説明

画像記録装置

【課題】スキャナ読取部と手差しトレイとの干渉を回避しつつ、手差しトレイへの用紙のセットを容易に行う。
【解決手段】プリンタ部11と、プリンタ部11の上方に設けたスキャナ読取部12とを有する複合機1であって、スキャナ読取部12は、その後端部と記録ケーシング14の後端部とを連結する第1連結部P1により回動可能に設けられており、プリンタ部11は、シートを下方から上方へUターンさせて搬送する湾曲路65Aと、複合機1の背面から65AのUターン上部分へ通ずる搬送経路65Bと、複合機1の背面において搬送経路65Bが開口する位置に設けられた手差しトレイ20と、を備えており、手差しトレイ20は、その下端部と記録ケーシング14の後端部とを連結する第2連結部P2により回動可能に設けられ、第1連結部P1は第2連結部P2と略同一の軸心k1を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに対して画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、手差しトレイが設けられた画像記録装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。この従来の画像記録装置は、シートに画像を記録するプリンタ部(画像形成部)と、当該プリンタ部の上方に設けられ、原稿に記録された画像を読み取るスキャナ読取部(走査ユニット)とを有している。スキャナ読取部により読み取られた原稿の画像を用いて、プリンタ部が、シートに対し画像の記録を行う。また、スキャナ読取部の端部は、プリンタ部の記録ケーシングの端部と連結されている。例えばメンテナンス等を行う際には、スキャナ読み取り部が画像記録装置の前面側から持ち上げられ、上記連結部を回動中心として回動する。
【0003】
画像記録の際には、シートは、プリンタ部の下部に位置する給紙部から供給され、プリンタ部の背面側部分において下方から上方へUターンするように搬送される。また、この画像記録装置では、その背面に手差しトレイ(手差し給紙トレイ)が設けられている。上記のように給紙部からUターンさせて搬送するシートの搬送ルートの他、手差しトレイから使用者が手操作でシートを給紙することもできる。この場合、シートは、手差しトレイから、当該手差しトレイに続く略直線的な搬送路を介し上記Uターン部分の上へと導かれる。なお、装置の小型化の観点から、手差しトレイは、その下端部がプリンタ部の記録ケーシングもしくは読取部に回動可能に連結され、不使用時には記録ケーシングもしくは読取部側へ収納可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−113379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、プリンタ部の記録ケーシングに、手差しトレイの下端部が回動可能に連結されるとともに、スキャナ読取部の端部も回動可能に連結されている。このとき、スキャナ読取部の回動と手差しトレイの回動とが干渉すると、例えばスキャナ読取部を持ち上げる前に、いったん手差しトレイを元通り記録ケーシング側に収納する必要があり、不便である。これを回避するために、上記従来技術では、手差しトレイをプリンタ部の記録ケーシングの下部に設置している。しかしながら、このような配置の結果、手差しトレイの位置が、プリンタ部の上部に設けられるスキャナ読取部から大きく離れた位置となるので、手差しトレイへの用紙のセットがやりづらくなり、不便であった。
【0006】
本発明の目的は、スキャナ読取部と手差しトレイとの干渉を回避しつつ、手差しトレイへの用紙のセットを容易に行うことができる、画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、記録ケーシングを備え、シートに画像を記録するプリンタ部と、前記プリンタ部の上方に設けられ、原稿に記録された画像を読み取るスキャナ読取部と、を有する画像記録装置であって、前記スキャナ読取部は、当該スキャナ読取部の後端部と前記記録ケーシングの後端部とを回動可能に連結する第1連結部を介し、当該第1連結部の軸心まわりに回動可能に設けられており、前記プリンタ部は、前記画像記録装置の背面側においてシートを下方から上方へUターンさせて搬送する第1搬送路と、前記画像記録装置の背面から前記第1搬送路のUターン上部分へ通ずる第2搬送路と、前記画像記録装置の背面において前記第2搬送路が開口する位置に設けられた手差しトレイと、を備えており、前記手差しトレイは、当該手差しトレイの下端部と前記記録ケーシングの後端部とを回動可能に連結する第2連結部を介し、当該第2連結部の軸心まわりに回動可能に設けられており、前記第1連結部の軸心は、前記第2連結部の軸心と、略同一であることを特徴とする。
【0008】
本願第1発明の画像記録装置は、プリンタ部を有している。プリンタ部の上方には、原稿に記録された画像を読み取る、スキャナ読取部が設けられている。スキャナ読取部は、メンテナンス等のために、通常、プリンタ部に対して回動可能に構成されている。本願第1発明においては、プリンタ部の記録ケーシングの後端部とスキャナ読取部の後端部とが第1連結部で連結されることにより、スキャナ読取部は記録ケーシングの後端部に対し回動可能に連結されている。すなわち、メンテナンス等を行う場合には、画像記録装置の前面側からスキャナ読取部を持ち上げ、記録ケーシングの後端部の上記第1連結部の軸心を中心とした円弧軌跡を描くように回動させればよい。スキャナ読取部により読み取られた原稿の画像を用いて、プリンタ部が、シートに対し画像の記録を行う。画像記録の際には、シートが、例えばプリンタ部の下部に位置する給紙部から供給され、第1搬送路において背面側から下方から上方へUターンするように搬送される。
