説明

界面活性非酵素タンパク質の織布洗浄への利用

界面活性非酵素タンパク質を含有する織布洗浄用の洗浄組成物、および
このようなタンパク質を用いる洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性をもつ非酵素タンパク質の織布洗浄への利用に関する。また本発明は、界面活性非酵素タンパク質を含有する織布洗浄用の洗剤組成物、及びこのようなタンパク質を用いる洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
織布の洗浄において、汚れ、特に疎水性汚れを満足できるレベルにまで除去するには、現在のところ比較的高温が必要となる。中間温度、特に室温では、現在もなお洗浄性能の向上が、かなり求められている。従来技術では、疎水性汚れの除去には、特に界面活性剤と脂質分解酵素とが併用されている。
【0003】
洗剤組成物への添加物として酵素タンパク質を利用することは、原則として公知である。特にプロテアーゼが洗剤組成物に多用されているが、アミラーゼやセルラーゼ、リパーゼも知られている。詳細については、例えば、“Waschmittel-Enzyme” [洗浄組成物酵素] in Rompp Chemie-Lexikon, Online edition, Version 2.6, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, New York, 2005年2月、に記載されている。
【0004】
固定剤やUV保護剤、芳香物質、防汚助剤などの洗浄助剤を繊維に固定するためにタンパク質が利用できることも公知である。WO98/00500では、この目的のためのセルラーゼ、セルラーゼ誘導体又はセルラーゼ様タンパク質の利用を開示しており、WO01/46357では、この目的のためにセルロース結合部位と他の化合物の結合部位を有する融合タンパク質の利用を開示している。
【0005】
界面活性タンパク質は、原則として公知である。特に表面活性が強いあるクラスのタンパク質は、「ハイドロフォビン」と呼ばれている。ハイドロフォビンは、界面に強い親和性を示すため、表面塗布に適している。例えば、テフロン(登録商標)表面にハイドロフォビンを塗布すると、テフロン(登録商標)が親水化する。
【0006】
ハイドロフォビン類は、100〜150個のアミノ酸からなる小さなタンパク質であり、糸状菌、例えばシゾフィラム・コミューンに特徴的なものである。これらは、一般にシステイン単位を6個有している。
【0007】
ハイドロフォビンは、天然源から単離可能である。しかし、遺伝子工学的な手法で得ることもできる。発明者らの以前の出願PCT/EP2006/050719には、ハイドロフォビンの製造方法が開示されている。
【0008】
従来技術では、ハイドロフォビンのいろいろな用途での利用が提案されている。
【0009】
WO96/41882では、ハイドロフォビンを乳化剤や増粘剤、界面活性物質として、疎水性の表面の親水化、親水性基板の耐水性の改良や水中油型水乳濁液又は油中水型乳濁液の製造に利用することが開示されている。また、軟膏又はクリームの生産など医薬品用途や皮膚の保護やシャンプーやヘアリンスの生産などの化粧品用途での利用も提案されている。
【0010】
EP1252516には、ハイドロフォビンを含む溶液を30〜80℃の温度で、窓やコンタクトレンズ、バイオセンサー、医療用具、試験容器又は保管容器、船殻、固体粒子、又は乗用車のフレームやシャーシに塗布することが開示されている。
【0011】
WO03/53383には、化粧品用途のケラチン材料の処理にハイドロフォビンを用いることが開示されている。
【0012】
WO03/10331には、ハイドロフォビンを塗布したセンサ、例えば、他の物質、例えば電気活性物質や抗体又は酵素が非共有状態で結合した試験電極が開示されている。
【0013】
洗剤組成物用防汚添加剤としての界面活性非酵素タンパク質の利用、特にハイドロフォビンの利用に関する記述は、現在のところ見られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、改良された洗剤組成物、及び改良された織布の洗浄方法を提供することである。特に低温での洗浄において優れた洗浄性能が得られる。
【0015】
したがって、織布洗浄における界面活性非酵素タンパク質の利用が見出された。
本発明の第二の側面では、界面活性非酵素タンパク質を含む洗剤組成物が見出された。
【0016】
本発明の第三の側面では、界面活性非酵素タンパク質を含む洗浄液を用いる洗浄方法が見出された。本方法のある特定の実施様態では、この洗浄が60℃以下の温度で行われる。
【0017】
本発明の特に好ましい実施様態においては、この界面活性非酵素タンパク質がいずれの場合もハイドロフォビンである。
【0018】
驚くべきことに、界面活性非酵素タンパク質を洗浄液に添加すると、大幅な洗浄効率の上昇が認められた。特に驚くべきことは、低洗浄温度でも、またタンパク質の使用量が非常に少ない場合でも、この効果が認められることである。例えば、洗浄液中のタンパク質濃度が約2.5ppmであっても、既存の洗剤組成物と組合わせると、洗浄温度が25℃と低温でも最大8%まで洗浄効果を増強することができる。
【0019】
防汚作用の増強以外に、着色した油性の汚れに対する灰色化防止作用が認められた。洗浄過程で織布から除かれる疎水性の汚れは、洗濯の際に細かく分解されて織物の裏面に移行し、織布を灰色化または退色させることが起こりうる。通常、この影響は特に白色の織物あるいは淡色の織物で顕著である、特に界面活性剤やビルダー系の顔料が少ないときに、この問題が顕著である。本発明のように界面活性非酵素タンパク質を添加すると、この再付着が防止され、タンパク質の添加なしに洗浄された織物と較べると、洗浄後の織物の白色度が改善される。
【0020】
以下に、本発明を詳細かつ具体的に説明する。
【0021】
本発明の実施に当たり、界面活性を持つ非酵素タンパク質が使用される。「非酵素」とは、酵素活性を持たない、あるいは持っていてもごくわずかであるタンパク質であることを示す。
【0022】
「界面活性」とは、使用するタンパク質が界面特性に影響を与えることができることを示す。この界面は、固体−固体界面であっても、固体−液体界面、固体−ガス界面、液体−液体界面、液体−ガス界面であってもよい。特に、固液界面や液液界面であってもよい。
【0023】
固液界面の場合に、用いるタンパク質で影響を受ける性質が、例えば固体表面の親水性又は疎水性であってもよい。親水性又は疎水性の変化は、塗布表面及び非塗布表面上での水滴の接触角を測定する既知の方法により測定可能である。もう一つの界面特性は、液体の表面張力の変化であり、これも既知の方法により測定可能である。
【0024】
本発明の実施にあたり、好ましくは低濃度においても界面活性を示すタンパク質が好ましい。特に0.05〜50ppmの濃度で大きな界面活性作用を持つタンパク質が好ましい。
【0025】
本発明のある好ましい実施様態においては、使用するタンパク質が、もしこのタンパク質をガラス表面に塗布してその上に水滴(5μl)を落とした場合、その水滴の接触角が、非塗布ガラス表面上の同容量の水滴の接触角と較べて、室温で少なくとも20°の増加させるものである。接触角を少なくとも25°増加させるタンパク質の使用が好ましく、少なくとも30°増加させるタンパク質の使用がさらに好ましい。接触角の測定方法は、当業界の熟練者には原則として公知である。接触角の測定に適当な方法の具体的な実験条件が、下記の実施例欄に記載されている。
【0026】
本発明の特に好ましい実施様態においては、この使用するタンパク質がハイドロフォビンである。
【0027】
本発明において、「ハイドロフォビン」とは、一般構造式(I)で表されるポリペプチド類をさす。
【0028】
n−C1−X1-50−C2−X0-5−C3−X1-100−C4−X1-100−C5−X1-50−C6−X0-5−C7−X1-50−C8−Xm (1)
【0029】
式中、Xは20個の天然アミノ酸(Phe、Leu、Ser、Tyr、Cys、Trp、Pro、His、Gin、Arg、Ile、Met、Thr、Asn、Lys、Val、Ala、Asp、Glu、Gly)のいずれかである。式中、X基は、いずれも同一であっても異なっていてもよい。Xの添字は、特定の部分配列X中のアミノ酸の数の数を示し、Cは、システイン、アラニン、セリン、グリシン、メチオニン又はトレオニンを示し、C残基のうち少なくとも4個はシステインであり、及び添字のnとmは、それぞれ独立して0〜500の自然数、好ましくは15〜300の自然数を示す。
【0030】
また、式(I)のポリペプチドは、このタンパク質をガラス表面に塗布して水滴をたらした時、非塗布ガラス表面上の同容量の水滴の接触角と較べて、室温で少なくとも20°、好ましくは少なくとも25°及びさらに好ましくは30°の水滴接触角の増加をもたらすという特徴を有している。
【0031】
1〜C8で表されるアミノ酸は、好ましくはシステインである。しかし、これらは、空間充填量の類似する他のアミノ酸、好ましくはアラニン、セリン、トレオニン、メチオニン又はグリシンで置換されていてもよい。しかし、C1〜C8の位置の、少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、さらに好ましくは少なくとも6個、特に少なくとも7個がシステインである。本発明のタンパク質において、システインは、還元型で存在しても、相互にジスルフィドブリッジを形成していてもよい。 特に好ましくは、分子内にC−Cブリッジを形成していることが好ましく、また、少なくとも1個の分子内ジスルフィドブリッジ、好ましくは2個、さらに好ましくは3個、最も好ましくは4個の分子内ジスルフィドブリッジを形成していることが好ましい。上記のようにシステインが、空間充填量の類似したアミノ酸で置換されている場合、分子内ジスルフィドブリッジを相互に形成しうる対の両方が置換されていることが好ましい。
【0032】
Xで示される位置にシステイン、セリン、アラニン、グリシン、メチオニン又はトレオニンが使用されている場合、上記一般式中の各C位置の番号も、これに伴って変化しうる。
【0033】
好ましくは、一般式(II)のハイドロフォビンの使用が好ましい。
【0034】
n−C1−X3-25−C2−X0-2−C3−X5-50−C4−X2-35−C5−X2-15−C6−X0-2−C7−X3-35−C8−Xm (II)
【0035】
本発明の実施に当たりXとC、およびこれらの添字が上記と同じである場合、添字のnとmはそれぞれ0〜350、好ましくは15〜300であり、これらのタンパク質が上記の接触角変化をもたらし、またCで示される残基のうち少なくとも6個がシステインである。すべてのC残基がシステインであることがさらに好ましい。
【0036】
一般式(III)のハイドロフォビンの使用が特に好ましい。
【0037】
n−C1−X5-9−C2−C3−X11-39−C4−X2-23−C5−X5-9−C6−C7−X6-18−C8−Xm (III)
【0038】
式中、XとC、およびこれらの添字は上記と同じであり、添字のnとmは、それぞれ0〜200であり、これらのタンパク質が上記の接触角変化をもたらし、またCで示される残基のうち少なくとも6個がシステインである。すべてのC残基がシステインであることがさらに好ましい。
【0039】
n残基とXm残基は、ハイドロフォビンに自然に結合するペプチド配列であってもよい。しかし、これらの残基の一方または両方が、自然にはハイドロフォビンと結合しないペプチド配列であってもよい。したがって、これらのXn残基及び/又はXm残基において、自然にハイドロフォビンに起こるペプチド配列が、自然にはハイドロフォビンに起こらないペプチド配列により延長されていてもよい。
【0040】
n残基及び/又はXm残基が自然にはハイドロフォビンに起こらないペプチド配列である場合、これらの配列の長さは、一般的には少なくとも20個のアミノ酸、好ましくは少なくとも35個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも50個のアミノ酸及び、例えば、少なくとも100個のアミノ酸である。これらの配列は、20〜500個のアミノ酸、好ましくは30〜400個のアミノ酸、さらに好ましくは35〜100個のアミノ酸からなる。自然にはハイドロフォビンに結合しないこのような残基を、以降、融合パートナーと称す。このことは、このタンパク質が、少なくとも一種のハイドロフォビン基と一種の融合パートナー基からなる、自然にはこの形で存在しないものであってもよいことを意味する。
【0041】
この融合パートナー基はいろいろなタンパク質から選択可能である。また、単一の融合パートナーがハイドロフォビン基に結合していてもよく、あるいは、複数の融合パートナーが1個のハイドロフォビン基に、例えば、ハイドロフォビン基のアミノ末端(Xn)とカルボキシル末端(Xm)に結合していてもよい。しかし、例えば二つの融合パートナーが、本発明のタンパク質の一箇所(Xn又はXm)に結合していてもよい。
【0042】
特に好適な融合パートナーは、微生物、特に大腸菌又は枯草菌中で自然にできるタンパク質である。このような融合パートナーの例としては、配列yaad(配列番号15と16)、配列yaae(配列番号17と18)、及びチオレドキシンがあげられる。また特に好適なのは、これらの配列のフラグメント又は誘導体であり、上記配列の例えば70〜99%、好ましくは5〜50%の、さらに好ましくは10〜40%の部分配列を含むもの、あるいは、個々のアミノ酸又はヌクレオチドが上記の配列とは異なるものであり、この場合、上記のパーセント比率は異なるアミノ酸の数を意味する。
【0043】
さらに好ましい実施様態においては、この融合ハイドロフォビン、また上記の融合パートナーは、Xn又はXm基として又はそのような基の端末部分として、いわゆる親和性ドメイン(親和性タグ/親和性尾部)を有している。公知のように、これは特定の相補的な基に相互作用を待つアンカー基を有し、タンパク質の処理や精製を容易にさせる。親和性ドメインの例としては、(His)k基、(Arg)k基、(Asp)k基、(Phe)k基又は(Cys)k基があげられ、式中、kは一般に1〜10の自然数である。この基は、好ましくは(His)k基であり、kは4〜6である。この場合、Xn基及び/又はXm基は、このような親和性ドメインのみからなっていてもよく、あるいはハイドロフォビンに自然に結合している、あるいは自然には結合しないXn基又はXm基が、端末親和性ドメインと結合して伸びていてもよい。
【0044】
したがって、本発明においてハイドロフォビン又はそれらの誘導体として用いるタンパク質は、それらのポリペプチド配列中に修飾を含んでいてもよく、そのようの修飾の例としは、グリコシル化、アセチル化、あるいは、例えばグルタールアルデヒドでの化学架橋があげられる。
【0045】
本発明において用いられるハイドロフォビンやその誘導体の特徴の一つは、このようなタンパク質で被覆された表面の性質の変化である。表面の性質の変化は実験的に測定可能であり、例えば、タンパク質を表面に塗布する前後で水滴の接触角の測定して、それらの差を求めることで求めることができる。
【0046】
接触角の測定方法は、原則として当業界の熟練者には公知である。この測定では、室温でガラス板を基板に用いて、5μlの水滴を測定する。接触角の好適な測定方法の正確な実験条件は、実施例の欄で述べる。そのような条件下では、本発明において用いられる融合タンパク質は、このタンパク質をガラス表面に塗布して水滴を落とし接触角を測定すると、非塗布ガラス表面上の同容量の水滴の接触角と較べて、室温で少なくとも20°、好ましくは少なくとも25°、さらに好ましくは30°の水滴接触角の増加をもたらすという特徴を有している。
【0047】
本発明を実施するうえで特に好ましいハイドロフォビンは、dewA、rodA、hypA、hypB、sc3、basf1、basf2などのハイドロフォビン類であり、構造的には下記の配列を有している。これらはまた、その一部又は誘導体であってもよい。複数のハイドロフォビン基が、好ましくは2個又は3個の同一又は異なる構造が、相互に結合するか、相当する適当な天然のハイドロフォビンには結合しないポリペプチド配列に結合していてもよい。
【0048】
本発明において特に好適なのは、融合タンパク質のyaad−Xa−dewA−his(配列番号:20)、yaad−Xa−rodA−his(配列番号:22)又はyaad−Xa−basf1−his(配列番号:24)であり(括弧中のポリペプチド配列番号を示す)、及びそれをコードする核酸配列、特に配列番号19、21、23で表される配列である。さらに好ましくは、yaad−Xa−dewA−his(配列番号20)を用いることができる。配列番号20、22又は24で示されるポリペプチド配列から少なくとも1個〜10個の、好ましくは5個のアミノ酸、さらに好ましくは全アミノ酸の5%のアミノ酸が置換、挿入又は欠失したタンパク質であって、出発タンパク質の生物学的な性質を少なくとも50%保持するものも、特に好ましい実施様態である。このタンパク質の生物学的な性質とは、上述のように、接触角の少なくとも20°の変化を意味する。
【0049】
本発明を実施するうえで特に好適な誘導体は、yaad−Xa−dewA−his(配列番号20)、yaad−Xa−rodA−his(配列番号22)又はyaad−Xa−basf1−his(配列番号24)から、yaad融合パートナーを切断してできる残基である。94個のアミノ酸からなる完全なyaad融合パートナー(配列番号16)に代えて、部分yaad残基を用いることは有益である。切断される残基は、少なくとも20個の、さらに好ましくは少なくとも35個のアミノ酸を含む必要がある。例えば、20〜293個の、好ましくは25〜250個の、さらに好ましくは35〜150個の、例えば35〜100個のアミノ酸なる部分残基が使用される。このようなタンパク質の一例は、yaad40−Xa−dewA−his(配列番号26)であり、これは、40アミノ酸まで切断されたyaad残基である。
【0050】
ハイドロフォビンと融合パートナー又は複数の融合パートナー間の切断部位は、純粋なハイドロフォビンを非修飾状態で(例えば、メチオニンでのBrCN切断、Xa因子切断、エンテロキナーゼ切断、トロンビン切断、TEV切断などにより)放出するのに利用できる。
【0051】
ある融合パートナー、例えばyaad又はyaaeと、複数のハイドロフォビン(異なる配列であってもよい)とから、融合タンパク質を作ることができ、その例としては、DewA−RodA、Sc3−DewA、又はSc3−RodAがあげられる。同様に、ハイドロフォビンのフラグメント(例えば、N末端又はC末端除去物)又は相同性が70%以上である変異タンパク質を用いることもできる。好適なコンストラクトは、いずれの場合も、特定の用途、即ち分離される液相との関係で選択される。
【0052】
本発明において織布の洗浄に用いられるハイドロフォビンは、既知の化学的ペプチド合成、例えばメリフィールド固相合成により製造できる。
【0053】
天然のハイドロフォビンを、天然資源より適当な方法で取り出してもよい。例えば、Wosten et al.、Eur. J Cell Bio. 63、122-129 (1994)又はWO 96/41882を参照。
【0054】
融合パートナーを使用しないタラロマイセス・サーモフィルスからの遺伝子工学的なハイドロフォビンの生産方法が、米国特許2006/0040349に記載されている。
【0055】
融合タンパク質は遺伝子工学的な方法により得ることが好ましく、この際、融合パートナーをコードするある核酸配列、特にDNA配列と、ハイドロフォビン基をコードするものとを結合し、結合した核酸配列を遺伝子発現させて、宿主生物中に所望のタンパク質を産生される。このような製造方法は、例えば、PCT/EP2006/050719に開示されている。
【0056】
上記の製造方法に好適な宿主生物(産生生物)は、原核生物(古細菌を含む)又は真核生物であり、特にハロバクテリアやメタノコッカスなどのバクテリア、真菌類、昆虫細胞、植物細胞及び哺乳類細胞であり、さらに好ましくは特に、大腸菌、枯草菌、巨大菌、コウジカビ、偽巣性コウジ菌、クロカビ、ピチア・パストリス、シュードモナス種、乳酸菌、ハンセヌラ・ポリモルファ、トリコデルマ・レーゼイ、SF9(あるいは関連細胞)である。
【0057】
