画像読取装置
【課題】原稿から得た画像データのファイルを送信するときに、情報漏洩を防ぐことのできる技術を提供する。
【解決手段】画像読取装置において、画像データのファイルを暗号化し、この暗号化における暗号化キーを、ファイルの送信先ではなく、管理者に送信する。その結果、ファイルを受信した者は、管理者からキーを教えてもらわないと、ファイルを開くことができないので、情報漏洩が防止される。
【解決手段】画像読取装置において、画像データのファイルを暗号化し、この暗号化における暗号化キーを、ファイルの送信先ではなく、管理者に送信する。その結果、ファイルを受信した者は、管理者からキーを教えてもらわないと、ファイルを開くことができないので、情報漏洩が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿から画像データを取得し、この画像データから電子ファイルを作成して外部装置に送信する画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報漏洩を防止するために、電子データの暗号化が広く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、複合機、端末装置、及びメールサーバを備えるネットワークシステムが記載されている。端末装置にはそれぞれキーデータが設定されており、複合機は、予め、このキーデータを端末装置のメールアドレス(以下、単に「アドレス」と称することがある)に対応付けて保管している。
【0004】
この複合機は、カラースキャナ及び暗号化復号化処理部を備える。この複合機は、カラースキャナによって原稿から画像を読み取って画像データを得て、暗号化復号化処理部によって、文書送信者が指定した配信先端末のメールアドレスに対応するキーデータを適用して、画像データを暗号化する。この複合機は、こうして暗号化された画像データを添付した電子メールを作成し、配信先ユーザのメールアドレスを宛先メールアドレスに指定して、この電子メールをメールサーバへ送信する。
【0005】
宛先ユーザが端末装置でメールアプリケーションを立ち上げると、上述の電子メールがメールサーバから端末装置へ送信される。電子メールを受信すると、端末装置は、自己のキーデータを適用して、添付ファイルの復号化処理を行う。
【0006】
このように、従来のネットワークシステムは、個々の端末装置に設定されたキーデータによって暗号化と復号化とを行うことで、通信データの漏洩を防止しようと試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−324724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の技術では、個々のデータ毎に漏洩を防止することはできない。例えば、複合機に登録されている端末装置宛に、この端末装置の使用者が見るべきではないデータが送信されるような場合、従来の複合機では、このデータが不適切な使用者に見られることを防止することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、このような場合であっても、情報漏洩を防止することができる技術、具体的には、閲覧を禁止するか許可するかを、個々のデータ毎に管理することを可能にする画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題は、原稿から画像データを得る読取部と、上記画像データを暗号化する暗号化部と、上記暗号化で用いられる暗号化キーを決定するキー決定部と、暗号化された上記画像データを外部装置に送信するデータ送信部と、上記暗号化キーを上記外部装置の所有者以外の者に通知するキー通知部と、を備える画像読取装置によって、解決される。
【0011】
(2)上記(1)に記載の画像読取装置において、上記キー通知部は、上記キー通知部の通知の対象者が使用する端末装置に、上記キーを送信するキー送信部であってもよい。
【0012】
(3)上記(1)に記載の画像読取装置において、上記キー通知部は、上記キー通知部の通知の対象者を認証する通知対象者認証部と、上記通知対象者認証部が認証に成功すると、上記キーを表示するキー表示部と、を備えていてもよい。
【0013】
(4)また、上記課題は、原稿から画像データを得る読取部と、上記画像データを暗号化する暗号化部と、上記暗号化で用いられる暗号化キーを、予め定められたパターンに則って決定するキー決定部と、暗号化された上記画像データを外部装置に送信するデータ送信部と、備える画像読取装置によって解決される。
【0014】
(5)上記(4)に記載の画像読取装置は、上記キーを特定する情報を、上記外部装置の所有者以外の者に通知する特定情報通知部をさらに備えていてもよい。
【0015】
(6)上記(5)に記載の画像読取装置において、上記特定情報通知部は、上記キー特定情報通知部の通知の対象者が使用する端末装置に、上記キーを特定する情報を送信する特定情報送信部であってもよい。
【0016】
(7)上記(5)に記載の画像読取装置において、上記特定情報通知部は、上記特定情報通知部の通知の対象者を認証する通知対象者認証部と、上記通知対象者認証部が認証に成功すると、上記特定情報を表示する特定情報表示部と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
キー通知部が、画像データの受信者以外の通知対象者にこの画像データの暗号化キーを通知することで、画像データの受信者に画像データを閲覧させるかどうかを、暗号化キーの通知対象者が決定することができる。
【0018】
また、キー決定部が、予め定められたパターンに則って暗号化キーを設定することで、各画像データの閲覧の禁止/許可を判断する者に対する、暗号化キーの通知を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の通信システムの概要を示すブロック図。
【図2】MFPの概要を示すブロック図。
【図3】ユーザ情報編集時のMFPの動作を示すフローチャート。
【図4】読取データ送信時のMFPの動作を示すフローチャート。
【図5】ファイル添付メールの文面の一例を示す図面。
【図6】キー通知用メールの文面の一例を示す図面。
【図7】第2実施形態における読取データ送信時のMFPの動作を示すフローチャート。
【図8】第2実施形態におけるキー表示時のMFPの動作を示すフローチャート。
【図9】第3実施形態における読取データ送信時のMFPの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔1〕第1実施形態
以下に、本発明の実施の一形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(1-1)通信システム
図1に、通信システム100の概要を示す。図1に示すように、通信システム100は、複数のクライアントPC(Personal Computer)11〜13、メールサーバ2、MFP(Multifunction Peripheral)3、これらの装置を通信可能に接続するネットワーク101等を備える。
