説明

畝立て同時播種機

【課題】従来の畝立て同時播種機では、播種機の高さや姿勢は変更できたが前後位置は変更できず、特に畝立て成形機と独立して変更できないため、完成した畝上に正確に播種することができず、日当たりや根の呼吸、排水性等といった生長に適した環境を種子に与えることができず、作物の収穫量の減少や品質の低下を招く、という問題があった。
【解決手段】ロータリ耕耘装置2の後部に装着されると共に、畝立て成形機4と播種機5を備えた畝立て同時播種機3において、前記ロータリ耕耘装置2に対する前記播種機5の前後位置・高さ・姿勢を、前記畝立て成形機4とは独立して変更可能な位置調節機構43を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや管理機等の牽引車輌によって牽引されるロータリ耕耘装置の後部に装着されると共に、畝立て成形機と播種機とから成る畝立て同時播種機に関し、特に、播種を適正位置にて行うための、播種機の位置調節機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、畝立て同時播種機では、大豆等の播種床を形成する畝立て作業と、該播種床上に種子を送り出す播種作業とを連続して行うが、このうちの畝立て作業では、ロータリ耕耘装置の耕耘爪で土壌を耕起した後を、畝立て成形機の均平板が進行して地面を均すと共に、左右に並設した複数の均平板の間に尖端縁を納めた畝立器が、前記耕耘爪によって耕起された柔らかい地面に食い込みつつ進行し、この畝立器の両側板が、耕土をさらえて側方に逃がし盛り上げて畝を形成する。続く播種作業では、形成された畝の上を播種機の作溝器が進行して播種溝を形成し、該播種溝内には、駆動輪によって駆動される繰出装置から繰り出された種子が吐出され、その後を覆土体が進行して土をかぶせ、更にその上を鎮圧輪が転動し播種された部分を押圧するようにしている。
ところが、前記畝立て作業で均平して盛り上げただけの畝は、脆く、しかも土の状態や耕起条件によって表面に大きな凹凸が生じたり、牽引車両の機体が上下動したり、あるいは播種機の高さや姿勢が不適正な場合には、前記作溝器・覆土体・鎮圧輪等が深く侵入して畝が壊れたり、逆に畝表面への駆動輪の接地が不十分で繰出装置が動作しなかったり、あるいは、畝表面に対して播種機が斜め姿勢となって播種深さが不均一となり作物の正常な生育が妨げられることがあった。
そこで、従来の畝立て同時播種機では、ロータリ耕耘装置に横設されたツールバーより後方に支持杆を延出し、該支持杆に平行リンク機構を介して播種機を吊設する技術(例えば特許文献1)や、ロータリ耕耘装置に立設されたツールバーに支持杆の前端を昇降可能に外嵌し、該支持杆の後端に播種機を固定する技術(例えば特許文献2)が公知となっている。
【特許文献1】実開昭51−64720号公報
【特許文献2】特開2002−262601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いずれかの従来技術を用いることにより、播種機の高さを、駆動輪が畝表面に接地して駆動されるが畝は壊さない程度に調節したり、あるいは、播種機の姿勢を、畝表面に対して略水平に保って播種深さを均一に維持することは可能であるが、播種機の前後位置を自由には変更できず、特に、畝立て成形機と独立しては変更できなかった。そのため、完成した畝上に正確に播種することができず、日当たりや根の呼吸、排水性等といった生長に適した環境を種子に与えることができないことから、作物の収穫量の減少や品質の低下を招く、という問題があった。これは、前記畝立て作業では、土の硬さ・粒度・含水量等の条件に応じて、前後方向での畝の形成位置が大きく変化するからであり、例えば、土が柔らかくて流動しやすい場合には、土が高速で後方に流れるため畝は通常よりも後方に形成され、逆に、土が硬くて流動しにくい場合には、土の移動が遅くなり畝は通常よりも前方に形成される。このため、畝立て同時播種機では、播種位置が常に完成直後の畝上にあるように播種機の前後位置を調節する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、ロータリ耕耘装置の後部に装着されると共に、畝立て成形機と播種機を備えた畝立て同時播種機において、前記ロータリ耕耘装置に対する前記播種機の前後位置・高さ・姿勢を、前記畝立て成形機とは独立して変更可能な位置調節機構を設けたものである。