本発明はまた、調節核酸配列による遺伝子制御下にある、本発明において使用するポリペプチドをコードする核酸酸配列を含む発現コンストラクト、及びこれらの発現コンストラクトの少なくとも一つを含むベクターの利用を提供する。
【0058】
使用するコンストラクトは、好ましくは特定のコード配列の5’上流、プロモーター及び、3’下流、ターミネーター配列、及び必要ならさらにいろいろな調節成分を含み、いずれの場合もこれらが作動可能な状態でコード配列に連結している。
【0059】
本発明において、「作動可能な状態で連結」しているとは、プロモーター、コード配列、ターミネーター、及び必要ならさらなる調節成分が、コード配列の発現において各調節成分が目的とする機能を発揮するように連続的に配列していることをいう。
【0060】
作動可能な状態で連結可能な配列の例としては、標的配列や、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル等があげられる。他の調節成分としては、選択可能なマーカー、増幅信号、複製開始点等があげられる。好適な調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
【0061】
これらの調節配列に加えて、これらの配列の自然な調節領域が実際の構造遺伝子の上流に存在するかもしれないが、必要ならこれらは、遺伝子組換により自然な調節を除き、遺伝子の発現が増加するようにされてきた。
【0062】
好ましい核酸コンストラクトはまた、好ましくは、プロモーターに機能的に連結する1個以上のいわゆる「エンハンサー」配列を有しており、核酸配列の発現が増強されている。また、DNA配列の3’末端には、他の調節成分又はターミネーターなどの好ましい配列をさらに挿入することも可能である。
【0063】
このような核酸は、コンストラクト中に、1個以上のコピー数で存在していてもよい。コンストラクトの選択に望ましいなら、抗生物質耐性マーカー等の他のマーカーや、栄養要求性を与える遺伝子がコンストラクト中に存在していてもよい。
【0064】
そのような調剤中の好ましい調節配列は、例えば、cos、tac、trp、tet、trp−tet、Ipp、lac、Ipp−lac、Iaclq−T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(rhaPBAD)SP6、lambda−PR、又はimlambda−Pプロモーターなどのプロモーター中に存在し、好ましくはグラム陰性バクテリア中で使用される。さらに好ましい調節配列は、例えば、amyやSP02などのグラム陽性プロモーター中や、ADC1、MFalpha、AC、P−60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHなどの酵母又は真菌プロモーター中に存在する。
【0065】
調節に合成プロモーターを使用することも可能である。
【0066】
宿主生物での発現のためには、核酸コンストラクトを宿主中での遺伝子発現を最適とさせるプラスミドやファージ等のベクターに挿入することが好ましい。プラスミドやファージとは異なり、ベクターは、当業界の熟練者には公知である他のすべてのベクターを意味し、その例としては、SV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルス等のウイルスや、トランスポソン、IS成分、プラスミド、コスミド、及び直線状又は環状DNA、及びアグロバクテリウムシステムがあげられる。
【0067】
これらのベクターは、宿主生物中で自律的に複製させてもよいし、染色体を経由して複製させてもよい。好適なプラスミドの例としては、大腸菌では、pLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223−3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、plN−lll”3−B1、tgt11、又はpBdClがあげられ、ストレプトミセス属ではplJ101、plJ364、plJ702、又はplJ361が、バチルス属ではpUB110、pC194、又はpBD214が、コリネバクテリウム属ではpSA77又はpAJ667が、真菌類ではpALS1、plL2、又はpBB116が、酵母では2alpha、PAG−1、YEp6、YEp13、又はpEMBLYe23が、また植物ではLGV23、pGHIac+、pBIN19、pAK2004又はpDH51があげられる。これらのプラスミドは、多様なプラスミドの候補の一部であるにすぎない。他のプラスミドも当業界の熟練者には公知であり、例えば、Cloning Vectors (Eds. Pouwels P. H. et al. Elsevier、Amsterdam-New York-Oxford、1985、ISBN0444904018)に記載されている。
【0068】
この核酸コンストラクトは、他に存在する遺伝子の発現のために、好ましくは、用いる宿主生物や遺伝子(群)に応じて発現が最適となるように選択された発現増強用の3’−及び/又は5’−端末調節配列を有している。
【0069】
これらの調節配列は、遺伝子やタンパク質の発現をうまく制御するようにするためのものである。このことは、宿主生物によっては、遺伝子が誘導によってのみ発現あるいは過剰発現されたり、遺伝子が直ちに発現及び/又は過剰発現されたりすることを意味する。
【0070】
この調節配列又は調節因子は、プラスの影響を与え、導入遺伝子の遺伝子発現を増加させることが好ましい。したがって、プロモーター及び/又はエンハンサーなどの強力な転写シグナルを用いて、これらの調節成分の増幅を転写レベルで行うことが好ましい。また、例えばmRNAの安定性を改善して翻訳を加速することもできる。
【0071】
ベクターの他の実施様態においては、核酸コンストラクト又は核酸を含むベクターを直線状DNAの形で微生物に導入し、宿主生物のゲノムに異形組換え又は相同組換えにより組み込むことも好ましい。この直線状DNAは、プラスミドが直線状となったベクターであっても、単に核酸コンストラクト又は核酸であってもよい。
【0072】
生物内で異種遺伝子をうまく発現させるためには、生物で用いられる「コドン使用頻度」に応じて、核酸配列を変更することが有利である。「コドン使用頻度」は、目的生物の他の既知の遺伝子のコンピュータ解析結果を参照して容易に決定することができる。
【0073】
発現カセットは、適当なプロモーター、適当なコード核酸配列、及びターミネーター信号又はポリアデニル化シグナルを融合して製造される。このために、一般的な組換え及びクローニング法が用いられ、その例は、例えば以下の文献に記載されている。T. Maniatis, E. F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989) and in T. J. Silhavy, M. L. Berman and L. W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984) and in Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)。
【0074】
適当な宿主生物で発現させるには、組換え核酸コンストラクト又は遺伝子コンストラクトを、好ましくは宿主に特異的なベクターに挿入させ、遺伝子を宿主中で好適に発現させる。ベクターは当業界の熟練者には公知であり、例えば、“Cloning Vectors” (Pouwels P. H. et al., eds., Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に記載されている。
【0075】
ベクターを用いて、例えば少なくとも一個のベクターを用いて、形質添加された本発明のハイドロフォビン又はその誘導体の生産に使用可能な組換え微生物を作成することができる。好ましくは、上記の組換えコンストラクトを適当な宿主システムに導入して発現させる。特定の発現システムで上記の核酸を発現させるためには、当業界の熟練者に馴染みのあるクローニング法やトランスフェクション法、例えば共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクション等を用いることが好ましい。好適なシステムが、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubel et al., ed., Wiley Interscience, New York 1997, or Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989 に記載されている。
【0076】
相同型の遺伝子組み換え微生物を作ることも可能である。このためには、使用する遺伝子又はコード配列の少なくとも一部で、適当なら配列を機能的に混乱させるために、少なくとも一個のアミノ酸を欠失、挿入、又は置換させたベクター(「ノックアウト」ベクター)が作られる。この導入される配列が、例えば、関連する微生物由来の、あるいは哺乳類、酵母又は昆虫から由来する相同体であってもよい。あるいは、相同組換えに使用するベクターを、相同組換えの場合、内因性の遺伝子に変異が認められるが、機能性タンパク質を依然としてコードしている(例えば、内因性タンパク質の発現が変化するように上流の調整領域を変えるとができる)ようにすることもできる。本発明において用いられる遺伝子中の変化部分は、相同組換えベクター中に存在する。相同組換え用の適当なベクターの作成は、例えば、Thomas, K. R. and Capecchi, M. R. (1987) Cell 51: 503に記載されている。
【0077】
原則として、あらゆる原核生物又は真核生物が、このような核酸又は核酸コンストラクトの組換え宿主生物として使用できる。使用する宿主生物は、バクテリアや真菌、酵母などの微生物であることが好ましい。グラム陽性又はグラム陰性のバクテリアが好ましく用いられ、好ましくは腸内細菌、シュードモナダセア、リゾビウム、ストレプトミセス又はノカルディア科のバクテリアであり、さらに好ましくは、大腸菌、シュードモナス、ストレプトミセス、ノカルディア、ブルコルデリア、サルモネラ、アグロバクテリウム又はロドコッカス属のバクテリアである。
【0078】
上記の融合タンパク質の製造プロセスで使用する生物は、当業界の熟練者には公知の方法により、宿主生物に応じて成長あるいは培養される。微生物は、一般に、通常糖類などの炭素源と、通常酵母抽出物などの有機窒素源である窒素源と、硫酸アンモニウムなどの塩類と、鉄、マンガン及びマグネシウム塩などの微量成分、及び必要に応じてビタミン類を含む液体培地中で、0〜100℃、好ましくは10〜60℃の温度で、酸素を供給しながら培養される。栄養液のpHを調整して、培養中一定値に維持してもよいし、調整しなくてもよい。培養は、バッチ式、半バッチ式、又は連続式のいずれで行ってもよい。栄養物は培養の開始時に投入してもよいし、半連続的又は連続的に追加してもよい。これらの酵素は、実施例に記載の方法により、生物から単離してもよいし、粗抽出液として反応に用いてもよい。
【0079】
本発明において用いられるハイドロフォビン又はそれらの機能的生物的に活性なフラグメントは、遺伝子組み換え法により生産され、具体的には、ポリペプチド産生微生物を培養し、必要ならタンパク質の発現を誘導し、得られたハイドロフォビンを培養物から単離する。これらのタンパク質は、このようにして必要なら工業的な規模で製造できる。組換え微生物の培養や発酵は、既知の方法で行われる。バクテリアは、例えばTB培地又はLB培地中で、20〜40℃の温度、6〜9のpHで増殖させる。適当な培養条件は、具体的には、例えば、T. Maniatis, E. F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)に記載されている。
【0080】
融合パートナーの存在は、ハイドロフォビンの製造をかなり容易にする。融合ハイドロフォビンは、融合パートナーを持たないハイドロフォビンよりかなり大きな収率で得られる。
【0081】
これらのタンパク質が培養培地中に分泌されない場合は、細胞を破砕し、この溶解物から既知のタンパク質単離方法により生産品を得る。必要に応じて、細胞破砕を、高周波数超音波、フレンチプレスなどでの加圧、浸透圧、洗剤の作用、溶菌酵素又は有機溶剤、ホモジナイザー、あるいは、これらの方法のいくつかを組み合わせて実施する。
【0082】
タンパク質の精製は、既知のクロマトグラフ法、例えばQセファローズクロマトグラフィー等のモレキュラーシーブ・クロマトグラフィー(ゲル濾過)、イオン交換クロマトグラフィー、及び疎水性クロマトグラフィーを、限外濾過、晶出、塩析、透析及び天然ゲル電気泳動などの他の汎用法と組合わせて実施する。好適な方法が、例えば、Cooper, F. G., Biochemische Arbeitsmethoden [Biochemical Techniques], Verlag Walter de Gruyter, Berlin, New York, or in Scopes, R., Protein Purification, Springer Verlag, New York, Heidelberg, Berlinに記載されている。
【0083】
固体支持体上の、特に適当なポリマー上に存在する相補的な基に結合する特定のアンカー基を付与すると、融合ハイドロフォビンの単離と精製が容易となりため、特に有益である。このような固体支持体は、例えばクロマトグラフィーカラムの充填物として使用可能であり、このようにして一般に分離効率を大幅に上げることができる。このような分離工程は、アフィニティークロマトグラフィーとしても知られている。アンカー基を導入するため、上記タンパク質の製造において、特定の核酸配列によりcDNAを延長し、他のタンパク質又は融合タンパク質をコードさせるベクターシステム又はオリゴヌクレオチドを用いることも可能である。精製を容易にするため、修飾タンパク質は、アンカーとして作用するいわゆる「タグ」、例えばヘキサヒスチジンアンカーと呼ばれる修飾を有することが好ましい。ヒスチジンアンカーで修飾された融合ハイドロフォビンは、クロマトグラフィーで精製可能で、例えばニッケルセファローズをカラム充填して精製される。この融合ハイドロフォビンは、その後適当な溶離剤、例えばイミダゾール溶液を用いてカラムから溶離される。
【0084】
簡単な精製工程では、クロマトグラフィーで精製可能である。このためには、適当な方法で、例えばマイクロ濾過又は遠心分離により、まず発酵液から細胞を分離する。次いで、適当な方法、例えば上記の方法により細胞を破砕し、細胞片を封入体から分離する。細胞片は、好ましくは遠心分離で分離する。最後に、封入体を原則として公知の方法で破壊し、融合ハイドロフォビンを放出させる。例えば酸、塩基及び/又は洗浄剤を用いて実施する。本発明において用いられる融合ハイドロフォビンを含む封入体は、一般に、0.1MのNaOH水溶液に、約1時間で完全に溶解する。この簡便法により得られる融合ハイドロフォビンの純度は、総タンパク質量当たり、一般に60〜80重量%である。
【0085】
この簡便精製工程により得られた溶液は、さらに精製することなく本発明の実施に使用できる。ただし、融合ハイドロフォビンを、この溶液から固体として取り出してもよい。これは、例えば凍結乾燥や噴霧乾燥などの原則として公知の方法で行われる。
【0086】
本発明のある好ましい実施様態においては、この単離を噴霧乾燥を用いて行う。噴霧乾燥は、クロマトグラフィーで精製後の溶液を用いて行ってもよいが、封入体の調整の際の簡易精製工程後に得られる溶液を使用することが好ましい。
【0087】
噴霧乾燥を行う前に、必要なら溶液を中和してもよい。pHは7〜9の範囲が、特に有利であった。
【0088】
一般に出発溶液を少し濃縮することが好ましい。出発溶液中の好ましい固体濃度は、最大30重量%である。固体含量が5%を超えると一般に、細かな製品粉末を与える。次いで、この溶液を原則として既知の方法で噴霧乾燥できる。好適な噴霧乾燥装置は市販されている。至適噴霧乾燥条件は、装置の種類や所望の収率により異なる。130〜180℃の供給温度と50〜80℃の排出温度が、ハイドロフォビン溶液に対して好適であった。必要に応じて噴霧乾燥の際に、糖類、マンニトール、デキストラン又はマルトデキストリンなどの助剤を用いてもよい。このような助剤のハイドロフォビンに対する量は、0〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がさらに好ましい。
【0089】
上述のように作成したハイドロフォビンは、融合タンパク質として直接、あるいは融合パートナーを切断除去した「純」ハイドロフォビンとして使用可能である。
【0090】
融合パートナーの除去が望ましい場合は、融合タンパク質のハイドロフォビン基と融合パートナー基との間に切断可能な部位(プロテアーゼの特定認識部位)を導入することが望ましい。適当な切断部位は、特にハイドロフォビン基にも融合パートナー中にも存在しないもので、バイオインフォマチック的な手段で容易に特定できるペプチド配列であることが好ましい。特に好適な例としては、メチオニンでのBrCN切断、Xa因子切断を伴うプロテアーゼ仲介切断、エンテロキナーゼ切断、トロンビン切断、又はTEV切断(タバコエッチウイルスプロテアーゼ)があげられる。
【0091】
本発明の織布洗浄への利用のためには、この界面活性非酵素タンパク質をまず洗剤組成物成分として用い、これを洗浄液に添加する。しかし、この界面活性非酵素タンパク質は洗浄液に別途添加してもよく、また界面活性非酵素タンパク質を含まない洗剤組成物を用いてもよい。別添加の場合、固体状のタンパク質、溶液状のタンパク質、あるいは適当な調合物状のタンパク質として添加してよい。もちろん、上記二種の添加方法を組合わせてもよい。
【0092】
洗浄液中の界面活性非酵素タンパク質の含量は、所望の効果に応じて、当業界の熟練者により決定される。好ましい量は、一般に0.05〜50ppmであり、好ましくは0.1〜30ppm、さらに好ましくは0.2〜20ppm、さらに好ましくは0.5〜10ppm、特に好ましくは1〜6ppmである。
【0093】
本発明の洗剤組成物は、少なくとも一種の洗浄活性物質及び少なくとも一種の界面活性非酵素タンパク質を含んでいる。
【0094】
この少なくとも一種の界面活性非酵素タンパク質は、好ましくは、最初に述べた接触角の変化を引き起こすタンパク質であり、さらに好ましくは少なくとも一種のハイドロフォビンである。もちろん、異なるタンパク質の混合物を用いてもよい。
【0095】
ハイドロフォビンを使用する場合、これらは、「純」ハイドロフォビンの形であるいは上記の融合タンパク質の形で使用される。本発明を実施するうえで有用なものの例としては、yaad−Xa−dewA−his型(配列番号20)の融合タンパク質、yaad−Xa−rodA−his型(配列番号22)の融合タンパク質、又はyaad−Xa−basf1−his型(配列番号24)の融合タンパク質があげられる。特に有用な例としては、完全なyaad融合パートナーを持つyaad−Xa−dewA−his(配列番号20)、又は部分融合パートナーを持つ例えばyaad40−Xa−dewA−his(配列番号26)である。
【0096】
「織布洗浄用の洗剤組成物」とは、文字通りの意味であり、また文字通りの制限を有する。織布洗浄用の洗剤組成物は、例えば、粉末状、粒状、ペレット状、糊状、錠剤状、ゲル又は液体状、通常水溶液(洗浄液)で用いられる。これらの効果は、化学的及び物理化学的過程が複雑にからみ合ったものである。洗剤組成物は、少なくとも一種の洗浄活性物質を含むが、一般的には複数の異なる洗浄活性物質を含み、これらとの相互作用で最適の洗浄効果を発揮する。洗剤組成物中の主な洗浄活性成分としては、特に界面活性剤、ビルダー、コビルダー、漂白剤及び洗剤組成物酵素があげられる。通常の添加物、例えば芳香剤、腐食防止剤、転染防止剤、発泡防止剤、さらに必要に応じて光沢剤を、洗剤組成物の成分として添加してもよい。
【0097】
この界面活性剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、又は両イオン性の界面活性剤のいずれでもよい。
【0098】
適当なノニオン性界面活性剤の例としては、次のものが挙げられる。

