説明

画像読取り装置および画像読取り方法

【課題】回路構成の簡素化および処理速度の高速化を図りつつ、原稿の表面画像と裏面画像の両方の読取り精度を向上させることができる画像読取り装置および画像読取り方法を提供すること。
【解決手段】バッファメモリの空き容量との関係から読取り動作を中断する時期は、原稿の表面画像と裏面画像の両方を読取る期間(時点TCからTEまでの期間)を避けて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の表面および裏面の画像を読取るための画像読取り装置および画像読取り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像読取り装置として、ADF(オート・ドキュメント・フィーダ:自動原稿搬送装置)によって搬送される原稿の表面および裏面の画像を2つの読取りセンサを用いて同時に読取り、その読取った画像データをホストコンピュータへ転送する画像読取り装置がある。このような画像読取り装置(スキャナ)において、原稿画像の読取り速度がホストコンピュータへの画像データの転送速度を上回る場合がある。この場合には、読取った画像データを読取り装置内のバッファメモリ(記憶手段)に一時的に蓄積して、その蓄積した画像データを順次ホストコンピュータへ転送する。バッファメモリに余裕がなくなる程、画像データが大量に蓄積されたときには、画像の読取り処理を一時停止する。そして、バッファメモリが空になるのを待ち、そのバッファメモリが空になってから、画像読取り処理を再開する。以降、このような原稿の読取り処理の中断をSS処理(スタート・ストップ処理)という。
【0003】
このようなSS処理が実施した場合には、画像の読取り処理の連続性が失われて、読取った画像の画質が劣化することがある。原稿の搬送路内に位置する2つの読取りセンサの内、片方の読取りセンサでの原稿の画像を読取り中にSS処理を実施した場合には、特許文献1に記載されているように、読取り処理の再開時における画像の読取り処理を遅延させればよい。すなわち、搬送停止後の原稿を再搬送して読取り処理を再開するときに、既に読取られた所定ライン数分の画像データに関しては、それを再度重複して読取ることがないように処理することにより、画像の読取り処理の連続性を維持することができる。特許文献2には、メモリバッファが満杯になったときには、2つの読取りセンサによって原稿の表面画像および裏面画像を読取っているときにもSS処理を実施する構成が記載されている。
【0004】
2つの読取りセンサによる原稿の表面画像と裏面画像の読取り中にSS処理を実施した場合には、原稿の挙動により、読取り処理の再開時に画像データを重複して読取らないように処理する表面画像のライン数と裏面画像のライン数とが異なることがある。一方、読取り処理の再開時に、表面画像データおよび裏面画像データのそれぞれを重複して読取らないように処理する読取り画像の補正部として、共通の補正部を備えることは、回路構成の簡素化および処理速度の高速化を図る上において有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−100871号公報
【特許文献2】特開平7−221928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、表面および裏面の画像データ用として共通の補正部を備えた場合には、その補正部による処理対象のライン数が1つに設定されるため、表面画像と裏面画像の少なくとも一方の画像が正確につながらず、読取り画像の画質の劣化を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回路構成の簡素化および処理速度の高速化を図りつつ、原稿の表面画像と裏面画像の両方の読取り精度を向上させることができる画像読取り装置および画像読取り方法を提供する。
【0008】
本発明の画像読取り装置は、搬送路に沿って原稿を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される原稿の表面および裏面の画像を読取る第1および第2の読取りセンサと、前記第1および第2の読取りセンサによって読取られた画像データを一時的にバッファメモリに蓄積してから転送する転送手段と、前記搬送手段による前記原稿の搬送および前記第1および第2の読取りセンサによる画像の読取りを中断させる中断処理を実施する制御手段と、を備え、前記第1および第2の読取りセンサは、第1の期間においていずれか一方が画像の読取りを行ない、第2の期間において両方が画像の読取りを行ない、前記制御手段は、前記第2の期間では前記中断処理を実施しないように、前記第2の期間の前の前記第1の期間内において、前記バッファメモリの空き容量が前記第2の期間に前記第1および第2の読取りセンサが画像を読取った場合に必要となる容量よりも少ないときに前記中断処理を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原稿の表面と裏面の画像の両方を読取る期間を避けるように、読取り動作の中断時期を設定することにより、回路構成の簡素化および処理速度の高速化を図りつつ、原稿の表面画像と裏面画像の両方の読取り精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像読取り装置の要部の概略構成図である。
