画像識別用タグ及び画像識別システム
【課題】 テンプレートマッチング法による計算コストを削減し、対象画像の撮像状況に影響を受けずに画像を識別するための画像識別タグ及びこれを備えた画像識別システムを提供する。
【解決手段】 画像識別用タグは、その中心点Oから360度すべての方向に対して同じように変化する円形の輝度変化パターンを有している。タグ識別装置3によって、その輝度変化パターンをタグ方向符号として符号化したものを記憶し、抽出した対象画像データDの部分画像PGの輝度変化パターンを方向符号として符号化し、この方向符号とタグ方向符号とを比較することで画像識別用タグを検出する画像識別システム。
【解決手段】 画像識別用タグは、その中心点Oから360度すべての方向に対して同じように変化する円形の輝度変化パターンを有している。タグ識別装置3によって、その輝度変化パターンをタグ方向符号として符号化したものを記憶し、抽出した対象画像データDの部分画像PGの輝度変化パターンを方向符号として符号化し、この方向符号とタグ方向符号とを比較することで画像識別用タグを検出する画像識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の位置等を画像処理によって認識するときにその対象物に付される画像識別用タグ及びそれを利用した画像識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動化機械やロボットが対象物の位置等を認識するようになっているシステムにおいては、予めその対象物の決められた位置に特定のタグを印刷等により付しておき、自動化機械等がその対象物の位置を認識する際には、カメラにより撮像された対象画像の中から特定のタグを識別し、その識別されたタグの対象画像内における相対的な位置等に基づいて対象物の位置情報を取得する、ということが行なわれていた。
【0003】
また、製品等に印刷されたバーコード等の情報を読み取る際には、作業員がバーコードの位置を把握してそれに読み取り機器を向けているが、その作業効率を上げるために、予めバーコードに対して相対的に決まった位置に特定のタグを付しておき、そのタグを上記と同様に識別し、そしてバーコードの位置を自動的に認識してバーコードの情報を読み取るということが有効であると考えられている。
【0004】
さらには、自動車の安全性を高めるために、道路や近隣車両等の所定部位に予め特定のタグを付しておき、そのタグを上記と同様に画像処理により識別し、道路の形状や近隣車両の存在等を認識するというシステムもある。
このような種々のシステムを実施するためには、特定のタグの画像を識別装置側にテンプレートとして保存しておき、識別装置では、撮像した対象画像全体の中から部分的な画像を部分画像として順次切り出し、その部分画像毎にテンプレートと照合し、両者が一致した場合にタグを識別したという処理(テンプレートマッチング法)を実行することになる。
【0005】
そして、従来の画像識別システムにあっては、カメラで撮像した対象画像を、直接テンプレート画像と照合するというのが一般的であった。しかしながら、そのように直接照合するという方法では、撮像時の状態によっては、対象画像の中で識別すべきタグの画像が、テンプレート画像とは厳密には一致しなくなり、照合が行なえず、タグが検出できない可能性が比較的高いという問題点がある。例えば、撮像時の照明の状態により、対象画像の輝度が変動してしまうからである。
【0006】
なお、産業界での利用実績が比較的高い「正規化相関法」を適用したとしても、計算コストが高いという問題があり、しかも、一様な照明変動には対応可能であるが、局所的な照明不良(陰影やハイライト等の発生)や部分的な遮蔽には対応不可能である。
一方、非特許文献1、2に記載されるような「方向符号法」も公知である。即ち、「方向符号法」によれば、局所的及び大域的な照明変動にも対応可能であり、部分的な遮蔽にも対応可能である。但し、処理の一層の高速化が求められる。
【0007】
その他、上記テンプレートマッチング法にあっては、カメラと撮像対象との相対位置が固定されていない場合には、識別すべきタグとカメラとの距離によりタグ画像の大きさが変動する、カメラの回転によりタグ画像の回転角度が変動する、識別すべきタグとカメラとの方向によりタグ画像に視覚歪が発生する、等々のために、テンプレート画像との照合が行なえずタグが検出できない可能性が比較的高いという欠点もある。
【0008】
【非特許文献1】「実世界マシンビジョンのためのロバスト画像照合技術」金子俊一、T.IEEE Japan,Vol.121−C,No.5,2001
【非特許文献2】Orientation Code Matching for Robust Object Search,F.Ullah et al,IEICE Trans.Inf.&Syst.,Vol.E84−D,Aug,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記テンプレートマッチング法を実施するためには、実際には、予め用意されたテンプレート画像だけではなく、そのテンプレート画像の拡大画像や縮小画像、或いは回転させた画像、幾何学的関数により変形させた画像等をもテンプレート画像として生成し、それら全てのテンプレート画像と対象画像から切り出した部分画像との照合を行なうという対策が必要であった。
【0010】
しかしながら、そのような対策には多大な計算コストが必要である。
計算コストを削減するためには、例えば、テンプレートの上記のような変形画像を生成する際の変形パラメータ(拡大率、縮小率、回転の分解能等)の値を飛び飛びに設定するということも考えられるが、これでは、計算コストは低減するものの、充分な照合が行なえずにタグの検出が行なえない可能性が高くなってしまう。
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであって、カメラによる撮像時の照明状態やカメラと撮像対象との相対位置等の影響を受けずに識別することが可能な画像識別用タグ及びそれを用いた画像識別システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、対象物に付され画像処理により識別される画像識別用タグであって、円形を成し、この円の中心点を起点として半径方向に沿った輝度変化パターンを、全半径方向で同一としたものである。
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である画像識別用タグにおいて、前記輝度変化パターンは、前記中心点から離れるに従って徐々に輝度が低くなる減少パターン及び徐々に輝度が高くなる増加パターンのいずれか一方とした。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に係る発明である画像識別システムは、請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載されたタグと、このタグが付された対象物の画像を撮像可能な撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像である対象画像から前記タグを識別するタグ識別手段と、を備えた。
また、請求項4に係る発明は、上記請求項3に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記タグを識別可能な特徴情報を記憶しており、前記対象画像から前記特徴情報と比較可能な比較情報を取得し、その取得された比較情報と前記特徴情報とを比較し、その比較結果に基づいて前記タグを識別するようにした。
【0013】
そして、請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から順次抽出し、その抽出された部分画像毎に前記比較画像を取得するようにした。
さらに、請求項6に係る発明は、上記請求項4及び請求項5のいずれか一項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記特徴情報及び前記比較情報は、画素毎の輝度の最大増加方向及び最大減少方向のいずれか一方を表す方向符号とした。
【0014】
そして、請求項7に係る発明は、上記請求項6に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に、その画素の輝度値と、それに隣接する他の画素の輝度値との差を演算し、その演算結果に基づいて各画素毎の前記比較情報としての前記方向符号を求めるようにした。
また、請求項8に係る発明は、上記請求項4及び請求項5のいずれか一項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に輝度の最大増加方向及び最大減少方向のいずれか一方を表す方向符号を計算し、その計算された方向符号に基づいてタグの候補領域を選択し、その選択されたタグの候補領域に対して前記比較を行なうようにした。
【0015】
さらに、請求項9に係る発明は、上記請求項8に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグの候補領域を選択する処理は、一の画素の方向符号とそれに隣接する他の画素の方向符号との差が所定しきい値以下である場合に、それら一の画素と他の画素とを同一のグループに分類するという分類処理を、前記対象画像全体に対して実行し、その分類処理の結果得られたグループのうち、予め定めた選出基準により選出されたグループの画像を前記タグの候補領域として選択する処理とした。
【0016】
そして、請求項10に係る発明は、上記請求項9に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記グループの中心点を求め、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記中心点を中心として所定の範囲内で前記対象画像から抽出し、この部分画像を前記比較情報とするようにした。
また、請求項11に係る発明は、上記請求項6から請求項10のいずれか1項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記特徴情報として、前記タグ上を通る任意の直線上に並ぶ前記方向符号の列である列状特徴情報を記憶しているとした。
【0017】
さらに、請求項12に係る発明は、上記請求項11に係る発明である画像識別システムにおいて、前記任意の直線は、前記タグの中心を通る任意の直線であるとした。
そして、請求項羽13に係る発明は、上記請求項12に係る発明である画像識別システムにおいて、前記特徴情報として、前記タグの中心を通り且つ互いに交差する二本の直線それぞれに基づいて二種類の前記列状特徴情報を記憶しており、一方の前記列状特徴情報とそれに対応する一の列状の前記比較情報とを比較し、両者が一致又は近似のいずれかの場合に、他方の前記列状特徴情報とそれに対応する他の列状の前記比較情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグを識別するようにした。
【0018】
また、請求項14に係る発明は、上記請求項11及び請求項12のいずれか1項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記特徴情報として、前記列状特徴情報と、前記タグの中心を含み前記列状特徴情報よりもデータ数の多い領域の特徴情報である面状特徴情報とを記憶しており、前記列状特徴情報とそれに対応する列状の前記比較情報とを比較し、両者が一致又は近似のいずれかの場合に、該列状比較情報の中心点を中心として、前記面状特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から抽出してこれをタグ確認用比較情報とし、該タグ確認用比較情報と前記面状特徴情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグを識別するようにした。
【0019】
さらに、請求項15に係る発明は、上記請求項4から請求項14のいずれか1項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記比較情報を複数の領域に分割し、分割された該比較情報とそれに対応する前記特徴情報の一部とを比較し、この比較結果をも考慮して前記タグを識別するようにした。
