説明

画像読取装置および画像形成装置

【課題】 厚みのある原稿の画像を読み取る場合に、ファーストコピータイムが短縮可能な画像読取装置を提供する。
【解決手段】
原稿を押圧する原稿搬送部9を、原稿の厚みに応じて支軸の高さが変化するヒンジ部90aを介して、画像読取部8に対し開閉する複写機1であって、原稿搬送部9および画像読取部8にそれぞれ設けられた、パドル部材99および当該パドル部材99との距離が所定値になったことを検出する検出センサー32とを有し、当該検出結果に基づいて、原稿搬送部9が所定の開き角になったことを検出する制御部と、原稿搬送部9が所定の開き角になったことが検出されたタイミングで原稿のサイズを検出する光学センサー21aと、前記支軸の高さの変化に起因するパドル部材99と検出センサー32との相対的距離の変動の一部を相殺するように、パドル部材99を変位させる変位機構190とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置および当該画像読取装置を備えた画像形成装置に関し、特に、画像読取部の原稿台ガラス上に原稿を押圧する原稿押圧部材がヒンジを介して上下に開閉自在に設けられている構成において、原稿押圧部材の開閉角度を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、複写機などにおける画像読取装置においては、画像読取部本体に設けられた原稿台ガラス上に、ヒンジを介してADF(auto document feeder)ユニットや押板などの原稿押圧部材が開閉自在に設けられており、これにより、原稿を原稿台ガラス上に手置きする際、原稿を当該原稿台ガラスに向けて押圧することで、原稿の浮きを防止している。
また、画像読取装置は、原稿の画像を読み取る際、原稿サイズも検出している。
【0003】
これにより、複写機などの画像形成装置は、検出された原稿サイズにもとづいて、給紙口や縮尺率等を自動的に選択して、画像形成動作を速やかに実行することができる。
近年、このような画像形成装置では、原稿押圧部材が完全に閉じられる少し前の段階、即ち、原稿押圧部材が所定の角度まで閉じられたときに、原稿台ガラス上の原稿のサイズ検出動作を開始し、ユーザーがスタートボタンを押下したときには、原稿のサイズ検出動作が完了し、すぐに読取動作を開始できるようにして、ファーストコピータイムの短縮化を図っている。
【0004】
原稿押圧部材が所定の角度まで閉じられたことを検出する構成としては、例えば、原稿読取部本体の上面から上方にロッド状のアクチュエータを突出させ、原稿押圧部材が閉じられるのに伴い、原稿押圧部材が当該アクチュエータ先端に当接して所定量押下したときにスイッチがONになるように構成している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−126247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような画像形成装置は、原稿の厚みに応じて、上述のヒンジの位置が上下する仕組みになっており、これにより、本などの厚みの厚い原稿が原稿台ガラス上に置かれても、当該原稿全体を鉛直方向下向きに押圧することができるようになっている。
しかしながら、特許文献1に開示されている技術によっては、原稿の厚みが厚くなるのに伴い、ヒンジの位置が高くなると、原稿押圧部材とアクチュエータ先端との距離が拡大するため、原稿押圧部材が所定の角度に閉じられているにも拘わらず、アクチュエータは、検出に必要な量押し込まれず、正確な検出ができなくなる、もしくは、原稿の厚みによっては全く検出ができなくなるという事態も生じ得る。
【0007】
このような場合、ユーザーからプリント実行指示を受け付けたときに、原稿サイズの検出動作を開始せざるを得ず、ファーストコピータイムが遅くなってしまうという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、画像を読み取る原稿の厚みに影響されることなく、原稿押圧部材の閉じ角を的確に検出可能な画像読取装置および当該画像読取装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像読取装置は、画像読取部の原稿台ガラスに載置された原稿を原稿台ガラスに向けて押圧する原稿押圧部材を、前記原稿の厚みに応じて支軸の高さが変化するヒンジ機構を介して、前記画像読取部に対し開閉可能に軸支してなる画像読取装置であって、前記原稿押圧部材および装置本体の一方側に設けられた被検出体と、他方側に設けられ、前記被検出体との距離が所定値になったことを検出する検出部とを有し、前記検出部の検出結果に基づいて、前記原稿押圧部材が前記原稿台ガラスに対し所定の開き角になったことを検出する開き角検出手段と、前記開き角検出手段により前記原稿押圧部材が前記原稿台ガラスに対して所定の開き角になったことが検出されたタイミングで、前記原稿のサイズを検出する原稿サイズ検出手段と、前記支軸の高さの変化に起因する前記被検出体と前記検出部との相対的距離の変動の全部もしくは一部を相殺するように、前記支軸の高さの変化に応じて、前記被検出体および前記検出部の少なくとも一方を変位させる変位手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
変位手段が、ヒンジ機構の支軸の高さの変化に起因する被検出体と検出部との相対的距離の変動を、全部もしくは一部相殺するように、前記支軸の高さの変化に応じて、被検出体および検出部の一方を変位させるため、上記支軸の高さが変化する前後での検出部における検出精度を変わりにくくすることができる。
これにより、厚みのある原稿の画像を読み取る際に、上記支軸の位置が高くなったとしても、厚みの薄い原稿の画像を読み取る場合と同様に、原稿押圧部材が略所定の開き角になったときに原稿サイズの検出を開始できるため、画像を読み取る原稿の厚みに影響されることなく、ファーストコピータイムを維持することが可能となる。
【0010】
また、前記ヒンジ機構は、画像読取部に固定された第1の部材と、原稿押圧部材に固定され、前記被検出体を揺動可能に保持する第2の部材と、第1の支軸部において第1の部材に軸支されると共に、第2の支軸部において第2の部材を軸支する第3の部材とからなり、前記変位手段は、前記第2の部材に軸支されたピニオンと、前記第3の部材に設けられ、前記ピニオンと噛み合うラックと、前記ピニオンの回転を前記被検出体の揺動運動に変換して伝達する伝達手段とからなり、前記検出部は、前記画像読取部に設けられており、前記伝達手段を、前記第2の支軸の高さの増加に起因し、第2の部材と第3の部材との相対的姿勢が変化して前記ピニオンギヤが回転する際に、前記被検出体が下方に揺動するように構成することにより、前記被検出体と前記検出部との相対的距離の変動の全部もしくは一部が相殺されるようにすることが望ましい。
【0011】
また、前記検出部は、前記原稿押圧部材を閉じる際に、前記被検出体に当接して変位する変位部材を有し、当該変位部材の移動を検出することにより、前記被検出体との距離が所定値になったことを検出するように構成されているとしてもよい。
さらに、前記被検出体は、その揺動支軸に直交する断面において、前記変位部材との接触面が湾曲する湾曲部を有することが望ましい。
【0012】
ここで、前記湾曲部は、前記第2の支軸の高さが増加しても、前記被検出体の揺動動作により、前記変位部材との鉛直方向における当接位置が変化しない形状となっていることが望ましい。
なお、本発明は、上記画像読取装置を備えた画像形成装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における実施の形態に係る画像形成装置の一例としての複写機の構成を示す外観斜視図である。
【図2】上記複写機の画像読取部の構成を示す斜視図である。
【図3】上記複写機の原稿押圧部材と画像読取部とを連結するヒンジ機構を示す一部切欠き斜視図である。
【図4】上記ヒンジ機構の構成要素であるヒンジ部の構成を示す斜視図である。
【図5】(a)は、厚みの薄い原稿を原稿押圧部材で押圧するために、原稿押圧部材を閉じようとしている状態のヒンジ機構の側面図であり、(b)は、その斜視図である。
【図6】(a)〜(c)は、上記原稿押圧部材の開閉角度を示す一部切欠き側面図である。
【図7】パドル部材を図4のY’方向から見たときの図である。
【図8】(a)は、厚みの厚い原稿を原稿押圧部材で押圧している状態のヒンジ機構の側面図であり、(b)は、その斜視図である。
【図9】(a)〜(c)は、変形例に係る画像形成装置において、厚みの厚い原稿を原稿押圧部材で押圧する場合のヒンジ機構の動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるデジタル式複写機(以下、単に「複写機」と言う。)1の構成を説明するための外観斜視図である。
同図に示すように、複写機1は、プリンター部2の上に画像読取部8および原稿搬送部9を順に積設してなる。
【0015】
