説明

画像読み取り装置及び画像形成装置

【課題】走行体の位置ずれによる異常が生じた場合に、その位置ずれ検知を高速コピーに支障がないように簡易な構成で迅速に行うことができるようにする。
【解決手段】第1及び第2のキャリッジ6,7を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、ステッピングモータ63により前記第1及び第2のキャリッジ6,7を移動させる走査駆動機構と、ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記第1のキャリッジ6を検知するホームポジションセンサ60と、前記第1のキャリッジ6の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするクロックカウンタ70と、前記ホームポジションセンサ60の検出結果と前記クロックカウンタ70によってカウントされたモータ駆動パルスのカウント値を比較し、前記第1のキャリッジ6の移動が正常に行われたか否かを前記第1のキャリッジ6の移動中に判断する検知位置設定・比較回路72及びCPU80を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読み取り部に走行体を有し、走行体を駆動することにより画像を読み取る画像読み取り装置、及びこの画像読み取り装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複写機、ファクシミリ等に装備されている画像読み取り装置では、光源及びミラーを搭載した走行体(以下、第1キャリッジ)を、駆動系を介してモータ駆動し、原稿の副走査方向に走行させて原稿の読み取り走査を行うものがある。その際、第1キャリッジは、停止位置であるホームポジションからスローアップし、読み取り動作後にスローダウンし、再びホームポジションに戻るように駆動制御される。このように所定のホームポジションを基準位置として、第1キャリッジの読み取り位置の移動とホームポジションへの復帰を繰り返して画像の読み取りを行っている(フラットベッド読み取りモード)。そのため、第1キャリッジがホームポジションからずれるとその分画像の読み取り位置がずれ、形成される画像に位置ずれが生じる。
【0003】
また、シートスルー・ドキュメント・フィーダを使用し、原稿を搬送して読み取るモード(シートスルー読み取りモード)を持つ画像読み取り装置の場合、通常、ホームポジションは前記走行体が移動しながら読み取るモード時とは異なるが、第1キャリッジがホームポジションからずれた状態で読み取ると、原稿を適切な位置で読み込むことができないため、位置ずれのほかに濃度低下が生じる。また、カラー画像読み取り装置においては、位置ずれの影響により色ずれが生じる。従って、画像読み取り装置の停止位置精度を保つことが高画像品質を保持するために極めて重要である。
【0004】
そのため、第1キャリッジの駆動には容易に位置調整が可能なステッピングモータが用いられている。ステッピングモータでは、例えば、予め定めたスローアップパターンあるいはスローダウンパターンに基づくスローアップテーブル又はスローダウンテーブルを作成して記憶させておき、このテーブルに基づいて駆動制御が行われている。
【0005】
しかしながら、ステッピングモータは外的要因などで脱調を起こすと、脱調状態のままで駆動を続けるため、画像読み取り装置の位置ずれが解消しないばかりか、運転を続けるに従い、ずれは加算され益々大きくなる。そして、遂には第1キャリッジが画像読み取り装置の側壁に衝突するなどの障害が生じる場合もある。また、ステッピングモータに異常がなくても、駆動系のタイミングベルト等に飛びなどの異常が発生すると、キャリッジは基準位置からずれた位置に停止し、その位置から再起動されるため、読み取り画像に位置ずれが生じる。
【0006】
そこで、このような不具合が発生するのを防止するため、従来では、読み取り動作の基準位置であるホームポジションにセンサを設け、このセンサを検索するための走査(ホームポジションサーチ)を行ってホームポジションを検知し、画像読み取り装置が基準位置からずれることがないように位置制御が行われている。しかし、初期に開発されたものは、そのホームポジションサーチはコピーボタンを押してから行っていたので、そのサーチの分だけファーストコピーの時間が長くなるという新たな問題が生じることとなった。その後、この問題を解決するために、例えば、特許文献1記載の発明では、複写機においてキャリッジのホームポジション検知のための走査を、設定枚数のコピーが終了した後に行うようにして、ファーストコピーの遅れの問題を解決していた。
【0007】
