側のヘッドAにより1パス目で記録されたドットD1までを記録し、その右側のドットD2は、右側のヘッドBの4パス目で記録を行っている。
【0078】
図6(e)の場合と同様の組み合わせでつなぎ位置Jの左右のドットD1、D2の記録を行う場合、ヘッドのつなぎ位置J以外のドットには、顕著なムラは発生しない。これは、上記のとおり、記録媒体8に着弾したドットは徐々に伸張しているためである。一方、ヘッドのつなぎ位置Jにおいては、以下の式(3)のとおり、つなぎ位置Jのドット間隔δ1は大きくなり、顕著な白スジが発生する。
δ1>δ (3)
【0079】
つなぎ位置Jに発生する白スジを解消するため、本実施形態に係る画像記録装置1では、図6(g)に示すような補正を行う。図6(g)では、ヘッドのつなぎ位置JのドットD2を、例えばマルチドロップタイプのドロップ数を増加させることにより、ドット径を大きく変更して、白スジの発生を防止している。
【0080】
上述のとおり、記録媒体8の伸張量は、インクと記録媒体8の組み合わせによる特性と、インクの打ち込み量とに依存している。このため、例えば、用紙とインクの組み合わせ特性と、インクの打ち込み量に応じてどの程度つなぎ部(図6(g)に示す例では、つなぎ位置Jの右側のドットD2)の補正を行うかを、画像記録装置1の工場出荷時等に予め調整し、記憶部21等にテーブルとして記憶しておく。このように調整値を記憶部21等にテーブルとして記憶しておくことで、インクの打ち込み量に応じて最適な補正を行うことができる。インクの打ち込み量の補正値は、記録データ制御部23が、画像データから求まる記録ドロップ数を利用して決定する。
【0081】
図7は、マルチパス記録のヘッドつなぎ部での着弾位置と記録媒体8の伸張による画質劣化及び画質劣化を防止する補正の他の例を示す図である。図6(e)〜図6(g)においては、記録媒体8の幅方向(主走査方向)の中心は、図示するドットに対して右方にあるのに対し、図7(a)〜図7(c)においては、記録媒体8の幅方向の中心は、図示するドットに対して左方にあるものとする。
【0082】
図7(a)は、記録媒体8に伸張がない場合のインクの着弾位置を説明する図である。図7(a)においては、図6(e)に示す場合と同様に、記録媒体8とヘッドとを4回相対走査して、4パスによるマルチパス記録で記録処理を行う場合の、あるラインのインクの着弾位置を丸印で示す。丸印中の数字は、インク滴がマルチパス記録の何パス目に記録されたものであるかを示す。ヘッドAから吐出されたインク滴は斜線で、ヘッドBから吐出されたインク滴は横線で示している。ノズル間隔pに対し、パス間で(1/4)×pずつ主走査方向に記録ユニット17を移動させて記録していくことで、ドット間隔は(1/4)×pとなっている。各パスにおける記録ユニット17のヘッド主走査方向に関する位置については、それぞれ図6(a)〜図6(d)の場合と同様とする。
【0083】
また、ここでは、図6の場合と同様にノズル列重複部の補正を行っており、これにより巨視的な画像濃度を均一にしている。
図7(b)は、記録媒体8の右端で記録媒体8が右側へと伸張した場合のインクの着弾位置を示す図である。記録媒体8の伸張が発生する理由については、上述のとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0084】
記録媒体8の伸張の発生に対して特段の補正を行わない場合には、図7(b)に示すように、マルチパス記録により記録媒体8とヘッドとを相対走査する都度、記録媒体8の伸張が発生し、インク着弾位置にずれが生じる。最終パスである4パス目で記録されるドットの位置を基準とすると、1パス目で記録されるドットが最もずれが大きく、図7(a)の位置と比べて、図中右側にd4移動している。2パス目及び3パス目で記録されるドットのずれを、それぞれd5及びd6とすると、ずれ量の大小関係は、以下の式(4)を満たす。
d4>d5>d6 (4)
ずれ量は、先に着弾したインク滴の方が、最後の4パス目のインク滴の着弾までの時間が長くなるため、伸張量も大きくなることによる。ここでは、4パス目で記録されるドットの位置を基準としているため、「4パス目で記録されるドットのずれ量=0」としている。
【0085】
図7(b)では、ヘッドAとヘッドBのつなぎ位置においては、左側のヘッドAにより1パス目で記録されたドットD3までを記録し、右側のドットD4については、右側のヘッドBの4パス目で記録を行っている。
【0086】
このような組み合わせでつなぎ位置J´の左右のドットD3、D4の記録を行う場合、ヘッドのつなぎ位置J´以外のドットには、顕著なムラは発生しない。記録媒体8に着弾したドットは、徐々に伸張しているためである。一方、ヘッドのつなぎ位置J´においては、式(5)に示すとおり、つなぎ位置J´のドット間隔δ2は大きくなり、顕著な黒スジが発生する。
δ2<δ (5)
【0087】
つなぎ位置J´に発生する黒スジを解消するため、本実施形態に係る画像記録装置1では、図7(c)に示すような補正を行う。図7(c)では、ヘッドのつなぎ位置J´のドットD4を、例えばマルチドロップタイプのドロップ数を減少させることにより、ドット径を小さく変更して、黒スジの発生を防止している。
【0088】
図6(g)のつなぎ位置Jにおける補正方法の説明において述べたとおり、記録媒体8の伸張量は、インクと記録媒体8の組み合わせによる特性と、インクの打ち込み量とに依存している。このことから、図7(c)に示す補正を行う場合についても同様に、つなぎ部(図7(c)に示す例では、つなぎ位置J´の右側のドットD4)についてどの程度の補正を行うかを、画像記録装置1の工場出荷時等に記録媒体ごとに予め調整し、記憶部21等にテーブルとして記憶しておく。このように調整値を記憶部21等にテーブルとして記憶しておくことで、インクの打ち込み量に応じて最適な補正を行うことができる。インクの打ち込み量の補正値は、記録データ制御部23が、画像データから求まる記録ドロップ数を利用して決定する。
【0089】
上記においては、マルチドロップタイプのインクジェット記録ヘッドを用いてドット径を変更する例を示したが、これには限定されない。これ以外にも、公知の技術を用いて巨視的にドット数を増減する方法によりつなぎ部の補正値を変更することも可能である。
【0090】
図6(g)及び図7(c)に示す方法でつなぎ位置のドットについて補正を行うことにより、記録媒体8が幅方向の中心に関して左右両方向に伸張することによってドットの着弾位置がずれて白スジや黒スジが発生することを防止し、画質劣化を減少させている。
【0091】
図8は、本実施形態に係る画像記録装置1による画像記録を実行するために制御部7が行う制御処理を示したフローチャートである。図1の制御部7のMPUが、図1においては不図示の不揮発メモリから所定の制御プログラムを読み出して実行すると、図8に示す一連の処理を開始する。
【0092】
まず、ステップS1において、制御部7が、上位装置20から受信した画像データから記録ドロップ数を算出し、インク打ち込み量を算出する。
ステップS2で、制御部7が、ステップS1において算出したインク打ち込み量から、各つなぎ位置のノズル列重複部の補正値を取得する。上記のとおり、補正値は、予め記録データ制御部23に不揮発記憶しておいた調整値を取り出すことにより得られる。記録データ制御部23に記憶するデータの構造については、詳しくは図9を参照して説明する。
【0093】
ステップS3で、制御部7は、同期信号に同期して画像記録を行う。同期信号は、搬送情報生成部13において生成する搬送情報に基づき生成されるパルス信号からなる。
ステップS4で、制御部7は、搬送方向に関して最下流に位置するノズル列18によるページ最終記録が終了したか否かの判定を行う。搬送方向に関して最下流のノズル列18において最終ページの記録処理が終了していない場合(ステップS4においてNoの場合)は、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。搬送方向に関して最下流のノズル列18において最終ページの記録処理が終了している場合(ステップS4においてYesの場合)は、処理を終了する。
【0094】
図9は、つなぎ位置のノズル列重複部補正値を格納するテーブルの構成例を示す図である。図9に示すとおり、画像データから求められる単位面積あたりのインク打ち込み量と、つなぎ位置ごとの補正値とが対応付けて格納されている。
【0095】
実施例では、用紙及びインクの種類ごとに図9に例示する補正テーブルを用意する。画像記録装置1は、図8のステップS2において、上位装置20から受信したジョブ情報の中から取得した記録媒体8の種類(用紙の種類)に対応するテーブルを参照する。そして、画像記録装置1は、テーブルの中から、つなぎ位置のそれぞれについて、インクの打ち込み量に対応する補正値を取得する。
【0096】
図3等に示すとおり、ある記録ユニット17には複数のつなぎ位置が存在し、つなぎ部の両ノズルのピッチ間隔のずれδの大きさは、それぞれ異なる。このため、補正値は、つなぎ位置ごとに最適な値を設定している。
【0097】
図9では、例えばつなぎ位置1−1の単位面積当たりのインク打ち込み量(ドロップ数)が「100」であれば、補正値は「0.52」である。この場合、つなぎ位置には、インク打ち込み量(ドロップ数)として「100×0.52」を設定して、ノズルからインクを吐出させて記録を行う。例えばインクの打ち込み量(ドロップ数)が「50以上100未満」の値をとる場合には、図9のテーブルに設定されているドロップ数のうち、近い方のドロップ数を採用して、対応するつなぎ位置補正値を求めることとしてもよい。