そして、請求項16に係る発明は、上記請求項4から請求項15のいずれか1項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記特徴情報と前記比較情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグとして識別される前記比較情報を選択すると共に、選択された前記比較情報の中心座標を取得し、該中心座標のうち複数の中心座標が所定の範囲内にある場合に、この所定の範囲内にある複数の前記中心座標群の中心の座標を、前記タグの中心座標として算出するようにした。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る画像識別用タグによれば、従来のタグとは異なり、それを撮像する際に照明やタグ位置が変化しても、その影響を受けにくく、また画像識別するために多数の変形テンプレートを用意する必要もなく単一のテンプレートで対応できるという効果がある。
そして、本発明に係る画像識別システムによれば、撮像時の照明条件や画像識別用タグと撮像手段との相対位置関係に関係なく、画像識別用タグをより確実で高速に識別することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る画像識別システムの第1の実施の形態の構成を示すシステム構成図であって、この実施の形態は、本発明に係る画像識別システムを、バーコードリーダに適用したものである。
先ず構成を説明すると、バーコードリーダ1は、倉庫の商品を管理する者が所持し、対象物としての商品10の包装等に印刷されているバーコード11から光学的に情報を読み取る装置であり、撮像手段としてのカメラ2と、このカメラ2が撮像した画像である対象画像が供給されるタグ識別手段としてのタグ識別装置3と、同じく対象画像が供給されるバーコード識別装置4と、を備えている。
【0022】
カメラ2は、商品10の撮像が可能な撮像領域と所定画素数とを備えたディジタルカメラであり、連続した撮像処理(例えば、1秒間に24枚の撮像処理)が可能であって、撮影した各画像のデータである対象画像データDを、順次、タグ識別装置3とバーコード識別装置4とに供給するようになっている。
なお、タグ識別装置3及びバーコード識別装置4は、この実施の形態ではそれぞれ独立した装置として説明しているが、バーコードリーダ1のカメラ2以外の部分は実際にはコンピュータ及びそれにインストールされたソフトウェアによって実現されるものであり、タグ識別装置3及びバーコード識別装置4も実際にはソフトウェアであってもよい。
【0023】
そして、タグ識別装置3は、その機能構成を示すブロック図である図2に示すように、一画面分の画像データである対象画像データDから、所定サイズの部分画像PGを順次抽出する部分画像抽出部31と、その抽出された部分画像PG毎に比較情報としての方向符号を演算する方向符号演算部32と、を備えている。
ここで、本実施の形態では、商品10の包装には、図3(a)又は(b)に示すような画像識別用タグ12が、バーコード11の一方の対角線上にある二つの角に近接した二箇所に印刷により付されている。
【0024】
画像識別用タグ12は、その中心点Oを起点として、半径方向に沿った輝度変化パターンが全半径方向で同一になっている。なお、輝度変化パターンは、狭義の単調減少又は単調増加のパターンであればどのような変化パターンでも構わない。図3(a)の例であれば、図4(a)に示すように輝度値が直線的に減少するパターンであり、図3(b)の例であれば、図4(b)に示すように輝度値が直線的に増加するパターンである。その他、減少するパターンとしては、接線の傾きが負である曲線であればよく、図5(a)に示すように上に凸の曲線でもいいし、同(b)に示すように下に凸の曲線でもいいし、同(c)に示すようなS字曲線でもいいし、同(d)に示すようなS字を二つ合わせたような曲線でもいい。増加パターンの場合も同様に種々のパターンが採用可能である。
【0025】
図2に戻って、タグ識別装置3は、画像認識用タグ12を識別可能な特徴情報としてのタグ方向符号33を記憶部33Aに予め記憶している。
ここで、方向符号とは、例えば、図6に示すように、任意の画素P0を考えたとき、その画素P0に隣接して包囲する八つの画素P1〜P8の各輝度値と、画素P0の輝度値とをそれぞれ比較し、画素P0の輝度値からの増加(又は減少)幅が最も大きな方向を符号化してなる情報である。この場合であれば、紙面に向かって、右方向、斜め右上方向、上方向、斜め左上方向、左方向、斜め左下方向、下方向、斜め右下方向の8方向に、例えば、当該8方向に0〜7の番号を付すことで符号化してなる情報である。そして、この方向符号を画像識別用タグ12の元データ全体に対して求めてそれを2次元データとして保存したものが、タグ方向符号33となる。なお、ここでは画素P0に隣接する8つの画素に注目して8方向としたが、これに限定されることはなく、より多くの方向に、例えば周囲8つの画素の配置された方向それぞれの中間方向も含めて細分化し、この場合は各方向に0〜15の番号を付して、より詳細な符号化をしても構わない。
【0026】
また、ここではタグ方向符号33を画像識別用タグ12の元データから生成する方法を説明したが、これに限定されることなく、所定の大きさのタグ方向符号33を直接計算して生成するようにしてもよい。このようにして生成したタグ方向符号33は、すべての方向符号(上記の例では0〜7)が円周方向に連続して一様に現れ、また同一の半径上ではすべて同一の方向符号となる特徴がある。
【0027】
そして、タグ識別装置3の上記部分画像抽出部31は、タグ方向符号33を生成する際に用いた画像サイズと同じ大きさの部分画像PGを抽出するようになっており、上記方向符号演算部32は、抽出された部分画像PGに対してタグ方向符号33を生成する際と同様の手順で演算を行なって部分画像PGの方向符号を求めるようになっている。
ここで、例えば、図7(a)に示すように、画像データDの画像サイズの大きさを高さ480画素、幅640画素とし、図7(b)に示すように、タグ方向符号33の画像サイズの大きさを高さ及び幅共に32画素とした例を考える。即ちかかる例の場合、部分画像抽出部31は、図7(a)に示すように、画像データDの最上段左端から右端に向かって1画素移動する毎に部分画像PGを順次抽出し、第1行の右端に達したら、第2行に移り左端から右端に向けて、順次最終行までこの部分画像PGを抽出するということになる。
【0028】
さらに、タグ識別装置3は、タグ方向符号33と、部分画像PGから順次演算される方向符号とを比較して、両者が一致又は近似しているかを判定する方向符号比較部34と、この方向符号比較部34が比較した両者が一致又は近似していると判定した場合に、そのときの部分画像PGは画像識別用タグ12であると判定し、部分画像抽出部31の現在の抽出位置を認識することにより、対象画像データD中における画像識別用タグ12の中心座標を求めるタグ座標演算部35と、を備えている。
【0029】
方向符号比較部34は、タグ方向符号33と部分画像PGの対応するすべての画素について方向符号の差を集計する。そして、その集計値が0であれば「一致」と判定し、所定の閾値以内であれば「近似している」と判定する。なお、方向符号の差は次のように計算される。例えば、方向を8等分して方向符号(0〜7)を使う場合で説明する。2つの方向符号OC1とOC2の差dは、以下の通りである。
d=Min{G,8−G}
但し、G=|OC1−OC2|
タグ座標演算部35は、例えば、対象画像データDの左上を座標の原点(0,0)として画像識別用タグ12の中心座標(x,y)を求めるようになっている。
【0030】
なお、ここでは対象画像データDから部分画像PGを抽出し、その部分画像PGに対して方向符号を求める方法について説明したが、これに限定されることなく、対象画像データD全体に対して方向符号を求めておき、そこから部分画像PGに対応する方向符号を抽出して、方向符号比較部34に供給するようにしてもよい。
この実施の形態の場合、商品10の包装には二つの画像認識用タグ12が付されているから、タグ座標演算部35は、二つの中心座標(x1,y1),(x2,y2)を取得することになり、それら二つの中心座標(x1,y1),(x2,y2)を、バーコード識別装置4に供給するようになっている。
【0031】
そして、バーコード識別装置4は、供給された二つの中心座標(x1,y1),(x2,y2)を結ぶ線分を対角線とする長方形の領域を指定し、この領域内の領域指定画像情報を対象画像データDから抽出する。なお、このとき必要ならカメラをズームして得られた拡大画像データから、より詳細な情報を抽出するようにしてもよい。この抽出された領域指定画像情報は、すなわちバーコード11に他ならず、そしてバーコード識別装置4は、自身の内部に予め記憶しているバーコード記載内容情報に基づいて、そのバーコード11に記載された内容情報を抽出し、これをバーコードリーダ1の外部にあるバーコード情報処理装置5に供給する。
【0032】
そして、このバーコード情報処理装置5により、商品10の管理情報が表示部に表示されたり、商品10の在庫状況が管理されたりする。
なお、カメラ2が撮像対象に対して回転した場合でも、360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンを画像識別用タグ12に持たせているので、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
また、カメラ2が画像識別用タグ12に接近又は遠ざかり、これによって撮像される画像識別用タグ12の円形のパターンが拡大又は縮小しても、輝度が中心から360度すべての方向に対して同じように変化するという特徴は変わらず、その方向符号がタグ方向符号33と同じなので画像識別用タグ12を識別することができ、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
【0033】
また、画像識別用タグ12とカメラ2との方向により、撮像された画像識別用タグ12の円形のパターンに視覚歪が発生しても、輝度が中心から360度全ての方向に対して変化するという特徴に変わりはなく、撮像された画像識別用タグ12の方向符号とタグ方向符号33の大部分とが一致することで、画像識別用タグ12を識別することが可能となり、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
【0034】
なお、本発明に係る画像識別用タグ及び画像識別システムでは、テンプレートマッチング処理として「方向符号法」を用いており、また画像識別用タグ12の円形のパターンの輝度が中心から360度すべての方向に対して同じように変化するという特徴は変わらない。このため、例えば、画像識別用タグ12をカメラ2で撮像する際に、照明変動が起きて画像識別用タグ12上に影が発生したり、充分な光量が得られずに暗がりでの撮像だったとしても、撮像された対象画像データDに基づく方向符号がタグ方向符号33と同じであることに変わりはないので、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
【0035】
このように、画像認識用タグ12は、輝度が中心点Oから360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンを持たせているので、この画像認識用タグ12をカメラ2で撮像する際の状況が変化しても影響を受けない。
このため、テンプレートマッチングの際に、1つのテンプレート(タグ方向符号33)を用意することでカメラ2での撮像状況に広く対応でき、計算コストを削減して画像識別処理を高速化できるという効果が得られる。
【0036】
また、上記記載の理由により、画像識別用タグ12とカメラ2との位置関係及び撮像状況に制約を受けずに画像識別用タグ12を識別できるという効果が得られる。
図8は、本発明に係る前記画像識別用タグ12を用いた画像識別システムの第2の実施の形態において、画像識別を高速化するための、タグ識別装置3の別の機能構成を示すブロック図である。
【0037】
なお、上記実施の形態に記載されている、タグ識別装置3の構成における説明において、既述の部分の説明は適宜省略する。
