説明

略管状の解剖学的器官の運動性を評価するための装置および方法

本発明は略管状の解剖学的器官(1)内に導入するように適合された長手方向に延びるカテーテル(6)を備えた、前記器官(1)の運動性を評価するための装置であって、前記器官(1)の長さに沿って少なくとも部分的に電位(V(d))を測定するための検出ユニット(8)と、前記測定された電位の略階段状変化(19)を検出し、かつ前記階段状変化(19)に対応する前記カテーテル(6)に沿った位置と、前記カテーテル(6)を取り付けることのできる予め定められた固定点(16)との間の距離を決定するための評価ユニット(13)とをも備える装置に関する。また、本発明はかかる運動性評価のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略管状の解剖学的器官の運動性を評価するための装置であって、前記器官内に導入するように適合された長手方向に延びるカテーテルを備えた装置に関する。
【0002】
本発明はまた、略管状の解剖学的器官の運動性を評価するための方法であって、長手方向に延びるカテーテルを前記器官内に導入することを含む方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
食道は、胸腔を介して咽頭を胃と接続する延長中空器官である。食道は、長手方向に配向された1つの外側筋肉層と、筋繊維が周方向に配向された1つの内側筋肉層とから構成される。食道の内側は、内腔に面する扁平上皮を持つ粘膜によって覆われる。食道の主要な機能は、摂取食物を口腔から消化および吸収プロセスが行なわれる消化器系の腹部へ運ぶことである。要するに、食道上皮は、消化管の残りの部分の粘膜上皮のようには、消化に貢献しないということである。
【0004】
食道の遠位部は、胃管腔内の固形および液状内容物が食道内に入ることは防止するが嚥下した空気を選択的に排出させる弁機能をも有する。この弁機能は「下部食道括約筋」(LES)と名付けられ、したがってそれは胃への接続部に近い遠位食道の部分である。周囲の横隔膜からの外力と共に、LESは比較的高い管腔内圧を与え、それは複雑な神経ホルモン調節によって嚥下または曖気に関連して解放される。
【0005】
食道の疾患は非常に一般的であり、筋肉および/または粘膜療法の疾患に関係する。食道に関係する1つの非常に一般的な症状は、非心臓性胸痛すなわち「胸焼け」である。そのような症状は極めて一般的である。毎月、先進工業世界の人々の24%が胸焼けを報告しており、これらの人々の相当の割合が医者の診察を受けている。しかし、胃食道逆流は時には明白であるが、いつ、そして、なぜ胃食道逆流が胸焼け症状を引き起こすのか、特に食道粘膜傷害の徴候が無い場合、幾つかの不確実性が存在する。
【0006】
胸焼けの1つの周知の原因は、胃の酸性およびタンパク質分解びらん性の管腔内容物を食道内腔に逆流させる、LESの弁的性質の機能障害である。頻繁かつ長期にわたるそのような逆流症状は、粘膜の炎症反応(食道炎)を誘発し、病徴を発生し得る。この疾患は一般的に「胃食道逆流症」(GERD)と呼ばれる。最も顕著な逆流びらん性因子は、胃に由来する酸である。したがって、これらの症例では、胃液酸度を抑制する薬剤が症状緩和に非常に功を奏する。一般的に、この疾患は、1./患者の病歴、2./食道炎の内視鏡的所見、および3./長期間の酸性逆流症状および24時間にわたって食道に配置されたpH電極によって記録された頻度(24時間pH測定)によって診断される。しかし、胸焼けを訴える多くの患者が、24時間pH測定結果は正常であり、食道炎ではない。この状態は通常「非びらん性逆流症」(NERD)または「機能性胸焼け」と呼ばれ、例えば胆汁汚染非酸性逆流または食道の筋肉機能障害性疾患が関与する不明瞭な病態生理を有する。
【0007】
食道の症状は、それらが管腔内酸によって誘発されるかそれとも未知の因子によるかに関係なく、長手方向に配向された筋肉層の長期間収縮によって生じることが示唆されている。食道のこれらの持続性軸方向収縮は感覚神経によって監視され、感覚神経は次に中枢神経系に信号を伝える。
【0008】
先行技術に関しては、長手方向の筋肉層の活動は、腔内超音波装置によって記録される筋肉層の厚さの変化を解析することによって間接的に評価されてきたことに注目されたい。これに関連して、文書「Sustained esophageal contraction: a motor correlate of heartburn symptom」;N.Pehlivanovら;Am.J.Physiol.Gastrointest Liver Physiol;281:G743‐G751,2001は、食道の超音波撮像によって食道の筋肉の厚さを測定するためのシステムおよび方法を教示していることに注目することができる。食道の筋肉の厚さのそのような測定値は、筋肉の収縮の指標として使用することができる。しかし、該システムは特定の欠点を有する。第一に、測定の結果を完全に評価するために、比較的大きい努力が解析に要求されることに注目すべきである。特に、結果は熟練技師が評価しなければならないことが予想できる。しかし痛覚は、例えば食道が胃および十二指腸の短縮に影響された場合のように、消化管組織の長手方向の伸長によっても誘発されることがあり得る。
