説明

画像記録装置

【課題】インクジェット記録ヘッドにより生じたインクミストは、構成部位への付着を防止して排出するためには強い風量の気流が必要であり、吐出されたインク滴の着弾位置に影響を与えかねない。
【解決手段】インク滴を吐出する記録ヘッドを搭載する画像記録装置は、着弾したインク滴によるインク層を硬化する光照射部を有し、光照射部は、画像記録媒体と対向する側に回転する円柱状レンズを配置して、発生したミストをその回転による気流に乗せて、円柱状レンズや構成部材への付着を防止して排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのインク吐出時に発生するミストの影響を抑制する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体上にインクジェット記録ヘッドを用いてインク滴を吐出して画像記録を行うインクジェット記録装置がある。その中で、インクとして光硬化性を有する液状機能性材料を用いて画像形成を行うインクジェット記録装置は、環境に優しく、種々の材料からなる記録媒体に高速記録可能で且つ、滲みにくく高精細画像が得られる等の特徴を有している。例えば、UV(紫外線)硬化型インクを用いた装置は、光源の扱い易さ、コンパクト化等の利点から実用化が進められている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置は、記録ヘッドからインクを吐出した際に、記録媒体に着弾するインクの主液滴と共に、微小液滴であるサテライトや、失速したインク滴液であるインクミスト(以下、ミストと称する)が発生する。このようなミストは、機能性材料の蒸発を無視したとして、そのサイズが、0.5μm〜10μm程度であり、特に1μm前後のミストの発生抑制は困難である。
【0004】
このようなミストは、インクジェット記録装置内を浮遊し、内部の機構や部品に付着して定着し、装置内を汚染することとなる。特に、ミストの一部が光源(UV光源)に付着すると、そのミストは硬化して硬化膜を形成する。次第にその硬化膜が積層されてUV光源から照射される紫外線の回復不能な光量低下を引き起こし、ランプ交換が頻繁に発生するという問題になる。
【0005】
そこで、従来の照射光量の低下を防止する対策として、以下のような技術が提案されている。例えば、特許文献1には、水性UV硬化型インクを用いたインクジェット記録装置において、インク吐出時にUV光照射手段内で生じさせた風を記録媒体に吹き付け、この記録媒体から戻った風に画像形成で生じたミストを乗せて、インクジェット記録ヘッドとUV光照射手段との間に設置したミスト捕捉部へ導き、ミストを捕捉して画像形成装置内に拡散することを防止する技術が提案されている。他にも、特許文献2には、インクにUV光を照射する光源と、光源を囲うように配置され、記録媒体側に開口が形成された光源ハウジングと、光源ハウジングから記録媒体側に送風する排気機構とで構成された光照射ユニットを有し、光源にインクミストが付着することを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−62431号公報
【特許文献2】特開2009−83208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1で提案された技術において、光源又はランプハウス等の光学系への付着を防止して光源外へミストを排出するための気流は、かなり強い風量が必要である。また、特許文献2では、風量と画質の関係が記述してあり、インクミストの付着防止と画質がトレードオフとなってしまうことが明確である。また、UV光源の前方であって、記録媒体に近接した位置に配設するガラス板又は、光学系、例えば集光レンズには、ミストが付着することを抑制・防止するための措置を取らなければならない。
【0008】
しかしながら、提案された技術においては、光照射手段内から、光照射手段外つまり、ガラス板や集光レンズの前面側(記録媒体に対向する面側)には気流が発生していないか、発生させることができない。又は気流の流れが弱い。このため、搬送される記録媒体によって、ヘッドと記録媒体との間や、ガラス板や光学部品と記録媒体との間に発生する気流に乗って浮遊するインクミストが、ガラス板や集光レンズに付着してしまう。
【0009】
