説明

画像超解像処理装置及びそのプログラム

【課題】原画像に対して予め縮小された縮小画像を画像拡大する画像超解像処理装置及びそのプログラムを提供する。
【解決手段】原画像に対して予め縮小された縮小画像を入力して直交変換処理を施し、縮小画像スペクトルに変換する。当該原画像のサイズに戻すための拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトルから、当該縮小画像の空間高周波スペクトルを推定して生成する。予め決定される当該原画像の帯域毎のスペクトルパワー代表値を表す原画像帯域毎スペクトルパワー代表値に対して、前記拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの各帯域幅内の代表値となるように補正して、原画像帯域毎スペクトルパワー補正値を生成し、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルを補正する。当該補正した縮小画像スペクトル及び空間高周波スペクトルに対して逆直交変換処理を施し、当該縮小画像を拡大した画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原画像に対して例えば符号化処理によって劣化過程を経て縮小された縮小画像を、所定の拡大倍率で拡大して元の原画像のサイズに戻す超解像処理を行う画像超解像処理装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原画像に対して例えば符号化処理によって劣化過程を経て縮小された縮小画像を、所定の拡大倍率で拡大して元の原画像のサイズに戻す超解像処理が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、画像拡大を行う際に、ウェーブレット変換を用いて、縮小画像を超え原画像の空間標本化周波数に至る高周波スペクトルを生成することにより、超解像画像を得る技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。このような周波数再構成型の超解像処理は、例えば、縮小画像と原画像のスペクトル間には、相似性(「自己相似性」とも称する)が存在することが多いことを利用している。
【0004】
つまり、縮小画像のスペクトルから、縮小画像が持つ空間標本化周波数を超えて原画像が持つ空間標本化周波数に至る高周波スペクトルを生成する。例えば、縮小画像を水平2倍、垂直2倍に拡大して原画像を生成する場合、縮小画像のスペクトルについて水平、垂直方向共に標本化周波数の1/2倍を超えて1倍に至る領域のスペクトルを補間拡大し、縮小画像が持つ空間標本化周波数を超えて原画像が持つ空間標本化周波数に至る帯域へコピーすることで高周波スペクトルを生成する。
【0005】
尚、周波数再構成型の超解像処理として、離散ウェーブレットパケット変換を用いる技術(例えば、非特許文献1参照)や、離散フーリエ変換を用いる技術(例えば、非特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−204268号公報
【特許文献2】特許第2639323号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R. Coifman, Y. Meyer, S. Quake, and V. Wickerhauser, “Signal Processing and Compression with Wavelet Packets,” Numerical Algorithms Research Group, New Haven, CT, Yale University, 1990
【非特許文献2】S. G. Mallat, “A theory for multiresolution signal decomposition: The wavelet decompression,” IEEE Trans. Patt. Anal. Mach. Intell., vol.11, pp. 674-693, 1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術は、高周波スペクトルを生成する際、その高周波スペクトルパワーを正確に設定することができない。ゆえに、高周波スペクトルパワーが過大となり、アーティファクトが発生する問題や、逆に高周波スペクトルパワーが過小となり高精細感がほとんど得られないという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、スペクトルパワーを制御して、縮小画像に対して超解像処理を行う画像超解像処理装置及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、縮小画像を原画像サイズに拡大する際、縮小画像のスペクトルと原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を用いて、縮小画像を超え原画像の空間標本化周波数に至る空間高周波スペクトルを推定し、高画質化を図ることにある。
【0011】
即ち、本発明の画像超解像処理装置は、原画像に対して予め縮小された縮小画像を画像拡大する画像超解像処理装置であって、原画像に対して予め縮小された縮小画像を入力して直交変換処理を施し、縮小画像の帯域幅の縮小画像スペクトルに変換する直交変換部と、当該原画像のサイズに戻すための拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトルから、当該縮小画像の空間標本化周波数から当該原画像の空間標本化周波数までの帯域幅の空間高周波スペクトルを推定して生成する高周波スペクトル生成部と、予め決定される当該原画像の帯域毎のスペクトルパワー代表値を表す原画像帯域毎スペクトルパワー代表値に対して、前記拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの各帯域幅内の代表値となるように補正して、原画像帯域毎スペクトルパワー補正値を生成する原画像帯域毎スペクトルパワー決定部と、前記原画像帯域毎スペクトルパワー補正値によって、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルを補正するスペクトルパワー補正部と、当該補正した縮小画像スペクトル及び空間高周波スペクトルに対して逆直交変換処理を施し、当該縮小画像を拡大した画像を生成する逆直交変換部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の画像超解像処理装置において、前記高周波スペクトル生成部は、ウェーブレット変換を用いて推定することを特徴とする。
