説明

留め具

【課題】 接続部の湾曲に方向性がなくなることにより、取付作業を作業性よく行うとができ、接続部の強度を低下させないようにした留め具を提供する。
【解決手段】 頭部12と、この頭部12に下側へ突出させて設けられた接続部14と、この接続部14に下側へ突出させて設けられた脚部15と、この脚部15に側方へ突出させて設けられた係合部16とを一体成形した留め具11において、接続部14を、弾性変形可能な略円柱形状にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車両の後部座席にヘッドレストをオプションとして取り付けるための挿入孔を、閉塞するために使用する留め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した留め具として、頭部と、この頭部に下側へ突出させて設けられた弾性変形可能な接続部と、この接続部に下側へ突出させて設けられた脚部と、この脚部に側方へ突出させて設けられた係合部とを一体成形したものが提案されている。
【特許文献1】実公平2−31631号公報
【0003】
この留め具は、ヘッドレスト取付具の円筒部に設けられている挿入孔の軸線と、ヘッドレスト取付具のフランジ部の上面とが直交していなくとも、挿入孔内へ脚部、係合部および接続部を挿入して係合部を円筒部の内周面に係合させるとともに、接続部を湾曲させることにより、挿入孔を閉塞することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の留め具は、接続部の平断面形状が長方形とされているので、接続部の湾曲方向に方向性があるため、接続部の湾曲方向を確認しながら挿入孔内へ接続部などを挿入しなければならず、取付作業を作業性よく行うことができなかった。
また、接続部に水平方向へ延びる凹部が設けられているので、この凹部によって接続部の強度が低下していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、以下のような発明である。
(1)頭部と、この頭部に下側へ突出させて設けられた接続部と、この接続部に下側へ突出させて設けられた脚部と、この脚部に側方へ突出させて設けられた係合部とを一体成形した留め具において、前記接続部を、弾性変形可能な略円柱形状にしたことを特徴とする。
(2)(1)に記載の留め具において、前記接続部と前記頭部または前記脚部との接合部分を、前記接続部側から前記頭部側または前記脚部側へ徐々に外径が大きくなるように形成したことを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載の留め具において、前記頭部に、前記脚部が当接することによって前記接続部が過度に湾曲変形するのを規制する湾曲規制部分を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、接続部を、弾性変形可能な略円柱形状にしたので、接続部の湾曲に方向性がなくなることにより、取付作業を作業性よく行うとができる。
また、接続部には断面積を減少させるものが設けられていないので、接続部の強度が低下しなくなる。
そして、接続部と頭部または脚部との接合部分を、接続部側から頭部側または脚部側へ徐々に外径が大きくなるように形成したので、接続部の湾曲によって接合部分に亀裂が発生するのを防止することができ、耐久性が向上する。
さらに、頭部に、脚部が当接することによって接続部が過度に変形するのを規制する湾曲規制部分を設けたので、接続部の湾曲を規制して接続部の損傷を防止することができ、耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1はこの発明の第1実施例である留め具を下側から見た斜視図、図2はこの発明の第1実施例である留め具の正面図、図3はこの発明の第1実施例である留め具の平面図、図4はこの発明の第1実施例である留め具の底面図、図5はこの発明の第1実施例である留め具の右側面図、図6は図2のA−A線による断面図である。
なお、留め具の裏面図は正面図と同じになり、また、留め具の左側面図は右側面図と同じになる。
【0008】
これらの図において、11は合成樹脂製の留め具を示し、頭部12と、この頭部12に下側へ突出させて設けられた、弾性変形可能な円柱形状の接続部15と、この接続部15に下側へ突出させて設けられた、円柱の対向する部分を軸方向へ切断した平面視Iカット状の視脚部16と、この脚部16の円弧面に側方へ対向させ、上側へ拡開するように突出させて設けられた複数の係合部17とを一体成形して構成されている。
【0009】
上記した頭部12は、平面視円形で、側面視球の極付近を切断した形状の頭部フランジ13と、この頭部フランジ13に下側へ突出させて設けられ、脚部16が当接することによって接続部15が過度に湾曲変形するのを規制する円柱形状の湾曲規制部分14が設けられている。
そして、湾曲規制部分14の下側に、接続部15が設けられている。