請求項2においては、前記位置調節機構は、高さ・姿勢調節機構と前後位置調節機構とから構成され、該前後位置調節機構は、前記ロータリ耕耘装置に設けたガイド体と、該ガイド体に沿って前後方向にスライド可能な移動体とを備えており、該移動体に、前記高さ・姿勢調節機構を介して前記播種機を装着するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、ロータリ耕耘装置の後部に装着されると共に、畝立て成形機と播種機を備えた畝立て同時播種機において、前記ロータリ耕耘装置に対する前記播種機の前後位置・高さ・姿勢を、前記畝立て成形機とは独立して変更可能な位置調節機構を設けたので、播種機の前後位置も自由に変更することができ、完成した畝上に正確に播種して、日当たりや根の呼吸、排水性等といった生長に適した環境を種子に与えることができるため、作物の収穫量の増加や品質の向上を図ることができる。
請求項2においては、前記位置調節機構は、高さ・姿勢調節機構と前後位置調節機構とから構成され、該前後位置調節機構は、前記ロータリ耕耘装置に設けたガイド体と、該ガイド体に沿って前後方向にスライド可能な移動体とを備えており、該移動体に、前記高さ・姿勢調節機構を介して前記播種機を装着するので、前後位置調節機構をガイド体と移動体とから成る簡単な構成で形成することができ、畝立て同時播種機の部品コストを低減すると共にメンテナンス性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に関わる畝立て同時播種機をトラクタの後部に装着した状態の斜視図、図2は播種機が後方にある場合の畝立て同時播種機の側面図、図3は位置調節機構の側面図、図4は播種機の側面図、図5は前後位置調節機構の斜視図、図6は播種機が前方にある場合の畝立て同時播種機の側面図である。
【0007】
まず、トラクタ1の後部に本発明に係わる畝立て同時播種機3を装着した場合の全体構成について、図1乃至図4により説明する。
トラクタ1の後部の作業機装着装置にはロータリ耕耘装置2が昇降自在に装着され、該ロータリ耕耘装置2の後部に、畝立て成形機4と複数の播種機5とから成る畝立て同時播種機3が装着されている。
【0008】
図1、図2に示すように、このうちのロータリ耕耘装置2においては、左右中央にギアボックス6が配置され、該ギアボックス6より前方に入力軸が突出され、該入力軸は、ユニバーサルジョイント7やドライブ軸等を介してトラクタ1のPTO軸と連結され、トラクタ1からの動力をギアボックス6内に伝達するようにしている。該ギアボックス6の側面より両側方にはビーム8・8が突出され、該ビーム8・8のそれぞれの中途部には本体プレート9がUボルト29・29によって固定され、該本体プレート9の左右略中央部の前端からは左右の支持杆11・11が前方に突設されており、該支持杆11・11は、それぞれ左右のピン12・12によってトラクタ1のロアリンク10・10に連結されている。更に、該支持杆11・11近傍の本体プレート9前部からは正面視門型状のマスト13が立設され、該マスト13上部の連結杆13aの左右略中央部には左右の取付プレート14・14が固設されており、該取付プレート14・14の前端間に、トラクタ1のトップリンク16がピン15によって連結されている。このようなトップリンク16、マスト13、ロアリンク10・10を介することにより、ロータリ耕耘装置2をトラクタ1の後部に確実に連結支持した上で牽引できるようにしている。
【0009】