本複写機1は、プリンター部2と画像読取部8の間のスペースを排紙トレイ2aとして利用する、いわゆる胴内排紙型の複写機である。
原稿搬送部9は、画像読取部8の筐体8a上にヒンジ機構(不図示)を介して開閉自在に設けられており、閉じられた状態で原稿を搬送しながらその画像を読み取る、いわゆるシートスルー方式の画像読取りを実行するADF(auto document feeder)ユニットであって、原稿給紙トレイ9aにセットされた原稿束の最上のものから1枚ずつ繰り出し、画像読取部8の原稿読取位置(後述のシートスルーガラス20d上)まで搬送した後に、原稿排紙トレイ9b上に排出する。
【0016】
また、原稿搬送部9は、原稿を1枚ずつ画像読取部8の後述する原稿台ガラス20c上に手置して画像を読み取る場合、原稿を原稿台ガラス20cに向けて押圧して原稿と原稿台ガラス20cとを密着させる原稿押圧部材として機能する。
厚みのある原稿を原稿搬送部9で押圧する場合、当該原稿を真上から押圧できるように、ヒンジ機構の原稿搬送部9を軸支する支軸の位置が、上方に移動する構成となっている。詳しくは、後述する。
【0017】
図2は、画像読取部8の構成を示す斜視図である。
画像読取部8は、原稿台ガラス20cとシートスルーガラス20dとが上部に設けられた筐体8a内に、原稿のサイズを検出する光学センサー21a、21b、21c、22aおよび22bと、光源(不図示)と、折り返しミラーを保持するスキャナー(不図示)と、CPU、RAMおよびROMなどからなる制御部(不図示)を備え、当該折り返しミラーにより反射された原稿画像を、光学レンズを介してCCDセンサ(不図示)に受光させて、画像データを生成する公知の構成を有する。
【0018】
さらに、画像読取部8(装置本体)は、筐体8a内に、原稿搬送部9の開閉角度を検出する開閉角度検出部30が設けられている。
開閉角度検出部30は、筐体8aの上面から突出するセンサーバー(アクチュエータ)31aなどを有しており、このセンサーバー31aが、原稿搬送部9が閉じられるのに伴い、押し下げられることにより、原稿台ガラス20cに対する原稿搬送部9の開き角度が、所定の角度以下となったことを検出する。詳しくは、後述する。
【0019】
画像読取部8内の制御部(不図示)は、当該検出が行われたタイミングで、光学センサー21a、21b、21c、22aおよび22bを起動させて、原稿サイズを検出する。
プリンター部2は、電子写真式のものであって、感光体ドラムの露光、現像、一次転写、二次転写及び定着などの一連の動作を実施して、画像読取部8から出力された画像データを用紙に印刷し、筐体上面に形成された胴内排紙トレイ2aに排紙するものである。
【0020】
また、本実施の形態の複写機1には、操作パネル5が、画像読取部8の筐体8aに付設されている。
<ヒンジ機構の構成>
図3は、上記画像形成装置の原稿搬送部9と画像読取部8とを連結するヒンジ機構90を示す一部切欠き斜視図である。
【0021】
また、同図は、画像読取部8の開閉角度を検出する開閉角度検出部30も合わせて示している。
ヒンジ機構90は、一対のヒンジ部90aおよびヒンジ部90bからなり、それぞれ画像読取部8の取付座20aおよび20b(図2参照)に取着されており、原稿搬送部9を軸支すると共に、原稿台ガラス20c上に置かれた原稿の厚みに応じて、原稿搬送部9を軸支する支軸の高さが変化する構成となっている。
【0022】
ここで、ヒンジ部90bは、ヒンジ部90aの構成が一部省略されたものであるため、主にヒンジ部90aの構成について説明する。
図4、図5(a)および(b)は、ヒンジ部90aおよび開閉角度検出部30の構成を示す図である。
ヒンジ部90aは、図4に示すように、基台91、ブラケット94、連結部材92、ピン93、ピン95、ギヤ97、98およびパドル部材99(被検出体)などからなる。
【0023】
ブラケット94と連結部材92とは、共に断面がコの字状であって、ブラケット94内側に連結部材92が位置し、ブラケット94が、その複写機1の前方側(Y方向側)の下部において、X軸方向に延びるピン95を介して連結部材92に軸支されている。
そして、ブラケット94の上面94aが、原稿搬送部9の背面部(Y’方向側)に固定される。
【0024】
ブラケット94の側板は、X’方向に折り曲げられた折り曲げ部94bを有する。
同図に示すように、ギヤ97およびギヤ98は、互いに噛合状態でこの折り曲げ部94bに軸支されている。
一方、連結部材92側板のギヤ97に対向する部分には、円弧状のラック92bが形成されている。
【0025】