【0098】
図8に示す制御方法により記録処理を行う場合には、インクの打ち込み量の補正値は、画像データから求められるインクの打ち込み量に応じて決定される。すなわち、実際に行う記録に応じた補正値を決定することができる。また、記録媒体8の種類に応じた補正値を決定することで、記録媒体8の種類の性質に応じた補正が可能となる。
【0099】
図10は、本実施形態に係る画像記録装置1による画像記録を実行するために制御部7が行う他の制御処理を示したフローチャートである。
先述の図8に示す制御処理においては、まず画像データから記録ドロップ数を算出し、記録ドロップ数から求まるインクの打ち込み量と対応する補正値を、予め記憶させておいたテーブルから取得している。これに対し、図10に示す制御処理においては、記録媒体検出部3により記録媒体8の主走査方向の伸張量を検出し、検出した実際の記録媒体8の伸張量に基づいて、補正値を予め記憶させておいたテーブルから取得する。以下においては、図8に示す制御処理と比較して異なる点を中心に説明する。
【0100】
まず、ステップS11において、制御部7は、記録媒体検出部3が記録媒体8の両端を検出した結果を取得する。先述のとおり、記録媒体検出部3は、給送部2よりも下流であって、画像記録部6よりも上流に設けられ、記録媒体8が搬送されて記録媒体検出部3の検出領域を通過するごとに、記録媒体8の幅方向(主走査方向)の両端を検出し、制御部7に検出結果を通知する。
【0101】
ステップS12において、制御部7は、ステップS11で取得した記録媒体検出部3による検出結果から、記録媒体8の伸張量を算出する。そして、ステップS13で、制御部7は、ステップS12において算出した記録媒体8の伸張量に基づいて、ノズル列重複部補正値を取得すると、ステップS14に進む。ステップS14及びステップS15の処理については、図9のステップS3及びステップS4の処理とそれぞれ同様である。
【0102】
なお、ステップS13において取得するノズル列重複部補正値は、図9のステップS2の処理と同様に、予め記憶させておいたテーブルを利用する。すなわち、記録媒体8の種類ごとに、記録媒体8の伸張量と各つなぎ位置における補正値とを対応付けて格納する補正テーブルを、予め記録データ制御部23等に記憶させておく。そして、ステップS13においては、上位装置20から受信したジョブ情報から取得した記録媒体8の種類についての補正テーブルを参照し、ステップS12で求めた伸張量と対応する補正値をつなぎ位置のそれぞれについて取得する。取得した補正値より決定したインクの打ち込み量を用いてインクを吐出させ、記録処理を行う。
【0103】
図10に示す制御方法により記録を行う場合には、インクの打ち込み量の補正値は、記録媒体検出部3による記録媒体8の端部の検出結果により決定する。これにより、実際の記録媒体8の伸張量に応じた補正値を決定することができる。また、図8に示す制御方法により記録を行う場合と同様に、記録媒体8の種類に応じた補正値を決定することで、記録媒体8の性質に応じた補正が可能となる。更には、マルチパス記録処理において、記録媒体検出部3の検出領域を記録媒体8が通過するごとに記録媒体8の検出を行うことで、パスごとの記録媒体8の伸張量を求めることができ、より高精度の補正値を設定することが可能となる。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係る画像記録装置1によれば、ノズル列18を有する短尺記録ヘッド28の一部を重複させて複数配置する記録ユニット17を備える。短尺記録ヘッド28のつなぎ部については、記録媒体8の幅方向(主走査方向)の伸張に応じて、ノズルから吐出させるインクの量の補正値を求め、補正値に基づき記録処理を行う。これにより、記録ユニット17を主走査方向に移動させてマルチパス記録を行う場合に、記録媒体8がインクを吸収して幅方向(主走査方向)に伸張しても、インクの着弾位置がずれて記録素子のピッチが不適正になることを効果的に防止する。したがって、つなぎ位置に発生するスジ状の濃度ムラや白抜き等を防止し、画質劣化を低減させることが可能となる。
【0105】
なお、上記の実施形態においては、記録媒体8がインクを吸収することにより伸張した場合について説明しているが、これには限らない。例えば記録媒体8が幅方向に収縮する場合であっても同様に、記録媒体8の収縮量とこれに応じたインクの打ち込み量の補正値を対応付けて補正テーブルに格納しておく。補正テーブルの補正値を利用して記録を行うことで、記録媒体8が収縮することによる濃度ムラ等の発生による画質劣化を低減させることが可能となる。
【0106】
この他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の改良及び変更が可能である。例えば、上述の各実施形態に示された全体構成からいくつかの構成要素を削除してもよいし、更には、各実施形態の異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 画像記録装置
2 給送部
3 記録媒体検出部
4 搬送機構
5 回収部
6 画像記録部
7 制御部
8 記録媒体
9 給送トレイ
10 給送駆動部
11 ドラム
12 剥離部
13 搬送情報生成部
14 搬送駆動部
15 収納トレイ
16 排出駆動部
17、17−1〜17−n 記録ユニット
18、18−1〜18−m ノズル列
19、19−1〜19−m ノズル列駆動部
20 上位装置
21 記憶部
22 ノズル列記録制御部
23 記録データ制御部
24 記録ユニット移動制御部
25 記録ユニットホルダ
26 リニアモータ
27 記録ユニット移動機構
28 短尺記録ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録技術に関し、特に、短尺記録ヘッドを複数個配置して1つの長尺記録ヘッドを形成した画像記録装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙等の記録媒体に対して記録データの記録を行う画像記録装置としては、例えば、インクジェット方式のフルライン型画像記録装置が広く知られている。
フルライン型画像記録装置では、インクの液滴を吐出する複数のノズルからなるノズル列(記録ヘッド)が、インク色ごとに配設されている。ノズル列は、記録媒体が搬送される搬送方向(副走査方向)に対して直交する主走査方向に、記録媒体の幅以上の長さに亘って形成される。インク色ごとのノズル列は、副走査方向に関して所定の間隔に離間し、且つ記録媒体に対してノズル列が対向するように配設されている。
【0003】
このようなノズル列を有する画像記録装置では、記録媒体とノズル列を有するラインヘッドとをノズル配列方向と略直交する方向に相対移動させることにより、すなわち、副走査方向に相対移動させることにより、記録媒体の前面に記録処理を行うことができる。したがって、このような画像記録装置では、迅速に且つキャリッジの移動や記録媒体の間欠的な搬送等を行わない簡易な動作で、記録処理を行うことができる。一方、ラインヘッドには、短尺な記録ヘッドに比べ、コストが高い、歩留まりが悪い、信頼性が低い等の課題があることが知られている。
【0004】
これらの課題を解決するために、一方向に配列された短尺ノズル列をノズル配列方向に複数配列して吐出ノズルを形成するラインヘッドを備える画像記録装置がある。このようなラインヘッドは、コスト、歩留まり、信頼性等の短尺ノズル列の利点を活かしつつ、ラインヘッドの利点をも併せ持っている。
【0005】
しかし、このようなラインヘッドを有する画像記録装置では、上述した短尺ノズル列によるラインヘッドを備えることにより、短尺ノズル列のつなぎ部にスジ状の濃度ムラや白抜き等が発生し易いという問題が生じている。そこで、短尺ノズル列のつなぎ部に発生するスジ状の濃度ムラや白抜き等を減少させる種々の技術が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、隣接する2個の短尺ヘッドを一部重複するように位置させる技術が提供されている。これによれば、つなぎ位置においては短尺ヘッドに並べられた記録素子のピッチが不適正にならないようにそれぞれの短尺ノズル列の位置を正確に位置決めする必要がない。これにより、色や濃度にムラ等のない高画質な画像を記録することができる。
【0007】
特許文献1等において開示されている画像記録装置によれば、記録媒体の幅方向の画像解像度が記録ヘッドのノズルピッチに依存するため、高解像度化がしにくい。また、インク吐出口(ノズル)からのインク吐出体積(吐出量)や吐出方向は、個々のインク吐出口によりばらつきがある。このため、記録ドットの大きさやドットの位置にばらつきが生じ、画質の劣化が生じるという問題が生じている。そこで、記録ドットの大きさや位置のばらつきを減少させる種々の技術が提供されている。
【0008】
例えば、特許文献2には、インクヘッドを移動させながら所望の解像度に対応する位置でインクヘッドの各吐出ノズルからインクを吐出させて記録媒体に画像を形成する技術が提供されている。これによれば、所望の解像度に対応した画像形成を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−144542号公報