【0022】
クライアントPC11〜13は、メール送信機能を備えている。また、クライアントPC11〜13には、それぞれに固有のメールアドレス(以下、単に「アドレス」と称することがある)が設定されている。クライアントPC11〜13は、メールの送受信機能を備える。
【0023】
メールサーバ2は、メールを保存する保存部及び配送する配送部等を備えるサーバコンピュータである。具体的には、メールサーバ2は、クライアントPC11〜13やMFP3等の端末装置から送られてきたメールを、このメールの宛先のアドレスに対応するトレイに一旦保存し、その後、この宛先に相当する端末装置へメールを配送する。
【0024】
MFP3は、プリンタ、コピー機、スキャナ、及びファクシミリ装置としての機能を備えると共に、メールの送受信機能を有する装置である。MFP3にはメールアドレスが割り当てられている。MFP3の具体的な構成については後述する。
【0025】
(1-2)MFP3
図2に、MFP3の概要を示す。図2に示すように、MFP3は、操作パネル300、メール通信部(データ送信部、並びにキー通知部及びキー送信部の一例)301、印刷部302、ユーザ情報保存部303、スキャナ(読取部)304、制御装置(暗号化部、キー決定部、通知対象者認証部の一例)310を備える。また、MFP3は、さらに、ファクシミリ通信部、及び、PC等の外部装置から印刷データを受信したり、MFP3の動作状況を送信したりするデータ通信部を備える(図示せず)。MFP3内の各部は、バスによって接続されている。
【0026】
操作パネル300は、ユーザから、指示や情報の入力を受け付けるようになっており、具体的には、液晶表示パネル及びタッチセンサを備えるタッチパネル、並びにハードキー(ボタン)等を備える。液晶表示パネルには、種々の画面を表示することができ、画面には、ソフトキー(ボタン)が含まれていてもよい。
【0027】
メール通信部301はメールの送受信を行う。
【0028】
印刷部302は、画像(文字、記号、絵、写真、図等を含む)を用紙(記録媒体の一例)上に印刷するようになっている。具体的には、印刷部302としては、電子写真方式又はインクジェット方式等の従来公知の印刷方式により画像を顕像化する装置が採用される。
【0029】
ユーザ情報保存部303は、HDD(Hard Disk Drive)等の書換可能な記録媒体により実現される。これらの保存部に保存される情報の内容については後述する。
【0030】
スキャナ304は、原稿搬送装置、プラテンガラス、光源、光を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)等の読取素子、光源からの光を原稿に導き原稿からの反射光を読取素子に導くレンズ及びミラー、読取素子からのアナログの電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、デジタル信号に画像処理を施して画像データを作成する画像処理部等を備える。スキャナ304によって得られた画像データは、制御装置310内のRAM312、メモリ313、または図示しないメモリ内に格納される。
【0031】
制御装置310は、MFP3内の各部の動作の制御等の種々の処理を行うようになっている。具体的には、制御装置310は、CPU311、RAM312、メモリ313等を備える。メモリ313内には、ユーザ情報管理プログラム313a、及び読取データ送信プログラム313b等のプログラムが保存される。CPU311はこれらのプログラムを読み出して実行可能であり、RAM312はCPU311の作業領域として機能することができる。
【0032】
(1-3)ユーザ情報保存時のMFPの動作
ユーザが操作パネル300を介して、ユーザ情報保存動作開始の指示を入力すると、MFP3は図3の動作を開始する。図3の動作は、CPU311がユーザ情報管理プログラム313aを実行することによって、実現される。
【0033】
図3に示すように、制御装置310は、操作パネル300の液晶表示パネルに、ID及びパスワードを入力するようにユーザに求める画面を表示させる(ステップS301)。制御装置310は、入力されたID及びパスワードと、管理者のID及びパスワードとを比較し、一致すれば(ステップS302でYes)、ユーザ情報の入力画面を表示する(ステップS303)。
【0034】
その後、操作パネル300を介してユーザ情報が入力され(ステップS304でYes)、さらにユーザ情報を保存するようにとの指示が入力されると(ステップS305でYes)、制御装置310は、ユーザ情報保存部303に、入力されたユーザ情報を保存する(ステップS306)。こうして、新規ユーザ情報の登録又はユーザ情報の変更(編集)が行われる。ユーザ情報には、ユーザ名、ID、パスワード、アドレス等が含まれる。
【0035】
認証に成功しなかったり(ステップS302でNo)、ユーザ情報が入力されなかったり(ステップS304でNo)、ユーザ情報の保存指示がなかったり(ステップS305でNo)した場合には、新規ユーザ情報の登録やユーザ情報の変更は行われない。
【0036】
このように、MFP3は、管理者のみにユーザ情報の編集を許可するようになっている。
【0037】
なお、管理者についてのID、パスワード、アドレス等の情報も、その他のユーザの情報と同様に、ユーザ情報保存部303に保存されている。管理者の情報の編集についても、制御装置310はID及びパスワードの入力を要求するようになっている。
【0038】
(1-4)読取データ送信時のMFPの動作
MFP3は、原稿から得られた画像データを外部装置に送信する、読取データ送信を行う。具体的には、MFP3は、操作パネル300を介して、画像データを送信するようにとの指示を受けると、図4に示す動作を行う。以下、送信を依頼するユーザを「送信者」と称する。図4の動作は、CPU311が読取データ送信プログラム313bを実行することによって実現される。
【0039】
図4に示すように、制御装置310は、送信者にID及びアドレスの入力を求め、この入力内容とユーザ情報保存部303内の情報とを比較することで、送信者の認証を行う(ステップS401)。認証に失敗した場合、すなわち、入力されたID又はアドレスがユーザ情報保存部303内の情報と一致しなければ、以下の動作は行われずに、送信は終了となる(ステップS402でNo)。
【0040】
送信者の認証に成功すると(ステップS402でYes)、制御装置310は、操作パネル300を介して、送信者から、宛先アドレスの入力を受け付ける(ステップS403)。具体的には、制御装置310の制御の下、操作パネル300の液晶表示パネルに、宛先アドレスの入力を送信者に求める画面が表示される。この画面では、送信者は、アドレスの直接入力もできるし、アドレス帳から宛先を選択することもできる。
【0041】
宛先のアドレスが入力されると、制御装置310の制御の下、スキャナ304が、原稿から画像データを取得する(ステップS404)。こうして取得された画像データは、MFP3内の記憶装置内に保存される。
【0042】
また、制御装置310は、後述のメールの添付ファイルに付すキーを決定する(ステップS405)。
