画像診断装置
【課題】 光生体測定装置と、PET装置やSPECT装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行うことができる画像診断装置を提供する。
【解決手段】 脳活動に関する測定データを得る送受光部制御部41を備える画像診断装置1であって、エミッションデータ収集用検出器22で検出された放射線に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するポジトロン再構成部45と、3次元形態画像データ作成部42と、測定データが得られる位置に関する測定関連位置を算出して、頭皮表面画像中の測定関連位置に測定データを表示する測定関連位置算出部44と、測定データが表示された頭皮表面画像中の任意の位置が指定されることにより、任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示するポジトロン断層画像表示制御部46とを備えることを特徴とする。
【解決手段】 脳活動に関する測定データを得る送受光部制御部41を備える画像診断装置1であって、エミッションデータ収集用検出器22で検出された放射線に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するポジトロン再構成部45と、3次元形態画像データ作成部42と、測定データが得られる位置に関する測定関連位置を算出して、頭皮表面画像中の測定関連位置に測定データを表示する測定関連位置算出部44と、測定データが表示された頭皮表面画像中の任意の位置が指定されることにより、任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示するポジトロン断層画像表示制御部46とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲で脳活動を測定する光生体測定装置と、PET(ポジトロン・エミッション・コンピュータ・トモグラフィ)装置やSPECT(シングルフォトン・エミッション・コンピュータ・トモグラフィ)装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行う画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運動や感覚や思考等の脳機能に関する脳の測定部位のヘモグロビン濃度等を計測することにより、脳機能診断や循環器系障害診断等の医療分野に適用される光生体測定装置が開発されている。このような光生体測定装置では、例えば、近赤外分光分析計(以下、NIRSと略す)等が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
NIRSでは、被検体の頭皮表面上に配置した送光プローブにより、脳に近赤外光を照射するとともに、頭皮表面上に配置した受光プローブにより、脳から放出された近赤外光の光量を検出する。近赤外光は、頭皮組織や骨組織を透過し、かつ、血液中のオキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビンにより吸収される。よって、送光プローブと受光プローブとを用いることにより、脳の測定部位のオキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、さらにはこれらから算出される全ヘモグロビン濃度の経時変化を測定データとして求めることができる。
【0003】
ここで、送光プローブと受光プローブとのプローブ間隔(チャンネル)と、脳の測定部位との関係について説明する。図9(a)は、一対の送光プローブ12及び受光プローブ13と、脳の測定部位との関係を示す断面図であり、図9(b)は、図9(a)の平面図である。
送光プローブ12が被検体の頭皮表面上の送光点Tに押し当てられるとともに、受光プローブ13が被検体の頭皮表面上の受光点Rに押し当てられる。そして、送光プローブ12から光を照射させるとともに、受光プローブ13に頭皮表面から放出される光を検出させる。このとき、光は、頭皮表面上の送光点Tから照射された光のうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した光が、頭皮表面上の受光点Rに到達する。これにより、測定領域の中でも、特に、送光点Tと受光点Rとを被検体の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線Lの中点M(本明細書中では、「測定関連位置」ともいう)から、送光点Tと受光点Rとを被検体の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の距離の半分の深さL/2である被検体の部位Sの受光量情報(オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、さらにはこれらから算出される全ヘモグロビン濃度)が求まるとしている。図10は、測定データの一例を示す図である。なお、縦軸は濃度を示し、横軸は時間を示す。
【0004】
このようなNIRSにおいては、複数個の送光プローブと、複数個の受光プローブとを所定の配列で被検体の頭皮表面に密着させるために、ホルダが使用される。このようなホルダとしては、例えば、頭皮表面の形状に合わせて椀形状に成型された成型ホルダが使用されている。成型ホルダには貫通孔が複数個設けられ、送光プローブと受光プローブとがそれらの貫通孔に挿入されることによって、チャンネルが一定となり、頭皮表面から特定の深度の受光量情報を得ている。
図11は、上述したようなNIRSにおける12個の送光プローブと12個の受光プローブとの位置関係を示す平面図である。送光プローブ12a〜12lと受光プローブ13a〜13lとは、斜め方向に交互となるように配置されている。なお、送光プローブ12a〜12lから照射された光は、隣接する受光プローブ13a〜13l以外の離れた受光プローブ13a〜13lでも検出されるが、ここでは説明を簡単にするため、隣接する受光プローブ13a〜13lのみで検出されることとする。よって、合計36個の受光量情報(測定データ)が得られることとする。
【0005】
そして、NIRSで得られた脳活動に関する測定データは、医師等によって観察されるために、画像として表示される。図12は、従来のNIRSにより36個の測定データが表示されたモニタ画面の一例を示す図である。
モニタ画面には、36個の測定データ#1〜#36の表示が行われている。このとき、図11に示した平面図において、送光プローブ12と受光プローブ13とを最短距離で結んだ線の各中点に、その送光プローブ12から照射させた光を、その受光プローブ13で検出させたときに得られた測定データが配置されるように整列されて表示されている。具体的には、送光プローブ12aから照射させた光を受光プローブ13aで検出させたときの測定データ#1が、左上に配置され、送光プローブ12aから照射させた光を受光プローブ13dで検出させたときの測定データ#2が、測定データ#1の下に配置され、送光プローブ12bから照射させた光を受光プローブ13aで検出させたときの測定データ#7が、測定データ#1の右に配置されるように、36個の測定データ#1〜#36が整列して配置されている。
【0006】
また、脳の測定部位のどの部分から得られた測定データであるかを把握しやすくするために、核磁気共鳴画像診断装置(以下、MRIと略す)やCT画像等により作成された被検体の映像データから、脳表面を示す映像データを抽出することにより作成された3次元画像データや、標準的な3次元の脳表面を示すテンプレートデータ等である脳表面画像上に測定データが重畳されて表示されるものもある。
【0007】
一方、放射性薬剤を被検体に投与した後、対象組織における薬剤蓄積の過程を経時的に測定することで、様々な生体機能の定量測定が可能であるPET装置が開発されている。PET装置では、癌や腫瘍に集まる性質を有する薬剤にポジトロン放出性核種で標識した上で、この薬剤(トレーサー)を人体内に投与する。ポジトロン消滅時に180°反対方向にガンマ線が放出されるので、人体を360°囲むようにリング状に配列された多数の放射線検出器でその2つのガンマ線の同時入射をとらえる。それらの入射位置を結ぶ線上に核種が位置するという関係から、それら入射位置を結ぶ線(LOR:Line Of Response)について同時入射個数を計数する。こうした同時計数を多数のLORの各々ついて一定時間行ってエミッションデータを収集し、演算処理することにより、核種の分布像を再構成する。この分布像は、放射線検出器がリング状に配列される平面が人体を横切る断層面での核種の濃度分布を表す。
【0008】
なお、グルコース代謝量を測定したいときには、トレーサーとして18F-fluorodeoxy glucose (フルオロデオキシグルコース、FDG)を用い、脳血流量や酸素代謝量を測定したいときには、トレーサーとして15Oでラベルした15O2やH215Oを用いる。
また、このようなPET装置では、エミッションデータ収集とともにトランスミッションデータも収集することができるものも知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなPET装置では、エミッションデータ収集用検出器の他に、トランスミッションデータ収集用検出器と回転移動する点状線源とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−109964号公報
【特許文献2】特開2001−194459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、NIRSとMRI等とを組み合わせたものでは、36個の測定データ#1〜#36において、全ヘモグロビン濃度等と時間との関係が表示されているが、医師等は空間分解能が低く癌や腫瘍の位置を詳細に把握することができなかった。
また、PET装置とCT装置とを組み合わせたものでは、癌や腫瘍の位置を詳細に把握することができるが、時間分解能が低くその癌や腫瘍に関する経時変化の様子を詳細に把握することができなかった。
