説明

画像読取装置

【課題】移動不能な画像読取部によって搬送中の原稿の画像を読み取るシートスルー方式の画像読取装置において、紙詰まり除去等に際してカバー体を開放させたときに、前記開放動作に伴いシェーディング補正用の白色基準体がカバー体の内面側に露出し、白色基準体を不用意に汚すという問題を解消する。
【解決手段】原稿搬送路30を挟んで一方に移動不能に配置された画像読取部38と、原稿搬送路30を挟んで他方に配置された白色基準体43と、原稿搬送路30を露出させたり覆ったりするように開閉可能なカバー体50と、白色基準体43をシェーディング補正時の作用姿勢と非作用姿勢とに姿勢変更させる駆動手段55とを備える。カバー体50に白色基準体43を取り付ける。白色基準体43と駆動手段55とは、カバー体50の開放動作に連動して白色基準体43が作用姿勢にならないように関連付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、移動不能な画像読取部によって搬送中の原稿の画像を読み取るシートスルー方式の画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、シートスルー方式の画像読取装置においては、筐体内の画像読取部に対向する位置に白色ローラや白色板を配置し、その表面の白色を画像読取部が読み取ることによって、光学系や撮像系の特性による輝度ムラに対して一様な明るさの画像になるように補正する、いわゆるシェーディング補正を行っている。
【0003】
しかし、白色ローラ等の表面は搬送中の原稿と接触するため汚れ易い。原稿との接触にて白色ローラ等が汚れると、基準となるべき白色が狂ってシェーディング補正の精度が低下する。
【0004】
この点、特許文献1及び2には、画像読取部に対向する読取ローラの外周に、主走査方向に沿って延び且つ原稿と接触不能な形状の白色基準部を形成し、当該白色基準部を画像読取部が読み取ることによって、シェーディング補正を行う画像読取装置の構成が開示されている。
【0005】
特許文献1の画像読取装置では、読取ローラの外周に形成された溝の底面を白色基準面とすることによって、白色基準面が搬送中の原稿と接触するのを回避している。特許文献2の画像読取装置では、読取ローラの外周の一部を、他の部分より曲率半径の大きい曲面(曲がりの緩い曲面)とし、当該曲面を白色基準面とすることによって、白色基準面が搬送中の原稿と接触するのを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−319613号公報
【特許文献2】特開2002−51194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の画像読取装置においては、例えば画像読取部と読取ローラとの間の原稿搬送路に詰まった原稿を取り除いたり、読取ローラの白色基準部を清掃したりするために、筐体に対して開閉可能で原稿搬送路を露出させたり覆ったりするガイドカバーを備えている。そして、当該ガイドカバーの内面側(原稿搬送路側)に読取ローラを設け、筐体側に設けられた駆動モータから、ベルト又はギヤ伝動系を介してガイドカバー側の読取ローラに伝達するように構成されている。シェーディング補正の際は、駆動モータの駆動にて読取ローラを回転駆動させて、読取ローラの白色基準部を画像読取部と対峙させ、画像読取部にて白色基準部を読み取ることになる。
【0008】
しかし、前記従来の構成では、筐体側にある駆動モータと、ガイドカバー側にある読取ローラとを、ベルト又はギヤ伝動系にて動力伝達可能に連結しているため、紙詰まり除去や読取ローラ清掃に際してガイドカバーを開放させたときに、駆動モータが駆動しなくても、前記開放動作に伴い読取ローラが回転して白色基準部がガイドカバーの内面側に露出してしまう場合がある。このような状態では、白色基準部が外部に現れてユーザ等が白色基準部に接触可能になるから、白色基準部を不用意に汚した結果、シェーディング補正の精度低下を招来する可能性を回避できない。
【0009】