ラック92bとギヤ97は、互いに噛み合い、ラックアンドピニオン機構を構成している。ここで、円弧状のラック92bは、ブラケット94がピン95を中心にして連結部材92に対して相対的に揺動する際におけるギヤ97の移動軌跡上に配置する必要があるため、その円弧の中心がピン95の支軸上に位置するように設けられている。
基台91は、ブラケット94と同様に、Y軸方向から見たときの断面形状が略コの字状となっており、その底面部91aが、画像読取部8の筐体8aの上部の取付座20b(図2参照)に固定されている。
【0026】
基台91の幅は、連結部材92の内側に納まるように、X軸方向における幅が連結部材92よりも狭くなっており、連結部材は、そのY’側の下部において、X軸方向に延びるピン93を介して基台91に軸支される。
これにより、厚みのある原稿を原稿台ガラス20cに向けて原稿搬送部9で押さえ付ける場合には、連結部材92が水平の状態から傾斜した状態に移行して、ピン95の位置が上昇することにより、ブラケット94と基台91との距離を拡大可能な構成となっている。
【0027】
パドル部材99は、センサーバー31aの先端に接触してこれを押下する部材であって、原稿搬送部9の開閉角度を認識するための基準位置となる部材であり、同図に示すように、円盤状の本体部99aと、本体部99aから張り出したアーム部99bと、アーム部99bに繋がっており、センサーバー31aの先端と、原稿の厚みに応じて択一的に当接する第1当接部99cおよび第2当接部99dとからなる。
【0028】
ここで、第1当接部99cは、平板状部材で構成されており、第2当接部99dは、所定の曲率を有して湾曲した湾曲部材で構成されている。
上述したギヤ97およびギヤ98、ラック92bおよびパドル部材99は、上記原稿の厚さに応じた連結部材92の角度変化、即ち、ピン95の高さの変化に伴い、パドル部材99と開閉角度検出部30との距離が変化しようとする動きを極力相殺するように、ブラケット94に対するパドル部材99の位置を変位させる変位機構190として機能する。
【0029】
一方、ヒンジ部90bには、基本的にはヒンジ部90aと同様の構成であるが、上述の変位機構190が設けられておらず、単に、厚みのある原稿を原稿台ガラス20cに向けて原稿搬送部9で押さえ付けた場合に、ピン95の位置が上昇して、ブラケット94と基台91との距離を拡大させるだけの構成となっており、画像読取部8の取付座20a(図2参照)に取着されている。
【0030】
続いて、開閉角度検出部30について説明する。
<開閉角度検出部>
開閉角度検出部30は、案内筒8bと、センサーバー31aと、検出センサー32などからなる。
センサーバー31aは、原稿読取部本体の筺体上面8aに設けられた貫通孔8cを介して筺体内部に挿入され、筺体に固定された案内筒8bに案内されて、鉛直方向に所定のストロークだけ移動自在なように保持されている。
【0031】
案内筒8bには、その円筒中心軸を含み、かつ、YZ平面に平行な平面と交差する部分に2つのスリット8d、8eが設けられている。
センサーバー31aは、ロッド状の部材であって、その下部には、ロッドの長手方向に沿って伸びる平板31b、31cが付設されており、この両平板31b、31cが、上記スリット8d、8e内に嵌り込んでスライドするため、センサーバー31aが、案内筒8b内で回転しない。
【0032】
また、センサーバー31aは、ばねなどの付勢部材(不図示)によって、Z方向に付勢されると共に、平板部31bおよび31cの上縁部がスリット8d、8eの上限部に当接することで、それ以上、筺体上面8aから突出しないようになっている。
検出センサー32は、コの字状の透過型フォトインタラプタであって、平板部31bのスリット8dから外方に突出した部分が下方に移動して、このコの字状の部分を通過する際に検出光が遮光されて、検出センサー32から信号が出力されるようになっている。
【0033】
これにより、画像読取部8内の制御部(不図示)は、前記原稿搬送部9が前記原稿台ガラス20cに対して所定の角度となったことを認識して、原稿サイズの検出動作を開始する。
原稿が1枚のシートであり薄い場合には、パドル部材99において、センサーバー31aの先端に当接するのは、図5(a)および(b)に示すように、第1当接部99cとなっている。
【0034】
ところで、原稿サイズの検出は、開始から完了までに約1秒弱を要するため、当該検出は、原稿が原稿台ガラス20c上に置かれてから、原稿搬送部9を閉め終るまでの間に開始して、ユーザーから画像形成指示を受け付けたときには、既に原稿サイズの検出が完了していることが望ましい。
