説明

画像読取装置

【課題】 支持部材及び基板部材の間を接合するにあたって、従来よりも位置関係の精度と接合の強度を同時に向上させることができる画像読取装置を提供する。
【解決手段】 LED1aと、レンズ3と、CCDセンサを有する基板部材4と、を備える画像読取装置600であって、基板部材4に固定される固定部材6と、レンズ3を支持する支持部材5と、互いに異なる硬化特性を有し、支持部材5及び固定部材6を接合する第1接着剤20及び第2接着剤21と、を備え、第1接着剤20は、少なくともエネルギ硬化型接着剤で構成される接着剤であり、支持部材5及び固定部材6を繋ぎ、第2接着剤21は、硬化した後の第1接着剤20の少なくとも一部、並びに、支持部材5及び固定部材6の少なくとも一方に跨って設けられる画像読取装置600を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿に光を照射する光源と、光源から照射されて原稿の表面で反射された光束を集光して結像させる光学系と、光学系の結像位置に配置された光電変換手段を有する基板部材と、を備え、原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿に光を照射する光源と、照射された光を反射させる反射手段と、反射された光を導く光路と、その光を結像するレンズ等の結像手段と、結像された光を電気信号に変換する光電変換手段と、を備える画像読取装置が知られている。
【0003】
レンズ等の結像手段とCCD等の光電変換手段との距離は、画像解像度等の画像特性に敏感に影響するために、適正に配置又は調整され、ビスやハンダ等で固定される。このような従来の固定方法では、せっかく結像手段と光電変換手段の距離を適正に配置又は調整しても、固定する際にずれてしまうという問題がある。例えば、ビス等による固定では、ビスを締める際の連れまわりやトルクにより、結像手段と光電変換手段の間隔が、適正に調整した距離からずれてしまう。また、ハンダ等で固定する方法では、ハンダが溶けた状態から固まる状態へと移行する過程で大きく収縮し、結像手段と光電変換手段の間隔が狭くなってしまう。
【0004】
これらの変化により、画像解像度や画像倍率等の画像特性が、調整した位置での画像特性に比べて劣化してしまう。こうした問題を解決する発明として、特許文献1に記載の発明が開示されている。特許文献1の発明では、ハンダの収縮の影響を小さくするために、結像手段を支持する支持部材と、光電変換手段を有する基板部材に固定される固定部材を、読取光軸と平行な面同士で接着固定することで、ハンダの収縮による支持部材の変形を抑制する。そして、調整時の治具からの付け外しで起こる変化を小さくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−264354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ハンダの収縮量は抑制されず、ハンダで固定する前後で画像特性の変化が起こってしまう。また、ハンダよりも硬化収縮量が小さい他の接着剤を用いた場合には、接着前後での画像特性の変化を抑制できるが、部材間の接着強度がハンダ付けに比べて弱くなる。その結果、結像手段を支持する支持部材と、光電変換手段を有する基板部材に固定される固定部材との接着部は、組立工程での衝撃や、輸送時の衝撃により、剥がれたり、ずれてしまったりすることが懸念される。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み、レンズを支持する支持部材、及び、光電変換手段を有する基板部材の間を接合するにあたって、従来よりも位置関係の精度と接合の強度を合わせて向上させることができる画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の画像読取装置は、原稿に光を照射する光源と、前記光源から照射されて原稿の表面で反射された光束を集光して結像させる光学系と、前記光学系の結像位置に配置された光電変換手段を有する基板部材と、を備え、原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、前記基板部材に固定される固定部材と、前記光学系を支持する支持部材と、互いに異なる硬化特性を有し、前記支持部材及び前記固定部材を接合する第1接合手段及び第2接合手段と、を備え、前記第1接合手段は、少なくともエネルギ硬化型接着剤で構成される第1接着剤であり、前記支持部材及び前記固定部材を繋ぎ、前記第2接合手段は、硬化した