そこで、本願発明は上記の問題を解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、原稿搬送路を挟んで一方に移動不能に配置された画像読取部と、前記原稿搬送路を挟んで他方に配置されたシェーディング補正用の白色基準体と、前記原稿搬送路を露出させたり覆ったりするように開閉可能なカバー体と、前記白色基準体をシェーディング補正時の作用姿勢と非作用姿勢とに姿勢変更させる駆動手段とを備えており、前記カバー体に前記白色基準体が取り付けられている画像読取装置であって、前記白色基準体と前記駆動手段とは、前記カバー体の開放動作に連動して前記白色基準体が前記作用姿勢にならないように関連付けられているというものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載した画像読取装置において、前記白色基準体は主走査方向に長い回転ローラであり、その外周に、前記主走査方向に沿って帯状に延びる白色基準面を有しており、前記作用姿勢のときは、前記回転ローラが前記駆動手段の動力にて回転して、前記白色基準面を前記カバー体の前記原稿搬送路側に露出させており、更に、前記カバー体の開放時に前記回転ローラの前記作用姿勢への回転を阻止するロック手段を備えているというものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2に記載した画像読取装置において、前記ロック手段は、前記回転ローラの一端側に設けられた係合部に対して弾性変形にて係脱可能なラチェット爪を有しており、前記カバー体の開放動作によって前記ラチェット爪が前記回転ローラの前記係合部に係止し、前記回転ローラの前記作用姿勢への回転を阻止するように構成されているというものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1に記載した画像読取装置において、前記駆動手段は、前記カバー体の開放時に前記白色基準体への動力伝達を遮断する伝動カット部材を有しており、前記伝動カット部材の作動によって、前記白色基準体が前記駆動手段による姿勢変更をしないフリー状態になるように構成されているというものである。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4に記載した画像読取装置において、前記伝動カット部材は、前記カバー体の開閉動作に連動して前記白色基準体への動力伝達を断続するクラッチ部材であるというものである。
【0015】
請求項6の発明は、請求高4に記載した画像読取装置において、前記伝動カット部材は、前記カバー体の開放動作によって噛み合いが解除されるギヤ部材であるというものである。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1に記載した画像読取装置において、前記カバー体側に前記駆動手段を設けることによって、前記カバー体の開放動作に連動して前記白色基準体が前記作用姿勢にならないように構成されているというものである。
【発明の効果】
【0017】
本願の請求項に記載された発明によると、原稿搬送路を挟んで一方に移動不能に配置された画像読取部と、前記原稿搬送路を挟んで他方に配置されたシェーディング補正用の白色基準体と、前記原稿搬送路を露出させたり覆ったりするように開閉可能なカバー体と、前記白色基準体をシェーディング補正時の作用姿勢と非作用姿勢とに姿勢変更させる駆動手段とを備えており、前記カバー体に前記白色基準体が取り付けられている画像読取装置であって、前記白色基準体と前記駆動手段とは、前記カバー体の開放動作に連動して前記白色基準体が前記作用姿勢にならないように関連付けられているから、前記カバー体を開放させたときに、ユーザ等が作用姿勢の前記回転ローラに接触するおそれは従来に比して少なくなる。その結果、前記カバー体を開放させた状態で作用姿勢の前記回転ローラを汚すおそれが減り、シェーディング補正精度を長期間良好な状態で維持し易いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】画像読取機能を有する画像形成装置の外観斜視図である。
【図2】画像読取装置の内部構造を示す概略側面断面図である。
【図3】第1実施例におけるカバー体の概略側面断面図である。
【図4】(a)は回転ローラの通紙面を露出させた状態を示す概略側面断面図、(b)は回転ローラの白色基準面を露出させた状態を示す概略側面断面図である。
【図5】閉じた状態のカバー体と駆動手段との関係を示す側面説明図である。
【図6】ラッチ解除した状態のカバー体と駆動手段との関係を示す側面説明図である。
【図7】開放させた状態のカバー体と駆動手段との関係を示す側面説明図である。
【図8】第1実施例の別例を示す側面説明図である。
【図9】第2実施例におけるカバー体の概略側面図である。
【図10】カバー体と駆動手段との関係を示す要部平面図である。