方向符号比較部34によるテンプレートマッチング処理に先立ち、上記実施の形態における画像識別の処理時間を短縮するために、方向符号演算部32と部分画像抽出部31との間にマスク生成処理部36を配することにより、画像識別タグ用12を照合する範囲が限定されるようになっている。
【0038】
まず識別対象とする対象画像データD全体に対して上記の方向符号を方向符号演算部32により算出する。その後、マスク生成処理部36は、隣接する2つの画素の方向符号を調べ、2つの当該方向符号の値の差が所定の範囲にあるときに限り、当該2つの画素を同一グループGとして分類する。例えば、方向符号の値の差が“c”以内の範囲にあるときに限り、同一グループGとして分類する場合について述べる。またここでは、方向を8等分し、0から7までの方向符号を割り当てる場合を説明する。
【0039】
まず、対象画像データDの中の隣接する2つの画素P1及びP2を取る。そして、それぞれの方向符号をOC1及びOC2とする。以下の条件が成立するときに限り、2つの画素P1及びP2を同一グループGとして分類する。
Min{G,8−G}≦c
但し、G=|OC1−OC2|
すなわち、2つの方向符号の差の絶対値G=|OC1−OC2|を算出し、このG及び(8−G)の内どちらか小さい方の値を、当該2つの画素の方向符号の差として定義し、それが所定の値c以内であれば、同一グループGとして分類するようになっている。例えば、OC1=0,OC2=7の場合、上記方向符号の差は1と計算され、c=1の場合には、当該2つの画素P1及びP2は同一グループGとして分類される。
【0040】
上記の処理を対象画像の中の画素全てについて順次適用することにより、対象画像データDは複数のグループG1,G2,…に分類される。
こうして得られた全てのグループG1,G2,…の中から、予め定めた選出基準によってマスクを選出する。なお、選出基準としては、例えば、グループGの占める面積、真円度等が挙げられる。
【0041】
そして、情報識別用タグ12には、輝度が中心点Oから360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンを持たせているので、その画像から生成される方向符号は連続した値をとる。従って、画像認識用タグ12は、上記のグルーピング処理によって、一つのグループG、すなわちマスクとして抽出される。
マスクの生成処理が終了した後に、対象画像データDのうち当該マスクに属する画素に限り、図9に示すように、対応する方向符号を部分画像抽出部31によって抽出し、上記方向符号比較部34によるテンプレートマッチング処理を行い、タグ方向符号33との方向符号の照合を行う。
【0042】
このように、画像認識用タグ12は、輝度が中心点Oから360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンであり、連続する一様な方向符号を持つという特徴があるので、上記グルーピング処理により、一つのグループGとして抽出される。図9には、3つのグループG1,G2,G3が抽出された様子を示している。これをマスクとして選定し、対象画像データDのうち当該マスクに属する画素に限り方向符号比較部34により、方向符号の照合を行うことにより、照合回数が減少して画像識別のための処理が高速化されるという効果が得られる。
【0043】
上記マスクを生成する方法として、対象画像の輝度を「2値化処理」することが広く行われている。しかし、この「2値化処理」は、対象画像をカメラで撮像する時の照明の状態により、大きな影響を受けマスクの形が安定しなくなってしまうことが広く知られている。これに対して、本実施例は、カメラ撮像時の照明状態の影響を受けずに効果的なマスクを生成することができるので、高速化を安定して実現することができるという効果が得られる。
【0044】
次いで、上記第2の実施の形態における画像タグ識別装置3による別の画像タグ識別処理方法を第3の実施の形態として説明する。なお、上記第1及び第2の実施の形態に既述の部分の説明は適宜省略する。
図10に示すように、まず、上記グルーピング処理を行って、マスクを生成する。そして、例えばマスクの上下左右の各端部座標に基づいて、このマスクの中心点Rを求め、この中心点Rを中心として所定の範囲内で部分画像抽出部31により部分画像PGを抽出する。そして、この抽出した部分画像PGに対して、既述の方向符号の照合を行うことで画像識別用タグ12を検出する。
【0045】
このように、マスクの中心点Rを求めて、この中心点から所定の範囲内に対してのみ方向符号の照合を行うことにより、照合回数が減少して画像タグ識別のための処理が高速化されるという効果が得られる。即ち、マスク生成処理により生成されたマスクの画像領域全体に対し、順次部分画像PGを抽出して方向符号の照合を行うよりも、照合対象の総数が生成されたマスクの数と同程度まで減らされる、つまり探索範囲が絞り込まれることになるからである。
【0046】
さらに、画像タグ識別装置3による更に別の画像タグ識別処理方法を第4の実施の形態として説明する。なお、本実施の形態における画像タグ識別装置3の構成は、上記第2の実施の形態と同一であり、上記第1から第3の実施の形態に既述の部分の説明は適宜省略する。
この第4の実施の形態では、記憶領域33Aは、タグ方向符号33を、画像識別用タグ12の中心点Oを水平に通り、直線上に並んだ長さ32画素の方向符号の列として記憶している。
【0047】
例えば、上記第1の実施の形態で説明したような、32画素×32画素のテンプレート(タグ方向符号33)があり、方向符号を0〜15とすると、図11に示すように、中心点Qを挟んで、その左半分には方向符号8(左向き)が、右半分には方向符号0(右向き)が以下のように並ぶ。ここでは、中心点Qの方向符号は0としておく。
例: ・・・888Q000・・・
本実施の形態では、この方向符号の列を水平方向部分テンプレート(列状特徴情報)とし、タグ方向符号33として記憶している。
【0048】
そして、図12に示すように、画像データDに対する方向符号から長さ32画素の列状の部分画像PGを比較情報として部分画像抽出部31により順次抽出し、これを方向符号比較部34にてタグ方向符号33と比較する。そして、相互に一致又は近似した比較情報を選択することで、タグ座標演算部35により画像データDの中から画像識別用タグ12の位置座標を検出している。
【0049】
これにより、上記第1の実施の形態では、画像データDの画像サイズがL×M(640×480)である場合に、N×N(N=32)のテンプレート画像サイズから、照合する画素の延べ数はL×M×N×N(約3×108)となっているが、本実施の形態では、テンプレート画像サイズは、N×1(N=32)となっているので、列状特徴情報を用いて比較を行った場合に照合する画素の延べ数はL×M×N(約1×107)となり、N(N=32)倍の高速化ができる。即ち、特徴情報及び比較情報の1度に比較する情報量をそれぞれ減らすことにより、高速化を図っている。
【0050】
次に、第5の実施の形態の説明を行う。
なお、本実施の形態における画像タグ識別装置3の構成は、上記第2の実施の形態と同一であり、上記第1から第4の実施の形態に既述の部分の説明は適宜省略する。
図13に示すように、記憶領域33Aは、上記第4の実施の形態で用いた水平方向部分テンプレート(タグ方向符号33)を記憶すると共に、画像識別用タグ12の中心点Oを垂直に通り、長さ32画素の直線上に並んだ方向符号の列を別のタグ方向符号330として記憶している。上記第4の実施の形態で説明した、図11に示すように、正方形状のテンプレートの中心点Qを挟んでこの画素列の上半分には方向符号4(上方向)が、下半分には方向符号12(下方向)がそれぞれ並んでおり、これを垂直方向部分テンプレート(列状特徴情報)とし、タグ方向符号330として記憶している。
【0051】
そして、上記第4の実施の形態と同様の処理で選択された一の比較情報の中心の画素と中心を同じにし、垂直に1列に並んだ32画素の列からなる他の部分画像PGを他の比較情報として画像データDの方向符号より抽出する。そして、この比較情報とタグ方向符号330とを、方向符号比較部34にて比較し、この比較結果に基づいて画像識別用タグ12を検出している。
このように、まず、上記第4の実施の形態と同様に列状特徴情報による比較処理を行うことで画像識別用タグ12の検出処理の高速化が図られ、さらに、画像識別用タグ12が検出された位置に対して、再度別の列状特徴情報による比較処理が行われることにより、誤検出の防止ができる。
【0052】
このようにして画像認識用タグを検出することで、水平方向に対して比較をしてから、更に垂直方向へ比較した場合の延べ数は、L×M×N+N×kとなる。ここで言うkとは、水平又は垂直方向でマッチしてから、更に垂直又は水平方向の比較をした件数であり、k<<L×Mの関係である。
即ち、まず水平方向部分テンプレートによる比較処理を行うことで上記第1の実施の形態と比較してN倍の高速化ができる他、水平方向への比較を行った後に、更に垂直方向への比較を行う場合には、誤検出を減らすと共に、ほぼN倍の高速化ができるということになる。
【0053】
なお、この第5の実施の形態では、最初に水平方向への比較を行ってから垂直方向への比較を行ったが、これに限定されることはなく、図14(1)〜(5)に示すように、垂直方向部分テンプレートから水平方向部分テンプレートへの比較や、水平方向部分テンプレートによる比較処理を行ってから、数列の垂直方向部分テンプレートからなる面状テンプレート(面状特徴情報)とこの水平方向部分テンプレートのマッチした部分画像PGの中心点を中心とする面状テンプレートと同じ大きさの画像領域を持つ画像データDから抽出された部分画像PG(タグ確認用比較情報)との比較等を順次行っても構わない。
【0054】
即ち、少ない情報量を持つテンプレートの1つとこれに対応する画像データDの部分画像PGとを比較し、この比較結果に基づいて実際の画像検出用タグ12の検出範囲を絞り込んでから、他の、例えば、同等の情報量又はより情報量の多いテンプレートで更なる比較を行えば、高速化と誤検出防止とを両立できるということになる。
さらに、本実施の形態では、比較情報と特徴情報との比較を1度目の比較結果に基づいて2度行うようにしたが、本発明はこれに限定されず、複数回であれば何度比較を行っても構わない。ただし、実際に本発明を実施する場合には、産業的利用の観点から1度目の比較結果に基づいて2度目を行うに留めることが望ましい。
【0055】
次に、第6の実施の形態として、画像識別用タグ12の誤検出防止のための比較処理を方向符号比較部34にて行う。なお、本実施の形態における画像タグ識別装置3の構成は、上記第2の実施の形態と同一であり、上記第1から第5の実施の形態に既述の部分の説明は適宜省略する。
まず、図15に概念的に示すように、部分画像PG(方向符号群)を4つの象限(第1象限〜第4象限)に分割する。なお、この図15では、方向符号を矢印で表わしている。本実施の形態で存在する方向符号を0〜15とした場合、タグを検出するためのテンプレートの第1象限には方向符号0〜3のみが、第2象限には方向符号4〜7のみが、第3象限には方向符号8〜11のみが、第4象限には方向符号12〜15のみが、それぞれ出現する。そこで、上記テンプレートと相互に一致又は近似と判定され、対象画像から選出された部分画像PGの各象限を調べ、ありえない方向符号の出現数から出現比率を計算する。例えば、本実施の形態においては、本来ありえない方向符号である14と4とがそれぞれ第3及び第4象限に存在している。この場合、各象限にある方向符号の総数を100とすると、ありえない方向符号の出現比率は、第3及び第4象限共に0.01となる。ここで、予め設定された閾値Eを例えば0.005とすると、この出現比率は閾値を越えているので、この予め選出された部分画像PGは、タグではないと棄却される。逆に、いずれの象限においても上記出現比率が、この予め設定された閾値Eを越えていない場合には、この部分画像PGの抽出位置において画像識別用タグ12が検出されているとしている。
【0056】
このように、選出された部分画像PG全体に渡って差異を検出するのではなく、部分画像PGを幾つかの象限に分割し、象限毎に差異を集計して判定するので、例えば上記第1から第5の実施の形態において選出された比較情報が、画像識別用タグ12なのか否かをより正確に判定できるので、誤検出を防止できる。なお、上記部分画像PGを象限毎に区切るのではなく、この部分画像PGを任意の細部分画像として複数に分割しても良く、各細部分画像のそれぞれとこれに対応する上記テンプレートの一部とを相互に比較することで、より詳細に誤検出の防止ができる。