【0013】
前記直交変換部は、前記直交変換処理として、離散フーリエ変換、離散コサイン変換、離散ウェーブレット変換、離散ウェーブレットパケット変換のうちのいずれかとし、前記直交変換部は、前記逆直交変換処理として、前記直交変換処理に対応する逆離散フーリエ変換、逆離散コサイン変換、逆離散ウェーブレット変換、逆離散ウェーブレットパケット変換のうちのいずれかとすることを特徴とする。
【0014】
前記原画像帯域毎スペクトルパワー決定部は、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値が事前に用意されていない場合に、前記縮小画像をオクターブ分解し、各帯域におけるスペクトルパワーの平均値を各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値として求める手段と、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値が事前に用意されている場合に、該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を持つ帯域幅が前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの帯域幅と対応している際には、各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値とし、該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を持つ帯域幅が前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの帯域幅と対応していない際には、事前に用意された原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの帯域幅と対応するように補間して、各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値として決定する手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のプログラムは、原画像に対して予め縮小された縮小画像を画像拡大する画像超解像処理装置として構成するコンピュータに、原画像に対して予め縮小された縮小画像を入力して直交変換処理を施し、縮小画像の帯域幅の縮小画像スペクトルに変換するステップと、当該原画像のサイズに戻すための拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトルから、当該縮小画像の空間標本化周波数から当該原画像の空間標本化周波数までの帯域幅の空間高周波スペクトルを推定して生成するステップと、予め決定される当該原画像の帯域毎のスペクトルパワー代表値を表す原画像帯域毎スペクトルパワー代表値に対して、前記拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの各帯域幅内の代表値となるように補正して、原画像帯域毎スペクトルパワー補正値を生成するステップと、前記原画像帯域毎スペクトルパワー補正値によって、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルを補正するステップと、当該補正した縮小画像スペクトル及び空間高周波スペクトルに対して逆直交変換処理を施し、当該縮小画像を拡大した画像を生成するステップと、を実行させるためのプログラムとして構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、従来技術の課題である高周波スペクトルパワーが過大となり、アーティファクトが発生する問題や、逆に高周波スペクトルパワーが過小となり高精細感がほとんど得られないという問題を解決し、高画質な超解像画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による一実施例の画像超解像処理装置のブロック図である。
【図2】(a),(b),(c)は、周波数再構成型の超解像処理の概念図を示す図である。
【図3】(a),(b)は、本発明による一実施例の画像超解像処理装置における直交変換処理として、2次元1階ウェーブレット変換を用いた場合の例を示す図である。
【図4】(a),(b),(c),(d),(e)は、本発明による一実施例の画像超解像処理装置における高周波スペクトル生成部の処理例を示す図である。
【図5】(a),(b)は、本発明による一実施例の画像超解像処理装置における原画像帯域毎スペクトルパワー決定部の一処理例を示す図である。
【図6】(a),(b)は、本発明による一実施例の画像超解像処理装置における原画像帯域毎スペクトルパワー決定部の一処理例を示す図である。
【図7】(a),(b),(c)は、本発明による一実施例の画像超解像処理装置におけるスペクトルパワー補正部の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による一実施例の画像超解像処理装置について説明する。
【0019】
〔装置構成〕