【0009】
一方、本願第1発明の画像記録装置では、その背面に手差しトレイが設けられている。上記のように給紙部から第1搬送路へ導入されるルートの他、手差しトレイから使用者が手操作でシートを給紙することもできる。この場合、シートは、手差しトレイから、第2搬送路を介し第1搬送路の上記Uターン上部分へと導かれる。手差しトレイは、上記のように使用者が手操作で給紙するときに限定して使用するものであるため、本願第1発明においては、通常の使用時の邪魔にならないよう、収納可能に設けられている。具体的には、手差しトレイの下端部と記録ケーシングの後端部とが、第2連結部で連結されることにより、手差しトレイは記録ケーシングに対し回動可能に連結されている。これにより、使用者は、手差しトレイによる給紙を行う場合には手差しトレイを回動させて記録ケーシングの背面から突出するように引き出すとともに、手差しトレイによる給紙を行わない通常の場合には、上記とは逆方向に手差しトレイを回動させることで、突出した手差しトレイを元通りに記録ケーシングもしくは読取部側に収納することができる。
【0010】
ここで、上記したように、プリンタ部の記録ケーシングの後端部には、第2連結部によって手差しトレイの下端部が回動可能に連結されるとともに、第1連結部によってスキャナ読取部の後端部も回動可能に連結されている。すなわち、本願第1発明の画像記録装置は、手差しトレイ及びスキャナ読取部の両方が記録ケーシングの後端部を回転中心として回動する構造である。このため、手差しトレイの回転中心となる第2連結部の軸心と、スキャナ読取部の回転中心となる第1連結部の軸心の位置関係によっては、第1連結部の軸心を回転中心とするスキャナ読取部の円弧軌跡と、第2連結部の軸心を回転中心とする手差しトレイの円弧軌跡とが、互いに交差する可能性がある。この場合、スキャナ読取部及び手差しトレイは、円弧軌跡上の動作位置によっては互いの回動動作を阻害する可能性がある。例えば、手差しトレイが上記のように引き出された状態において、メンテナンス等のためにスキャナ読取部を持ち上げようとしても手差しトレイに干渉して不可能となるおそれがある。この結果、スキャナ読取部を持ち上げる前に、いったん手差しトレイを元通り記録ケーシング側に収納する必要があり、不便である。
【0011】
そこで本願第1発明においては、手差しトレイの回転中心となる第2連結部の軸心と、スキャナ読取部の回転中心となる第1連結部の軸心とを、略同一である。これにより、第1連結部の軸心を回転中心とするスキャナ読取部の円弧軌跡と、第2連結部の軸心を回転中心とする手差しトレイの円弧軌跡とは、互いに中心が同一の同心円状の軌跡となり、交差することがない。この結果、例えば、スキャナ読取部の後端部に、手差しトレイの円弧軌跡の半径相当分の高さの回避空間を形成しておくことで、スキャナ読取部が第1連結部を中心とする上記円弧軌跡で回動するとき、上記回避空間内に手差しトレイを確実に進入させることが可能となる。これにより、メンテナンス等のために上記のようにスキャナ読取部を持ち上げるときにおいても、手差しトレイはスキャナ読取部の当該回動動作を阻害することがなくなる。このようにして、スキャナ読取部への干渉を回避しつつ手差しトレイをスキャナ読取部の比較的近くに配置することができるので、使用者は、手差しトレイへの用紙のセットを容易かつ簡単に行うことができる。この結果、使用者の利便性を向上することができる。
【0012】
第2発明は、上記第1発明において、前記手差しトレイは、前記記録ケーシングの背面に沿って起立する第1姿勢と、前記記録ケーシングの背面から外側へ斜め上方へ傾倒する第2姿勢とに、姿勢変化可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
手差しトレイを使用しないときには、手差しトレイを第1姿勢とし記録ケーシングの背面に沿って起立させることで、使用者による使用の邪魔にならないようにすることができる。
【0014】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記スキャナ読取部は、前記プリンタ部11の上部に配置されたフラットベッドスキャナと、前記フラットベッドスキャナの上部に位置する自動原稿搬送装置と、前記フラットベッドスキャナの後端部と前記自動原稿搬送装置の後端部とを回動可能に連結する左右2つのADFヒンジとを備えており、前記第1連結部は、前記フラットベッドスキャナの左右両側2箇所にそれぞれ備えられており、前記スキャナ読取部は、2箇所の前記第1連結部の間か若しくは前記2つのADFヒンジの間に位置し前記手差しトレイを貫通可能な凹部を、後端部に備えていることを特徴とする。
【0015】
これにより、スキャナ読取部の後端部に設けた凹部の内側の空間を、前述の手差しトレイの円弧軌跡の半径相当分の高さの回避空間として、利用することが可能となる。この結果、スキャナ読取部が第1連結部を中心とする上記円弧軌跡で回動するとき、当該回避空間内に手差しトレイを確実に進入させることができるので、メンテナンス等のために上記のようにスキャナ読取部を持ち上げるときに手差しトレイがスキャナ読取部の当該回動動作を阻害するのを確実に防止できる。また、スキャナ読取部を持ち上げない通常の状態において、スキャナ読取部の左右両側の2つの第1連結部の間か若しくは左右両側のADFヒンジの間に手差しトレイを収納することができる。すなわち、スキャナ読取部から突出した形状となる2つの第1連結部や2つのADFヒンジの間に生まれる余剰空間を活用し、手差しトレイを収納することで、装置全体の大型化を防止することができる。