そこで本発明は、記録媒体に光を照射する又は記録媒体からの光を集光する光学系へのインクミストの付着を抑制し、且つ付着抑制が画質に影響を与えず、高画質の記録が可能な画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、記録媒体上にインク滴を着弾してインク層からなる画像を形成する画像記録部と、前記記録媒体上に形成された画像に光を照射し、前記インク層を硬化させて前記記録媒体への定着を促進する光照射部と、を有する画像記録装置において、前記光照射部は、光を発する光源と、その中心軸が前記光源から発せられた光の光軸に対して交差するように配置され、前記光源から発せられた光を記録媒体に向かって、集光照射させる円柱状レンズと、前記円柱状レンズをその中心軸まわりに回転駆動させる回転駆動機構と、を有する画像記録装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学系へのインクミストの付着を抑制することができるので、十分な照射光量又は受光光量を確保でき、安定した効果効率を高画質で維持できる画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置の概念的な構成例を示す図である。
【図2】図2は、図1における記録ヘッドとUV光個別光源のうちの1組を拡大して表示した概略図である。
【図3】図3は、図2に示した記録ヘッドとUV光個別光源の構成において、回転に伴う気流の流れを模式的に示す図である。
【図4】図4は、第2の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置に搭載されるUV光個別光源の構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は、第3の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置に搭載されるUV光個別光源の構成を模式的に示す図である。
【図6】図6は、第4の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置に搭載されるUV光個別光源の構成を模式的に示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る駆動源を含むUV光個別光源の回転駆動機構の構成例を示す図である。
【図8】図8は、第5の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置に搭載されるUV光個別光源の構成を模式的に示す図である。
【図9】図9は、第6の実施形態に係る画像読み取り装置に回転するロッドレンズを搭載した構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置の概念的な構成例を示す図である。本実施形態の画像記録装置1は、UV硬化型インク(以下、UVインクと称する)によるインク滴で記録媒体上に画像を形成し、UV光源からUV光を着弾したインクに照射して、その画像を定着するインクジェット記録装置である。
【0014】
また、以下の説明において、記録媒体の搬送方向をY軸方向とし、記録媒体の画像記録面においてY軸方向と直交する記録媒体の幅方向をX軸方向(主走査方向)とし、これらX−Y軸方向と直交する所謂、上下(又は、垂直)方向をZ軸とする。
【0015】
本実施形態の画像記録装置1は、図示しない筐体で覆われて、外部からの光線が入らない又は、UV光が外部に漏れ出ないように、遮光されている。その筐体内部には、図1に示すように、搬送機構2と、搬送機構2の上方に記録ヘッド部3及びUV光個別照射部4UV光主照射部5及び、画像記録及び硬化処理を含み装置全体を制御する制御部6とで構成され、各構成部が図示しない本体フレームに設けられている。尚、図1には、本実施形態に関わる構成部位のみを示しており、通常の画像記録装置が備える例えば、入力部(タッチパネル)、表示装置、記録媒体供給部及び排出部等の他の構成部は搭載しているものとする。
【0016】
搬送機構2は、図示しないフレームに回転可能に設けられたローラ11、12、13及び14に、無端ベルト15を掛架して構成される。無端ベルト15下には、平板のプラテン16が配置されており、連続する画像記録エリア16Aとインク硬化エリア16Bを形成する。ローラ11は、図示しないモータ等の駆動源が連結された駆動ローラ(以下、駆動ローラ11と称する)であり、他のローラ12、13及び14を従動させて、ベルト15を所望する速度で回動させる。無端ベルト15及びプラテン16は、共に、貫通する多数の小孔が一様に開口される。プラテン16の下方には、ファン17が設けられており、駆動により無端ベルト15及びプラテン16を通して吸気して、搬送される記録媒体10を吸着する。