図1は、本発明による一実施例の画像超解像処理装置のブロック図である。本実施例の画像超解像処理装置1は、原画像に対して予め縮小された縮小画像を画像拡大するための装置であり、直交変換部10と、高周波スペクトル生成部20と、代表値判定部30と、原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40と、スペクトルパワー補正部50と、逆直交変換部60とを備える。本実施例では、直交変換として離散ウェーブレット分解を用い、縮小画像(縮小画像F)を水平2倍、垂直2倍に画像拡大する場合について説明する。
【0020】
直交変換部10は、原画像に対して予め縮小された縮小画像Fを入力して直交変換処理を施し、縮小画像Fの帯域幅の縮小画像スペクトルに変換し、高周波スペクトル生成部20に送出する。
【0021】
高周波スペクトル生成部20は、当該原画像のサイズに戻すための拡大倍率値Aを入力して、直交変換部10を経て得られる縮小画像スペクトルから、当該縮小画像の空間標本化周波数から当該原画像の空間標本化周波数までの帯域幅の空間高周波スペクトルを推定して生成し、原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40に送出する。
【0022】
原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40は、予め決定される当該原画像の帯域毎のスペクトルパワー代表値を表す原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)を入力し、拡大倍率値Aを入力して、直交変換部10を経て得られる縮小画像スペクトル及び高周波スペクトル生成部20を経て得られる空間高周波スペクトルの各帯域幅内の代表値となるように補正して、原画像帯域毎スペクトルパワー補正値を生成し、スペクトルパワー補正部50に送出する。
【0023】
スペクトルパワー補正部50は、原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40から得られる原画像帯域毎スペクトルパワー補正値によって、当該縮小画像スペクトル及び当該空間高周波スペクトルを補正し、逆直交変換部60に送出する。
【0024】
逆直交変換部60は、スペクトルパワー補正部50によって補正した縮小画像スペクトル及び空間高周波スペクトルに対して逆直交変換処理を施し、当該縮小画像を拡大した画像を生成する。
【0025】
尚、代表値判定部30は、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)が事前に用意されていない場合を想定して設けられた機能部であり、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)が事前に用意されていない場合には、直交変換部10から得られる縮小画像スペクトルか、又は縮小画像そのものを原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40に送出し、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)が事前に用意されている場合には、この事前に用意された原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)を原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40に送出する。
【0026】
この場合、原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40は、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)が事前に用意されていない場合に、直交変換部10から得られる縮小画像スペクトルか、又は得られた縮小画像をオクターブ分解し、各帯域におけるスペクトルパワーの平均値を、拡大倍率値Aに応じて各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値として求め、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)が事前に用意されている場合に、該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)を持つ帯域幅が当該縮小画像スペクトル及び当該空間高周波スペクトルの帯域幅と対応している際には、各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値として決定し、該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)を持つ帯域幅が当該縮小画像スペクトル及び当該空間高周波スペクトルの帯域幅と対応していない際には、事前に用意された原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)を、当該縮小画像スペクトル及び当該空間高周波スペクトルの帯域幅と対応するように補間して、各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値として新たに決定する。
【0027】
以下、より具合的に、本実施例の画像超解像処理装置1の動作について、図2〜図7を参照して説明する。
【0028】
〔装置動作〕