【特許文献2】特開2003−62989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されている技術によれば、つなぎ位置における色や濃度のムラ等を解消しているものの、ノズルピッチ以上の高解像度を実現することができない。また、個々のインク吐出口による記録ドットの大きさやドット位置のばらつきによる画質の劣化に関しては、記載されていない。
【0011】
特許文献2に記載されている技術によれば、一方向に配列された短尺ノズル列をノズル配列方向に複数配列させて吐出ノズルを形成しているラインヘッドのつなぎ位置における画質の劣化については記載されていない。
【0012】
本発明は、前述した課題に鑑みて、隣り合わせるノズル列のつなぎ位置において記録素子のピッチが不適正にならないように各ノズル列の位置を正確に位置決めすることを不要としつつ、マルチパス記録における高解像度化を実現し、画質の劣化を減少させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る装置は、記録媒体の搬送方向に対して略直交する一の方向に配列された吐出ノズルの列を有する短尺記録ヘッドのノズルを一部重複して複数を配置し、該記録媒体に記録を行う記録部と、前記記録媒体を、前記短尺記録ヘッドと対向する位置に複数回の搬送を行う搬送部と、前記搬送部が前記記録媒体を前記記録部まで搬送させている間に、前記吐出ノズルの列方向に前記記録部を移動させる移動制御部と、前記記録媒体の伸縮に応じて、前記短尺記録ヘッドの重複するつなぎ部の前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する記録データ制御部と、上位装置から通知されるジョブ情報と前記記録データ制御部において決定した補正値とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御するノズル列記録制御部と、を備える。
【0014】
本発明の一態様に係る方法は、記録媒体の搬送方向に対して略直交する方向に配列された吐出ノズルの列を有する短尺記録ヘッドのノズルを、一部重複して複数を配置し、該記録媒体に記録を行う記録部を備える画像記録装置の制御方法であって、前記記録媒体を、前記短尺記録ヘッドと対向する位置に複数回の搬送を行い、前記記録媒体を前記記録部まで搬送させている間に、前記吐出ノズルの列方向に前記記録部を移動させ、前記記録媒体の伸縮に応じて、前記短尺記録ヘッドの重複するつなぎ部の前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定し、上位装置から通知されるジョブ情報と前記補正値とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、隣り合わせるノズル列のつなぎ位置において記録素子のピッチが不適正にならないように各ノズル列の位置を正確に位置決めすることを不要としつつ、マルチパス記録における高解像度化を実現し、画質の劣化を減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る画像記録装置の構成を概念的に示したブロック図である。
【図2】実施形態に係る画像記録装置の各構成要素の配置図である。
【図3】画像記録部の記録ユニットの構成例を示す図である。
【図4】記録ユニットの主走査方向の移動について説明する図である。
【図5】マルチパス記録方法を説明する図である。
【図6】マルチパス記録のヘッドつなぎ部での着弾位置と記録媒体の伸張による画質劣化及び画質劣化を防止する補正の一例を示す図である。
【図7】マルチパス記録のヘッドつなぎ部での着弾位置と記録媒体の伸張による画質劣化及び画質劣化を防止する補正の他の例を示す図である。
【図8】実施形態に係る画像記録装置による画像記録を実行するために制御部が行う制御処理を示したフローチャートである。
【図9】つなぎ位置のノズル列重複部補正値を格納するテーブルの構成例を示す図である。
【図10】実施形態に係る画像記録装置による画像記録を実行するために制御部が行う他の制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、記録媒体の搬送方向と直交する方向を「X方向」または「主走査方向」、記録媒体の搬送方向を「Y方向」または「副走査方向」と称し、X方向及びY方向のどちらにも直交する方向を「Z方向」と称することとする。
【0018】
図1は、本実施形態に係る画像記録装置の構成を概念的に示したブロック図であり、図2は、本実施形態に係る画像記録装置1の各構成要素の配置図である。まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る画像記録装置1の構成について説明する。
【0019】
図1に示すとおり、本実施形態に係る画像記録装置1は、給送部2、記録媒体検出部3、搬送機構4、回収部5、画像記録部6、制御部7及び図1においては不図示のクリーニング部を有する。画像記録装置1は、ネットワークを介して接続されている上位装置20からの画像記録の開始の指示にしたがって、記録媒体8に記録処理を行う。
【0020】
給送部2は、記録媒体8を給送して搬送する。記録媒体検出部3は、記録媒体8の例えば先端等の端部を検出する。搬送機構4は、給送部2から受け渡された記録媒体8を画像記録部6(の短尺記録ヘッド28)と対向する位置に複数回の搬送を行う。画像記録部6は、記録媒体8が搬送経路を搬送される過程において、画像を記録する記録処理を行う。回収部5は、画像記録された記録媒体8を画像記録装置1の外へ排出し、収納する。図1においては不図示のクリーニング部は、安定した画像記録を行うため、画像記録部6のクリーニングを行う。制御部7は、画像記録装置1の全体の制御を行う。
【0021】
画像記録装置1の各構成要素について更に詳しく説明する。
給送部2は、給送トレイ9と給送駆動部10とを有する。給送トレイ9は、記録媒体8を収容し、給送カセット等で構成される。給送駆動部10は、給送トレイ9に収容された最上面の記録媒体8に当接して1枚ずつ記録媒体8を取り出し、搬送機構4に受け渡しを行う。給送駆動部10は、例えば、給送ローラで構成される。
【0022】
搬送機構4は、ドラム11、記録媒体検出部3、剥離部12、搬送情報生成部13、不図示の帯電ローラ及び除電器を有する。帯電ローラは、記録媒体8をドラム11の表面に案内するとともに、記録媒体8に電荷を与えることで記録媒体8をドラム11の表面に吸着させる。ドラム11は、印字時に記録媒体8を巻き付けて搬送するために用いる。図2においては矢印Aで示す方向に一定速度で回転可能な搬送駆動部14のモータにより駆動される。
【0023】
搬送情報生成部13は、ドラム11の相対的回転角を検出する。搬送情報生成部13は、例えばロータリエンコーダを備えて構成され、記録媒体8の搬送情報としてのパルス信号をドラム11が所定量回動するごとに生成し、制御部7へ出力する。したがって、搬送情報生成部13が出力するパルス信号は、記録媒体8の搬送距離を示す。
【0024】
ドラム11は、中空アルミ円筒と両側面のフランジとからなり、円筒表面は、絶縁コート処理されている。また、ドラム11は、スラスト方向のガタが発生しないように構成されている。
【0025】
記録媒体8は、搬送機構4によって画像記録部6と対向する位置にまで搬送された後、除電器に対向する位置まで搬送される。除電器は、記録媒体8に帯電した電荷を除去することで、ドラム11に吸着されている記録媒体8の吸着力をなくすはたらきをする。剥離部12の先端は、図2に示すように、ドラム11の表面に、記録媒体8の厚みに最小限の余裕を持たせた僅かな間隙を有するように設けられている。剥離部12は、除電器により吸着力がなくなりドラム11から僅かに浮き上がった記録媒体8をドラム11から剥離するとともに、回収部5へ記録媒体8を案内する。
【0026】
記録媒体検出部3は、記録媒体8の搬送経路上において、給送部2よりも下流であって、画像記録部6よりも上流に設けられ、記録媒体8の端部の位置検出を行う。記録媒体検出部3は、例えば、光学式の反射型センサ、または静電容量型センサ等の中からいずれかをその一部に備えて構成される。記録媒体検出部3は、検出した記録媒体8の端部に係わる検出情報を制御部7に通知する。
【0027】
回収部5は、収納トレイ15と、排出駆動部16とを有する。収納トレイ15は、排出された記録媒体8を収納する。排出駆動部16は、搬送機構4が搬送してくる記録媒体8を画像記録装置1外に排出するものであり、例えば、排出ローラ対で構成される。
【0028】
画像記録部6は、少なくとも1つ以上の記録ユニット17−1〜17−nを備える。実施例では、n個の記録ユニット17を備える。記録ユニット17−1〜17−nは、ノズル列18−1〜18−mと、ノズル列駆動部19−1〜19−mとを備える(但し、n、mは2以上の整数)。nとmの関係については、図3を参照して説明する。
【0029】
短尺記録ヘッド28のノズル列18−1〜18−mには、インクを吐出する複数のノズルが、主走査方向(X方向)に沿って一部を重複させて直線状に配置される。ノズル列18−1〜18−mは、画像記録装置1の設計に基づき、記録媒体8の最大幅を超える長さに亘って主走査方向に配設される。ノズル列18−1〜18−mは、それぞれノズル列駆動部19−1〜19−mからの駆動信号にしたがって、複数のノズルからインク滴を吐出し、記録媒体8に記録処理を行う。
【0030】
ノズル列駆動部19−1〜19−mは、制御部7から記録データ情報に基づいて送られてくる制御信号にしたがって、各ノズルを駆動する駆動信号を、ノズル列18−1〜18−mにそれぞれ出力する。