【0017】
また、ファン17を用いない吸着手段としては、筐体内を排気するために設けられた排気装置を利用した排気吸着、又は高電圧装置による静電吸着等の公知な手法を採用してもよい。無端ベルト15の近傍には、搬送される記録媒体10を検出するための図示しない検出用センサが設けられている。さらに、駆動ローラ11には、後述するエンコーダが設けられている。さらに、無端ベルト15の搬送方向の最下流側又は、図示しない記録媒体排出部の最上流側には、後述する画像読み取り装置が配置されている。この画像読み取り装置は、主として、定期的又は修理後(メンテナンス後)に記録される画像をチェックするために、記録されたテストパターン等を読み取るための装置である。この画像読み取り装置による読み取り結果に基づき、画像調整が行われる。
【0018】
記録ヘッド部3には、複数の記録ヘッド3a〜3eが搬送方向に沿って並設される。各記録ヘッド3a〜3eは、記録媒体10の幅を越える記録領域のノズル列を有するアレー形状のフルライン型ヘッドであり、各ノズルはピエゾ型ノズルを採用している。各記録ヘッド3a〜3eは、それぞれにノズル列が搬送方向と直交するX軸方向に沿うように並設される。
【0019】
また、ノズルにおけるインク吐出方向は、Z軸方向で無端ベルト15上の記録媒体10に向かうように設けられている。記録ヘッド3a〜3eは、不図示のインク貯留部が接続され、それぞれに異なる色例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及び白(W)のインクが供給され、記録ヘッド駆動装置である図示しないドライバ回路によりインク各色の吐出量が制御されている。また、制御部6により、これらの5組のUVインクの種類や色は用途により選択され、必要に応じて感度や粘度等を変更して使用することもできる。
【0020】
インク吐出のタイミングは、予め定めた基準信号、例えば、搬送経路上に設けられた記録媒体10の先端を検出するセンサのセンサ信号、又は駆動ローラ11に設けられたエンコーダの検出信号を用いて、ノズル列におけるインク吐出時間を調整する。
【0021】
さらに、各記録ヘッド3a〜3eの下流側の極近傍には、光照射部として、UV光個別照射部4(4a〜4e)がそれぞれ配置されている。また、UV光個別照射部4a〜4eの下流側でプラテンと対向して、UV光個別照射部4よりも照射する光の光量が大きいUV光主照射部5が設けられている。本実施形態では、光照射部として、UV光個別照射部4とUV光主照射部5とを搭載しているが、必ずしもこれらの2つが搭載される必要はなく、いずれか1つでもよい。
【0022】
UV光個別照射部4a〜4eは、各記録ヘッドが吐出したインク層の少なくとも表面を瞬時に仮硬化させる。この仮硬化は、インク層が完全固化した状態ではなく、インク層の記録媒体10内への浸透や、記録媒体10の表面に拡散しない程度に増粘された状態である。その後、UV光主照射部22の照射により、仮硬化状態にあるUVインク層を完全に固化して、記録媒体に画像を定着させる。
【0023】
このように構成されたインクジェット記録装置は、図示しない給紙装置から供給された記録媒体10は、搬送機構2の無端ベルト15に吸着されて搬送され、図示しない排紙装置に搬送され、トレイ等に排出される。
【0024】
図2は、図1における記録ヘッド3a〜3eとUV光個別光源4a〜4eのうちの1組を拡大して表示した概略図である。図2においては、代表として1組の構成例を示しているが、他の4組においても同等の構成及び作用である。
【0025】
記録ヘッド3からは、図示しないドライバ回路からの指示によって、UVインク液滴20aが吐出される。吐出されたUVインク液滴20aは、記録媒体10上に着弾し、UVインク層20を形成する。UVインク層20は、記録媒体10の物性によって性状が異なる。記録媒体10にインクの吸収性があれば、着弾したUVインク層20は、一部が記録媒体10内に浸み込み、その表層近くに形成される。記録媒体10がインク非吸収性ならば、UVインク層20は、記録媒体10の表層上に形成される。