【0010】
上記した接続部15の湾曲規制部分14との接合部分15aは、接続部15側から湾曲規制部分14側へ徐々に外径が大きくなるように形成され、また、接続部15の脚部16との接合部分15bは、接続部15側から脚部16側へ徐々に外径が大きくなるように形成されている。
なお、各部は、中心線が同一直線上に位置するように連設されている。
【0011】
図7はこの発明の第2実施例である留め具を下側から見た斜視図、図8はこの発明の第2実施例である留め具の正面図、図9はこの発明の第2実施例である留め具の平面図、図10はこの発明の第2実施例である留め具の底面図、図11はこの発明の第2実施例である留め具の右側面図、図12は図8のA−A線による断面図、図13は図8のB−B線による断面図である。
なお、留め具の裏面図は正面図と同じになり、また、留め具の左側面図は右側面図と同じになる。
【0012】
これらの図において、11Aは合成樹脂製の留め具を示し、頭部12Aと、この頭部12Aに下側へ突出させて設けられた、弾性変形可能な円柱形状の接続部15と、この接続部15に下側へ突出させて設けられた脚部16Aと、この脚部16Aに側方へ対向させ、上側へ拡開するように突出させて設けられた複数の係合部17とを一体成形して構成されている。
【0013】
上記した頭部12Aは、平面視円形で、側面視球の極付近を切断した形状の頭部フランジ13と、この頭部フランジ13に下側へ突出させて設けられ、脚部16Aが当接することによって接続部15が過度に湾曲変形するのを規制する円柱形状の湾曲規制部分14Aが設けられている。
そして、湾曲規制部分14Aの上端部分には、円周方向へ90度分割で、4つの肉抜き凹部14aが頭部フランジ13に接して設けられている。
なお、湾曲規制部分14Aの下側に、接続部15が設けられている。
【0014】
上記した接続部15の湾曲規制部分14Aとの接合部分15aは、接続部15側から湾曲規制部分14A側へ徐々に外径が大きくなるように形成され、また、接続部15の脚部16Aとの接合部分15bは、接続部15側から脚部16A側へ徐々に外径が大きくなるように形成されている。
【0015】
上記した脚部16Aには、係合部17が設けられていない対向する平面に、それぞれ肉抜き凹部16aが設けられている。
なお、各部は、中心線が同一直線上に位置するように連設されている。
【0016】
図14はこの発明の第1実施例である留め具の使用状態を示す説明図、図15は図14の要部を拡大した説明図である。
【0017】
図14または図15において、21は乗用自動車の後部座席を示し、後述するヘッドレスト取付具31を取り付けるための、係止段部22aを有した取付穴22が、後側へ、例えば、傾斜角20度で下降する上端面に上下方向に設けられている。
31はヘッドレスト取付具を示し、外径が取付穴22の内径とされた円筒部32と、この円筒部32の上端外周に円筒部32の軸と70度(110度)で交差するフランジ部34とで構成されている。
そして、円筒部32の下端部分の外周に、取付穴22の係止段部22aに係合する係合爪33が設けられている。
35はヘッドレスト取付具31に設けられている、アームレストのポールが挿入される挿入孔を示す。
【0018】
次に、ヘッドレスト取付具31の後部座席21への取付について説明する。
まず、後部座席21の取付穴22の延長上に係合爪33を下側にしてヘッドレスト取付具31を位置させるとともに、後部座席21の上端面の傾斜にフランジ部34の傾斜を一致させる。
次に、係合爪33側から取付穴22内へヘッドレスト取付具31を圧入させると、係合爪33で押されることにより、取付穴22の周囲が一時的に自身の弾性によって拡開するので、係合爪33および円筒部32を取付穴22内へ圧入させることができる。
そして、フランジ部34が後部座席21の上端面に当接する状態になるまで係合爪33および円筒部32を取付穴22内へ圧入すると、係合爪33が係止段部22aに係合することにより、ヘッドレスト取付具31を後部座席21から外れないように取り付けることができる。
【0019】
次に、留め具11のヘッドレスト取付具31への取付について説明する。
まず、図14に示すように、ヘッドレスト取付具31の挿入孔35の延長線上に脚部16を下側にして留め具11を位置させる。
次に、脚部16側から挿入孔35内へ留め具11を圧入させると、係合部17が円筒部32の内面で押されることによって内側へ撓むことにより、脚部16および係合部17を挿入孔35内へ圧入させることができる。
そして、頭部フランジ13の一部がフランジ部34に当接すると、接続部15が湾曲することにより、図15に示すように、頭部フランジ13全体がフランジ部34に当接して挿入孔35を閉塞する状態まで脚部16および係合部17を挿入孔35内へ圧入させることができる。
このように脚部16および係合部17を挿入孔35内へ圧入させると、係合部17が自身の弾性で挿入孔35の内面に係合することにより、留め具11をヘッドレスト取付具31から外れないように取り付けることができる。