このような観点から、上記所定の角度は、原稿台ガラス20c上に置かれた原稿の厚みが薄く、原稿搬送部9が初期状態で原稿を押圧できる状態において、図5(a)に示すように、原稿台ガラス20cに対する原稿搬送部9の開き角度が、0[°]となる少し前の角度(以下、「所定の角度」という。)となったときに、上記検出センサー32から平板31bの検出信号の出力が開始されるように、検出センサー32とセンサーバー31aの相対的な位置関係が設定されている。
【0035】
開閉角度検出部30において、上記所定の角度を大きな角度に設定して、原稿サイズの検出時期をできるだけ早めるようにすることも考えられるが、それでは、原稿搬送部9が完全に閉じられた状態から、少しだけ開放して原稿を差し替えるような場合には、原稿サイズの検出動作を開始できないという不具合が生じる。
このような事情から、本実施の形態では、上述の所定の角度を、10[°]以上、20[°]以下に設定しており、本実施の形態の複写機1では、15[°]に設定している。
【0036】
次に、原稿台ガラス20c上に厚みの厚い原稿が置かれ、これを原稿搬送部9で押圧する場合におけるヒンジ機構90の動作状況と、これに伴う開閉角度検出部30の動きについて説明する。
図6(a)〜(c)は、原稿搬送部9の開閉角度を示す一部切欠き側面図である。
図6(a)は、原稿台ガラス20c上に何も置かれてない状態、もしくは、厚みの薄い原稿が置かれている状態を示す。
【0037】
このとき、パドル部材99は、センサーバー31aを押し下げた状態となっており、平板部31cにより検出センサー32の光路が遮られているため、検出センサー32は、信号出力を継続する。
つまり、原稿台ガラス20cに対する原稿搬送部9の開き角度が15[°]以下となっていることを示す信号が出力される。
【0038】
そして、図6(b)の実線で示すように、原稿搬送部9を上方に揺動させると、パドル部材99がセンサーバー31aから離間して、センサーバー31aが上昇する。このとき、平板部31cが検出センサー32の光路上から外れるため、検出センサー32は、上記信号の出力を停止する。
その後、厚みの厚い原稿Gを原稿台ガラス20c上に載置して、原稿搬送部9で原稿Gを原稿台ガラス20cに向けて押圧しょうようとした場合、原稿台ガラス20cに対する原稿搬送部9の開き角度θが15[°]以下となる前に、原稿搬送部9が原稿Gに接触してしまい、この接触時点において、パドル部材99もセンサーバー31aを押し込んでいないケースがある(図6(b)の破線の状態)。
【0039】
原稿搬送部9が原稿Gに接触した直後から、それまでピン93を軸に揺動していた原稿搬送部9が、今度は、原稿搬送部9と原稿の接触部分Sを支点に揺動する。このときブラケット94は、それまで、下方に移動していたのものが、今度は連結部材92に対して相対的な角度変化を伴いつつ、上方へと移動する(図6(c)参照)。
これにより、パドル部材99も上方へと移動しようとするが、上記ブラケット94と連結部材92の相対的な角度変化に伴い、ブラケット94に設けられたラック92bと、連結部材92に設けられた(ピニオン)ギヤ97とが相対的に移動するため、ギヤ97とこれに噛み合うギヤ98とが回転駆動され、ブラケット94が上方に移動しているにも関わらず、パドル部材99は、より大きく下向きに揺動して、原稿台ガラス20cとの距離を縮めるように作用する。
【0040】
その結果、原稿搬送部9の開き角度が、ほぼ15[°]となったとき、パドル部材99が、センサーバー31aを押し込んで、検出センサー32の信号出力を開始させる。このタイミングで画像読取部8は、光学センサー21a、21b、21c、22aおよび22bをONさせて、原稿サイズの検出動作をユーザーから画像形成動作開始の指示が受け付けられる前に開始することができる。
【0041】
この際、ブラケット94の支軸の位置の変位量を相殺するように、パドル部材99を揺動させてセンサーバー31aの先端との鉛直方向における当接位置の変化が可及的に少なくなるように、ギヤ97のピッチ、ギヤ97とギヤ98とのギヤ比、パドル部材99の形状などが決定されている。
特に、パドル部材99を単なる平板のみで形成した場合には、原稿の厚みが大きくなると、ブラケット94と連結部材92との相対的な角度変化がかなり大きくなり、これに伴ってギヤ98の回転角が大きくなってパドル部材99の揺動角が大きくなり過ぎて、パドル部材99の先端がセンサーバー31aの移動軌跡上から逸れて当接しなくなったり、また、パドル部材の揺動角が大きくなるにつれて、パドル部材99のセンサーバー31aの移動軌跡上における鉛直方向の移動量は少なくなって、ブラケット94の上昇をパドル部材99の揺動によっては相殺しきれなくなり、センサーバー31aとの当接点が鉛直方向の上方にずれてしまう。