【図11】第3実施例において閉じた状態のカバー体と駆動手段との関係を示す側面説明図である。
【図12】開放させた状態のカバー体と駆動手段との関係を示す側面説明図である。
【図13】第4実施例におけるカバー体の概略側面図である。
【図14】カバー体と駆動手段との関係を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の画像読取装置4は、画像形成装置の一例としての複合機1(以下、MFPという)に搭載されている。
【0020】
(1).画像形成装置の概要
図1に示すMFP1は、コピー機能、スキャナ機能、プリンタ機能、ファックス機能といった多くの機能を有するものであり、例えばLANや電話回線といったネットワーク(通信網)を介してのデータ送受信が可能になっている。すなわちMFP1は、原稿から読み取った画像データをネットワーク経由で他のコンピュータに出力したり、ネットワーク経由で他のコンピュータから画像データを入力し、当該画像データに基づく印刷を実行したり、FAXデータの送受信をしたりできるものである。
【0021】
MFP1における装置本体1aの上部に、スキャナ部2及び自動原稿搬送部3(以下、ADFという)からなる画像読取装置4が設けられている。画像読取装置4は、スキャナ部2とADF3とを同期して作動させ、ADF3にセットされた原稿1枚ずつから画像を光学的に読み取ることにより、画像データを取得するように構成されている。すなわち、ADF3はスキャナ部2に向けて原稿を1枚ずつ搬送し、スキャナ部2は、原稿が所定の読取位置を通過する際に画像を読み取って、画像データを取得するように構成されている
【0022】
装置本体1aの下部には、記録材を収容する給紙部6が設けられている。装置本体1aのうち画像読取装置4と給紙部6との間には、記録材上にトナー画像を印刷する画像形成部5が設けられている。給紙部6は記録材を1枚ずつ画像形成部5に供給し、画像形成部5は、画像読取装置4やネットワーク経由で取得された画像データに基づき、記録材上にトナー画像を印刷するように構成されている。装置本体1aのうち画像読取装置4と画像形成部5との間にある凹みスペースは排紙貯留部7になっている。画像形成部5によってトナー画像が印刷された記録材は排紙貯留部7に排出される。
【0023】
装置本体1aの正面側(前面側)には、複数のキー(ボタン)を有する操作パネル8が設けられている。ユーザは、操作パネル8の表示画面等を見ながらキー操作をすることによって、MFP1の各種機能の中から選択した機能について設定操作をしたり、MFP1に作業実行を指示したりできる。
【0024】
(2).画像読取装置の構造
次に、主として図2を参照しながら画像読取装置4の構造について説明する。ADF3は、複数枚の原稿Mが積載(セット)される給紙トレイ31を備えている。給紙トレイ31に積載された原稿Mは、ピックアップローラ32及び給紙ローラ対33にて、最上層のものから1枚ずつ原稿搬送路30に送り出され、中間ローラ対34を介してレジストローラ対35に搬送される。レジストローラ対35は、搬送されてきた1枚の原稿Mを所定の姿勢にすると共に、所定のタイミングで第1搬送ローラ対36に向けて搬送するように構成されている。そして、第1搬送ローラ対36にて、原稿Mがスキャナ部2のスリットガラス21上に搬送される。スリットガラス21は、原稿搬送方向と直交する主走査方向に長い細幅長板状に形成され且つ透明なものである。
【0025】
スリットガラス21上を原稿Mが通過するに際しては、スリットガラス21の下方に位置する第1原稿読取手段22が、原稿Mにおける下向きの第1面(表面)の画像を読み取る。原稿搬送路30のうちスリットガラス21上より搬送下流側には、第2搬送ローラ対37、請求項に記載した画像読取部としての第2原稿読取手段38、第3搬送ローラ対39及び排紙ローラ40が配置されている。スリットガラス21上を通過した原稿Mは、第2搬送ローラ対37にて第2原稿読取手段38の直下に送られ、第2原稿読取手段38が、通過中の原稿Mにおける上向きの第2面(裏面)の画像を読み取る。第2原稿読取手段38の直下を通過した原稿Mは、第3搬送ローラ対39及び排紙ローラ40にて、給紙トレイ31の下方に位置する排紙トレイ41上に排出される。
【0026】