前記ビーム8・8の外側端には、チェーンケース17上部とサイドサポート18の上部が固設され、これらチェーンケース17下部とサイドサポート18下部の間に耕耘爪軸19が横架され、該耕耘爪軸19上にナタ爪よりなる多数の耕耘爪20・20・・・が側面視で放射状に植設されている。該耕耘爪20の回転軌跡21の上方は、ゴム等の軟質材から成る耕耘カバー22によって覆われ、該耕耘カバー22は前記本体プレート9の後端より垂設されて耕土が飛散しないようにしている。これにより、耕耘爪軸19は、前記入力軸よりギアボックス6内のギア、ビーム8内の伝動軸、チェーンケース17内のスプロケット、チェーンを介して回転駆動され、耕耘爪20・20・・・が回転して耕耘できるようにしている。
【0010】
図1乃至図3に示すように、前記ビーム8・8を挟んで、前記支持杆11・11と反対側の本体プレート9後部には左右の連結杆23・23が固設され、該連結杆23・23の後部23a・23aには第1ツールバー24が左右方向に延設されており、該第1ツールバー24の後面には固定板26が配設されている。そして、該固定板26を、上下のボルト27・27によって後面から前記後部23a・23a側に締め付けることにより、第1ツールバー24を連結杆23・23に固定するようにしている。
【0011】
そして、前記畝立て成形機4においては、この第1ツールバー24の左右端と左右略中央の3箇所に3個の畝立器28が装着されている。該畝立器28においては、第1ツールバー24に係止具30がボルト31によって左右摺動可能に固定され、該係止具30の後面には縦パイプ33が固設され、該縦パイプ33には、吊杆34が側面のボルト32・32によって上下摺動可能に挿着されている。そして、該吊杆34の下端には畝立てを行う畝立板35が固着され、該畝立板35では、尖端板35aと、該尖端板35a後部に平面視でハ字状に後方に拡がる両側板35b・35bとから成り、該両側板35b・35bの後下部は下すぼまりに傾斜して支持フレーム36によって連結されている。これにより、該支持フレーム36によって剛性を高めた畝立板35を上下左右にスライドさせ、第1ツールバー24に対する左右位置と高さとを自由に変更することができ、形成する畝の幅・高さ・形状に適した位置に畝立板35を配置できるようにしている。
【0012】
これら3個の畝立器28の間には均平板37が介設されている。該均平板37の前縁は前記耕耘カバー22の後縁に蝶番などで連結されると共に、均平板37の平面視略中央部には吊杆41の下端が固定されている。そして、該吊杆41の上部は、ボルト42・42によって縦パイプ40に上下摺動可能に挿着され、該縦パイプ40は、前記第1ツールバー24にボルト39によって左右摺動可能に固定された係止具38の後面に固設されている。これにより、均平板37についても、前記畝立器28と同様に、上下左右にスライドさせ、第1ツールバー24に対する左右位置と高さとを自由に変更することができ、畝形成に適した状態に地面を均せるようにしている。
【0013】
図1、図2、図4に示すように、前記播種機5は、前記第1ツールバー24に位置調節機構43を介して連結された第2ツールバー25に装着されている。該第2ツールバー25は左右方向に延設されており、播種機5においては、前上部の嵌合体45が前記第2ツールバー25に外嵌され、フックネジ46によって左右位置調節可能に固定されると共に、該嵌合体45からは播種フレーム47が垂設されている。該播種フレーム47の下部には平行リンク48・49の前部が回動自在に枢支され、該平行リンク48・49の後端には揺動フレーム50が枢結されると共に、平行リンク48・49の対角線上には付勢バネ51が介装され、前記揺動フレーム50は、常に下方に回動するように付勢されている。
【0014】
該揺動フレーム50の前面より下方には、作溝器である作溝ディスク52の支持杆53が突出され、該支持杆53の下端に作溝ディスク52の回転軸54が軸支されている。この作溝ディスク52は、前方が閉じた平面視V字状の2枚ディスクから構成されると共に、作溝ディスク52の外側には、前記支持杆53より後斜め下方に突出した掻き落とし板55が配設され、該掻き落とし板55によって、付着した土等を除去するようにしている。そして、作溝ディスク52後部の空間内には、播種ガイドパイプ56の先部が挿入され、作溝ディスク52間に播種できるようにしている。