なお、光生体測定装置(NIRS)と、PET装置やSPECT装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行ったとしても、表示中の表示画面とは別の表示画面を開くというように切り替えを行う必要があるので、多くの手間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本件発明者は、上記課題を解決するために、光生体測定装置と、PET装置やSPECT装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行う方法について検討を行った。その結果、光生体測定装置により得られた測定データが表示された頭皮表面画像中の任意の位置(特に観察したい位置)が指定されることにより、任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示することを見出した。これにより、医師等は、測定データが表示された頭皮表面画像を観察しながら、特に観察したい頭皮表面画像中の任意の位置を指定することにより、特に観察したい測定データに関係するポジトロン断層画像を呼び出すことができる。よって、医師等は、経時変化の様子を詳細に把握することができるとともに、癌や腫瘍の位置も詳細に把握することができる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の画像診断装置は、被検体の頭皮表面上に配置される複数個の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数個の受光プローブとを有する送受光部と、前記送光プローブが頭皮表面に光を照射するとともに、前記受光プローブが頭皮表面から放出される光を検出するように制御することで、脳活動に関する測定データを得る送受光部制御部とを備える画像診断装置であって、放射性薬剤が投与された被検体から発生する放射線を検出するリング状のエミッションデータ収集用検出器と、前記エミッションデータ収集用検出器で検出された放射線に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するポジトロン再構成部と、線源から照射されて被検体を透過する放射線又はX線を、当該放射線又はX線の照射方向を変更しつつ連続的に検出していくトランスミッションデータ収集用検出器と、前記トランスミッションデータ収集用検出器で検出された放射線又はX線に基づいて、前記被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成して頭皮表面画像を表示する3次元形態画像データ作成部と、前記被検体の頭皮表面上に配置された送光プローブの位置と受光プローブの位置とに対応する頭皮表面画像中の位置が指定されることにより、前記測定データが得られる位置に関する測定関連位置を算出して、前記頭皮表面画像中の測定関連位置に測定データを表示する測定関連位置算出部と、前記測定データが表示された頭皮表面画像中の任意の位置が指定されることにより、前記任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示するポジトロン断層画像表示制御部とを備えるようにしている。
【0013】
ここで、「被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データ」とは、例えば、被検体の映像データから、頭皮表面を示す映像データを抽出することにより作成された3次元画像データ等のことをいう。
本発明の画像診断装置によれば、3次元形態画像データ作成部は、トランスミッションデータ収集用検出器で検出された放射線やX線に基づいて、被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成して頭皮表面画像を表示する。
そして、医師等は、被検体の頭皮表面上に配置された送光プローブの位置と受光プローブの位置とに対応する頭皮表面画像中の位置を指定する。これにより、送光プローブと受光プローブと頭皮表面画像との位置関係が対応付けられ、測定関連位置算出部は、測定関連位置を算出して、頭皮表面画像中の測定関連位置に測定データを表示する。すなわち、頭皮表面画像上に測定データが重畳されて表示される。したがって、どの部分から得られた測定データであるかを把握しながら測定データを観察することができる。
そして、医師等は、測定データが表示された頭皮表面画像を観察しながら、特に観察したい頭皮表面画像中の任意の位置を指定する。これにより、ポジトロン断層画像表示制御部は、任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示する。したがって、医師等は、特に観察したい測定データに関係するポジトロン断層画像を呼び出すことができる。
【発明の効果】
【0014】
したがって、本発明の画像診断装置によれば、経時変化の様子を詳細に把握することができるとともに、癌や腫瘍の位置も詳細に把握することができる。
【0015】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の画像診断装置は、前記測定関連位置は、送光プローブの位置と受光プローブの位置とを頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点の位置であるようにしてもよい。
また、本発明の画像診断装置は、前記測定データは、ヘモグロビン濃度とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、色分けされたものであるようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の画像診断装置は、前記頭皮表面画像は、所望の方向から見た画像となるように、当該方向を変更可能として表示されるようにしてもよい。
本発明の画像診断装置によれば、頭皮表面画像を所望の方向から見た画像となるように表示することができるので、特に注目したい頭皮表面画像で得られた測定データが中心にくるようにして表示することができる。
【0017】
そして、本発明の画像診断装置は、前記ポジトロン断層画像表示制御部は、前記任意の位置が含まれるXYスライス位置とYZスライス位置とZXスライス位置となる3枚のポジトロン断層画像を表示するようにしてもよい。
さらに、本発明の画像診断装置は、前記ポジトロン断層画像表示制御部は、前記ポジトロン断層画像中に前記任意の位置を中心とする円を表示するようにしてもよい。
本発明の画像診断装置によれば、癌や腫瘍の位置と、測定データが得られた位置との位置関係を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態である画像診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】4個の送光プローブと受光プローブとの位置関係を示す平面図。
【図3】トランスミッションデータ用放射線検出器により得られた3方向となる2次元画像を示すデータ。
【図4】被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データ。
【図5】本発明に係る画像診断装置により表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【図6】本発明に係る画像診断装置により表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【図7】本発明に係る画像診断装置により表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【図8】画像診断装置による表示方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図9】一対の送光プローブ及び受光プローブと、脳の測定部位との関係を示す図。
【図10】測定データの一例を示す図。
【図11】12個の送光プローブと受光プローブとの位置関係を示す平面図。
【図12】従来のNIRSにより表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である画像診断装置の構成を示すブロック図である。なお、地面に水平な一方向をX方向とし、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
画像診断装置1は、被検体Pを載置するための天板2と、天板2を移動させる駆動機構3と、NIRS(光生体測定装置)10と、PET装置20と、画像診断装置1全体の制御を行う制御部(コンピュータ)30とにより構成される。
【0021】
NIRS10は、ホルダ(送受光部)11と、発光部14と、光検出部15とにより構成される。図2は、ホルダ11における4個の送光プローブ12a〜12dと、4個の受光プローブ13a〜13dとの位置関係を示す平面図である。
ホルダ11は、4個の送光プローブ12a〜12dと4個の受光プローブ13a〜13dとを有し、送光プローブ12a〜12dと受光プローブ13a〜13dとが斜め方向に交互となるように配置されたものである。なお、送光プローブ12a〜12dと受光プローブ13a〜13dとの間の距離は、30mmである。また、4個の送光プローブ12a〜12dは、光を出射するものであり、一方、4個の受光プローブ13a〜13dは、光の量を検出するものである。
【0022】
発光部14は、コンピュータ30から入力された駆動信号により4個の送光プローブ12a〜12dのうちから選択される1個の送光プローブに光を送光する。上記光としては、近赤外光(例えば、780nmと850nmとの2波長光)が用いられる。
光検出部15は、4個の受光プローブ13a〜13dで受光した近赤外光(例えば、780nmと850nmとの2波長光)を個別に検出することにより、4個の受光信号(測定データ)をコンピュータ30に出力する。
【0023】
PET装置20は、X方向にトンネルが設けられたPETガントリ21と、エミッションデータ用放射線検出器22と、トランスミッションデータ用放射線検出器23と、線源24とを備える。