図2から明らかなように、ADF3内の原稿搬送路30は、給紙トレイ31から、ピックアップローラ32、給紙ローラ対33、中間ローラ対34、レジストローラ対35、第1搬送ローラ対36、スリットガラス21上、第2搬送ローラ対37、第2原稿読取手段38の直下、第3搬送ローラ対39及び排紙ローラ40を経て、排紙トレイ41に至る側面視略U字状(湾曲状)の経路になっている。
【0027】
スリットガラス21の上方には回転可能な清掃ローラ42が設けられている。清掃ローラ42は、スリットガラス21上に原稿Mがない状態で回転駆動して、スリットガラス21上に付着した紙粉等の異物を取り除くように構成されている。例えばADF3において複数枚の原稿Mを連続搬送する際に、清掃ローラ42は、先の原稿Mがスリットガラス21上を通過してから次の原稿Mが到着するまでの時間間隔で回転駆動して、スリットガラス21上を清掃する。原稿搬送路30を挟んで第2原稿読取手段38の反対側には、シェーディング補正用の白色基準体の一例である回転ローラ43が回転可能に設けられている。
【0028】
一方、スキャナ部2の上面には、前述したスリットガラス21と、広幅平板状で且つ透明なプラテンガラス23とが設けられている。そして、スキャナ部2内に、前述した第1原稿読取手段22が設けられている。第1原稿読取手段22は、スリットガラス21上を通過する原稿Mの第1面の画像や、プラテンガラス23上に載置された原稿Mの画像を読み取るものであり、光源24a及び反射ミラー24bを有する走査ユニット24、一対の反転ミラー25a,25bを有する走行ユニット25、結像レンズ26及び第1ラインセンサ27を備えている。
【0029】
スリットガラス21上を原稿Mが通過する際は、走査ユニット24及び走行ユニット25を固定した状態で、光源24aから原稿Mの第1面に向けて光を照射する。そうすると、原稿Mの第1面からの反射光が、反射ミラー24b、両反転ミラー25a,25b及び結像レンズ26を介して、第1ラインセンサ27に導かれて結像される。また、プラテンガラス23上に載置された原稿Mの画像を読み取る際は、走査ユニット24及び走行ユニット25が副走査方向に移動しながら、光源24aから原稿Mの下面(対峙面)に向けて光を照射し、その反射光を第1ラインセンサ27に導いて結像させる。第1ラインセンサ27は、主走査方向に沿って並ぶ複数の光電変換素子を有するCCD(Charge Coupled Device)にて構成されている。第1ラインセンサ27は、結像された光画像を画像信号に変換して画像処理部28に出力する。画像処理部28では、入力された画像信号を、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等して、デジタル化した画像データを生成し、これを画像形成部5に出力する。
【0030】
ADF3内に移動不能に配置された第2原稿読取手段38は、回転ローラ43上を通過する原稿Mの第2面の画像を読み取るものであり、一対の光源44a,44b及び第2ラインセンサ45を備えている(図3参照)。回転ローラ43上を原稿Mが通過する際は、両光源44a,44bから原稿Mの第2面に向けて光を照射し、その反射光を第2ラインセンサ45が受けて結像させる。第2ラインセンサ45は、主走査方向に沿って並ぶ複数の光電変換素子を有するCIS(Contact Image Sensor)にて構成されている。第2ラインセンサ45も第1ラインセンサ27と同様に、結像された光画像を画像信号に変換して画像処理部28に出力する。
【0031】
ADF3の底面側には、第2原稿読取手段38と対峙するカバー体50が、搬送下流(図2においては右方、図3においては左方)側の支点部51を回動中心として開閉回動可能に設けられている。カバー体50における原稿搬送路30側の内面は、当該カバー体50を閉じた状態で原稿搬送路30の一部を構成するガイド面として機能している。カバー体50には、第2搬送ローラ37の一方と回転ローラ43と第3搬送ローラ39の一方とが、互いに平行状で且つ回転可能に組み付けられてユニット化されている。カバー体50における原稿搬送路30側の内面には、各ローラ37,43,39に対応して開口溝(図示省略)が形成されている。各ローラ37,43,39の外周側の一部を開口溝から露出させている。カバー体50の開閉回動によって、原稿搬送路30のうち第2搬送ローラ対37から第3搬送ローラ対39までの範囲が露出したり覆われたりすることになる。
【0032】
