説明

留め具打込み機

【課題】良好な構造的大きさを備えた、留め具打込み機。
【解決手段】回転モータ16、特に、電動モータと、弾性的に圧縮できるガス室9を有するガス・スプリング8と、打撃ピストン5と、からなる打込み機に関し、ガス・スプリング8は、モータを有する締付け装置10によって張力をかけられ、張力をかけられた状態から解放されて、打撃方向に打撃ピストン5を加速するようにしてあり、当該締付け装置10の少なくとも1部分は、締付けられたスプリングのガス室内に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留め具打込み機、特に手持ち式の留め具打込み機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、釘を工作物に打込むための留め具打込み機を説明しており、ガス・スプリング(ガスバネ)は、電動モータによってあらかじめ締付けられ、打撃ピストンを駆動する。スプリングの締付けは、スピンドル、レバーまたはケーブルの牽引力により、異なる形式で実行し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第19629762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、良好な構造的大きさを備えた、留め具打込み機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
打込み機のこの目的は本発明により成し遂げられる。締付け装置の少なくとも一部分をガス室内に配置することによって、構造的な大きさをかなり減少させることができる。本発明で意味する弾性的に圧縮できるガス室は、ガス・スプリングの締付けの過程で、その圧力が上昇するガス室であると理解される。
【0006】
本発明の可能な態様の1つにおいては、締付け装置およびモータはガス室内に位置する。この態様において、モータは電動モータであることが特に好ましく、ガス室への電気的接続配線の1つのみを封止すればよいので、詳細設計上好都合である。
【0007】
本発明の好ましい態様の特に1つにおいては、モータはガス室の外側に位置する。これは、簡単な構成を可能にし、かつモータは外気によって容易に冷却され得る。
【0008】
簡単で信頼性が高い実装例では、締付け装置はそのために回転可能なシャフトを介してモータと接続しているのが好ましく、ガス室を封止するシャフト・シーリングはそのシャフトに配置される。ガス圧に対するシャフトの封止は、簡単な方法、例えば1以上のOリングでできる。
【0009】
締付け装置には、スピンドル、好ましくはボール循環式スピンドル、を備えるようにすることが通常好都合である。ボール循環式スピンドルは、回転動作から線形の締付け動作への変換を大いに強化できる低摩擦化を可能とする。有利な詳細設計においては、スピンドルはガス室内にあり、力はスピンドルからスプリングへ単に移転する。そして、コンパクトな設計の打込み機が可能となる。
【0010】
代わりのまたは補完的な態様においては、モータおよびスピンドルは直接接続している。このスピンドルは、モータの回転式車軸上で動作するのが好ましい。直接接続とは、モータとスピンドルの間にギアは設けられていないことを意味するものと理解される。例えば、スピンドルのボール循環式ナットは、直接モータのローターと接続することができ、そしてモータの回転軸周りに回転できる。必ずというわけではないが、このような構成がガス室に完全に一体化されるのであれば、これは好ましい。
【0011】
これに代わる態様では、モータおよびスピンドルはギア要素を介して接続している。簡単で低コストな方法では、これは歯車機構、ベルトドライブ、例えば、歯付ベルトドライブでよく、これにより、同時に、所望の伝達が可能である。モータはそのためにスピンドルの近くに位置することができ、それにより空間の経済的利用が図られる。
【0012】
本発明の可能な態様の1つにおいては、ガス・スプリングは、弛緩した状態において、1バーより大きなガス圧を備えている。このような高圧なガス・スプリングでは、圧縮比は低圧なガス・スプリングと比較して減少する。したがって、エネルギー密度は増し、そして、ある状況の下では、圧縮による発熱は減る。このガス・スプリングは、弛緩した状態において3バーより大きなガス圧を備えているのが好ましく、特別な場合10バーより大きい。特に好ましい1つの態様においては、ガス・スプリングは、弛緩した状態において、30バーより大きい、好ましくは、50バーを超えるガス圧を備える。
【0013】