後の前記第1接着剤の少なくとも一部、並びに、前記支持部材及び前記固定部材の少なくとも一方に跨って設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の画像読取装置は、原稿に光を照射する光源と、前記光源から照射されて原稿の表面で反射された光束を集光して結像させる光学系と、前記光学系の結像位置に配置された光電変換手段を有する基板部材と、を備え、原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、前記基板部材に固定される固定部材と、前記光学系を支持する支持部材と、互いに異なる硬化特性を有し、前記支持部材及び前記固定部材を接合する第1接合手段及び第2接合手段と、を備え、前記第1接合手段は、少なくともエネルギ硬化型接着剤で構成される第1接着剤であり、前記支持部材及び前記固定部材を繋ぎ、前記第2接合手段は、前記第1接着剤が硬化した後に、前記第1接着剤とは異なる接合箇所で前記支持部材及び前記固定部材を繋ぐことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンズを支持する支持部材、及び、光電変換手段を有する基板部材の間を接合するにあたって、従来よりも位置関係の精度と接合の強度を合わせて向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】光学ユニットを有する画像読取装置の構成を示す斜視図である。
【図3】光学ユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】接着剤が塗布されていない状態における光学ユニットの構成を示す一部拡大斜視図である。
【図5】接着剤が塗布されていない状態における光学ユニットの構成を示す一部拡大斜視図である。
【図6】接着剤が塗布されていない状態における光学ユニットの構成を示す一部拡大側面図である。
【図7】実施例1に係る支持部材が固定部材に接着された構成を示す側面図である。
【図8】実施例2に係る支持部材が固定部材に接着された構成を示す側面図である。
【図9】実施例3に係る支持部材が固定部材に接着された構成を示す側面図である。
【図10】実施例4に係る支持部材が固定部材に接着された構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る画像形成装置500の構成を示す断面図である。画像形成装置500は、電子写真画像形成プロセスを利用した画像形成装置である。図1に示されるように、画像形成装置500は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)500Aを有し、この装置本体500Aの内部には、画像を形成する画像形成部Gが設けられる。画像形成部Gは、『像担持体』である感光体ドラム112、『転写装置』である転写ローラ115等を含む。少なくとも感光体ドラム112については、プロセスカートリッジに含まれ、プロセスカートリッジとして装置本体500Aに出し入れ自在に組み込まれる構成としても良い。
【0014】
装置本体500Aの内部には、シートを収納する収納カセット11、ピックアップローラ85、給送ローラ対84、複数の搬送ローラ対82、レジストローラ対83が設けられる。また、装置本体500Aの内部には、感光体ドラム112、転写ローラ115、帯電ローラ116、露光装置111、現像装置114、定着装置118、排出ローラ対119が配置され、装置本体500Aの外部には、トレイ120が設けられている。また、装置本体500Aの上部には、原稿の画像を読み取る画像読取装置600が配置されている。画像読取装置600は枠体10を有している。枠体10の内部には、光学ユニット1(図2、図3等を用いて後述)が配置されている。
【0015】
図2は、光学ユニット1(一体型走査光学ユニット)を有する画像読取装置600の構成を示す斜視図である。図2に示されるように、光学ユニット1は、枠体10の上に設置されたプラテンガラス上に下向きに置かれた原稿をプラテンガラスの下側を走査しながら、光学ユニット1内に配置された光電変換手段であるCCDセンサにより読み取っている。このときに、走査する方向を副走査方向Xといい、副走査方向Xに垂直な方向を主走査方向Yという。光学ユニット1は光源としてLED1aを有する。
【0016】