【0009】
さらに、食道の運動を調べる古典的な方法は、バリウム造影X線検査である。しかし、バリウム嚥下放射線検査の動的画像を得ることは非現実的であり、有害な放射線を伴う。また、超音波およびX線に基づく方法は両方とも、時間をかけて現れる異常を捕らえ損ねるおそれのある即時(on−the−spot)反射をもたらすことにも注意する必要がある。
【0010】
遠位食道の長手方向の運動のより詳細な解析は、内視鏡検査法によって粘膜に付着された放射線不透過インジケータを用いて報告されてきた。インジケータの相互間距離は軸方向の運動を反映し、画像蛍光透視法を用いて文書化される。これは、全ての患者に充分に耐えられるものではなく、また放射線を伴うので、日常的な検査には適さない。別の不利点は、各検査が複雑なデータ解析を受けなければならないことである。
【0011】
食道の長手方向の収縮を評価するための様々な方法があるが、実行手順が簡単であり、それによって食道のような管状解剖学的器官の運動性を調査することのできる、改善された方法およびシステムの必要性が依然として高まっている。このようにして、食道の症状と食道の長手方向の収縮との間の関係についての知識を提供することが可能になるであろう。
【0012】
例えば嚥下の後に生じる食道の環状収縮およびLES弛緩は、例えば多重マノメトリ(検圧法)を用いて容易に監視することができる。その場合、可撓管が食道内腔に導入される。マノメトリックセンサ(manometric sensor)が管に沿って固定位置に位置し、圧力が経時的に記録され表示される。食道のみならず、消化管の残りの部分でも、管腔内圧の振動が周方向収縮の関数として発生することに留意されたい。したがって、固定位置マノメトリは環状筋肉層の活動を反映する。また、軸方向の運動をもたらす外側の長手方向の筋肉層の収縮は、管腔内圧の変化を発生させず、したがって従来のマノメトリによって評価することができないことに注目することも重要である。
【発明の開示】
【0013】
本発明の目的は、食道の軸方向の運動の改善された評価のための装置および方法を提供することである。
【0014】
この目的は、冒頭に示した型の装置において、前記カテーテルの長手方向の範囲に沿って配設された電極装置と、前記器官の長さに沿って少なくとも部分的に電位を測定するための検出ユニットと、測定された電位の略階段状変化を検出し、かつ前記階段状変化に対応する前記カテーテルに沿った位置とカテーテルを取り付けることのできる予め定められた固定点との間の距離を決定するための評価ユニットとを備えることをさらに特徴とする装置によって達成される。
【0015】
前記目的はまた、冒頭に示した型の方法において、前記カテーテルの長手方向の範囲に沿って配設された電極装置によって運動性を評価するステップと、前記器官の長さに沿って少なくとも部分的に電位を測定するステップと、測定された電位の略階段状変化を検出し、かつ前記階段状変化に対応する前記カテーテルに沿った位置とカテーテルを取り付けることのできる予め定められた固定点との間の距離を決定するステップとを含むことをさらに特徴とする方法によって達成される。
【0016】
本発明によって特定の利点が得られる。第一に、本発明により、食道、胃、および/または十二指腸のような解剖学的器官の軸方向の運動の実時間の生体内評価が可能になることに注目されたい。特に、本発明は、食道および胃の上皮の電気生理学的特性の使用によって、食道の長手方向の運動すなわち収縮および伸長を監視する装置を記載する。
【0017】
本発明は、周方向収縮を評価するための他の方法、例えば従来のマノメトリと組み合わせることができる。そのような組合せ構成により、周方向および長手方向両方の運動作用の組合せ評価およびオンライン表示、すなわち2つの筋肉層の各々の活動の同時判定が可能になる。そのような組合せ評価は、GERD、NERD、および他の胃食道疾患後の症状発生の複雑な根拠に対する新たな洞察をもたらすであろう。
【0018】
要約すると、本発明は、胸焼けの根拠およびその後の薬理学的展開の解析に有益な相互作用的機能性の新しい図式を提供するための手段および方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、裂孔ヘルニアの診断、および円柱上皮の食道体部への延展(バレット食道)の診断に有益である。
【0020】