【0043】
「キー」とは、文字列であり、「パスワード」や「暗号化キー」と言い変えてもよい。「文字」には、数字、アルファベット、記号(アンダーバー、スラッシュ、ハイフォン等)等が含まれる。文字列の長さは特に限定されないが、例えば数個から数十個、例えば4字以上150字以下の範囲内で設定されてもよい。
【0044】
キーの決定方法は、特に限定されるものではない。例えば、制御装置310は、複数のキーを制御装置310のメモリ313内に記憶しており、この複数のキーから1つをランダムに選択するようになっていてもよい。また制御装置310は、ランダムに文字を組み合わせて、キーを作成できるようになっていてもよい。
【0045】
決定されたキーに基づいて、制御装置310は、ステップS404で取得した画像データから、送信用の電子ファイル(以下、単に「ファイル」と称する)を作成する(ステップS406)。送信用のファイルとは、外部装置に送信可能な形式のファイルであればよく、その形式は具体的に限定されるものではないが、例えば、pdf形式、gif形式、tif形式等が採用される。ファイル形式は、送信者が操作パネル300を介して選択できるようになっていてもよい。作成されたファイルは、例えばメモリ313に保存される。
【0046】
なお、制御装置310は、操作パネル300を介して、送信者からファイル名の入力を受け付けて、このファイル名をステップS406で作成したファイルに付するようになっていてもよい。また、制御装置310は、送信者がメール送信をMFP3に依頼したときの日時若しくはジョブ番号等を単独で、又は組み合わせて、ファイル名とすることができる。ジョブ番号とは、例えば、制御装置310が、各メール送信ジョブに、ジョブが依頼された順に付ける通し番号であってもよい。ジョブ番号は、電源投入から切断までの期間、1日、1週間、1ヶ月等の期間毎に、リセットされてもよい。
【0047】
制御装置310はさらに、ステップS405で決定されたキーを用いて、送信用ファイルのデータを暗号化する(ステップS407)。
【0048】
制御装置310は、このファイルを添付したメール(ファイル添付メール)を作成する(ステップS408)。このファイル添付メールは、暗号化されたファイルが添付され、宛先がステップS403で受け付けた宛先になっていればよく、その他の情報を含んでいてもよい。
【0049】
制御装置310は、ファイル添付メールの他に、キー通知用メールを作成する(ステップS409)。キー通知用メールは、キーと、下記ステップS410で送信されるメール(添付ファイルを含む)の概要とが、キー通知用メールを受け取った管理者(通知対象者)に分かるものであればよい。
【0050】
制御装置310の制御の下、メール通信部301によって、ファイル添付メールはステップS403で指定された宛先へ送信され(ステップS410)、キー通知用メールは管理者へ送信される(ステップS411)。
【0051】
以下に、読取データ送信の具体例を挙げる。この例では、MFP3の管理者がXである。また、送信者Aが、MFP3に、原稿から画像データを得て、受信者Bにメールで送信するように、との指示を出しているものとする。送信者Aの認証等の説明については省略する。また、送信者Aから、添付ファイルに「試験結果」とのファイル名を付すように、MFP3に指示が入力されたものとする。
【0052】
この例におけるファイル添付メールM1の文面を図5に示す。図5に示すように、制御装置310は、メールM1の件名に、添付ファイルのファイル名である「試験結果」や、上述のジョブ番号等、各送信ジョブに特有の情報を含めることができる。
【0053】
そして、図5に示すように、このメールM1の本文には、ステップS402で認証された送信者を特定する情報(送信者の名前、メールアドレス等)、メールM1に添付されたファイルを開くにはキーが必要であること、及び、このキーの問合せ先(つまり管理者)についての情報が含まれる。問合せ先についての情報としては、管理者名、管理者のメールアドレス、管理者の電話番号等が挙げられる。これらの情報は、単独で、又は組み合わせて用いられる。
【0054】
受信者Bは、図5のファイル添付メールM1を自己の端末で開いて参照し、このメールに添付されているファイル「試験結果.pdf」を開くためのキーを、管理者に問い合わせることができる。
【0055】
次に、本例におけるキー通知用メールM2の文面について、図6を参照して説明する。
【0056】
図6に示すように、キー通知用メールM2の本文には、図5のメールM1に添付されたファイルを開くためのキー(ステップS405で決定されたキー)が含まれるとともに、管理者Xが、このキーをメールM1の受信者Bに知らせることが適切かどうかを判断するための情報が含まれる。このような情報として、読取データ送信のジョブ番号、送信者を特定する情報(送信者名、メールアドレス等)、宛先(受信者)を特定する情報(受信者名、メールアドレス等)、送信日時、添付ファイル名等が挙げられる。
【0057】
さらに、本例では、図6に示すように、キー通知用メールM2にも、メールM1と同じく、ファイル「試験結果.pdf」が添付されている。なお、キー通知用メールM2に添付されるファイルは、図5のメールM1の添付ファイルと同様に暗号化されていてもよいし、暗号化されていなくてもよい。このように、メールM1と同一の添付ファイルを管理者Xが閲覧できることで、管理者Xは、受信者Bにファイル「試験結果.pdf」を見せてもよいかどうか、適切な判断を下すことができる。
【0058】
管理者Xは、図6に示すキー通知用メールM2を自己の端末装置(クライアントPC)で開いて、参照することができる。そして、管理者Xは、受信者Bが添付ファイルを閲覧することに不都合がないと判断すれば、受信者Bからの問合せに応じて、または問合せを待つことなく、受信者Bにキーを教えることができる。
【0059】
キーを知った受信者Bは、自己の端末装置(クライアントPC)にキーボードやマウスを用いてキーを入力し、キーが入力されることで、端末装置は、添付ファイルを復号化し、表示することができる。
【0060】
また、管理者Xは、添付ファイルの内容が社内の機密情報であり、受信者Bがこれを閲覧することは不適当であると判断すれば、受信者Bにキーを教えなければよい。こうして、添付ファイルは、送信者Aが受信者Bに送信されたものの、受信者Bが閲覧できない状態が維持される。
【0061】
以上のように、MFP3は、個々のファイルを暗号化し、このファイルを復号化するためのキーを、このファイルの受信者とは別の者である管理者に送信する。そして、管理者が、個々のファイルについて、受信者に見せるかどうかを決定することができるので、情報漏洩が効果的に防止される。
【0062】
〔2〕第2実施形態
MFP3は、キーを、管理者にメールで送信するのではなく、管理者からの要求に応じて表示するようになっていてもよい。
【0063】
すなわち、図7に示すように、制御装置310は、読取データ送信時に、図4のステップS409及びS411に代えて、キーを制御装置310の有するメモリ内に保存するようになっている(ステップS710)。その他のステップS701〜709は、図4のステップS401〜S408、及びS410と同様である。
