説明

画像記録装置及びプログラム

【課題】記録装置の大型化及びコストの増加を抑制しつつ、搬送機構の動作の有無に関わらず記録ヘッドを機能させる。
【解決手段】電源ユニット41は、電圧V1の電力を搬送機構に、電圧V2の電力をヘッドにそれぞれ供給すると共に、搬送機構21とヘッド10とが同時に駆動されるときに、ヘッドに供給される電圧V2が最適値になるように調整されている。電圧値記憶部52が、搬送機構が駆動されているとき及び駆動されていないときのそれぞれについて、電源ユニット41が搬送機構に供給する電圧V1及びヘッドに供給する電圧V2の電圧値を記憶している。駆動信号生成部54が、搬送機構が駆動されていないメンテナンス時の電圧V2の電圧値が、搬送機構21が駆動されている印刷時の電圧V2の電圧値未満であれば、駆動指令に係る動作時間が初期値より増加するように駆動信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録する画像記録装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙を搬送する搬送機構及び印刷ヘッドに互いに異なる電圧を供給する電源ユニットを有するプリンタが知られている。搬送機構の消費電力は印刷ヘッドの消費電力を大きく上回るため、搬送機構の動作の有無によって印刷ヘッドに供給される電圧が変化することがある。この場合、例えば、搬送機構が動作しているときに印刷ヘッドに供給される電圧が最適値になるように電源ユニットを調整すると、搬送機構が停止しているときは、印刷ヘッドに供給される電圧が最適値から外れ、印刷ヘッドが所望の動作(インクジェットヘッドにおけるフラッシング動作など)を適切に行うことができなくなる。このような電圧の変化を抑制するため、電源ユニットの電圧出力部にレギュレータ回路を設けることで電圧を安定させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−34025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レギュレータ回路を設けることは、プリンタの大型化及びコストの増加につながる。
【0005】
本発明の目的は、記録装置の大型化及びコストの増加を抑制しつつ、搬送機構の動作の有無に関わらず記録ヘッドを機能させることができる画像記録装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像記録装置は、記録媒体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構に搬送された記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、前記搬送機構及び前記記録ヘッドに電力を供給すると共に、前記搬送機構及び前記記録ヘッドが同時に駆動されたときに前記記録ヘッドに所定の電圧が供給されるように調整された電源ユニットと、前記記録ヘッドを制御する制御手段とを備えている。前記制御手段は、前記搬送機構が駆動されているときに前記電源ユニットが前記記録ヘッドに供給する第1電圧の電圧値と、前記搬送機構が駆動されていないときに前記電源ユニットが前記記録ヘッドに供給する第2電圧の電圧値と、を記憶する電圧値記憶手段と、前記搬送機構が駆動されているか否かを判断する判断手段と、前記記録ヘッドに対する駆動指令を記憶する駆動指令記憶手段と、前記駆動指令から前記記録ヘッドを駆動させる駆動信号を生成する駆動信号生成手段とを有している。前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きい場合、前記駆動信号生成手段は、前記搬送機構が駆動されていないと前記判断手段が判断したときは、前記搬送機構が駆動されている場合に比べて前記駆動指令にかかる動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが増加するように、前記駆動信号を生成し、前記第1電圧が前記第2電圧よりも小さい場合、前記駆動信号生成手段は、前記搬送機構が駆動されていないと前記判断手段が判断したときは、前記搬送機構が駆動されている場合に比べて前記駆動指令にかかる動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが減少するように、前記駆動信号を生成する。
【0007】