このほかに関連する発明として、特許文献2及び3に記載された発明が知られている。このうち、特許文献2記載の発明は、画像読み取り装置における画像読み取り部の位置ずれ補正を迅速かつ簡易に行うために、速度制御用テーブルで制御されるステッピングモータによってスキャナが所定距離往復駆動される画像読み取り装置において、ホームポジションセンサからホームポジションまでのステッピングモータの駆動量を予め設定し、リターン時における第1キャリッジの通過をホームポジションセンサで検知し、その検知時における前記ステッピングモータの残り駆動量を求め、該残り駆動量と前記予め設定された駆動量とが一致しないとき、前記設定値に一致させるように変更した速度制御用テーブルでステッピングモータを制御するようにしている。
【0008】
また、特許文献3記載の発明では、読み取り系に対し原稿面が異なる位置となる、ブック読み取りとシートスルー読み取りの2モード間の読み取りデータに違いが生じることがなく、適正な読み取り画像を出力するために、読み取り系を載せたキャリッジのシートスルー固定読み取り位置に対応するAFDの原稿ガイド板に第2基準白板を設け、シートスルー読み取りモードでは、セットされた原稿束の1枚目の原稿読み取りの開始前に、位置Bに行ってブック読み取りモードと共通に使用する第1基準白板を読み、再び位置Cに戻して第2基準白板を読み、両者の差、すなわち2モード間の読み取り条件の違いを検出し、この差分データを補正データとして原稿読み取りデータに補正を施し、2モード間の出力に違いが出ないようにし、2枚目以降の原稿は第2基準白板のデータのみをとり、補正を施すことにより適正データを得るようにした発明が公知である。
【特許文献1】特開平3−227170号公報
【特許文献2】特開2003−215725号公報
【特許文献3】特開2002−271620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記特許文献1ないし3記載の発明においても、コピー処理中に次のスタート信号がくると、その場合には次のコピーのスタートはやはりホームポジションのサーチ完了後となるため、直ぐにコピースタートができない。これでは近年の高速コピーなどの画像読み取りには不向きである。
【0010】
いずれにしても、ステッピングモータの脱調や駆動系のタイミングベルトに飛びなどの異常が発生すると、キャリッジは基準位置からずれた位置に停止し、その位置から再起動されるため、読み取り画像に位置ずれが生じるという問題は解決されていない。
【0011】
そこで、本発明が解決すべき課題は、モータの脱調や駆動系のタイミングベルトのとびなどによる走行体の位置ずれによる異常が生じた場合に、その位置ずれ検知を高速コピーに支障がないように簡易な構成で迅速に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、第1の手段は、走行体を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、モータにより前記走行体を移動させる走査駆動手段と、ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記走行体を検知する検知手段と、前記走行体の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするカウント手段と、前記検知手段の検出結果と前記カウント手段によってカウントされたモータ駆動パルスのカウント値を比較し、前記走行体の移動が正常に行われたか否かを前記走行体の移動中に判断する判断手段と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
第2の手段は、走行体を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、モータにより前記走行体を移動させる走査駆動手段と、 ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記走行体を検知する検知手段と、前記走行体の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするカウント手段と、前記検知手段の検出結果が変化したときの前記カウント手段によってカウントされたモータ駆動パルスのカウント値に基づいて、前記走行体の移動が正常に行われたか否かを前記走行体の移動中に判断する判断手段と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