【0026】
図7に示すように、UV光個別光源4は、ハウジングであるUV光源ケース21内に、光学部品が配置されて、光源として、例えば、図示しないUV光発生源からのUV光がUVライトガイド22で引き込まれ、拡げられたUV光照射口部22aに引き込まれている。このUV光照射口部22aの照射範囲は、記録媒体10の幅又は、記録ヘッド3の画像記録領域をカバーする。この照射範囲は、例えば、UVライトガイド22が必要な本数を配置しても良いし、複数の束ねられたライトガイド(光ファイバー)を、UV光源ケース21内で、ばらし又は分岐させて拡げて記録媒体10の幅方向に分散させてもよい。尚、UV光照射口部22aの先端には、図示しないレンズを配置して、拡がったUV光が記録媒体上で均一な光量となるようにしてもよい。
【0027】
UVライトガイド22により導かれたUV光は、記録媒体10に対向する側の開口を塞ぐように設けられたロッドレンズ(円柱状レンズ)7に向けて照射される。このロッドレンズ7は、入射したUV光を収束して、記録媒体10上でライン状になるように照射する。このロッドレンズ7は、記録媒体の面方向と平行、即ち、記録媒体10面に対して、平行な軸(中心軸)を有する円柱状であって、レンズ駆動軸23(この駆動軸は、記録媒体面内に平行である)を中心として、回転可能に配設されている。尚、記録媒体10の種別(普通紙、厚紙、封筒、フィルム等)によって、記録ヘッドが好適するギャップ(ノズルと記録媒体間の距離)となるように高さ調整されると、同様に、UV光個別光源4は図示しない高さ調整機構を備えている。
【0028】
また図7に示すように、円柱形状レンズであるロッドレンズ7を回転させるための回転駆動機構として、レンズ駆動軸23の一端には、レンズ駆動モータ32が駆動軸31により接続される。このレンズ駆動モータ32によって、ロッドレンズ7は、任意の速度(角速度)で回転することが可能である。この速度は、搬送機構2による記録媒体10の最高搬送速度よりも速い一定の高速度で回転(定回転速度モード)と、選択された記録画質に応じた搬送速度よりも速い可変する高速度で回転する(可変回転速度モード)とを設けてもよい。
【0029】
記録媒体10に画像を記録する際に、ユーザがその画質を選択指定する場合が多い。通常、高画質を選択するほど、記録ヘッドからの吐出されるインク滴が微小化され吐出回数も増加するため、画像記録時間が長くかかる。従って、搬送速度も高画質になるほど遅くなり、低画質になるほど、搬送速度が速くなっている。
【0030】
この可変回転速度モードは、記録媒体10の処理形態(画像の画質、レイアウト等)に応じた搬送速度よりもロッドレンズ7の回転速度が速い速度になるように適宜設定する速度モードである。尚、このように適宜可変してもよいが、画像の画質等の処理形態は、予めメニュー画面に設定されている範囲内であるため、ユーザが設定する条件に対する記録媒体10の搬送速度は既知である。よって、図示しないメモリ(テーブル)に予め複数の回転速度の速度モードを記録しておき、ユーザから選択された設定条件に従って、制御部6が対応する速度モードを読み出して、レンズ駆動モータ32を駆動制御してもよい。この時、ロッドレンズ7の回転方向は、記録媒体10に対向する面側、つまり前面側が記録媒体10の搬送方向と同じ方向(下流側)となる向きに設定される(図2における時計まわり方向に回転)。
【0031】
次に、図3を参照して、本実施形態における作用について説明する。
図3は、図2に示した記録ヘッド3とUV光個別光源4の構成において、回転に伴う気流の流れを模式的に示す図である。
【0032】
画像記録は、記録媒体が図示しない給紙装置から給紙され、無端ベルト15により搬送される記録媒体を検知し、記録ヘッド3a〜3eにより画像記録が開始される。記録された画像は、それぞれの記録ヘッド3a〜3eの下流側に設けられたUV光個別光源4a〜4eにより仮硬化がなされる。
【0033】
記録ヘッド3から記録媒体10に吐出されたUVインク液滴はUV光個別光源4で仮硬化が成される。UV光個別光源4内のロッドレンズ7は、画像記録開始時、又は記録媒体搬送開始時と同じタイミングで回転を開始する。これらの開始のタイミングは、用いられているロッドレンズ7の回転駆動手段によって選択すれば良いが、図7に示すレンズ駆動モータ32でロッドレンズ7を直接駆動する場合には、回転開始のレスポンスが高いので、画像記録開始と同期させればよい。