【0042】
そこで、本実施の形態では、パドル部材99に平坦部からなる第1当接部と湾曲面からなる第2当接部を設けている(図4、図5)。
図7は、パドル部材99を図4のY’方向から見たときの図である。
原稿が1枚のシートである場合には、ブラケット94の位置が一番低く、パドル部材99の支軸991の位置はP1であって、パドル部材99は水平より角度θ1だけ上方に傾いた状態である。このときパドル部材99は平坦な第1当接部においてセンサーバー31aの先端に当接している。
【0043】
ブラケット94の位置がH1だけ上昇して、パドル部材99の支軸991がP2の位置まで上昇すると、パドル部材99は、元の位置より下方に角度θ2だけ揺動して、第2当接部99dが後端規制部材31aの先端に当接するが、この当接位置Pcの鉛直方向の位置が、支軸991がP1にあるときの当接位置のときとほぼ同じになるようになっている。
【0044】
すなわち、第2当接部99dは、センサーバー31aとの接触面が曲面となっており、ブラケット94と連結部材92との相対的な角度が変化しても、第2当接部99dとセンサーバー31aの接触位置の高さができるだけ変わらないような形状になっている。
具体的に、第2当接部99dの形状としては、XZ平面で切断した断面形状が、円弧状や2次曲線もしくはこれらに近い形状にすることなどが考えられ、さらには、シミュレーションを実施して、連結部材92の角度変化に起因するパドル部材99のセンサーバー31aとの当接位置の鉛直方向における変動を極力相殺するような形状にすることがより望ましい。
【0045】
図8(a)は、厚手の原稿のためブラケット94が上昇して図7のP2の位置に支軸991が移動したときの状態におけるヒンジ部90aおよび開閉角度検出部30の構成を示した側面図であり、図8(b)はその斜視図である。
センサーバー31aを押圧するものが、第1当接部99cから第2当接部99dに切り替わった後は、ブラケット94がそれ以上、上方に移動してもセンサーバー31aの先端との鉛直方向における当接位置が大きく変動することはない。
【0046】
パドル部材99を上記のような形状にすることにより、原稿の厚みに応じて原稿搬送装置8の支軸の高さが変動しても、当該原稿搬送装置の開き角を的確に検出できる。
なお、本実施の形態では、原稿台ガラス20c上に厚みが薄い原稿を置いて、これを押圧したときに、連結部材92の水平方向に対する角度変化が生じておらず、かつ、検出センサー32から信号出力が開始されるときの原稿台ガラス20cに対する原稿搬送部9の開き角度がちょうど15[°]であったとすると、原稿を差し替えて厚みの厚い原稿を押圧した際、水平方向に対する連結部材92の角度変化が最大10[°]生じた場合、検出センサー32から信号出力が開始される原稿搬送部9の開き角度が、15[°]から+−5[°]程度の誤差が生じたとしても、ファーストコピータイムへの影響はないので、検出精度がこの誤差の範囲に収まるようにすれば、少なくとも従来よりも早く原稿サイズを検出できる。
【0047】
したがって、原稿の厚み次第では、平坦部からなる第1当接部材でもいい場合もあり、反対にさらに検出精度を向上させたい場合には、第1当接部材を廃して第2当接部材のみで構成しても構わない。
<変形例>
本発明は、上述のような実施の形態に限られるものではなく、次のような変形例も実施することができる。
【0048】
(1)上記実施形態では、ブラケット94のピン95(支軸)の位置を上下させるのに、ブラケット94と基台91との間に連結部材92を介在させて、連結部材92を揺動させていたが、これに限らない。
図9(a)〜(b)は、ブラケット94のピン95の位置を上下させるのに、上記実施の形態とは別の構成を用いた画像形成装置の変形例の動作状態を示す図である。
【0049】
本変形例では、ヒンジ機構90、開閉角度検出部30および画像読取部8の筐体8aの構成のみが、上記実施の形態の複写機1とは異なる。
本変形例において、ブラケット199は、図9(a)に示すように、直接基台191に軸支されている。
また、基台191は、下部にシャフト191aが設けられており、当該シャフト191aが、画像読取部108の筐体108aに設けられたガイド穴108cに、上下方向にスライド自在に挿嵌されている。
【0050】