カバー体50における主走査方向の両側板部には、ADF3側に設けられたラッチ受け片53に係脱するラッチ爪52がそれぞれ設けられている(図5〜図7に一方のみ示す)。カバー体50に設けられた開閉把手(図示省略)の操作にてラッチ受け片53に対してラッチ爪52を係脱させることにより、カバー体50を開き回動可能な状態にしたり(開き状態に移行可能にしたり)、閉じ状態に維持したりすることになる。
【0033】
白色基準体の一例である回転ローラ43は主走査方向に延びていて、カバー体50に回転可能に軸支されている。回転ローラ43の外周部は湾曲面(ローラ面)と平坦面とにより構成されている。図4(a)(b)に示すように、湾曲面側は、主走査方向に沿って帯状に延びるシェーディング補正のための白色基準面43aと、原稿M搬送時に原稿Mに接触してガイドする通紙面43bとに分けられている。平坦面側には、多数のブラシ毛からなる清掃ブラシ43cが植設されている。
【0034】
回転ローラ43は通常、通紙面43bをカバー体50の開口溝から露出させた非作用姿勢になっている(図4(a)参照)。例えば原稿Mが第2原稿読取手段38の直下を通過するときは、通紙面43bが原稿Mに接触してガイドする。また、原稿Mが第2原稿読取手段38の直下を通過する前にシェーディング補正をする際は、回転ローラ43が回転駆動して、白色基準面43aをカバー体50の開口溝から露出させた作用姿勢となる(図4(b)参照)。すなわち、回転ローラ43は、シェーディング補正時に白色基準面43aをカバー体50から露出させる(第2原稿読取手段38に対峙させる)作用姿勢と、白色基準面43bをカバー体50内に隠した非作用姿勢とに姿勢変更するように構成されている。
【0035】
なお、平坦面側の清掃ブラシ43cは、原稿Mが第2原稿読取手段38の直下に存在しない状態で、回転ローラ43の適宜回転駆動によって第2原稿読取手段38に接触させるように構成されている。第2原稿読取手段38に付着した紙粉等の異物は、清掃ブラシ43cにて掃き取られて除去されることになる。
【0036】
図5〜図7に詳細に示すように、回転ローラ43における軸部の一端側には、当該回転ローラ43を姿勢変更(回転駆動)させるための駆動手段55が動力伝達可能に連結されている。駆動手段55は、ADF3内部に配置された駆動モータ56を備えている。駆動モータ56のモータ出力軸57は正逆回転可能であり、当該モータ出力軸57には出力プーリ58が固着されている。カバー体50における支点部51の一端側には、第1中継プーリ59a及び第2中継プーリ59bが回転可能に軸支されている。両中継プーリ59a,59bは一体回転するように構成されている。駆動モータ56側の出力プーリ58と第1中継プーリ59aとに、動力伝達用の上流伝動ベルト60が巻き掛けられている。第2中継プーリ59bに巻き掛けられた下流伝動ベルト62は、回転ローラ43における軸部の一端側に固着された入力プーリ61に掛け回されている。両伝動ベルト60,62を介して駆動モータ56の回転動力を回転ローラ43に伝達することによって、回転ローラ43の通紙面43bをカバー体50から露出させたり、白色基準面43aをカバー体50から露出させたり、清掃ブラシ43cを第2原稿読取手段38に接触させたりするように構成されている。
【0037】
(3).露出防止構造の第1実施例
次に、図5〜図7を参照しながら、カバー体50の開放動作に伴う白色基準面43aの不用意な露出を防止する構造の第1実施例(本願発明の第1実施例)を説明する。上記のように、ADF3側の駆動モータ56とカバー体50側の回転ローラ43とを両伝動ベルト60,62にて動力伝達可能に連結していると、カバー体50を開放させたときに、カバー体50の支点部51にある両中継プーリ59a,59bの構造関係に起因して下流伝動ベルト62が周回し、回転ローラ43が白色基準面43aをカバー体50から露出させた作用姿勢になるおそれがある。これに対して実施形態では、回転ローラ43と駆動手段55とを、カバー体50の開放動作に連動して回転ローラ43が作用姿勢にならないように関連付けている。
【0038】
図5〜図7に示す第1実施例では、カバー体50の開放時に回転ローラ43の作用姿勢への回転を阻止するロック手段70を備えている。入力プーリ61の外周に設けられた係合部としてのラチェット歯71と、ラチェット歯71に対して弾性変形にて係脱可能なラチェット爪72とを有している。ラチェット爪72は、カバー体50の開放動作によってラチェット歯71を係止し、回転ローラ43の作用姿勢への回転を阻止する(回転ローラ43を回転不能に維持して白色基準面43aの露出を防止する)ように構成されている。
【0039】
