説明

畝成形管理機

【課題】
耕耘爪を機体前側に形成する管理機においては、耕耘爪の駆動反力により機体前側が浮くことを防止することを課題とする。
【解決手段】
ミッションケース(1)から前方に向けて作業機フレーム(35)を取り付け、該作業機フレーム(35)の左右には前記耕耘爪(23)の上方を覆う耕耘カバー(33,33)を前後方向軸芯回りに上下回動自在に連結し、作業機フレーム(35)の前方にはゲージホイル(40)を上下調節自在に支持し前下がり傾斜で配置される固定パイプ(42)と、固定パイプ(42)より前側にあってかつ固定パイプ(42)の傾斜角度よりも急な角度で前下がりに配置する作業機取付具(70)とを取り付ける構成としたことを特徴とする畝成形管理機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にネギの栽培を行う高畝の成形を行う畝成形管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはネギを植えた畝に土寄せするためのネギ管理機がある。
【特許文献1】特開平7−236306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで特許文献1のようなネギ管理機のように耕耘爪を機体前側に形成する管理機においては、耕耘爪の駆動反力により機体前側が浮く場合がある。
本発明は、機体前側を重くすることで上記課題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記に鑑み、請求項1に記載の発明は、左右中央に前後方向にわたって配置されるミッションケース(1)の前部に耕耘軸(2)を支持し、該耕耘軸(2)に耕耘爪(23)を配設し、ミッションケース(1)の後部に車軸(3)を支持し、該車軸(3)に車輪(14)を装着し、ミッションケース(1)の後方にはエンジン(5)を設け、ミッションケース(1)の上部にはエンジン(5)の上方を通過する操縦ハンドル(10)の基部を装着する構成とし、
ミッションケース(1)から前方に向けて作業機フレーム(35)を取り付け、該作業機フレーム(35)の左右には前記耕耘爪(23)の上方を覆う耕耘カバー(33,33)を前後方向軸芯回りに上下回動自在に連結し、作業機フレーム(35)の前方にはゲージホイル(40)を上下調節自在に支持し前下がり傾斜で配置される固定パイプ(42)と、固定パイプ(42)より前側にあってかつ固定パイプ(42)の傾斜角度よりも急な角度で前下がりの軸からなる作業機取付具(70)とを取り付ける構成としたことを特徴とする畝成形管理機とする。
【0005】
請求項2記載の発明においては、嵌合パイプ(71a)に左右方向に延びる支持軸(71b)を取り付け、該支持軸(71b)の左右両端部にそれぞれ畝成形体(71c)を設けた畝成形具(71)を作業機取付具(70)に脱着自在に嵌合することを特徴とする請求項1記載の畝成形管理機とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、作業機フレーム(35)の前方にはゲージホイル(40)を上下調節自在に支持し前下がり傾斜で配置される固定パイプ(42)と、固定パイプ(42)より前側にあってかつ固定パイプ(42)の傾斜角度よりも急な角度で前下がりの軸からなる作業機取付具(70)とを取り付ける構成としたことで、機体前側の重量を重くすることができ、機体前側を浮き上がり難くすることができる。
【0007】
請求項2の発明によれば、左右の畝成形体(71c)が一体となって作業機取付具(70)に着脱できるため着脱作業がしやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。図1は畝成形管理機の側面図を示すもので、へ字型のミッションケース1の前側ケース1a下部には耕耘軸2を配置し、後側ケース1b下部には車軸3を配置している。
【0009】
上記ミッションケース1の後側ケース1bにはエンジンフレーム4を固定し、このエンジンフレーム4にエンジン5を載置している。また、前記ミッションケース1の頂部に走行変速レバー6用のシフタステー7、耕耘変速レバー8用のシフタステー9等を配設する。
【0010】