【0016】
第4発明は、上記第3発明において、前記第1搬送路の前記画像記録装置の背面側の壁面を構成する第1壁面部、及び、前記第2搬送路の前記画像記録装置の背面側の壁面を構成する第2壁面部、を備える、開閉部材を有し、前記開閉部材は、当該開閉部材部の下端部と前記記録ケーシングの後端部とを回動可能に連結する第3連結部を介し、当該第3連結部の軸心まわりに回動可能に設けられるとともに、当該回動時の回転軌跡の最上部が、前記第2連結部の前記軸心の位置よりも下方となるように、設けられていることを特徴とする。
【0017】
これにより、スキャナ読取部や手差しトレイに干渉することなく開閉部材を確実に回動させる構造を、実現可能となる。この結果、使用者は、第1搬送路や第2搬送路においてシート詰まり(いわゆるジャム)等の不具合が生じた場合に、スキャナ読取部や手差しトレイの回動状態に関係なく、直ちに開閉部材を開いて、迅速に上記不具合の解消を図ることができる。この結果、使用者の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スキャナ読取部と手差しトレイとの干渉を回避しつつ、手差しトレイへの用紙のセットを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による複合機の外観斜視図である。
【図2】複合機の外観背面図である。
【図3】スキャナ読取部及び手差しトレイ及びジャム処理カバーを開いた状態を表す複合機の外観斜視図である。
【図4】スキャナ読取部及び手差しトレイの回動挙動を説明するための、図2中A-A断面による鉛直断面図である。
【図5】プリンタ部の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図6】ジャム処理カバーの回動挙動を説明するための、図2中B−B断面による鉛直断面図である。
【図7】複合機の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は、本実施形態による画像記録装置である、複合機10の外観を示す斜視図である。また、図2は、複合機10の外観背面図であり、図3は、スキャナ読取部122(後述)を開いた状態を表す複合機10の外観斜視図である。
【0022】
なお、以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、操作パネル121が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0023】
図1、図2、及び図3に示すように、複合機10は、高さ(上下方向7の長さ)に対して横幅(左右方向9の長さ)及び奥行き(前後方向8の長さ)が大きい薄型の直方体に概ね形成されている。複合機10は、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能、及びコピー機能などの各種の機能を有している。これら各機能に関連して、複合機10の上部に画像読取部12が設けられ、複合機10の下部に(この例ではインクジェット記録方式の)プリンタ部11が設けられている。プリンタ部11は、正面及び背面に開口が形成された記録ケーシング(筐体)14を有する。この記録ケーシング14内にプリンタ部11の各構成要素が配設されている。なお、本実施形態では、プリンタ機能として片面画像記録機能のみ有している複合機10を例にとって説明するが、複合機10は両面画像記録機能を有していてもよい。
【0024】
<画像読取部12の構成>
図4は、スキャナ読取部122及び手差しトレイの回動挙動を説明するための、図2中A−A断面による鉛直断面図である。図4及び前述の図1〜図3に示すように、画像読取部12は、プリンタ部11の上部に配設され、装置上面の前方側に配置された操作パネル121と、原稿に記録された画像を読み取るスキャナ読取部122と、を備えている。スキャナ読取部122は、下部すなわちプリンタ部11側に位置するフラットベッドスキャナ(FBS:Flat Bed Scanner)122Dと、このFBS122Dの上部に位置する自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)122Aと、それらFBS122Dの後端部とADF122Aの後端部とを回動可能に連結するヒンジ部(ADFヒンジ)122Eとを備えている。
【0025】
そして、図3に示すように、スキャナ読取部122は、FBS122Dの後端部と記録ケーシング(筐体)14の後端部とを回動可能に連結する第1連結部P1を介し、当該第1連結部P1の軸心k1まわりに半径Rの円弧軌跡x1に沿って回動可能(図4参照)に設けられている。この第1連結部P1は、複合機10の左右両側2箇所に設けられている。
【0026】
スキャナ読取部122はまた、上記2つの第1連結部P1,P1の間に位置し、手差しトレイ20(後述)を貫通可能な凹部122Bを、後端部に備えている(図3参照)。この凹部122Bによって、スキャナ読取部122の後端部に、手差しトレイ20の円弧軌跡x2の半径r相当分の高さの回避空間S(図3参照)が形成される。
【0027】
複合機10の上面の前方側であって、スキャナ読取部122の正面側の上面には、プリンタ部11やスキャナ読取部122を操作するための、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている上記操作パネル121が設けられている。複合機10は、操作パネル121からの指示入力によって動作する。各種操作ボタンは、例えば、プリンタ部11やスキャナ読取部122の動作を開始するためのスタートボタンと、動作の停止や設定の終了を行うためのストップボタン、ファクシミリ機能を選択するためのFAXボタン、スキャナ機能を選択するためのスキャナボタン、コピー機能を選択するためのコピーボタンなどのモード選択ボタンと、コピー枚数やスキャナ読取部122による読取解像度などを入力するためのダイヤルボタンと、その他の各種設定ボタンなどの複数の入力キーとから構成される。