【0057】
これにより、撮像された商品10の表面上に画像識別用タグ12と紛らわしい画像が生じている場合に、画像データDから抽出される部分画像PGが画像識別用タグ12として誤検出されてしまうのを防止することができる。
一方、上記第1及び第2の実施の形態では、対象画像から抽出した部分画像PGのうち上記テンプレートに一致又は近似したものの中で、最もテンプレートに近い1つを選出するとしたが、第7の実施の形態として、複数の部分画像PGを選出すると共に、選出された部分画像PG毎の中心座標を求め、これら中心座標のうち複数が、予め設定された範囲内にある場合に、この設定された範囲内にある複数の中心座標の中心の座標を求めて、この座標をタグの中心座標として検出しても良い。
【0058】
図16(a)に示すのは、1つの画像識別用タグ12が、上記第1の実施の形態で用いられたカメラ2により、カメラの解像度や撮像状況が原因で、この画像識別用タグ12の中心点Rが複数回検出された様子を示している。
また、画像識別用タグ12の特性により、タグの中心座標に近づく程、選出される部分画像PGの個数は飛躍的に増大する。そこで、図16(b)に示すように、所定の範囲内で検出された中心座標群の重心R−を取ることで、上記頂点の座標に近似する座標を算出することができる。
【0059】
カメラの解像度が低い場合やカメラレンズの焦点がずれている場合、量子化誤差によりタグの中心が必ずしもテンプレートに一致しないことがあるが、このとき複数の検出点の座標の重心をとるので、量子化誤差の影響を緩和できる。
上記の第1から第7の実施の形態の画像識別用タグ及び画像識別システムは、次のような用途に用いることが可能である。
【0060】
上記タグ座標演算部35により算出される画像識別用タグ12の位置情報を得て、アプリケーションに対する“ランドマーク”として利用する。例えば、移動ロボットの進行目標として走行機構を制御する。また、空間的に分割して撮影された画像や時系列的に分割して撮影された画像を重ね合わせる際の、基準点とする。あるいは、複数のカメラやプロジェクタを相互にキャリブレーションする際の、基準点とする。
【0061】
また、複数の上記位置情報を得て、それらの相互関係に基づく特徴量を算出し利用する。例えば、平面上に配置した4つの画像識別用タグの位置情報から、透視変換行列を計算して、当該平面の位置や姿勢を同定する。又は、立体に配置した4つの画像識別用タグの位置情報から、2つの当該画像識別用タグを結ぶ直線を2本得て、その交点を求めることにより、直接指定できない点の位置を同定する。
【0062】
このように、画像識別用タグの位置情報を用いた情報処理により、アプリケーションに対する“ランドマーク”を安定して検出できるので、例えば、移動ロボットは進行目標を見失わずに走行できるという効果が得られる。また、複数の画像識別用タグの位置関係に基づいて特徴量を算出して利用するので、例えば、カメラ撮像条件の影響を受け易い2値化処理による特徴点の検出に比べて、はるかに安定して特徴量を算出できるという効果が得られる。
【0063】
また、図5に示すような、輝度及び中心点Oからの距離との関係を示すグラデーショングラフに基づいて、画像識別用タグ情報を生成し、これを印刷することができる。
画像識別用タグは、次のように生成することができる。画像識別用タグの生成処理にあたり、まず画像識別用タグの大きさ(中心点Oからの距離r)、パターンの輝度変化曲線(グラデーショングラフ)、パターンの色などに基づいて、画像識別用タグ情報を生成する。また特徴量の指定を受け、その値を算出するために生成する複数の画像識別用タグそれぞれの配置位置を決定する。そして、指定された媒体の上に当該画像識別用タグ情報に基づいて画像識別用タグを印刷する。なお、前記指定された媒体には、紙、ねじのプレート部、シール、電化製品の表面、透明シート等が挙げられる。
【0064】
このように、安定して識別される高品質の画像識別用タグ情報を、印刷機器の印刷特性に応じて手軽に生成できるという効果が得られる。また、所定の特徴量を算出するための複数の画像識別用タグの配置位置を、煩雑な計算をせずに特定できるという効果が得られる。
ここでは、上記第1から第7の実施の形態において、図1のカメラ2が前記撮像手段に対応し、図2のタグ識別装置3が前記タグ識別手段に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】画像識別システムの一実施の形態の構成を示すシステム構成図である。
【図2】タグ識別装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】画像識別用タグの中心点から離れるに従って輝度が減少するパターン及び増加するパターンの一例を示す図である。
【図4】画像識別用タグの輝度及び中心点からの距離との関係を示すグラデーショングラフの一例を示す図である。
【図5】画像識別用タグの輝度及び中心点からの距離との関係を示すグラデーショングラフの他の一例を示す図である。
【図6】方向符号の生成を説明するための概略図の一例である。
【図7】タグ識別手段の一例を示す図である。
【図8】タグ識別装置の機能構成を示す他のブロック図である。
【図9】タグ識別手段の一例を示す別の図である。
【図10】タグ識別手段の一例を示す更に別の図である。
【図11】タグ識別手段で用いるテンプレートの一例を示す図である。
【図12】タグ識別手段の一例を示す図である。
【図13】タグ識別装置の機能構成を示す更に他のブロック図である。
【図14】タグ識別手段の一例を示す別の図である。
【図15】部分画像PGを4つの象限に概念的に分割した一例を示す図である。
【図16】タグ識別手段で検出される複数のタグの中心点の平均を取る様子を表わす図である。
【符号の説明】
【0066】
2 カメラ
3 タグ識別装置
4 バーコード識別装置
5 バーコード情報処理装置
11 バーコード
12 画像識別用タグ
31 部分画像抽出部
32 方向符号演算部
33 タグ方向符号
330 タグ方向符号
33A 記憶部
34 方向符号比較部
35 タグ座標演算部
36 マスク生成処理部
D 対象画像データ
G グループ
PG 部分画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の位置等を画像処理によって認識するときにその対象物に付される画像識別用タグ及びそれを利用した画像識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動化機械やロボットが対象物の位置等を認識するようになっているシステムにおいては、予めその対象物の決められた位置に特定のタグを印刷等により付しておき、自動化機械等がその対象物の位置を認識する際には、カメラにより撮像された対象画像の中から特定のタグを識別し、その識別されたタグの対象画像内における相対的な位置等に基づいて対象物の位置情報を取得する、ということが行なわれていた。
【0003】
また、製品等に印刷されたバーコード等の情報を読み取る際には、作業員がバーコードの位置を把握してそれに読み取り機器を向けているが、その作業効率を上げるために、予めバーコードに対して相対的に決まった位置に特定のタグを付しておき、そのタグを上記と同様に識別し、そしてバーコードの位置を自動的に認識してバーコードの情報を読み取るということが有効であると考えられている。
【0004】
さらには、自動車の安全性を高めるために、道路や近隣車両等の所定部位に予め特定のタグを付しておき、そのタグを上記と同様に画像処理により識別し、道路の形状や近隣車両の存在等を認識するというシステムもある。
このような種々のシステムを実施するためには、特定のタグの画像を識別装置側にテンプレートとして保存しておき、識別装置では、撮像した対象画像全体の中から部分的な画像を部分画像として順次切り出し、その部分画像毎にテンプレートと照合し、両者が一致した場合にタグを識別したという処理(テンプレートマッチング法)を実行することになる。
【0005】
そして、従来の画像識別システムにあっては、カメラで撮像した対象画像を、直接テンプレート画像と照合するというのが一般的であった。しかしながら、そのように直接照合するという方法では、撮像時の状態によっては、対象画像の中で識別すべきタグの画像が、テンプレート画像とは厳密には一致しなくなり、照合が行なえず、タグが検出できない可能性が比較的高いという問題点がある。例えば、撮像時の照明の状態により、対象画像の輝度が変動してしまうからである。
【0006】
なお、産業界での利用実績が比較的高い「正規化相関法」を適用したとしても、計算コストが高いという問題があり、しかも、一様な照明変動には対応可能であるが、局所的な照明不良(陰影やハイライト等の発生)や部分的な遮蔽には対応不可能である。
一方、非特許文献1、2に記載されるような「方向符号法」も公知である。即ち、「方向符号法」によれば、局所的及び大域的な照明変動にも対応可能であり、部分的な遮蔽にも対応可能である。但し、処理の一層の高速化が求められる。
【0007】
その他、上記テンプレートマッチング法にあっては、カメラと撮像対象との相対位置が固定されていない場合には、識別すべきタグとカメラとの距離によりタグ画像の大きさが変動する、カメラの回転によりタグ画像の回転角度が変動する、識別すべきタグとカメラとの方向によりタグ画像に視覚歪が発生する、等々のために、テンプレート画像との照合が行なえずタグが検出できない可能性が比較的高いという欠点もある。
【0008】
【非特許文献1】「実世界マシンビジョンのためのロバスト画像照合技術」金子俊一、T.IEEE Japan,Vol.121−C,No.5,2001
【非特許文献2】Orientation Code Matching for Robust Object Search,F.Ullah et al,IEICE Trans.Inf.&Syst.,Vol.E84−D,Aug,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記テンプレートマッチング法を実施するためには、実際には、予め用意されたテンプレート画像だけではなく、そのテンプレート画像の拡大画像や縮小画像、或いは回転させた画像、幾何学的関数により変形させた画像等をもテンプレート画像として生成し、それら全てのテンプレート画像と対象画像から切り出した部分画像との照合を行なうという対策が必要であった。
【0010】
しかしながら、そのような対策には多大な計算コストが必要である。
計算コストを削減するためには、例えば、テンプレートの上記のような変形画像を生成する際の変形パラメータ(拡大率、縮小率、回転の分解能等)の値を飛び飛びに設定するということも考えられるが、これでは、計算コストは低減するものの、充分な照合が行なえずにタグの検出が行なえない可能性が高くなってしまう。
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであって、カメラによる撮像時の照明状態やカメラと撮像対象との相対位置等の影響を受けずに識別することが可能な画像識別用タグ及びそれを用いた画像識別システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、対象物に付され画像処理により識別される画像識別用タグであって、円形を成し、この円の中心点を起点として半径方向に沿った輝度変化パターンを、全半径方向で同一としたものである。
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である画像識別用タグにおいて、前記輝度変化パターンは、前記中心点から離れるに従って徐々に輝度が低くなる減少パターン及び徐々に輝度が高くなる増加パターンのいずれか一方とした。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に係る発明である画像識別システムは、請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載されたタグと、このタグが付された対象物の画像を撮像可能な撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像である対象画像から前記タグを識別するタグ識別手段と、を備えた。