−脂肪族アルコールアルコキシレートやオキソアルコールアルコキシレートなどのアルコシキル化C8−C22−アルコール、及びグルベアルコールエトキシレート。ただし、アルコキシル化はエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドで行われる。ブロックコポリマー又はランダムコポリマーが存在していてもよい。少なくとも一種のアルキレンオキシドの量は、アルコール1モル当たり、2〜50mol、好ましくは3〜20molである。好ましいアルキレンオキシドはエチレンオキシドである。これらのアルコールは、好ましくは、10〜18個の炭素原子を有している。
−アルキルフェノールアルコキシレート、特にアルキルフェノールエトキシレート(C6−C14−アルキル鎖と5〜30molのアルキレンオキシド/モルを含む)
−アルキルポリグルコシド(C8−C22−、好ましくはC10−C18−アルキル鎖及び一般的に1〜20個の、好ましくは1.1〜5個のグルコシド単位を含む)
−N−アルキルグルカミド、脂肪酸アミドアルコキシレート、脂肪酸アルカノールアミドアルコキシレート、及びエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドのブロックコポリマー。
【0099】
好適なアニオン性界面活性剤は、次の通りである。
【0100】
−炭素数が8〜22、好ましくは10〜18の(脂肪族)アルコールスルフェート、特にC9−C11−アルコールスルフェート、C12−C14−アルコールスルフェート、C12−C18−アルコールスルフェート、ラルリルスルフェート、セチルスルフェート、ミリスチルスルフェート、パルミチルスルフェート、ステアリルスルフェート、及び獣脂脂肪族アルコールスルフェート
−アルコシキル化C8−C22−アルコールスルフェート(アルキルエーテルスルフェート):この種の化合物は、例えば、C8−C22−、好ましくはC10−C18−アルコールをまず、例えば脂肪族アルコールでアルコキシル化させ、次いでアルコキシル化物を硫酸化する。アルコキシル化には、エチレンオキシドを用いることが好ましい。
−直線状C8−C20−アルキルスルホン酸塩(LAS)、好ましくは直線状C9−C13−アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びC9−C13−アルキルトルエンスルホン酸塩
−アルカンスルホン酸塩、特に、C8−C24−、好ましくはC10−C18−アルカンスルホン酸塩
−C8−C24−カルボン酸のナトリウム及びカリウム塩などの石鹸類
【0101】
アニオン性界面活性剤は、洗剤組成物に、好ましくは塩の形で添加される。好適な塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩などのアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジ(ヒドロキシエチル)アンモニウム塩及びトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウム塩などのアンモニウム塩があげられる。
【0102】
好適なカチオン性界面活性剤としては、次のものが挙げられる。
【0103】
−C7−C25−アルキルアミン;
−N,N−ジメチル−N−(C2−C4−ヒドロキシアルキル)(C7−C25−アルキル)アンモニウム塩;
−アルキル化剤で四級化されたモノ−及びジ(C7−C25−アルキル)ジメチルアンモニウム化合物;
−エステル四級アンモニウム、特に、C8−C22−カルボン酸でエステル化された四級モノ−、ジ−及びトリアルカノールアミン類;
−イミダゾリン四級化合物、特に、式II又はIIIの1−アルキルイミダゾリニウム塩。
【0104】
【化1】