本発明のプログラムは、記録媒体を搬送する搬送機構、前記搬送機構に搬送された記録媒体に画像を記録する記録ヘッド、前記搬送機構及び前記記録ヘッドに電力を供給すると共に、前記搬送機構及び前記記録ヘッドが同時に駆動されたときに前記記録ヘッドに所定の電圧が供給されるように調整された電源ユニット、及び、前記記録ヘッドを制御する制御手段を備えた画像記録装置に係る前記制御手段としてコンピュータを機能させるプログラムである。前記制御手段は、前記搬送機構が駆動されているときに前記電源ユニットが前記記録ヘッドに供給する第1電圧の電圧値と、前記搬送機構が駆動されていないときに前記電源ユニットが前記記録ヘッドに供給する第2電圧の電圧値と、を記憶する電圧値記憶手段と、前記搬送機構が駆動されているか否かを判断する判断手段と、前記記録ヘッドに対する駆動指令を記憶する駆動指令記憶手段と、前記駆動指令から前記記録ヘッドを駆動させる駆動信号を生成する駆動信号生成手段とを有している。前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きい場合、前記駆動信号生成手段は、前記搬送機構が駆動されていないと前記判断手段が判断したときは、前記搬送機構が駆動されている場合に比べて前記駆動指令にかかる動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが増加するように、前記駆動信号を生成し、前記第1電圧が前記第2電圧よりも小さい場合、前記駆動信号生成手段は、前記搬送機構が駆動されていないと前記判断手段が判断したときは、前記搬送機構が駆動されている場合に比べて前記駆動指令にかかる動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが減少するように、前記駆動信号を生成する。
【0008】
本発明によると、搬送機構の駆動の有無によって記録ヘッドに供給される電圧が変化しても、電圧記憶手段の記憶内容に基づいて、動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが調整された駆動信号が生成されるため、記録ヘッドに供給される電圧を安定させるための回路を設けることなく記録ヘッドを機能させることができる。これにより、記録装置の大型化及びコストの増加を抑制することができる。
【0009】
本発明においては、前記電源ユニットのトランスに係る同一の2次側巻線から出力された電圧が、前記搬送機構及び前記記録ヘッドに供給されていることが好ましい。これによると、電源ユニットの小型化を図ることができる。
【0010】
また、本発明においては、前記記録ヘッドが、液体を吐出する吐出口を有しており、前記搬送機構が駆動されていないときの前記駆動指令が、前記吐出口から液体を吐出させるフラッシング指令、又は、前記吐出口から液体を吐出させることなく前記吐出口に形成されたメニスカスを振動させる不吐出フラッシング指令であることが好ましい。これによると、搬送機構が停止している場合であっても、記録ヘッドのメンテナンスを適切に行うことができる。
【0011】
さらに、本発明において、前記駆動信号生成手段は、前記駆動信号の波形に含まれるパルスの数、パルス幅、パルス周期及びパルスの発生タイミングの少なくともいずれかを調整することによって、前記駆動指令に係る動作時間及び動作効率の少なくともいずれかを変化させることが好ましい。これによると、前記駆動指令に係る動作時間及び動作効率を変化させるための回路構成を簡略化することができる。
【0012】
加えて、本発明において、前記電源ユニットは、前記搬送機構が駆動されているとき及び駆動されていないときのいずれにおいても、前記記録ヘッドに供給される電圧が前記記録ヘッドの制御回路の耐圧電圧以下となるように調整されていることが好ましい。これによると、記録ヘッドの制御回路が破損するのを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、搬送機構の駆動の有無によって記録ヘッドに供給される電圧が変化しても、電圧値記憶手段の記憶内容に基づいて、動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが調整された駆動信号が生成されるため、記録ヘッドに供給される電圧を安定させるための回路を設けることなく記録ヘッドを機能させることができる。これにより、記録装置の大型化及びコストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態によるインクジェットプリンタの概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるインクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図1に示すコントローラの機能ブロック図である。
【図6】図5に示す電圧値記憶部の機能を説明するための図である。
【図7】図5に示す駆動信号生成部の機能を説明するための図である。
【図8】図5に示す電圧調整部の構成を示す機能ブロック図である。
【図9】図5に示す電圧調整部の機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、搬送機構21と、搬送機構21によって搬送された用紙Pに、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインク滴をそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド10と、コントローラ1pとを有している。搬送機構21において、ベルトローラ6、7と共に搬送ベルト8が回転することにより、搬送ベルト8上に載置された用紙Pが、4つのヘッド10とプラテン9との間を通過するように搬送される。このとき、各ヘッド10から用紙Pにインク滴が吐出されることで、用紙P上に所望の画像が印刷される。
