説明

画像記録装置

【課題】 印字不良の発生を避けつつ、電源の電力容量を削減する。
【解決手段】 一色の記録を複数の記録ヘッドを用いて行う記録装置において、記録媒体上の異なる位置で各色の記録ヘッドが同時に駆動を行うときに、複数本の記録ヘッドに対応する画像データを、同時駆動負荷が少なくなるように振り分けを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等の画像記録装置に関するもので、記録データの処理による消費電力抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは液状のインクを記録ヘッドから吐出して記録媒体上に画像を記録する。
【0003】
画像記録速度を上げるために、複数ラスタのデータを同時に吐出することで、記録媒体上を記録ヘッドが走査する回数を少なくする。例えば、0.5インチの長さの記録ヘッドは、1インチの長さの記録ヘッドに対して、2倍の回数を走査しないと同じ面積の領域の印字が行えない。
【0004】
このときに、記録ヘッドのインク吐出ノズルの解像度が600dpiの場合、0.5インチの長さの記録ヘッドは、1ヘッドあたり300個のノズルを持ち、1インチの場合は600個のノズルを持つ。このノズルを全て使用して印字を行う場合、1ノズルあたりの電流値を同じとすると、1インチヘッドは0.5インチヘッドの倍の電力を消費する。
【0005】
このときに全てのノズルを使用したときの電力を供給できる電源を搭載していても、実際の画像の印字において、一回の走査で使われるノズルの数は一部分に限られる。記録ヘッドのノズルが増えていくと、全てのノズルを使用した場合の最大電力と、実際に使用するノズルの平均電力の差が開いていくことになる。実際に一般画像の平均濃度が20%程度の場合、電源の出力容量は全てのノズルを使用した場合の20%で必要十分となる。
【0006】
しかし、低容量の電源を使用する場合に、突発的に発生する高濃度の印字に対して、何かしらの印字制限を行わないと、その部分で印字不良が発生してしまう。
【0007】
そこで従来から、記録ヘッドの走査幅の単位面積あたりのデータ数を調べ、ある値以上のデータが存在するときはその部分を高濃度と判定して、印字制限を行う方法がとられている。
【0008】
画像データ数のカウント値からヘッドの駆動負荷を判別して記録モードを切り替える機能を施した物がある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、一色あたり複数の記録ヘッドを搭載するプリンタは、一箇所の画像が複数のヘッドに分散されるため、突発的な高濃度の印字も発生しにくい。複数のヘッドにデータを分配する例は以下のような物がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−96615号公報(第14頁、図2)
【特許文献2】特開平9−70990号公報(第10頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のラスタ・カラム変換時のデータカウントにより、面積が大きい高濃度部分は印字制限が行われるが、カウントする単位面積が大きい場合に、局所的な高濃度部分を発見しにくい点がある。
【0011】
最も悪い条件として、データカウントの単位面積より小さく、かつ1色あたりの全ノズルを使用した画像が、ノズルピッチの間隔で各色に存在するときに、印字制限では回避不能な最大付加が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、各色の印字データを作成したあとに、一色あたり複数本の印字ヘッドを搭載する色の画像データに対して、複数ヘッドのそれぞれに対して各カラムで同時駆動を行うデータ量を算出し、同時駆動データの少ないほうの印字ヘッドに画像データの再分配を行う。
【0013】
(作用)
各色の画像データを、実際に同時駆動が行われる位置にずらして合成したデータを元に、複数ヘッドの画像データの再分配を行うことで、データカウントの単位面積より小さく、かつ一色あたりの全ノズルを使用した画像が、ノズルピッチの間隔で各色に存在するという特異な条件を緩和することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、インクジェットプリンタ等の画像記録装置について、特定の画像データにおいて発生する最大負荷の条件を、一色あたり複数の記録ヘッドを搭載する記録装置において、他の色と同時に駆動されるデータの条件から、複数の記録ヘッドへの分配量を変えることで、ヘッドユニット全体で同時に駆動する時に必要とする電流値を低下させることができる。
【0015】