本発明の可能な態様の1つにおいて、打込み機は、ガス・スプリングのガスの温度を測定するための温度センサーを備えている。温度センサーは、ガス室内に位置するのが好ましい。特に希望する場合には、打込み機は、温度センサーにより測定される温度の関数としてガス・スプリングの締付けストロークを調整する、制御部を備えている。このようにして、例えばモータからの発熱による、ガスの望ましくない温度のばらつきを補正できる。それは、さもないと、駆動エネルギーに影響を与えることとなる。
【0014】
本発明の可能な態様の1つにおいて、ガス・スプリングの緩和動作はモータを用いて遅らせることができる。
【0015】
本発明の別の特徴および利点は、実施例から、そして従属クレームから導き出すことができる。以下、本発明の2つの好ましい実施例が、添付の図面を用いて、更に詳細に示され、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施例の概略断面図を示す。
【図2】ガス室内にモータがある、本発明の第2の実施例の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の、そして、図1の実施例の打込み機は、操作者のための、グリップ部2および作動要素3を有する外部ハウジング1を含む。釘マガジン4は工作物側の端部に位置し、釘マガジン4からの釘は、出口6を通り打撃ピストン5によって工作物に打込まれる。
【0018】
打込みロッド7は、打撃ピストン5に配置され、打撃ピストン5は、ガス・スプリング8の円筒形部分8aの内壁に対してシーリング5aにより封止されている。ガス・スプリング8は、ハウジング壁8a、8bに囲まれた、閉じたガス室9を備える。ガス室9にある空気は、図1では発射ピストン5の右方向への偏向によって、弾性力をもって圧縮され得る。
【0019】
本発明によると、ガス・スプリングに張力をかけるための締付け装置10は、部分的にガス室9内にある。締付け装置10は、スピンドル、ねじ付きシャフト11を有する、ボール循環式スピンドルおよびボール循環式ナット12を備える。ボール循環式ナット12は、固定で回転可能なように取り付けられ、同様に気室9内に位置するベルトドライブ13により、歯車要素を介して回転できる。
【0020】
ベルトドライブ13のディスクは非回転可能にボール循環式ナット12に接続し、そして別のディスクはシャフト14に着座するが、そのシャフト14は、ガス室の壁8bを貫通する。シャフト14はこの部位で支えられ、特に、シーリング15により封止される。
【0021】
シャフト14は、ガス室の外側に位置する電動モータ16に案内され、そのモータ手段によって、スピンドル11のボール循環式ナット12は、ベルトドライブ13を介して最終的に駆動される。電動モータは、電子制御部ユニット18を介してエネルギー蓄積ユニット119と接続している。この制御ユニットは、さらに、スイッチとしての作動要素3と接続している。
【0022】
さらに、スピンドル11は、その前端で、カップリング17を介して、着脱可能に打撃ピストン5と接続している。スピンドルは、後部、対向する端部に、ロック19を備え、それは弛緩状態において、着脱可能なように、係止片20に係止できる。係止片20は、ハウジング壁8bの、狭い円筒状の突出部21の端に位置する。ガス・スプリング8に張力をかけると、ガス室9内のガスが圧縮され、打撃ピストン5は、それに接続されるスピンドル11とともに右へ移動し、そこでスピンドルは突出部21へ入り込む。締付け動作の最後に、ロック19は係止片20に係止され、スピンドルが保持される。
【0023】
この弛緩状態から、打撃ピストンは、カップリング17を緩めることにより放出され、左に加速され、打ち込みロッド7を介して釘を工作物に打ち込む。カップリングは、既知の方法により、例えば、スピンドル11を張力をかけられた位置から放出ストップまたは類似のものに向かってさらに動かすことによって、分離され得る。カップリングの分離は、作動要素3の作動によって始めることができる。解放または打込みの後、スピンドルはもう一度その本来の位置へ移動し、カップリング17は打撃ピストン5に係止される。
【0024】
さらにまた、打込み機は、ガス・スプリング8のガスの温度測定のための温度センサー22を備えており、それはガス室9の中に位置する。電子制御部ユニット18は、温度センサーにより測定されるガスの温度の関数として、ガス・スプリング8の締付けストロークを制御する。
【0025】
図2に示される実施例において、同じ参照符号は同じ意味を持つものとして使われている。図1による実施例とは逆に、スピンドル11だけでなく、電動モータ16もガス室9内に位置する。図2は、打ち込み機全体ではなく、むしろガス・スプリング8、打撃ピストン5、7および締付け装置10を有する装置のみを示している。示されているのは、最大限に右へ移動した打撃ピストン5による、張力がかけられた状態である。スピンドル11、12、スピンドル軸受け12aおよびカップリング17からなる、締付け装置10は、この例では完全にガス室9内にある。