【0105】
なお、式中の変数は次のように定義される。
3は、C1−C25−アルキル基、又はC2−C25−アルケニル基を表し;
4は、C1−C4−アルキル基、又はヒドロキシ−C1−C4−アルキル基を表し;
5は、C1−C4−アルキル基、ヒドロキシ−C1−C4−アルキル基、又はR1−(CO)−X−(CH2m−基(Xは−O−又は−NH−であり、mは2又は3である)を表し、なお、少なくとも一つのR3基がC7−C22−アルキル基である。
【0106】
好適な両イオン性界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート及び両イオン性イミダゾリウム化合物があげられる。
【0107】
洗浄工程において、ビルダー(不均質無機ビルダーHIBともよばれる)は、水の軟化を行う。これらは、そのアルカリ性により洗浄作用を強化し、系内やファイバブリッジ内のカルシウムやマグネシウムイオンを抽出して、洗浄液中での顔料性物質の分散を強化する。
【0108】
好適な無機ビルダーとしては、特に次のものである。
【0109】
−イオン交換性を有する結晶性及び非晶質アルミノケイ酸塩、特にゼオライト: いろいろな種類のゼオライトが好適であり、特にA、X、B、P、MAP及びHS型のゼオライトで、Na型又はNaの一部がLi、K、Ca、Mg又はアンモニウムなどの他のカチオンで置換されたものが好ましい。
−結晶性ケイ酸塩、特に二ケイ酸塩及び層状ケイ酸塩、例えばδ−及びβ−Na2Si25。これらのケイ酸塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩の形で使用可能であり、好ましくはナトリウム塩、リチウム塩、及びマグネシウムケイ酸塩である。
−メタケイ酸ナトリウムや非晶質二ケイ酸塩などの非晶質ケイ酸塩
−炭酸塩及び重炭酸塩:これらは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩の形で使用可能である。好ましくは、ナトリウム、リチウム及びマグネシウムの炭酸塩及び重炭酸塩、特に炭酸ナトリウム及び/又はナトリウムの重炭酸塩
−三リン酸五ナトリウムなどのポリリン酸塩。
【0110】
コビルダーは、ビルダーと共同して作用し、例えば貯槽として、カルシウムやマグネシウムイオンをビルダーより高速で吸収し、これをビルダーに引き渡す。また、これらは結晶の種の上に吸着されて起こる結晶成長に抵抗を示す。
【0111】
好適な有機コビルダーは、特に次のものである。
【0112】
−クエン酸、疎水的に修飾されたクエン酸、例えば、アガリシン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルタール酸、コハク酸、イミドジコハク酸、オキシジコハク酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、アルキル−及びアルケニルコハク酸など、及びアミノポリカルボン酸、e.g.ニトリロ三酢酸、p−アラニン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、セリン二酢酸、イソセリン二酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸及びメチル−及びエチルグリシン二酢酸などの低分子量カルボン酸類、
−アクリル酸やアスパラギン酸のホモポリマー、オリゴマレイン酸、マレイン酸とアクリル酸、メタクリル酸又はC2−C22−オレフィン(例えば、イソブテン又は長分子鎖α−オレフィン)とのコポリマーなどのオリゴマーやポリマーカルボン酸;ビニルC1−C8−アルキルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、C4−C8−アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、及びスチレン。好ましくは、アクリル酸のホモポリマー、及びアクリル酸とマレイン酸のコポリマーである。オリゴマーやポリマーカルボン酸は、酸の形あるいはナトリウム塩の形で使用される。
【0113】
好適な漂白剤の例としては、無機塩類への過酸化水素の付加物、例えば過ホウ酸ナトリウム・一水和物、過ホウ酸ナトリウム・四水和物、及び炭酸ナトリウム過水和物、及びフタルイミド過酸化カプロン酸などの過カルボン酸があげられる。
【0114】
好適な漂白活性剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、p−ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム及びN−メチルモルホリノアセトニトリルメチル硫酸があげられる。
【0115】
洗剤組成物において好ましく用いられる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、オキシダーゼ及びパーオキシダーゼがあげられる。
【0116】
好適な転染防止剤としては、1−ビニルピロリドン、1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン−N−オキシドのホモポリマー、コポリマー及びグラフトポリマー、及び4−ビニルピリジンのホモポリマー及びコポリマーでクロロ酢酸と反応させたものがあげられる。
【0117】
使用する成分の種類と量は、洗剤組成物の用途に応じて当業界の熟練者により決定される。例えば、漂白剤は、通常重質の洗剤組成物には使用されるが、軽質の洗剤組成物には使用されない。洗剤組成物の組成や成分のさらなる詳細については、例えば、“Waschmittel” [洗浄組成物] in Rompp Chemie-Lexikon, Online edition, Version 2.6, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, New York, Febr. 2005, or in “Detergents” in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th Edt., 2000, Electronic Release, Wiley-VCH-Verlag, Weinheim, 2000に記載されている。
【0118】
本発明を実施するうえ好ましい界面活性剤は、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤である。
【0119】
本発明において用いられる界面活性非酵素タンパク質、特にハイドロフォビンは、直線状アルキルベンゼンスルホン酸又は脂肪族アルコールスルフェートと、アルキルエーテルスルフェート又はアルキルアルコキシレートとの組み合わせとともに使用される。
【0120】
8−C18−アルコール及び/又はそれらのアルコキシル化物由来のアニオン性及び/又はノニオン性界面活性剤を、必要に応じて他の界面活性剤と混合して使用することが特に好ましい。これらのアルコキシ基は、エチレンオキシド単位及び/又はプロピレンオキシド単位、好ましくはエチレンオキシド単位を含む基が好ましい。これらは、例えば1〜25個のエチレンオキシド単位、好ましくは3〜20個の及びさらに好ましくは5〜15個の単位を持つ基、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド単位を含む基であり、この場合、後者は、いずれの場合も、全アルコキシ単位の総数に対して少なくとも50mol%、好ましくは60mol%のエチレンオキシド単位を有す必要がある。
【0121】
好ましい界面活性剤の例としては、脂肪族アルコールアルコキシレートなどのアルコシキル化C8−C18−アルコール、オキソアルコールアルコキシレート、グルベアルコールアルコキシレート、C8−C18−アルコールスルフェート、硫酸化アルコシキル化C8−C18−アルコール(アルキルエーテルスルフェート)、又は直線状C8−C18−アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)、好ましくは直線状C9−C13−アルキルベンゼンスルホン酸及びC9−C13−アルキルトルエンスルホン酸塩があげられる。
【0122】
特に好ましいのは、2−プロピルヘプタノール及びトリデカノールのアルコキシル化物、及びそれらの硫酸化物である。
【0123】
洗剤組成物中の界面活性非酵素タンパク質の量は、洗剤組成物の目標性能をもとに当業界の熟練者により決定される。この場合、この量は、好ましくは、指示どおりに洗剤組成物を添加する際に、上記濃度の界面活性非酵素タンパク質が得られるように選定される。
【0124】
洗剤組成物の全成分の総量当たりの界面活性非酵素タンパク質含量は、0.002〜2.5重量%が好適であった。この量は、好ましくは0.01〜1.5重量%であり、さらに好ましくは0.025〜1.0重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%、特に好ましくは0.1〜0.3重量%である。
【0125】
ある好ましい実施様態においては、本発明の洗剤組成物は、0.01〜1.5重量%の界面活性非酵素タンパク質と、0.5〜40重量%の界面活性剤、好ましくはアニオン性及び/又はノニオン性界面活性剤と、59〜99.45重量%の他の洗浄活性添加物又は配合助剤とを含んでいる。
【0126】
使用する成分(c)は、好ましくは、リパーゼ及び/又は両親媒性ポリマー、例えばエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマーである。
【0127】
本発明の洗剤組成物は、原則として当業界の熟練者には公知である方法で製造可能である。洗剤組成物の製造工程の詳細は、例えば、上記の“Rompp Chemie-Lexikon”又は“Ullmann’s”を参照されたい。
【0128】
洗剤組成物を製造するに当たり、本界面活性非酵素タンパク質を溶液で使用しても固体で使用してもよい。固体のタンパク質は、タンパク質の溶液から出発して当業界の熟練者には公知である方法により、例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥により得られる。
【0129】
洗剤組成物の生産に当たり、界面活性非酵素タンパク質にかかる熱的ストレスが問題とならないように注意すべきである。その限度は、もちろんタンパク質の種類により変動する。ハイドロフォビンを使用する場合、製品温度が120℃を超えないようにすることが有益であった。処理温度、例えば、スプレードライヤー中のガス流の温度は、もちろん製品温度が限界値を超えないかぎり、これより高くてもよい。
【0130】
洗剤組成物に各主成分を穏やかに添加する方法は、当業界の熟練者には公知である。粉末状の洗剤組成物は、例えば、第一工程で洗剤組成物中の熱的に安定な成分の水スラリーから噴霧乾燥により粗製品を作り、第二の工程でこの粗製品と熱的感受性の高い成分とを穏やかな条件で混合することにより製造可能である。一般的には、本発明において用いられる界面活性非酵素タンパク質を、この第二の工程で投入することが好ましいが、特に本発明がこれに限定されるわけではない。
【0131】
本発明の織布材料の洗浄方法は、少なくとも、洗浄すべき織布材料と水洗浄液とを洗浄装置に入れ、織布材料と洗浄液からなる混合物に機械的なエネルギーを加え、水洗浄液を除去し、必要に応じて織布材料を洗浄して、織布材料を乾燥させる工程を含んでいる。
【0132】
使用する洗浄装置は、いかなる洗浄機であってもよい。しかし、この用語「洗浄機」は、通常手洗いで用いる容器、例えばたらいや洗面器をも含んでいる。工程(a)では、洗浄装置にまず織布と水洗浄液を満たすが、その順序は重要でない。
【0133】
洗浄液は、一般に公知のように、少なくとも一種の洗浄活性物質を含んでいる。本発明によれば、水洗浄液は少なくとも一種の界面活性非酵素タンパク質を含有している。好ましいタンパク質は上述のとおりである。この界面活性非酵素タンパク質を洗剤組成物に添加してもよいが、別途添加してもよい。洗浄サイクルの初めに添加することが好ましいが、もちろん後で添加してもよい。
【0134】
工程段階(b)の洗浄操作は、既知の方法で、織布材料と洗浄液の混合物に機械的なエネルギーを作用させて行う。機械的なエネルギーは、洗浄機により、例えば回転ドラムによりかけるが、手洗いの場合は、手及び/又は他の補助手段によりかけられる。
【0135】
洗浄操作中の温度は、状況に応じて当業界の熟練者により決定される。例えば、この温度が、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、あるいは100℃であってもよい。本発明のいくつかの特長は、洗浄温度が温和か低い場合に特にはっきり出現する。本発明のある好ましい実施様態においては、洗浄操作が、60℃以下の温度で、特に50℃以下の温度で実施される。本発明の洗浄工程を実施するのに特に好ましい温度範囲は、5〜45℃で、さらに特に好ましいのは15〜35℃で、さらに好ましくは20〜30℃である。
洗浄操作中の界面活性非酵素タンパク質の濃度は、当業界の熟練者により選択される。好ましい濃度範囲は、上に述べたとおりである。
【0136】
本発明の洗剤組成物を通して添加する場合、その濃度は、通常、洗浄液に対して、0.05〜25g/l、好ましくは0.25〜15g/l、さらに好ましくは0.5〜10g/l、さらに好ましくは1〜6g/l、特に好ましくは1.5〜4g/lである。
【0137】
実際の洗浄操作の後、洗浄液は原則として既知の方法で除かれる。通常、織布材料は続いて、一回以上水洗され、最後に乾燥させられる(工程段階(d)と(e))。水洗の間に、織物柔軟剤を添加物として使用してもよい。
【0138】
本発明の方法は、あらゆる種類の織布材料の洗浄に適している。これらは、織布ファイバや半加工織物や加工織物、及びこれらからなる加工後の衣料品であってもよい。これらは、通常の衣料用織物、カーペット、カーテン、テーブルクロスなどの家庭用織物、及び工業用の織布であってもよい。また、フリースなとの不定形構造、撚糸、糸、ヤーン、ライン、ストリング、レース、ニット、コードなどの直線状構造、フェルト、織布、不織布及び詰め綿などの三次元構造であってもよい。織布材料は、綿、羊毛又は亜麻などの天然由来の材料、あるいはポリアクリロニトリル、ポリアミド又はポリエステルなどの合成材料からなっていてもよい。もちろん、混紡織物、例えば綿/ポリエステル又は綿/ポリアミド混紡の織物であってもよい。
【0139】
以下、本発明を実施例を参照しながら説明する。
【0140】
第A部:
本発明において用いられるハイドロフォビンの調整と試験
【0141】
実施例1
yaad−His6/yaaE−His6のクローニングの準備
オリゴヌクレオチドのHal570とHal571(Hal572/Hal573)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応を行った。使用したテンプレートDNAは、バクテリアである枯草菌のゲノムDNAである。得られたPCRフラグメントは、枯草菌yaaD/yaaE遺伝子のコード配列を含み、またNcol及びBgIII制限酵素切断部位をそれぞれ末端に持っていた。PCRフラグメントを精製し、制限酵素のNcolとBgIIIで切断した。このDNAフラグメントをインサートとして用い、制限酵素のNcolとBgIIIで前もって直線化させたキアゲン社のベクターpQE60にクローニングした。このようにして得られたベクターpQE60YAAD#2とpQE60YaaE#5は、YAAD::His6又はYAAE::His6からなるタンパク質の発現に使用できる。
【0142】
Hal570:gcgcgcccatggctcaaacaggtactga
Hal571:gcagatctccagccgcgttcttgcatac
Hal572:ggccatgggattaacaataggtgtactagg
Hal573:gcagatcttacaagtgccttttgcttatattcc
【0143】
実施例2
yaadハイドロフォビンDewA−His6のクローニング