図3は、光学ユニット1の構成を示す斜視図である。光学ユニット1は、照明ユニットと、複数のミラーと、レンズと、CCDセンサと、を一体化したユニットである。照明ユニットは、原稿に対して主走査方向Yに光を照射するユニットである。複数のミラーは、照射された光を原稿面で反射して反射光を導いていく。レンズは、複数のミラーが反射した反射光のうちの少なくとも一部の光を集光させる。CCDセンサは、集光された光束を結像させる。図3では、1点鎖線で図示した光学ユニット1に配置されたCCDセンサを有する基板部材4と、レンズ3を支持する支持部材5とを実線にて図示している。
【0017】
ミラーの本数や位置、反射の角度、光路長などは画像読取装置全体の大きさやレンズの特性によるものあるいは照明の光量などで適切に配置されるべきものである。これは光学ユニット1に限らず、主走査方向Yを読取り、副走査方向Xに走査しながら画像を読み取る方式の画像読取装置であるならば同様である。
【0018】
レンズを通った光束はCCDセンサの受光面に結像される。CCDセンサは、主走査方向Yに並ぶ光電変換素子であるCCDを有している。CCDセンサの受光面は主走査方向Yに長く、同じく主走査方向Yに原稿を照射する照明と合わせて原稿の主走査方向Yの情報を光の量として受光し、光量を光電変換素子に貯蔵し、光量を電荷量に変化させて画像情報として転送することで、原稿の画像を読み取る。
【0019】
このような光電変換素子の入射面には読み取る色情報によってカラーフィルターが塗布されており、鉛直方向にそれぞれ並んでいる。CCDセンサの受光面は、使用するレンズの焦点バラツキや、保持部材のバラツキ、さらにCCDセンサの実装バラツキなどを鑑み、レンズの略焦点位置に適切に位置調整される。そして、CCDセンサの受光面は、レンズが結像させた原稿の反射光をCCDセンサの受光面で受光し、光の強弱を電気的信号に変換をする。その後、電気信号となった画像情報はソフト的な画像処理手段を経て、読取画像となる。
【0020】
レンズとCCDセンサの間隔は、読み取った画像の解像度や、画像の倍率や位置などの画像特性に影響し、その距離は非常に敏感であるため、より良好な画像を得るために、レンズとCCDセンサの間隔を適切に調整し、その間隔を常に保つことが必須となる。
【0021】
図4及び図5は、接着剤が塗布されていない状態における光学ユニット1の構成を示す一部拡大斜視図である。図6は、接着剤が塗布されていない状態における光学ユニット1の構成を示す一部拡大側面図である。図4〜図6を参照すると分かるように、光学ユニット1の内部には、『光学系』であるレンズ3、及び、基板部材4を備える(特に図5参照)。レンズ3は、原稿に光を照射する『光源』であるLED1aから照射されて原稿の表面で反射された光束を集光して結像させる。基板部材4は、レンズ3の結像位置に配置された『光電変換手段』であるCCDセンサを有する。
【0022】
基板部材4には固定部材6が固定される。固定部材6は、開口6b(図5参照)を有し、レンズ3で収束された収束光をCCD(光電変換素子)へと導き、非収束光(迷光)を遮蔽する部材である。この固定部材6には、詳細を後述する接着剤によって支持部材5が固定される。支持部材5は、レンズ3を支持する。レンズ3の前方には、ミラー7(図6参照)が配置される。
【0023】
固定部材6と支持部材5とを接着剤で接着する前には、固定部材6の側片部6Xの外側に、支持部材5の側片部5Xが重ね合わせられるように組み合わせられる。なお、支持部材5は、レンズ3を支持する支持面5aと、支持面5aに直交する方向に延びる側片部5Xを有する。また、固定部材6の側片部6Xは、基板部材4に直交する方向に延びる板状の部位である。これらの側片部5X、6Xは、副走査方向Xに沿う面を有する板状の部位である。
【0024】
固定部材6の側片部6Xには、突起部6aが形成されている。突起部6a及び側片部5Xの間には隙間Jが形成される。
【0025】
実施例では支持部材5及び固定部材6は、互いに異なる材質で形成される。例えば、支持部材5は板金で形成され、固定部材6は樹脂で形成される。但し、これとは逆に支持部材5は樹脂で形成され、固定部材6は板金で形成されても良いし、両者が同一の材質でも良い。従来では、前述の固定部材6及び支持部材5の両方が板金であれば、はんだで接合されたり、ビスで接合されたりし、固定部材6及び支持部材5の両方が樹脂であれば、接着剤で接合されていた。両方が板金である場合に固定部材6及び支持部材5の間の位置を調整した後にはんだで接合すると、接合時に固定部材6及び支持部材5の間が収縮することがあった。両方が樹脂である場合にも固定部材6及び支持部材5の間の位置を調整した後に接着剤で接続すると、接着時に固定部材6及び支持部材5の間が収縮することがあった。これから詳述する実施例は、こうした固定部材6及び支持部材5の間の結合時の収縮を抑制し、ひいては、CCD及びレンズ3の位置を調整したときの状態のまま強く固定するためのものであり、両部材における材質の組み合わせに限定は無いと言える。ちなみに、CCD及びレンズ3の間の位置調整は、ミクロン単位の管理が必要とされる。