【0028】
<プリンタ部11の構成>
図5は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。この図5及び前述の図1〜図4において、プリンタ部11の正面の開口(図示せず)から記録ケーシング14の内部側へ連続するように収容室が区画されている。この収容室に給紙カセット78(図1〜図4では図示省略)が装着されている。給紙カセット78は、正面の開口から記録ケーシング14内に前後方向8に挿抜可能に構成されている。給紙カセット78は、各種サイズの記録用紙を保持可能である。なお、本実施形態では、1つの給紙カセット78のみを装着可能な複合機10を例にとって説明しているが、複合機10は複数の給紙カセット78を装着可能であってもよい。例えば、複合機10は、第1給紙カセットと、その上方で前後方向8へスライド可能な第2給紙カセットとを有していてもよい。
【0029】
プリンタ部11の背面14Aには、凹部Dが設けられている。図1及び図3に示されるように、凹部Dは、右側面14AA、左側面14AB、及び奥面14ACを備えている。図5に示されるように、凹部の奥面14ACの下部には、プリンタ部11の背面に形成された開口(以下、背開口13という。)が設けられている。
【0030】
図1乃至図5に示されるように、凹部Dには、手差しトレイ20が開閉可能に配置されている。図1は、手差しトレイ20が閉じられた状態を示しており、図2、図3、図4、及び図5は、手差しトレイ20が開けられた状態が示されている。手差しトレイ20は、開けられた状態において、各種サイズの記録用紙を載置可能である。なお、手差しトレイ20の構成については後に詳述する。
【0031】
次に、図5を参照しながら、プリンタ部11の構成をさらに詳しく説明する。なお、図5では、給紙カセット78の前方側(紙面右側)の図示を省略している。図5において、プリンタ部11は、給紙カセット78に加えて、給紙カセット78から記録用紙をピックアップして給紙(給送)する給送部15と、給送部15によって給紙された記録用紙にインク滴を吐出して記録用紙に画像を形成するインクジェット記録方式の記録部24などを備えている。これらが記録ケーシング14内に設けられている。なお、記録部24は、インクジェット方式に限られず、電子写真方式や感熱記録方式などが適用可能である。
【0032】
<搬送路65>
プリンタ部11の内部には、給紙カセット78及び手差しトレイ20から記録部24を経て排紙保持部79に至る搬送路65が形成されている。搬送路65は、給紙カセット78の先端(後方側の端部)から記録部24に至る間に形成された第1搬送路としての湾曲路65Aと、手差しトレイ20の先端(前方側の端部)から湾曲路65Aとの合流点36に至る間に形成された第2搬送路としての搬送経路65Bと、記録部24から排紙保持部79に至る間に形成された排紙路65Cとを備えている。なお、排紙保持部79は、給紙カセット78と一体に構成されていてもよく、あるいはプリンタ部11のフレームなどに固定されたものであってもよい。
【0033】
図5に示されるように、湾曲路65Aは、給紙カセット78に設けられた分離傾斜板22の上端付近から記録部24に渡って延設された湾曲状の通路である。記録用紙は、給紙カセット78から後方に向けて搬送される。記録用紙は、装置の背面側において、湾曲路65Aによって装置の下方から上方へUターンされる。その後、記録用紙は、前方に向けて搬送される。湾曲路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部18及び内側ガイド部19によって区画されている。なお、外側ガイド部18は、湾曲路65Aの複合機10背面側の壁面を構成する第1壁面部として機能している。なお、外側ガイド部18及び内側ガイド部19、さらに、後述する第1下側ガイド部80、第1上側ガイド部81、第2上側ガイド部82、第2下側ガイド部83、第3上側ガイド部84は、いずれも、図5の紙面垂直方向(図1の左右方向9)へ延びている。
【0034】
搬送経路65Bは、プリンタ部11の上記背開口13から湾曲路65Aとの合流点36に渡って延設された(この例では略直線状の)通路である。記録用紙は、複合機10のユーザによって、手差しトレイ20に担持されつつ、背開口13から前方に向けて挿入される。記録用紙は、搬送経路65Bを介して、第1搬送ローラ60とピンチローラ61とのニップ位置60Aに挿入される。
【0035】
搬送経路65Bは、所定間隔を隔てて互いに対向する第1下側ガイド部80及び第1上側ガイド部81によって区画されている。なお、第1下側ガイド部80は、搬送経路65Bの複合機10背面側の壁面を構成する第2壁面部として機能している。第1上側ガイド部81の搬送方向の下流側(以下、単に「下流側」と略称する。)には、第2上側ガイド部82が設けられている。ここで、搬送方向とは、記録用紙が搬送路65を搬送させる向き(図5において矢印付きの二点鎖線で示される向き)を指す。第2上側ガイド部82は、第1上側ガイド部81の先端(前方側の端部)と合流点36の上側近傍を結ぶように延設されており、手差しトレイ20から挿入された記録用紙を、合流点36を介してニップ位置60Aへ導く。
【0036】
<記録部24>
