説明

留置位置確認可能な胃瘻用カテーテル

【課題】特別な機器を使用せず、熟練者、未熟練者であっても容易に胃瘻用カテーテルの体内留置部が胃内に留置されていることを確認することが可能な胃瘻用カテーテルを提供する。
【解決手段】本発明の胃瘻用カテーテルは、胃内留置部および体表固定部を備えるカテーテル本体と、胃液と接触することで目視的に態様が変化する変化部とを有し、変化部が、胃内留置部から体表固定部に亘って設けられている。これにより、変化部の胃内固定部側が胃液と接触することで、体表固定部側の態様が目視的に変化するため、術者は胃瘻用カテーテルの胃内留置部が適切に胃内に留置されたことを確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留置位置確認可能な胃瘻用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
口から栄養を摂取できない患者に対する栄養の投与方法としては、一般的に経静脈的栄養投与、鼻からチューブを胃等に挿入して行う経胃管的栄養投与、および胃瘻からの経腸的栄養投与等が行われている。
近年、経腸栄養剤とその投与法の発達により、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)による経腸栄養管理が頻繁に行われるようになってきた。
【0003】
このPEGによる栄養投与を実施するために、胃瘻用カテーテルが使用される。この胃瘻用カテーテルはその留置手技、患者の様態、使用期間、処置者の操作性などから様々な種類が存在するが、一般的に、栄養又は薬剤を体外から胃内へ導入するルーメンを内部に有する管状部材と、この管状部材の先端部に付設され、長軸方向に無荷重の場合は管状部材の径方向外側に拡径した形状の体内留置部から構成されている。
【0004】
上記胃瘻用カテーテルは、通常、留置による劣化や汚れのため、一定期間留置後、新しい胃瘻用カテーテルに交換する必要がある。この胃瘻用カテーテル交換時には、胃内に適切に留置されたことを必ず確認する必要がある。
交換時の確認手段として、内視鏡やX線を使用した確認手段のほか、胃内の内容物の吸引による確認手段や、色付きの液体を交換前の胃瘻用カテーテルを介してあらかじめ注入しておき、交換後の新たな胃瘻用カテーテルを留置後、色付きの液体を吸引することによる確認手段、または、胃液のpHを確認する手段など、様々な方法がある。
【0005】
この確認手段の1つである胃液のpHを確認する手段については、例えば、特許文献1のようなカテーテル留置位置確認用ロッドが開示されている。本発明では、pH指示薬などを付設したロッドを胃瘻用カテーテルのルーメンを経由して挿入し、そのpH指示薬などの変色を確認する。
【0006】
また、経胃管的栄養投与における経腸栄養チューブにおいても、PEGと同様、胃内にチューブ先端があることを確認する必要がある。この胃内留置位置の確認手段として、例えば、特許文献2のように、経腸栄養チューブの先端にpH電極を付設し、pHを測定することで確認する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−34423号公報
【特許文献2】特開2010−63867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1によれば、ロッドを用いるために、未熟練者が使用した場合には、ロッドを差し込み過ぎて、胃後壁を損傷するなどのリスクを伴い、医師などの熟練者による操作が必要となる。また、特許文献2によれば、pHを測定する高価な機器が必要となり、容易には確認することはできない。特許文献1、2ともに、熟練した医師が行わざるを得ないため、頻繁な確認手段とはなりえない。
【0009】
さらに、胃瘻用カテーテルは、患者がカテーテルを引き抜いてしまう自己抜去、体内留置部分がバルーンなどの場合にはバルーン破裂などによる事故抜去などにより、胃内から体内留置部が抜けてしまう場合があるため、誤って腹腔などに投与されないように栄養剤投与時には牽引などにより適切に胃内に留置されていることを確認することが必須である。そのため、実際に栄養剤を投与する介護者などでも栄養剤注入毎に目視的に容易に確認可能な手段が望まれている。
【0010】
本発明の課題は、特別な機器を使用せず、熟練者、未熟練者であっても容易に胃瘻用カテーテルの体内留置部が胃内に留置されていることを確認することが可能な胃瘻用カテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(6)に記載の本発明により達成される。