【0017】
次に、図2〜図4を参照し、ヘッド10の構成について説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0018】
図2〜図4に示すように、ヘッド10は、上下に積層されたリザーバユニット11及び流路ユニット12、流路ユニット12の上面12xに固定された8つのアクチュエータユニット17、各アクチュエータユニット17に接合されたFPC等を有する。リザーバユニット11には、カートリッジ(図示せず)から供給されたインクを一時的に貯溜するリザーバを含むインク流路が形成されている。流路ユニット12には、上面12xの開口12yから下面(吐出面10a)の各吐出口14aに至るインク流路が形成されている。アクチュエータユニット17は、吐出口14a毎の圧電型アクチュエータを有する。
【0019】
リザーバユニット11の下面には凹凸が形成されている。凸部は、流路ユニット12の上面12xにおけるアクチュエータユニット17が配置されていない領域(図2に示す開口12yを含む二点鎖線で囲まれた領域)に接着されている。凸部の先端面は、リザーバに接続し且つ流路ユニット12の各開口12yに対向する開口を有する。これにより、上記各開口を介して、リザーバ及び個別インク流路14が連通している。凹部は、流路ユニット12の上面12x、及びアクチュエータユニット17の表面と、若干の隙間を介して対向している。
【0020】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12iを互いに積層し接着することにより形成された積層体である。流路ユニット12のインク流路は、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別インク流路14を含む。個別インク流路14は、図4に示すように、吐出口14a毎に形成されており、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15を含む。上面12xにおける各アクチュエータユニット17の接着領域には、圧力室16を露出させる略菱形形状の開口がマトリクス状に配置されている。下面(吐出面10a)における各アクチュエータユニット17の接着領域に対向する領域には、圧力室16と同様の配置パターンで、吐出口14aがマトリクス状に配置されている。
【0021】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、流路ユニット12の上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、当該アクチュエータユニット17の接着領域内に形成された多数の圧力室16の開口を覆っている。
【0022】
アクチュエータユニット17は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シートから構成されているピエゾ式アクチュエータである。最上層の圧電シートが、表面に形成された複数の個別電極とシート全面に形成された共通電極とに挟持されている。各個別電極は、圧力室16と対向している。個別電極を共通電極と異なる電位にして圧電シートに分極方向の電界が印加されると、圧電シートにおける電界印加部分が圧電効果により歪む駆動活性部として働く。これに対応して、個別電極と圧力室16とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働く。つまり、アクチュエータユニット17は、圧力室16の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれた圧電素子である。共通電極は、すべての圧力室16に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、後述するように、個別電極には駆動信号が供給される構成となっている。
【0023】
ここで、アクチュエータユニット17の駆動方法について述べる。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、駆動活性部は分極方向に直交する方向(平面方向)に縮む。ここで、アクチュエータユニット17は、個別電極と共通電極とに挟持された圧電シートを駆動活性部が含まれる層とし、下側2枚の圧電シートを非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。電界印加部分(駆動活性部)が平面方向に縮んで非活性層との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電シート全体が圧力室16側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。これにより圧力室16内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口14aからインク滴が吐出される。
【0024】