第3の手段は、走行体を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、モータにより前記走行体を移動させる走査駆動手段と、ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記走行体を検知する検知手段と、前記走行体の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするカウント手段と、前記カウント手段によってカウントされたモータ駆動パルスのカウント値が所定の値になったときの前記検知手段の検出結果により、前記走行体の移動が正常に行われたか否かを前記走行体の移動中に判断する判断手段と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
第4の手段は、走行体を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、モータにより前記走行体を移動させる走査駆動手段と、ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記走行体を検知する検知手段と、前記走行体の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするカウント手段と、前記検出手段の検出結果が変化してから前記走行体が停止するまでに前記カウント手段がカウントしたモータ駆動パルスのカウント値により、走行体の停止位置が正常か否かを判断する判断手段と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
第5の手段は、第1ないし第3のいずれかの手段において、前記判断手段が異常と判断した場合にモータ駆動パルスを停止する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
第6の手段は、第1ないし第4のいずれかの手段において、前記判断手段が異常と判断した場合に前記走行体の移動が正常に行われなかったことを表示する表示手段を備えていることを特徴とする。
【0018】
第7の手段は、第1ないし第4のいずれかの手段において、前記判断手段が異常と判断した場合に、前記走行体の異常の状態を表示する表示手段を備えていることを特徴とする。
【0019】
第8の手段は、第1ないし第7のいずれかの手段に係る画像読み取り装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0020】
なお、後述の実施形態では、走行体は第1キャリッジ6に、モータはステッピングモータ63に、走査駆動手段はプーリ64−1,2,3,4、ワイヤ61−1、駆動軸67、タイミングベルトプーリ65、タイミングベルト62、及びプーリ64−5に、検知手段はホームポジションセンサ60に、カウント手段はクロックカウンタ70に、判断手段は検知位置設定・比較回路72及びCPU80に、制御手段はモータ信号生成部71及びCPU80に、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、走行体の位置ずれ検知を高速コピーに支障がないように簡易な構成で迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る画像読み取り装置の概略構成を示す図である。同図において、画像読み取り装置としてのスキャナ13は、読み取り部12と、この読み取り部12の上部に取り付けられたシート・ドキュメントフィーダ(以下、SDFと称する)20とからなる。
【0024】
読み取り部12は、原稿台として原稿を載置するコンタクトガラス1、原稿露光用の照明ランプ2と第1反射ミラー3を搭載した第1キャリッジ6、第2反射ミラー4と第3反射ミラー5を搭載した第2キャリッジ7、CCDリニアイメージセンサ(以下、単にCCDと称す)9、このCCD9に結像するためのレンズユニット8、CCD9を搭載したセンサボード10、及び読み取り光学系等による各種の歪みを補正するために使用する白基準板11から構成されている。
【0025】
コンタクトガラス1上に原稿を載置固定して読み取る場合には、第1キャリッジ6が一定の速度で往動(矢印A方向)し、かつ、第2キャリッジ7が第1キャリッジ6の1/2の速度で第1キャリッジ6に追従して往動することにより、コンタクトガラス1上の原稿が光学的に走査され、CCD9によって読み取られる。原稿の読み取り終了後、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7は、ホームポジションに復動する。図1に示す位置が、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7のホームポジションである。なお、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を駆動するためのステッピングモータ、及びこのモータを制御する制御回路を含むモータ駆動系は読み取り部12内に設けられている。