天板2は、被検体Pを上面に載置し、駆動機構3によって上下(Z方向)に昇降移動したり、被検体Pの体軸(X方向)に沿って平行移動したりするように構成されている。このように構成することで、天板2に載置された被検体Pは、PETガントリ21のトンネル内部をX方向で通ることができるようになっている。
【0024】
線源24は、被検体Pに投与する放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)と同じ放射線(本実施例ではガンマ線)をトンネルの中心軸(被検体Pの体軸)に向かって照射する外部線源であって、PETガントリ21のトンネルの前部に配設されている。そして、線源24は、放射線の照射方向を変更することができるようにトンネルの中心軸(被検体Pの体軸)を回転軸としてトンネルの周りを回転移動可能となっている。
トランスミッションデータ用放射線検出器23は、蛍光体(シンチレータ)と光電子増倍管を接合させたシンチレーション検出器で構成されている。シンチレーション検出器は、被検体Pの体軸を取り囲むリング状であり、線源24から照射されて被検体Pを透過する放射線を検出するようにPETガントリ21の前部のトンネルの周りに配設されている。そして、トランスミッションデータ用放射線検出器23は、検出した放射線をシンチレータで光に変換し、光電子増倍管で光電変換した後、電気信号としてコンピュータ30に出力する。
【0025】
エミッションデータ用放射線検出器22は、蛍光体(シンチレータ)と光電子増倍管を接合させたシンチレーション検出器で構成されている。シンチレーション検出器は、被検体Pの体軸を取り囲むX方向に多層のリング状であり、被検体Pから発生する放射線を検出するようにPETガントリ21の後部のトンネルの周りに配設されている。
【0026】
コンピュータ30においては、CPU40を備え、さらにメモリ35と、モニタ画面33a等を有する表示装置33と、入力装置32であるキーボード32aやマウス32bとが連結されている。
また、CPU40が処理する機能をブロック化して説明すると、発光部14及び光検出部15を制御する送受光部制御部41と、天板2及び線源24を制御する撮影制御部47と、被検体Pの頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成する3次元形態画像データ作成部42と、ポジトロン断層画像を再構成するポジトロン再構成部45と、ポインタ表示制御部43と、測定データが得られる位置に関する測定関連位置を算出する測定関連位置算出部44と、ポジトロン断層画像を表示するポジトロン断層画像表示制御部46とを有する。
また、メモリ35は、測定データ等を記憶する測定データ記憶領域35aと、形態映像データや3次元形態画像データ等を記憶する画像データ記憶領域35bと、ポジトロン断層画像を記憶するポジトロン断層画像記憶領域35cとを有する。
【0027】
送受光部制御部41は、発光部14に駆動信号を出力する発光制御部41aと、光検出部15からの受光信号(測定データ)を受けることにより測定データを測定データ記憶領域35aに記憶させる光検出制御部41bとを有する。発光制御部41aは、送光プローブ12に光を送光する駆動信号を発光部14に出力する制御を行う。例えば、まず、1個の送光プローブ12に光を0.15秒間送光させ、次に、他の1個の送光プローブ12に光を0.15秒間送光させるように順次、送光プローブ12に光を送光させる駆動信号を発光部14に出力する。また、光検出制御部41bは、光検出部15からの受光信号を受けることにより、4個の受光プローブ13a〜13dから検出された4個の測定データを測定データ記憶領域35aに記憶させる制御を行う。つまり、1個の送光プローブから光が送光されるごとに、4個の測定データが測定データ記憶領域35aに記憶されることになる。
撮影制御部47は、天板2に駆動信号を出力するとともに、線源24に駆動信号を出力する。つまり、天板2に載置された被検体Pは、PETガントリ21のトンネル内部をX方向に所定の速度で通り、線源24は所定のタイミングで被検体Pの体軸を回転軸としてトンネルの周りを回転移動することになる。
【0028】
3次元形態画像データ作成部42は、トランスミッションデータ用放射線検出器23で検出された電気信号(放射線)に基づいて、2次元画像を示す形態映像データを取得して、様々な方向となる2次元画像を示す形態映像データを取得した後、頭皮表面を示す形態映像データを抽出することにより、被検体Pの頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成するとともに、モニタ画面33aに頭皮表面画像を表示する制御を行う。
図3は、トランスミッションデータ用放射線検出器23により得られた3方向となる2次元画像を示すデータである。ここで、形態映像データとは、被検体Pを示すものであり、信号の強度情報や位相情報等の数値を有する複数のピクセルから構成されるデータをいう。
そして、上述した抽出する方法としては、例えば、信号の強度情報や位相情報等の数値を有する複数のピクセルを用いることにより、領域拡張法、領域併合法、ヒューリスティック法等の画像領域分割方法、境界要素を連結して領域を抽出する方法、閉曲線を変形させて領域を抽出する方法等を利用する方法等が挙げられる。図4は、作成された被検体Pの頭皮表面を示す3次元形態画像データである。なお、操作者が入力装置32を用いて、所望の方向から見た頭皮表面画像51となるように、方向を変更して表示することができるようになっている。
【0029】
ポインタ表示制御部43は、モニタ画面33aにポインタ(図示せず)を表示するとともに、マウス32bから出力された操作信号に基づいて、モニタ画面33aに表示されたポインタを移動したり、ポインタで位置を指定したりする制御を行う。
【0030】
測定関連位置算出部44は、被検体Pの頭皮表面上に配置された送光プローブ12の位置と受光プローブ13の位置とに対応する頭皮表面画像51中の所定の位置52がポインタで指定されることにより、測定データが得られる位置に関する測定関連位置53を算出して、頭皮表面画像51中の測定関連位置53に測定データを表示する制御を行う。
例えば、医師等は、被検体Pの頭皮表面にホルダ11を装着して、その後、ホルダ11が装着された頭皮表面と、モニタ画面33aに表示された頭皮表面画像51とを目視で対比しながら、被検体Pの頭皮表面に装着されたホルダ11の4個の送光プローブ12a〜12dの位置と、4個の受光プローブ13a〜13dの位置とを観察しながら、頭皮表面画像51中の4個の送光プローブ12a〜12dの位置(白丸)と、4個の受光プローブ13a〜13dの位置(黒丸)とをポインタで指定する(図2,5参照)。
【0031】
このとき、測定関連位置算出部44によって、どの送光プローブ12a〜12d又は受光プローブ13a〜13dの位置をポインタで指定したかが認識されるように、各送光プローブ12a〜12dには、異なる番号がそれぞれ振り当てられるとともに、各受光プローブ13a〜13dにも、異なる番号がそれぞれ振り当てられており、医師等は、番号をキーボード32a等で入力しながら指定するか、或いは、番号順に各送光プローブ12a〜12dの位置を指定した後、番号順に受光プローブ13a〜13dの位置を指定することになる。
また、測定関連位置算出部44によって、どの送光プローブ12a〜12dと受光プローブ13a〜13dとについての測定関連位置53を算出すればよいかが認識されるように、従来のものと同様に、医師等は、予め組み合わせを示すテーブル等を作成して、メモリ35の測定データ記憶領域35aに記憶させておく。
【0032】
これにより、測定関連位置算出部44は、測定データ記憶領域35aに記憶されたテーブル等と指定位置とに基づいて、送光プローブ12aの指定位置と受光プローブ13aの指定位置とを最短距離で結んだ線の中点の位置を、送光プローブ12aと受光プローブ13aとについての頭皮表面画像51中の測定関連位置53とし、送光プローブ12bの指定位置と受光プローブ13aの指定位置とを最短距離で結んだ線の中点の位置を、送光プローブ12bと受光プローブ13aとについての頭皮表面画像51中の測定関連位置53とするように、送光プローブ12の指定位置と受光プローブ13の指定位置とを最短距離で結んだ線の中点の位置を、送光プローブ12と受光プローブ13との組む合わせについての頭皮表面画像51中の測定関連位置53とする。
【0033】
また、測定関連位置算出部44は、測定データ記憶領域35aに記憶された測定データにおいて、送光プローブ12から、送光プローブ12と隣接した受光プローブ13への光の受光量情報(測定データ)を取得して、取得した測定データに基づいて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度及び全ヘモグロビン濃度を求めるとともに、測定関連位置53中にオキシヘモグロビン濃度やデオキシヘモグロビン濃度や全ヘモグロビン濃度(測定データ)を表示する。
このとき、測定データを表示する方法としては、例えば、測定関連位置53を中心とする直径30mmの円形の領域54に、入力装置32等によって任意の選択された時間において、全ヘモグロビン濃度とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、全ヘモグロビン濃度(測定データ)を色分けして表示する方法等が挙げられる。そして、入力装置32等によって時間を変化させることにより、測定関連位置53での経時変化を観察したり、入力装置32等を用いて平均値を観察したりする。また、全ヘモグロビン濃度をオキシヘモグロビン濃度やデオキシヘモグロビン濃度に入力装置32等によって切り替えることにより、測定関連位置53での他の経時変化も観察する。
【0034】
図6は、本発明に係る画像診断装置1により表示されたモニタ画面の一例を示す図である。なお、図6では、1個のホルダ11を被検体Pの頭皮表面の右側に装着するとともに、別の1個のホルダ11を被検体Pの頭皮表面の左側に装着している。モニタ画面33aには、頭皮表面画像51と、20個の測定データ#1〜#20とが表示されている。測定データ#1〜#20は、所定の時間における全ヘモグロビン濃度を示すカラーで色づけされて表示されている。