本実施形態においては、予め個別電極に所定の電位を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極をグランド電位にした後、所定のタイミングで再び個別電極に所定の電位を付与するような駆動信号が供給される(図7参照)。この場合、個別電極がグランド電位となるタイミングで圧電シートが元の状態に戻り、圧力室16の容積は初期状態(予め電圧が印加された状態)と比較して増加し、副マニホールド流路13aから個別インク流路14へとインクが吸い込まれる。その後、再び個別電極に所定の電位が付与されたタイミングで圧電シートにおいて活性領域と対向する部分が圧力室16側に凸となるように変形し、圧力室16の容積低下によりインクの圧力が上昇し、吐出口14aからインク滴が吐出される。
【0025】
次に、コントローラ1pについて説明する。コントローラ1pは、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶する不揮発性メモリと、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。コントローラ1pを構成する各機能部は、これらハードウェアと不揮発性メモリ内のプログラムとが協働して構築されている。このプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、メモリカード等の各種記録媒体に保存されており、これらの記録媒体から不揮発メモリにインストールされる。なお、記録媒体に記録された制御プログラムは、CPUで直接実行可能なものであってもよいし、不揮発メモリにインストールすることによって初めて実行可能となるものでもよい。また、暗号化されていたり、圧縮されていたりしてもよい。図5に示すように、コントローラ1pは、電源ユニット41と、駆動指令受信部42と、ヘッド制御部43と、搬送機構制御部44とを有している。
【0026】
電源ユニット41は、電圧V1及び電圧V2の電力をそれぞれ出力するマルチ出力の電源装置である。電源ユニット41は、トランスに係る同一の2次側巻線から電圧V1及び電圧V2の電力を出力している。電圧V1の電力は搬送機構21に、電圧V2の電力はコントローラ1pの電圧調整部55を経由して(図5、図8参照)ヘッド10にそれぞれ供給される。ここで、搬送機構21の消費電力は、ヘッド10の消費電力よりも遙かに大きいため、同一の2次側巻線から電圧V1及び電圧V2の電力を出力している電源ユニット41においては、搬送機構21が駆動されているときにヘッド10に供給される電圧(以下、第1電圧)が、搬送機構21が駆動されていないときにヘッド10に供給される電圧(以下、第2電圧)より高くなる。したがって、搬送機構21とヘッド10とが同時に駆動される印刷時において、ヘッド10に供給される電圧V2が最適値になるように電源ユニット41が調整されている。また、搬送機構21が駆動されているとき及び駆動されていないときのいずれにおいても、電圧V2がヘッド10の制御回路の耐圧電圧以下になるように、電源ユニット41が調整されている。
【0027】
駆動指令受信部42は、図示しないクライアント端末からの駆動指令を受信する。駆動指令には、搬送機構21に搬送された用紙Pに対して吐出口14aからインク滴を吐出させる印刷指令と、搬送機構21を停止させた状態で、吐出口14aからインク滴を吐出させるフラッシングや吐出口14aに形成されたインクのメニスカスを振動させる不吐出フラッシングを含むメンテナンス指令とを含む。なお、印刷指令からメンテナンス指令を生成してもよい。
【0028】
ヘッド制御部43は、駆動指令受信部42が受信した駆動指令に基づいて、ヘッド10を制御する。搬送機構制御部44は、駆動指令受信部42が受信した駆動指令に基づいて、搬送機構21を制御する。
【0029】
ヘッド制御部43について詳細に説明する。ヘッド制御部43は、駆動指令記憶部51と、電圧値記憶部52と、搬送機構駆動判断部53と、駆動信号生成部54と、電圧調整部55とを有している。駆動指令記憶部51は、駆動指令受信部42が受信した駆動指令を記憶する。
【0030】
電圧値記憶部52は、印刷時(搬送機構21が駆動されているとき)、メンテナンス時(搬送機構21が駆動されていないとき)のそれぞれについて、電源ユニット41が搬送機構21に供給する電圧V1及びヘッド10に供給する電圧V2の電圧値を記憶している。つまり、電圧値記憶部52は、ヘッド10に供給する第1電圧及び第2電圧の電圧値を記憶している。第1電圧及び第2電圧の電圧値は、予め計測された実測値である。上述したように、搬送機構21の駆動の有無によって、ヘッド10に供給される電圧V2が変動する。本実施形態においては、図6に示すように、搬送機構21及びヘッド10が駆動される印刷時においては、電圧V1が24V、電圧V2が35V(第1電圧)となっており、搬送機構21が駆動されずヘッド10のみが駆動されるメンテナンス時においては、電圧V1がOFF、電圧V2が33V(第2電圧)となっている。
【0031】
図5に戻って、搬送機構駆動判断部53は、搬送機構21が駆動されているか否かを判断する。
【0032】