(1)胃内留置部および体表固定部を備えるカテーテル本体と、胃液と接触することで目視的に態様が変化する変化部と、を有し、前記変化部が、前記胃内留置部から前記体表固定部に亘って設けられていることを特徴とする胃瘻用カテーテル。
(2)前記変化部は、前記カテーテル本体と一体として形成される(1)に記載の胃瘻用カテーテル。
(3)前記変化部は、前記カテーテル本体を被覆して形成される(1)に記載の胃瘻用カテーテル。
(4)前記変化部は、前記カテーテル本体とは別体として形成されており、前記カテーテル本体は、その壁内に、先端から基端にかけて連通し、前記変化部を内挿可能な収納部を有する(1)に記載の胃瘻用カテーテル。
(5)前記変化部は、胃液中の酸を検知して変色する指示薬を含む(1)ないし(4)のいずれかに記載の胃瘻用カテーテル。
(6)前記指示薬は、チモールブルー、2,4−ジニトロフェノール、メチルオレンジ、o−クレゾール、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッドのいずれかから選ばれる(5)に記載の胃瘻用カテーテル。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別な機器を使用せず、熟練者、未熟練者であっても容易に胃瘻用カテーテルの体内留置部が胃内に留置されていることを確認することが可能な胃瘻用カテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態の胃瘻用カテーテルの斜視図(a)、上面図(b)、下面図(c)、断面図(d)を示す。
【図2】本発明の第二実施形態の胃瘻用カテーテルの断面図(a)、別体の変化部を差し込んだ状態の断面図(b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態の胃瘻用カテーテルを、図1を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の第一実施形態における胃瘻用カテーテル1の斜視図を示す。また、図1(b)〜(d)は、それぞれ本発明の第一実施形態における胃瘻用カテーテルの上面図、下面図および断面図を示している。
【0015】
胃瘻用カテーテル1は、管状のカテーテル胴部11とカテーテル胴部11の先端側に付設され、カテーテル胴部11の径方向外側に拡径した形状の体内留置部12、さらにカテーテル胴部11の基端側に体内への脱落防止のためのストッパーとしての役割を果たす体表固定部13から構成されている。
【0016】
胃瘻用カテーテル1は、カテーテル胴部11、体内留置部12および体表固定部13をそれぞれ別体に成形した後に接着しても良いし、インサート成形などで接続しても良いが、一体成形で構成することが最も好ましい。一体成形で構成することにより、留置時に破損、破断しない十分な強度を有することができる。
【0017】
胃瘻用カテーテル1を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、シリコーンゴムなどが挙げられる。特にカテーテル胴部11、体内留置部12は、長期にわたり体内に留置、接触されることになるため、組織との適合性が高いシリコーンゴムが好ましい。
【0018】
カテーテル胴部11の外径は、特に限定されないが、3〜10mmが好ましく、5〜8mmが最も好ましい。この外径であれば、十分な内腔を確保でき、栄養供給を問題なく行うことができる。体内留置部12の外径は、カテーテル胴部11の径方向外側に拡径した形状であれば、特に限定されないが、カテーテル胴部11の外径よりも2〜8mm大きいことが好ましく、4〜6mm大きいことがさらに好ましい。体表固定部13については、体内に脱落しないストッパーとしての役割を果たせば特に限定されないが、胃瘻用カテーテル1が体内に留置されている際には、体表固定部13を把持し、回転させる操作を行うことがあるため、手で持ちやすい大きさが好ましい。
【0019】
カテーテル胴部11は、内部に中空の通路14を有している。この通路14を介して栄養剤の注入がなされる。また、カテーテル胴部11の先端側には、胃の内容物の逆流を防止するために、弁16が付設されている。弁16は、前記カテーテル胴部11の先端側以外にも、管のどの位置にあっても良い。さらに、弁16の先端側にはスリット161が設けられている。スリット161は、基端側から栄養剤を注入したとき、スリット161を開口し、栄養剤が胃内に注入されるように設けられている。
また、カテーテル胴部11の基端側にはキャップ15が設けられており、留置されている状態においては、閉状態として、胃の内容物の漏れを防止し、栄養剤注入時には、開状態として使用できるように設けられている。