【0026】
SDF20は、原稿トレイ21、ピックアップローラ23、フィードローラ24、分離ローラ25、分離ドラム26、従動コロ27、排紙ローラ28、及び排紙トレイ29から構成されている。原稿トレイ21に積載された原稿22は、ピックアップローラ23により分離部へ送られ、分離部においてフィードローラ24と分離ローラ25により1枚ずつ分離されて搬送される。その後、原稿22は、フィードローラとしての搬送ドラム26とこの搬送ドラム26の周囲に配置されて搬送ドラム26に押圧された複数の従動コロ27により搬送ドラム26の表面と一体に回転し、搬送される。
【0027】
搬送された原稿は、読み取り位置(前記ホームポジション)Yに達すると、所定のタイミングで照明ランプ2により下面の原稿面側が照射され、その反射光が第1反射ミラー3から第2反射ミラー4及び第3反射ミラー5を経てレンズユニット8によってCCD9の結像面で結像し、光電変換される。原稿22は、搬送ドラム26及び従動コロ27によって、図1の右側へ搬送され、CCD9に入光する反射光は原稿の副走査方向に走査される。画像情報が読み取られた原稿22は、排紙ローラ対28により排紙トレイ29に排出される。
【0028】
図2は図1のシートスルーで読み取る場合の読み取り位置Y周辺の構成を拡大して示す図である。
【0029】
図2に示すように読み取り位置Yには搬送ドラム26に対向してシートスルー用コンタクトガラス30が設けられており、シートスルー用コンタクトガラス30上部には、上ガイド板31が設けられている。原稿22は上ガイド板31とシートスルー用コンタクトガラス30との間を通過する間に読み取られる。その間、第1及び第2キャリッジ6,7はそれぞれホームポジション位置に位置し、当該位置を保持した状態にある。
【0030】
図3は本実施形態に係る画像読み取り装置を備えた画像形成装置のデータ処理に関する構成を示すブロック図である。同図において、画像形成装置は、データ処理上スキャナ40、画像処理部41及びプリンタ42からなる。
【0031】
スキャナ40は、CCD9、アナログ処理回路43及びA/Dコンバータ44からなる。CCD9は、RGBのフィルタを被せたCCDセンサが3列並んだカラー3ラインCCDである。アナログ処理回路44では、CCD9から出力されるRGB3ラインのアナログ波形の信号部分をサンプリングするとともにアンプを内蔵して信号のゲインを調整する。A/Dコンバータ31では、R、G、B各色のアナログ画像信号を8ビットのカラーデジタル画像情報として画像処理部41に出力する。
【0032】
画像処理部41は、ライン間補正部45、レベル変換部56、シェーディング補正部46、ドット補正部48、スキャナγ補正部49、フィルタ処理部50、色補正部51、変倍部52、プリンタγ補正部53、階調処理部54、像域分離部47及びレベル検出部57からなる。スキャナ40が3ラインCCD9の場合にCCD9から出力される信号は、等倍時4ライン間隔の位置ずれが存在する。すなわち、R−B間では、8ラインの位置ずれが存在しており、ライン間補正部45では、R信号を8ライン、G信号を4ラインそれぞれ蓄えて遅延させることによってライン間の位置ずれを補正している。
【0033】
シェーディング補正部46では、光学系の濃度ムラ、CCD9の感度バラツキに関する補正を各RGB信号に対して行う。変倍時において、ライン間補正部45だけでは位置ずれが合わない場合が生じるため、ドット補正部48では、ライン間補正部46で補正しきれない1ライン以下の位置ずれを周囲の画素を参照して補正する。
【0034】
レベル変換部56では、白基準板11の読み取り時と原稿読み取り時のレベルを変換し、目標の値となるようにそのレベル補整係数を調整する。このときのレベル補整係数は、圧板読み取り時(フラットベッド読み取りモード)とSDF読み取り時(シートスルー読み取りモード)と少なくとも2種類を要する。スキャナγ補正部49では、反射率に関しリニアな特性を持っているデータを後段の色補正部51で色補正の補正精度が向上するような特性に変換する。像域分離部47では、後段の処理において画像の特徴に合った最適な処理を行うために、画像が文字領域であるか絵柄領域であるかを判定する。フィルタ処理部50では、文字領域はシャープにするためにエッジを強調し、絵柄領域に対しては滑らかにするために平滑化処理を行う。
【0035】