【図2】図1の画像読取り装置の制御系のブロック構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における画像の読取りタイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態において、原稿が異なる搬送位置にあるときの概略平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における画像の読取りタイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態において、原稿が異なる搬送位置にあるときの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を例示的に説明する。なお、本発明の画像読取り装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等の画像記録装置の装置本体に対して、画像記録装置の構成要素の一部として組み込まれてもよい。この場合、画像読取り装置によって読取られた画像データに基づいて、画像記録装置の画像記録部が記録媒体に画像を記録する。例えば、画像読取り装置によって読取られた画像を画像形成部が記録媒体に複写し、画像記録装置の通信部を通して外部の装置に送信することができる。
【0012】
また、以下の実施形態における構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の画像読取り装置の概略構成図である。1は、原稿Gの表面の画像を読取るための表面読取りセンサ(第1の読取りセンサ)であり、2は、原稿Gの裏面の画像を読取るための裏面読取りセンサ(第2の読取りセンサ)である。3は第1搬送ローラ対、4は第2搬送ローラ対、5は第3搬送ローラ対、6は分離ローラ、8はピックアップローラである。これらのローラは、不図示の駆動源としてのパルスモータにより回転駆動される。7は分離パット、9は原稿G先端と後端を検知する原稿エッジセンサである。10は原稿積載トレイ、11は原稿排紙トレイであり、これらの間に原稿Gの搬送ラインが形成されている。原稿積載トレイ10上に積載された複数の原稿Gは、後述するように、ピックアップローラ8、分離ローラ6、および分離パット7によって1枚ずつ矢印A方向に送り出される。その原稿Gは、搬送ローラ対3,4,5により連続的に搬送されて、最終的に原稿排紙トレイ11上に排出される。
【0014】
駆動源としてのパルスモータの駆動パルス数と、原稿エッジセンサ9が原稿Gの先後端を検知するタイミングと、に基づいて、表面読取りセンサ1と原稿Gの先後端との間の距離、および裏面読取りセンサ2と原稿Gの先後端との間の距離を取得することができる。表面読取りセンサ1は、図1中の左右方向に移動可能に構成されており、搬送されない固定原稿の画像を読取るときには、図1中の左側から右側に走査しつつ、不図示のガラス上に載置された原稿の画像を読取ることが可能となっている。
【0015】
図2は、図1の画像読取り装置の制御系のブロック構成図である。
【0016】
表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2によって読取られた画像データは、画像補正部21および画像処理部22を通して、バッファメモリであるSRAM23に一時的に蓄積される。その蓄積された画像データは、画像処理部309によって表面の画像データと裏面の画像データに分割することができる。その分割後の表裏面の画像データは、外部インターフェイス部24を通して、外部の画像処理端末100に出力される。表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2による原稿画像の読取り速度が外部インターフェイス部24の転送速度よりも速い場合には、それらのセンサによって読取られた画像データがSRAM23に蓄積されている。このような場合には、SRAM23のオーバーフローを防ぐために、前述したSS処理(スタート・ストップ処理;中断処理)を実施する必要がある。
【0017】