【0064】
そして、管理者が操作パネル300を介してキーの表示を要求すると、図8に示すように、制御装置310は、ID及びパスワードによって操作者が管理者であるかどうかを判断し、管理者であると判断すれば(ステップS801、S802でYes)、操作パネル300の液晶表示パネルに、ステップS表示させる(ステップS803)。こうして、管理者のみにキーを閲覧させることで、高度なセキュリティを実現することができる。
【0065】
ステップS803における表示形態は特に限定されるものではない。表示形態として、例えば、キーと、そのキーによって暗号化されたファイルの送信ジョブのジョブ番号とを対応付けた表が挙げられる。
【0066】
なお、管理者からのキーの表示指示の受付及びキーの表示は、操作パネル300を介して行われるとは限らない。例えば、管理者の使用する端末装置(クライアントPCの1つ)から、ネットワーク101を介して、キーを表示するようにとの指示が出されると、MFP3の図示しないデータ通信部がこの指示を受け取って、制御装置310が、ネットワーク101を介して、管理者の端末装置にキーを提供してもよい。この場合、管理者は、自己の端末装置上でキーを参照することができる。キーの表示形態については、ステップS803について述べた通りである。
【0067】
以上で言及しなかったMFP3の構成、動作等は、第1実施形態と同様である。
【0068】
〔3〕第3実施形態
MFP3は、キーを、予め設定されているパターンに則って決定するようになっていてもよい。管理者がこのパターンを知っていることで、MFP3が管理者にキーを通知しなくても、管理者には個々の添付ファイルがどのようなキーで暗号化されたのかが分かる。
【0069】
キー設定のパターンとは、具体的な構成に限定されるものではないが、制御装置310は、例えば、読取データの送信ジョブの依頼を受けた日時、ジョブ番号、送信者についての情報(送信者名、アドレス、ID)、受信者についての情報(受信者名、アドレス、ID)等を、単独で、又は組み合わせてキーとすることができる。
【0070】
また、キー設定のパターンの1つとして、制御装置310は、複数のキーを有し、これを一定の規則性をもって、選択するようになっていてもよい。
【0071】
制御装置310は、管理者がキーを特定することができる情報を含むメールを作成し、メール通信部301によって、管理者の端末装置に送信するようになっていてもよい。キーを特定することができる情報とは、上述のパターンに応じて異なるが、例えば、読取データの送信ジョブの依頼を受けた日時、ジョブ番号、送信者(送信者名、アドレス、ID)、受信者についての情報(受信者名、アドレス、ID)等である。
【0072】
すなわち、図9に示すように、制御装置310は、読取データ送信時に、図4のステップS409及びS411に代えて、キーを特定する情報(特定情報)を通知するメール(特定情報通知メール)を作成し、これを管理者に送信する(ステップS909、S911)。
【0073】
読取データ送信におけるその他のステップS901〜S908及びS910は、ステップS401〜S408及びS410と同様である。また、MFP3のその他の構成、動作等は、第1実施形態と同様である。
【0074】
また、特定情報は、第2実施形態のキー表示と同様に、メールで送信されるのではなく、管理者の指示を受けて表示されてもよい。このときの制御装置310による処理(管理者認証等)については、第2実施形態で述べた通りである。
【0075】
〔4〕その他の実施形態
(4-1)第1〜第3実施形態では、ユーザ情報を編集できる者と、キーの送り先とが同一であるものとしたが、両者は互いに異なる者であってもよい。すなわち、ユーザ情報編集時に管理者認証に用いられる、予め保存されたID及びパスワードと、キー(または特定情報)の表示時の管理者認証に用いられる、予め保存されたID及びパスワードとは、異なっていてもよい。
【0076】
(4-2)ファイルの送信方法は、メールに限定されない。MFP3は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)等の通信プロトコルによって、ファイル転送を行う通信部を備えてもよい。キーや特定情報の通知についても同様に、メール以外の通信によって通知されるようになっていてもよい。
【0077】
(4-3)第1〜第3実施形態ではMFPを挙げたが、印刷機能を備えない画像読取装置においても、各実施形態の技術は適用可能である。
【0078】
(4-4)異なる実施形態として挙げた技術を互いに組み合わせることもできるし、実施形態に挙げた構成に公知技術を組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0079】
100 通信システム
11〜13 クライアントPC
2 メールサーバ
3 MFP
300 操作パネル(キー通知部、キー表示部、特定情報通知部、特定情報表示部)
301 メール通信部(データ送信部、キー通知部、キー送信部、特定情報通知部、特定情報送信部)
304 スキャナ(読取部)
310 制御装置(暗号化部、キー決定部、通知対象者認証部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿から画像データを取得し、この画像データから電子ファイルを作成して外部装置に送信する画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報漏洩を防止するために、電子データの暗号化が広く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、複合機、端末装置、及びメールサーバを備えるネットワークシステムが記載されている。端末装置にはそれぞれキーデータが設定されており、複合機は、予め、このキーデータを端末装置のメールアドレス(以下、単に「アドレス」と称することがある)に対応付けて保管している。
【0004】
この複合機は、カラースキャナ及び暗号化復号化処理部を備える。この複合機は、カラースキャナによって原稿から画像を読み取って画像データを得て、暗号化復号化処理部によって、文書送信者が指定した配信先端末のメールアドレスに対応するキーデータを適用して、画像データを暗号化する。この複合機は、こうして暗号化された画像データを添付した電子メールを作成し、配信先ユーザのメールアドレスを宛先メールアドレスに指定して、この電子メールをメールサーバへ送信する。
【0005】
宛先ユーザが端末装置でメールアプリケーションを立ち上げると、上述の電子メールがメールサーバから端末装置へ送信される。電子メールを受信すると、端末装置は、自己のキーデータを適用して、添付ファイルの復号化処理を行う。
【0006】