図5に示されるように、記録部24は、給紙カセット78の上方に配置されている。記録部24は、図5の紙面垂直方向(主走査方向)に延出されたガイドレール(図示せず)に沿って往復動するように構成されている。記録部24の下方にプラテン42が設けられている。プラテン42は、記録部24によって画像記録が行われる際に、記録用紙を水平に支持するものである。記録部24は、主走査方向への往復移動過程において、図示しないインクカートリッジから供給されたインクをノズル39から微小なインク滴としてプラテン42上を搬送される記録用紙に吐出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。
【0037】
湾曲路65Aの終端と記録部24との間には、第1搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。これらは対をなしている。ピンチローラ61は、第1搬送ローラ60の下方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第1搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。第1搬送ローラ60及びピンチローラ61は、湾曲路65A及び搬送経路65Bを搬送してきた記録用紙を狭持してプラテン42上へ送る。
【0038】
また、記録部24と排紙路65Cの始端との間には、第2搬送ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。これらは対をなしている。拍車ローラ63は、第2搬送ローラ62の上方に配置されており、自重若しくはバネなどによって第2搬送ローラ62のローラ面に圧接されている。第2搬送ローラ62及び拍車ローラ63は、記録済みの記録用紙を狭持してさらに下流側(排紙保持部79側)へ搬送する。
【0039】
第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、搬送用モータ(図示せず)から駆動伝達機構を介して回転駆動力が伝達されて回転される。第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、画像記録時に間欠駆動される。そのため、記録用紙は、所定の改行幅で送られながら画像記録がなされる。
【0040】
<給送部15>
給送部15は、給紙カセット78に収容された記録用紙を湾曲路65Aへ向けて搬送するためのものであり、給紙ローラ25と、給紙アーム26と、駆動伝達機構27とを備えている。給紙ローラ25は、給紙カセット78の上側に配置されている。給紙ローラ25は、給紙カセット78に収容された記録用紙をピックアップして湾曲路65Aへ給紙するものであり、給紙アーム26の先端に回転自在に軸支されている。給紙ローラ25は、給紙用モータ(図示せず)の回転力が駆動伝達機構27を介して伝達されると回転駆動される。なお、駆動伝達機構27は、給紙アーム26に軸支されており、概ね給紙アーム26の延出方向に沿って直線状に並ぶ複数のギヤで構成されている。なお、給紙ローラ25は、基軸28を回動中心軸として回転し、給紙カセット78に収容された記録用紙の上面に圧接可能である。
【0041】
<レジストセンサ110>
図5に示されるように、湾曲路65Aには、湾曲路65Aを搬送される記録用紙、又は、手差しトレイ20から搬送経路65Bを介して挿入される記録用紙の先端位置を検知するためのレジストセンサ110が設けられている。レジストセンサ110は、例えば、検出子112A,112Bを有する回転体と、発光素子(例えば発光ダイオード)及びこの発光素子から発光された光を受光する受光素子(例えばフォトトランジスタ)を有するフォトインタラプタ等の光センサ111とにより構成されている。回転体は、支軸113を中心に回転可能に設けられている。検出子112Aは支軸113から外側ガイド部18を超えて湾曲路65Aへ突出している。回転体112に外力が加えられていない状態で、検出子112Bは光センサ111の発光素子から受光素子に至る光路に進入して、この光路を通る光を遮断している。
【0042】
<ジャム処理カバー14B>
本実施形態では、上記外側ガイド部18及び下側ガイド部80は、図5に示すように、開閉部材としてのジャム処理カバー14Bに一体的に備えられている。図6は、ジャム処理カバーの回動挙動を説明するための、図2中B−B断面による鉛直断面図である。ジャム処理カバー14Bは、当該ジャム処理カバー14Bの下端部と記録ケーシング(筐体)14の後端部とを回動可能に連結する第3連結部P3を介し、当該第3連結部P3の軸心k3まわりに回転軌跡x3を描くように回動可能に設けられる。
【0043】
排紙路65Cは、記録部24よりも下流側に設けられた第2下側ガイド部83と第3上側ガイド部84とによって区画されている。排紙路65Cは、第2搬送ローラ62によって搬送された画像記録済の記録用紙の下面を支持しつつ、下流側へ案内する。第3上側ガイド部84は、第2下側ガイド部83よりも上方に配置されている。第3上側ガイド部84と第2下側ガイド部83とは、記録用紙が通過可能な所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。
【0044】
<手差しトレイ20及びシートガイド21>
図7(a)及び図7(b)は、いずれも複合機10の左側面図である。図7(a)は手差しトレイ20が閉じられた状態を表し、図7(b)は手差しトレイが開かれた状態を表している。これら図7(a)、図7(b)、及び前述の図1〜図6に示されるように、手差しトレイ20は、概ね平板形状に構成されており、複合機10の背面において搬送経路65Bが開口する位置、すなわち、奥面14ACの後方側に設けられている。手差しトレイ20は、A4サイズをはじめとする各種サイズの記録用紙を一枚載置可能である。