駆動信号生成部54は、駆動指令受信部42に記憶された駆動指令に基づいてヘッド10を駆動させる駆動信号を生成する。生成された駆動信号は、電圧調整部55を介してヘッド10に供給される。駆動信号生成部54は、駆動指令により吐出口14aからインク滴を吐出させるとき、図7(a)に示す吐出波形を含む駆動信号を生成し、駆動指令により吐出口14aのメニスカスを振動させるとき、図7(b)に示す振動波形を含む駆動信号を生成する。なお、吐出波形は、1印刷周期においてHigh電位から時間t0の間グランド電位V0となるパルスを含む。このパルス幅は、圧力波が副マニホールド流路13aの出口から吐出口14aに至る距離AL(Acoustic Length)長を伝播する時間と等しい。なお、図7(a)の波形は、小滴のインク滴を吐出するときの波形であり、1つのパルスを有している。中滴のインク滴を吐出するときの波形は、2つのパルスを連続して並べて構成し、大滴のインク滴を吐出するときの波形は、3つのパルスを連続して並べて構成する。また、振動波形は、High電位から時間t1の間グランド電位V0となるパルスが所定の周期で時間t2の間繰り返される。このパルス幅は、圧力波がAL長を伝播する時間の1/3以下であることが好ましい。
【0033】
さらに、駆動信号生成部54は、搬送機構21が駆動されていないと搬送機構駆動判断部53が判断した場合、第1電圧の電圧値が第2電圧の電圧値より大きければ、駆動指令に係る動作時間が初期値(搬送機構21が駆動されているときの動作時間)より増加するように駆動信号を生成し、第1電圧の電圧値が第2電圧の電圧値より小さければ、駆動指令に係る動作時間が初期値より減少するように駆動信号を生成する。
【0034】
本実施形態においては、搬送機構21が駆動されていないメンテナンス時の電圧V2の電圧値(第2電圧33V)が、搬送機構21が駆動されている印刷時の電圧V2の電圧値(第1電圧35V)未満となっているため(図6参照)、メンテナンス時の駆動指令に係る動作時間が初期値より増加するように駆動信号を生成する。具体的には、フラッシングを行うときの吐出波形のパルス数が増加するように、不吐出フラッシングを行うときの振動波形の時間t2が長くなるように、すなわち、振動波形に係るパルス数が増加するように駆動信号を生成する。逆に、搬送機構21が駆動されていないメンテナンス時の電圧V2の電圧値が、搬送機構21が駆動されている印刷時の電圧V2の電圧値を超えているときは、メンテナンス時の駆動指令に係る動作時間が初期値より減少するように駆動信号を生成する。具体的には、フラッシングを行うときの吐出波形のパルス数が減少するように、不吐出フラッシングを行うときの振動波形の時間t2が短くなるように、すなわち、振動波形に係るパルス数が減少するように駆動信号を生成する。なお、時間t2は同じとして時間t1とフラッシングを行うときの吐出波形のパルス数を変更してもよい。
【0035】
図5に戻って、電圧調整部55は、電源ユニット41からヘッド10に出力される電圧V2を、ヘッド10のアクチュエータユニット17を駆動するのに最適な電圧に調整する。図8に示すように、各アクチュエータユニット17は、流路ユニット12に対する固定位置や製造精度のばらつきにより動作特性が互いに異なるため、電圧の調整は、各ヘッド10のアクチュエータユニット17(unit1〜unit8)毎に行われる。電圧調整部55は、各ヘッド10についてアクチュエータユニット17(unit1〜unit8)に対応する8つの電圧調整回路56と電圧指令部57とを有している。
【0036】
電圧指令部57は、搬送機構21が駆動されていると搬送機構駆動判断部53が判断した場合、及び、搬送機構21が駆動されていないと搬送機構駆動判断部53が判断し且つメンテナンス時において不吐出フラッシングを行う場合は、各unit1〜unit8のそれぞれについて、各unit1〜unit8が均一に駆動されるように予め決定された電圧を指令電圧に決定する。また、電圧指令部57は、搬送機構21が駆動されていないと搬送機構駆動判断部53が判断した場合でメンテナンス時においてフラッシングを行う場合は、unit1〜unit8について電圧調整回路56による電圧が調整可能な範囲の最大電圧の最小値を、全てのunit1〜unit8に対する指令電圧に決定する。本実施形態においては、図9に示すように、各unit1〜unit8が均一に駆動されるように予め決定された電圧が21V〜28Vとなっている。電圧指令部57は、搬送機構21が駆動されていないと搬送機構駆動判断部53が判断し且つメンテナンス時においてフラッシングを行う場合は、搬送機構21が駆動されていないことによって、電源ユニット41からの出力電圧が35Vから33Vに低下したときに、各電圧調整回路56による電圧が調整可能な範囲の最大電圧の最小値である26Vを、全てのunit1〜unit8に対する指令電圧に決定する。
【0037】
電圧調整回路56は、電源ユニット41から出力電圧を電圧指令部57が決定した指令電圧に調整すると共に、駆動信号生成部54が生成した駆動信号を指令電圧に増幅して対応するアクチュエータユニット17に供給する。