最大負荷の条件が、画像データが記録ヘッドのピッチに完全に一致したときという特異な条件であるため、一色あたり複数の記録ヘッドを搭載する場合には、最大負荷の条件に合致する画像の発生率はさらに低くなる。よって、従来の方法により画像の最大負荷条件を判別して印字制限をかける方法より、比較的簡単な回路で最大出力を押さえ、電源の小容量化を容易なものとしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施例)
図1において本発明に係る画像記録装置(プリンタ)は、ラスタ画像データを転送する画像データ転送回路101と、ラスタ画像データを一時的に格納するラスタ画像バッファ102と、ラスタ画像データを読み出して、カラムデータに変換するラスタ・カラム変換回路103と、ラスタ・カラム変換回路内で一色あたりのデータを複数ノズルに均等割りするためのマスク104と、変換したカラムデータを一時的に格納するカラムデータ画像バッファ105と、カラムデータを読み出して、同時駆動データを算出して、複数ヘッドへ画像データを再分配するデータ再分配回路106と、データの再分配を行うためのマスク107と、カラムデータを読み出して印字ヘッド吐出データに変換するヘッド吐出データ変換回路108と、印字データを受けて実際に印字を行う印字ヘッド109から構成されている。
【0017】
図2において、ラスタ・カラム変換されたデータ206、207、208、210、211は、カラム画像データバッファ105に格納されている。記録ヘッド201の画像データを206、同様に202の画像データを207、203の画像データを208とし、同色のヘッドである204と205は、204の画像データ210と、205の画像データ211に対応する。画像データ210と211は、元画像データ209から均等割りをするためのマスク104を用いて分配されている。画像データ206、207、208、210は各記録ヘッドの相対的な位置ずれを考慮して、各色が同時駆動される位置で画像データの論理積を取り、その結果が212である。また、画像データ206、207、208、211の画像データを同様に各色が同時駆動される位置で論理積を取った結果が213である。この各色の論理積データ212と213を用いて、画像データ209から分配されたデータ210と211のデータの再分配を行う。
【0018】
図3において、画像データ206、207、208、210の図の位置のカラムデータを取り出して、回路301で論理積を取ったカラムデータが303である。また同様に、画像データ206、207、208、211の図の位置のカラムデータを取り出して回路302で論理積を取ったカラムデータが304である。論理積を取ったカラムデータは、マスク合成回路305、306によってそれぞれ均等に分配される。分配されたデータの片方は反転回路307、308によって、データが反転される。画像データ210、211のそれぞれの元カラムデータ309、310に対して、自らのカラムデータを含む論理積カラムデータの分配後のデータを削除(反転データの論理積)し、一方のカラムデータを含む論理積カラムデータの分配後のデータを追加(論理和)する回路が、313、314である。また、元カラムデータの各ビットの合計値を、カラムデータのドットカウント値として311、312に格納する。元カラムデータから、論理積カラムデータの論理積と論理和と取る回路313、314を通過した結果がそれぞれ315、316であり、各ビットの合計値をドットカウント値として格納した結果が317、318である。元カラムデータのドットカウント値311、312と、再分配後のカラムデータのドットカウント値317、318を比較して、後者の値が少ない場合は、再分配後のカラムデータを印字を行う画像データとして採用し、元カラムデータのドットカウント値が少ない場合は、再分配後のカラムデータの置き換えは行わずに、元カラムデータをそのまま利用する。
【0019】
再分配が行われた後のデータを用いて、実際に印字が行われる様子を図4において説明する。ヘッドユニット401に、ブラック用の記録ヘッド402と403、シアン用の記録ヘッド404、マゼンダ用の記録ヘッド405、イエロー用の記録ヘッド406が図のように配置されている。画像データは記録媒体上にブラックが407、シアンが408、マゼンダが409、イエローが410の位置に印字されようとして、この画像位置は記録ヘッド403、404、405、406の位置と一致している。ヘッドユニットが記録媒体に対して図4−1の位置は、これからブラック用の記録ヘッド402がブラックのデータ407の印字を開始し始める地点であることを示す。図4−2において、記録ヘッド402は411の画像の印字を終了する。このとき、ブラックの画像データは2本の記録ヘッドに対して均等に分配されているので、当初は50%の濃度で印字が行われるところ、記録ヘッド402と他の記録ヘッドの印字が同時に行われることがないために、再分配の回路によってブラックの画像データが多く配分されていることがわかる。このときの時間対電流のグラフは412のようになることを示す。