【0020】
胃内留置部12は、バルーンでも、非バルーンでも体内側のアンカーとなれば、特に限定されないが、長期間交換しなくても良い点で、非バルーン式が好ましい。非バルーン式である場合、体内へ留置する際に伸展具などを用いて、体内留置部12の外径をできる限り小さくできるものが好ましく、カテーテル胴部11の外径とほぼ同径まで嵩張りが小さくなるようなものがさらに好ましい。こうすることで、留置時の患者の苦痛を軽減することができる。
【0021】
胃内留置部12は、例えば、弾性変形可能な複数本の帯状片121を、チューブ本体11の中心軸線を取り囲むように、その周囲に配置した構成になっている。
各帯状片121は、その長手方向一端が、チューブ本体11の先端に一体的に設けられた基端側集束部122から離隔させて、チューブ本体11の中心軸線上に配置された先端側集束部123にて一体化されている。そして体内留置部12は、基端側集束部122と先端側集束部123との間にて、それぞれ弓形に湾曲して形成されている複数本の帯状片121によって、全体としてドーム状(丸篭状)に構成されている。
【0022】
体表固定部13は、胃瘻用カテーテル1が留置された状態においては、患者の体表に位置する部分に設けられ、胃瘻用カテーテル1が患者の体内(胃内)へ埋没しないようにするものである。体表固定部13は、カテーテル胴部11の基端部に付設され、カテーテル本本体11の径方向外側に張り出した状態のものであれば、その形状は特に限定しない。例えば、通路14の基端部の開口周りに付設される扁平状物とすることができる。体表固定部13は、胃瘻用カテーテル1のうち、留置中に唯一、患者又は第三者より見える部分であるため、扁平状物であれば、嵩張りが少なく、患者の生活に支障をきたさない点で好ましい。
【0023】
また、体表固定部13には通路14の基端部の開口に嵌合するキャップ15が設けられている。キャップ15は、胃瘻用カテーテル1の留置された状態において、栄養又は薬液を体外から胃内へ経皮的に補給しないとき、キャップ15を通路14の基端部の開口に嵌合させることで、胃内の気密性を保つことができる。
【0024】
体表固定部13は、胃内留置部12の少なくとも一部が胃液と接触することで、その少なくとも一部における態様が目視的に変化する。このような変化としては、目視で識別可能な変化であればいかなるものでもよく、例えば、色の変化や形状の変化が挙げられる。
【0025】
変化部2は、胃内留置部12から体表固定部13に亘って設けられている。変化部2は、その胃内留置部12における領域で胃液に接触することで、体表固定部13における領域が目視的に変化する。変化部2は、胃瘻用カテーテル1と一体として形成されていてもよいし、胃内留置部12、カテーテル胴部11、体表固定部13に亘ってライン状に設けられていてもよい。
【0026】
また、変化部2は、胃瘻用カテーテル1を被覆して形成されるものであってもよい。この場合、変化部2は胃瘻用カテーテル1の表面にあるため、胃液と直接接することができる。また、目視による変化の確認もより容易である。さらに、外面をコーティングするため、製造も容易となる。
【0027】
変化部2は、胃液と接触することで様態が変化するものであればいかなるものを用いることもできるが、胃液中の酸を検知して変色する指示薬が特に好ましい。指示薬が前記胃瘻用カテーテル1のカテーテル胴部11、および/または体内留置部12、および/または体外固定部13の全体的に含有されていてもよいし、部分的に含有されていてもよい。また、指示薬を表面にコーティングしていても構わない。
【0028】
指示薬としては、胃液を検知するものであれば特に限定されないが、pHを検知して変色するものが特に使用しやすい。このようなpH指示薬としては、たとえば、チモールブルー、2,4−ジニトロフェノール、メチルオレンジ、o−クレゾール、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッドなどが挙げられる。また、pHによる変色だけに限定せず、胃内に存在する酵素などと特異的に反応し、変色するものであっても構わない。さらに、このような指示薬を複数混合して用いることもできる。
【0029】
なお、変化部2は、胃液の接触により不可逆的に態様が変化しても、可逆的に態様が変化してもよい。変化部2が可逆的に態様が変化する場合には、胃瘻用カテーテル1が事故抜去等により胃液と接触しなくなったときに、その異常を検知することができる。
【0030】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態の胃瘻用カテーテル1を、図2を参照して説明する。