オリゴヌクレオチドのKaM416とKaM417を用いてポリメラーゼ連鎖反応をおこなった。使用したテンプレートDNAは、カビの偽巣性コウジ菌のゲノムDNAである。得られたPCRフラグメントは、ハイドロフォビン遺伝子dewAのコード配列とN−端末Xa因子プロテイナーゼ切断部位とからなっていた。PCRフラグメントを精製し、制限酵素BamHIで切断した。このDNAフラグメントをインサートとして用い、前もって制限酵素BgIIIで直線化させた前記ベクターpQE60YAAD#2にクローニングした。
【0144】
このようにして得られたベクター#508は、YAAD::Xa::dewA::His6からなる融合タンパク質の発現に使用できる。
【0145】
KaM416:GCAGCCCATCAGGGATCCCTCAGCCTTGGTACCAGCGC
KaM417:CCCGTAGCTAGTGGATCCATTGAAGGCCGCATGAAGTTCTCCGTCTCCGC
【0146】
実施例3
yaadハイドロフォビンRodA−His6のクローニング
オリゴヌクレオチドのKaM434とKaM435を用いて、プラスミド#513を、同様にプラスミド#508にクローニングした。
【0147】
KaM434:GCTAAGCGGATCCATTGAAGGCCGCATGAAGTTCTCCATTGCTGC
KaM435:CCAATGGGGATCCGAGGATGGAGCCAAGGG
【0148】
実施例4
yaadハイドロフォビンHypA−His6のクローニング