【0034】
記録ヘッド3からのUVインク液滴20aの吐出に伴い、ミスト31(ここでは、矢印にて発生した範囲を示している)が生成される。このミスト31は、図示しない記録ヘッド3の吐出口(ノズル)の周辺のほぼ均等に生成する。しかし、ミスト31は、図3に示すように、記録媒体10の搬送によって発生する記録媒体10面近傍の気流Aによって、押し流されて、記録媒体10と共に搬送方向下流側に向かって移動するものが多くなる。
【0035】
従って、記録ヘッド3の下流側直近に配置されたUV光個別光源4のロッドレンズ7に向かって、ミスト31は移動することになる。この時、ロッドレンズ7が回転せずに固定していた場合には、ロッドレンズ7にミスト31が付着し、さらに透過しているUV光により硬化されて定着してしまう。この定着したインクの層が厚くなるに従い、透過すべきUV光が遮られてしまう。
【0036】
これに対して、本実施形態によるロッドレンズ7は、前述したように、ミストが付着しようとする前面が少なくとも記録媒体10の搬送速度よりも速い回転速度となる回転数に設定されている。即ち、ロッドレンズ7が回転していると、空気には粘性があるため、ロッドレンズ7表面上の空気は、ロッドレンズ7の回転に追従して移動する。理論的には、ロッドレンズ7の極表面の空気は、ロッドレンズ7の移動速度と同速度で空気は追従しているため、ロッドレンズ7表面近傍の空気は、かなりの高速で移動することとなる。
【0037】
このため、ロッドレンズ7の前面近傍には、ロッドレンズ7の回転により気流Aよりも流速が早い気流Bが発生する。そして、ロッドレンズ7と記録媒体10間に発生する気流は、記録媒体の搬送によって発生する気流Aと、ロッドレンズの回転によって発生する気流Bとが合流し、非常に速い気流が発生する。
【0038】
つまり、ロッドレンズ7と記録媒体10間に発生する気流は、ロッドレンズ7を固定した場合に比べて、非常に早い気流が発生し、この空間(ロッドレンズ7と記録媒体10との間)の気圧は、非常に低下することになる。記録ヘッド3の記録動作に伴い図示しないノズル部から生成したインクミスト31は、この低い気圧に吸い寄せられ、ロッドレンズ7と記録媒体10の間の空間に入って行く。
【0039】
しかしながら、ロッドレンズ7の高速回転による高い流速の気流は、ミスト31をロッドレンズ7に到達及び付着させることなく、UV光個別光源4の搬送方向下流側に吹き飛ばしている。よって、ロッドレンズ7には、ミスト31の付着はなく、UV光の遮蔽が無くなり、仮硬化を長期に渡り安定して照射することができる。
【0040】
また、ロッドレンズ7の回転駆動機構は、図7に示すように、UV光照射領域を避けて配置されているため、ロッドレンズ7の回転がUV照射に影響を与えることもない。また、ミスト31は、ロッドレンズ7の被照射側を通過する際に、UV光に照射されて硬化されるため、硬化されたミストは、記録媒体10に定着することなく除去される。
【0041】
以上説明したように、ロッドレンズ7の高速回転によって発生する気流Bは、ロッドレンズ7と記録媒体10の間の極小領域に限られており、且つ記録ヘッド3の直下の気流には影響はない。さらに、気流Bは、重量の軽いミストに対しては吸引力として働くが、記録媒体10に着弾させるインク滴はサイズが異なっているため、着弾位置には全く影響を与えない。よって、本実施形態によるインクミスト抑制手段が画質に影響を与えることはない。尚、本実施形態を含む以下に説明する実施形態においては、UVインクを用いたインクジェット記録装置を一例として説明しているが、これに限定されるものではなく、インクにより画像記録を行い、ミストが発生する記録装置に対して、容易に適用することができる。
【0042】
従って、従来技術で提案されている光源内から光源外部に気流を発生させた場合において、強い気流が広い領域に渡り流れることで、記録ヘッドの吐出(インク滴の飛翔航路)にまで影響を与えるものとは根本的に異なっている。さらに、ロッドレンズ7を回転させてミストの付着を防止する効果は、ミスト31を捕捉しないために、従来には必要であった定期的なクリーニングやメンテナンスを必要としない。
【0043】
[第2の実施形態]