【0031】
制御部7は、図1においては不図示の処理回路と、記録データ制御部23、ノズル列記録制御部22、記録ユニット移動制御部24及び記憶部21を有する。不図示の処理回路は、演算処理装置における例えばMPU(Microprocessor Unit)を含み、制御機能及び演算機能を有する。
【0032】
記憶部21は、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、MPUのワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)と、不揮発メモリとを有する。記憶部21は、画像記録装置1の制御プログラムを記憶するとともに、画像記録装置1の制御に関する設定値や画像記録情報等の必要なデータを記憶する。制御部7のMPUは、記憶部21から制御プログラムを読み出して実行することにより、画像記録装置1の各構成要素の制御を行い、ノズル列記録制御部22等の機能が実現される。
【0033】
記録ユニット移動制御部24は、マルチパス記録を行うときに、パス記録の間に記録ユニット17を主走査方向(X方向)に移動制御する。記録ユニット17の移動量は、画像の解像度に応じて設定する。
【0034】
記録データ制御部23は、上位装置20から受信した画像データを、ジョブ情報と予め記憶部21に記憶されているジョブ情報に対応した設定値とに基づいて、記録処理が可能な記録データへと変換する処理を行って、記録データを画像記録部6へ転送する。記録データ制御部23における画像データ変換処理は、ノズル列18ごとのデータ配分やデータの位置あわせ、並びに記録濃度変換等の公知の処理を含む。また、本実施形態に係る画像記録装置1の記録データ制御部23は、記録媒体8の伸張に応じて、記録ユニット17の短尺記録ヘッド28のノズルが重複するつなぎ部において各ノズルから吐出させるインクの打ち込み量(記録ドロップ数)の補正値を決定する。補正値の決定方法については、後述する。
【0035】
ノズル列記録制御部22は、記憶部21から読み出した設定値に基づき、ノズル列18−1〜18−mの制御を行う。具体的には、ノズル列記録制御部22は、上位装置20から通知されるジョブ情報に基づいて、インクの吐出タイミングを制御し、記録媒体8に記録処理を行うときの副走査方向(Y方向)の記録位置を決定する制御を行う。また、ノズル列記録制御部22は、上位装置20から通知されたジョブ情報と記録データ制御部23から通知される各ノズルから吐出させるインクの打ち込み量(記録ドロップ数)とに基づき、ノズル列18−1〜18−mの各ノズルからのインクの吐出を制御する。
【0036】
ここで、上位装置20は、例えばコンピュータであり、本実施形態に係る画像記録装置1に記録処理を行わせる。上位装置20は、本実施形態に係る画像記録装置1の外部機器として、例えばLAN(Local Area Network)等のネットワークを介して画像記録装置1と接続されている。
【0037】
上位装置20は、画像記録装置1に対し、記録処理に関する情報として、ジョブ情報を通知する。ジョブ情報は、記録媒体8に対して記録処理を行う際の画像記録情報を含む。画像記録情報は、記録媒体8のサイズ(用紙サイズ)及び種類、記録速度、マルチパス記録回数、記録画像サイズ情報、解像度、濃度、色情報、上位装置20のメモリに保持した画像データのアドレス情報等を含む。
【0038】
また、上位装置20は、R(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)からなる多階調画像データを、画像記録装置1において出力可能なC、M及びY並びにKからなる階調値へと変換する擬似階調変換処理等の画像データ処理を行う。上位装置20は、このような処理を施した画像データを、画像記録装置1へ転送する。
【0039】
画像記録装置1の制御部7は、上位装置20からジョブ情報を通知されると、受け取ったジョブ情報を記憶部21に記憶させる。
次に、上記の構成の画像記録装置1による記録処理動作について説明する。
【0040】
図2においては不図示の制御部7は、記録処理開始の指示を上位装置20から受け取ると、搬送機構4の搬送駆動部14を制御して、ドラム11の回転を開始させる。続いて、制御部7は、給送部2の給送駆動部10を制御して、給送トレイ9に積載された記録媒体8を1枚ずつピックアップさせて搬送機構4へと受け渡し、搬送させる。
【0041】
搬送機構4へ受け渡された記録媒体8は、帯電ローラによって帯電されドラム11に吸着されることで、ドラム11の回転に伴って搬送される。記録媒体検出部3は、搬送経路上を搬送されてきた記録媒体8の先端を検出し、検出情報を制御部7に通知する。具体的には、記録媒体検出部3は、先端を検出したことを示す先端エッジ信号を制御部7へ出力する。制御部7は、受信した先端エッジ信号を、記録処理タイミングを生成するためのトリガ信号として利用する。
【0042】
制御部7は、画像記録部6のノズル列18−1〜18−mにインク吐出を開始させるためのタイミングの情報を、予め記憶部21に記憶している。このタイミングの情報とは、搬送情報生成部13が生成する搬送情報であるパルス信号の数値であり、パルス信号の数値は、記録媒体検出部3からノズル列18−1〜18−mの距離に対応する。
【0043】
制御部7は、上記の記録媒体8の先端エッジ信号を記録媒体検出部3から受信すると、受信した信号についてのパルス信号を計数する。制御部7のノズル列記録制御部22は、計数したパルス信号の数値と、記憶部21に記憶しているパルス信号の数値との一致を検出する。そして、ノズル列記録制御部22は、一致を検出したタイミングで、画像記録部6のノズル列駆動部19−1〜19−mを制御して、ノズル列18−1〜18−mからインクを吐出させてドラム11に吸着されている記録媒体8への記録処理を行わせる。
【0044】
この後、上位装置20から通知されたジョブ情報に含まれるマルチパス記録回数Nに応じて、ドラム11をN回転させ、N回のマルチパス記録を行う。
記録処理がなされた後、記録媒体8は、搬送機構4の除電器と対向する位置まで搬送される。除電器は、記録媒体8に帯電した電荷を除去することにより、ドラム11に吸着された状態にある記録媒体8の吸着力をなくすはたらきをする。上述したとおり、搬送機構4の剥離部12は、先端部がドラム11の表面に、記録媒体8の厚みに最小限の余裕を持たせた僅かな間隙を有して配置されている。剥離部12は、吸着力がなくなりドラム11から僅かに浮き上がった記録媒体8をドラム11から剥離するとともに、記録媒体8を回収部5へと案内する。搬送機構4の下流側に設けられた回収部5へと受け渡された記録媒体8は、回収部5の排出駆動部16に挟持されて搬送経路の更に下流へと搬送され、収納トレイ15に収納される。
【0045】
ドラム11への記録媒体8の吸着手段としては、上記に示す例の他に、ドラム11の円周に多数の貫通穴を設けることとしてもよい。この場合、ドラム11内を負圧にすることで、記録媒体8をドラム11の円周面に吸着させる。
【0046】
本実施形態に係る画像記録装置1のうち、画像記録部6の記録ユニット17の構成及びその動作について、図3を参照して更に詳しく説明する。
図3は、画像記録部6の記録ユニット17の構成例を示す図である。図3においては、例えば1色のインクに対応する記録ユニット17−1、17−2の主走査方向の端部を一部重複させて、副走査方向に沿ってそれぞれ離間させて配設させることでラインヘッドを構成している。記録ユニット17−1及び記録ユニット17−2は、それぞれ主走査方向に関して独立して移動可能に設置される。但し、本実施形態に係る画像記録装置1においては、記録ユニット17は、K、C、M及びYの色ごとに一体となって主走査方向に関して移動して、記録媒体8への記録を行う。詳しくは図6等を参照して説明する。
【0047】
記録ユニット17−1〜17−nは、複数のノズル列18−1〜18−mを例えば図2に示すように、ドラム11の円周に沿って配置する。図2においては、4色のインクに対応する態様として、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)及びY(イエロー)の色ごとに記録ユニット17−1〜17−nを2つずつ配設した場合を示す。nは、画像記録部6に設ける記録ユニット17の総数を表し、図2に示す実施例では、n=8である。mは、インク色には係わりなく、画像記録部6に設けるノズル列18の総数を表し、図3に示す実施例では、1色あたり6個のノズル列18を配置しており、m=6(個/1色)×4(色)=24(個)である。
【0048】
各色の記録ユニット17−1〜17−8は、副走査方向に沿って互いに離間して配設されている。記録ユニット17−1〜17−8は、搬送経路上の設置位置に対応するタイミングでノズル列18−1〜18−24をそれぞれ駆動させることで、記録媒体8への記録処理を行う。ノズル列18−1〜18−24の駆動タイミングは、記録媒体検出部3で記録媒体8を検出してからノズル列18−1〜18〜24のそれぞれまでの距離は、搬送情報生成部13により搬送情報として生成されるパルス信号をカウントすることにより得られる。搬送情報生成部13において生成するパルス信号を、例えば600dpi(≒42μm)等の間隔で発生させることで、記録するドットの配置間隔を決定する。
【0049】