まず、本発明の理解を高めるために、従来技術における超解像処理の問題点を明らかにする。図2には、周波数再構成型の超解像処理の概念図を示している。図2(a)は、原画像の空間標本化周波数において、特に水平方向のスペクトルを例示する図である。例えば、原画像が最大標本化周波数ωx0に従って徐々に減衰するようなスペクトルパワーを有していたとする。一方、図2(b)は、原画像に対して1/2に縮小された縮小画像についての空間標本化周波数において、特に水平方向のスペクトルを例示する図である。この場合、縮小画像がその最大標本化周波数ωx0/2に従って徐々に減衰するようなスペクトルパワーを有していたとする。図2(c)に示すように、従来技術における超解像処理(以下、「単純超解像度処理」とも称する)では、2倍の拡大倍率値を用いて縮小画像を画像拡大して再構成後の画像を得たとすると、この再構成後の画像のスペクトルは、DC成分及び原画像の最大標本化周波数ωx0のパワーPが一致しても、DC成分から原画像の最大標本化周波数ωx0までの帯域内においてパワー誤差ΔPが生じることがよくある。従って、単純超解像度処理では、高周波スペクトルパワーが過大となり、アーティファクトが発生する問題や、逆に高周波スペクトルパワーが過小となり高精細感がほとんど得られないという問題が生じ、原画像の復元に関して画質改善の余地があった。
【0029】
このため、本実施例の画像超解像処理装置1では、スペクトルパワーを制御して、縮小画像に対して超解像処理を行うように構成している。
【0030】
まず、直交変換部10は、原画像に対して予め縮小された縮小画像Fを入力して直交変換処理を施し、縮小画像Fの帯域幅の縮小画像スペクトルを算出する。図3は、この直交変換処理に、2次元1階ウェーブレット変換を用いた場合の例を示している。
【0031】
例えば、直交変換部10は、縮小画像Fに対して(図3(a)参照)、例えばスケーリング関数φを用いて2次元n階離散ウェーブレット分解を行ない、空間低周波帯域成分F_LLと、水平・垂直・斜め方向空間高周波帯域成分F_LH,F_HL,F_HHを得ることができる(図3(b)参照)。尚、nは階数を表し、図3の例ではn=1である。
【0032】
次に、高周波スペクトル生成部20は、当該原画像のサイズに戻すための拡大倍率値Aを入力して、直交変換部10を経て得られる縮小画像スペクトルから、当該縮小画像の空間標本化周波数から当該原画像の空間標本化周波数までの帯域幅の空間高周波スペクトルを推定して生成する。図4は、当該縮小画像の空間標本化周波数から当該原画像の空間標本化周波数までの帯域幅の空間高周波スペクトルを推定して生成する例を示しており、空間高周波成分を補間生成して水平・垂直方向にそれぞれ拡大する例である。
【0033】
例えば、高周波スペクトル生成部20は、縮小画像スペクトルより縮小画像が持つ空間標本化周波数を超え原画像が持つ空間標本化周波数に至る空間高周波スペクトルを推定する。ここでは、縮小画像Fを原画像サイズに超解像した画像のスペクトルと原画像スペクトルには、自己相似性を持つと仮定して、高周波成分の補間生成を行っている。
【0034】
図4に示す例では、縮小画像F(図4(a)参照)に対して例えば2次元1階の縮小画像スペクトルが得られているので(図4(b)参照)、空間高周波スペクトルの推定のために、この縮小画像スペクトルのうちのF_LHを空間低周波成分とし、同じサイズのゼロ行列(要素がゼロ)を空間高周波成分として(図4(c)参照)、2次元1階ウェーブレット再構成し直交変換を施してF_HLを得る(図4(d)参照)。同様に、この縮小画像スペクトルのうちのF_LHを空間低周波成分とし空間高周波成分をゼロとして、1階ウェーブレット再構成して直交変換を施しF_LHを得るとともに、縮小画像スペクトルのうちのF_HHを空間低周波成分とし空間高周波成分をゼロとして1階ウェーブレット再構成して直交変換を施しF_HHを得る。最終的に、原画像サイズに相当するオクターブ分解のスペクトル成分は、縮小画像スペクトルの成分F_LL,F_LH,F_HL,F_HHと、推定して得られた空間高周波スペクトルF_LH,F_HL,F_HHを組み合わせることで推定され、各帯域幅内のパワー値P(F_LL),P(F_LH),P(F_HL),P(F_HH),P(F_LH),P(F_HL),P(F_HH)も推定することができる(図4(e)参照)。この処理は、単純超解像処理と同等の推定性能であるが、後述するように、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を用いた補正処理に適した処理となっていることに留意する。
【0035】
次に、原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40は、代表値判定部30による判定結果として原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)が事前に用意されているか否かに応じて、3種類のケースに場合分けして動作するように構成することができる。
【0036】
(ケース1)
ケース1は、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値がNULLの場合(入力されない場合又は値がゼロの場合)である。この場合、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)を生成する必要がある。ここで、原画像と縮小画像のスペクトルは、自己相似性があると仮定している。縮小画像Fをn階離散ウェーブレット分解して各帯域のスペクトルパワー代表値を求め(図5(a)参照)、そのまま水平・垂直方向に2倍した帯域のスペクトラムパワー値として原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)とする(図5(b)参照)。
【0037】
(ケース2)
ケース2は、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値が入力され、この原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を持つ帯域幅が、直交変換部10を経て得られる縮小画像スペクトル及び高周波スペクトル生成部20を経て得られる空間高周波スペクトルの帯域幅と対応している場合である。この場合、入力された原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)とする。
【0038】
(ケース3)