色補正部51では、CCD9で読み取ったR、G、Bの信号をC、M、Y、Kの信号に変換する。CCD9の感度、インクの特性は理想とは異なるため、複写機においては、原稿との差を補正するように色補正パラメータが調整される。変倍部52では、主走査方向の変倍処理を行う。この場合、コンボリューション法を使うことによって読み取り光学系のMTFを保持したまま変倍処理を行い、画像データの解像力を維持する。副走査方向に関しては、副走査方向の走査速度を制御することにより行う。なお、コンボリューション法に関しては、公知の技術であるので、ここでは説明を省略する。
【0036】
プリンタγ補正部53では、原稿とコピー濃度を最終的に一致させる。すなわち、原稿とトナーの分光特性の差、グレーバランス、トップ濃度が適正になるように処理を行う。階調処理部40では、8ビットの濃度情報を2値化、あるいは多値化する。このとき文字領域では2値化あるいは数段階の多値化を、絵柄領域ではディザ処理あるいは誤差拡散処理を行い、プリンタ部42に出力する。
【0037】
プリンタ部42はLD書き込み部55を備え、C、M、Y、Kの画像データを当該LD書き込み部55によって書き込み処理を行い、用紙に印字する。
【0038】
図4は画像形成装置PR上に設置された画像読み取り装置の概略構成を示す斜視図である。
同図において、第1キャリッジ6は、プーリ64−1,64−2間及びプーリ64−3,64−4間にそれぞれ対称に張られた2本のワイヤ61−1に両端部が固定され、ワイヤ61−1の移動と共に往復移動する。第2キャリッジ7はその両端部に設けられたプーリ61−2に前記ワイヤ61−1が巻回されている。駆動軸67の一端にはタイミングベルトプーリ65が設けられており、モータ63との間にタイミングベルト62が掛け渡され、プーリ64−5を介して前記ワイヤ61−1に駆動力を付与している。
【0039】
以上の構成において、電源スイッチをONにすると、ホーミングのためにステッピングモータ63が始動し、タイミングベルト62を介してその駆動力がタイミングベルトプーリ65に伝達され、タイミングベル62とプーリ65と一体の駆動軸67がステッピングモータの回転方向に回転する。また、それに伴ってワイヤ61−1は移動し、ワイヤ61−1に固定された第1キャリッジ6はフォワード方向に移動する。第2キャリッジ7は第1キャリッジ6の半分の速度で同方向に移動する。
【0040】
各キャリッジ6,7が一定距離だけ移動するとステッピングモータ63は逆転(リターン)を開始し、第1キャリッジ6にある検出部66がホームポジションセンサ60内に入ったことを検知し、後述するモータ駆動制御手段により検知後所定距離を移動した時点で停止する。この停止した位置がホームポジションである。このホームポジションに第1キャリッジ6を停止させる制御をホーミングと称する。
【0041】
図5はステッピングモータの駆動制御板のブロックを示す。ステッピングモータ63はモータ駆動制御板69からステッピングモータ駆動クロックCL、正逆転信号RSと駆動電流切り替え信号SS、マイクロステップ駆動を制御する分割数切り替え信号DSが入力され、これに基づいてステッピングモータ63の各相に流れる駆動電流を制御し、ステッピングモータ63の駆動制御を行う。
【0042】
ステッピングモータ63の相切り替えタイミングは駆動クロック周波数が高いと切り替えタイミングが速くなり、ステッピングモータ63の回転も速くなる。反対に相切り替えタイミングは駆動クロック周波数が低いと切り替えタイミングも遅くなり、ステッピングモータ63の回転も遅くなる。このように駆動クロック周波数を制御することによりステッピングモータ63の回転速度を制御することが可能となり、従って第1及び第2キャリッジ6,7の多種多様なスローアップ及びスローダウンが可能となる。つまり、駆動電流はスローアップ、スローダウン、読み取り動作時、リターン時、待機時などの状態により切り替え制御され、かつステッピングモータ63の位置は駆動クロック数で制御することができる。
【0043】
図6は読み取り装置の走行制御に用いる代表的な速度線図(スキャナ駆動の基本的な駆動パターン)である。ステッピングモータ63は図示の速度線図に従って駆動制御され、原稿の読み取りは、図示のようにスローアップ動作を経て一定速度で走行させるフォワード期間に行い、この間に原稿の先端から後端まで読み取るので、この間は一番速度を安定させなければならない。原稿の読み取りが完了すると、リターン工程へと移りステッピングモータ63は逆転を開始する。できるだけ短い時間で戻すため、第1キャリッジ6を高速で移動させ、第2のキャリッジ7はその半分の速度で高速リターンさせる。リターン側移動距離はフォワード側で移動した距離分戻ればホームポジション位置に戻ることになる。
【0044】
図7は本実施形態におけるキャリッジ駆動制御回路の全体構成を示すブロック図である。