【0015】
前記揺動フレーム50からは、作溝ディスク52後方で種子落下位置の後方に、覆土体である覆土ディスク57が突設支持されており、該覆土ディスク57によって種子が軽く覆土されるようにしている。更に、揺動フレーム50の後端からは支持杆58が後方に突出され、該支持杆58の後端に鎮圧輪59が軸支されており、該鎮圧輪59によって、覆土後の種子が鎮圧される。本実施例では、鎮圧輪59は駆動輪としても機能する構成となっており、この鎮圧輪59の回動軸は側方へ突出してチェーンケース60内に挿入され、該チェーンケース60内のスプロケット及びチェーンを介して、前記揺動フレーム50に横架した播種装置61の入力軸62が駆動されるようにしている。なお、鎮圧輪59の側部にはラグ59a・59a・・・が突設されており、畝44の上面に対して滑らないようにすると共に、スクレーパ63を付設して付着土を除去し、作業効率の向上を図るようにしている。
【0016】
これにより、前記揺動フレーム50に付設された作溝ディスク52、覆土ディスク57、鎮圧輪59は、畝表面の凹凸に従って、前記平行リンク48・49が下方に付勢された状態で回動しながら上下動するので、播種作業においてトラクタ1の機体が上下動等しても、各々の条毎に、しかも畝表面に対して、略水平を保ちながら上下するため、播種深さを均一に保ち、しかも、播種装置61の繰出装置の駆動も確実に確保することができる。
【0017】
また、該播種装置61は種子ホッパ83を有し、該種子ホッパ83の直下には目皿タイプの繰出装置84が配設されている。該繰出装置84においては、繰出ケース85内に形成された収納部86に円盤状の繰出回転体87が収納され、該繰出回転体87の中央には回転軸88の上端が装着されている。該回転軸88の下端にはベベルギア89が固設され、該ベベルギア89は前記入力軸62に固設されたベベルギア90と噛合されており、前記鎮圧輪59から入力軸62に入力された動力が、ベベルギア89・90、回転軸88を介して繰出回転体87に伝達され、該繰出回転体87が回転駆動される。
【0018】
繰出回転体87には複数の図示せぬ搬送孔が穿孔されており、前記種子ホッパ83から流下してきた多数の種子91の一部は、回転する繰出回転体87の搬送孔内に入ると、前記収納部86に形成された繰出口86aまで搬送され、該繰出口86aに連通された前記播種ガイドパイプ56を通って、作溝ディスク52間に播種されるようにしている。
【0019】
そして、前記繰出ケース85は、全体が合成樹脂等の透明材料で構成されており、全方向から繰出回転体87の外周面を外から目視できるようにしている。更に、該繰出回転体87の外周面87aを等間隔に複数のエリア87bに分割し、少なくとも該エリア87bを彩色することで、遠方からでも、繰出ケース85内での繰出回転体87の回転状況を一目で確認できるようにしている。なお、前記外周面87aの一部のみにエリア87bを設けるようにしてもよい。
【0020】
なお、本実施例においては、繰出ケース85全体を透明材料で構成したが、繰出ケース85の一部のみを透明材料で構成してもよい。また、繰出ケース85内部に繰出回転体87を遮蔽する部品がある場合は、繰出ケース85及び該繰出ケース85内部の部品の全体又は一部を透明材料で構成してもよい。また、完全な透明材料でなく、半透明性の材料を用いてもよい。あるいは、繰出ケース85を透明材料又は半透明材料に構成するのではなく、繰出ケース85の側面又は前後面で駆動部や種子の搬送に影響を与えない部分に開口部を設け、内部の繰出回転体87の一部を目視できるように構成することもできる。
【0021】
いずれにしても、繰出ケース85の外から繰出回転体87の全体又は一部が目視できる構造であればよく、繰出ケース85は上記構造に限定されるものではない。更に、本実施例の繰出装置は目皿タイプであるが、スライドロール等のロールタイプでもよく、繰出回転体の回転で種子の繰出を確認可能な構造のものであればよい。
【0022】