ラチェット歯71は、入力プーリ61の外周に、周方向に沿った飛び飛びの間隔で形成されている。ラチェット爪72は弾性変形可能な素材からなっていて、カバー体50のうち入力プーリ61の下方側に配置されている。ラチェット爪72は、自身の弾性復原力にて、ラチェット歯71に下方から係合する方向に常時付勢されている。
【0040】
ラチェット爪72には、カバー体50を閉じた状態で、ADF3側にあるラッチ受け片53に形成された当接部54に押圧当接する解除アーム73が一体的に設けられている。カバー体50を閉じた状態(図5参照)では、ラッチ受け片53の当接部54に解除アーム73が押圧当接し、ラチェット爪72がその弾性復原力に抗してラチェット歯71から離れる方向に弾性変形する。このため、入力プーリ61ひいては回転ローラ43は、駆動モータ56の回転動力にて回転可能な状態になる。
【0041】
図6及び図7に示すように、カバー体50を開放させると、カバー体50側の解除アーム73がADF3側にあるラッチ受け片53の当接部54から離れる。その結果、ラチェット爪72がラチェット歯71に係合する。回転ローラ43は通常、通紙面43bをカバー体50から露出させた非作用姿勢になっているから、ラチェット爪72の係止作用によって、回転ローラ43は非作用姿勢のままで(通紙面43bをカバー体50から露出させたままで)回転不能に保持されることになる。
【0042】
上記の構成によると、回転ローラ43と駆動手段55とを、カバー体50の開放動作に連動して回転ローラ43が作用姿勢にならないように関連付けているから、カバー体50を開放させたときに、ユーザ等が作用姿勢の回転ローラ43に接触するおそれは従来に比して少なくなる。その結果、カバー体50を開放させた状態で作用姿勢の回転ローラ43を汚すおそれが減り、シェーディング補正精度を長期間良好な状態で維持し易いという効果を奏する。
【0043】
特に第1実施例では、カバー体50の開放時に回転ローラ43の作用姿勢への回転を阻止するロック手段70を備えているから、カバー体50の開放時において回転ローラ43の非作用姿勢での姿勢安定性が高い。すなわち、カバー体50を開放させたときに、仮にユーザ等が回転ローラ43に触れたとしても、ロック手段70の作用によって回転ローラ43を非作用姿勢のままに保持できる。従って、ユーザ等が作用姿勢の回転ローラ43に接触するおそれをほぼなくせるという効果を奏する。
【0044】
また、ロック手段70は、回転ローラ43の一端側に設けられた係合部としてのラチェット歯71に対して係脱可能なラチェット爪72を有しており、カバー体50の開放動作によってラチェット爪72が回転ローラ43のラチェット歯71を係止し、回転ローラ43の作用姿勢への回転を阻止する(回転ローラ43を回転不能に維持して白色基準面43aの露出を防止する)ように構成されているから、カバー体50を開放させるだけで、弾性変形を利用してラチェット爪72によりラチェット歯71をスムーズに係止でき、簡単な構成でありながら、回転ローラ43の作用姿勢への回転阻止を支障なく行える。
【0045】
なお、駆動手段55において、支点部51側の第2中継プーリ59bと、回転ローラ43側の入力プーリ61とを動力伝達可能につなぐ構造は、前述した下流伝動ベルト62(ベルト伝動構造)に限るものではない。例えば図8に示すように、両プーリ59b,61をギヤ74,75に代えた上で、これら両ギヤ74,75の間に中継ギヤ群76を配置したギヤ伝動構造を採用してもよい。この場合、入力プーリ61に代わるギヤ75自体が、前述のラチェット歯71の機能を果たし得ることは言うまでもない。第2中継プーリ59bに代わるギヤ74は第1中継プーリ59aと一体回転するように連結している。
【0046】
(4).露出防止構造の第2実施例
図9及び図10は本願発明の第2実施例を示している。第2実施例では、駆動モータ56から回転ローラ43に動力伝達するための駆動手段55が、カバー体50の開放時に回転ローラ43への動力伝達を遮断する伝動カット部材80を有し、伝動カット部材80の作動によって、回転ローラ43が駆動手段55による姿勢変更をしないフリー状態になるように構成した点において、第1実施例のものと相違している。その他の構成は概ね第1実施例と同じである。
【0047】
この場合、カバー体50の支点部51には、伝動カット部材80の一例として、カバー体50の開閉動作に連動して回転ローラ43への動力伝達を断続するクラッチ部材81が設けられている。クラッチ部材81は電磁クラッチにて構成されている。カバー体50を閉じ且つ駆動モータ56が駆動する状態では、クラッチ部材81がONして、第1中継プーリ59aを第2中継プーリ59bに一体的に回転するように連結する。このため、駆動モータ56からの回転動力は、両伝動ベルト60,62を経由して回転ローラ43に伝達される。