このように、従来のネットワークシステムは、個々の端末装置に設定されたキーデータによって暗号化と復号化とを行うことで、通信データの漏洩を防止しようと試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−324724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の技術では、個々のデータ毎に漏洩を防止することはできない。例えば、複合機に登録されている端末装置宛に、この端末装置の使用者が見るべきではないデータが送信されるような場合、従来の複合機では、このデータが不適切な使用者に見られることを防止することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、このような場合であっても、情報漏洩を防止することができる技術、具体的には、閲覧を禁止するか許可するかを、個々のデータ毎に管理することを可能にする画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題は、原稿から画像データを得る読取部と、上記画像データを暗号化する暗号化部と、上記暗号化で用いられる暗号化キーを決定するキー決定部と、暗号化された上記画像データを外部装置に送信するデータ送信部と、上記暗号化キーを上記外部装置の所有者以外の者に通知するキー通知部と、を備える画像読取装置によって、解決される。
【0011】
(2)上記(1)に記載の画像読取装置において、上記キー通知部は、上記キー通知部の通知の対象者が使用する端末装置に、上記キーを送信するキー送信部であってもよい。
【0012】
(3)上記(1)に記載の画像読取装置において、上記キー通知部は、上記キー通知部の通知の対象者を認証する通知対象者認証部と、上記通知対象者認証部が認証に成功すると、上記キーを表示するキー表示部と、を備えていてもよい。
【0013】
(4)また、上記課題は、原稿から画像データを得る読取部と、上記画像データを暗号化する暗号化部と、上記暗号化で用いられる暗号化キーを、予め定められたパターンに則って決定するキー決定部と、暗号化された上記画像データを外部装置に送信するデータ送信部と、備える画像読取装置によって解決される。
【0014】
(5)上記(4)に記載の画像読取装置は、上記キーを特定する情報を、上記外部装置の所有者以外の者に通知する特定情報通知部をさらに備えていてもよい。
【0015】
(6)上記(5)に記載の画像読取装置において、上記特定情報通知部は、上記キー特定情報通知部の通知の対象者が使用する端末装置に、上記キーを特定する情報を送信する特定情報送信部であってもよい。
【0016】
(7)上記(5)に記載の画像読取装置において、上記特定情報通知部は、上記特定情報通知部の通知の対象者を認証する通知対象者認証部と、上記通知対象者認証部が認証に成功すると、上記特定情報を表示する特定情報表示部と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
キー通知部が、画像データの受信者以外の通知対象者にこの画像データの暗号化キーを通知することで、画像データの受信者に画像データを閲覧させるかどうかを、暗号化キーの通知対象者が決定することができる。
【0018】
また、キー決定部が、予め定められたパターンに則って暗号化キーを設定することで、各画像データの閲覧の禁止/許可を判断する者に対する、暗号化キーの通知を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の通信システムの概要を示すブロック図。
【図2】MFPの概要を示すブロック図。
【図3】ユーザ情報編集時のMFPの動作を示すフローチャート。
【図4】読取データ送信時のMFPの動作を示すフローチャート。
【図5】ファイル添付メールの文面の一例を示す図面。
【図6】キー通知用メールの文面の一例を示す図面。
【図7】第2実施形態における読取データ送信時のMFPの動作を示すフローチャート。
【図8】第2実施形態におけるキー表示時のMFPの動作を示すフローチャート。
【図9】第3実施形態における読取データ送信時のMFPの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔1〕第1実施形態
以下に、本発明の実施の一形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(1-1)通信システム
図1に、通信システム100の概要を示す。図1に示すように、通信システム100は、複数のクライアントPC(Personal Computer)11〜13、メールサーバ2、MFP(Multifunction Peripheral)3、これらの装置を通信可能に接続するネットワーク101等を備える。
【0022】
クライアントPC11〜13は、メール送信機能を備えている。また、クライアントPC11〜13には、それぞれに固有のメールアドレス(以下、単に「アドレス」と称することがある)が設定されている。クライアントPC11〜13は、メールの送受信機能を備える。
【0023】
メールサーバ2は、メールを保存する保存部及び配送する配送部等を備えるサーバコンピュータである。具体的には、メールサーバ2は、クライアントPC11〜13やMFP3等の端末装置から送られてきたメールを、このメールの宛先のアドレスに対応するトレイに一旦保存し、その後、この宛先に相当する端末装置へメールを配送する。
【0024】
MFP3は、プリンタ、コピー機、スキャナ、及びファクシミリ装置としての機能を備えると共に、メールの送受信機能を有する装置である。MFP3にはメールアドレスが割り当てられている。MFP3の具体的な構成については後述する。
【0025】
(1-2)MFP3
図2に、MFP3の概要を示す。図2に示すように、MFP3は、操作パネル300、メール通信部(データ送信部、並びにキー通知部及びキー送信部の一例)301、印刷部302、ユーザ情報保存部303、スキャナ(読取部)304、制御装置(暗号化部、キー決定部、通知対象者認証部の一例)310を備える。また、MFP3は、さらに、ファクシミリ通信部、及び、PC等の外部装置から印刷データを受信したり、MFP3の動作状況を送信したりするデータ通信部を備える(図示せず)。MFP3内の各部は、バスによって接続されている。
【0026】
操作パネル300は、ユーザから、指示や情報の入力を受け付けるようになっており、具体的には、液晶表示パネル及びタッチセンサを備えるタッチパネル、並びにハードキー(ボタン)等を備える。液晶表示パネルには、種々の画面を表示することができ、画面には、ソフトキー(ボタン)が含まれていてもよい。
【0027】
メール通信部301はメールの送受信を行う。
【0028】
印刷部302は、画像(文字、記号、絵、写真、図等を含む)を用紙(記録媒体の一例)上に印刷するようになっている。具体的には、印刷部302としては、電子写真方式又はインクジェット方式等の従来公知の印刷方式により画像を顕像化する装置が採用される。
【0029】
ユーザ情報保存部303は、HDD(Hard Disk Drive)等の書換可能な記録媒体により実現される。これらの保存部に保存される情報の内容については後述する。
【0030】