さらに前記ミッションケース1の頂部には、左右一対からなる操縦ハンドル10の基部を装着するもので、該操縦ハンドルはエンジン4上部の燃料タンク11、マフラ12の上方を迂回すべく後方に延長して設けられる。該操縦ハンドル10の基部をミッションケース1の頂部に装着されたブラケット部材13に横軸14を介して軸支してなり、上下調節可能の構成である。即ちこのブラケット部材13は、コ型断面のカバー部13aと、ハンドル角度調節パネル部13bとを溶接一体化して、ミッションケース1の頂部にボルト止めされる構成である。角度調節パネル部13には上下方向に複数の係止穴を形成して、ハンドルと一体に設ける係止突起13cを着脱できる公知の構成である。
【0011】
前記エンジン5の駆動力はミッションケース1の後側ケース1b内の伝動機構を経て前記車軸3に伝達され該車軸3に装着された車輪14,14を回転駆動する。
一方前記エンジン5の駆動力はミッションケース1の前側ケース1a内の伝動機構を経て前記耕耘軸2に伝達される構成である。
耕耘装置20は、前記耕耘軸2と、この耕耘軸2に装着される耕耘爪群と、その上面を覆う後記耕耘カバーと、後記ゲージホイル等からなり、これら耕耘爪23等によって土揚げ手段を構成する。このうち耕耘軸2には、複数の耕耘爪23が配置される。即ち、耕耘軸2は前側ケース1aの下部左右に突出するように設けられ、左右突出軸部に、3種の耕耘爪23a,23b,23cを配設した耕耘ボス軸24が嵌合されてピン25を介して連結される構成である。なお、軸端にはボルト26を締め付けて座板27を固定することによってボス軸24の抜け止めを図っている。
【0012】
耕耘ボス軸24にはその軸芯方向の2箇所において、回転方向に120°ずつ位相をずらせて耕耘爪ホルダ30を側面視で合計6個配設している。このホルダ30のうち外側3個に夫々装着される外側耕耘爪23a,23a,23aは、先端を外向きに折曲形成した耕耘爪とされ、また内側3個に夫々装着される内側耕耘爪23b,23b,23bは、先端が上記外側耕耘爪23aと同形態に形成され、かつ基部側は前側ケース1aのメタル部を迂回するよう迂回形成された耕耘爪とされ、また内側耕耘爪23bの装着ホルダ30の間の第7番目のホルダ30´には先端側が内向きに折曲されたナタ爪23cとされる。
28は、前部ケース1aの下端後部側に取り付けた残耕処理刃で、ケース1a部から一対の取り付けステー29,29で取り付けられている。したがって、左右方向に狂いを生じ難く安定して残耕処理できる。
【0013】
上記のように構成された耕耘装置20は、進行方向(イ)に対しアップ回転(ロ)させると、外側耕耘爪23aと内側耕耘爪23bの一対を1組として3組に構成され、これら3組が等配の3重螺旋構成となって、従来2組が限度であったが、これに比較して土が細かく均一に側方飛散させることができる。また、等配の構成としたので、作業時振動が少なく、オペレータの作業環境を良好となす。加えて、ナタ爪23cが設けられたので残耕を少なくし溝の仕上がりを良好とすることができる。このため、ネギ等の畝成形のように土を高く揚げる作業において、3重螺旋配置の構成とすることによって硬い耕盤を細かく切り込みでき、爪進入を円滑化しひいては土揚げ作業を良好に実施できる。
【0014】
耕耘爪23a,23b,23cの上面は左右の耕耘カバー33,33によって覆われる構成である。即ち、前側ケース1aから前方に突出する状態に、断面コ型の作業機フレーム35を、その基部の装着部35aをもって前部ケース1aに取り付け装着している。なお作業機フレーム35と装着部35aとは溶接手段によって一体化されている。
【0015】
上記作業機フレーム35には左右夫々前後2箇所にヒンジ部36,36を設け、前記耕耘カバー33,33を前後軸芯回りに上下回動自在に連結される。左右各耕耘カバー33,33に夫々設ける吊下ロッド37,37の上部側を前記作業機フレーム35の上面に立設する支柱部材38に重合させて締付具で共締めして耕耘カバー33のうち、内側のカバー33aを固定する構成である。なお、耕耘カバー33は、左右方向に拡縮可能に2枚のカバー33a,33bで構成され、長穴構成の伸縮手段で左右に拡縮できる構成となっている。34は両カバー33a,33bの締付ボルトである。
【0016】