ケース3は、原画像帯域毎スペクトルパワー代表値が入力されるが、この原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を持つ帯域幅が、直交変換部10を経て得られる縮小画像スペクトル及び高周波スペクトル生成部20を経て得られる空間高周波スペクトルの帯域幅と対応していない場合である。この場合、入力された原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)を、直交変換部10を経て得られる縮小画像スペクトル及び高周波スペクトル生成部20を経て得られる空間高周波スペクトルの帯域幅と対応するように補間して、補間後の原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を生成する。例えば、水平・垂直・斜め方向に最小二乗法による線形補間によって、入力される原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)を補間して、補間後の原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を算出することができる。図6に示すように、入力された原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O)のうち水平方向の帯域の代表値を抽出して得られる帯域幅が(図6(a)参照)、直交変換部10を経て得られる縮小画像スペクトル及び高周波スペクトル生成部20を経て得られる空間高周波スペクトルの帯域幅と対応していない場合に(尚、代表値が1つの帯域幅内に複数ある場合も対応していないと判断する)、最小二乗法による線形補間によって補間して新たな原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を算出する例を示している(図6(b)参照)。
【0039】
次に、スペクトルパワー補正部50は、原画像帯域毎スペクトルパワー決定部40から得られる原画像帯域毎スペクトルパワー補正値(補間後の原画像帯域毎スペクトルパワー代表値に対応する)によって(図7(a)参照)、当該縮小画像スペクトル及び当該空間高周波スペクトルを補正し(図7(b)参照)、補正後のパワー値からなるウェーブレット係数を得る(図7(c)参照)。
【0040】
例えば、図7に示すように、F_LH帯域内で各要素のスペクトルパワー絶対平均値P(F_LH)を算出し、該当帯域に相当する原画像帯域毎スペクトルパワー代表値P(O_LH)と同じになる倍率でF_LH帯域内の全要素のウェーブレット分解係数に対して乗算を行うことで縮小画像スペクトル及び空間高周波スペクトルに対して補正し、同様の処理を全帯域に対して行う。
【0041】
最終的に、逆直交変換部60は、スペクトルパワー補正部50によって補正した縮小画像スペクトル及び空間高周波スペクトル(スペクトルレベル補正後のn階離散ウェーブレット分解係数)に対して、n階離散ウェーブレット逆変換を施し、当該縮小画像を拡大した超解像画像を生成する。
【0042】
このように、本実施例の画像超解像処理装置1では、スペクトルパワーを制御して、縮小画像に対して超解像処理を行うため、単純超解像度処理で生じていた問題を解決し、原画像の復元に関して画質の改善を図ることができるようになる。
【0043】
また、上述の実施例では、各周波領域のパワーの算出のために、ウェーブレット変換を用いる例を説明したが、離散フーリエ変換、離散コサイン変換、離散ウェーブレット変換、離散ウェーブレットパケット変換等を用いて各周波領域のパワーを算出することができる。ウェーブレット変換を用いる場合には、画像の周波数変化を高精度に捉えることができる点で優れており、離散コサイン変換を用いる場合には、既存のシステムが離散コサイン変換を用いている場合に装置構成が容易になる。
【0044】
更に、本発明の一態様として、本発明の画像超解像処理装置をコンピュータとして構成させることができる。コンピュータに、前述した本発明の画像超解像処理装置の各構成要素を実現させるためのプログラムは、コンピュータの内部又は外部に備えられる記憶部に記憶される。そのような記憶部は、外付けハードディスクなどの外部記憶装置、或いはROM又はRAMなどの内部記憶装置で実現することができる。コンピュータに備えられる制御部は、中央演算処理装置(CPU)などの制御で実現することができる。即ち、CPUが、各構成要素の機能を実現するための処理内容が記述されたプログラムを、適宜、記憶部から読み込んで、各構成要素の機能をコンピュータ上で実現させることができる。ここで、各構成要素の機能をハードウェアの一部で実現しても良い。
【0045】
また、この処理内容を記述したプログラムを、例えばDVD又はCD−ROMなどの可搬型記録媒体の販売、譲渡、貸与等により流通させることができるほか、そのようなプログラムを、例えばネットワーク上にあるサーバの記憶部に記憶しておき、ネットワークを介してサーバから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、流通させることができる。
【0046】
また、そのようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶部に記憶することができる。また、このプログラムの別の実施態様として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、更に、このコンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。
【0047】
以上、具体例を挙げて本発明の実施例を詳細に説明したが、本発明の特許請求の範囲から逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能であることは当業者に明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、原画像の復元に関して画質の改善を図ることができるようになるので、超解像処理を要する任意の用途に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 画像超解像処理装置