スキャナ304は、原稿搬送装置、プラテンガラス、光源、光を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)等の読取素子、光源からの光を原稿に導き原稿からの反射光を読取素子に導くレンズ及びミラー、読取素子からのアナログの電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、デジタル信号に画像処理を施して画像データを作成する画像処理部等を備える。スキャナ304によって得られた画像データは、制御装置310内のRAM312、メモリ313、または図示しないメモリ内に格納される。
【0031】
制御装置310は、MFP3内の各部の動作の制御等の種々の処理を行うようになっている。具体的には、制御装置310は、CPU311、RAM312、メモリ313等を備える。メモリ313内には、ユーザ情報管理プログラム313a、及び読取データ送信プログラム313b等のプログラムが保存される。CPU311はこれらのプログラムを読み出して実行可能であり、RAM312はCPU311の作業領域として機能することができる。
【0032】
(1-3)ユーザ情報保存時のMFPの動作
ユーザが操作パネル300を介して、ユーザ情報保存動作開始の指示を入力すると、MFP3は図3の動作を開始する。図3の動作は、CPU311がユーザ情報管理プログラム313aを実行することによって、実現される。
【0033】
図3に示すように、制御装置310は、操作パネル300の液晶表示パネルに、ID及びパスワードを入力するようにユーザに求める画面を表示させる(ステップS301)。制御装置310は、入力されたID及びパスワードと、管理者のID及びパスワードとを比較し、一致すれば(ステップS302でYes)、ユーザ情報の入力画面を表示する(ステップS303)。
【0034】
その後、操作パネル300を介してユーザ情報が入力され(ステップS304でYes)、さらにユーザ情報を保存するようにとの指示が入力されると(ステップS305でYes)、制御装置310は、ユーザ情報保存部303に、入力されたユーザ情報を保存する(ステップS306)。こうして、新規ユーザ情報の登録又はユーザ情報の変更(編集)が行われる。ユーザ情報には、ユーザ名、ID、パスワード、アドレス等が含まれる。
【0035】
認証に成功しなかったり(ステップS302でNo)、ユーザ情報が入力されなかったり(ステップS304でNo)、ユーザ情報の保存指示がなかったり(ステップS305でNo)した場合には、新規ユーザ情報の登録やユーザ情報の変更は行われない。
【0036】
このように、MFP3は、管理者のみにユーザ情報の編集を許可するようになっている。
【0037】
なお、管理者についてのID、パスワード、アドレス等の情報も、その他のユーザの情報と同様に、ユーザ情報保存部303に保存されている。管理者の情報の編集についても、制御装置310はID及びパスワードの入力を要求するようになっている。
【0038】
(1-4)読取データ送信時のMFPの動作
MFP3は、原稿から得られた画像データを外部装置に送信する、読取データ送信を行う。具体的には、MFP3は、操作パネル300を介して、画像データを送信するようにとの指示を受けると、図4に示す動作を行う。以下、送信を依頼するユーザを「送信者」と称する。図4の動作は、CPU311が読取データ送信プログラム313bを実行することによって実現される。
【0039】
図4に示すように、制御装置310は、送信者にID及びアドレスの入力を求め、この入力内容とユーザ情報保存部303内の情報とを比較することで、送信者の認証を行う(ステップS401)。認証に失敗した場合、すなわち、入力されたID又はアドレスがユーザ情報保存部303内の情報と一致しなければ、以下の動作は行われずに、送信は終了となる(ステップS402でNo)。
【0040】
送信者の認証に成功すると(ステップS402でYes)、制御装置310は、操作パネル300を介して、送信者から、宛先アドレスの入力を受け付ける(ステップS403)。具体的には、制御装置310の制御の下、操作パネル300の液晶表示パネルに、宛先アドレスの入力を送信者に求める画面が表示される。この画面では、送信者は、アドレスの直接入力もできるし、アドレス帳から宛先を選択することもできる。
【0041】
宛先のアドレスが入力されると、制御装置310の制御の下、スキャナ304が、原稿から画像データを取得する(ステップS404)。こうして取得された画像データは、MFP3内の記憶装置内に保存される。
【0042】
また、制御装置310は、後述のメールの添付ファイルに付すキーを決定する(ステップS405)。
【0043】
「キー」とは、文字列であり、「パスワード」や「暗号化キー」と言い変えてもよい。「文字」には、数字、アルファベット、記号(アンダーバー、スラッシュ、ハイフォン等)等が含まれる。文字列の長さは特に限定されないが、例えば数個から数十個、例えば4字以上150字以下の範囲内で設定されてもよい。
【0044】
キーの決定方法は、特に限定されるものではない。例えば、制御装置310は、複数のキーを制御装置310のメモリ313内に記憶しており、この複数のキーから1つをランダムに選択するようになっていてもよい。また制御装置310は、ランダムに文字を組み合わせて、キーを作成できるようになっていてもよい。
【0045】
決定されたキーに基づいて、制御装置310は、ステップS404で取得した画像データから、送信用の電子ファイル(以下、単に「ファイル」と称する)を作成する(ステップS406)。送信用のファイルとは、外部装置に送信可能な形式のファイルであればよく、その形式は具体的に限定されるものではないが、例えば、pdf形式、gif形式、tif形式等が採用される。ファイル形式は、送信者が操作パネル300を介して選択できるようになっていてもよい。作成されたファイルは、例えばメモリ313に保存される。
【0046】
なお、制御装置310は、操作パネル300を介して、送信者からファイル名の入力を受け付けて、このファイル名をステップS406で作成したファイルに付するようになっていてもよい。また、制御装置310は、送信者がメール送信をMFP3に依頼したときの日時若しくはジョブ番号等を単独で、又は組み合わせて、ファイル名とすることができる。ジョブ番号とは、例えば、制御装置310が、各メール送信ジョブに、ジョブが依頼された順に付ける通し番号であってもよい。ジョブ番号は、電源投入から切断までの期間、1日、1週間、1ヶ月等の期間毎に、リセットされてもよい。
【0047】
制御装置310はさらに、ステップS405で決定されたキーを用いて、送信用ファイルのデータを暗号化する(ステップS407)。
【0048】
制御装置310は、このファイルを添付したメール(ファイル添付メール)を作成する(ステップS408)。このファイル添付メールは、暗号化されたファイルが添付され、宛先がステップS403で受け付けた宛先になっていればよく、その他の情報を含んでいてもよい。
【0049】
制御装置310は、ファイル添付メールの他に、キー通知用メールを作成する(ステップS409)。キー通知用メールは、キーと、下記ステップS410で送信されるメール(添付ファイルを含む)の概要とが、キー通知用メールを受け取った管理者(通知対象者)に分かるものであればよい。
【0050】