図7において、キャリッジ駆動制御回路は、CPU80、モータ信号生成部71、モータ駆動制御部(板)69、ホームポジションセンサ60、クロックカウンタ70、検知位置設定・比較回路72及びFGATE生成部79から構成されている。CPU80はモータ信号生成部71、検知位置設定・比較回路72及びFGATE生成部79、並びに画像読み取り装置全体の制御を司る。モータ信号生成部71はCPU80及び、検知位置設定・比較回路72からの入力に基づいて前記図5に示したモータ駆動クロックCL、正逆転信号RS、分割数切り替え信号DS及び電流切り替え信号SSをモータ駆動制御部(板)69に出力する。ホームポジションセンサ60は、第1及び第2キャリッジ6,7、特に第1キャリッジ6の位置を検出する。
【0045】
ホームポジションセンサ60は、第1キャリッジ6に設けられた検出部66が当該ホームポジションセンサ60の検出可能域に位置したとき、「1」の検出信号を、ホームポジションセンサ60から外れた位置に位置するときに「0」の検出信号を、クロックカウンタ70及び検知位置設定・比較回路72に出力する。モータ信号生成部71は、モータクロックCLを駆動制御部(板)69に出力すると共に、クロックカウンタ70に出力する。モータ63はモータクロックの立ち上がりエッジで1ステップだけ回転する。
【0046】
モータ63は1ステップでの回転角度が一定であると、モータクロック周波数に関係なく、モータクロック数によってのみ回転角度が決まり、このモータ63の回転角度で第1及び第2キャリッジ6,7の走行距離、あるいは位置が決定される。クロックカウンタ70はモータ信号生成部71から入力されるモータクロックをカウントし、モータクロックが入力される毎にそのカウンタ値をインクリメントする。ホームポジションセンサ60から「1」「0」の検出信号が入力され、「1」のホームポジション検出信号がクロックカウンタ70に入力されると、クロックカウンタ70のカウント値が初期値にセットされる。リセットの有無はCPU80により制御される。
【0047】
画像読み取り装置では、電源オン時の第1キャリッジ6のホーミング動作でホームポジションセンサ60が「1」を検出すると、クロックカウンタ70のカウント値が初期値にセットされる。また、クロックカウント70はアップダウンカウントであり、フォワードのときにカウントアップし、リターンのときにカウントダウンする。図6はこのときのタイミングを示すタイミングチャートである。図6から分かるように、リターン終了後は、スタート時と同じカウント値、ここでは“0”になる。
【0048】
検知位置設定・比較回路72は、予めホームポジションセンサ60の状態を検知するキャリッジ6,7の位置であるクロックカウンタ70のカウント値と検知すべきホームポジションセンサ60の状態値(設定値)である「1」か「0」が設定されると、当該検知位置と設定値を記憶する。そして、クロックカウンタ70のカウント値が当該設定されたカウント値、すなわち、検知位置になると、ホームポジション60から入力される検出信号の状態値と設定値とを比較する。この比較により前記状態値と設定値とが一致しない場合には、モータ信号生成部71からモータクロックCLを停止する。
【0049】
FGATE発生部(画像有効信号発生手段)79は、画像有効信号(FGATE)の開始又は終了の位置を設定するとともにクロックカウンタ70のカウント値を受けて、FGATEを発生する。FGATE発生部79は、画像有効信号の開始又は終了の位置をクロックカウンタ70のカウント値に対応させた情報として保持しており、例えば、カウント値が1000(Hex)で開始、5000(Hex)で終了という情報を持っている。
【0050】
図6の速度線図において、ホームポジションセンサ60の検出値はフォワードのFDの位置で「1」⇒「0」に切り替わり、リターン時のRNの位置で「0」⇒「1」に切り替わる。一方、予め検知位置設定・比較回路72には、ホームポジションからホームポジションセンサ60の検出値が切り替わる位置FD、RNまでのモータクロック数が設定されている。
【0051】
そこで、コンタクトガラス1上に置かれている原稿を読み取るために第1キャリッジ6を停止位置からフォワード位置方向に走行させるときには、ホームポジションセンサ60の検出値が「1」⇒「0」に変化したときのクロック数を検知位置設定・比較回路72の検知位置72aとして保存し、予め設定してある設定値72bと比較する。この比較により、両者が一致、あるいは両者の差が所定範囲内であるときは正常であると判断し、画像の読み取り動作を継続する。もし、両者が不一致、あるいは両者の差が所定範囲外であるときは、異常であると判断し、モータクロックCLを停止する。
【0052】