なお、画像診断装置1では、頭皮表面画像51を所望の方向から見た画像となるように、方向を変更可能として表示することができるので、測定関連位置53も移動されることになる。
【0035】
ポジトロン再構成部45は、エミッションデータ収集用検出器22で検出された電気信号(放射線)に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するとともに、複数のポジトロン断層画像をポジトロン断層画像記憶領域35cに記憶させる制御を行う。
ポジトロン断層画像表示制御部46は、測定データが表示された頭皮表面画像51中の任意の位置55がポインタで指定されることにより、任意の位置55が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示する制御を行う。例えば、ポジトロン断層画像表示制御部46は、任意の位置55が含まれるXYスライス位置(軸位断)とYZスライス位置(冠状断)とZXスライス位置(矢状断)となる3枚のポジトロン断層画像56a〜56cを表示する。図7は、本発明に係る画像診断装置1により表示されたモニタ画面の一例を示す図である。モニタ画面33aには、頭皮表面画像51と、20個の測定データ#1〜#20と、3枚のポジトロン断層画像56a〜56cとが表示されている。頭皮表面画像51と20個の測定データ#1〜#20とは、左側領域に表示され、3枚のポジトロン断層画像56a〜56cは、右側領域に表示されている。3枚のポジトロン断層画像56a〜56cは、縦方向に並べられ、上から順番にXYスライス位置56aとYZスライス位置56bとZXスライス位置56cとなっている。そして、3枚のポジトロン断層画像56a〜56c中には、任意の位置55を中心とする半径30mmの円57a〜57cが重畳されて表示されている。さらに、任意の位置55におけるオキシヘモグロビン濃度とデオキシヘモグロビン濃度と全ヘモグロビン濃度の経時変化を示す測定データが表示されている。
【0036】
次に、画像診断装置1により、ポジトロン断層画像を表示する表示方法について説明する。図8は、画像診断装置1による表示方法の一例について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、医師等は被検体Pの頭皮表面にホルダ11を配置するとともに、放射性医薬品(トレーサー)を投与された被検体Pを天板2に載置する。
【0037】
次に、ステップS102の処理において、発光制御部41a及び光検出制御部41bは、発光部14に駆動信号を出力するとともに、光検出部15からの受光信号(測定データ)を受けることにより測定データを測定データ記憶領域35aに記憶させていく。
次に、ステップS103の処理において、撮影制御部47は、天板2に駆動信号を出力するとともに、線源24に駆動信号を出力する。
【0038】
次に、ステップS104の処理において、3次元形態画像データ作成部42は、トランスミッションデータ用放射線検出器23で検出された電気信号(放射線)に基づいて、2次元画像を示す形態映像データを取得して、様々な方向となる2次元画像を示す形態映像データを取得した後、頭皮表面を示す形態映像データを抽出することにより、被検体Pの頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成するとともに、3次元形態画像データを画像データ記憶領域35bに記憶させる(図3,4参照)。
次に、ステップS105の処理において、ポジトロン再構成部45は、エミッションデータ収集用検出器22で検出された電気信号(放射線)に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するとともに、複数のポジトロン断層画像をポジトロン断層画像記憶領域35cに記憶させる。
【0039】
次に、ステップS106の処理において、医師等は被検体Pを天板1から降ろすとともに、発光制御部41a及び光検出制御部41bは、測定データを測定データ記憶領域35aに記憶させることを終了する。
次に、ステップS107の処理において、3次元形態画像データ作成部42は、モニタ画面33aに頭皮表面画像を表示する(図4参照)。
【0040】
次に、ステップS108の処理において、医師等は被検体Pの頭皮表面上に配置された送光プローブ12の位置と受光プローブ13の位置とに対応する頭皮表面画像51中の所定の位置52をポインタで指定する(図5参照)。
次に、ステップS109の処理において、測定関連位置算出部44は、測定データが得られる位置に関する測定関連位置53を算出して、頭皮表面画像51中の測定関連位置53に測定データを表示する(図6参照)。
【0041】
次に、ステップS110の処理において、医師等は測定データが表示された頭皮表面画像51中の任意の位置55をポインタで指定する。
次に、ステップS111の処理において、ポジトロン断層画像表示制御部46は、任意の位置55が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示する(図7参照)。
次に、ステップS112の処理において、医師等はポジトロン断層画像を切り替えるか否かを判断する。医師等は切り替えると判断したときには、ステップS109の処理に戻る。
一方、医師等は切り替えないと判断したときには、本フローチャートを終了させる。
【0042】
以上のように、光生体測定装置1によれば、経時変化を詳細に把握することができるとともに、癌や腫瘍の位置も詳細に把握することができる。
【0043】
(他の実施形態)
(1)上述した画像診断装置1では、線源24は、放射線をトンネルの中心軸に向かって照射する外部線源である構成としたが、X線をトンネルの中心軸に向かって照射する外部線源である構成としてもよい。
(2)上述した画像診断装置1では、任意の位置55が含まれるXYスライス位置とYZスライス位置とZXスライス位置となる3枚のポジトロン断層画像を表示する構成としたが、別のスライス位置となるポジトロン断層画像を表示する構成としてもよい。
【0044】
(3)上述した画像診断装置1では、トランスミッションデータ用放射線検出器23と線源24とがPETガントリ21のトンネルの前部に配設されている構成としたが、PETガントリ21のトンネルの後部に配設されている構成としてもよい。
(4)上述した画像診断装置1では、ある時間のみのポジトロン断層画像を取得する構成としたが、時間が異なるポジトロン断層画像を取得する構成としてもよい。そして、入力装置32等によって時間を変化させることにより、表示するポジトロン断層画像を変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、光生体測定装置と、PET装置やSPECT装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行うことができる画像診断装置等として使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1: 画像診断装置
11: ホルダ(送受光部)
12: 送光プローブ
13: 受光プローブ
22: エミッションデータ収集用検出器
23: トランスミッションデータ収集用検出器
24: 線源
41: 送受光部制御部
42: 3次元形態画像データ作成部
44: 測定関連位置算出部
45: ポジトロン再構成部
46: ポジトロン断層画像表示制御部
P: 被検体
T: 送光点
R: 受光点
M: 計測点
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲で脳活動を測定する光生体測定装置と、PET(ポジトロン・エミッション・コンピュータ・トモグラフィ)装置やSPECT(シングルフォトン・エミッション・コンピュータ・トモグラフィ)装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行う画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運動や感覚や思考等の脳機能に関する脳の測定部位のヘモグロビン濃度等を計測することにより、脳機能診断や循環器系障害診断等の医療分野に適用される光生体測定装置が開発されている。このような光生体測定装置では、例えば、近赤外分光分析計(以下、NIRSと略す)等が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
NIRSでは、被検体の頭皮表面上に配置した送光プローブにより、脳に近赤外光を照射するとともに、頭皮表面上に配置した受光プローブにより、脳から放出された近赤外光の光量を検出する。近赤外光は、頭皮組織や骨組織を透過し、かつ、血液中のオキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビンにより吸収される。よって、送光プローブと受光プローブとを用いることにより、脳の測定部位のオキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、さらにはこれらから算出される全ヘモグロビン濃度の経時変化を測定データとして求めることができる。
【0003】
ここで、送光プローブと受光プローブとのプローブ間隔(チャンネル)と、脳の測定部位との関係について説明する。図9(a)は、一対の送光プローブ12及び受光プローブ13と、脳の測定部位との関係を示す断面図であり、図9(b)は、図9(a)の平面図である。
送光プローブ12が被検体の頭皮表面上の送光点Tに押し当てられるとともに、受光プローブ13が被検体の頭皮表面上の受光点Rに押し当てられる。そして、送光プローブ12から光を照射させるとともに、受光プローブ13に頭皮表面から放出される光を検出させる。このとき、光は、頭皮表面上の送光点Tから照射された光のうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した光が、頭皮表面上の受光点Rに到達する。これにより、測定領域の中でも、特に、送光点Tと受光点Rとを被検体の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線Lの中点M(本明細書中では、「測定関連位置」ともいう)から、送光点Tと受光点Rとを被検体の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の距離の半分の深さL/2である被検体の部位Sの受光量情報(オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、さらにはこれらから算出される全ヘモグロビン濃度)が求まるとしている。図10は、測定データの一例を示す図である。なお、縦軸は濃度を示し、横軸は時間を示す。