画像補正部21は、SS処理による搬送停止後に原稿を再搬送して読取り処理を再開するときに、既に読取られた所定ライン数分の画像データに関しては、それを再度重複して読取ることがないように処理する。つまり、画像の読取り処理の連続性を維持するように、読取り処理の再開時における画像の読取り処理を遅延させる。本例の画像補正部21は、表面画像データ用および裏面画像データ用の補正部として共通に備えられており、再度重複して読取らないように処理する画像データの所定ライン数として単一のライン数を設定することになる。これにより、回路構成の簡素化および処理速度の高速化を図ることができる。
【0018】
25は、原稿の搬送機構などを含む読取駆動部25である。25,26,および27は、それぞれ、画像データの符号化処理のための画像符号化部および内部SRAMである。28は、画像読取り装置を操作するための操作パネルなどを含む操作部であり、29は、その操作部28のためのパネルインターフェース部である。30,31,32,33は、それぞれ、DRAM、EEPROM,SRAM,MPUである。MPU33(制御部)は、後述するSS処理の実施時期を設定する処理の他、読取り装置の機能の全てあるいは一部を制御する。34は不揮発性記憶装置であり、35は、画像読取り装置に電源を供給する電源供給部35である。
【0019】
図3は、原稿積載トレイ10から1枚の原稿Gを搬送したときのセンサ1,2,9の状態を説明するためのタイミングチャートである。つまり図3は、原稿エッジセンサ9による原稿Gの有無の検知状況、表面読取りセンサ1の読取り状況、および裏面読取りセンサ2の読取り状況を時系列的に表している。
【0020】
TAは、1枚目の原稿Gの先端が原稿エッジセンサ9の位置に到達して、その先端が検出された時点である。TBは、その原稿Gの先端が表面読取りセンサ1の位置に到達して、その原稿Gの表面画像の読取りが開始される時点である。TCは、その原稿G先端が裏面読取りセンサ2の位置に到達して、その原稿Gの裏面画像の読取りが開始される時点である。TDは、その原稿Gの後端が原稿エッジセンサ9の位置を通過して、原稿Gが検知されなくなった時点である。TEは、その原稿Gの後端が表面読取りセンサ1の位置を通過して、その原稿Gの表面画像の読取りが終了した時点である。TFは、その原稿Gの後端が裏面読取りセンサ2の位置を通過して、その原稿Gの裏面画像の読取りが終了した時点である。
【0021】
次に、原稿Gの搬送動作および画像の読取り動作について説明する。
【0022】
不図示の駆動源により、各ローラ対3,4,5およびローラ6,8が回転駆動される。まず、ピックアップローラ8によって、原稿積載トレイ10に積載された原稿Gの中から、上位のものが他のもとから予備的に分離される。その後、分離ローラ6および分離パッド7によって、予備的に分離された上位の原稿Gが1枚ずつに分離され、最上位の原稿Gが分離されて送り出される。分離された1枚目の原稿Gは、図1中のUターンパス(U字状の搬送路)に沿って搬送され、さらに第1搬送ローラ対3によって表面用読取りセンサ1の読取り部へ搬送される。その後、原稿Gは、第2搬送ローラ対4によって裏面用読取りセンサ2の読取り部に搬送されてから、第3搬送ローラ対5によって原稿排紙トレイ11に排出される。
【0023】
1枚目の原稿Gの後端が分離ローラ6を通過したときに、次の2枚目の原稿Gの送り出しが開始される。先行する原稿Gの後端と、後続の原稿Gの先端と、の間の原稿間隔は種々の条件により変動する。具体的には、第1搬送ローラ対3と分離ローラ6との周速差、ピックアップローラ8および分離ローラ6に設けられた不図示のメカタイマ(機械式タイマ)、第1搬送ローラ対3、分離ローラ6、ピックアップローラ8の搬送スリップなどにより変動する。このように原稿間隔には、それを能動的に変更できない所定量のばらつきがある。
【0024】
原稿エッジセンサ9が原稿Gの先端を検知してから、その原稿Gが所定量R1搬送されたときに、表面読取りセンサ1が原稿Gの表面画像の読取り動作を開始する。その後、さらに原稿Gが所定量R2搬送されたときに、裏面読取りセンサ2が原稿Gの裏面画像の読取り動作を開始する。所定量R1,R2については後述する。表面読取りセンサ1による読取り動作中に、原稿エッジセンサ9が原稿Gの後端を検知したときからは、表面読取りセンサ1によって所定量R1分の表面画像を読取り動作を終了し、その後、原稿Gが所定量R2搬送されてから裏面読取りセンサ2による読取り動作を終了する。その間に、原稿エッジセンサ9が次の原稿(次原稿)Gの先端を検知したときは、その後に次原稿Gが所定量R1搬送されてから、表面読取りセンサ1が次原稿Gの読取り動作を開始する。その後、さらに次原稿Gが所定量R2搬送されたときに、裏面読取りセンサ2が次原稿Gの読取り動作を開始する。原稿積載トレイ10の原稿がなくなるまで、このような画像の読取り動作を繰り返す。
【0025】