【実施例1】
【0026】
図7は、実施例1に係る支持部材5が固定部材6に接着された構成を示す側面図である。支持部材5及び固定部材6の間隔は、調整治具にて適切に調整されて、複数の接着剤で固定される。ここでは、『第1接合手段』である第1接着剤20、及び、『第2接合手段』である第2接着剤21によって、固定部材6及び支持部材5が接合される(繋がれる)。第1接着剤20及び第2接着剤21は、互いに異なる硬化特性を有する。
【0027】
第1接着剤20は、少なくともエネルギ硬化型接着剤(例えば、紫外線硬化型樹脂(UV接着剤))で構成される。そして、紫外線硬化型樹脂が用いられる場合には、第1接着剤20の硬化にあたっては、紫外線照射装置が用いられる。紫外線照射装置の紫外線は、紫外線が届く範囲では第1接着剤20を硬化させることができるが、紫外線が届かない範囲では第1接着剤20を硬化させることができない。従って、以下の構成を設けている。即ち、図5に示されるように、固定部材6の側片部6Xは、主走査方向Yで外方に向かって突出する突起部6aを有する。こうすると、この突起部6aの下面には、支持部材5の側片部5Xの周りの縁部(縁部面)に対向する対向面が形成される。そして、このように、突起部6aの下面、及び、側片部5Xの縁部の間に、第1接着剤20が塗布される。
【0028】
このように構成することで、突起部6aの下面と側片部5Xの縁部の隙間J(図5参照)は、外方から目視可能な状態となり、また、紫外線照射装置による紫外線を受けることができるようになる。その結果、この隙間Jに塗布される第1接着剤20は、紫外線の照射を受けて、突起部6aの下面と側片部5Xの縁部を含んで接合することができる。
【0029】
また、第1接着剤20を塗布する箇所(接着固定部)は、ここでは3箇所とした。図7を見ると分かるように、第1接着剤20による接着固定部には、光軸Zを挟んでまず2箇所が選択される。すなわち、接着固定部には、光軸Zの上方に1箇所、光軸Zの下方に1箇所を取る。このように隙間Jの両端部が接着固定部に選ばれても良い。そして、その2箇所の接着固定部の間に、もう1箇所の接着固定部を取る。
【0030】
第1接着剤20には、株式会社スリーボンドの3100シリーズのエポキシ樹脂系のエネルギ硬化型接着剤を使用する。さらに、硬化収縮率が約1.2%と非常に硬化収縮の小さい接着剤を使用する。第1接着剤20を3箇所の接着固定部に同じ量ずつ塗布し、全部で3箇所同時に、紫外線を約20秒照射させて固定する。以上の方法により接着固定することで、支持部材5と固定部材6の接着剤による硬化収縮を2〜5μmに抑えることができる。
【0031】
以上のような第1接着剤20によって固定される構成によれば、第1接着剤20として、硬化収縮量が小さいエネルギ硬化型接着剤を使用することで、光学調整後の2部品間の距離の変化を最小限に抑制することができる。また、エネルギ硬化型接着剤は、短時間で固定することが可能であるために、組立工程としても工数を削減することができる。
【0032】
しかしながら、硬化収縮量が小さい第1接着剤20のみでは、組立後の製品の輸送時の振動や落下等の衝撃に対して、十分な接着強度を確保し難い。この問題に対処するために、以下に説明する第2接着剤21を使用する。
【0033】
『第2接合手段』である第2接着剤21としては、エネルギ硬化型接着剤よりも硬化収縮率が大きい接着剤が用いられる。固定部材6に対する支持部材5の位置が調整された状態を繋ぐように第1接着剤20が塗布されて硬化した後に、第2接着剤21は、第1接着剤20の少なくとも一部に跨って塗布されて硬化する。ここでは、第1接着剤20が支持部材5及び固定部材6の間を複数の『接合箇所』である接着固定部M1〜M3で繋ぐ場合に、第2接着剤21は複数の接着固定部M1〜M3の全ての第1接着剤20を連続的に繋ぐように塗布されて硬化する。
【0034】
ここでは、第1接着剤20による3箇所の接着固定部M1〜M3の全てに跨るように塗布される。また、第2接着剤21は、支持部材5及び固定部材6の少なくとも一方に跨って設けられれば良いが、ここでは、第2接着剤21は、支持部材5及び固定部材6の両方に跨って設けられる。
【0035】