ノズル列駆動部19−1〜19−24は、上位装置20から受信した画像記録情報に基づいて、ノズル列18−1〜18−24のノズルの中からインクを吐出させるノズルを選択する。ノズル列駆動部19−1〜19−24は、制御部7のノズル列記録制御部22が生成するインク吐出タイミング制御信号により決定されるタイミングで選択したノズルを駆動し、インク吐出を行わせる。
【0050】
なお、上記の記録ユニットの説明においては、主走査方向に離間させてノズル列を配置される記録ユニットのそれぞれについては「記録ユニット17−1」「記録ユニット17−n」等と表記している。一方、ある色についての記録ユニット、すなわち、図3の例では記録ユニット17−1と記録ユニット17−2から構成され、一体となって主走査方向に移動する一単位の記録ユニットについては「記録ユニット17」と表記している。以下の説明においても、同様の方法で表記することとする。
【0051】
次に、図4や図5を参照して、マルチパス記録について説明する。
図4は、記録ユニット17の主走査方向の移動について説明する図である。主走査方向であるX方向、及び副走査方向であるY方向と直交するZ方向を図示している。図4においては、紙面手前方向が記録媒体8の搬送経路の上流方向であり、ドラム11は回転軸Rを中心として、B方向に回転する。
【0052】
記録ユニット17の記録媒体8を介してドラム11と対向する位置には、各々がノズル列18を備える複数の短尺記録ヘッド28が、記録媒体8の幅方向(主走査方向)に亘り配置されている。記録媒体8は、ドラム11に吸着されて記録ユニット17に対向して搬送される。
【0053】
なお、図4においては、説明の簡略化のため、1つの記録ユニット17及び1つの記録ユニット移動機構27の組のみを示しているが、他の記録ユニット17及び記録ユニット移動機構27の組も同様に、ドラム11の周方向に並列に配置されている。
【0054】
記録ユニット17の各々には記録ユニット移動機構27が設けられ、記録ユニット17の各々は、互いに独立に主走査方向における変位が制御される。記録ユニット移動機構27は、記録ユニットホルダ25及びリニアモータ26を備える。
【0055】
記録ユニットホルダ25は、図4においては不図示の装置筐体に対して主走査方向(図4においてはC方向)に移動自在に設けられ、記録ユニット17を支持する。
リニアモータ26は、記録ユニットホルダ25の一端が接続されている。リニアモータ26が主走査方向の直線的な駆動動作を行うことで、記録ユニットホルダ25に支持された記録ユニット17の、主走査方向の任意の位置への水平移動(図4においてはC方向の移動)や、その位置決めがなされる。リニアモータ26による記録ユニット17の主走査方向における移動方向及び移動量については、制御部7の記録ユニット移動制御部24により制御される。
【0056】
本実施形態に係る画像記録装置1は、記録ユニット移動制御部24の制御により記録ユニット17を主走査方向に移動させ、マルチパス記録を行う。次に、マルチパス記録について説明する。
【0057】
図5は、マルチパス記録方法を説明する図である。説明の簡単のため、ここでは、マルチパス記録回数N=2の場合を例に説明する。
図5(a)は、1パス目の記録を示す図である。ドラム11に吸着された記録媒体8が、ドラム11の回転に伴って、記録ユニット17に対向する位置まで搬送されてくる。まず、ドラム11の1回転目には、記録媒体8に対して1パス目の記録を行う。1パス目の記録においては、ノズル間隔dに等しい間隔で主走査方向にインク滴によるドットが記録される。
【0058】
図5においてはある記録ユニット17のみを示すが、図2等に示すとおり、C、M及びY並びにKの4色それぞれについて記録ユニット17が設けられている。各記録ユニット17において各色の記録が行われると、記録媒体8は、ドラム11に吸着されたまま、もう1回転する。そして、記録媒体8は、再度、図5の記録ユニット17と対向する位置まで搬送される。
【0059】
記録媒体8への1パス目の記録終了後、再び記録媒体8が図5の記録ユニット17に対向する位置にまで搬送されるまでの間に、図1の記録ユニット移動制御部24は、記録ユニット17を主走査方向に関してノズル間隔dの半分となるd/2相当の距離分移動させる。続いて、記録媒体8に2パス目の記録が行われる。
【0060】
図5(b)は、2パス目の記録を示す図である。上記のとおり、記録ユニット17は1パス目の記録のときと比較して、主走査方向にd/2相当の距離だけ移動しているので、2パス目の記録は、1パス目で記録されたドット間になされる。このようにして、ノズル間隔dの2倍の解像度の補間印字を行うことが可能となる。例えば、ノズル間隔dが300dpi(≒85μm)相当とすると、記録画像は、N=2のマルチパス記録により、主走査方向に関して600dpi(≒42μm)で記録することが可能となる。
【0061】
同様に、1回あたりの主走査方向に関する記録ユニット17の移動量をd/N(ノズル間隔dに対してN分の1)、記録媒体1枚あたりの印字回数をN(Nは2以上の任意の整数)とすることで、ノズル間隔dのN倍の解像度の補間印字を行うことができる。
【0062】
記録媒体8に記録を行う際に記録媒体8の表面に着弾したインクは、記録媒体8の内部に浸透し、定着する。このとき、インクに含まれる水分が記録媒体8に吸収されることによって、記録媒体8が膨張(伸張)する。特に、本実施形態に係る画像記録装置1のように、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置では、記録媒体8の幅方向(主走査方向、X方向)に亘って1回の走査(パス)で記録を行うため、記録媒体8に対するインクの打ち込み量が多く、急激な記録媒体8の膨張(伸張)が起こり易い。ラインヘッド方式のインクジェット記録装置でマルチパス記録を行う場合は、所定のパスでの記録において、記録媒体8が膨張(伸張)し、パス間のインク着弾位置が乱れることによって画質劣化を生じることがある。本実施形態に係る画像記録装置1は、隣り合わせる短尺記録ヘッド28のノズル列が重複する箇所において、記録素子のピッチが不適正にならないよう、以下に説明するような補正値を求め、求めた補正値に基づき記録処理を行う。
【0063】
図6は、マルチパス記録のヘッドつなぎ部での着弾位置と記録媒体8の伸張による画質劣化及び画質劣化を防止する補正の一例を示す図である。このうち、図6(a)〜図6(d)は、図3の記録ユニット17の一部を拡大した概念図であり、マルチパス記録における各パスでのヘッドの位置を示す図である。図6(e)〜図6(g)は、マルチパス記録により記録されるドットの位置を示す図である。図6を参照して、本実施形態に係る画像記録装置1が、短尺記録ヘッド28のつなぎ部におけるマルチパス記録の補正を行う方法について説明する。
【0064】
図6(a)は、マルチパス記録の1パス目のヘッド位置を示す。ノズルピッチはpとする。図6(a)〜図6(d)においては、ヘッドAの使用ノズルを斜線で、ヘッドBの使用ノズルを横線で示し、未使用のノズルについては白抜きで示している。
【0065】
本来は、左側のヘッドAのノズル及び右側のヘッドBのノズルの位置関係は、記録媒体8の搬送方向(副走査方向)に平行方向に関しては、同一線上に配置されるのが理想である。しかし、両ノズルの位置関係を精確に調整するのは困難であるため、実施例では、図6(a)等に示すように、ヘッドAとヘッドBとの隣接するノズルのピッチ間隔をδとして許容する。
【0066】
マルチパス記録回数をN回とすると、ヘッドAのノズルの位置とヘッドBのノズルの位置との間隔は、(1/N)×p+δである。図6においては、マルチパス回数N=4の場合を示す。この場合は、図中左側のヘッドAのノズル位置と右側のヘッドBのノズル位置とのノズル間隔は、(1/4)×p+δである。
【0067】
図6(b)は、マルチパス記録の2パス目のヘッド位置を示す。ヘッドA及びヘッドBのつなぎ部を含む記録ユニット17の全体が、図6(a)の1パス目の位置に対して(1/4)×pだけ主走査方向に移動している。なお、つなぎ部とは、短尺記録ヘッド28間でノズルが重複している部分をいい、以下の説明においては、つなぎ位置とは、マルチパス記録により記録される主走査方向に並ぶドットのうち、つなぎ部の一のヘッドによるドットから次のヘッドによるドットへと切り替わる位置をいう。
【0068】
図6(c)及び図6(d)についても同様に、ヘッドAとヘッドBのつなぎ部を含む記録ユニット17の全体が、それぞれ図6(b)及び図6(c)の位置に対して(1/4)×pずつ主走査方向に移動している。
【0069】
図6(e)は、記録媒体8に伸張がない場合のインクの着弾位置を説明する図である。図6(e)においては、記録媒体8とヘッドとを4回相対走査して、4パスによるマルチパス記録で記録処理を行う場合の、あるラインのインクの着弾位置を丸印で示す。丸印中の数字は、インク滴がマルチパス記録の何パス目に記録されたものであるかを示す。ヘッドAから吐出されたインク滴は斜線で、ヘッドBから吐出されたインク滴は横線で示している。なお、図6(e)においては、記録媒体8の幅方向(主走査方向)の中心は、図示するドットに対して右方にあるものとする。図6(f)及び図6(g)についても同様とする。
【0070】
上記のとおり、ここでは、ノズル間隔pに対し、パス間で(1/4)×pずつ主走査方向に記録ユニット17を移動させて記録を行っていることにより、ドット間隔は(1/4)×pである。
【0071】