リターンのときも同様にリターンRNの位置でホームポジションセンサ60の検出値が「0」⇒「1」に変化したときのクロック数(カウント値)を検知位置設定・比較回路72の検知位置72aとして保存し、予め設定してある設定値(クロック数−カウント値)72bと比較し、両者が一致、あるいは両者の差が所定範囲内であるときは正常であると判断し、リターン動作を継続する。もし、両者が不一致あるいは両者の差が所定範囲外であるときは、異常であると判断し、モータクロックCLを停止する。
【0053】
このようなフォワード動作、あるいはリターン動作で前述の制御を行い、異常が検知されたときには、ホーミング動作を再度実行する。ホーミング動作では、第1キャリッジ6をホーミング位置に再セットし、原稿の読み取り動作を再度実施する。この実施で前記異常が2回続いた場合は、機械的な異常が発生したと判断し、モータクロックCLを停止したままの状態で待機する制御も可能である。
【0054】
シートスルー・ドキュメント・フィーダを使用した読み取り動作の場合に、原稿を読み取る前にシェーディング動作を行うが、このときのフォワード、リターン時に前記と同様に設定値(クロック数)72bとホームポジションセンサ60の検出値が変化した時点における検知位置(クロック数−カウント値)72aを比較し、正常か異常かを判断する。正常の場合はシェーディング動作後に続いて原稿読み取りを継続する。異常と判断された場合は、ホーミング動作を再度行い、第1キャリッジ6をホーミング位置に再セットし、シェーディング動作を再度実施した後、停止している状態で原稿読み取りを行う。
【0055】
このような制御とは逆にクロックカウント70のカウント値がある所定の値になったときのホームポジションセンサ60の検出値と前記設定値とを比較することにより、異常を判断することもできる。例えば、図6のFDの位置を超えるカウント値において、前記比較を行ったとき、設定値が「0」に対して、検出値が「1」の場合は、第1キャリッジ6がホームポジションセンサ60を抜けておらず、異常であると判断しモータクロックCLを停止する。また、停止位置が正常であるか否か判断するためにリターン時の「0」→「1」にホームポジションセンサ60の検出値が変化したときからクロックカウンタ70においてモータパルス数をカウントし、その値と設定値と比較し、停止位置が正常か異常であるかを判断することもできる。
【0056】
この制御において、第1キャリッジ6の駆動制御が正常に行われなかった場合は、図示しない操作部に異常であることを表示する。これにより、直ぐに修理等の対応をとることが可能となるので、装置の機械的損傷を最小限に食い止めることができる。また、その際にフォワード方向で異常があったのか、リターン方向で異常があったのか等の情報を表示すれば、不具合の原因が判明しやすくなる。
【0057】
なお、図4に示した画像形成装置PR自体は前記図3に示したLD書き込み部55を有するプリンタに対応し、光書き込みにより感光体上に形成した潜像をトナー現像して顕像化し、用紙、記録紙などのいわゆるシート状記録媒体上にトナー像を定着する電子写真方式の公知のものである。
【0058】
以上のように本実施形態によれば、
1)走行体の位置制御の異常の有無を通常の読み取り制御の中で行うことができるので、高速コピーに支障が生じることはない。
2)読み取り動作の停止位置が適切かどうかを通常の読み取り制御の中で検出することができるので、高速コピーに支障が生じることはない。
3)走行体の移動が異常と判断された場合は、モータ駆動パルスを停止するので、装置の機械的損傷を防ぐことができる。
4)走行体の移動が異常と判断された場合は、操作部に走行体の移動が正常に行われなかったこと、さらには異常の状態を表示するので、異常を生じた場合に迅速な原因解明と修理への対応が可能になる。
等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係るスキャナの要部の構成を示す図である。
【図2】図1における読み取り位置の拡大図である。
【図3】本発明の画像形成装置の読み取りデータの処理構成を示すブロック図である。
【図4】画像形成装置における画像読み取り装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】ステッピングモータの駆動制御板の構成を示すブロック図である。
【図6】読み取り装置の走行制御に用いる代表的な速度線図(スキャナ駆動の基本的な駆動パターン)を示す図である。
【図7】スキャナ駆動のための制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
6 第1キャリッジ
7 第2キャリッジ
9 ライン型CCDユニット
10 センサボード
12 読み取り部
13,40 スキャナ
41 画像処理部
42 プリンタ
43 アナログ処理回路
44 A/Dコンバータ