このように、第2接着剤21が、支持部材5及び固定部材6を繋ぐように塗布され、その接着剤に適正な硬化処理を行って固定する。このことで、支持部材5と固定部材6との固定において、第1接着剤20の接着強度に加えて、第2接着剤21の接着性も加わる。このため支持部材5と固定部材6の接着強度を更に強くすることできる。
【0036】
また、第1接着剤20が既に固化しているために、第2接着剤21が硬化する際に収縮が起きたとしても、支持部材5と固定部材6の位置関係に変化は起きない。つまり、支持部材5と固定部材6の光学調整後の関係を、位置を変更せずに十分な強度を保つ接着固定を行うことが、この方法により可能である。
【0037】
第2接着剤21にはセメダイン株式会社のスーパーXシリーズの一液常温速硬化形接着剤を用いて、支持部材5と固定部材6と第1接着剤20の接着固定部を連続的に接するように塗布し、常温放置により硬化させる。前記一液常温速硬化形接着剤は、「粘着接着」と「弾性接着」そして「無溶剤」という三大特長を備えており、さまざまな材料に良好な接着性を示すため、硬化収縮率の小さいエポキシ樹脂系の接着剤では足りなかった接着強度を補うことができる。
【0038】
また、図7のように第1接着剤20で接続される接着固定部M1〜M3と支持部材5と固定部材6を連続的に接するように塗布することで、第2接着剤21の接着強度をより活かした固定が可能である。
【0039】
なお、この実施例では、第1接着剤20、第2接着剤21のみで固定部材6及び支持部材5を接続する構成であったが、この構成に限定されない。すなわち、これらの接着剤の後に第3接着剤、第4接着剤、・・・第n接着剤(nは自然数)等の複数の種類の接着剤を更に重ねて使用する構成であっても良い。このことは、後述する実施例2〜4でも同様である。また、この実施例では、第1接着剤20による接着固定部が3箇所であったが、第1接着剤20による接着固定部の数はこれに限定されなくても良い。
【実施例2】
【0040】
図8は、実施例2に係る支持部材5が固定部材6に接着された構成を示す側面図である。実施例1と同一の構成に関しては、同一符号を付して説明を省略する。実施例2では、第1接着剤20による接着固定部M1〜M3に関する構成に関しては、実施例1の構成と同様である。ただし、第2接着剤21は、硬化した後の第1接着剤20の一部、並びに、支持部材5及び固定部材6の一方に跨って設けられる点が実施例1の構成と異なる。その他の構成に関しては、実施例1と同様であるため、実施例1と同一の構成及び効果のものは、実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。以下に詳細を詳しく説明する。
【0041】
図8に示されるように、第1接着剤20が支持部材5及び固定部材6の間を複数の『接合箇所』である接着固定部M1〜M3で繋ぐ場合には、以下のようにする。第2接着剤21は、複数の第1接着剤20の『いずれかの接合箇所』である接着固定部M1に対しては重ねて塗布されず、複数の第1接着剤20の『いずれか他の接合箇所』である接着固定部M2、M3に対しては重ねて塗布される。つまり、第2接着剤21は、第1接着剤20による接着剤による3箇所の接着固定部のうち、下側の接着固定部M3、及び、中間の接着固定部M2の箇所にのみ、塗布されており、上側の接着固定部M1には塗布されていない。
【0042】
また、第2接着剤21が支持部材5及び固定部材6の間を複数の接着固定部M1〜M3で繋ぐ場合に、以下のようになる。すなわち、第2接着剤21は、複数の第1接着剤20の『いずれかの接合箇所』である接着固定部M3と、支持部材5の一部とを繋ぐ。また、第2接着剤21は、複数の第1接着剤20の『いずれか他の接合箇所』である接着固定部M2と、固定部材6の一部とを繋ぐ。ただし、上側の接着固定部M1には、第2接着剤21が塗布されないといっても、光軸Zの上には、中間の接着固定部M2が設けられ、光軸Zの下には、下側の接着固定部M3が設けられている。また、第2接着剤21は、中間の接着固定部M2に関しては、固定部材6に跨って塗布され、下側の接着固定部M3に関しては、支持部材5に跨って塗布される。接着固定部M2とM3によって光軸Zを跨ぐ接着補強が成り立っている。
【0043】
なお、第1接着剤20による接着固定部が複数ある場合でも、第2接着剤21による接着固定部は少なくとも1点の第1接着剤20による接着固定部に接触していれば、同様な効果が得られる。また、実施例2(実施例3、4でも同様)では、第2接着剤21は、複数の接着固定部の全てを繋ぐようには塗布されていない。このため、第2接着剤21の使用量の削減が図れる。
【実施例3】
【0044】