表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2の読取り動作が重なる図3中の時点TCからTEの区間において、SS処理などによって原稿Gの搬送が停止した場合には、読取り画像の劣化を招くおそれがある。それは、原稿Gの湾曲の程度に応じて、原稿Gの搬送再開時における表面画像と裏面画像の連続性に差が生じからである。
【0026】
以下においては、表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2の両方が画像を読取っている期間を「第2の期間」とし、その第2の期間内において原稿が搬送される領域(図3中の時点TCからTEの区間)を「2面読取領域」(第2領域)という。また、表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2のどちらかの一方が画像を読取っている期間を「第1の期間」とする。そして、その第1の期間内において原稿が搬送される領域(図3中の時点TBからTCの区間、および時点TEからTFの区間)を「1面読取領域」(第1領域)という。
【0027】
本実施形態においては、SS処理による読取り画像の劣化を防ぐために以下のような制御を行う。図4(a)および(b)は、その制御を説明するために、原稿G、原稿エッジセンサ9、表面読取りセンサ1、および裏面読取りセンサ2の位置関係を平面的に表した図である。
【0028】
表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2の位置は固定されており、原稿Gが矢印方向に搬送される。R1は、原稿エッジセンサ9の検出位置から表面読取りセンサ1の読取位置(読取り部)までの距離である。R2は、表面読取りセンサ1の読取位置(読取り部)から裏面読取りセンサ2の読取位置(読取り部)までの距離である。これらの距離R1,R2は、読取り装置固有の値である。また、本例の読取り装置によって読取り可能な原稿の搬送方向の最大長さは、Gmaxとする。
【0029】
図4(a)は、原稿Gが図3中の時点TBからTCの区間内、つまり1面読取領域内(第1領域内)にあるときの状態を表す。D1は、搬送中の原稿Gを裏面読取りセンサ2の読取位置の手前で確実に停止させるために必要な距離である。この時点において、SRAM311の空き容量に、表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2によって{(Gmax−R2)×2+D1}分の長さの画像を読取ったときに必要な容量があるか否かを判定する。{(Gmax−R2)×2+D1}分の長さは、図3中の斜線部分によって示される。SRAM311にその空きがあれば、そのまま読取り動作を継続する。SRAM311にその空き容量がなければ、読取り動作を一時停止してSS処理を実施する。
【0030】
図4(b)は読取り動作を一時停止したときの状態を表す。この時点において、SRAM311の空き容量が、{(Gmax−R2)×2+D2}分の長さの画像を読取ったときに必要な容量以上であるか否かを判定する。SRAM311にその空きがあれば読取り動作を再開し、SRAM311にその空きがなければ読取り動作の一時停止を継続する。
【0031】
このように、2面読取領域内(第2領域内)に入る直前の1面読取領域内(第1領域内)において、必要に応じてSS処理を実施することにより、2面読取領域に入ってからSS処理を実施した場合に生じるおそれのある読取り画像の劣化を回避することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
図5、図6(a)および(b)は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。図5は、原稿積載トレイ10から2枚の原稿Gを連続的に搬送したときのセンサ1,2,9の状態を説明するためのタイミングチャートである。つまり図5は、原稿エッジセンサ9による原稿Gの有無の検知状況、表面読取りセンサ1の読取り状況、および裏面読取りセンサ2の読取り状況を時系列的に表している。
【0033】
PAは、1枚目の原稿G1の先端が原稿エッジセンサ9の位置に到達して、その原稿G1が検知された時点である。PBは、1枚目の原稿G1の先端が表面読取りセンサ1の位置に到達して、その表面画像の読取りが開始された時点である。PCは、1枚目の原稿G1の先端が裏面読取りセンサ2の位置に到達して、その裏面画像の読取りが開始された時点である。PDは、1枚目の原稿G1の後端が原稿エッジセンサ9の位置を通過して、その原稿G1が検知されなくなった時点である。PEは、2枚目の原稿G2の先端が原稿エッジセンサ9の位置に到達して、その原稿G2が検知された時点である。PFは、1枚目の原稿G1の後端が表面読取りセンサ1の位置を通過した時点である。