次に図4は、第2の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置に搭載されるUV光個別光源の構成を模式的に示す図である。本実施形態において、前述した第1の実施形態と同等の部材には同じ参照符号を付して、その説明省略する。また、本実施形態では、UV光個別光源のみについて説明するが、これ以外は、第1の実施形態における図1に示す構成を備えている。
【0044】
本実施形態のUV光個別光源4は、搬送方向の下流側に、整流板24を追加して設けた構成である。ロッドレンズ7を通過した後の高速の気流は、UV光源ケース21の側面によってうず等の気流の乱れを発生させる。
【0045】
そこで、本実施形態では、ロッドレンズ7の前面側の最も低い(最も記録媒体に近い)箇所と同じ高さで、ロッドレンズ面に近接させた位置に、平板形状の整流板24を設けている。この整流板24は、ロッドレンズ7を通過した後の気流に対して、高い流速を維持させることで、ロッドレンズ7下流側、又はUV光個別光源4の下流側面にミスト31が付着することを防止し、よりミスト付着防止効果を高めることができる。
【0046】
[第3の実施形態]
次に図5は、第3の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置に搭載されるUV光個別光源の構成を模式的に示す図である。本実施形態において、前述した第2の実施形態と同等の部材には同じ参照符号を付し、またUV光個別光源以外に第1の実施形態における図1に示す構成をも備えている。
【0047】
本実施形態は、前述した第2の実施形態における整流板24(搬送方向下流側)と、ロッドレンズ7との間に、ロッドレンズ7と接触するブレード25を追加した構成である。ブレード25は、ゴムや樹脂等の弾性部材からなり、少なくともロッドレンズ7にキズ等の損傷を与えない部材により構成されている。
【0048】
ミスト31は、高速の気流によりロッドレンズ7には、ほとんど付着していないが、全く無いということではない。微量ながら付着したミスト31は、UV光に晒されて硬化した状態で付着しているため、ブレード25を当接させて、剥ぎ取ることができる。但し、固化したミスト31を剥ぎ取るため、ブレード25は、ロッドレンズ7(UV光の照射窓)を通る光束を遮らない位置で、且つロッドレンズ7よりも搬送方向下流側に配置しなければならない。
【0049】
また、この剥ぎ取りは、簡単に除去可能であり、除去された固化ミスト31は僅かな量であるため、特別に回収手段を設ける必要はない。
このブレード25の付加により、より長時間のメンテナンス不要にすることができ、また、不測のロッドレンズ7へのUVインク付着があったとしても、ブレード25による掻き落しによって、UV照射光量に影響を与えることなく、画像記録をすることが可能となる。
【0050】
[第4の実施形態]
次に図6は、第4の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置に搭載されるUV光個別光源の構成を模式的に示す図である。本実施形態において、前述した第3の実施形態と同等の部材には同じ参照符号を付し、またUV光個別光源以外に第1の実施形態における図1に示す構成をも備えている。
【0051】
本実施形態は、前述した第3の実施形態における整流板24とブレード25の機能を統合して一体的に構成したブレード整流板26を設けている。
【0052】
このブレード整流板26は、先端部26aが湾曲してロッドレンズ7の当接し、先端部より後方は、平板形状の整流板部26bとなっている。機能は、整流板とブレードとが一体化したシンプルな構造であり、効果的にミスト31のUV光個別光源4への付着を防止し、且つ付着したミスト31を掻き落すことにより、長期に渡って光源を保護して安定した高画質画像を形成することが可能となる。
【0053】
[第5の実施形態]
次に図8は、第5の実施形態に係る光硬化型インクジェット記録装置に搭載されるUV光個別光源の構成を模式的に示す図である。本実施形態において、前述した第1の実施形態と同等の部材には同じ参照符号を付し、またUV光個別光源以外に第1の実施形態における図1に示す構成をも備えている。
【0054】
本実施形態は、UVライトガイド22に替わって、UV光源ケース21内にUV光源となる紫外線LED等の光学素子41を複数個配置した構成例である。本実施形態は、ライトガイドの引き廻しが難しい小型の画像記録装置に好適する。
【0055】
[第6の実施形態]