【0038】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1によると、搬送機構21の駆動の有無によってヘッド10に供給される電圧V2が変化しても、電圧値記憶部52の記憶内容に基づいて、動作時間が調整された駆動信号が生成されるため、ヘッド10に供給される電圧を安定させるための回路を設けることなくヘッド10を機能させることができる。これにより、プリンタ1の大型化及びコストの増加を抑制することができる。
【0039】
また、電源ユニット41のトランスに係る同一の2次側巻線から出力された電圧が、搬送機構21及びヘッド10に供給されているため、電源ユニット41の小型化を図ることができる。
【0040】
加えて、搬送機構21が駆動されていないときの駆動指令が、フラッシング、又は、不吐出フラッシングに係る指令であるため、搬送機構21が停止している場合であっても、ヘッド10のメンテナンスを適切に行うことができる。
【0041】
さらに、駆動信号生成部54は、駆動信号の波形に含まれるパルスの数を調整することによって、駆動指令に係る動作時間を変化させるため、駆動指令に係る動作時間を変化させるための回路構成を簡略化することができる。
【0042】
加えて、電源ユニット41は、搬送機構21が駆動されているとき及び駆動されていないときのいずれにおいても、ヘッド10に供給される電圧がヘッド10の制御回路の耐圧電圧以下となるように調整されているため、ヘッド10の制御回路が破損するのを確実に防止することができる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態では、駆動信号の波形に含まれるパルスの数を調整することによって、駆動指令に係る動作時間を変化させる構成であるが、パルス幅及びパルスの発生タイミングなどを選択又は組み合わせることによって、駆動指令に係る動作効率を変化させる構成であってもよい。具体例として、(a)パルスのhighの時間長により吐出・非吐出の強弱を調整する、(b)パルスの間隔長を調整してタイミングを変更し、吐出・非吐出の強弱を調整する、(c)パルス数、パルス幅、パルスタイミングの組み合わせをソフト処理することによって吐出・非吐出の強弱を調整する、といった手法を採用することができる。
【0044】
また、上述の実施形態では、トランスに係る同一の2次側巻線から出力された電圧が、搬送機構21及びヘッド10に供給される電源ユニット41に本発明を適用した例について説明したが、電源ユニットから一方の出力の程度によって、他の出力が影響を受ける他の構成においても本発明は適用可能である。また、図5において、V1が搬送機構21に印加され、V2が電圧調節部55を介してインクジェットヘッド10に印加されているが、V2が搬送機構21に印加され、V1が電圧調節部55を介してインクジェットヘッド10に印加される構成としてもよい。その場合はV1とV2の大小関係が上述の実施形態と逆となる。
【0045】
加えて、上述の実施形態においては、搬送機構21が駆動されていないときの駆動指令が、フラッシング、又は、不吐出フラッシングに係る指令となっているが、搬送機構21が駆動されていないときの駆動指令の種類は問わない。例えば、搬送機構21が駆動されていない状態で画像を形成するためのインクを吐出させる指令であってもよい。
【0046】
さらに、上述の実施形態においては、駆動信号生成部54は、駆動信号の波形に含まれるパルスの数を調整することによって、駆動指令に係る動作時間を変化させる構成であるが、パルスの数、パルス幅及びパルスの発生タイミングの少なくともいずれかを調整することによって、駆動指令に係る動作時間を変化させる構成であればよい。
【0047】
本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドを有していてもよい。また、レーザープリンターにも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、画像記録を行う他の装置、例えば、ファクシミリやコピー機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェットプリンタ
1p コントローラ
10 インクジェットヘッド
17 アクチュエータユニット
21 搬送機構
41 電源ユニット
42 駆動指令受信部
43 ヘッド制御部
44 搬送機構制御部
51 駆動指令記憶部
52 電圧値記憶部
53 搬送機構駆動判断部
54 駆動信号生成部
55 電圧調整部
56 電圧調整回路
57 電圧指令部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構に搬送された記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、
前記搬送機構及び前記記録ヘッドに電力を供給すると共に、前記搬送機構及び前記記録ヘッドが同時に駆動されたときに前記記録ヘッドに所定の電圧が供給されるように調整された電源ユニットと、
前記記録ヘッドを制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、