【0048】
カバー体50を開放させた状態では、駆動モータ56が駆動しないのでクラッチ部材81はOFFになる。そして、第1中継プーリ59aひいては第2中継プーリ59bは空転可能なフリー状態となる。そうすると、カバー体50の開放動作に連動して回転ローラ43を作用姿勢に向けて回転させようとする力は、フリー状態の第2中継プーリ59bに吸収(相殺)されるから、回転ローラ43は、ユーザ等が不用意に接触したりしない限り、通紙面43bをカバー体50から露出させた非作用姿勢を維持することになる。
【0049】
従って、第2実施例の場合も、カバー体50を開放させたときに、ユーザ等が作用姿勢の回転ローラ43に接触するおそれは従来に比して少なくなり、第1実施例と同様に、作用姿勢の回転ローラ43を汚しにくくて、シェーディング補正精度を長期間良好な状態で維持できるという効果を奏する。なお、クラッチ部材81をカバー体50に内蔵するようにしてもよい。
【0050】
(5).露出防止構造の第3実施例
図11及び図12は本願発明の第3実施例を示している。第3実施例では、伝動カット部材80の別例として、カバー体50の開放動作によって噛み合いが解除されるギヤ部材82を採用している。この場合、カバー体50の支点部51に、第1及び第2中継プーリ59a,59bがなく、ADF3内部側に、モータ出力軸57と平行な軸線回りに回動可能な上流側連結ギヤ83が設けられている。上流側連結ギヤ83は上流伝動ベルト60が巻き掛けられるプーリ部を有しており、駆動モータ56からの回転動力(モータ出力軸57の回転)は、上流伝動ベルトを介して上流側連結ギヤ83に伝達される。
【0051】
カバー体50における主走査方向の一側板部には、カバー体50を閉じた状態で上流側連結ギヤ83と噛み合う下流側連結ギヤ84が回転可能に軸支されている。そして、回転ローラ43における軸部の一端側には、入力プーリ61に代えて、入力ギヤ85が固着されている。下流側連結ギヤ84は、カバー体50の開閉状態に拘らず、常時入力ギヤ85と噛み合っている。上流側連結ギヤ83及び下流側連結ギヤ84がギヤ部材82を構成している。
【0052】
カバー体50を開放させた状態では、上流側連結ギヤ83と下流側連結ギヤ84との噛み合いが解除され、下流側連結ギヤ84は空転可能なフリー状態となる。この場合、カバー体50の開放動作に連動して回転ローラ43を作用姿勢に向けて回転させようとする力は、連結ギヤ83,84同士が離れていて作用しない(存在しない)から、回転ローラ43は、ユーザ等が不用意に接触したりしない限り、通紙面43bをカバー体50から露出させた非作用姿勢を維持することになる。
【0053】
従って、第3実施例の場合も、カバー体50を開放させたときに、ユーザ等が作用姿勢の回転ローラ43に接触するおそれは従来に比して少なくなり、第1及び第2実施例と同様に、作用姿勢の回転ローラ43を汚しにくくて、シェーディング補正精度を長期間良好な状態で維持できるという効果を奏する。
【0054】
(6).露出防止構造の第4実施例
図13及び図14は本願発明の第4実施例を示している。第4実施例では、駆動モータ86から回転ローラ43に動力伝達するための駆動手段55をカバー体50側に設けることによって、カバー体50の開放動作に連動して回転ローラ43が作用姿勢にならないように構成した点において、第1実施例のものと相違している。その他の構成は概ね第1実施例と同じである。
【0055】
第4実施例では、駆動手段55の一構成要素である駆動モータ86がカバー体50の内部に設けられている。駆動モータ86において正逆回転可能なモータ出力軸87は、カバー体50における主走査方向の一側板部(入力プーリ61のある側板部)から外向きに突出している。モータ出力軸87の突出端側に出力プーリ88が固着されている。駆動モータ86側の出力プーリ88と、回転ローラ43における軸部の一端側に固着された入力プーリ61とに、伝動ベルト89が巻き掛けられている。
【0056】
この場合、駆動手段55が全てカバー体50側に存在し、ADF3側につながっていないので、カバー体50の開放動作に連動して回転ローラ43を作用姿勢に向けて回転させようとする力は作用しない(存在しない)。このため、回転ローラ43は、ユーザ等が不用意に接触したりしない限り、通紙面43bをカバー体50から露出させた非作用姿勢を維持することになる。