また、請求項4に係る発明は、上記請求項3に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記タグを識別可能な特徴情報を記憶しており、前記対象画像から前記特徴情報と比較可能な比較情報を取得し、その取得された比較情報と前記特徴情報とを比較し、その比較結果に基づいて前記タグを識別するようにした。
【0013】
そして、請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から順次抽出し、その抽出された部分画像毎に前記比較画像を取得するようにした。
さらに、請求項6に係る発明は、上記請求項4及び請求項5のいずれか一項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記特徴情報及び前記比較情報は、画素毎の輝度の最大増加方向及び最大減少方向のいずれか一方を表す方向符号とした。
【0014】
そして、請求項7に係る発明は、上記請求項6に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に、その画素の輝度値と、それに隣接する他の画素の輝度値との差を演算し、その演算結果に基づいて各画素毎の前記比較情報としての前記方向符号を求めるようにした。
また、請求項8に係る発明は、上記請求項4及び請求項5のいずれか一項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に輝度の最大増加方向及び最大減少方向のいずれか一方を表す方向符号を計算し、その計算された方向符号に基づいてタグの候補領域を選択し、その選択されたタグの候補領域に対して前記比較を行なうようにした。
【0015】
さらに、請求項9に係る発明は、上記請求項8に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグの候補領域を選択する処理は、一の画素の方向符号とそれに隣接する他の画素の方向符号との差が所定しきい値以下である場合に、それら一の画素と他の画素とを同一のグループに分類するという分類処理を、前記対象画像全体に対して実行し、その分類処理の結果得られたグループのうち、予め定めた選出基準により選出されたグループの画像を前記タグの候補領域として選択する処理とした。
【0016】
そして、請求項10に係る発明は、上記請求項9に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記グループの中心点を求め、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記中心点を中心として所定の範囲内で前記対象画像から抽出し、この部分画像を前記比較情報とするようにした。
また、請求項11に係る発明は、上記請求項6から請求項10のいずれか1項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記特徴情報として、前記タグ上を通る任意の直線上に並ぶ前記方向符号の列である列状特徴情報を記憶しているとした。
【0017】
さらに、請求項12に係る発明は、上記請求項11に係る発明である画像識別システムにおいて、前記任意の直線は、前記タグの中心を通る任意の直線であるとした。
そして、請求項羽13に係る発明は、上記請求項12に係る発明である画像識別システムにおいて、前記特徴情報として、前記タグの中心を通り且つ互いに交差する二本の直線それぞれに基づいて二種類の前記列状特徴情報を記憶しており、一方の前記列状特徴情報とそれに対応する一の列状の前記比較情報とを比較し、両者が一致又は近似のいずれかの場合に、他方の前記列状特徴情報とそれに対応する他の列状の前記比較情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグを識別するようにした。
【0018】
また、請求項14に係る発明は、上記請求項11及び請求項12のいずれか1項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記特徴情報として、前記列状特徴情報と、前記タグの中心を含み前記列状特徴情報よりもデータ数の多い領域の特徴情報である面状特徴情報とを記憶しており、前記列状特徴情報とそれに対応する列状の前記比較情報とを比較し、両者が一致又は近似のいずれかの場合に、該列状比較情報の中心点を中心として、前記面状特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から抽出してこれをタグ確認用比較情報とし、該タグ確認用比較情報と前記面状特徴情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグを識別するようにした。
【0019】
さらに、請求項15に係る発明は、上記請求項4から請求項14のいずれか1項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記比較情報を複数の領域に分割し、分割された該比較情報とそれに対応する前記特徴情報の一部とを比較し、この比較結果をも考慮して前記タグを識別するようにした。
そして、請求項16に係る発明は、上記請求項4から請求項15のいずれか1項に係る発明である画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記特徴情報と前記比較情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグとして識別される前記比較情報を選択すると共に、選択された前記比較情報の中心座標を取得し、該中心座標のうち複数の中心座標が所定の範囲内にある場合に、この所定の範囲内にある複数の前記中心座標群の中心の座標を、前記タグの中心座標として算出するようにした。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る画像識別用タグによれば、従来のタグとは異なり、それを撮像する際に照明やタグ位置が変化しても、その影響を受けにくく、また画像識別するために多数の変形テンプレートを用意する必要もなく単一のテンプレートで対応できるという効果がある。
そして、本発明に係る画像識別システムによれば、撮像時の照明条件や画像識別用タグと撮像手段との相対位置関係に関係なく、画像識別用タグをより確実で高速に識別することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る画像識別システムの第1の実施の形態の構成を示すシステム構成図であって、この実施の形態は、本発明に係る画像識別システムを、バーコードリーダに適用したものである。
先ず構成を説明すると、バーコードリーダ1は、倉庫の商品を管理する者が所持し、対象物としての商品10の包装等に印刷されているバーコード11から光学的に情報を読み取る装置であり、撮像手段としてのカメラ2と、このカメラ2が撮像した画像である対象画像が供給されるタグ識別手段としてのタグ識別装置3と、同じく対象画像が供給されるバーコード識別装置4と、を備えている。
【0022】
カメラ2は、商品10の撮像が可能な撮像領域と所定画素数とを備えたディジタルカメラであり、連続した撮像処理(例えば、1秒間に24枚の撮像処理)が可能であって、撮影した各画像のデータである対象画像データDを、順次、タグ識別装置3とバーコード識別装置4とに供給するようになっている。
なお、タグ識別装置3及びバーコード識別装置4は、この実施の形態ではそれぞれ独立した装置として説明しているが、バーコードリーダ1のカメラ2以外の部分は実際にはコンピュータ及びそれにインストールされたソフトウェアによって実現されるものであり、タグ識別装置3及びバーコード識別装置4も実際にはソフトウェアであってもよい。
【0023】
そして、タグ識別装置3は、その機能構成を示すブロック図である図2に示すように、一画面分の画像データである対象画像データDから、所定サイズの部分画像PGを順次抽出する部分画像抽出部31と、その抽出された部分画像PG毎に比較情報としての方向符号を演算する方向符号演算部32と、を備えている。
ここで、本実施の形態では、商品10の包装には、図3(a)又は(b)に示すような画像識別用タグ12が、バーコード11の一方の対角線上にある二つの角に近接した二箇所に印刷により付されている。
【0024】
画像識別用タグ12は、その中心点Oを起点として、半径方向に沿った輝度変化パターンが全半径方向で同一になっている。なお、輝度変化パターンは、狭義の単調減少又は単調増加のパターンであればどのような変化パターンでも構わない。図3(a)の例であれば、図4(a)に示すように輝度値が直線的に減少するパターンであり、図3(b)の例であれば、図4(b)に示すように輝度値が直線的に増加するパターンである。その他、減少するパターンとしては、接線の傾きが負である曲線であればよく、図5(a)に示すように上に凸の曲線でもいいし、同(b)に示すように下に凸の曲線でもいいし、同(c)に示すようなS字曲線でもいいし、同(d)に示すようなS字を二つ合わせたような曲線でもいい。増加パターンの場合も同様に種々のパターンが採用可能である。
【0025】
図2に戻って、タグ識別装置3は、画像認識用タグ12を識別可能な特徴情報としてのタグ方向符号33を記憶部33Aに予め記憶している。
ここで、方向符号とは、例えば、図6に示すように、任意の画素P0を考えたとき、その画素P0に隣接して包囲する八つの画素P1〜P8の各輝度値と、画素P0の輝度値とをそれぞれ比較し、画素P0の輝度値からの増加(又は減少)幅が最も大きな方向を符号化してなる情報である。この場合であれば、紙面に向かって、右方向、斜め右上方向、上方向、斜め左上方向、左方向、斜め左下方向、下方向、斜め右下方向の8方向に、例えば、当該8方向に0〜7の番号を付すことで符号化してなる情報である。そして、この方向符号を画像識別用タグ12の元データ全体に対して求めてそれを2次元データとして保存したものが、タグ方向符号33となる。なお、ここでは画素P0に隣接する8つの画素に注目して8方向としたが、これに限定されることはなく、より多くの方向に、例えば周囲8つの画素の配置された方向それぞれの中間方向も含めて細分化し、この場合は各方向に0〜15の番号を付して、より詳細な符号化をしても構わない。
【0026】
また、ここではタグ方向符号33を画像識別用タグ12の元データから生成する方法を説明したが、これに限定されることなく、所定の大きさのタグ方向符号33を直接計算して生成するようにしてもよい。このようにして生成したタグ方向符号33は、すべての方向符号(上記の例では0〜7)が円周方向に連続して一様に現れ、また同一の半径上ではすべて同一の方向符号となる特徴がある。
【0027】
そして、タグ識別装置3の上記部分画像抽出部31は、タグ方向符号33を生成する際に用いた画像サイズと同じ大きさの部分画像PGを抽出するようになっており、上記方向符号演算部32は、抽出された部分画像PGに対してタグ方向符号33を生成する際と同様の手順で演算を行なって部分画像PGの方向符号を求めるようになっている。
ここで、例えば、図7(a)に示すように、画像データDの画像サイズの大きさを高さ480画素、幅640画素とし、図7(b)に示すように、タグ方向符号33の画像サイズの大きさを高さ及び幅共に32画素とした例を考える。即ちかかる例の場合、部分画像抽出部31は、図7(a)に示すように、画像データDの最上段左端から右端に向かって1画素移動する毎に部分画像PGを順次抽出し、第1行の右端に達したら、第2行に移り左端から右端に向けて、順次最終行までこの部分画像PGを抽出するということになる。
【0028】
さらに、タグ識別装置3は、タグ方向符号33と、部分画像PGから順次演算される方向符号とを比較して、両者が一致又は近似しているかを判定する方向符号比較部34と、この方向符号比較部34が比較した両者が一致又は近似していると判定した場合に、そのときの部分画像PGは画像識別用タグ12であると判定し、部分画像抽出部31の現在の抽出位置を認識することにより、対象画像データD中における画像識別用タグ12の中心座標を求めるタグ座標演算部35と、を備えている。
【0029】
方向符号比較部34は、タグ方向符号33と部分画像PGの対応するすべての画素について方向符号の差を集計する。そして、その集計値が0であれば「一致」と判定し、所定の閾値以内であれば「近似している」と判定する。なお、方向符号の差は次のように計算される。例えば、方向を8等分して方向符号(0〜7)を使う場合で説明する。2つの方向符号OC1とOC2の差dは、以下の通りである。