60 ホームポジションセンサ
69 モータ駆動制御部
70 クロックカウンタ
71 モータ信号生成部
72 検知位置設定・比較回路
79 FGATE生成部
80 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、
モータにより前記走行体を移動させる走査駆動手段と、
ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記走行体を検知する検知手段と、
前記走行体の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするカウント手段と、
前記検知手段の検出結果と前記カウント手段によってカウントされたモータ駆動パルスのカウント値を比較し、前記走行体の移動が正常に行われたか否かを前記走行体の移動中に判断する判断手段と、
を備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項2】
走行体を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、
モータにより前記走行体を移動させる走査駆動手段と、
ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記走行体を検知する検知手段と、
前記走行体の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするカウント手段と、
前記検知手段の検出結果が変化したときの前記カウント手段によってカウントされたモータ駆動パルスのカウント値に基づいて、前記走行体の移動が正常に行われたか否かを前記走行体の移動中に判断する判断手段と、
を備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項3】
走行体を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、
モータにより前記走行体を移動させる走査駆動手段と、
ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記走行体を検知する検知手段と、
前記走行体の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするカウント手段と、
前記カウント手段によってカウントされたモータ駆動パルスのカウント値が所定の値になったときの前記検知手段の検出結果により、前記走行体の移動が正常に行われたか否かを前記走行体の移動中に判断する判断手段と、
を備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項4】
走行体を所定距離往復移動させて原稿画像を読み取る画像読み取り装置において、
モータにより前記走行体を移動させる走査駆動手段と、
ホームポジション近傍の所定の位置に設けられ、前記走行体を検知する検知手段と、
前記走行体の停止状態からのモータ駆動パルスをカウントするカウント手段と、
前記検出手段の検出結果が変化してから前記走行体が停止するまでに前記カウント手段がカウントしたモータ駆動パルスのカウント値により、走行体の停止位置が正常か否かを判断する判断手段と、
を備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項5】
前記判断手段が異常と判断した場合にモータ駆動パルスを停止する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像読み取り装置。
【請求項6】
前記判断手段が異常と判断した場合に前記走行体の移動が正常に行われなかったことを表示する表示手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像読み取り装置。
【請求項7】
前記判断手段が異常と判断した場合に、前記走行体の異常の状態を表示する表示手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像読み取り装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像読み取り装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−76540(P2008−76540A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253177(P2006−253177)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】