10 直交変換部
20 高周波スペクトル生成部
30 代表値判定部
40 原画像帯域毎スペクトルパワー決定部
50 スペクトルパワー補正部
60 逆直交変換部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像に対して予め縮小された縮小画像を画像拡大する画像超解像処理装置であって、
原画像に対して予め縮小された縮小画像を入力して直交変換処理を施し、縮小画像の帯域幅の縮小画像スペクトルに変換する直交変換部と、
当該原画像のサイズに戻すための拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトルから、当該縮小画像の空間標本化周波数から当該原画像の空間標本化周波数までの帯域幅の空間高周波スペクトルを推定して生成する高周波スペクトル生成部と、
予め決定される当該原画像の帯域毎のスペクトルパワー代表値を表す原画像帯域毎スペクトルパワー代表値に対して、前記拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの各帯域幅内の代表値となるように補正して、原画像帯域毎スペクトルパワー補正値を生成する原画像帯域毎スペクトルパワー決定部と、
前記原画像帯域毎スペクトルパワー補正値によって、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルを補正するスペクトルパワー補正部と、
当該補正した縮小画像スペクトル及び空間高周波スペクトルに対して逆直交変換処理を施し、当該縮小画像を拡大した画像を生成する逆直交変換部と、
を備えることを特徴とする画像超解像処理装置。
【請求項2】
また、本発明の画像超解像処理装置において、前記高周波スペクトル生成部は、ウェーブレット変換を用いて推定することを特徴とする、請求項1に記載の画像超解像処理装置。
【請求項3】
前記直交変換部は、前記直交変換処理として、離散フーリエ変換、離散コサイン変換、離散ウェーブレット変換、離散ウェーブレットパケット変換のうちのいずれかとし、
前記直交変換部は、前記逆直交変換処理として、前記直交変換処理に対応する逆離散フーリエ変換、逆離散コサイン変換、逆離散ウェーブレット変換、逆離散ウェーブレットパケット変換のうちのいずれかとすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像超解像処理装置。
【請求項4】
前記原画像帯域毎スペクトルパワー決定部は、
原画像帯域毎スペクトルパワー代表値が事前に用意されていない場合に、前記縮小画像をオクターブ分解し、各帯域におけるスペクトルパワーの平均値を各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値として求める手段と、
原画像帯域毎スペクトルパワー代表値が事前に用意されている場合に、該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を持つ帯域幅が前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの帯域幅と対応している際には、各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値とし、該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を持つ帯域幅が前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの帯域幅と対応していない際には、事前に用意された原画像帯域毎スペクトルパワー代表値を、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの帯域幅と対応するように補間して、各帯域における当該原画像帯域毎スペクトルパワー代表値として決定する手段と、
を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像超解像処理装置。
【請求項5】
原画像に対して予め縮小された縮小画像を画像拡大する画像超解像処理装置として構成するコンピュータに、
原画像に対して予め縮小された縮小画像を入力して直交変換処理を施し、縮小画像の帯域幅の縮小画像スペクトルに変換するステップと、
当該原画像のサイズに戻すための拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトルから、当該縮小画像の空間標本化周波数から当該原画像の空間標本化周波数までの帯域幅の空間高周波スペクトルを推定して生成するステップと、
予め決定される当該原画像の帯域毎のスペクトルパワー代表値を表す原画像帯域毎スペクトルパワー代表値に対して、前記拡大倍率に従って、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルの各帯域幅内の代表値となるように補正して、原画像帯域毎スペクトルパワー補正値を生成するステップと、
前記原画像帯域毎スペクトルパワー補正値によって、前記縮小画像スペクトル及び前記空間高周波スペクトルを補正するステップと、
当該補正した縮小画像スペクトル及び空間高周波スペクトルに対して逆直交変換処理を施し、当該縮小画像を拡大した画像を生成するステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−59138(P2012−59138A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203480(P2010−203480)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】