pQE60中のHypA(#522)のクローニング
【0149】
オリゴヌクレオチドのKaM449とKaM450を用いてPCRを行った。使用したテンプレートDNAは、Nadicom社のプラスミドpCR2.1中のHypAであった。得られたフラグメントは、ハイドロフォビンHypA遺伝子のコード配列を含むが、開始コドン及び停止コドンは持っていなかった。このPCRフラグメントをゲル電気泳動で精製し、制限酵素のNcolとBamHIで切断した。このフラグメントをインサートとして用い、前もってNcolとBgIIIとで直線化されたベクターpQE60に連結した。
【0150】
KaM449:GTTACCCCATGGCGATCTCTCGCGTCCTTGTCGCT
KaM450:GCCTGAGGATCCGAGGTTGACATTGACAGGAGAGC
【0151】
【表1】

【0152】
pQE60+YAAD中のHypA(#523)のクローニング
オリゴヌクレオチドのKaM451とKaM452を用いてPCRを行った。用いたテンプレートDNAは、Nadicom社のpCR2.1のプラスミドHypAであった。得られたフラグメントは、ハイドロフォビンHypA遺伝子コード配列を持っていたが、開始コドンと停止コドンは持っていなかった。このPCRフラグメントをゲル電気泳動で精製し、制限酵素のBgIIIとBamHlで切断した。このフラグメントをインサートとして用い、前もってBgIIIで直線化されたベクターpQE60+YAADに連結した。
【0153】
KaM451:CGTAGTAGATCTATGATCTCTCGCGTCCTTGTCGCTGC
KaM452:CGACTAGGATCCGAGGTTGACATTGACAGGAGAGC
【0154】
【表2】