【0026】
ボール循環式ナット12は、電動モータ16のローター16aと直接接続している。スピンドル11は、モータ16の中央を通って延び、その回転軸に共直線的(colinearly)に動作する。
【0027】
本実施例において、ガス室9のハウジング8a、8bに対して移動する機械部分の封止は必要とされない。いずれにせよ、電気接続配線のガス漏れのないフィードスルーが設けられなければならない(図示せず)。
【符号の説明】
【0028】
1 外部ハウジング
2 グリップ・プレート
4 釘マガジン
5 打撃ピストン
6 出口
7 打込みロッド
8 ガス・スプリング
9 ガス室
10 締付け装置
11 ねじ付シャフト
12 ボール循環式ナット
13 ベルトドライブ
14 シャフト
15 シーリング
16 電動モータ
17 カップリング
19 ロック
20 係止片
21 突出部
22 温度センサー
119 エネルギー蓄積ユニット





【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転モータ(16)、特に、電動モータと、
弾性的に圧縮できるガス室(9)を有するガス・スプリング(8)と、
打撃ピストン(5)とからなり、
当該ガス・スプリング(8)は、当該モータを有する締付け装置(10)によって、張力をかけられ、その張力をかけられた状態から解放されて打撃方向に打撃ピストン(5)を加速するようにした、
打込み機であって、
当該締付け装置(10)の少なくとも1部分は、締付ける当該ガス・スプリングのガス室内に位置する、
ことを特徴とする打込み機。
【請求項2】
前記締付け装置(10)および前記モータ(16)は、前記ガス室(9)内に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の打込み機。
【請求項3】
前記モータ(16)は、前記ガス室の(9)外に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の打込み機。
【請求項4】
締付け具は、回転可能なシャフト(14)を介して前記モータ(16)に接続しており、前記ガス室(9)を封止するシャフト・シーリング(15)が、当該シャフト(14)に設けられる、ことを特徴とする請求項3に記載の打込み機。
【請求項5】
前記締付け装置(10)は、スピンドル(11、12)、特に、ボール循環式スピンドルを備える、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の打込み機。
【請求項6】
前記スピンドル(11、12)は、前記ガス室(9)内に位置する、ことを特徴とする請求項5に記載の打込み機。
【請求項7】
前記モータ(16)および前記スピンドル(11、12)は直接接続しており、特に、前記スピンドル(11、12)は前記モータの回転軸上に延びる、ことを特徴とする請求項6に記載の打込み機。
【請求項8】
前記モータ(16)および前記スピンドル(11、12)は、ギア要素(13)、特に段差歯車またはベルトドライブ、を介して接続しており、特に前記モータ(16)は、前記スピンドル(11、12)に隣接して位置する、ことを特徴とする請求項6に記載の打込み機。
【請求項9】
ガス・スプリングは、弛緩状態において、1バーより大きな、特に3バーより大きな、特に10バーより大きな、特に30バーより大きな、ガス圧を備えている、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の打込み機。
【請求項10】
前記打込み機は、前記ガス・スプリングのガス温度の測定のための温度センサーを備える、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の打込み機。
【請求項11】
前記温度センサーは、前記ガス室内に位置する、ことを特徴とする請求項10に記載の打込み機。
【請求項12】
前記打込み機は、前記温度センサーにより測定される温度の関数として、前記ガス・スプリングの締付けストロークを調整する制御部を備えている、ことを特徴とする請求項10に記載の打込み機。
【請求項13】
ガス・スプリングの弛緩する動作を、モータを用いて遅くできる、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の打込み機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−240193(P2012−240193A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−106632(P2012−106632)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
【Fターム(参考)】