【0004】
このようなNIRSにおいては、複数個の送光プローブと、複数個の受光プローブとを所定の配列で被検体の頭皮表面に密着させるために、ホルダが使用される。このようなホルダとしては、例えば、頭皮表面の形状に合わせて椀形状に成型された成型ホルダが使用されている。成型ホルダには貫通孔が複数個設けられ、送光プローブと受光プローブとがそれらの貫通孔に挿入されることによって、チャンネルが一定となり、頭皮表面から特定の深度の受光量情報を得ている。
図11は、上述したようなNIRSにおける12個の送光プローブと12個の受光プローブとの位置関係を示す平面図である。送光プローブ12a〜12lと受光プローブ13a〜13lとは、斜め方向に交互となるように配置されている。なお、送光プローブ12a〜12lから照射された光は、隣接する受光プローブ13a〜13l以外の離れた受光プローブ13a〜13lでも検出されるが、ここでは説明を簡単にするため、隣接する受光プローブ13a〜13lのみで検出されることとする。よって、合計36個の受光量情報(測定データ)が得られることとする。
【0005】
そして、NIRSで得られた脳活動に関する測定データは、医師等によって観察されるために、画像として表示される。図12は、従来のNIRSにより36個の測定データが表示されたモニタ画面の一例を示す図である。
モニタ画面には、36個の測定データ#1〜#36の表示が行われている。このとき、図11に示した平面図において、送光プローブ12と受光プローブ13とを最短距離で結んだ線の各中点に、その送光プローブ12から照射させた光を、その受光プローブ13で検出させたときに得られた測定データが配置されるように整列されて表示されている。具体的には、送光プローブ12aから照射させた光を受光プローブ13aで検出させたときの測定データ#1が、左上に配置され、送光プローブ12aから照射させた光を受光プローブ13dで検出させたときの測定データ#2が、測定データ#1の下に配置され、送光プローブ12bから照射させた光を受光プローブ13aで検出させたときの測定データ#7が、測定データ#1の右に配置されるように、36個の測定データ#1〜#36が整列して配置されている。
【0006】
また、脳の測定部位のどの部分から得られた測定データであるかを把握しやすくするために、核磁気共鳴画像診断装置(以下、MRIと略す)やCT画像等により作成された被検体の映像データから、脳表面を示す映像データを抽出することにより作成された3次元画像データや、標準的な3次元の脳表面を示すテンプレートデータ等である脳表面画像上に測定データが重畳されて表示されるものもある。
【0007】
一方、放射性薬剤を被検体に投与した後、対象組織における薬剤蓄積の過程を経時的に測定することで、様々な生体機能の定量測定が可能であるPET装置が開発されている。PET装置では、癌や腫瘍に集まる性質を有する薬剤にポジトロン放出性核種で標識した上で、この薬剤(トレーサー)を人体内に投与する。ポジトロン消滅時に180°反対方向にガンマ線が放出されるので、人体を360°囲むようにリング状に配列された多数の放射線検出器でその2つのガンマ線の同時入射をとらえる。それらの入射位置を結ぶ線上に核種が位置するという関係から、それら入射位置を結ぶ線(LOR:Line Of Response)について同時入射個数を計数する。こうした同時計数を多数のLORの各々ついて一定時間行ってエミッションデータを収集し、演算処理することにより、核種の分布像を再構成する。この分布像は、放射線検出器がリング状に配列される平面が人体を横切る断層面での核種の濃度分布を表す。
【0008】
なお、グルコース代謝量を測定したいときには、トレーサーとして18F-fluorodeoxy glucose (フルオロデオキシグルコース、FDG)を用い、脳血流量や酸素代謝量を測定したいときには、トレーサーとして15Oでラベルした15O2やH215Oを用いる。
また、このようなPET装置では、エミッションデータ収集とともにトランスミッションデータも収集することができるものも知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなPET装置では、エミッションデータ収集用検出器の他に、トランスミッションデータ収集用検出器と回転移動する点状線源とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−109964号公報
【特許文献2】特開2001−194459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、NIRSとMRI等とを組み合わせたものでは、36個の測定データ#1〜#36において、全ヘモグロビン濃度等と時間との関係が表示されているが、医師等は空間分解能が低く癌や腫瘍の位置を詳細に把握することができなかった。
また、PET装置とCT装置とを組み合わせたものでは、癌や腫瘍の位置を詳細に把握することができるが、時間分解能が低くその癌や腫瘍に関する経時変化の様子を詳細に把握することができなかった。
なお、光生体測定装置(NIRS)と、PET装置やSPECT装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行ったとしても、表示中の表示画面とは別の表示画面を開くというように切り替えを行う必要があるので、多くの手間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本件発明者は、上記課題を解決するために、光生体測定装置と、PET装置やSPECT装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行う方法について検討を行った。その結果、光生体測定装置により得られた測定データが表示された頭皮表面画像中の任意の位置(特に観察したい位置)が指定されることにより、任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示することを見出した。これにより、医師等は、測定データが表示された頭皮表面画像を観察しながら、特に観察したい頭皮表面画像中の任意の位置を指定することにより、特に観察したい測定データに関係するポジトロン断層画像を呼び出すことができる。よって、医師等は、経時変化の様子を詳細に把握することができるとともに、癌や腫瘍の位置も詳細に把握することができる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の画像診断装置は、被検体の頭皮表面上に配置される複数個の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数個の受光プローブとを有する送受光部と、前記送光プローブが頭皮表面に光を照射するとともに、前記受光プローブが頭皮表面から放出される光を検出するように制御することで、脳活動に関する測定データを得る送受光部制御部とを備える画像診断装置であって、放射性薬剤が投与された被検体から発生する放射線を検出するリング状のエミッションデータ収集用検出器と、前記エミッションデータ収集用検出器で検出された放射線に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するポジトロン再構成部と、線源から照射されて被検体を透過する放射線又はX線を、当該放射線又はX線の照射方向を変更しつつ連続的に検出していくトランスミッションデータ収集用検出器と、前記トランスミッションデータ収集用検出器で検出された放射線又はX線に基づいて、前記被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成して頭皮表面画像を表示する3次元形態画像データ作成部と、前記被検体の頭皮表面上に配置された送光プローブの位置と受光プローブの位置とに対応する頭皮表面画像中の位置が指定されることにより、前記測定データが得られる位置に関する測定関連位置を算出して、前記頭皮表面画像中の測定関連位置に測定データを表示する測定関連位置算出部と、前記測定データが表示された頭皮表面画像中の任意の位置が指定されることにより、前記任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示するポジトロン断層画像表示制御部とを備えるようにしている。
【0013】
ここで、「被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データ」とは、例えば、被検体の映像データから、頭皮表面を示す映像データを抽出することにより作成された3次元画像データ等のことをいう。
本発明の画像診断装置によれば、3次元形態画像データ作成部は、トランスミッションデータ収集用検出器で検出された放射線やX線に基づいて、被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成して頭皮表面画像を表示する。
そして、医師等は、被検体の頭皮表面上に配置された送光プローブの位置と受光プローブの位置とに対応する頭皮表面画像中の位置を指定する。これにより、送光プローブと受光プローブと頭皮表面画像との位置関係が対応付けられ、測定関連位置算出部は、測定関連位置を算出して、頭皮表面画像中の測定関連位置に測定データを表示する。すなわち、頭皮表面画像上に測定データが重畳されて表示される。したがって、どの部分から得られた測定データであるかを把握しながら測定データを観察することができる。