d=Min{G,8−G}
但し、G=|OC1−OC2|
タグ座標演算部35は、例えば、対象画像データDの左上を座標の原点(0,0)として画像識別用タグ12の中心座標(x,y)を求めるようになっている。
【0030】
なお、ここでは対象画像データDから部分画像PGを抽出し、その部分画像PGに対して方向符号を求める方法について説明したが、これに限定されることなく、対象画像データD全体に対して方向符号を求めておき、そこから部分画像PGに対応する方向符号を抽出して、方向符号比較部34に供給するようにしてもよい。
この実施の形態の場合、商品10の包装には二つの画像認識用タグ12が付されているから、タグ座標演算部35は、二つの中心座標(x1,y1),(x2,y2)を取得することになり、それら二つの中心座標(x1,y1),(x2,y2)を、バーコード識別装置4に供給するようになっている。
【0031】
そして、バーコード識別装置4は、供給された二つの中心座標(x1,y1),(x2,y2)を結ぶ線分を対角線とする長方形の領域を指定し、この領域内の領域指定画像情報を対象画像データDから抽出する。なお、このとき必要ならカメラをズームして得られた拡大画像データから、より詳細な情報を抽出するようにしてもよい。この抽出された領域指定画像情報は、すなわちバーコード11に他ならず、そしてバーコード識別装置4は、自身の内部に予め記憶しているバーコード記載内容情報に基づいて、そのバーコード11に記載された内容情報を抽出し、これをバーコードリーダ1の外部にあるバーコード情報処理装置5に供給する。
【0032】
そして、このバーコード情報処理装置5により、商品10の管理情報が表示部に表示されたり、商品10の在庫状況が管理されたりする。
なお、カメラ2が撮像対象に対して回転した場合でも、360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンを画像識別用タグ12に持たせているので、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
また、カメラ2が画像識別用タグ12に接近又は遠ざかり、これによって撮像される画像識別用タグ12の円形のパターンが拡大又は縮小しても、輝度が中心から360度すべての方向に対して同じように変化するという特徴は変わらず、その方向符号がタグ方向符号33と同じなので画像識別用タグ12を識別することができ、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
【0033】
また、画像識別用タグ12とカメラ2との方向により、撮像された画像識別用タグ12の円形のパターンに視覚歪が発生しても、輝度が中心から360度全ての方向に対して変化するという特徴に変わりはなく、撮像された画像識別用タグ12の方向符号とタグ方向符号33の大部分とが一致することで、画像識別用タグ12を識別することが可能となり、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
【0034】
なお、本発明に係る画像識別用タグ及び画像識別システムでは、テンプレートマッチング処理として「方向符号法」を用いており、また画像識別用タグ12の円形のパターンの輝度が中心から360度すべての方向に対して同じように変化するという特徴は変わらない。このため、例えば、画像識別用タグ12をカメラ2で撮像する際に、照明変動が起きて画像識別用タグ12上に影が発生したり、充分な光量が得られずに暗がりでの撮像だったとしても、撮像された対象画像データDに基づく方向符号がタグ方向符号33と同じであることに変わりはないので、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
【0035】
このように、画像認識用タグ12は、輝度が中心点Oから360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンを持たせているので、この画像認識用タグ12をカメラ2で撮像する際の状況が変化しても影響を受けない。
このため、テンプレートマッチングの際に、1つのテンプレート(タグ方向符号33)を用意することでカメラ2での撮像状況に広く対応でき、計算コストを削減して画像識別処理を高速化できるという効果が得られる。
【0036】
また、上記記載の理由により、画像識別用タグ12とカメラ2との位置関係及び撮像状況に制約を受けずに画像識別用タグ12を識別できるという効果が得られる。
図8は、本発明に係る前記画像識別用タグ12を用いた画像識別システムの第2の実施の形態において、画像識別を高速化するための、タグ識別装置3の別の機能構成を示すブロック図である。
【0037】
なお、上記実施の形態に記載されている、タグ識別装置3の構成における説明において、既述の部分の説明は適宜省略する。
方向符号比較部34によるテンプレートマッチング処理に先立ち、上記実施の形態における画像識別の処理時間を短縮するために、方向符号演算部32と部分画像抽出部31との間にマスク生成処理部36を配することにより、画像識別タグ用12を照合する範囲が限定されるようになっている。
【0038】
まず識別対象とする対象画像データD全体に対して上記の方向符号を方向符号演算部32により算出する。その後、マスク生成処理部36は、隣接する2つの画素の方向符号を調べ、2つの当該方向符号の値の差が所定の範囲にあるときに限り、当該2つの画素を同一グループGとして分類する。例えば、方向符号の値の差が“c”以内の範囲にあるときに限り、同一グループGとして分類する場合について述べる。またここでは、方向を8等分し、0から7までの方向符号を割り当てる場合を説明する。
【0039】
まず、対象画像データDの中の隣接する2つの画素P1及びP2を取る。そして、それぞれの方向符号をOC1及びOC2とする。以下の条件が成立するときに限り、2つの画素P1及びP2を同一グループGとして分類する。
Min{G,8−G}≦c
但し、G=|OC1−OC2|
すなわち、2つの方向符号の差の絶対値G=|OC1−OC2|を算出し、このG及び(8−G)の内どちらか小さい方の値を、当該2つの画素の方向符号の差として定義し、それが所定の値c以内であれば、同一グループGとして分類するようになっている。例えば、OC1=0,OC2=7の場合、上記方向符号の差は1と計算され、c=1の場合には、当該2つの画素P1及びP2は同一グループGとして分類される。
【0040】
上記の処理を対象画像の中の画素全てについて順次適用することにより、対象画像データDは複数のグループG1,G2,…に分類される。
こうして得られた全てのグループG1,G2,…の中から、予め定めた選出基準によってマスクを選出する。なお、選出基準としては、例えば、グループGの占める面積、真円度等が挙げられる。
【0041】
そして、情報識別用タグ12には、輝度が中心点Oから360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンを持たせているので、その画像から生成される方向符号は連続した値をとる。従って、画像認識用タグ12は、上記のグルーピング処理によって、一つのグループG、すなわちマスクとして抽出される。
マスクの生成処理が終了した後に、対象画像データDのうち当該マスクに属する画素に限り、図9に示すように、対応する方向符号を部分画像抽出部31によって抽出し、上記方向符号比較部34によるテンプレートマッチング処理を行い、タグ方向符号33との方向符号の照合を行う。
【0042】
このように、画像認識用タグ12は、輝度が中心点Oから360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンであり、連続する一様な方向符号を持つという特徴があるので、上記グルーピング処理により、一つのグループGとして抽出される。図9には、3つのグループG1,G2,G3が抽出された様子を示している。これをマスクとして選定し、対象画像データDのうち当該マスクに属する画素に限り方向符号比較部34により、方向符号の照合を行うことにより、照合回数が減少して画像識別のための処理が高速化されるという効果が得られる。
【0043】
上記マスクを生成する方法として、対象画像の輝度を「2値化処理」することが広く行われている。しかし、この「2値化処理」は、対象画像をカメラで撮像する時の照明の状態により、大きな影響を受けマスクの形が安定しなくなってしまうことが広く知られている。これに対して、本実施例は、カメラ撮像時の照明状態の影響を受けずに効果的なマスクを生成することができるので、高速化を安定して実現することができるという効果が得られる。
【0044】
次いで、上記第2の実施の形態における画像タグ識別装置3による別の画像タグ識別処理方法を第3の実施の形態として説明する。なお、上記第1及び第2の実施の形態に既述の部分の説明は適宜省略する。
図10に示すように、まず、上記グルーピング処理を行って、マスクを生成する。そして、例えばマスクの上下左右の各端部座標に基づいて、このマスクの中心点Rを求め、この中心点Rを中心として所定の範囲内で部分画像抽出部31により部分画像PGを抽出する。そして、この抽出した部分画像PGに対して、既述の方向符号の照合を行うことで画像識別用タグ12を検出する。
【0045】
このように、マスクの中心点Rを求めて、この中心点から所定の範囲内に対してのみ方向符号の照合を行うことにより、照合回数が減少して画像タグ識別のための処理が高速化されるという効果が得られる。即ち、マスク生成処理により生成されたマスクの画像領域全体に対し、順次部分画像PGを抽出して方向符号の照合を行うよりも、照合対象の総数が生成されたマスクの数と同程度まで減らされる、つまり探索範囲が絞り込まれることになるからである。
【0046】
さらに、画像タグ識別装置3による更に別の画像タグ識別処理方法を第4の実施の形態として説明する。なお、本実施の形態における画像タグ識別装置3の構成は、上記第2の実施の形態と同一であり、上記第1から第3の実施の形態に既述の部分の説明は適宜省略する。
この第4の実施の形態では、記憶領域33Aは、タグ方向符号33を、画像識別用タグ12の中心点Oを水平に通り、直線上に並んだ長さ32画素の方向符号の列として記憶している。
【0047】
例えば、上記第1の実施の形態で説明したような、32画素×32画素のテンプレート(タグ方向符号33)があり、方向符号を0〜15とすると、図11に示すように、中心点Qを挟んで、その左半分には方向符号8(左向き)が、右半分には方向符号0(右向き)が以下のように並ぶ。ここでは、中心点Qの方向符号は0としておく。
例: ・・・888Q000・・・
本実施の形態では、この方向符号の列を水平方向部分テンプレート(列状特徴情報)とし、タグ方向符号33として記憶している。
【0048】
そして、図12に示すように、画像データDに対する方向符号から長さ32画素の列状の部分画像PGを比較情報として部分画像抽出部31により順次抽出し、これを方向符号比較部34にてタグ方向符号33と比較する。そして、相互に一致又は近似した比較情報を選択することで、タグ座標演算部35により画像データDの中から画像識別用タグ12の位置座標を検出している。
【0049】
これにより、上記第1の実施の形態では、画像データDの画像サイズがL×M(640×480)である場合に、N×N(N=32)のテンプレート画像サイズから、照合する画素の延べ数はL×M×N×N(約3×108)となっているが、本実施の形態では、テンプレート画像サイズは、N×1(N=32)となっているので、列状特徴情報を用いて比較を行った場合に照合する画素の延べ数はL×M×N(約1×107)となり、N(N=32)倍の高速化ができる。即ち、特徴情報及び比較情報の1度に比較する情報量をそれぞれ減らすことにより、高速化を図っている。
【0050】
次に、第5の実施の形態の説明を行う。
なお、本実施の形態における画像タグ識別装置3の構成は、上記第2の実施の形態と同一であり、上記第1から第4の実施の形態に既述の部分の説明は適宜省略する。