次に、図9は、第6の実施形態に係る画像読み取り装置に回転するロッドレンズを搭載した構成例を示している。前述した第1乃至第5の実施形態においては、UVインクを硬化させるUV光個別光源に回転するロッドレンズを搭載した構成であった。インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置は、UV光源だけではなく、撮像素子と光学系により構成される画像読み取り装置も搭載されている。従って、画像読み取り装置も記録ヘッドの下流側に配置され、UV光源と同等なミストの環境下にある。
【0056】
図9に示すように、画像読み取り装置51は、記録ヘッド3の搬送方向の下流側に配置され、記録媒体に記録された画像(調整用テストパターン等)や記録媒体の端部(先端、後端及び側端等)の検出に用いられている。
【0057】
本実施形態の画像読み取り装置51は、ケース52内にCMOS素子等の撮像素子53と、撮像光学系54とが配置されている。また、ケース52の記録媒体と対向する側の開口部には、回転するロッドレンズ(円柱状レンズ)7が設けられている。撮像素子53における撮像の制御及び撮像光学系54の合焦動作の制御等は、図示しない撮像制御部により行われている。
撮像光学系54は、凸レンズ(対物レンズ)として機能するロッドレンズ7を含めて、撮像画像の補整や合焦を行い、撮像素子53に結像する。
【0058】
本実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様に、記録媒体の搬送速度よりも速い速度でロッドレンズ7を回転させる図7に示したと同等な回転機駆動機構(レンズ駆動モータ32等)を備えており、て、ミスト31の付着を抑制させることができる。尚、画像読み取り装置51は、UV光源(UV光個別照射部4及びUV光主照射部5)よりも記録ヘッド3とは離れているため、UV光源ほどは、ミストの影響を受けない。また、UV光個別照射部4と同様に、整流板を設けることにより、よりミスト31の付着を防止することができる。但し、UV光を照射する機能を備えていないのでブレードは設けなくともよい。
以上のように本実施形態の画像読み取り装置51は、インクジェット記録による発生したインクミストに対して、その付着を防止することにより、第1の実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0059】
前述した各実施形態では、ロッドレンズ(円柱状レンズ)を例として説明したが、他にも、球状レンズであっても同様な効果を得ることができる。また、ロッドレンズは、回転軸をノズル列方向又は記録媒体の記録面に平行な軸により回転したが、例えば、釣り鐘形状(下方が曲面)、円錐形状、球形状又は環形状のレンズ(又は部材)を回転させる場合には、インクの吐出方向、又は、記録媒体の記録面に傾きを持った軸方向に回転させてもよい。尚、画像読み取り装置51以外においても、搬送経路上に設けられて記録媒体10の先端(後端)又は側端を検出する光学センサの光学系に、本実施形態のロッドレンズを適用してもよい。
【0060】
尚、前述した各実施形態では、搬送機構により搬送されている記録媒体に固定されたインクジェット記録ヘッドが画像を形成する、所謂ラインプリンタについて説明したが、これに限定されず、インクジェット記録ヘッドと光照射装置が一体的に走査移動して画像を記録する、シリアルプリンタに対しても容易に適用することができる。
【0061】
前述した各実施形態は、以下の発明を含んでいる。
(1)記録ヘッドと、記録ヘッド下流側であって、記録ヘッドに隣接するよう配置された光源装置において、光源装置の光学系を構成する複数の光学部品のうち、最も記録媒体側に配設される光学部品における記録媒体側の表面上に気流を発生させるように、当該光学部品を回転駆動させることを特徴とする画像記録装置。
(2)前記(1)項において、該レンズは記録媒体との距離が、記録ヘッドと記録媒体間との距離に近い値であることを特徴とする画像記録装置。
(3)前記(1)項において、光源とレンズとの隙間はごく少ないことを特徴とする画像記録装置。
(4)前記(1)項において、光源下流側に整流板を設けたことを特徴とする画像記録装置。
(5)前記(1)項において、光源下流側にブレードを設けたことを特徴とする画像記録装置。
(6)前記(4)項において、光源下流側に整流板はブレードの機能を有することを特徴とする画像記録装置。
【符号の説明】
【0062】