なお、以下では、第二実施形態について説明するが、第一実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図2(a)は、本発明の第二実施形態の胃瘻用カテーテル1の変化部を差し込む前の断面図を示し、図2(b)は、変化部を差し込んだ状態の断面図を示す。
【0031】
第二実施形態においては、図2(a)に示すように、胃瘻用カテーテル1のカテーテル胴部11の壁内に、先端から基端にかけて連通した収納部17が設けられている。そして、収納部17には、胃瘻用カテーテル1とは別に構成された変化部2が内挿される。
【0032】
収納部17は、変化部2を内挿可能であれば、特に形状、大きさは問わないが、収納部17の先端は、少なくとも胃内留置部12の基端部近傍まで到達していることが好ましい。さらに、収納部17の先端は、例えば、窓を設けた構造、網目状とした構造であることが好ましい。このような構造とすることで、変化部2がより確実に胃液と接触するようになる。また、収納部17の基端側には、胃の内容物の漏れを防止することができるために、蓋を設けておくことが好ましい。
【0033】
変化部2は、胃瘻用カテーテル1とは別体として構成され、収納部17に内挿する。変化部2の形状は、収納部17に挿入可能であればいかなる形状としてもよい。変化部2の形状としては、例えば、板状や、棒状等が挙げられる。
【0034】
変化部2を胃瘻用カテーテル1の収納部17に差し込み、図2(b)のようにセットする。このようにすることで、変化部2の先端部が胃液に接触し、変化部2の基端部の様態が変化する。これにより、体内留置部12が胃内に留置されていることを目視的に確認することができる。
【0035】
変化部2は、胃瘻用カテーテル1とは別体に構成されている。このため、胃瘻用カテーテル1の胃内留置部12が胃内に留置されていることを確認する際ごとに、変化部2を胃瘻用カテーテル1の収納部17にセットし、確認することができる。確認が終了したら、取り外しておき、再び使用する際にセットして用いることができる。そのため、前記変化部2は常に新品のものを使用することができ、検出感度を高めることが可能となる。
また、収納部17への変化部2の挿入操作は、胃後壁損傷などのリスクは全くないため、だれでも容易に胃内の留置位置確認が行うことができる。
【0036】
このように、本願発明の胃瘻用カテーテルは、特別な機器を使用せずに、熟練者、未熟練者であっても容易に胃瘻用カテーテルの体内留置部が胃内に留置されていることを確認することが可能であるため、いつでも安全に栄養剤投与を行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 胃瘻用カテーテル(カテーテル本体)
11 カテーテル胴部
12 胃内留置部
121 帯状片
122 基端側集束部
123 先端側集束部
13 体表固定部
14 通路(ルーメン)
15 キャップ
16 弁
161 スリット
17 収納部
2 変化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃内留置部および体表固定部を備えるカテーテル本体と、
胃液と接触することで目視的に態様が変化する変化部と、を有し、
前記変化部が、前記胃内留置部から前記体表固定部に亘って設けられていることを特徴とする胃瘻用カテーテル。
【請求項2】
前記変化部は、前記カテーテル本体と一体として形成される請求項1に記載の胃瘻用カテーテル。
【請求項3】
前記変化部は、前記カテーテル本体を被覆して形成される請求項1に記載の胃瘻用カテーテル。
【請求項4】
前記変化部は、前記カテーテル本体とは別体として形成されており、
前記カテーテル本体は、その壁内に、先端から基端にかけて連通し、前記変化部を内挿可能な収納部を有する請求項1に記載の胃瘻用カテーテル。
【請求項5】
前記変化部は、胃液中の酸を検知して変色する指示薬を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の胃瘻用カテーテル。
【請求項6】
前記指示薬は、チモールブルー、2,4−ジニトロフェノール、メチルオレンジ、o−クレゾール、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッドのいずれかから選ばれる請求項5に記載の胃瘻用カテーテル。

【図1】
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【図2】
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