【0045】
そして、手差しトレイ20は、当該手差しトレイ20の下端部と前記記録ケーシング14の後端部とを回動可能に連結する第2連結部P2を介し、半径rの円弧軌跡x2に沿って回動可能に設けられている。第2連結部P2と第1連結部P1との間に、共通のヒンジ部材(FBヒンジ)122Cが設けられており、この結果、図1、図2、図3、図4、及び図6に示すように、上記第2連結部P2の軸心は、上述した第1連結部P1の軸心k1と、略同一である。したがって、以下、第1連結部P1の軸心K1、第2連結部P2の軸心k1、のように共通の符号で称する。なお、前述のジャム処理カバー14Bの回動時の回転軌跡x3の最上部は、上記第2連結部P2の軸心k1の位置よりも下方となるように設けられている。
【0046】
なお、第2連結部P2は、例えば、手差しトレイ20の基端部(下方側の端部)において、載置板201の右側面から右側へ延びる右回動軸(図示せず)と、載置板201の左側面から左側へ延びる左回動軸201A(図5参照)とを備えている。右回動軸は、右側面14AAにおける右回動軸に対向する位置に設けられた孔に挿入されている。左回動軸は、左側面14ABにおける左回動軸に対向する位置に設けられた孔に挿入されている。つまり、手差しトレイ20は、その基端部が右回動軸及び左回動軸201Aに支持されており、右回動軸及び左回動軸201Aを回動中心軸として回動可能に構成されている。言い換えれば、手差しトレイ20の右回動軸及び左回動軸201Aは、スキャナ読取部122のFBS122Dの2つの第1連結部P1,P1と、略同一の軸心k1を備えている。
【0047】
上述より、手差しトレイ20は、図5において破線の矢印で示されるように回動可能である。手差しトレイ20は、回動することによって、プリンタ部11に対して閉じられた姿勢(図5中の破線及び図7(a)に示す第1姿勢)と開かれた姿勢(図5中の実線及び図7(b)に示す第2姿勢)をとる。すなわち、図7(b)に示されるように、手差しトレイ20は、第2姿勢をとっているとき、背面14Aからさらに後方側へ斜め上方に傾倒している。一方、図7(a)に示されるように、手差しトレイ20は、第1姿勢をとっているとき、背面14Aに沿って起立する。載置板201において記録用紙が載置される面は、奥面14ACと対向する。
【0048】
<シートガイド21>
図2,図3、図5、図7(a)、及び図7(b)に示されるように、手差しトレイ20と奥面14ACの間には、記録用紙が当接される当接板と、当接板の左右方向9の両端部から立設された側板と、当接板の上方側の端部とを有するシートガイド21が設けられている。
【0049】
図3、図7(a)、及び図7(b)に示されるように、右側面14AAには、奥面14AC近傍を上下方向7に延びるU字形状のレール溝213が設けられている。レール溝213にはシートガイド21の右上軸211Aが挿入される。これにより、シートガイド21がレール溝213によって上下方向7へスライド可能に支持される。
【0050】
手差しトレイ20の載置板201の先端部(上方側の端部)と基端部(下方側の端部)の間(例えば先端部と基端部の中間)における左右方向8の両端部には、凸形状の軸支部204が立設されている。軸支部204には、シートガイド21の右下軸211B及び左下軸に対向する位置において、左右方向9の孔又は穴が設けられている。右下軸211B及び左下軸は、軸支部204に設けられた孔又は穴に挿入される。つまり、シートガイド21は、右下軸211B及び左下軸を中心軸として回転可能に、軸支部204によって軸支されている。
【0051】
手差しトレイ20は、第2姿勢から第1姿勢に移行するとき、右回動軸及び左回動軸201Aを回動中心軸として回動する。すると、軸支部204は前方へ移動する。これにより、シートガイド21は、右下軸211B及び左下軸を中心軸として回転するとともに、シートガイド21の右上軸211A及び左上軸は、レール溝213の上部にスライドする。これにより、手差しトレイ20が第1姿勢をとっているとき、シートガイド21は、手差しトレイ20と奥面14ACの間において、背面14Aに沿って起立する姿勢をとる(図5に破線で示す第3姿勢)。当接板211において記録用紙が当接される面は、載置板201と対向する。
【0052】
なお、第1姿勢の手差しトレイ20と第3姿勢のシートガイド21は、前後方向8に所定の間隔が設けられるように配置される。これにより、載置板201に立設される後述の幅調整ガイド22がシートガイド21に当接することが防止される。
【0053】
手差しトレイ20は、第1姿勢から第2姿勢に移行するとき、右回動軸及び左回動軸201Aを回動中心軸として回動する。すると、軸支部204は後方へ移動する。これにより、シートガイド21は、右下軸211B及び左下軸を中心軸として回転するとともに、シートガイド21の右上軸211A及び左上軸は、レール溝213の下部にスライドする。これにより、手差しトレイ20が第2姿勢をとっているとき、シートガイド21は、奥面14ACから載置板201へ傾倒する姿勢をとる(図5に実線で示す第4姿勢)。
【0054】
以上より、シートガイド21は、手差しトレイ20が第1姿勢をとっているときに第3姿勢となり、手差しトレイ20が第2姿勢をとっているときに第4姿勢となるように、手差しトレイ20に連動して姿勢変化される。
【0055】
<幅調整ガイド22>
図3、図4、図7(a)、及び図7(b)に示されるように、載置板201における記録用紙の載置面には、記録用紙が挿入される方向に沿って、複合機10へ挿入される記録用紙の幅を調整するための一対の幅調整ガイド22が立設されている。