そして、医師等は、測定データが表示された頭皮表面画像を観察しながら、特に観察したい頭皮表面画像中の任意の位置を指定する。これにより、ポジトロン断層画像表示制御部は、任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示する。したがって、医師等は、特に観察したい測定データに関係するポジトロン断層画像を呼び出すことができる。
【発明の効果】
【0014】
したがって、本発明の画像診断装置によれば、経時変化の様子を詳細に把握することができるとともに、癌や腫瘍の位置も詳細に把握することができる。
【0015】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の画像診断装置は、前記測定関連位置は、送光プローブの位置と受光プローブの位置とを頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点の位置であるようにしてもよい。
また、本発明の画像診断装置は、前記測定データは、ヘモグロビン濃度とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、色分けされたものであるようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の画像診断装置は、前記頭皮表面画像は、所望の方向から見た画像となるように、当該方向を変更可能として表示されるようにしてもよい。
本発明の画像診断装置によれば、頭皮表面画像を所望の方向から見た画像となるように表示することができるので、特に注目したい頭皮表面画像で得られた測定データが中心にくるようにして表示することができる。
【0017】
そして、本発明の画像診断装置は、前記ポジトロン断層画像表示制御部は、前記任意の位置が含まれるXYスライス位置とYZスライス位置とZXスライス位置となる3枚のポジトロン断層画像を表示するようにしてもよい。
さらに、本発明の画像診断装置は、前記ポジトロン断層画像表示制御部は、前記ポジトロン断層画像中に前記任意の位置を中心とする円を表示するようにしてもよい。
本発明の画像診断装置によれば、癌や腫瘍の位置と、測定データが得られた位置との位置関係を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態である画像診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】4個の送光プローブと受光プローブとの位置関係を示す平面図。
【図3】トランスミッションデータ用放射線検出器により得られた3方向となる2次元画像を示すデータ。
【図4】被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データ。
【図5】本発明に係る画像診断装置により表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【図6】本発明に係る画像診断装置により表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【図7】本発明に係る画像診断装置により表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【図8】画像診断装置による表示方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図9】一対の送光プローブ及び受光プローブと、脳の測定部位との関係を示す図。
【図10】測定データの一例を示す図。
【図11】12個の送光プローブと受光プローブとの位置関係を示す平面図。
【図12】従来のNIRSにより表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である画像診断装置の構成を示すブロック図である。なお、地面に水平な一方向をX方向とし、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
画像診断装置1は、被検体Pを載置するための天板2と、天板2を移動させる駆動機構3と、NIRS(光生体測定装置)10と、PET装置20と、画像診断装置1全体の制御を行う制御部(コンピュータ)30とにより構成される。
【0021】
NIRS10は、ホルダ(送受光部)11と、発光部14と、光検出部15とにより構成される。図2は、ホルダ11における4個の送光プローブ12a〜12dと、4個の受光プローブ13a〜13dとの位置関係を示す平面図である。
ホルダ11は、4個の送光プローブ12a〜12dと4個の受光プローブ13a〜13dとを有し、送光プローブ12a〜12dと受光プローブ13a〜13dとが斜め方向に交互となるように配置されたものである。なお、送光プローブ12a〜12dと受光プローブ13a〜13dとの間の距離は、30mmである。また、4個の送光プローブ12a〜12dは、光を出射するものであり、一方、4個の受光プローブ13a〜13dは、光の量を検出するものである。
【0022】
発光部14は、コンピュータ30から入力された駆動信号により4個の送光プローブ12a〜12dのうちから選択される1個の送光プローブに光を送光する。上記光としては、近赤外光(例えば、780nmと850nmとの2波長光)が用いられる。
光検出部15は、4個の受光プローブ13a〜13dで受光した近赤外光(例えば、780nmと850nmとの2波長光)を個別に検出することにより、4個の受光信号(測定データ)をコンピュータ30に出力する。
【0023】
PET装置20は、X方向にトンネルが設けられたPETガントリ21と、エミッションデータ用放射線検出器22と、トランスミッションデータ用放射線検出器23と、線源24とを備える。
天板2は、被検体Pを上面に載置し、駆動機構3によって上下(Z方向)に昇降移動したり、被検体Pの体軸(X方向)に沿って平行移動したりするように構成されている。このように構成することで、天板2に載置された被検体Pは、PETガントリ21のトンネル内部をX方向で通ることができるようになっている。
【0024】
線源24は、被検体Pに投与する放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)と同じ放射線(本実施例ではガンマ線)をトンネルの中心軸(被検体Pの体軸)に向かって照射する外部線源であって、PETガントリ21のトンネルの前部に配設されている。そして、線源24は、放射線の照射方向を変更することができるようにトンネルの中心軸(被検体Pの体軸)を回転軸としてトンネルの周りを回転移動可能となっている。
トランスミッションデータ用放射線検出器23は、蛍光体(シンチレータ)と光電子増倍管を接合させたシンチレーション検出器で構成されている。シンチレーション検出器は、被検体Pの体軸を取り囲むリング状であり、線源24から照射されて被検体Pを透過する放射線を検出するようにPETガントリ21の前部のトンネルの周りに配設されている。そして、トランスミッションデータ用放射線検出器23は、検出した放射線をシンチレータで光に変換し、光電子増倍管で光電変換した後、電気信号としてコンピュータ30に出力する。
【0025】
エミッションデータ用放射線検出器22は、蛍光体(シンチレータ)と光電子増倍管を接合させたシンチレーション検出器で構成されている。シンチレーション検出器は、被検体Pの体軸を取り囲むX方向に多層のリング状であり、被検体Pから発生する放射線を検出するようにPETガントリ21の後部のトンネルの周りに配設されている。
【0026】
コンピュータ30においては、CPU40を備え、さらにメモリ35と、モニタ画面33a等を有する表示装置33と、入力装置32であるキーボード32aやマウス32bとが連結されている。
また、CPU40が処理する機能をブロック化して説明すると、発光部14及び光検出部15を制御する送受光部制御部41と、天板2及び線源24を制御する撮影制御部47と、被検体Pの頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成する3次元形態画像データ作成部42と、ポジトロン断層画像を再構成するポジトロン再構成部45と、ポインタ表示制御部43と、測定データが得られる位置に関する測定関連位置を算出する測定関連位置算出部44と、ポジトロン断層画像を表示するポジトロン断層画像表示制御部46とを有する。
また、メモリ35は、測定データ等を記憶する測定データ記憶領域35aと、形態映像データや3次元形態画像データ等を記憶する画像データ記憶領域35bと、ポジトロン断層画像を記憶するポジトロン断層画像記憶領域35cとを有する。
【0027】
送受光部制御部41は、発光部14に駆動信号を出力する発光制御部41aと、光検出部15からの受光信号(測定データ)を受けることにより測定データを測定データ記憶領域35aに記憶させる光検出制御部41bとを有する。発光制御部41aは、送光プローブ12に光を送光する駆動信号を発光部14に出力する制御を行う。例えば、まず、1個の送光プローブ12に光を0.15秒間送光させ、次に、他の1個の送光プローブ12に光を0.15秒間送光させるように順次、送光プローブ12に光を送光させる駆動信号を発光部14に出力する。また、光検出制御部41bは、光検出部15からの受光信号を受けることにより、4個の受光プローブ13a〜13dから検出された4個の測定データを測定データ記憶領域35aに記憶させる制御を行う。つまり、1個の送光プローブから光が送光されるごとに、4個の測定データが測定データ記憶領域35aに記憶されることになる。
撮影制御部47は、天板2に駆動信号を出力するとともに、線源24に駆動信号を出力する。つまり、天板2に載置された被検体Pは、PETガントリ21のトンネル内部をX方向に所定の速度で通り、線源24は所定のタイミングで被検体Pの体軸を回転軸としてトンネルの周りを回転移動することになる。
【0028】
3次元形態画像データ作成部42は、トランスミッションデータ用放射線検出器23で検出された電気信号(放射線)に基づいて、2次元画像を示す形態映像データを取得して、様々な方向となる2次元画像を示す形態映像データを取得した後、頭皮表面を示す形態映像データを抽出することにより、被検体Pの頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成するとともに、モニタ画面33aに頭皮表面画像を表示する制御を行う。