この構成により、厚みの厚い原稿Gが、図9(b)に示すように、原稿台ガラス20c上に載置され、図9(c)に示すように、画像読取部8が当該原稿Gを押圧すると、画像読取部8と原稿Gの接触部分を支点にして、ブラケット199および基台191が上方にスライドする。
また、シャフト191aの下端には、本変形例における開閉角度検出部130を固定するための基台200が設けられている。
【0051】
当該基台200には、案内筒8bと同様に検出センサー32が設けられた案内筒200aが固定されている。
また、案内筒200aの中には、上記実施の形態と同様に不図示のばねによって、上方に付勢されたセンサーバー31aが挿嵌されている。
以上の構成により、ブラケット199および基台191が上方にスライドするのに伴い、開閉角度検出部130も上方にスライドする構成となっている。
【0052】
つまり、開閉角度検出部130が、ブラケット199の支軸の高さの変化に応じて、ブラケット199に固定された原稿搬送部9と相対的距離の変動を全て相殺するように変位する構成となっている。
なお、本変形例では、センサーバー31aを押圧する部分は、原稿搬送部9の下面となっている。
【0053】
(2)また、上記実施形態では、原稿搬送部9の開閉角度を認識するためのパドル部材99(被検出体)が、ブラケット199、即ち、原稿搬送部9側に設けられ、開閉角度検出部30が、画像読取部8側に設けられていたが、これに限られない。
例えば、上記変形例において、センサーバー31aを内包すると共に、検出センサー32が設けられた案内筒200aを基台200から切り離し、上下を逆転させた状態で、センサーバー31aが突出していない側の端部をブラケット199に軸支し、案内筒200aが常時鉛直方向となるようにして、原稿台ガラス20cに対する原稿搬送部9の開き角度が所定の角度となったときに、センサーバー31aの先端が基台200と接触することにより押圧され、検出センサー32から信号が出力される構成としてもよい。
【0054】
(3)上記実施の形態は、アーム部99bに第2当接部99dを設けていたが、これに限られない。
例えば、連結部材92のY軸方向における長さをもっと長くして、ブラケット94に高さ変化が生じた場合に、ブラケット94と連結部材92との相対的な角度変化がより小さくなるようにしたり、ギヤ98とギヤ97とのギヤ比を今よりもっと大きく設定したりすることにより、第2当接部99dを設けなくてもよい場合があるであろう。
【0055】
(4)また、上記実施の形態は、厚みの厚い原稿を原稿搬送部9で押圧する際に、ブラケット94が上方に浮き上がり、原稿搬送部9が所定の角度となったときに、センサーバー31aが押圧されないという不都合を課題に挙げているが、それ以外のケースでも効果を発揮する。
例えば、図4の符号96は、複写機1の製品出荷時において、原稿搬送部9を原稿台ガラス20cに密着させたときに、隙間が生じないように原稿搬送部9のY’方向側の高さを調整するためのねじである。
【0056】
ねじ96は、その先端が連結部材92の上面に当接しており、より大きな回転角で閉め込むほど、ブラケット94の下面からより長く突出してブラケット94を上方に浮き上がらせる。
このとき、ブラケット94と連結部材92との間に、相対的な角度変化が生じるが、変位機構190の働きにより、このような相対的な角度変化が生じても、検出センサー32から信号出力が開始されるときの原稿搬送部9の開き角度が変わらないようにすることができる。
【0057】
(5)上記実施の形態では、原稿搬送部9が所定の角度となったことを検出する構成として、パドル部材99をセンサーバー31aに接触させ、これを押し下げていたが、これに限らない。
例えば、検出センサー32を筺体上面8aに設け、かつ、パドル部材99を形状変更して、これの一部が直接検出センサー32のコの字部分の間を通過するように構成してもよいであろう。
【0058】
(6)また、原稿押圧部材を原稿搬送部9、即ち、ADFとしたが、これに限らず、単なる原稿押さえ板でも構わない。
(7)また、上記実施の形態では、複写機1は、デジタル式複写機に適用した場合の例を説明したが、スキャナーなどでもよく、要するに、画像読取部の原稿台ガラスに載置された原稿を原稿台ガラスに向けて押圧する原稿押圧部材を、原稿の厚みに応じて支軸の高さが変化するヒンジ機構を介して、画像読取部に対し開閉可能に軸支してなる画像読取装一般に適用することができる。
【0059】