【0056】
幅調整ガイド22は、第2姿勢で間隙が形成される位置より後方側において間隙より長い部分と、第2姿勢で間隙が形成される位置より前方側において間隙より短い部分とで構成されている。
【0057】
幅調整ガイド22は、載置板201における記録用紙の載置面において、左右方向9にスライド可能に支持されている。詳細には、幅調整ガイド22は、複合機10へ挿入可能な記録用紙の最大サイズに対応する位置と最小サイズに対応する位置との間でスライドする。
【0058】
幅調整ガイド22が、載置板201に載置された記録用紙のサイズと合致する位置にスライドされているとき、一対の幅調整ガイド22は当該記録用紙の端に当接する。詳細には、右側の幅調整ガイド22の左側面が当該記録用紙の右端に当接し、左側の幅調整ガイド22の右側面が当該記録用紙の左端に当接する。
【0059】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の複合機10においては、プリンタ部11の上方にスキャナ読取部122が設けられている。そしてスキャナ読取部122のFBS122Dの後端部がプリンタ部11の記録ケーシング14の後端部と第1連結部P1で連結されることで、スキャナ読取部122は記録ケーシング14の後端部に対し回動可能に連結されている。メンテナンス等を行うときには、複合機10の前面側からスキャナ読取部122を持ち上げ、記録ケーシング14の後端部の上記第1連結部P1の軸心k1を中心とした円弧軌跡x1を描くように回動させる(図4参照)。また、スキャナ読取部122により読み取られた原稿の画像を用いて、プリンタ部11が、シートに対し画像の記録を行う。画像記録の際には、シートが、プリンタ部11の下部に位置する給紙カセット78から供給され、湾曲路65Aにおいて背面側から下方から上方へUターンするように搬送される。
【0060】
一方、本実施形態の複合機10では、その背面に手差しトレイ20が設けられている。上記のように給紙カセット78から湾曲路65Aへ導入されるルートの他、手差しトレイ20からユーザが手操作でシートを給紙することもできる。この場合、シートは、手差しトレイ20から、搬送経路65Bを介し湾曲路65Aの上記Uターン部分へと導かれる。手差しトレイ20は、上記のようにユーザが手操作で給紙するときに限定して使用するものであるため、通常の使用時の邪魔にならないよう、収納可能である。すなわち、前述したように、手差しトレイ20の下端部と記録ケーシング14の後端部とが、第2連結部P2で連結されることにより、手差しトレイ20は記録ケーシング14に対し回動可能に連結されている。これにより、ユーザは、手差しトレイ20による給紙を行う場合には手差しトレイ20を回動させて記録ケーシング14の背面から突出するように引き出し、上記第2姿勢とするとともに、手差しトレイ20による給紙を行わない通常の場合には、上記とは逆方向に手差しトレイ20を回動させることで、突出した手差しトレイ20を元通りに記録ケーシング14側に収納し上記第1姿勢とすることができる。
【0061】
ここで、プリンタ部11の記録ケーシング14の後端部には、第2連結部P2によって手差しトレイ20の下端部が回動可能に連結されるとともに、第1連結部P1によってスキャナ読取部122の後端部も回動可能に連結されている。手差しトレイ20の回転中心となる第2連結部P2の軸心と、スキャナ読取部122の回転中心となる第1連結部P1の軸心との位置関係によっては、スキャナ読取部122及び手差しトレイ20は、互いの回動動作を阻害する可能性がある。例えば、手差しトレイ20が上記のように引き出された状態において、メンテナンス等のためにスキャナ読取部122を持ち上げようとしても手差しトレイ20に干渉して不可能となるおそれがある。
【0062】
これに対応して、本実施形態では、図4に示すように、手差しトレイ20の回転中心となる第2連結部P2と、スキャナ読取部122の回転中心となる第1連結部P1の軸心k1とが、略同一の軸心k1を備える。これにより、第1連結部P1の軸心k1を回転中心とするスキャナ読取部122の半径Rの円弧軌跡x1と、第2連結部P2の軸心k1を回転中心とする手差しトレイ20の半径rの円弧軌跡x2とは、互いに中心が同一の同心円状の軌跡となり、交差することがない。
【0063】
これにより、メンテナンス等のためにスキャナ読取部122を持ち上げるときにおいても、手差しトレイ20はスキャナ読取部122の当該回動動作を阻害することがなくなる。このようにして、スキャナ読取部122への干渉を回避しつつ手差しトレイ20をスキャナ読取部122の比較的近くに配置することができるので、ユーザは、手差しトレイ20への用紙のセットを容易かつ簡単に行うことができる。この結果、ユーザの利便性を向上することができる。
【0064】
また、本実施形態では特に、手差しトレイ20が、記録ケーシング14の背面に沿って起立する第1姿勢と、記録ケーシング14の背面から外側へ斜め上方へ傾倒する第2姿勢とに、姿勢変化可能に構成されている。これにより、手差しトレイ20を使用しないときには、手差しトレイ20を第1姿勢とし記録ケーシング14の背面に沿って起立させることで、ユーザによる使用の邪魔にならないようにすることができる。
【0065】