図9は、実施例3に係る支持部材5が固定部材6に接着された構成を示す側面図である。実施例1と同一の構成に関しては、同一符号を付して説明を省略する。実施例3では、第1接着剤20による接着固定部M1〜M3に関する構成に関しては、実施例1の構成と同様である。ただし、第2接着剤21は、硬化した後の第1接着剤20の全部、並びに、支持部材5及び固定部材6の両方に跨って設けられる点が実施例1や実施例2の構成と異なる。別の表現を取ると、第1接着剤20が支持部材5及び固定部材6の間を複数の接着固定部M1〜M3(接合箇所)で繋ぐ場合に、第2接着剤21は、第1接着剤20による複数の接着固定部M1〜M3(接合箇所)の全てについて、第1接着剤20の接着領域を含みつつ、支持部材5の一部及び固定部材6の一部に跨るように塗布されて硬化する。
【0045】
簡単に言うと、例えば、実施例3では、第1接着剤20の3つの接着固定部M1〜M3の各々を第2接着剤21が覆い、各々の第2接着剤21は支持部材5及び固定部材6の両方に跨るように塗布される。このため、第2接着剤21が第1接着剤20の対衝撃力を補強するという効果が全ての第1接着剤20に対して図れる。なお、この場合にも、接着固定部の数は限定されなくても良い。
【実施例4】
【0046】
図10は、実施例4に係る支持部材5が固定部材6に接着された構成を示す側面図である。実施例1と同一の構成に関しては、同一符号を付して説明を省略する。実施例4では、第1接着剤20による接着固定部に関する構成からして、実施例1の構成と異なる。ここでは、第2接着剤21は、硬化した後の第1接着剤20に跨っては設けられていない。そして、第2接着剤21は、第1接着剤20が硬化した後に、第1接着剤20とは異なる『接合箇所』である接着固定部で支持部材5及び固定部材6を繋ぐ。
【0047】
第1接着剤20が支持部材5及び固定部材6を2箇所の接着固定部で接合し、第2接着剤21が支持部材5及び固定部材6を第1接着剤20とは別の2箇所の接着固定部で接合する。特に、隙間Jを辿っていくと、第1接着剤20の接着固定部と第2接着剤21による接着固定部とは、互い違いに並んでいる。こうした構成でも、第2接着剤21による接着固定部は、第1接着剤20による接着固定部を連続的に繋ぐように接着していると同様な効果をもたらす。第2接着剤21の接着強度は第1接着剤20の接着強度を補うことになるだけではなく、第2接着剤21は第1接着剤20を覆っていないので第2接着剤21の接着後も第1接着剤20の接着状態を目視確認することができる。
【0048】
実施例1〜4の構成によれば、レンズ3を支持する支持部材5、及び、CCDセンサを有する基板部材4の間を接合するにあたって、従来よりも位置関係の精度と接合の強度を合わせて向上させることができる。
【0049】
光電変換手段(CCDセンサ)を有する基板部材4が取付けられる固定部材6、及び、レンズ3(レンズ)を支持する支持部材5の間で、固定部材6に対する支持部材5の相対位置を調整した後に固定する場合が問題となる。この場合に、第1接着剤20は、固定時の画像特性の変化を小さくし、第2接着剤21は、接着強度を強める。その結果、固定部材6に支持部材5を固定するにあたって、従来に比べて、固定時の画像特性の変化を小さくしつつ、接着強度を強めることができる画像読取装置を提供することができる。なお、こうした接着によって、輸送等の落下や振動による衝撃に対しても、その調整精度を保ち、良好な画像を得ることができる。
【0050】
なお、実施例1〜4では、『第2接合手段』は第2接着剤21であったが、この構成に限定されない。すなわち、『第2接合手段』として、第1接着剤20よりも粘着接着力または弾性接着力が大きい第2接着剤が用いられても良い。なお、『第2接合手段』として、はんだが用いられても良い。ただし、はんだは金属同士を接合するものであるので、この場合には、支持部材5と固定部材6とは金属で形成されている必要がある。
【符号の説明】
【0051】
1a LED(光源)
3 レンズ(光学系)
4 基板部材
5 支持部材
6 固定部材
20 第1接着剤(第1接合手段)
21 第2接着剤(第2接合手段)
600 画像読取装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に光を照射する光源と、前記光源から照射されて原稿の表面で反射された光束を集光して結像させる光学系と、前記光学系の結像位置に配置された光電変換手段を有する基板部材と、を備え、原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、