【0057】
従って、第4実施例の場合も、カバー体50を開放させたときに、ユーザ等が作用姿勢の回転ローラ43に接触するおそれは従来に比して少なくなり、第1〜第3実施例と同様に、作用姿勢の回転ローラ43を汚しにくくて、シェーディング補正精度を長期間良好な状態で維持できるという効果を奏する。
【0058】
(7).その他
以上、本願に関するいくつかの実施例について説明したが、本願発明は上述した内容のものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、画像形成装置MFP1が、コピー機能、FAX機能、プリンタ機能、スキャナ機能などの複数の機能を備えた装置である場合を示したが、必ずしもそれら複数の機能を全て備えている必要はない。特に画像読取装置4は、コピー機能、FAX機能、スキャナ機能のうちの少なくとも1つの機能を備えた装置に対して適用可能である。白色基準体としては、回転ローラ43に限らず、移動可能な白色基準板も採用できる。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 MFP(複合機)
2 スキャナ部
3 ADF(自動原稿搬送部)
4 画像読取装置
30 原稿搬送路
38 第2原稿読取手段(画像読取部)
43 回転ローラ(白色基準体)
43a 白色基準面
43b 通紙面
50 カバー体
55 駆動手段
70 ロック手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿搬送路を挟んで一方に移動不能に配置された画像読取部と、前記原稿搬送路を挟んで他方に配置されたシェーディング補正用の白色基準体と、前記原稿搬送路を露出させたり覆ったりするように開閉可能なカバー体と、前記白色基準体をシェーディング補正時の作用姿勢と非作用姿勢とに姿勢変更させる駆動手段とを備えており、前記カバー体に前記白色基準体が取り付けられている画像読取装置であって、
前記白色基準体と前記駆動手段とは、前記カバー体の開放動作に連動して前記白色基準体が前記作用姿勢にならないように関連付けられている、
画像読取装置。
【請求項2】
前記白色基準体は主走査方向に長い回転ローラであり、その外周に、前記主走査方向に沿って帯状に延びる白色基準面を有しており、
前記作用姿勢のときは、前記回転ローラが前記駆動手段の動力にて回転して、前記白色基準面を前記カバー体の前記原稿搬送路側に露出させており、
更に、前記カバー体の開放時に前記回転ローラの前記作用姿勢への回転を阻止するロック手段を備えている、
請求項1に記載した画像読取装置。
【請求項3】
前記ロック手段は、前記回転ローラの一端側に設けられた係合部に対して弾性変形にて係脱可能なラチェット爪を有しており、前記カバー体の開放動作によって前記ラチェット爪が前記回転ローラの前記係合部に係止し、前記回転ローラの前記作用姿勢への回転を阻止するように構成されている、
請求項2に記載した画像読取装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記カバー体の開放時に前記白色基準体への動力伝達を遮断する伝動カット部材を有しており、前記伝動カット部材の作動によって、前記白色基準体が前記駆動手段による姿勢変更をしないフリー状態になるように構成されている、
請求項1に記載した画像読取装置。
【請求項5】
前記伝動カット部材は、前記カバー体の開閉動作に連動して前記白色基準体への動力伝達を断続するクラッチ部材である、
請求項4に記載した画像読取装置。
【請求項6】
前記伝動カット部材は、前記カバー体の開放動作によって噛み合いが解除されるギヤ部材である、
請求項4に記載した画像読取装置。
【請求項7】
前記カバー体側に前記駆動手段を設けることによって、前記カバー体の開放動作に連動して前記白色基準体が前記作用姿勢にならないように構成されている、
請求項1に記載した画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−155553(P2011−155553A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16420(P2010−16420)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】