すなわち、繰出ケース85と、該繰出ケース85に収納されると共に外面に形成された搬送孔に種子91を入れて回転することにより種子を一定量ずつ搬送して繰り出す繰出回転体87とを具備する繰出装置84において、前記繰出ケース85の全体又は一部を透明材料又は半透明材料で構成したり、あるいは繰出ケース85の側面又は前後面に開口部を設けることにより、該繰出ケース85の外側から前記繰出回転体87の全体又は一部を目視可能とするとともに、前記繰出回転体87の目視可能な部位の外周面87aに回転方向に非一様な色彩を設けることで、該色彩の動きを繰出ケース85の外側から見ることにより、繰出回転体87の回転状況を明確に確認することができ、種子が正確に投下されているか否かを容易に確実に確認することができる。しかも、繰出ケース85を透明材料又は半透明材料で構成し、繰出回転体87に彩色を施すだけで済むので、センサ等の高価な部品を別に設ける必要がなく、低コストで繰出回転体87の回転状況を確認することができるのである。
【0023】
次に、本発明に係わる前記位置調節機構43について、図1乃至図3、図5、図6により説明する。
位置調節機構43は、前後位置調節機構64と高さ・姿勢調節機構65とから構成される。図1,図3、図5に示すように、このうちの前後位置調節機構64においては、前記第1ツールバー24の左右略中央部に2個のガイド体66が配置されている。該ガイド体66の下部には側面視で下方に開いたコ字状の係止部66aが形成され、該係止部66aの前後面には複数のネジ68が上下方向に固設されており、係止部66aを第1ツールバー24に上から嵌合させた後、固定板67に開口した四隅の固定孔67aに前記ネジ68を挿通させるようにして、該固定板67を前記第1ツールバー24下面に当接した上で、前記ネジ68にナット69を下方より螺嵌させることにより、ガイド体66を第1ツールバー24に左右位置調節可能に固定することができる。
【0024】
該ガイド体66の上部には、前後方向に向いた角パイプ状のガイド部66bが形成され、左右の該ガイド部66bには、平面視で前方が開いたコ字状の移動体70の左右の摺動部70a・70aが挿通され、該移動体70が前記ガイド部66b・66bに沿って前後にスライドできるようにしている。そして、前記摺動部70a・70aの後端間は連結部70bによって連結されており、左右方向に延設された該連結部70bの左右略中央部に、前記高さ・姿勢調節機構65が装着されるようにしている。
【0025】
更に、前記左右のガイド部66bの上下面には、平面視で同一位置にそれぞれピン孔66cが開口されると共に、左右の摺動部70aの上下面にも平面視で同一位置となるようにピン孔70cがそれぞれ開口され、該ピン孔70c・70cは、間隔をおいて前後方向に複数個穿孔されている。前記ガイド体66のピン孔66cに移動体70のピン孔70cが重なるようにして移動体70を前後方向にスライドさせた後、これらピン孔66c・66c・70c・70cに係止ピン71を挿通させることにより、ガイド体66に対する移動体70の前後位置を所定位置に固定できるようにしている。
【0026】
なお、この移動体70は、その位置が無段階に調節可能な構成としてもよい。例えば、前記ガイド体66のガイド部66bに設けたネジ孔にボルトを螺挿し、該ボルトの先部を摺動部70aの外側面に押圧することにより、無段階にスライドさせた後の移動体70を所定位置に固定することができ、これにより、簡単な構造で固定位置の微調整が可能となる。また、移動体70のスライドをギア駆動によって行うことにより、移動体70の前後位置を無段階に調節可能な構成としてもよい。例えば、前記移動体70の摺動部70aに、該摺動部70aの長手方向にわたって外向きのラックを設け、該ラックに係合するピニオンには、前後位置調節用のハンドルの支軸に固定されたギアを噛合させるのである。このハンドルを回動操作すると、移動体70は前後方向に無段階にスライドされ、ハンドル操作を停止すると、移動体70も所定位置に停止する。停止した後は、ハンドルをフック等で係止することにより、移動体70は複数のギアを介して確実に固定される。