図3は、トランスミッションデータ用放射線検出器23により得られた3方向となる2次元画像を示すデータである。ここで、形態映像データとは、被検体Pを示すものであり、信号の強度情報や位相情報等の数値を有する複数のピクセルから構成されるデータをいう。
そして、上述した抽出する方法としては、例えば、信号の強度情報や位相情報等の数値を有する複数のピクセルを用いることにより、領域拡張法、領域併合法、ヒューリスティック法等の画像領域分割方法、境界要素を連結して領域を抽出する方法、閉曲線を変形させて領域を抽出する方法等を利用する方法等が挙げられる。図4は、作成された被検体Pの頭皮表面を示す3次元形態画像データである。なお、操作者が入力装置32を用いて、所望の方向から見た頭皮表面画像51となるように、方向を変更して表示することができるようになっている。
【0029】
ポインタ表示制御部43は、モニタ画面33aにポインタ(図示せず)を表示するとともに、マウス32bから出力された操作信号に基づいて、モニタ画面33aに表示されたポインタを移動したり、ポインタで位置を指定したりする制御を行う。
【0030】
測定関連位置算出部44は、被検体Pの頭皮表面上に配置された送光プローブ12の位置と受光プローブ13の位置とに対応する頭皮表面画像51中の所定の位置52がポインタで指定されることにより、測定データが得られる位置に関する測定関連位置53を算出して、頭皮表面画像51中の測定関連位置53に測定データを表示する制御を行う。
例えば、医師等は、被検体Pの頭皮表面にホルダ11を装着して、その後、ホルダ11が装着された頭皮表面と、モニタ画面33aに表示された頭皮表面画像51とを目視で対比しながら、被検体Pの頭皮表面に装着されたホルダ11の4個の送光プローブ12a〜12dの位置と、4個の受光プローブ13a〜13dの位置とを観察しながら、頭皮表面画像51中の4個の送光プローブ12a〜12dの位置(白丸)と、4個の受光プローブ13a〜13dの位置(黒丸)とをポインタで指定する(図2,5参照)。
【0031】
このとき、測定関連位置算出部44によって、どの送光プローブ12a〜12d又は受光プローブ13a〜13dの位置をポインタで指定したかが認識されるように、各送光プローブ12a〜12dには、異なる番号がそれぞれ振り当てられるとともに、各受光プローブ13a〜13dにも、異なる番号がそれぞれ振り当てられており、医師等は、番号をキーボード32a等で入力しながら指定するか、或いは、番号順に各送光プローブ12a〜12dの位置を指定した後、番号順に受光プローブ13a〜13dの位置を指定することになる。
また、測定関連位置算出部44によって、どの送光プローブ12a〜12dと受光プローブ13a〜13dとについての測定関連位置53を算出すればよいかが認識されるように、従来のものと同様に、医師等は、予め組み合わせを示すテーブル等を作成して、メモリ35の測定データ記憶領域35aに記憶させておく。
【0032】
これにより、測定関連位置算出部44は、測定データ記憶領域35aに記憶されたテーブル等と指定位置とに基づいて、送光プローブ12aの指定位置と受光プローブ13aの指定位置とを最短距離で結んだ線の中点の位置を、送光プローブ12aと受光プローブ13aとについての頭皮表面画像51中の測定関連位置53とし、送光プローブ12bの指定位置と受光プローブ13aの指定位置とを最短距離で結んだ線の中点の位置を、送光プローブ12bと受光プローブ13aとについての頭皮表面画像51中の測定関連位置53とするように、送光プローブ12の指定位置と受光プローブ13の指定位置とを最短距離で結んだ線の中点の位置を、送光プローブ12と受光プローブ13との組む合わせについての頭皮表面画像51中の測定関連位置53とする。
【0033】
また、測定関連位置算出部44は、測定データ記憶領域35aに記憶された測定データにおいて、送光プローブ12から、送光プローブ12と隣接した受光プローブ13への光の受光量情報(測定データ)を取得して、取得した測定データに基づいて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度及び全ヘモグロビン濃度を求めるとともに、測定関連位置53中にオキシヘモグロビン濃度やデオキシヘモグロビン濃度や全ヘモグロビン濃度(測定データ)を表示する。
このとき、測定データを表示する方法としては、例えば、測定関連位置53を中心とする直径30mmの円形の領域54に、入力装置32等によって任意の選択された時間において、全ヘモグロビン濃度とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、全ヘモグロビン濃度(測定データ)を色分けして表示する方法等が挙げられる。そして、入力装置32等によって時間を変化させることにより、測定関連位置53での経時変化を観察したり、入力装置32等を用いて平均値を観察したりする。また、全ヘモグロビン濃度をオキシヘモグロビン濃度やデオキシヘモグロビン濃度に入力装置32等によって切り替えることにより、測定関連位置53での他の経時変化も観察する。
【0034】
図6は、本発明に係る画像診断装置1により表示されたモニタ画面の一例を示す図である。なお、図6では、1個のホルダ11を被検体Pの頭皮表面の右側に装着するとともに、別の1個のホルダ11を被検体Pの頭皮表面の左側に装着している。モニタ画面33aには、頭皮表面画像51と、20個の測定データ#1〜#20とが表示されている。測定データ#1〜#20は、所定の時間における全ヘモグロビン濃度を示すカラーで色づけされて表示されている。
なお、画像診断装置1では、頭皮表面画像51を所望の方向から見た画像となるように、方向を変更可能として表示することができるので、測定関連位置53も移動されることになる。
【0035】
ポジトロン再構成部45は、エミッションデータ収集用検出器22で検出された電気信号(放射線)に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するとともに、複数のポジトロン断層画像をポジトロン断層画像記憶領域35cに記憶させる制御を行う。
ポジトロン断層画像表示制御部46は、測定データが表示された頭皮表面画像51中の任意の位置55がポインタで指定されることにより、任意の位置55が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示する制御を行う。例えば、ポジトロン断層画像表示制御部46は、任意の位置55が含まれるXYスライス位置(軸位断)とYZスライス位置(冠状断)とZXスライス位置(矢状断)となる3枚のポジトロン断層画像56a〜56cを表示する。図7は、本発明に係る画像診断装置1により表示されたモニタ画面の一例を示す図である。モニタ画面33aには、頭皮表面画像51と、20個の測定データ#1〜#20と、3枚のポジトロン断層画像56a〜56cとが表示されている。頭皮表面画像51と20個の測定データ#1〜#20とは、左側領域に表示され、3枚のポジトロン断層画像56a〜56cは、右側領域に表示されている。3枚のポジトロン断層画像56a〜56cは、縦方向に並べられ、上から順番にXYスライス位置56aとYZスライス位置56bとZXスライス位置56cとなっている。そして、3枚のポジトロン断層画像56a〜56c中には、任意の位置55を中心とする半径30mmの円57a〜57cが重畳されて表示されている。さらに、任意の位置55におけるオキシヘモグロビン濃度とデオキシヘモグロビン濃度と全ヘモグロビン濃度の経時変化を示す測定データが表示されている。
【0036】
次に、画像診断装置1により、ポジトロン断層画像を表示する表示方法について説明する。図8は、画像診断装置1による表示方法の一例について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、医師等は被検体Pの頭皮表面にホルダ11を配置するとともに、放射性医薬品(トレーサー)を投与された被検体Pを天板2に載置する。
【0037】
次に、ステップS102の処理において、発光制御部41a及び光検出制御部41bは、発光部14に駆動信号を出力するとともに、光検出部15からの受光信号(測定データ)を受けることにより測定データを測定データ記憶領域35aに記憶させていく。
次に、ステップS103の処理において、撮影制御部47は、天板2に駆動信号を出力するとともに、線源24に駆動信号を出力する。
【0038】
次に、ステップS104の処理において、3次元形態画像データ作成部42は、トランスミッションデータ用放射線検出器23で検出された電気信号(放射線)に基づいて、2次元画像を示す形態映像データを取得して、様々な方向となる2次元画像を示す形態映像データを取得した後、頭皮表面を示す形態映像データを抽出することにより、被検体Pの頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成するとともに、3次元形態画像データを画像データ記憶領域35bに記憶させる(図3,4参照)。
次に、ステップS105の処理において、ポジトロン再構成部45は、エミッションデータ収集用検出器22で検出された電気信号(放射線)に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するとともに、複数のポジトロン断層画像をポジトロン断層画像記憶領域35cに記憶させる。
【0039】
次に、ステップS106の処理において、医師等は被検体Pを天板1から降ろすとともに、発光制御部41a及び光検出制御部41bは、測定データを測定データ記憶領域35aに記憶させることを終了する。
次に、ステップS107の処理において、3次元形態画像データ作成部42は、モニタ画面33aに頭皮表面画像を表示する(図4参照)。
【0040】
次に、ステップS108の処理において、医師等は被検体Pの頭皮表面上に配置された送光プローブ12の位置と受光プローブ13の位置とに対応する頭皮表面画像51中の所定の位置52をポインタで指定する(図5参照)。