1…画像記録装置、2…搬送機構、3,3a〜3e…記録ヘッド部、4,4a〜4e…UV光個別照射部、5…UV光主照射部、6…制御部、10…記録媒体、11…駆動ローラ、12,13,14…ローラ、15…無端ベルト、16…プラテン、16A…画像記録エリア、16B…インク硬化エリア、17…ファン、20…UVインク層、20a…UVインク液滴、21…UV光源ケース(ハウジング)、22…UVライトガイド、22a…UV光照射口部、23…レンズ駆動軸、32…レンズ駆動モータ、33…駆動軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にインク滴を着弾してインク層からなる画像を形成する画像記録部と、
前記記録媒体上に形成された画像に光を照射し、前記インク層を硬化させて前記記録媒体への定着を促進する光照射部と、
を有する画像記録装置において、
前記光照射部は、
光を発する光源と、
その中心軸が前記光源から発せられた光の光軸に対して交差するように配置され、前記光源から発せられた光を記録媒体に向かって、集光照射させる円柱状レンズと、
前記円柱状レンズをその中心軸まわりに回転駆動させる回転駆動機構と、
を有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記円柱状レンズの中心軸は、前記記録媒体の面方向と平行であることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記光照射部は、さらに、前記光源をその内部に収納し、記録媒体に向かう方向に開口が形成されたハウジングを有し、
前記円柱状レンズは、前記ハウジングの開口を塞ぐように、当該開口の前面に配設されることを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段を、さらに有し、
前記画像記録部は、前記記録媒体搬送手段によって搬送される記録媒体に対して、画像を記録するものであって、
前記回転駆動機構は、
円柱状レンズの回転方向が、前記記録媒体に対向する側が前記記録媒体搬送手段によって搬送される記録媒体の搬送方向と一致するように、前記円柱状レンズを回転駆動されることを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記円柱状レンズの回転速度は、前記記録媒体の搬送速度よりも速いことを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記円柱状レンズの円柱面における前記円柱状レンズを通る光束を遮らない位置で、前記円柱面に当接するブレードをさらに、有することを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記画像記録装置は、
前記記録媒体に記録する画質によって、当該記録媒体の搬送速度が変化する記録媒体搬送手段と、
前記光照射部と前記回転駆動機構を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部には、
前記円柱状レンズの回転速度が、常に前記記録媒体搬送手段により搬送される前記記録媒体の最も速い搬送速度よりも速い回転速度に設定される定回転速度モードと、
前記記録媒体搬送手段により、選択された画質に応じた前記記録媒体の搬送速度よりも速い回転速度に設定される可変回転速度モードと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項8】
画像が記録されている記録媒体又は、記録媒体上に記録された画像を光学的に検出する画像記録装置に搭載される画像読み取り装置であって、
前記画像読み取り装置は、
記録媒体又は画像からの光を受光する撮像素子と、
その中心軸が撮像素子に到達する光の光軸に対して交差するように配置され、前記撮像素子に到達する光を集光させて受光させる円柱状レンズと、
前記円柱状レンズをその中心軸まわりに回転駆動させる回転駆動機構と、
を有することを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20423(P2012−20423A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158240(P2010−158240)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】