前記作業機フレーム35の後端部にはゲージホイル40の支持パイプ41を保持する固定パイプ42を溶接手段によって固着してなる。なおこれら支持パイプ41及び固定パイプ42は矩形断面に形成され両者嵌合状態でかつ長手方向に摺動可能に設けられている。さらに、この固定パイプ42の上端側には前記作業機フレーム35に立設した支柱部材38の上端を前側に折り曲げてその端部を溶接手段で固着することによって補強構造を構成している。また、固定パイプ42の中間部と前部ケース1aとを連結部材43で連結することによって補強構造を構成している。fはゲージホイル40の泥を落とすスクレーパである。
【0017】
上記のように作業機フレーム35とゲージホイル40の固定パイプ42との組み合わせ構成において、該固定パイプ42を支柱部材38及び連結部材43との組み合わせによって補強する構成であるから、左右幅狭の耕耘部フレーム構成を簡素にして強固に構成できる。
【0018】
上記ゲージホイル40の支持パイプ41の上端には図外雌ネジ体を固着し、上部からスクリュー螺子体45を羅合し、該スクリュー螺子体45をハンドル46の正逆回転によって固定パイプ42から下方への突出量を調節できる構成である。このゲージホイル40の上下調節によって耕耘爪による耕耘量を調節できる構成である。
【0019】
前記ゲージホイル40の固定パイプ42の後面には作業機取付プレート47を溶接手段によって固着し、該作業機取付プレート47の下部側には後部カバー48を着脱自在に固定している。作業機取付プレート47には、例えば畝側面を削り取る片削板(図示せず)を装着できる。49はこの後部カバー48の下端に接続するゴムカバー、50は後部カバー48の裏面と前記固定パイプ42とを連結する補強プレートである。
【0020】
前記左右耕耘カバー33,33の夫々外側端にはサイドカバー51,51を上下回動自在に前後方向軸52,52を介して設けている。この軸52の支持構成は次の通りである。即ち、該サイドカバー51の途中2箇所に設けられたブラケット53,53(図例では夫々コ字型)に形成した孔部53a,53aに、前後端側を適宜耕耘カバー33の外側端に固定された前後方向軸52を貫通してなり、このブラケット53,53部において、一端を耕耘カバー33に締付固定された板バネ54a,54bによって前後方向軸52を上・下面側から押圧すべく構成する。この板バネ54a,54bは、サイドカバー51を上下に回動調整するとその位置で保持可能になっている。したがって、各別のサイドカバー51固定手段を必要とせず、その調節作業が極めて容易である。また、下面側から前後方向軸52を覆う構成となるから、下方側から飛散する土が軸52部隙間に侵入することを防止できる。
【0021】
作業機フレーム35の前側の作業機取付プレート47には作業機取付具70を取り付けている。作業機取付具70は後端を作業機フレーム35に取り付け前側に延びる取付部70aと、取付部70aの前端から前下がりに上下方向に延びる作業機取付軸70bとから形成され、作業機取付軸70bは取付部70aより突出部70cを形成し、運搬時にロープ掛けができるようになっている。そして傾斜角度を固定パイプ42よりも急角度に形成している。
【0022】
作業機取付具70には畝の側面を掘削する畝成形具71を取り付ける。畝成形具71は作業機取付軸70bに嵌合する嵌合パイプ71aと、嵌合パイプから左右方向に延びる支持軸71bと、支持軸71bの左右両端部にそれぞれ棒状の畝成形体71cとから形成される。すなわち、畝成形管理機が走行すると左右の畝成形体71cがそれぞれ畝の側面に当接して掘削していく。
【0023】
作業機取付具70と畝成形具71とが畝成形管理機の前端に設けることで管理機の前部の重量を上げることにより機体前後バランスが向上する。すなわち、耕耘爪23が車輪14よりも前側にある管理機において、耕耘爪23の駆動反力で機体前側が浮き上がりやすくなるのを防止することができる。また、ゲージ輪40の上方に畝成形具70を配置する構成としたことで管理機の畝追従性が向上する。
【0024】
また、左右の畝成形体71cが一体形成されているので畝成形具71を作業機取付軸70に取り付けやすい。
なお、ハンドル10のブラケット13部に設ける構成としたから、耕耘カバー33,33の上方回動調節によっても干渉の恐れがない箇所に設定できる。
【0025】