制御装置310の制御の下、メール通信部301によって、ファイル添付メールはステップS403で指定された宛先へ送信され(ステップS410)、キー通知用メールは管理者へ送信される(ステップS411)。
【0051】
以下に、読取データ送信の具体例を挙げる。この例では、MFP3の管理者がXである。また、送信者Aが、MFP3に、原稿から画像データを得て、受信者Bにメールで送信するように、との指示を出しているものとする。送信者Aの認証等の説明については省略する。また、送信者Aから、添付ファイルに「試験結果」とのファイル名を付すように、MFP3に指示が入力されたものとする。
【0052】
この例におけるファイル添付メールM1の文面を図5に示す。図5に示すように、制御装置310は、メールM1の件名に、添付ファイルのファイル名である「試験結果」や、上述のジョブ番号等、各送信ジョブに特有の情報を含めることができる。
【0053】
そして、図5に示すように、このメールM1の本文には、ステップS402で認証された送信者を特定する情報(送信者の名前、メールアドレス等)、メールM1に添付されたファイルを開くにはキーが必要であること、及び、このキーの問合せ先(つまり管理者)についての情報が含まれる。問合せ先についての情報としては、管理者名、管理者のメールアドレス、管理者の電話番号等が挙げられる。これらの情報は、単独で、又は組み合わせて用いられる。
【0054】
受信者Bは、図5のファイル添付メールM1を自己の端末で開いて参照し、このメールに添付されているファイル「試験結果.pdf」を開くためのキーを、管理者に問い合わせることができる。
【0055】
次に、本例におけるキー通知用メールM2の文面について、図6を参照して説明する。
【0056】
図6に示すように、キー通知用メールM2の本文には、図5のメールM1に添付されたファイルを開くためのキー(ステップS405で決定されたキー)が含まれるとともに、管理者Xが、このキーをメールM1の受信者Bに知らせることが適切かどうかを判断するための情報が含まれる。このような情報として、読取データ送信のジョブ番号、送信者を特定する情報(送信者名、メールアドレス等)、宛先(受信者)を特定する情報(受信者名、メールアドレス等)、送信日時、添付ファイル名等が挙げられる。
【0057】
さらに、本例では、図6に示すように、キー通知用メールM2にも、メールM1と同じく、ファイル「試験結果.pdf」が添付されている。なお、キー通知用メールM2に添付されるファイルは、図5のメールM1の添付ファイルと同様に暗号化されていてもよいし、暗号化されていなくてもよい。このように、メールM1と同一の添付ファイルを管理者Xが閲覧できることで、管理者Xは、受信者Bにファイル「試験結果.pdf」を見せてもよいかどうか、適切な判断を下すことができる。
【0058】
管理者Xは、図6に示すキー通知用メールM2を自己の端末装置(クライアントPC)で開いて、参照することができる。そして、管理者Xは、受信者Bが添付ファイルを閲覧することに不都合がないと判断すれば、受信者Bからの問合せに応じて、または問合せを待つことなく、受信者Bにキーを教えることができる。
【0059】
キーを知った受信者Bは、自己の端末装置(クライアントPC)にキーボードやマウスを用いてキーを入力し、キーが入力されることで、端末装置は、添付ファイルを復号化し、表示することができる。
【0060】
また、管理者Xは、添付ファイルの内容が社内の機密情報であり、受信者Bがこれを閲覧することは不適当であると判断すれば、受信者Bにキーを教えなければよい。こうして、添付ファイルは、送信者Aが受信者Bに送信されたものの、受信者Bが閲覧できない状態が維持される。
【0061】
以上のように、MFP3は、個々のファイルを暗号化し、このファイルを復号化するためのキーを、このファイルの受信者とは別の者である管理者に送信する。そして、管理者が、個々のファイルについて、受信者に見せるかどうかを決定することができるので、情報漏洩が効果的に防止される。
【0062】
〔2〕第2実施形態
MFP3は、キーを、管理者にメールで送信するのではなく、管理者からの要求に応じて表示するようになっていてもよい。
【0063】
すなわち、図7に示すように、制御装置310は、読取データ送信時に、図4のステップS409及びS411に代えて、キーを制御装置310の有するメモリ内に保存するようになっている(ステップS710)。その他のステップS701〜709は、図4のステップS401〜S408、及びS410と同様である。
【0064】
そして、管理者が操作パネル300を介してキーの表示を要求すると、図8に示すように、制御装置310は、ID及びパスワードによって操作者が管理者であるかどうかを判断し、管理者であると判断すれば(ステップS801、S802でYes)、操作パネル300の液晶表示パネルに、ステップS表示させる(ステップS803)。こうして、管理者のみにキーを閲覧させることで、高度なセキュリティを実現することができる。
【0065】
ステップS803における表示形態は特に限定されるものではない。表示形態として、例えば、キーと、そのキーによって暗号化されたファイルの送信ジョブのジョブ番号とを対応付けた表が挙げられる。
【0066】
なお、管理者からのキーの表示指示の受付及びキーの表示は、操作パネル300を介して行われるとは限らない。例えば、管理者の使用する端末装置(クライアントPCの1つ)から、ネットワーク101を介して、キーを表示するようにとの指示が出されると、MFP3の図示しないデータ通信部がこの指示を受け取って、制御装置310が、ネットワーク101を介して、管理者の端末装置にキーを提供してもよい。この場合、管理者は、自己の端末装置上でキーを参照することができる。キーの表示形態については、ステップS803について述べた通りである。
【0067】
以上で言及しなかったMFP3の構成、動作等は、第1実施形態と同様である。
【0068】
〔3〕第3実施形態
MFP3は、キーを、予め設定されているパターンに則って決定するようになっていてもよい。管理者がこのパターンを知っていることで、MFP3が管理者にキーを通知しなくても、管理者には個々の添付ファイルがどのようなキーで暗号化されたのかが分かる。
【0069】
キー設定のパターンとは、具体的な構成に限定されるものではないが、制御装置310は、例えば、読取データの送信ジョブの依頼を受けた日時、ジョブ番号、送信者についての情報(送信者名、アドレス、ID)、受信者についての情報(受信者名、アドレス、ID)等を、単独で、又は組み合わせてキーとすることができる。
【0070】
また、キー設定のパターンの1つとして、制御装置310は、複数のキーを有し、これを一定の規則性をもって、選択するようになっていてもよい。
【0071】
制御装置310は、管理者がキーを特定することができる情報を含むメールを作成し、メール通信部301によって、管理者の端末装置に送信するようになっていてもよい。キーを特定することができる情報とは、上述のパターンに応じて異なるが、例えば、読取データの送信ジョブの依頼を受けた日時、ジョブ番号、送信者(送信者名、アドレス、ID)、受信者についての情報(受信者名、アドレス、ID)等である。