また、上記実施の形態および上記変形例の内容を可能な限り、それぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、画像読取部の原稿台ガラスに載置された原稿を原稿台ガラスに向けて押圧する原稿押圧部材を、原稿の厚みに応じて支軸の高さが変化するヒンジ機構を介して、画像読取部に対し開閉可能に軸支してなる画像読取装一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 複写機
2 プリンター部
2a 排紙トレイ
8,108 画像読取部
8a,108a 筐体
8b,200a 案内筒
9 原稿搬送部
20 筐体
20c 原稿台ガラス
21a〜c,22a,b 光学センサー
30 開閉角度検出部
31a センサーバー
31b, 31c 平板部
32 検出センサー
90 ヒンジ機構
90a,90b ヒンジ部
91,191,200 基台
91a底面部
92 連結部材
92b ラック
93,95 ピン
94,199 ブラケット
94b 折り曲げ部
97,98 ギヤ
99 パドル部材
99c 第1当接部
99d 第2当接部
108c ガイド穴
130 開閉角度検出部
190 変位機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読取部の原稿台ガラスに載置された原稿を原稿台ガラスに向けて押圧する原稿押圧部材を、前記原稿の厚みに応じて支軸の高さが変化するヒンジ機構を介して、前記画像読取部に対し開閉可能に軸支してなる画像読取装置であって、
前記原稿押圧部材および装置本体の一方側に設けられた被検出体と、他方側に設けられ、前記被検出体との距離が所定値になったことを検出する検出部とを有し、前記検出部の検出結果に基づいて、前記原稿押圧部材が前記原稿台ガラスに対し所定の開き角になったことを検出する開き角検出手段と、
前記開き角検出手段により前記原稿押圧部材が前記原稿台ガラスに対して所定の開き角になったことが検出されたタイミングで、前記原稿のサイズを検出する原稿サイズ検出手段と、
前記支軸の高さの変化に起因する前記被検出体と前記検出部との相対的距離の変動の全部もしくは一部を相殺するように、前記支軸の高さの変化に応じて、前記被検出体および前記検出部の少なくとも一方を変位させる変位手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記ヒンジ機構は、
画像読取部に固定された第1の部材と、
原稿押圧部材に固定され、前記被検出体を揺動可能に保持する第2の部材と、
第1の支軸部において第1の部材に軸支されると共に、第2の支軸部において第2の部材を軸支する第3の部材とからなり、
前記変位手段は、
前記第2の部材に軸支されたピニオンと、
前記第3の部材に設けられ、前記ピニオンと噛み合うラックと、
前記ピニオンの回転を前記被検出体の揺動運動に変換して伝達する伝達手段と、からなり、
前記検出部は、前記画像読取部に設けられており、
前記伝達手段を、前記第2の支軸の高さの増加に起因し、第2の部材と第3の部材との相対的姿勢が変化して前記ピニオンギヤが回転する際に、前記被検出体が下方に揺動するように構成することにより、前記被検出体と前記検出部との相対的距離の変動の全部もしくは一部が相殺されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記原稿押圧部材を閉じる際に、前記被検出体に当接して変位する変位部材を有し、当該変位部材の移動を検出することにより、前記被検出体との距離が所定値になったことを検出するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記被検出体は、その揺動支軸に直交する断面において、前記変位部材との接触面が湾曲する湾曲部を有することを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記湾曲部は、前記第2の支軸の高さが増加しても、前記被検出体の揺動動作により、前記変位部材との鉛直方向における当接位置が変化しない形状となっていることを特徴と請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の画像読取装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−115462(P2013−115462A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257230(P2011−257230)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】