【0020】
図4−3の位置は、これからブラック用の記録ヘッド403と、シアン用の記録ヘッド404と、マゼンダ用の記録ヘッド405と、イエロー用の記録ヘッド406が、各色のデータ411、408、409、410の印字を開始し始める地点であることを示す。図4−4において、記録ヘッド403、404、405、406は414、415、416、417の画像の印字を終了する。
【0021】
このとき、ブラックの画像データ414は先に印字された411の残りの濃度分の画像であり、同時に他の記録ヘッド404、405、406の印字と重なるために、均等に分配された画像データより、再分配後の画像データは少なく配分されている。このときの時間対電流のグラフは419のようになる。ブラックデータが均等に分配された状態で印字が行われるときのグラフは418となり、再分配によって電流量が低下していることがわかる。
【0022】
(第2の実施例)
図5において、画像データの再分配の方法について別の形態を説明する。画像データ206、207、208、210の図の位置のカラムデータを取り出して、回路501で論理積を取ったカラムデータが503である。また同様に、画像データ206、207、208、211の図の位置のカラムデータを取り出して回路502で論理積を取ったカラムデータが504である。論理積カラムデータ503、504の各ビットの和を取ったドットカウント値をそれぞれ505、506として格納する。このドットカウント値を元に分配量を決定し、分配マスク群509から必要なマスク数を取り出して507、508のマスク合成回路に適応させるマスクパターンを決定する。
【0023】
図6において画像データの分配に使用するマスクの例を示す。100%濃度のパターンから10等分に濃度を均等に分けたマスク群が601である。そのうちの2つのマスクを合成したマスク602は20%濃度のマスクとなる。この例では0〜100%まで10段階に分けたマスクから分配量を決めることができる。
【0024】
再分配が行われた後のデータを用いて、実際に印字が行われる様子を図7において説明する。図4と同様に、ヘッドユニット401に、ブラック用の記録ヘッド402と403、シアン用の記録ヘッド404、マゼンダ用の記録ヘッド405、イエロー用の記録ヘッド406が図のように配置されている。画像データは記録媒体上にブラックが707、シアンが408、マゼンダが409、イエローが410の位置に印字されようとして、この画像位置は記録ヘッド403、404、405、406の位置と一致している。ヘッドユニットが記録媒体に対して図7−1の位置は、これからブラック用の記録ヘッド402がブラックのデータ707の印字を開始し始める地点であることを示す。このときに他の色の記録ヘッド403、404、405、406は全く印字が行われることが無いために、記録ヘッド402と403に均等に配分されているブラック用の画像データは、402の記録ヘッドのデータが100%になるように再分配される。図4−2において、記録ヘッド402は711の画像の印字を終了する。このときの時間対電流のグラフは713のようになり、第一の実施例で示したときの電流値412より増加する。
【0025】
図4−3の位置は、これからブラック用の記録ヘッド403と、シアン用の記録ヘッド404と、マゼンダ用の記録ヘッド405と、イエロー用の記録ヘッド406が、各色のデータ711、708、709、710の印字を開始し始める地点であることを示す。図4−4において、記録ヘッド403、404、405、406は711、715、716、717の画像の印字を終了する。このとき、ブラックの画像データ711は先に印字されたデータがすでに100%の濃度を印字しているため、このタイミングでは印字が行われることはない。このときの時間対電流のグラフは720のようになり、ドットカウント値からマスク量を調節して再分配を行った場合には、第一の実施例で示した電流値419よりさらに低減していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施する、画像記録装置のブロック図
【図2】図1のデータ再分配回路の処理の概略を示す説明図
【図3】図2の処理のデータ再分配回路の第一の実施例に基づいた具体的構成を示すブロック図
【図4】図2の回路を用いてデータの再分配を行った後の記録ヘッドの印字の様子を示す説明図
【図5】図2の処理のデータ再分配回路の第二の実施例に基づいた具体的構成を示すブロック図
【図6】図5で使用する再分配のためのマスク群を示す説明図
【図7】図5の回路を用いてデータの再分配を行った後の記録ヘッドの印字の様子を示す説明図
【符号の説明】
【0027】
101 画像データ転送回路
102 ラスタ画像バッファ
103 ラスタ・カラム変換回路
104 複数記録ヘッド搭載色用データ分配マスク