【0072】
すなわち、図9に示すように、制御装置310は、読取データ送信時に、図4のステップS409及びS411に代えて、キーを特定する情報(特定情報)を通知するメール(特定情報通知メール)を作成し、これを管理者に送信する(ステップS909、S911)。
【0073】
読取データ送信におけるその他のステップS901〜S908及びS910は、ステップS401〜S408及びS410と同様である。また、MFP3のその他の構成、動作等は、第1実施形態と同様である。
【0074】
また、特定情報は、第2実施形態のキー表示と同様に、メールで送信されるのではなく、管理者の指示を受けて表示されてもよい。このときの制御装置310による処理(管理者認証等)については、第2実施形態で述べた通りである。
【0075】
〔4〕その他の実施形態
(4-1)第1〜第3実施形態では、ユーザ情報を編集できる者と、キーの送り先とが同一であるものとしたが、両者は互いに異なる者であってもよい。すなわち、ユーザ情報編集時に管理者認証に用いられる、予め保存されたID及びパスワードと、キー(または特定情報)の表示時の管理者認証に用いられる、予め保存されたID及びパスワードとは、異なっていてもよい。
【0076】
(4-2)ファイルの送信方法は、メールに限定されない。MFP3は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)等の通信プロトコルによって、ファイル転送を行う通信部を備えてもよい。キーや特定情報の通知についても同様に、メール以外の通信によって通知されるようになっていてもよい。
【0077】
(4-3)第1〜第3実施形態ではMFPを挙げたが、印刷機能を備えない画像読取装置においても、各実施形態の技術は適用可能である。
【0078】
(4-4)異なる実施形態として挙げた技術を互いに組み合わせることもできるし、実施形態に挙げた構成に公知技術を組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0079】
100 通信システム
11〜13 クライアントPC
2 メールサーバ
3 MFP
300 操作パネル(キー通知部、キー表示部、特定情報通知部、特定情報表示部)
301 メール通信部(データ送信部、キー通知部、キー送信部、特定情報通知部、特定情報送信部)
304 スキャナ(読取部)
310 制御装置(暗号化部、キー決定部、通知対象者認証部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿から画像データを得る読取部と、
上記画像データを暗号化する暗号化部と、
上記暗号化で用いられる暗号化キーを決定するキー決定部と、
暗号化された上記画像データを外部装置に送信するデータ送信部と、
上記暗号化キーを上記外部装置の所有者以外の者に通知するキー通知部と、
を備える画像読取装置。
【請求項2】
上記キー通知部は、上記キー通知部の通知の対象者が使用する端末装置に、上記キーを送信するキー送信部である
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記キー通知部は、
上記キー通知部の通知の対象者を認証する通知対象者認証部と、
上記通知対象者認証部が認証に成功すると、上記キーを表示するキー表示部と、
を備える
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
原稿から画像データを得る読取部と、
上記画像データを暗号化する暗号化部と、
上記暗号化で用いられる暗号化キーを、予め定められたパターンに則って決定するキー決定部と、
暗号化された上記画像データを外部装置に送信するデータ送信部と、
を備える画像読取装置。
【請求項5】
上記キーを特定する情報を、上記外部装置の所有者以外の者に通知する特定情報通知部をさらに備える
請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
上記特定情報通知部は、上記キー特定情報通知部の通知の対象者が使用する端末装置に、上記キーを特定する情報を送信する特定情報送信部である
請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
上記特定情報通知部は、
上記特定情報通知部の通知の対象者を認証する通知対象者認証部と、
上記通知対象者認証部が認証に成功すると、上記特定情報を表示する特定情報表示部と、
を備える
請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項1】
原稿から画像データを得る読取部と、
上記画像データを暗号化する暗号化部と、
上記暗号化で用いられる暗号化キーを決定するキー決定部と、
暗号化された上記画像データを外部装置に送信するデータ送信部と、
上記暗号化キーを上記外部装置の所有者以外の者に通知するキー通知部と、
を備える画像読取装置。
【請求項2】
上記キー通知部は、上記キー通知部の通知の対象者が使用する端末装置に、上記キーを送信するキー送信部である
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記キー通知部は、
上記キー通知部の通知の対象者を認証する通知対象者認証部と、
上記通知対象者認証部が認証に成功すると、上記キーを表示するキー表示部と、
を備える
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
原稿から画像データを得る読取部と、
上記画像データを暗号化する暗号化部と、
上記暗号化で用いられる暗号化キーを、予め定められたパターンに則って決定するキー決定部と、
暗号化された上記画像データを外部装置に送信するデータ送信部と、
を備える画像読取装置。
【請求項5】
上記キーを特定する情報を、上記外部装置の所有者以外の者に通知する特定情報通知部をさらに備える
請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
上記特定情報通知部は、上記キー特定情報通知部の通知の対象者が使用する端末装置に、上記キーを特定する情報を送信する特定情報送信部である
請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
上記特定情報通知部は、
上記特定情報通知部の通知の対象者を認証する通知対象者認証部と、
上記通知対象者認証部が認証に成功すると、上記特定情報を表示する特定情報表示部と、
を備える
請求項5に記載の画像読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−245781(P2010−245781A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91446(P2009−91446)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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