また、本実施形態では特に、複合機10の左右両側に、2箇所の第1連結部P1,P1がそれぞれ備えられており、スキャナ読取部122は、2箇所の第1連結部P1,P1の間に位置し手差しトレイ20を貫通可能な凹部122Bを、後端部に備えている。これにより、スキャナ読取部122の後端部に設けた凹部122Bの内側の空間を、前述の手差しトレイ20の円弧軌跡x2の半径r相当分の高さの回避空間Sとして、利用することができる(図3及び図4参照)。この結果、スキャナ読取部122が第1連結部P1を中心とする半径Rの上記円弧軌跡x1で回動するとき、当該回避空間S内に手差しトレイ20を確実に進入させることができる。したがって、メンテナンス等のために上記のようにスキャナ読取部122を持ち上げるときに手差しトレイ20がスキャナ読取部122の当該回動動作を阻害するのを確実に防止できる。また、スキャナ読取部122を持ち上げない通常の状態において、スキャナ読取部122の左右両側の2箇所の第1連結部P1,P1の間に手差しトレイ20を収納することができる(図7(a)参照)。すなわち、スキャナ読取部122から突出した形状となる2つの第1連結部P1,P1の間に生まれる余剰空間を活用し、手差しトレイ20を収納することで、装置全体の大型化を防止することができる。
【0066】
また、本実施形態では特に、湾曲路65Aの複合機10の背面側の壁面を構成する外側ガイド部18、及び、搬送経路65Bの複合機10の背面側の壁面を構成する第1下側ガイド部80を備えるジャム処理カバー14Bを有している。そして、このジャム処理カバー14Bが、第3連結部P3を介し軸心まわりに回動可能に設けられるとともに、当該回動時の回転軌跡x3の最上部が、第2連結部P2の軸心k1の位置よりも下方となるように設けられている(図6参照)。これにより、スキャナ読取部122や手差しトレイ20に干渉することなくジャム処理カバー14Bを確実に回動させる構造を、実現することができる。この結果、ユーザは、湾曲路65Aや搬送経路65Bにおいてシート詰まり(いわゆるジャム)等の不具合が生じた場合に、スキャナ読取部122や手差しトレイ20の回動状態に関係なく、直ちにジャム処理カバー14Bを開いて、迅速に上記不具合の解消を図ることができる。この結果、ユーザの利便性が向上する。
【0067】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0068】
10 複合機(画像記録装置)
11 プリンタ部
12 画像読取部
14 記録ケーシング(筐体)
14B ジャム処理カバー(開閉部材)
20 手差しトレイ
21 シートガイド
22 幅調整ガイド
65A 湾曲路(第1搬送路)
65B 搬送経路(第2搬送路)
122 スキャナ読取部
122B 凹部
122C FBヒンジ
122E ADFヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ケーシングを備え、シートに画像を記録するプリンタ部と、
前記プリンタ部の上方に設けられ、原稿に記録された画像を読み取るスキャナ読取部と、
を有する画像記録装置であって、
前記スキャナ読取部は、
当該スキャナ読取部の後端部と前記記録ケーシングの後端部とを回動可能に連結する第1連結部を介し、当該第1連結部の軸心まわりに回動可能に設けられており、
前記プリンタ部は、
前記画像記録装置の背面側においてシートを下方から上方へUターンさせて搬送する第1搬送路と、
前記画像記録装置の背面から前記第1搬送路のUターン上部分へ通ずる第2搬送路と、
前記画像記録装置の背面において前記第2搬送路が開口する位置に設けられた手差しトレイと、
を備えており、
前記手差しトレイは、
当該手差しトレイの下端部と前記記録ケーシングの後端部とを回動可能に連結する第2連結部を介し、当該第2連結部の軸心まわりに回動可能に設けられており、
前記第1連結部の軸心は、
前記第2連結部の軸心と、略同一である
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像記録装置において、
前記手差しトレイは、
前記記録ケーシングの背面に沿って起立する第1姿勢と、前記記録ケーシングの背面から外側へ斜め上方へ傾倒する第2姿勢とに、姿勢変化可能に構成されている
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の画像記録装置において、
前記スキャナ読取部は、
前記プリンタ部11の上部に配置されたフラットベッドスキャナと、前記フラットベッドスキャナの上部に位置する自動原稿搬送装置と、前記フラットベッドスキャナの後端部と前記自動原稿搬送装置の後端部とを回動可能に連結する左右2つのADFヒンジとを備えており、
前記第1連結部は、
前記フラットベッドスキャナの左右両側2箇所にそれぞれ備えられており、
前記スキャナ読取部は、
2箇所の前記第1連結部の間か若しくは前記2つのADFヒンジの間に位置し前記手差しトレイを貫通可能な凹部を、後端部に備えている
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像記録装置において、
前記第1搬送路の前記画像記録装置の背面側の壁面を構成する第1壁面部、及び、前記第2搬送路の前記画像記録装置の背面側の壁面を構成する第2壁面部、を備える、開閉部材を有し、
前記開閉部材は、
当該開閉部材部の下端部と前記記録ケーシングの後端部とを回動可能に連結する第3連結部を介し、当該第3連結部の軸心まわりに回動可能に設けられるとともに、当該回動時の回転軌跡の最上部が、前記第2連結部の前記軸心の位置よりも下方となるように、設けられている
ことを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−1329(P2012−1329A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138770(P2010−138770)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】