PGは、2枚目の原稿G2の先端が表面読取りセンサ1の位置に到達して、その原稿G2の表面画像の読取りが開始された時点である。PHは、1枚目の原稿G1の後端が裏面読取りセンサ2の位置を通過した時点である。PIは、2枚目の原稿G2の先端が裏面読取りセンサ2の位置に到達して、その原稿G2の裏面画像の読取りが開始された時点である。PJは、2枚目の原稿G2の後端が原稿エッジセンサ9の位置を通過して、その原稿G2が検知されなくなった時点である。PKは、2枚目の原稿G2の後端が表面読取りセンサ1の位置を通過した時点である。PLは、2枚目の原稿G2の後端が裏面読取りセンサ2の位置を通過した時点である。時点PCからPFの区間、および時点PIからPK区間内である2面読取領域内におけるSS処理の実施は、前述した第1実施形態によって回避することができる。
【0034】
図6(a)は、図5中の時点PFからPGの区間内、つまり1面読取領域内にあるときの状態を表し、1枚目の原稿G1、2枚目の原稿G2、原稿エッジセンサ9、表面読取りセンサ1、および裏面読取りセンサ2の位置関係を平面的に表している。
【0035】
表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2の位置は固定されており、原稿G1,G2が矢印方向に搬送される。R1は、原稿エッジセンサ9の検出位置から表面読取りセンサ1の読取位置(読取り部)までの距離である。R2は、表面読取りセンサ1の読取位置(読取り部)から裏面読取りセンサ2の読取位置(読取り部)までの距離である。これらの距離R1,R2は、読取り装置固有の値である。D3は、1枚目の原稿G1の後端G1bと、2枚目の原稿G2の先端G2aと、の間の距離である。この距離D3は、原稿エッジセンサ9が1枚目の原稿G1の後端G1bを検知してから、2枚目の原稿G2の先端G2aを検知するまでの間、不図示の駆動源としてパルスモータの駆動パルスをカウントすることにより算出することができる。D4は、搬送中の原稿G2を表面読取りセンサ1の手前で確実に停止させるために必要な距離である。この時点において、SRAM311の空き容量が、表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2によって距離{(R2−D3)×2+D4}分の長さの画像を読取ったときに必要となる所定容量以上であるか否かを判定する。{(R2−D3)×2+D4}分の長さは、図5中の斜線部分によって示される。SRAM311にその空きがあればそのまま読取り動作を継続する。SRAM311にその空きがなければ、読取り動作を一時停止してSS処理を実施する。図6(b)は、読取り動作を一時停止した状態を表す。この時点において、SRAM311の空き容量として、表面読取りセンサ1と裏面読取りセンサ2によって距離{(R2−D3)×2+D5}分の長さの画像を読取ったときに必要となる容量があるか否かを判定する。SRAM311にその空きがあれば読取り動作を再開する。SRAM311にその空き容量がなければ、読取りの一時停止を継続する。このように、時点PGからPHの区間、つまり表面読取りセンサ1が2枚目の原稿G2の表面画像を読取り、かつ裏面読取りセンサ2が1枚目の原稿G1の裏面原稿を読取る2面読取領域に入る前に、必要に応じてSS処理を実施する。これにより、時点PGからPHの区間の2面読取領域に入ってからのSS処理の実施を回避することができる。
【0036】
このように、2面読取領域に入る前に、必要に応じてSS処理を実施することにより、2面読取領域に入ってからSS処理を実施した場合に生じるおそれの読取画像の劣化を回避することができる。また、前後の原稿G1,G2の間隔に応じて、SS処理を実施するときのバッファメモリの空き容量を変更したり、読取り動作を再開させるときのバッファメモリの空き容量を変更することにより、SS処理の実施時期を状況に応じて最適に設定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される原稿の表面および裏面の画像を読取る第1および第2の読取りセンサと、
前記第1および第2の読取りセンサによって読取られた画像データを一時的にバッファメモリに蓄積してから転送する転送手段と、
前記搬送手段による前記原稿の搬送および前記第1および第2の読取りセンサによる画像の読取りを中断させる中断処理を実施する制御手段と、
を備える画像読取り装置であって、
前記第1および第2の読取りセンサは、第1の期間においていずれか一方が画像の読取りを行ない、第2の期間において両方が画像の読取りを行ない、
前記制御手段は、前記第2の期間では前記中断処理を実施しないように、前記第2の期間の前の前記第1の期間内において、前記バッファメモリの空き容量が前記第2の期間に前記第1および第2の読取りセンサが画像を読取った場合に必要となる容量よりも少ないときに前記中断処理を実施する