【0027】
前記高さ・姿勢調節機構65においては、前記移動体70の連結部70bの左右略中央に、側面視で前方に開いたコ字状のヒッチ72が嵌合され、上下方向に挿通するヒッチピン72aによって、ヒッチ72が移動体70後部の連結部70bに連結されている。更に、ヒッチピン72aによって係止しただけでは、移動体70とヒッチ72との間にガタが発生するので、締め付けボルト72bにより押圧体72cを押さえて、ヒッチ72と移動体70間のガタを無くすようにしている。
【0028】
該ヒッチ72から上方に調節フレーム73・73が立設され、該調節フレーム73の下後部に設けた枢支軸73aに、回動フレーム74・74が枢支されている。調節フレーム73・73の上部と回動フレーム74・74の上部はそれぞれピン75・76によって枢支され、このうちのピン75には姿勢調節ハンドル77のネジ部77aが螺挿されており、該姿勢調節ハンドル77を回動することにより、回動フレーム74・74が枢支軸73aを中心にして前後回動できるようにしている。
【0029】
前記回動フレーム74・74の後端両側にはガイド杆78・78が垂設されると共に、回動フレーム74・74の後部間にはネジ杆79が回動自在に枢支され、該ネジ杆79の上端に高さ調節ハンドル80が設けられ、ネジ杆79の下端はバー取付体81に対して螺挿されている。該バー取付体81の前両側にはパイプ82・82が上下方向に左右平行に固設され、該パイプ82・82に前記ガイド杆78・78が挿入されており、前記高さ調節ハンドル80を回動すると、バー取付体81がパイプ82・82にガイドされながら昇降されるようにしている。なお、バー取付体81の後部には嵌合部92が形成されており、該嵌合部92を前記第2ツールバー25の左右中央にセットした後、取付金具を合わせて、ボルトで第2ツールバー25に固定できるようにしている。
【0030】
これにより、姿勢調節ハンドル77と高さ調節ハンドル80とを回動操作すると、バー取付体81は、枢支軸73aを中心に前後回動すると共に、パイプ82・82にガイドされながら昇降するので、移動体70に対するバー取付体81の姿勢と高さ、すなわちバー取付体81後部に固定された前記第2ツールバー25の姿勢と高さを自在に変更させることができる。
【0031】
以上のような構成において、土が流動しやすく畝立て作業時に土が高速で後方に流れ、畝が通常よりも後方に形成される場合には、図2、図3に示すように、前記前後位置調節機構64を用いて播種機5を後方に移動させる。すなわち、前記第1ツールバー24に固定したガイド体66から左右の前記係止ピン71を脱着した後、該ガイド体66のガイド部66b・66bに沿って、前記移動体70の摺動部70a・70aを後方に移動させ、播種機5の播種位置が畝の形成位置上に来た所で、ガイド体66のピン孔66cと移動体70のピン孔70cとに係止ピン71を挿通し、移動体70後端の連結部70bを適切な後方位置に変更するのである。続いて、前記高さ・姿勢調節機構65の姿勢調節ハンドル77を回動操作して、回動フレーム74を枢支軸73aを中心にして前後回動させ、前記連結部70bに対する回動フレーム74の前後角を変更し、更に、高さ調節ハンドル80を回動操作して、バー取付体81を回動フレーム74を基準に昇降させ、前記回動フレーム74に対するバー取付体81の高さを変更する。
【0032】
逆に、土が流動しにくく畝立て作業時には土が低速で後方に流れ、畝が通常よりも前方に形成される場合には、図6に示すように、前記前後位置調節機構64を用いて播種機5を前方に移動させる。すなわち、前記第1ツールバー24に固定したガイド体66から左右の前記係止ピン71を脱着した後、該ガイド体66のガイド部66b・66bに沿って、移動体70の摺動部70a・70aを前方に移動させ、播種機5の播種位置が畝の形成位置上に来た時点で、ガイド体66のピン孔66cと移動体70のピン孔70cとに係止ピン71を挿通し、移動体70後端の連結部70bを適切な前方位置に変更するのである。その後は、後方位置に変更する場合と同様に、高さ・姿勢調節機構65を用いて、連結部70bに対する回動フレーム74の前後角と、該回動フレーム74に対するバー取付体81の高さを変更する。