図13に示すように、記憶領域33Aは、上記第4の実施の形態で用いた水平方向部分テンプレート(タグ方向符号33)を記憶すると共に、画像識別用タグ12の中心点Oを垂直に通り、長さ32画素の直線上に並んだ方向符号の列を別のタグ方向符号330として記憶している。上記第4の実施の形態で説明した、図11に示すように、正方形状のテンプレートの中心点Qを挟んでこの画素列の上半分には方向符号4(上方向)が、下半分には方向符号12(下方向)がそれぞれ並んでおり、これを垂直方向部分テンプレート(列状特徴情報)とし、タグ方向符号330として記憶している。
【0051】
そして、上記第4の実施の形態と同様の処理で選択された一の比較情報の中心の画素と中心を同じにし、垂直に1列に並んだ32画素の列からなる他の部分画像PGを他の比較情報として画像データDの方向符号より抽出する。そして、この比較情報とタグ方向符号330とを、方向符号比較部34にて比較し、この比較結果に基づいて画像識別用タグ12を検出している。
このように、まず、上記第4の実施の形態と同様に列状特徴情報による比較処理を行うことで画像識別用タグ12の検出処理の高速化が図られ、さらに、画像識別用タグ12が検出された位置に対して、再度別の列状特徴情報による比較処理が行われることにより、誤検出の防止ができる。
【0052】
このようにして画像認識用タグを検出することで、水平方向に対して比較をしてから、更に垂直方向へ比較した場合の延べ数は、L×M×N+N×kとなる。ここで言うkとは、水平又は垂直方向でマッチしてから、更に垂直又は水平方向の比較をした件数であり、k<<L×Mの関係である。
即ち、まず水平方向部分テンプレートによる比較処理を行うことで上記第1の実施の形態と比較してN倍の高速化ができる他、水平方向への比較を行った後に、更に垂直方向への比較を行う場合には、誤検出を減らすと共に、ほぼN倍の高速化ができるということになる。
【0053】
なお、この第5の実施の形態では、最初に水平方向への比較を行ってから垂直方向への比較を行ったが、これに限定されることはなく、図14(1)〜(5)に示すように、垂直方向部分テンプレートから水平方向部分テンプレートへの比較や、水平方向部分テンプレートによる比較処理を行ってから、数列の垂直方向部分テンプレートからなる面状テンプレート(面状特徴情報)とこの水平方向部分テンプレートのマッチした部分画像PGの中心点を中心とする面状テンプレートと同じ大きさの画像領域を持つ画像データDから抽出された部分画像PG(タグ確認用比較情報)との比較等を順次行っても構わない。
【0054】
即ち、少ない情報量を持つテンプレートの1つとこれに対応する画像データDの部分画像PGとを比較し、この比較結果に基づいて実際の画像検出用タグ12の検出範囲を絞り込んでから、他の、例えば、同等の情報量又はより情報量の多いテンプレートで更なる比較を行えば、高速化と誤検出防止とを両立できるということになる。
さらに、本実施の形態では、比較情報と特徴情報との比較を1度目の比較結果に基づいて2度行うようにしたが、本発明はこれに限定されず、複数回であれば何度比較を行っても構わない。ただし、実際に本発明を実施する場合には、産業的利用の観点から1度目の比較結果に基づいて2度目を行うに留めることが望ましい。
【0055】
次に、第6の実施の形態として、画像識別用タグ12の誤検出防止のための比較処理を方向符号比較部34にて行う。なお、本実施の形態における画像タグ識別装置3の構成は、上記第2の実施の形態と同一であり、上記第1から第5の実施の形態に既述の部分の説明は適宜省略する。
まず、図15に概念的に示すように、部分画像PG(方向符号群)を4つの象限(第1象限〜第4象限)に分割する。なお、この図15では、方向符号を矢印で表わしている。本実施の形態で存在する方向符号を0〜15とした場合、タグを検出するためのテンプレートの第1象限には方向符号0〜3のみが、第2象限には方向符号4〜7のみが、第3象限には方向符号8〜11のみが、第4象限には方向符号12〜15のみが、それぞれ出現する。そこで、上記テンプレートと相互に一致又は近似と判定され、対象画像から選出された部分画像PGの各象限を調べ、ありえない方向符号の出現数から出現比率を計算する。例えば、本実施の形態においては、本来ありえない方向符号である14と4とがそれぞれ第3及び第4象限に存在している。この場合、各象限にある方向符号の総数を100とすると、ありえない方向符号の出現比率は、第3及び第4象限共に0.01となる。ここで、予め設定された閾値Eを例えば0.005とすると、この出現比率は閾値を越えているので、この予め選出された部分画像PGは、タグではないと棄却される。逆に、いずれの象限においても上記出現比率が、この予め設定された閾値Eを越えていない場合には、この部分画像PGの抽出位置において画像識別用タグ12が検出されているとしている。
【0056】
このように、選出された部分画像PG全体に渡って差異を検出するのではなく、部分画像PGを幾つかの象限に分割し、象限毎に差異を集計して判定するので、例えば上記第1から第5の実施の形態において選出された比較情報が、画像識別用タグ12なのか否かをより正確に判定できるので、誤検出を防止できる。なお、上記部分画像PGを象限毎に区切るのではなく、この部分画像PGを任意の細部分画像として複数に分割しても良く、各細部分画像のそれぞれとこれに対応する上記テンプレートの一部とを相互に比較することで、より詳細に誤検出の防止ができる。
【0057】
これにより、撮像された商品10の表面上に画像識別用タグ12と紛らわしい画像が生じている場合に、画像データDから抽出される部分画像PGが画像識別用タグ12として誤検出されてしまうのを防止することができる。
一方、上記第1及び第2の実施の形態では、対象画像から抽出した部分画像PGのうち上記テンプレートに一致又は近似したものの中で、最もテンプレートに近い1つを選出するとしたが、第7の実施の形態として、複数の部分画像PGを選出すると共に、選出された部分画像PG毎の中心座標を求め、これら中心座標のうち複数が、予め設定された範囲内にある場合に、この設定された範囲内にある複数の中心座標の中心の座標を求めて、この座標をタグの中心座標として検出しても良い。
【0058】
図16(a)に示すのは、1つの画像識別用タグ12が、上記第1の実施の形態で用いられたカメラ2により、カメラの解像度や撮像状況が原因で、この画像識別用タグ12の中心点Rが複数回検出された様子を示している。
また、画像識別用タグ12の特性により、タグの中心座標に近づく程、選出される部分画像PGの個数は飛躍的に増大する。そこで、図16(b)に示すように、所定の範囲内で検出された中心座標群の重心R−を取ることで、上記頂点の座標に近似する座標を算出することができる。
【0059】
カメラの解像度が低い場合やカメラレンズの焦点がずれている場合、量子化誤差によりタグの中心が必ずしもテンプレートに一致しないことがあるが、このとき複数の検出点の座標の重心をとるので、量子化誤差の影響を緩和できる。
上記の第1から第7の実施の形態の画像識別用タグ及び画像識別システムは、次のような用途に用いることが可能である。
【0060】
上記タグ座標演算部35により算出される画像識別用タグ12の位置情報を得て、アプリケーションに対する“ランドマーク”として利用する。例えば、移動ロボットの進行目標として走行機構を制御する。また、空間的に分割して撮影された画像や時系列的に分割して撮影された画像を重ね合わせる際の、基準点とする。あるいは、複数のカメラやプロジェクタを相互にキャリブレーションする際の、基準点とする。
【0061】
また、複数の上記位置情報を得て、それらの相互関係に基づく特徴量を算出し利用する。例えば、平面上に配置した4つの画像識別用タグの位置情報から、透視変換行列を計算して、当該平面の位置や姿勢を同定する。又は、立体に配置した4つの画像識別用タグの位置情報から、2つの当該画像識別用タグを結ぶ直線を2本得て、その交点を求めることにより、直接指定できない点の位置を同定する。
【0062】
このように、画像識別用タグの位置情報を用いた情報処理により、アプリケーションに対する“ランドマーク”を安定して検出できるので、例えば、移動ロボットは進行目標を見失わずに走行できるという効果が得られる。また、複数の画像識別用タグの位置関係に基づいて特徴量を算出して利用するので、例えば、カメラ撮像条件の影響を受け易い2値化処理による特徴点の検出に比べて、はるかに安定して特徴量を算出できるという効果が得られる。
【0063】
また、図5に示すような、輝度及び中心点Oからの距離との関係を示すグラデーショングラフに基づいて、画像識別用タグ情報を生成し、これを印刷することができる。
画像識別用タグは、次のように生成することができる。画像識別用タグの生成処理にあたり、まず画像識別用タグの大きさ(中心点Oからの距離r)、パターンの輝度変化曲線(グラデーショングラフ)、パターンの色などに基づいて、画像識別用タグ情報を生成する。また特徴量の指定を受け、その値を算出するために生成する複数の画像識別用タグそれぞれの配置位置を決定する。そして、指定された媒体の上に当該画像識別用タグ情報に基づいて画像識別用タグを印刷する。なお、前記指定された媒体には、紙、ねじのプレート部、シール、電化製品の表面、透明シート等が挙げられる。
【0064】
このように、安定して識別される高品質の画像識別用タグ情報を、印刷機器の印刷特性に応じて手軽に生成できるという効果が得られる。また、所定の特徴量を算出するための複数の画像識別用タグの配置位置を、煩雑な計算をせずに特定できるという効果が得られる。
ここでは、上記第1から第7の実施の形態において、図1のカメラ2が前記撮像手段に対応し、図2のタグ識別装置3が前記タグ識別手段に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】画像識別システムの一実施の形態の構成を示すシステム構成図である。
【図2】タグ識別装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】画像識別用タグの中心点から離れるに従って輝度が減少するパターン及び増加するパターンの一例を示す図である。
【図4】画像識別用タグの輝度及び中心点からの距離との関係を示すグラデーショングラフの一例を示す図である。
【図5】画像識別用タグの輝度及び中心点からの距離との関係を示すグラデーショングラフの他の一例を示す図である。
【図6】方向符号の生成を説明するための概略図の一例である。
【図7】タグ識別手段の一例を示す図である。
【図8】タグ識別装置の機能構成を示す他のブロック図である。
【図9】タグ識別手段の一例を示す別の図である。
【図10】タグ識別手段の一例を示す更に別の図である。
【図11】タグ識別手段で用いるテンプレートの一例を示す図である。
【図12】タグ識別手段の一例を示す図である。
【図13】タグ識別装置の機能構成を示す更に他のブロック図である。
【図14】タグ識別手段の一例を示す別の図である。
【図15】部分画像PGを4つの象限に概念的に分割した一例を示す図である。
【図16】タグ識別手段で検出される複数のタグの中心点の平均を取る様子を表わす図である。
【符号の説明】
【0066】
2 カメラ
3 タグ識別装置
4 バーコード識別装置
5 バーコード情報処理装置
11 バーコード
12 画像識別用タグ
31 部分画像抽出部
32 方向符号演算部
33 タグ方向符号
330 タグ方向符号
33A 記憶部
34 方向符号比較部
35 タグ座標演算部
36 マスク生成処理部
D 対象画像データ
G グループ
PG 部分画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に付され画像処理により識別される画像識別用タグであって、円形を成し、この円の中心点を起点として半径方向に沿った輝度変化パターンが、全半径方向で同一であることを特徴とする画像識別用タグ。
【請求項2】
前記輝度変化パターンは、前記中心点から離れるに従って徐々に輝度が低くなる減少パターン及び徐々に輝度が高くなる増加パターンのいずれか一方である請求項1記載の画像識別用タグ。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載されたタグと、このタグが付された対象物の画像を撮像可能な撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像である対象画像から前記タグを識別するタグ識別手段と、を備えたことを特徴とする画像識別システム。
【請求項4】