【0020】
なお、留め具11をヘッドレスト取付具31から取り外す場合は、頭部フランジ13とフランジ部34との間へ爪または適当な工具を挿入して留め具11を持ち上げることにより、留め具11をヘッドレスト取付具31から取り外すことができる。
そして、第2実施例の留め具11Aのヘッドレスト取付具31への取付およびヘッドレスト取付具31からの取り外しは、第1実施例の留め具11のヘッドレスト取付具31への取付およびヘッドレスト取付具31からの取り外しと同じになるので、その説明を省略する。
【0021】
上述したように、この発明の第1および第2実施例によれば、接続部15を、弾性変形可能な略円柱形状にしたので、接続部15の湾曲に方向性がなくなることにより、取付作業を作業性よく行うとができる。
また、接続部15には断面積を減少させるものが設けられていないので、接続部15の強度が低下しなくなる。
そして、接続部15と頭部12,12A(湾曲規制部分14,14A)および脚部16,16Aとの接合部分15a,15bを、接続部15側から頭部12,12A(湾曲規制部分14,14A)側または脚部16,16A側へ徐々に外径が大きくなるように形成したので、接続部15の湾曲によって接合部分15a,15bに亀裂が発生するのを防止することができ、耐久性が向上する。
さらに、頭部12,12Aに、脚部16,16Aが当接することによって接続部15が過度に変形するのを規制する湾曲規制部分14,14Aを設けたので、接続部15の湾曲を規制して接続部15の損傷を防止することができ、耐久性が向上する。
【0022】
そして、第2実施例によれば、湾曲規制部分14Aの頭部フランジ13に接する部分に肉抜き凹部14aを設けたので、成形後のヒケを少なくする(殆どなくす)ことができることにより、頭部フランジ13の外表面を綺麗に仕上げることができる。
また、脚部16Aに肉抜き凹部16aを設けたので、成形後のヒケを少なくする(殆どなくす)ことができることにより、係合部17の係合力を所期の値にすることができる。
【0023】
上記した実施例では、接続部15を円柱形状とした例で説明したが、接続部は全方位に対して同等な湾曲性を有していればよいので、円柱形状に近似した形状である略円柱形状(例えば、正八角形以上の正多角形)であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1実施例である留め具を下側から見た斜視図である。
【図2】この発明の第1実施例である留め具の正面図である。
【図3】この発明の第1実施例である留め具の平面図である。
【図4】この発明の第1実施例である留め具の底面図である。
【図5】この発明の第1実施例である留め具の右側面図である。
【図6】図2のA−A線による断面図である。
【図7】この発明の第2実施例である留め具を下側から見た斜視図である。
【図8】この発明の第2実施例である留め具の正面図である。
【図9】この発明の第2実施例である留め具の平面図である。
【図10】この発明の第2実施例である留め具の底面図である。
【図11】この発明の第2実施例である留め具の右側面図である。
【図12】図8のA−A線による断面図である。
【図13】図8のB−B線による断面図である。
【図14】この発明の第1実施例である留め具の使用状態を示す説明図である。
【図15】図14の要部を拡大した説明図である。
【符号の説明】
【0025】
11 留め具
11A 留め具
12 頭部
12A 頭部
13 頭部フランジ
14 湾曲規制部分
14A 湾曲規制部分
14a 肉抜き凹部
15 接続部
15a 接合部分
15b 接合部分
16 脚部
16A 脚部
16a 肉抜き凹部
17 係合部
21 後部座席
22 取付穴
22a 係止段部
31 ヘッドレスト取付具
32 円筒部
33 係合爪
34 フランジ部
35 挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、この頭部に下側へ突出させて設けられた接続部と、この接続部に下側へ突出させて設けられた脚部と、この脚部に側方へ突出させて設けられた係合部とを一体成形した留め具において、
前記接続部を、弾性変形可能な略円柱形状にした、
ことを特徴とする留め具。
【請求項2】
請求項1に記載の留め具において、
前記接続部と前記頭部または前記脚部との接合部分を、前記接続部側から前記頭部側または前記脚部側へ徐々に外径が大きくなるように形成した、
ことを特徴とする留め具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の留め具において、
前記頭部に、前記脚部が当接することによって前記接続部が過度に湾曲変形するのを規制する湾曲規制部分を設けた、
ことを特徴とする留め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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