次に、ステップS109の処理において、測定関連位置算出部44は、測定データが得られる位置に関する測定関連位置53を算出して、頭皮表面画像51中の測定関連位置53に測定データを表示する(図6参照)。
【0041】
次に、ステップS110の処理において、医師等は測定データが表示された頭皮表面画像51中の任意の位置55をポインタで指定する。
次に、ステップS111の処理において、ポジトロン断層画像表示制御部46は、任意の位置55が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示する(図7参照)。
次に、ステップS112の処理において、医師等はポジトロン断層画像を切り替えるか否かを判断する。医師等は切り替えると判断したときには、ステップS109の処理に戻る。
一方、医師等は切り替えないと判断したときには、本フローチャートを終了させる。
【0042】
以上のように、光生体測定装置1によれば、経時変化を詳細に把握することができるとともに、癌や腫瘍の位置も詳細に把握することができる。
【0043】
(他の実施形態)
(1)上述した画像診断装置1では、線源24は、放射線をトンネルの中心軸に向かって照射する外部線源である構成としたが、X線をトンネルの中心軸に向かって照射する外部線源である構成としてもよい。
(2)上述した画像診断装置1では、任意の位置55が含まれるXYスライス位置とYZスライス位置とZXスライス位置となる3枚のポジトロン断層画像を表示する構成としたが、別のスライス位置となるポジトロン断層画像を表示する構成としてもよい。
【0044】
(3)上述した画像診断装置1では、トランスミッションデータ用放射線検出器23と線源24とがPETガントリ21のトンネルの前部に配設されている構成としたが、PETガントリ21のトンネルの後部に配設されている構成としてもよい。
(4)上述した画像診断装置1では、ある時間のみのポジトロン断層画像を取得する構成としたが、時間が異なるポジトロン断層画像を取得する構成としてもよい。そして、入力装置32等によって時間を変化させることにより、表示するポジトロン断層画像を変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、光生体測定装置と、PET装置やSPECT装置やPET−CT装置とを組み合わせて画像診断を行うことができる画像診断装置等として使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1: 画像診断装置
11: ホルダ(送受光部)
12: 送光プローブ
13: 受光プローブ
22: エミッションデータ収集用検出器
23: トランスミッションデータ収集用検出器
24: 線源
41: 送受光部制御部
42: 3次元形態画像データ作成部
44: 測定関連位置算出部
45: ポジトロン再構成部
46: ポジトロン断層画像表示制御部
P: 被検体
T: 送光点
R: 受光点
M: 計測点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の頭皮表面上に配置される複数個の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数個の受光プローブとを有する送受光部と、
前記送光プローブが頭皮表面に光を照射するとともに、前記受光プローブが頭皮表面から放出される光を検出するように制御することで、脳活動に関する測定データを得る送受光部制御部とを備える画像診断装置であって、
放射性薬剤が投与された被検体から発生する放射線を検出するリング状のエミッションデータ収集用検出器と、
前記エミッションデータ収集用検出器で検出された放射線に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するポジトロン再構成部と、
線源から照射されて被検体を透過する放射線又はX線を、当該放射線又はX線の照射方向を変更しつつ連続的に検出していくトランスミッションデータ収集用検出器と、
前記トランスミッションデータ収集用検出器で検出された放射線又はX線に基づいて、前記被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成して頭皮表面画像を表示する3次元形態画像データ作成部と、
前記被検体の頭皮表面上に配置された送光プローブの位置と受光プローブの位置とに対応する頭皮表面画像中の位置が指定されることにより、前記測定データが得られる位置に関する測定関連位置を算出して、前記頭皮表面画像中の測定関連位置に測定データを表示する測定関連位置算出部と、
前記測定データが表示された頭皮表面画像中の任意の位置が指定されることにより、前記任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示するポジトロン断層画像表示制御部とを備えることを特徴とする画像診断装置。
【請求項2】
前記測定関連位置は、送光プローブの位置と受光プローブの位置とを頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点の位置であることを特徴とする請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
前記測定データは、ヘモグロビン濃度とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、色分けされたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記頭皮表面画像は、所望の方向から見た画像となるように、当該方向を変更可能として表示されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記ポジトロン断層画像表示制御部は、前記任意の位置が含まれるXYスライス位置とYZスライス位置とZXスライス位置となる3枚のポジトロン断層画像を表示することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記ポジトロン断層画像表示制御部は、前記ポジトロン断層画像中に前記任意の位置を中心とする円を表示することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項1】
被検体の頭皮表面上に配置される複数個の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数個の受光プローブとを有する送受光部と、
前記送光プローブが頭皮表面に光を照射するとともに、前記受光プローブが頭皮表面から放出される光を検出するように制御することで、脳活動に関する測定データを得る送受光部制御部とを備える画像診断装置であって、
放射性薬剤が投与された被検体から発生する放射線を検出するリング状のエミッションデータ収集用検出器と、
前記エミッションデータ収集用検出器で検出された放射線に基づいて、それぞれ異なるスライス位置となる複数のポジトロン断層画像を再構成するポジトロン再構成部と、
線源から照射されて被検体を透過する放射線又はX線を、当該放射線又はX線の照射方向を変更しつつ連続的に検出していくトランスミッションデータ収集用検出器と、
前記トランスミッションデータ収集用検出器で検出された放射線又はX線に基づいて、前記被検体の頭皮表面を示す3次元形態画像データを作成して頭皮表面画像を表示する3次元形態画像データ作成部と、
前記被検体の頭皮表面上に配置された送光プローブの位置と受光プローブの位置とに対応する頭皮表面画像中の位置が指定されることにより、前記測定データが得られる位置に関する測定関連位置を算出して、前記頭皮表面画像中の測定関連位置に測定データを表示する測定関連位置算出部と、
前記測定データが表示された頭皮表面画像中の任意の位置が指定されることにより、前記任意の位置が含まれるスライス位置となるポジトロン断層画像を表示するポジトロン断層画像表示制御部とを備えることを特徴とする画像診断装置。
【請求項2】
前記測定関連位置は、送光プローブの位置と受光プローブの位置とを頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点の位置であることを特徴とする請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
前記測定データは、ヘモグロビン濃度とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、色分けされたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記頭皮表面画像は、所望の方向から見た画像となるように、当該方向を変更可能として表示されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記ポジトロン断層画像表示制御部は、前記任意の位置が含まれるXYスライス位置とYZスライス位置とZXスライス位置となる3枚のポジトロン断層画像を表示することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記ポジトロン断層画像表示制御部は、前記ポジトロン断層画像中に前記任意の位置を中心とする円を表示することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【図1】
【図2】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図2】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【公開番号】特開2012−220387(P2012−220387A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87862(P2011−87862)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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