ことを特徴とする画像読取り装置。
【請求項2】
前記制御手段は、既に読取られた所定ライン数分の画像データを重複して読取らないように、前記中断処理の後に、前記搬送手段による前記原稿の搬送および前記第1および第2の読取りセンサによる画像の読取りを再開することを特徴とする請求項1に記載の画像読取り装置。
【請求項3】
前記第1の期間は、前記原稿が前記搬送路の第1領域内を搬送されるときであり、前記第2の期間は、前記原稿が前記搬送路の第2領域内を搬送されるときであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取り装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記搬送手段による前記原稿の搬送を中断したときに前記原稿が前記第1領域から前記第2領域に入らないように、前記中断処理を実施することを特徴とする請求項3に記載の画像読取り装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記中断処理を実施した後に、前記バッファメモリの空き容量が前記第2の期間に前記第1および第2の読取りセンサが画像を読取った場合に必要となる容量以上となったときに、前記搬送手段による前記原稿の搬送および前記第1および第2の読取りセンサによる画像の読取りを再開させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像読取り装置。
【請求項6】
前記搬送手段は複数の原稿を連続的に搬送し、
前記制御手段は、前記搬送手段によって先に搬送させる先行の原稿と、その後に搬送される後続の原稿と、の間隔に応じて、前記中断処理を実施するときの前記バッファメモリの空き容量を変更することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像読取り装置。
【請求項7】
前記搬送手段は複数の原稿を連続的に搬送し、
前記制御手段は、前記中断処理を実施した後に、前記バッファメモリの空き容量が所定容量以上となったときに、前記搬送手段による前記原稿の搬送および前記第1および第2の読取りセンサによる画像の読取りを再開させ、前記所定容量は、前記搬送手段によって先に搬送させる先行の原稿と、その後に搬送される後続の原稿と、の間隔に応じて変更することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像読取り装置。
【請求項8】
搬送路に沿って原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される原稿の表面および裏面の画像を読取る第1および第2の読取りセンサと、
前記搬送手段により原稿を搬送させ、第1の期間に前記第1および第2の読取りセンサのいずれか一方に画像の読取りを行わせ、前記第1の期間に続く第2の期間に前記第1および第2の読取りセンサの両方に画像の読取りを行わせる読取手段と、
前記第1および第2の読取りセンサによって読取られた画像データを蓄積する蓄積手段と、
前記第1の期間における前記蓄積手段に格納できる画像データの量に基づいて、前記読取手段によって第2の期間の画像の読取が開始される前に、前記搬送手段による前記原稿の搬送および前記第1および第2の読取りセンサによる画像の読取りを中断する中断手段と、
を備えることを特徴とする画像読取り装置。
【請求項9】
搬送路に沿って搬送される原稿の表面および裏面の画像を第1および第2の読取りセンサによって読取る工程と、前記第1および第2の読取りセンサによって読取られた画像データを一時的にバッファメモリに蓄積してから転送する転送工程と、前記バッファメモリの空き容量が少なくなったときに、前記原稿の搬送および前記第1および第2の読取りセンサによる画像の読取りを中断させる中断処理を実施する制御工程と、を含む画像読取り方法であって、
前記第1および第2の読取りセンサは、第1の期間においていずれか一方が画像の読取りを行ない、第2の期間において両方が画像の読取りを行ない、
前記制御工程は、前記第2の期間では前記中断処理を実施しないように、前記第2の期間の直前の前記第1の期間内において、前記バッファメモリの空き容量が前記第2の期間に前記第1および第2の読取りセンサが画像を読取った場合に必要となる容量よりも少ないときに前記中断処理を実施する
ことを特徴とする画像読取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66173(P2013−66173A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184139(P2012−184139)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】