ここで、例えば図3の記録ユニット17には、6つの短尺記録ヘッド28が含まれ、つなぎ部は、5箇所存在する。このうち、図6(e)に示すヘッドAとヘッドBのつなぎ部については、左側のヘッドAにより1パス目で記録されたドットD1までを記録し、その右側のドットD2は、右側のヘッドBの4パス目で記録されたドットとなっている。ドットD1−D2の間隔は上記δであり、δは、以下の式(1)を満たす。
δ<(1/4)×p (1)
【0072】
なお、つなぎ部において各ドットをいずれのヘッドに割り当てるかについては、つなぎ位置Jにおいて記録素子のピッチが不適正なものとならないように、上記のような組み合わせとする場合がある。なお、このような組み合わせは、各短尺記録ヘッド28のノズル列18の位置を正確に位置決めしない場合に設定可能である。
【0073】
図6(e)に示す例では、つなぎ位置Jのドットを小さく変更することにより、つなぎ位置Jの濃度を均一にしている。これは、式(1)に示すとおり、つなぎ位置Jに関して左右のドットの間隔δが、あるパスのドットと次のパスのドットとの間隔(1/4)×pよりも小さいことに基づく。このようなつなぎ位置Jのドットの濃度を調整するために、実施例では、記録ドットを階調出力できる記録ヘッド、例えば、マルチドロップタイプのインクジェット記録ヘッドを用いて、ノズル列が重複する部(ノズル列重複部)の補正を行う。これにより、巨視的な画像濃度を均一にすることができる。
【0074】
図6(f)は、記録媒体8が左側に伸張した場合のインクの着弾位置を説明する図である。図6(f)においては、インクに含まれる水分が記録媒体8に吸収されることによって、つなぎ位置Jに白スジが発生した様子を示す。
【0075】
記録媒体8の伸張の大きさは、記録時のインクの打ち込み量と記録媒体8の性質に依存することが、実験結果から判明している。特に、記録媒体8の種類によっては、例えばコピー用紙等の普通紙では、インク滴による伸張が起きやすい。一方で、例えばフィルムや特殊なコーティングを施した用紙では、殆ど膨張(伸張)は起きない傾向にある。インクの打ち込み量との記録媒体8の伸張の大きさとの関係については、実験によれば、インクの打ち込み量が6.7nl/mm2の場合、ある普通紙では約0.03%、幅297mmのA4サイズの用紙では、90μmの膨張(伸張)が発生した。また、実験によれば、記録媒体8の伸張は、記録媒体8の幅方向の中心から両端に向かう方向で発生する。
【0076】
記録媒体8の伸張の発生に対して特段の補正を行わない場合には、図6(f)に示すように、マルチパス記録により記録媒体8とヘッドとを相対走査する都度、記録媒体8の伸張が発生し、インク着弾位置にずれが生じる。最終パスである4パス目で記録されるドットの位置を基準とすると、1パス目で記録されるドットが最もずれが大きく、図6(e)の位置と比べて、図中左側にd1移動している。2パス目及び3パス目で記録されるドットのずれを、それぞれd2及びd3とする。ずれ量の大小関係は、以下の式(2)を満たす。
d1>d2>d3 (2)
これは、ずれ量は、先に着弾したインク滴の方が、最後の4パス目のインク滴の着弾までの時間が長くなるため、伸張量も大きくなることによる。ここでは、4パス目で記録されるドットの位置を基準としているため、「4パス目で記録されるドットのずれ量=0」としている。
【0077】
図6(e)の場合と同様に、図6(f)では、ヘッドAとヘッドBのつなぎ位置においては、左側のヘッドAにより1パス目で記録されたドットD1までを記録し、その右側のドットD2は、右側のヘッドBの4パス目で記録を行っている。
【0078】
図6(e)の場合と同様の組み合わせでつなぎ位置Jの左右のドットD1、D2の記録を行う場合、ヘッドのつなぎ位置J以外のドットには、顕著なムラは発生しない。これは、上記のとおり、記録媒体8に着弾したドットは徐々に伸張しているためである。一方、ヘッドのつなぎ位置Jにおいては、以下の式(3)のとおり、つなぎ位置Jのドット間隔δ1は大きくなり、顕著な白スジが発生する。
δ1>δ (3)
【0079】
つなぎ位置Jに発生する白スジを解消するため、本実施形態に係る画像記録装置1では、図6(g)に示すような補正を行う。図6(g)では、ヘッドのつなぎ位置JのドットD2を、例えばマルチドロップタイプのドロップ数を増加させることにより、ドット径を大きく変更して、白スジの発生を防止している。
【0080】
上述のとおり、記録媒体8の伸張量は、インクと記録媒体8の組み合わせによる特性と、インクの打ち込み量とに依存している。このため、例えば、用紙とインクの組み合わせ特性と、インクの打ち込み量に応じてどの程度つなぎ部(図6(g)に示す例では、つなぎ位置Jの右側のドットD2)の補正を行うかを、画像記録装置1の工場出荷時等に予め調整し、記憶部21等にテーブルとして記憶しておく。このように調整値を記憶部21等にテーブルとして記憶しておくことで、インクの打ち込み量に応じて最適な補正を行うことができる。インクの打ち込み量の補正値は、記録データ制御部23が、画像データから求まる記録ドロップ数を利用して決定する。
【0081】
図7は、マルチパス記録のヘッドつなぎ部での着弾位置と記録媒体8の伸張による画質劣化及び画質劣化を防止する補正の他の例を示す図である。図6(e)〜図6(g)においては、記録媒体8の幅方向(主走査方向)の中心は、図示するドットに対して右方にあるのに対し、図7(a)〜図7(c)においては、記録媒体8の幅方向の中心は、図示するドットに対して左方にあるものとする。
【0082】
図7(a)は、記録媒体8に伸張がない場合のインクの着弾位置を説明する図である。図7(a)においては、図6(e)に示す場合と同様に、記録媒体8とヘッドとを4回相対走査して、4パスによるマルチパス記録で記録処理を行う場合の、あるラインのインクの着弾位置を丸印で示す。丸印中の数字は、インク滴がマルチパス記録の何パス目に記録されたものであるかを示す。ヘッドAから吐出されたインク滴は斜線で、ヘッドBから吐出されたインク滴は横線で示している。ノズル間隔pに対し、パス間で(1/4)×pずつ主走査方向に記録ユニット17を移動させて記録していくことで、ドット間隔は(1/4)×pとなっている。各パスにおける記録ユニット17のヘッド主走査方向に関する位置については、それぞれ図6(a)〜図6(d)の場合と同様とする。
【0083】
また、ここでは、図6の場合と同様にノズル列重複部の補正を行っており、これにより巨視的な画像濃度を均一にしている。
図7(b)は、記録媒体8の右端で記録媒体8が右側へと伸張した場合のインクの着弾位置を示す図である。記録媒体8の伸張が発生する理由については、上述のとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0084】
記録媒体8の伸張の発生に対して特段の補正を行わない場合には、図7(b)に示すように、マルチパス記録により記録媒体8とヘッドとを相対走査する都度、記録媒体8の伸張が発生し、インク着弾位置にずれが生じる。最終パスである4パス目で記録されるドットの位置を基準とすると、1パス目で記録されるドットが最もずれが大きく、図7(a)の位置と比べて、図中右側にd4移動している。2パス目及び3パス目で記録されるドットのずれを、それぞれd5及びd6とすると、ずれ量の大小関係は、以下の式(4)を満たす。
d4>d5>d6 (4)
ずれ量は、先に着弾したインク滴の方が、最後の4パス目のインク滴の着弾までの時間が長くなるため、伸張量も大きくなることによる。ここでは、4パス目で記録されるドットの位置を基準としているため、「4パス目で記録されるドットのずれ量=0」としている。
【0085】
図7(b)では、ヘッドAとヘッドBのつなぎ位置においては、左側のヘッドAにより1パス目で記録されたドットD3までを記録し、右側のドットD4については、右側のヘッドBの4パス目で記録を行っている。
【0086】
このような組み合わせでつなぎ位置J´の左右のドットD3、D4の記録を行う場合、ヘッドのつなぎ位置J´以外のドットには、顕著なムラは発生しない。記録媒体8に着弾したドットは、徐々に伸張しているためである。一方、ヘッドのつなぎ位置J´においては、式(5)に示すとおり、つなぎ位置J´のドット間隔δ2は大きくなり、顕著な黒スジが発生する。
δ2<δ (5)
【0087】
つなぎ位置J´に発生する黒スジを解消するため、本実施形態に係る画像記録装置1では、図7(c)に示すような補正を行う。図7(c)では、ヘッドのつなぎ位置J´のドットD4を、例えばマルチドロップタイプのドロップ数を減少させることにより、ドット径を小さく変更して、黒スジの発生を防止している。
【0088】
図6(g)のつなぎ位置Jにおける補正方法の説明において述べたとおり、記録媒体8の伸張量は、インクと記録媒体8の組み合わせによる特性と、インクの打ち込み量とに依存している。このことから、図7(c)に示す補正を行う場合についても同様に、つなぎ部(図7(c)に示す例では、つなぎ位置J´の右側のドットD4)についてどの程度の補正を行うかを、画像記録装置1の工場出荷時等に記録媒体ごとに予め調整し、記憶部21等にテーブルとして記憶しておく。このように調整値を記憶部21等にテーブルとして記憶しておくことで、インクの打ち込み量に応じて最適な補正を行うことができる。インクの打ち込み量の補正値は、記録データ制御部23が、画像データから求まる記録ドロップ数を利用して決定する。
【0089】
上記においては、マルチドロップタイプのインクジェット記録ヘッドを用いてドット径を変更する例を示したが、これには限定されない。これ以外にも、公知の技術を用いて巨視的にドット数を増減する方法によりつなぎ部の補正値を変更することも可能である。