ハンドル10の左右握り部近傍の構成について、図6、7に従い説明する。ハンドル10の後端の握り部60にサイドクラッチ(図示せず)の操作レバー61を支持軸62回りに上下回動自在に設けている。該支持軸62は、上下半割り状のブラケット63U,63Dのうち、下半ブラケット63Dに構成され、上下ブラケット63U,63Dをハンドルフレームを上下からはさみこむ状態で締付ボルト64,64によって装着できる構成としている。65は操作レバー61を握り部に接近させたサイドクラッチ入り状態で保持できるロック手段の解除レバーで、該解除レバー65を軽く持ち上げ操作すると操作レバー61の保持状態を解除してサイドクラッチ切り状態(下方回動状態)に復帰させる構成である。上半ブラケット63Uは、アクセルレバー67の取り付け台座を兼用している。
【0026】
上記の操作レバー61の上下ブラケット63U,63Dによる装着にあたり、ハンドルフレーム下面に沿うスペーサ66を介在してこれら上下ブラケット63U,63Dを装着し(図7(C))、又はスペーサ66を介在しないでこれら上下ブラケット63U,63Dを装着することを選択できる(同図(A)(B))。
【0027】
上記スペーサ66を介在するとき(同図(C))は、サイドクラッチ入り状態に操作レバー61操作保持するときは、ハンドル握り部と操作レバー61との間に隙間(ハ)を形成でき、握り部のみ握って操縦できる。また、スペーサ66を介在しないときは、ハンドル握り部と操作レバー61とを同時に握って操作でき、結果として解除レバー65の操作を適時に行うことができる。このようにオペレータの好みや体格に応じて適切な操縦感覚を得ることができる。なお、スペーサ66の後部側に凸状66aを形成することにより、この凸状66aをもって操作レバー61の上限ストッパに形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】全体側面図
【図2】耕耘装置の背面図(A)、及び側面図(B)
【図3】要部の斜視図
【図4】耕耘カバーの背面図(A)、その拡大図(B)
【図5】ハンドルブラケットの斜視図
【図6】ハンドル握り部の側面図
【図7】レバー操作の作用説明図(A),(B),(C)
【図8】全体斜視図
【図9】作業機取付具及び畝成形具の着脱を示す斜視図
【符号の説明】
【0029】
1 ミッションケース
2 耕耘軸
23 耕耘爪
3 車軸
14 車輪
5 エンジン
10 操縦ハンドル
35 作業機フレーム
33 耕耘カバー
40 ゲージホイル
42 固定パイプ
70 作業機取付具
71 畝成形具
71a 嵌合パイプ
71b 支持軸
71c 畝成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右中央に前後方向にわたって配置されるミッションケース(1)の前部に耕耘軸(2)を支持し、該耕耘軸(2)に耕耘爪(23)を配設し、ミッションケース(1)の後部に車軸(3)を支持し、該車軸(3)に車輪(14)を装着し、ミッションケース(1)の後方にはエンジン(5)を設け、ミッションケース(1)の上部にはエンジン(5)の上方を通過する操縦ハンドル(10)の基部を装着する構成とし、
ミッションケース(1)から前方に向けて作業機フレーム(35)を取り付け、該作業機フレーム(35)の左右には前記耕耘爪(23)の上方を覆う耕耘カバー(33,33)を前後方向軸芯回りに上下回動自在に連結し、作業機フレーム(35)の前方にはゲージホイル(40)を上下調節自在に支持し前下がり傾斜で配置される固定パイプ(42)と、固定パイプ(42)より前側にあってかつ固定パイプ(42)の傾斜角度よりも急な角度で前下がりの軸からなる作業機取付具(70)とを取り付ける構成としたことを特徴とする畝成形管理機。
【請求項2】
嵌合パイプ(71a)に左右方向に延びる支持軸(71b)を取り付け、該支持軸(71b)の左右両端部にそれぞれ畝成形体(71c)を設けた畝成形具(71)を作業機取付具(70)に脱着自在に嵌合することを特徴とする請求項1記載の畝成形管理機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−5663(P2009−5663A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172369(P2007−172369)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】