105 カラムデータ画像バッファ
106 データ再分配回路
107 データ再分配用マスク
108 ヘッド吐出データ変換回路
109 印字ヘッド
201 イエロー用記録ヘッド
202 マゼンダ用記録ヘッド
203 シアン用記録ヘッド
204、205 ブラック用記録ヘッド
206 イエロー用カラムデータ
207 マゼンダ用カラムデータ
208 シアン用カラムデータ
209 ブラック用カラムデータ
210、211 均等分配後のブラック用カラムデータ
212、213 全色の同時吐出データ
301、302、501、502 カラムデータ論理積ゲート
303、304、503、504 論理積カラムデータ
305、306、507、508 マスク合成回路
307、308、510、511 反転回路
309、310、512、513 オリジナルカラムデータ
311、312 オリジナルカラムデータドットカウント値
313、314、514、515 カラムデータ再分配回路
315、316、516、517 再分配カラムデータ
317、318 再分配カラムデータドットカウント値
401 ヘッドユニット
402、403 ブラック用記録ヘッド
404 シアン用記録ヘッド
405 マゼンダ用記録ヘッド
406 イエロー用記録ヘッド
407、707 ブラックデータ記録位置
408、708 シアンデータ記録位置
409、709 マゼンダデータ記録位置
410、710 イエローデータ記録位置
411、414、711 ブラック印字データ
415、715 シアン印字データ
416、716 マゼンダ印字データ
417、717 イエロー印字データ
412、418、419、713、720 ヘッド電流値
505、506 論理積カラムデータドットカウント値
509 再分配用マスクデータ格納回路
601 再分配用マスクデータ
602 再分配用マスク合成データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一色あたり複数の記録ヘッドを有する記録装置において、記録媒体上の異なる位置で各色の記録ヘッドが同時に駆動を行うときに、複数本の記録ヘッドをもつ色の画像データを、同時駆動負荷が少なくなるように、複数の記録ヘッドへのデータの振り分けを再分配する手段を有することを特徴とする、画像記録装置。
【請求項2】
請求項1の画像記録装置は、一色あたり複数の記録ヘッドを有する色の画像データを、振り分けマスクを用いて複数ノズルに均等に分配した後に、他の色との同時駆動負荷条件を元に、負荷が分散されるように、振り分けマスクを用いて、画像データを再分配することを特徴とする、画像記録装置。
【請求項3】
請求項1の画像記録装置は、各色が同時駆動する位置にノズル間隔分ずらしたカラムデータの論理積をとり、データが存在する位置が同時駆動が行われるものと判断することを特徴とする、画像記録装置。
【請求項4】
請求項1の画像記録装置は、自らのノズルのカラムデータを含む同時駆動データを、マスクを用いて間引いた状態で自らの元カラムデータから削除したあとに、同色の他方のノズルのカラムデータを含む同時駆動データを、マスクを用いて間引いた状態で、自らのカラムデータに付加することを特徴とする、画像記録装置。
【請求項5】
請求項1の画像記録装置は、再分配したカラムデータのビット毎の和を取り、そのデータ数の合計が、再分配する前と比較して増えている場合は、再分配を行わずに、元カラムデータを印字データとして利用することを特徴とする、画像記録装置。
【請求項6】
請求項1の画像記録装置は、同時駆動カラムデータのビット毎の和を取り、そのデータ数に応じて、同色の他方のノズルデータに再分配を行うマスクパターンの濃度割合を増減させることを特徴とする、画像記録装置。
【請求項7】
請求項1の画像記録装置は、固定濃度のマスクパターンを複数枚搭載し、複数のマスクパターンの論理和を取って一枚のマスクパターンを作成することで、異なる濃度割合のマスクパターンを作成することを特徴とする、画像記録装置。
【請求項8】
請求項1の画像記録装置は、固定濃度の複数枚のマスクパターンの全ての論理和を取った結果は100%濃度のパターンになるように、マスクパターンを格納していることを特徴とする、画像記録装置。
【請求項9】
請求項1の画像記録装置は、液状のインクを画像記録ヘッドから記録媒体に対して吐出して記録を行うインクジェットプリンタであることを特徴とする、画像記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−218745(P2006−218745A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34417(P2005−34417)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】