【0090】
図6(g)及び図7(c)に示す方法でつなぎ位置のドットについて補正を行うことにより、記録媒体8が幅方向の中心に関して左右両方向に伸張することによってドットの着弾位置がずれて白スジや黒スジが発生することを防止し、画質劣化を減少させている。
【0091】
図8は、本実施形態に係る画像記録装置1による画像記録を実行するために制御部7が行う制御処理を示したフローチャートである。図1の制御部7のMPUが、図1においては不図示の不揮発メモリから所定の制御プログラムを読み出して実行すると、図8に示す一連の処理を開始する。
【0092】
まず、ステップS1において、制御部7が、上位装置20から受信した画像データから記録ドロップ数を算出し、インク打ち込み量を算出する。
ステップS2で、制御部7が、ステップS1において算出したインク打ち込み量から、各つなぎ位置のノズル列重複部の補正値を取得する。上記のとおり、補正値は、予め記録データ制御部23に不揮発記憶しておいた調整値を取り出すことにより得られる。記録データ制御部23に記憶するデータの構造については、詳しくは図9を参照して説明する。
【0093】
ステップS3で、制御部7は、同期信号に同期して画像記録を行う。同期信号は、搬送情報生成部13において生成する搬送情報に基づき生成されるパルス信号からなる。
ステップS4で、制御部7は、搬送方向に関して最下流に位置するノズル列18によるページ最終記録が終了したか否かの判定を行う。搬送方向に関して最下流のノズル列18において最終ページの記録処理が終了していない場合(ステップS4においてNoの場合)は、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。搬送方向に関して最下流のノズル列18において最終ページの記録処理が終了している場合(ステップS4においてYesの場合)は、処理を終了する。
【0094】
図9は、つなぎ位置のノズル列重複部補正値を格納するテーブルの構成例を示す図である。図9に示すとおり、画像データから求められる単位面積あたりのインク打ち込み量と、つなぎ位置ごとの補正値とが対応付けて格納されている。
【0095】
実施例では、用紙及びインクの種類ごとに図9に例示する補正テーブルを用意する。画像記録装置1は、図8のステップS2において、上位装置20から受信したジョブ情報の中から取得した記録媒体8の種類(用紙の種類)に対応するテーブルを参照する。そして、画像記録装置1は、テーブルの中から、つなぎ位置のそれぞれについて、インクの打ち込み量に対応する補正値を取得する。
【0096】
図3等に示すとおり、ある記録ユニット17には複数のつなぎ位置が存在し、つなぎ部の両ノズルのピッチ間隔のずれδの大きさは、それぞれ異なる。このため、補正値は、つなぎ位置ごとに最適な値を設定している。
【0097】
図9では、例えばつなぎ位置1−1の単位面積当たりのインク打ち込み量(ドロップ数)が「100」であれば、補正値は「0.52」である。この場合、つなぎ位置には、インク打ち込み量(ドロップ数)として「100×0.52」を設定して、ノズルからインクを吐出させて記録を行う。例えばインクの打ち込み量(ドロップ数)が「50以上100未満」の値をとる場合には、図9のテーブルに設定されているドロップ数のうち、近い方のドロップ数を採用して、対応するつなぎ位置補正値を求めることとしてもよい。
【0098】
図8に示す制御方法により記録処理を行う場合には、インクの打ち込み量の補正値は、画像データから求められるインクの打ち込み量に応じて決定される。すなわち、実際に行う記録に応じた補正値を決定することができる。また、記録媒体8の種類に応じた補正値を決定することで、記録媒体8の種類の性質に応じた補正が可能となる。
【0099】
図10は、本実施形態に係る画像記録装置1による画像記録を実行するために制御部7が行う他の制御処理を示したフローチャートである。
先述の図8に示す制御処理においては、まず画像データから記録ドロップ数を算出し、記録ドロップ数から求まるインクの打ち込み量と対応する補正値を、予め記憶させておいたテーブルから取得している。これに対し、図10に示す制御処理においては、記録媒体検出部3により記録媒体8の主走査方向の伸張量を検出し、検出した実際の記録媒体8の伸張量に基づいて、補正値を予め記憶させておいたテーブルから取得する。以下においては、図8に示す制御処理と比較して異なる点を中心に説明する。
【0100】
まず、ステップS11において、制御部7は、記録媒体検出部3が記録媒体8の両端を検出した結果を取得する。先述のとおり、記録媒体検出部3は、給送部2よりも下流であって、画像記録部6よりも上流に設けられ、記録媒体8が搬送されて記録媒体検出部3の検出領域を通過するごとに、記録媒体8の幅方向(主走査方向)の両端を検出し、制御部7に検出結果を通知する。
【0101】
ステップS12において、制御部7は、ステップS11で取得した記録媒体検出部3による検出結果から、記録媒体8の伸張量を算出する。そして、ステップS13で、制御部7は、ステップS12において算出した記録媒体8の伸張量に基づいて、ノズル列重複部補正値を取得すると、ステップS14に進む。ステップS14及びステップS15の処理については、図9のステップS3及びステップS4の処理とそれぞれ同様である。
【0102】
なお、ステップS13において取得するノズル列重複部補正値は、図9のステップS2の処理と同様に、予め記憶させておいたテーブルを利用する。すなわち、記録媒体8の種類ごとに、記録媒体8の伸張量と各つなぎ位置における補正値とを対応付けて格納する補正テーブルを、予め記録データ制御部23等に記憶させておく。そして、ステップS13においては、上位装置20から受信したジョブ情報から取得した記録媒体8の種類についての補正テーブルを参照し、ステップS12で求めた伸張量と対応する補正値をつなぎ位置のそれぞれについて取得する。取得した補正値より決定したインクの打ち込み量を用いてインクを吐出させ、記録処理を行う。
【0103】
図10に示す制御方法により記録を行う場合には、インクの打ち込み量の補正値は、記録媒体検出部3による記録媒体8の端部の検出結果により決定する。これにより、実際の記録媒体8の伸張量に応じた補正値を決定することができる。また、図8に示す制御方法により記録を行う場合と同様に、記録媒体8の種類に応じた補正値を決定することで、記録媒体8の性質に応じた補正が可能となる。更には、マルチパス記録処理において、記録媒体検出部3の検出領域を記録媒体8が通過するごとに記録媒体8の検出を行うことで、パスごとの記録媒体8の伸張量を求めることができ、より高精度の補正値を設定することが可能となる。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係る画像記録装置1によれば、ノズル列18を有する短尺記録ヘッド28の一部を重複させて複数配置する記録ユニット17を備える。短尺記録ヘッド28のつなぎ部については、記録媒体8の幅方向(主走査方向)の伸張に応じて、ノズルから吐出させるインクの量の補正値を求め、補正値に基づき記録処理を行う。これにより、記録ユニット17を主走査方向に移動させてマルチパス記録を行う場合に、記録媒体8がインクを吸収して幅方向(主走査方向)に伸張しても、インクの着弾位置がずれて記録素子のピッチが不適正になることを効果的に防止する。したがって、つなぎ位置に発生するスジ状の濃度ムラや白抜き等を防止し、画質劣化を低減させることが可能となる。
【0105】
なお、上記の実施形態においては、記録媒体8がインクを吸収することにより伸張した場合について説明しているが、これには限らない。例えば記録媒体8が幅方向に収縮する場合であっても同様に、記録媒体8の収縮量とこれに応じたインクの打ち込み量の補正値を対応付けて補正テーブルに格納しておく。補正テーブルの補正値を利用して記録を行うことで、記録媒体8が収縮することによる濃度ムラ等の発生による画質劣化を低減させることが可能となる。
【0106】
この他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の改良及び変更が可能である。例えば、上述の各実施形態に示された全体構成からいくつかの構成要素を削除してもよいし、更には、各実施形態の異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 画像記録装置
2 給送部
3 記録媒体検出部
4 搬送機構
5 回収部
6 画像記録部
7 制御部
8 記録媒体
9 給送トレイ
10 給送駆動部
11 ドラム
12 剥離部
13 搬送情報生成部
14 搬送駆動部
15 収納トレイ
16 排出駆動部
17、17−1〜17−n 記録ユニット
18、18−1〜18−m ノズル列
19、19−1〜19−m ノズル列駆動部
20 上位装置
21 記憶部
22 ノズル列記録制御部
23 記録データ制御部
24 記録ユニット移動制御部
25 記録ユニットホルダ
26 リニアモータ
27 記録ユニット移動機構
28 短尺記録ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送方向に対して略直交する一の方向に配列された吐出ノズルの列を有する短尺記録ヘッドのノズルを一部重複して複数を配置し、該記録媒体に記録を行う記録部と、
前記記録媒体を、前記短尺記録ヘッドと対向する位置に複数回の搬送を行う搬送部と、