前記基板部材に固定される固定部材と、
前記光学系を支持する支持部材と、
互いに異なる硬化特性を有し、前記支持部材及び前記固定部材を接合する第1接合手段及び第2接合手段と、を備え、
前記第1接合手段は、少なくともエネルギ硬化型接着剤で構成される第1接着剤であり、前記支持部材及び前記固定部材を繋ぎ、
前記第2接合手段は、硬化した後の前記第1接着剤の少なくとも一部、並びに、前記支持部材及び前記固定部材の少なくとも一方に跨って設けられることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
原稿に光を照射する光源と、前記光源から照射されて原稿の表面で反射された光束を集光して結像させる光学系と、前記光学系の結像位置に配置された光電変換手段を有する基板部材と、を備え、原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、
前記基板部材に固定される固定部材と、
前記光学系を支持する支持部材と、
互いに異なる硬化特性を有し、前記支持部材及び前記固定部材を接合する第1接合手段及び第2接合手段と、を備え、
前記第1接合手段は、少なくともエネルギ硬化型接着剤で構成される第1接着剤であり、前記支持部材及び前記固定部材を繋ぎ、
前記第2接合手段は、前記第1接着剤が硬化した後に、前記第1接着剤とは異なる接合箇所で前記支持部材及び前記固定部材を繋ぐことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
前記第2接合手段は、
前記第1接着剤よりも硬化収縮率が大きい第2接着剤であり、
前記固定部材に対する前記支持部材の位置が調整された状態を繋ぐように前記第1接着剤が塗布されて硬化した後に、前記第1接着剤の少なくとも一部に跨って塗布されて硬化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記第2接合手段は、
前記第1接着剤よりも粘着接着力または弾性接着力が大きい第2接着剤であり、
前記固定部材に対する前記支持部材の位置が調整された状態を繋ぐように前記第1接着剤が塗布されて硬化した後に、前記第1接着剤の少なくとも一部に跨って塗布されて硬化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記支持部材及び前記固定部材は、互いに異なる材質で形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記第1接合手段が前記支持部材及び前記固定部材の間を複数の接合箇所で繋ぐ場合に、前記第2接合手段は、前記第1接合手段による複数の接合箇所の全てを連続的に繋ぐように塗布されて硬化することを特徴とする請求項1、請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記第1接合手段が前記支持部材及び前記固定部材の間を複数の接合箇所で繋ぐ場合に、前記第2接合手段は、複数の前記第1接合手段のいずれかの接合箇所に対しては重ねて塗布されず、複数の前記第1接合手段のいずれか他の接合箇所に対しては重ねて塗布されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記第1接合手段が前記支持部材及び前記固定部材の間を複数の接合箇所で繋ぐ場合に、前記第2接合手段は、複数の前記第1接合手段のいずれかの接合箇所と前記支持部材の一部とを繋ぎ、複数の前記第1接合手段のいずれか他の接合箇所と前記固定部材の一部とを繋ぐことを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記第1接合手段が前記支持部材及び前記固定部材の間を複数の接合箇所で繋ぐ場合に、前記第2接合手段は、複数の前記第1接合手段の全ての接合箇所の各々について、前記第1接着剤の接着領域を含みつつ、前記支持部材の一部及び前記固定部材の一部に跨るように塗布されて硬化することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
画像を形成する画像形成部と、
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−98727(P2013−98727A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239281(P2011−239281)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】