前記搬送機構が駆動されているときに前記電源ユニットが前記記録ヘッドに供給する第1電圧の電圧値と、前記搬送機構が駆動されていないときに前記電源ユニットが前記記録ヘッドに供給する第2電圧の電圧値と、を記憶する電圧値記憶手段と、
前記搬送機構が駆動されているか否かを判断する判断手段と、
前記記録ヘッドに対する駆動指令を記憶する駆動指令記憶手段と、
前記駆動指令から前記記録ヘッドを駆動させる駆動信号を生成する駆動信号生成手段とを有しており、
前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きい場合、前記駆動信号生成手段は、前記搬送機構が駆動されていないと前記判断手段が判断したときは、前記搬送機構が駆動されている場合に比べて前記駆動指令にかかる動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが増加するように、前記駆動信号を生成し、
前記第1電圧が前記第2電圧よりも小さい場合、前記駆動信号生成手段は、前記搬送機構が駆動されていないと前記判断手段が判断したときは、前記搬送機構が駆動されている場合に比べて前記駆動指令にかかる動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが減少するように、前記駆動信号を生成することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記電源ユニットのトランスに係る同一の2次側巻線から出力された電圧が、前記搬送機構及び前記記録ヘッドに供給されていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドが、液体を吐出する吐出口を有しており、
前記搬送機構が駆動されていないときの前記駆動指令が、前記吐出口から液体を吐出させるフラッシング指令、又は、前記吐出口から液体を吐出させることなく前記吐出口に形成されたメニスカスを振動させる不吐出フラッシング指令であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記駆動信号生成手段は、前記駆動信号の波形に含まれるパルスの数、パルス幅、パルス周期及びパルスの発生タイミングの少なくともいずれかを調整することによって、前記駆動指令に係る動作時間及び動作効率の少なくともいずれかを変化させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記電源ユニットは、前記搬送機構が駆動されているとき及び駆動されていないときのいずれにおいても、前記記録ヘッドに供給される電圧が前記記録ヘッドの制御回路の耐圧電圧以下となるように調整されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
記録媒体を搬送する搬送機構、前記搬送機構に搬送された記録媒体に画像を記録する記録ヘッド、前記搬送機構及び前記記録ヘッドに電力を供給すると共に、前記搬送機構及び前記記録ヘッドが同時に駆動されたときに前記記録ヘッドに所定の電圧が供給されるように調整された電源ユニット、及び、前記記録ヘッドを制御する制御手段を備えた画像記録装置に係る前記制御手段としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、
前記搬送機構が駆動されているときに前記電源ユニットが前記記録ヘッドに供給する第1電圧の電圧値と、前記搬送機構が駆動されていないときに前記電源ユニットが前記記録ヘッドに供給する第2電圧の電圧値と、を記憶する電圧値記憶手段と、
前記搬送機構が駆動されているか否かを判断する判断手段と、
前記記録ヘッドに対する駆動指令を記憶する駆動指令記憶手段と、
前記駆動指令から前記記録ヘッドを駆動させる駆動信号を生成する駆動信号生成手段とを有しており、
前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きい場合、前記駆動信号生成手段は、前記搬送機構が駆動されていないと前記判断手段が判断したときは、前記搬送機構が駆動されている場合に比べて前記駆動指令にかかる動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが増加するように、前記駆動信号を生成し、
前記第1電圧が前記第2電圧よりも小さい場合、前記駆動信号生成手段は、前記搬送機構が駆動されていないと前記判断手段が判断したときは、前記搬送機構が駆動されている場合に比べて前記駆動指令にかかる動作時間及び動作効率の少なくともいずれかが減少するように、前記駆動信号を生成することを特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−187855(P2012−187855A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54208(P2011−54208)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】