前記搬送部が前記記録媒体を前記記録部まで搬送させている間に、前記吐出ノズルの列方向に前記記録部を移動させる移動制御部と、
前記記録媒体の伸縮に応じて、前記短尺記録ヘッドの重複するつなぎ部の前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する記録データ制御部と、
上位装置から通知されるジョブ情報と前記記録データ制御部において決定した補正値とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御するノズル列記録制御部と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記記録データ制御部は、前記画像データから抽出した吐出させるべきインクの量を表す情報に基づいて、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記記録データ制御部は、前記画像データから抽出した前記記録媒体の種類と、前記抽出したと出させるべきインクの量に基づいて、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの補正値を決定する
ことを特徴とする請求項2記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録媒体の種類及び前記記録媒体に吐出させるべきインクの量を表す情報と対応付けて、前記インクの補正値を記憶する記憶部と、
を更に備え、
前記記録データ制御部は、前記画像データから抽出した前記記録媒体の種類と前記吐出させるべきインクの量を表す情報とに対応する補正値を前記記憶部から取得することにより、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの補正値を決定する
ことを特徴とする請求項3記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体の端部を検出する媒体検出部と、
を更に備え、
前記記録データ制御部は、前記媒体検出部の検出結果から求まる前記記録媒体の伸縮量に基づいて、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記記録媒体の種類及び前記記録媒体の伸縮量と対応付けて、前記インクの補正値を記憶する記憶部と、
を更に備え、
前記媒体検出部は、該記録媒体の幅方向の両端を検出し、
前記記録データ制御部は、前記媒体検出部の検出結果から求まる前記記録媒体の幅方向の伸縮量に対応するインクの補正値を、前記記憶部から取得することにより、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する
ことを特徴とする請求項5記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記媒体検出部は、前記記録媒体を給送する給送部よりも下流であって、前記記録部よりも上流に設けられ、前記搬送部により回動搬送される前記記録媒体が通過するごとに該記録媒体の幅方向の両端を検出して前記記録データ制御部に検出結果を通知し、
前記記録データ制御部は、前記媒体検出部から通知された検出結果を利用して、1回の走査において前記記録媒体が伸縮した量を算出することにより、各走査における該記録媒体の伸縮量を求める
ことを特徴とする請求項6記載の画像記録装置。
【請求項8】
記録媒体の搬送方向に対して略直交する方向に配列された吐出ノズルの列を有する短尺記録ヘッドのノズルを、一部重複して複数を配置し、該記録媒体に記録を行う記録部を備える画像記録装置の制御方法であって、
前記記録媒体を、前記短尺記録ヘッドと対向する位置に複数回の搬送を行い、
前記記録媒体を前記記録部まで搬送させている間に、前記吐出ノズルの列方向に前記記録部を移動させ、
前記記録媒体の伸縮に応じて、前記短尺記録ヘッドの重複するつなぎ部の前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定し、
上位装置から通知されるジョブ情報と前記補正値とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御する
ことを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【請求項1】
記録媒体の搬送方向に対して略直交する一の方向に配列された吐出ノズルの列を有する短尺記録ヘッドのノズルを一部重複して複数を配置し、該記録媒体に記録を行う記録部と、
前記記録媒体を、前記短尺記録ヘッドと対向する位置に複数回の搬送を行う搬送部と、
前記搬送部が前記記録媒体を前記記録部まで搬送させている間に、前記吐出ノズルの列方向に前記記録部を移動させる移動制御部と、
前記記録媒体の伸縮に応じて、前記短尺記録ヘッドの重複するつなぎ部の前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する記録データ制御部と、
上位装置から通知されるジョブ情報と前記記録データ制御部において決定した補正値とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御するノズル列記録制御部と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記記録データ制御部は、前記画像データから抽出した吐出させるべきインクの量を表す情報に基づいて、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記記録データ制御部は、前記画像データから抽出した前記記録媒体の種類と、前記抽出したと出させるべきインクの量に基づいて、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの補正値を決定する
ことを特徴とする請求項2記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録媒体の種類及び前記記録媒体に吐出させるべきインクの量を表す情報と対応付けて、前記インクの補正値を記憶する記憶部と、
を更に備え、
前記記録データ制御部は、前記画像データから抽出した前記記録媒体の種類と前記吐出させるべきインクの量を表す情報とに対応する補正値を前記記憶部から取得することにより、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの補正値を決定する
ことを特徴とする請求項3記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体の端部を検出する媒体検出部と、
を更に備え、
前記記録データ制御部は、前記媒体検出部の検出結果から求まる前記記録媒体の伸縮量に基づいて、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記記録媒体の種類及び前記記録媒体の伸縮量と対応付けて、前記インクの補正値を記憶する記憶部と、
を更に備え、
前記媒体検出部は、該記録媒体の幅方向の両端を検出し、
前記記録データ制御部は、前記媒体検出部の検出結果から求まる前記記録媒体の幅方向の伸縮量に対応するインクの補正値を、前記記憶部から取得することにより、前記つなぎ部において前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定する
ことを特徴とする請求項5記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記媒体検出部は、前記記録媒体を給送する給送部よりも下流であって、前記記録部よりも上流に設けられ、前記搬送部により回動搬送される前記記録媒体が通過するごとに該記録媒体の幅方向の両端を検出して前記記録データ制御部に検出結果を通知し、
前記記録データ制御部は、前記媒体検出部から通知された検出結果を利用して、1回の走査において前記記録媒体が伸縮した量を算出することにより、各走査における該記録媒体の伸縮量を求める
ことを特徴とする請求項6記載の画像記録装置。
【請求項8】
記録媒体の搬送方向に対して略直交する方向に配列された吐出ノズルの列を有する短尺記録ヘッドのノズルを、一部重複して複数を配置し、該記録媒体に記録を行う記録部を備える画像記録装置の制御方法であって、
前記記録媒体を、前記短尺記録ヘッドと対向する位置に複数回の搬送を行い、
前記記録媒体を前記記録部まで搬送させている間に、前記吐出ノズルの列方向に前記記録部を移動させ、
前記記録媒体の伸縮に応じて、前記短尺記録ヘッドの重複するつなぎ部の前記吐出ノズルから吐出させるインクの量の補正値を決定し、
上位装置から通知されるジョブ情報と前記補正値とに基づき、前記吐出ノズルからのインクの吐出を制御する
ことを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【図1】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−183727(P2012−183727A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48538(P2011−48538)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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