【0155】
実施例5
yaadハイドロフォビンHypA−His6のクローニング
【0156】
pQE60中のHypB(#524)のクローニング
オリゴヌクレオチドのKaM453とKaM454を用いてPCRを行った。用いたテンプレートDNAは、Nadicom社のpuC19中のプラスミドHypBであった。得られたフラグメントは、ハイドロフォビンHypB遺伝子コード配列を持っていたが、開始コドンと停止コドンは持っていなかった。このPCRフラグメントをゲル電気泳動で精製し、制限酵素のNcolとBamHIで切断した。このフラグメントをインサートとして用い、前もってNcolとBgIIIで直線化されたベクターpQE60に連結した。
【0157】
KaM453:GCTTATCCATGGCGGTCAGCACGTTCATCACTGTCG
KaM454:GCTATAGGATCCCACATTGGCATTAATGGGAGTGC
【0158】
【表3】

【0159】
pQE60+YAAD中のHypB(#525)のクローニング
オリゴヌクレオチドのKaM455とKaM456を用いてPCRを行った。用いたテンプレートDNAは、Nadicom社のpuC19中のプラスミドHypBであった。得られたフラグメントはハイドロフォビンHypB遺伝子コード配列を持っていたが、開始コドンと停止コドンは持っていなかった。このPCRフラグメントをゲル電気泳動で精製し、制限酵素のBgIIIとBamHIで切断した。このフラグメントをインサートとして用い、前もってBgIIIで直線化されたベクターpQE60+YAADに連結した。
【0160】
KaM455:GCTAACAGATCTATGGTCAGCACGTTCATCACTGTC
KaM456:CTATGAGGATCCCACATTGGCATTAATGGGAGTGC
【0161】
【表4】

【0162】
実施例6
yaadハイドロフォビンBASF1−His6のクローニング
オリゴヌクレオチドのKaM417とKaM418を用いて、プラスミド#507を同様にプラスミド#508にクローニングした。
用いたテンプレートDNAは、合成DNA配列−ハイドロフォビンBASF1であった(付録参照)。
【0163】
KaM417:CCCGTAGCTAGTGGATCCATTGAAGGCCGCATGAAGTTCTCCGTCTCCGC
KaM418:CTGCCATTCAGGGGATCCCATATGGAGGAGGGAGACAG
【0164】
実施例7
yaadハイドロフォビンBASF2−His6のクローニング
オリゴヌクレオチドのKaM417とKaM418を用いて、プラスミド#506を同様にプラスミド#508にクローニングした。
用いたテンプレートDNAは、合成DNA配列−ハイドロフォビンBASF2であった(付録参照)。
【0165】
KaM417:CCCGTAGCTAGTGGATCCATTGAAGGCCGCATGAAGTTCTCCGTCTCCGC
KaM418:CTGCCATTCAGGGGATCCCATATGGAGGAGGGAGACAG
【0166】
実施例8
yaadハイドロフォビンSC3 −His6のクローニング
オリゴヌクレオチドのKaM464とKaM465を用いて、プラスミド#526を同様にプラスミド#508にクローニングした。
【0167】
用いたテンプレートDNAは、シゾフィラム・コミューンのcDNAであった(付録参照)。
【0168】
KaM464:CGTTAAGGATCCGAGGATGTTGATGGGGGTGC
KaM465:GCTAACAGATCTATGTTCGCCCGTCTCCCCGTCGT
【0169】
実施例9
組換え大腸菌菌株yaadハイドロフォビンDewA−His6の発酵
15mlのグライナーチューブ中の3 mlのLB液体培地に、yaadハイドロフォビンDewA−His6を発現する大腸菌株を接種する。37°Cで8時間、シェーカー上で200rpmで培養する。いずれの場合も、2個のじゃま板付の1lエルレンマイアーフラスコ中の250 mlのLB培地(+100μg/mlのアンピシリン)に、1mlの前記前培養物を接種し、シェーカー上で180rpmで振盪しながら、37°Cで7時間培養する。20lの培養槽中の13.5lのLB培地(+100μg/mlのアンピシリン)に、0.5lの前培養物(OD600nm 1:10、H2Oを対象に測定)を接種する。OD600nmが約3.5となる時、140mlの100mMのIPTGを添加する。3時間後、培養槽を冷却して10℃とし、発酵液を遠心分離する。さらに精製するには、セルペレットを使用する。
【0170】
実施例10
組換えハイドロフォビン融合タンパク質の精製(C−端末にHis6タグを持つハイドロフォビン融合タンパク質の精製)
100gの細胞ペレット(100〜500mgのハイドロフォビン)を50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で総体積200mlとし、再懸濁させる。この懸濁液を、ウルトラタラックスT25型(ヤンケアンドクンケル社;IKA−ラボテクニック)に10分間かけ、続いて500単位のベンゾナーゼ(メルク社、ドイツ;注文番号1.01697.0001)とともに、室温で1時間培養して、核酸を分解させる。細胞破砕に先立ち、ガラスカートリッジ(P1)で濾過する。細胞破砕と残存ゲノムDNAの切断のため、二回ホモジナイザーサイクルに1500barでかける(マイクロフルイダイザーM−110EH;マイクロフルイディックス社)。このホモジネートを遠心分離し(ソルバールRC−5B、GSA回転子、250ml遠心器カップ、60分間、4℃、12000rpm、23000g)、上澄液を氷冷し、ペレットを100mlのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に再懸濁させた。遠心分離と再懸濁とを三回繰返し、繰返し三度目には、1%のSDSを含むリン酸ナトリウム緩衝液を用いた。再懸濁後、混合物を1時間攪拌し、最後の遠心分離にかけた(ソルバールRC−5B、GSA回転子、250 ml遠心器カップ、60分、4℃、12000rpm、23000g)。SDS−PAGE分析の結果、最後の遠心分離後の上澄液中にハイドロフォビンが認められる(図1)。この試験により、ハイドロフォビンが、相当する大腸菌細胞中に封入体の形で存在しているようであることがわかる。50mlのハイドロフォビン含有上澄液を、50mlの前もって50mMのTris−Cl緩衝液(pH8.0)で平衡化させておいたニッケルセファローズ高性能17−5268−02カラム(アマシャム社)にかける。このカラムを50mMのTris−Cl緩衝液(pH8.0)で洗浄し、ついでハイドロフォビンを、200mMのイミダゾールを含む50mMのTris−Cl緩衝液(pH8.0)で溶離させる。イミダゾールを除くため、溶液を50mMのTris−Cl緩衝液(pH8.0)に対して透析する。
【0171】
図1は、得られたハイドロフォビンの精製を示す。
レーン1:ニッケル−セファローズカラム(1:10希釈)
レーン2:流出=洗浄工程での溶離
レーン3〜5:溶離フラクションのOD280最大値
【0172】
図1のハイドロフォビンの分子量は約53kDである。小さなバンドのいくつかは、ハイドロフォビンの分解生成物である。
【0173】
実施例11
性能試験;ガラス上の水滴の接触角の変化によるハイドロフォビンの評価

基板:
ガラス(窓ガラス、スードドイチェグラス社、ドイツ)
【0174】
実施例10の融合ハイドロフォビンを用いた。
ハイドロフォビン濃度:100μg/mlの水溶液; 添加物:50 mM酢酸ナトリウム(pH4)+0.1%ポリオキシエチレン(20)−モノラウリン酸ソルビタン(ツイーン(R)20).

−ガラス板を一夜保温(温度80℃)、次いで、塗膜を蒸留水中で洗浄。
−次いで、10 min/80℃/1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の蒸留水溶液中で保温。
−蒸留水中で洗浄
【0175】
サンプルを風乾し、5μlの水液滴の接触角(°)を室温で測定する。
【0176】
接触角は、データフィジックス社のOCA15+接触角システム、ソフトウェアSCA20.2.0.(2002年11月)を用いて測定した。測定はメーカの説明書に応じて行った。
【0177】
非処理ガラスでは、接触角が30±5°であり、機能性の実施例8のハイドロフォビン(yaad−dewA−His6)を塗布したものの接触角は75±5°であった。
【0178】
第B部:
界面活性非酵素タンパク質の織布洗浄への利用
試験の概要:
活性の試験のために、市販の試験装置(ランデロメーター、アトラス社、米国)を用いて洗浄試験を行った。試験はいずれも、洗浄液に上記のタンパク質の存否の両方でおこなった。
【0179】
試験には、市販の試験布と自家製の試験布を用いた。
【0180】
【表5】

【0181】
洗浄試験の実施:
上記の試験布より30×30mmの試料を切り出し、非染色の漂白綿編布に縫い付けた。
【0182】
市販の試験布の場合、いずれの場合も、2枚の試験片(50mm×200mm)を、いずれも4枚の異なる縫合試験布(試験布1〜4)又は、いずれも2枚の異なる縫合試験布(試験布5及び6)を5gの白色綿/ポリエステル混紡布とともに、特定の条件下で洗浄した。
【0183】
自家製の試験布の場合、0.1gの着色油脂又は着色油を綿布片(50mm×200mm非染色漂白綿編布)に二滴たらし、50℃で30分間処理した。スダンレッドを着色に用いた。
【0184】
洗浄後、布を250mlの水道水で5分間洗浄し、乾燥した。
【0185】
洗浄効果は、水洗前後の反射率(420nm)を測定して評価した。
【0186】
いずれの場合も、一つの試験は界面活性非酵素タンパク質を添加して行い、もう一試験は、同様な条件、つまりタンパク質が無添加である以外はまったく同一の条件で実施した。
【0187】
結果の表中のパーセント比率は、タンパク質を添加した試験では、タンパク質無添加の試験に比べ洗浄効果が増加していることを示している。なお、この比率は次式で計算される。
【0188】
洗浄効果の増加率[%]=(IE−IOE)/(Iwhite−IA)×100
【0189】
Eは、いずれの場合も、試験洗浄後の試験布の反射率を示し、IAは、試験洗浄実施前の反射率である。0は、本発明でタンパク質が無添加の比較試験をさす。Iwhiteは、汚れのないきれいな布の反射率を示す。
【0190】
汚れの再付着を、いずれの場合も試験タンパク質の添加の有無の両試験で、汚れのないきれいな布の洗浄前後の反射率を比較して評価した。
【0191】
実施例12:

試験の変数:
使用のタンパク質 ハイドロフォビン融合タンパク質yaad−Xa−dew
A−his(配列番号:19)
タンパク質濃度: 表1参照
洗剤組成物 市販の粉状洗剤組成物(ホワイトキャット、中国、2003)
洗浄液の量 一缶当たり250 ml
洗浄組成物の量 2.0g/l
液比 20:1
水硬度 2.5mmol/l (Ca:Mgモル比=3:1)
洗浄温度 25℃
洗浄時間 30分間
【0192】
タンパク質を希釈し水溶液として添加した。上記の試験概要にしたがって試験洗浄を実施し、評価した。その結果を表1にまとめて表示する。
【0193】
実施例13:

試験の変数:
使用のタンパク質 ハイドロフォビン融合タンパク質yaad−Xa−dew
A−his(配列番号:19)
タンパク質濃度: 表1参照
洗剤組成物 市販の粉末状の洗浄組成物(アリエール、中国、2004、プロクタ
ーアンドギャンブル社)
洗浄液の量 一缶250ml
洗浄組成部の量 2.0g/l
液比 20:1
水硬度 2.5mmol/l (Ca:Mgモル比= 3:1)
洗浄温度 25℃
洗浄時間 30分間
【0194】
上記の試験概要にしたがって試験洗浄を実施し、評価した。その結果を表1にまとめて表示する。
【0195】
【表6】

【0196】
すべての試験で、大幅な洗浄効果の増強が見られた。
【0197】
実施例14:
以下の試験洗浄では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びビルダーを含む、洗剤組成物用の基本製剤を使用した。

試験の変数:
使用のタンパク質 ハイドロフォビン融合タンパク質yaad40−Xa−dew
A−his(配列番号:26)
タンパク質濃度: 表2参照
アニオン性界面活性剤 400ppmのC12/14−脂肪族アルコール硫酸ナトリウム
ノニオン性共界面活性剤 いずれの場合も、30ppmのC13/15−オキソアルコールエ
トキシラート、アルコキシラート基の種類については表2を参

ビルダー 250ppmの炭酸ナトリウム
洗浄液量 一缶250ml
液比 20:1
水硬度 2.5mmol/l (Ca:Mgモル比= 3:1)
洗浄温度 25℃
洗浄時間 30分間
【0198】
上記の試験概要にしたがって試験洗浄を実施し、評価した。その結果を表2にまとめて表示する。
【0199】
【表7】

【0200】
実施例15:
以下の試験洗浄では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びビルダーを含む、洗剤組成物用の基本製剤を使用した。

試験の変数:
使用のタンパク質 タンパク質A:
ハイドロフォビン融合タンパク質yaad−Xa−dew
A−his(配列番号:19)
タンパク質B:
ハイドロフォビン融合タンパク質yaad40−Xa−dew A−his(配列番号:26)
タンパク質濃度: 表3参照
アニオン性界面活性剤 400ppmのN−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
共界面活性剤 いずれの場合も、30ppm、種類は表3参照
ビルダー 250ppmの炭酸ナトリウム
洗浄液量 一缶250ml
液比 20:1
水硬度 2.5mmol/l(Ca:Mgモル比=3:1)
洗浄温度 25℃
洗浄時間 30分間
【0201】
上記の試験概要にしたがって試験洗浄を実施し、評価した。その結果を表3にまとめて表示する。
【0202】
【表8】

【0203】
すべての試験で、大幅な洗浄効果の増強が見られた。いずれの場合も、部分yaad融合パートナー(B)(40アミノ酸)を有する融合ハイドロフォビンは、完全なyaad融合パートナー(A)(294アミノ酸)を有する融合ハイドロフォビンより良好な結果を与えた。
【0204】
配列表中のDNA及びポリペプチド配列と配列番号の相関
【0205】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】図1は、得られたハイドロフォビンの精製を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性非酵素タンパク質の織布洗浄への利用方法。
【請求項2】
前記タンパク質が、ガラス表面に室温で塗布すると、その上に落とした水滴の接触角が、非塗布ガラス表面における同体積の水滴の接触角に比べ、少なくとも20°増加することを特徴とする請求項1に記載の利用方法。
【請求項3】
前記タンパク質がハイドロフォビンである請求項2に記載の利用方法。
【請求項4】
前記タンパク質が融合ハイドロフォビンであり、その融合パートナーが20〜500個のアミノ酸を含む請求項3に記載の利用方法。
【請求項5】
前記ハイドロフォビンが、yaad−Xa−dewA−his(配列番号20)、yaad−Xa−rodA−his(配列番号22)又はyaad−Xa−basf1−his(配列番号24)からなる群から選択される少なくとも一種である(ただし、yaadは、いずれの場合も、20〜293個のアミノ酸を有する部分yaad融合パートナーであってもよい)請求項3に記載の利用方法。
【請求項6】
前記タンパク質の洗浄液中の使用濃度が、0.05〜50ppmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の利用方法。
【請求項7】
前記タンパク質が、アニオン性及び/又はノニオン性界面活性剤と組合わせて使用され、これらの界面活性剤が直線状アルキルベンゼンスルホン酸又は脂肪族アルコールスルフェートとアルキルエーテルスルフェート又はアルキルアルコキシレートとの組み合わせを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の利用方法。
【請求項8】
少なくとも一種の洗浄活性物質を含み、該洗剤組成物がさらに少なくとも一種の界面活性非酵素タンパク質を含むことを特徴とする織布洗浄用の洗剤組成物。
【請求項9】
前記タンパク質が、ガラス表面に室温で塗布すると、その上に落とした水滴の接触角が、非塗布ガラス表面における同体積の水滴の接触角に比べ、少なくとも20°増加することを特徴とする請求項8に記載の洗剤組成物。
【請求項10】
前記タンパク質がハイドロフォビンである請求項9に記載の洗剤組成物。
【請求項11】
前記タンパク質が融合ハイドロフォビンであり、その融合パートナーが20〜500個のアミノ酸からなる請求項10に記載の洗剤組成物。
【請求項12】
前記ハイドロフォビンが、yaad−Xa−dewA−his(配列番号20)、yaad−Xa−rodA−his(配列番号22)又はyaad−Xa−basf1−his(配列番号24)からなる群から選択される少なくとも一種である(ただし、yaadは、いずれの場合も、20〜293個のアミノ酸からなる部分yaad融合パートナーであってもよい)請求項11に記載の洗剤組成物。
【請求項13】
前記界面活性非酵素タンパク質の量が、洗剤組成物の全成分に対して0.002〜2.5重量%である請求項8〜12のいずれか1項に記載の洗剤組成物。
【請求項14】
(a)0.01〜1.5重量%の界面活性非酵素タンパク質と、
(b)0.5〜40重量%の界面活性剤と、
(c)59〜99.45重量%の他の洗浄活性添加物又は配合助剤とを含む
請求項13に記載の洗剤組成物。
【請求項15】
前記界面活性剤が、アニオン性及び/又はノニオン性界面活性剤である請求項14に記載の洗剤組成物。
【請求項16】
前記の界面活性剤が直線状アルキルベンゼンスルホン酸又は脂肪族アルコールスルフェートとアルキルエーテルスルフェート又はアルキルアルコキシレートとの組み合わせを含む請求項15に記載の洗剤組成物。
【請求項17】
少なくとも以下の
(a)洗浄装置に洗浄すべき織布材料と水洗浄液とを満たす工程と、
(b)織布材料と洗浄液との混合物に機械的なエネルギーをかける工程と、
(c)水洗浄液を除き、必要に応じて織布材料を水洗する工程と、及び
(d)その織布材料を乾燥する工程とを含む
(ただし、水洗浄液は少なくとも一種の界面活性非酵素タンパク質を含む)
ことを特徴とする織布材料の洗浄方法。
【請求項18】
前記タンパク質が、ガラス表面に室温で塗布すると、その上に落とした水滴の接触角が、非塗布ガラス表面における同体積の水滴の接触角に比べ、少なくとも20°増加することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質がハイドロフォビンである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質が融合ハイドロフォビンであり、その融合パートナーが20〜500個のアミノ酸からなる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ハイドロフォビンが、yaad−Xa−dewA−his(配列番号20)、yaad−Xa−rodA−his(配列番号22)又はyaad−Xa−basf1−his(配列番号24)からなる群から選択される少なくとも一種である(ただし、yaadは、いずれの場合も、20〜293個のアミノ酸からなる部分yaad融合パートナーであってもよい)請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質が、アニオン性及び/又はノニオン性界面活性剤と組合わせて使用され、これらの界面活性剤が直線状アルキルベンゼンスルホン酸又は脂肪族アルコールスルフェートとアルキルエーテルスルフェート又はアルキルアルコキシレートとの組み合わせを含む請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記洗浄操作が60℃以下の温度で行われる請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記洗浄操作が5〜45℃の温度で行われる請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記洗浄操作が15〜35℃の温度で行われる請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質の洗浄液中の使用濃度が、0.05〜50ppmである請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−503280(P2009−503280A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524490(P2008−524490)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064720
【国際公開番号】WO2007/014897
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】