【0033】
そして、該バー取付体81には第2ツールバー25を介して播種機5が連結されていることから、前後位置調節機構64、高さ・姿勢調節機構65によって、前記第1ツールバー24に対する播種機5の前後位置・高さ・姿勢を自在に変更することができるのである。しかも、前述した如く、畝立器28や均平板37等から成る畝立て成形機4も、第1ツールバー24に対する左右位置・高さを自在に変更でき、播種機5の前後位置調節機構64、高さ・姿勢調節機構65とは互いに独立して調節可能な構成となっている。
【0034】
すなわち、ロータリ耕耘装置2の後部に装着されると共に、畝立て成形機4と播種機5を備えた畝立て同時播種機3において、前記ロータリ耕耘装置2に対する前記播種機5の前後位置・高さ・姿勢を、前記畝立て成形機4とは独立して変更可能な位置調節機構43を設けたので、播種機5の前後位置も自由に変更することができ、完成した畝上に正確に播種して、日当たりや根の呼吸、排水性等といった生長に適した環境を種子に与えることができるため、作物の収穫量の増加や品質の向上を図ることができる。
【0035】
更に、前記位置調節機構43は、高さ・姿勢調節機構65と前後位置調節機構64とから構成され、該前後位置調節機構64は、前記ロータリ耕耘装置2に設けたガイド体66と、該ガイド体66に沿って前後方向にスライド可能な移動体70とを備えており、該移動体70に、前記高さ・姿勢調節機構65を介して前記播種機5を装着するので、前後位置調節機構64をガイド体66と移動体70とから成る簡単な構成で形成することができ、畝立て同時播種機3の部品コストを低減すると共にメンテナンス性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係わる位置調節機構は、畝立て同時播種機だけでなく、複数の処理を連続して行うために各処理機間の前後位置・高さ・姿勢の調節が重要な、播種マルチ、マルチ同時土壌消毒機等の複合作業機に、汎用的に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に関わる畝立て同時播種機をトラクタの後部に装着した状態の斜視図である。
【図2】播種機が後方にある場合の畝立て同時播種機の側面図である。
【図3】位置調節機構の側面図である。
【図4】播種機の側面図である。
【図5】前後位置調節機構の斜視図である。
【図6】播種機が前方にある場合の畝立て同時播種機の側面図である。
【符号の説明】
【0038】
2 ロータリ耕耘装置
3 畝立て同時播種機
4 畝立て成形機
5 播種機
43 位置調節機構
64 前後位置調節機構
65 高さ・姿勢調節機構
66 ガイド体
70 移動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリ耕耘装置の後部に装着されると共に、畝立て成形機と播種機を備えた畝立て同時播種機において、前記ロータリ耕耘装置に対する前記播種機の前後位置・高さ・姿勢を、前記畝立て成形機とは独立して変更可能な位置調節機構を設けたことを特徴とする畝立て同時播種機。
【請求項2】
前記位置調節機構は、高さ・姿勢調節機構と前後位置調節機構とから構成され、該前後位置調節機構は、前記ロータリ耕耘装置に設けたガイド体と、該ガイド体に沿って前後方向にスライド可能な移動体とを備えており、該移動体に、前記高さ・姿勢調節機構を介して前記播種機を装着することを特徴とする請求項1記載の畝立て同時播種機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319094(P2007−319094A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153712(P2006−153712)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】