前記タグ識別手段は、前記タグを識別可能な特徴情報を記憶しており、前記対象画像から前記特徴情報と比較可能な比較情報を取得し、この比較情報と前記特徴情報とを比較し、その比較結果に基づいて前記タグを識別するようになっている請求項3記載の画像識別システム。
【請求項5】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から順次抽出し、この抽出された部分画像毎に前記比較情報を取得するようになっている請求項4記載の画像識別システム。
【請求項6】
前記特徴情報及び前記比較情報は、画素毎の輝度の最大増加方向及び最大減少方向のいずれか一方を表す方向符号である請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項7】
前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に、その画素の輝度値と、それに隣接する他の画素の輝度値との差を演算し、その演算結果に基づいて各画素毎の前記比較情報としての前記方向符号を求めるようになっている請求項6記載の画像識別システム。
【請求項8】
前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に輝度の最大増加方向及び最大減少方向のいずれか一方を表す方向符号を計算し、その計算された方向符号に基づいてタグの候補領域を選択し、その選択されたタグの候補領域に対して前記比較を行なうようになっている請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項9】
前記タグの候補領域を選択する処理は、一の画素の方向符号とそれに隣接する他の画素の方向符号との差が所定しきい値以下である場合に、それら一の画素と他の画素とを同一のグループに分類するという分類処理を、前記対象画像全体に対して実行し、その分類処理の結果得られたグループのうち、予め定めた選出基準により選出されたグループの画像を前記タグの候補領域として選択する処理である請求項8記載の画像識別システム。
【請求項10】
前記タグ識別手段は、前記グループの中心点を求め、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記中心点を中心として所定の範囲内で前記対象画像から抽出し、この部分画像を前記比較情報とするようになっている請求項9に記載の画像識別システム。
【請求項11】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報として、タグ上を通る任意の直線上に並ぶ前記方向符号の列である列状特徴情報を記憶している請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項12】
前記任意の直線は、前記タグの中心を通る直線である請求項11に記載の画像識別システム。
【請求項13】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報として、前記タグの中心を通り且つ互いに交差する二本の直線それぞれに基づいて二種類の前記列状特徴情報を記憶しており、一方の前記列状特徴情報とそれに対応する一の列状の前記比較情報とを比較し、両者が一致又は近似のいずれかの場合に、他方の前記列状特徴情報とそれに対応する他の列状の前記比較情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグを識別するようになっている請求項12に記載の画像識別システム。
【請求項14】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報として、前記列状特徴情報と、前記タグの中心を含み前記列状特徴情報よりもデータ数の多い領域の特徴情報である面状特徴情報とを記憶しており、前記列状特徴情報とそれに対応する列状の前記比較情報とを比較し、両者が一致又は近似のいずれかの場合に、該列状比較情報の中心点を中心として、前記面状特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から抽出してこれをタグ確認用比較情報とし、該タグ確認用比較情報と前記面状特徴情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグを識別するようになっている請求項11及び請求項12のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項15】
前記タグ識別手段は、前記比較情報を複数の領域に分割し、分割された該比較情報とそれに対応する前記特徴情報の一部とを比較し、この比較結果をも考慮して前記タグを識別するようになっている請求項4から請求項14のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項16】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報と前記比較情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグとして識別される前記比較情報を選択すると共に、選択された前記比較情報の中心座標を取得し、該中心座標のうち複数の中心座標が所定の範囲内にある場合に、この所定の範囲内にある複数の前記中心座標群の中心の座標を、前記タグの中心座標として算出するようになっている請求項4から請求項15のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項1】
対象物に付され画像処理により識別される画像識別用タグであって、円形を成し、この円の中心点を起点として半径方向に沿った輝度変化パターンが、全半径方向で同一であることを特徴とする画像識別用タグ。
【請求項2】
前記輝度変化パターンは、前記中心点から離れるに従って徐々に輝度が低くなる減少パターン及び徐々に輝度が高くなる増加パターンのいずれか一方である請求項1記載の画像識別用タグ。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載されたタグと、このタグが付された対象物の画像を撮像可能な撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像である対象画像から前記タグを識別するタグ識別手段と、を備えたことを特徴とする画像識別システム。
【請求項4】
前記タグ識別手段は、前記タグを識別可能な特徴情報を記憶しており、前記対象画像から前記特徴情報と比較可能な比較情報を取得し、この比較情報と前記特徴情報とを比較し、その比較結果に基づいて前記タグを識別するようになっている請求項3記載の画像識別システム。
【請求項5】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から順次抽出し、この抽出された部分画像毎に前記比較情報を取得するようになっている請求項4記載の画像識別システム。
【請求項6】
前記特徴情報及び前記比較情報は、画素毎の輝度の最大増加方向及び最大減少方向のいずれか一方を表す方向符号である請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項7】
前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に、その画素の輝度値と、それに隣接する他の画素の輝度値との差を演算し、その演算結果に基づいて各画素毎の前記比較情報としての前記方向符号を求めるようになっている請求項6記載の画像識別システム。
【請求項8】
前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に輝度の最大増加方向及び最大減少方向のいずれか一方を表す方向符号を計算し、その計算された方向符号に基づいてタグの候補領域を選択し、その選択されたタグの候補領域に対して前記比較を行なうようになっている請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項9】
前記タグの候補領域を選択する処理は、一の画素の方向符号とそれに隣接する他の画素の方向符号との差が所定しきい値以下である場合に、それら一の画素と他の画素とを同一のグループに分類するという分類処理を、前記対象画像全体に対して実行し、その分類処理の結果得られたグループのうち、予め定めた選出基準により選出されたグループの画像を前記タグの候補領域として選択する処理である請求項8記載の画像識別システム。
【請求項10】
前記タグ識別手段は、前記グループの中心点を求め、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記中心点を中心として所定の範囲内で前記対象画像から抽出し、この部分画像を前記比較情報とするようになっている請求項9に記載の画像識別システム。
【請求項11】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報として、タグ上を通る任意の直線上に並ぶ前記方向符号の列である列状特徴情報を記憶している請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項12】
前記任意の直線は、前記タグの中心を通る直線である請求項11に記載の画像識別システム。
【請求項13】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報として、前記タグの中心を通り且つ互いに交差する二本の直線それぞれに基づいて二種類の前記列状特徴情報を記憶しており、一方の前記列状特徴情報とそれに対応する一の列状の前記比較情報とを比較し、両者が一致又は近似のいずれかの場合に、他方の前記列状特徴情報とそれに対応する他の列状の前記比較情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグを識別するようになっている請求項12に記載の画像識別システム。
【請求項14】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報として、前記列状特徴情報と、前記タグの中心を含み前記列状特徴情報よりもデータ数の多い領域の特徴情報である面状特徴情報とを記憶しており、前記列状特徴情報とそれに対応する列状の前記比較情報とを比較し、両者が一致又は近似のいずれかの場合に、該列状比較情報の中心点を中心として、前記面状特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から抽出してこれをタグ確認用比較情報とし、該タグ確認用比較情報と前記面状特徴情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグを識別するようになっている請求項11及び請求項12のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項15】
前記タグ識別手段は、前記比較情報を複数の領域に分割し、分割された該比較情報とそれに対応する前記特徴情報の一部とを比較し、この比較結果をも考慮して前記タグを識別するようになっている請求項4から請求項14のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【請求項16】
前記タグ識別手段は、前記特徴情報と前記比較情報とを比較し、この比較結果に基づいて前記タグとして識別される前記比較情報を選択すると共に、選択された前記比較情報の中心座標を取得し、該中心座標のうち複数の中心座標が所定の範囲内にある場合に、この所定の範囲内にある複数の前記中心座標群の中心の座標を、前記タグの中心座標として算出するようになっている請求項4から請求項15のいずれか1項に記載の画像識別システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−252491(P2006−252491A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81253(P2005−81253)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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