本発明に係る食道胃運動の評価は、カテーテルに前記カテーテルの幾何学的形状を示すためのセンサ装置がさらに設けられ、幾何学的形状の解析に基づいて解剖学的器官の収縮度の評価を可能にする、本発明の代替実施形態によってさらに改善することができる。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明に係る評価は、測定が2つの異なる移行帯で、適切には食道と胃との間の第1移行帯および胃と十二指腸との間の第2移行帯で、実行されるように適合されたカテーテルを用いることによって、さらに改善することができる。しかし、カテーテルの時折の屈曲はそのような測定に影響を及ぼすことがある。カテーテルの幾何学的形状を同時記録することによって、前記測定の精度はかなり改善することができる。
【0022】
したがって、食道の軸方向の運動の改善された評価を提供するという本発明の一般的目的は、症状の発生を引き起こし得る胃および十二指腸の対応する現象を含むことができる。
【0023】
本発明について、今、特定の実施形態および添付の図面に関連してさらに詳述する。
図1はヒトの食道および胃の一部を概略的に示す。
図2は本発明が利用される食道の断面を図1に比較して拡大して概略的に示す。
図3は本発明の第1実施形態に係るカテーテルの断面を図2に比較して拡大された図で示す。
図4は食道および胃の測定電位を示すグラフである。
図5は本発明の代替実施形態に係る装置を示す。
図6aは第1弛緩状態にあるヒトの消化器系の一部を示す。図6bは第2収縮状態にあるヒトの消化器系の一部を示す。
図7は本発明の代替実施形態に係る測定システムを示す。
図8aは第1状態の消化器系における本発明に係るカテーテルの曲率を示す。図8bは第2状態の消化器系における本発明に係るカテーテルの曲率を示す。
図9は本発明のさらなる実施形態の背後にある原理を示す。
図10は一般的に図9に対応し、前記のさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、略管状の解剖学的器官の運動性を評価するための装置および方法に関する。特に、本発明は、ヒトの食道の筋肉の収縮の形の長手方向の運動を検出するために使用することができる。そのような運動は、食道の本質的な収縮の形、または胃の収縮の結果生じる外部膨張力による食道の弛緩の形を取ることができる。
【0025】
しかし、本発明はヒトの食道に限定されず、以下の記述に一般的に対応する食道および胃の解剖学的構造を有する特定の種類の動物(例えばブタ、イヌ、ネコ等)に関連して、同様の用途に適用することもできる。
【0026】
本発明の原理について今、最初に好適な実施形態、および口腔(図示せず)と胃2との間に延在するヒトの食道1を概略的かつ簡略的に示す添付の図1に関連して説明する。
【0027】
食道1は、扁平上皮を持つ粘膜により覆われた内張り構造(図面には詳細には示さない)を有する。他方、胃2は、円柱型の腺性胃粘膜を特徴とする構造を有する。食道1の内張りの構造が胃2のそれとは異なるという事実は、以下で詳述するように、本発明に従って特定の電位測定を実行するときに使用される。
【0028】
さらに、食道1および胃2は、図1に破線で示される明確な移行帯3で相互に分離されると言うことができる。したがって、移行帯3は、食道1および胃2のそれぞれ食道粘膜および胃粘膜の間の境界または接合部に対応する。さらに、この移行帯3は、弁機能を持つLES(「下部食道括約筋」)4であって、食道1を胃2と接続し、かつ嚥下した空気の選択的排出を可能にする一方で胃の内容物が食道1内に入るのを防止するように働くLESに近接して配置されることが知られている。
【0029】
図1に示すように、胃2はまた十二指腸5およびさらに消化器系の残りの部分にも接続される。
【0030】
生存上皮の能動イオン輸送および先天的電気抵抗は、それぞれ食道1および胃2の粘膜内張りに電位差を生じることがよく知られている。また、食道および胃の表面上皮の経粘膜電位が著しく異なり、前者では一般的に12〜14mV、後者では30〜70mVであることもよく知られている。さらに、差分電位は食道1と胃2との間の移行帯3の粘膜形態に直接関係する。食道1の扁平上皮は、非常に明確な肉眼で見える場所(「Z線」とも呼ばれる)であってLES4に関連して位置する、移行帯3で円柱型の腺性胃粘膜に変化する。
【0031】
本発明は、移行帯3の位置を食道1の特定部分および胃2の特定部分に沿った電位の測定によって検出することができるという原理に基づく。特に、本発明は、電位の測定が移行帯3の両側で実行されるという事実に基づく。これは、通常食道1の筋肉収縮によって生じる食道1の軸方向の運動が、移行線3の実際の位置を連続的に検出しかつ追跡することによって、評価することができることを意味する。この原理について、今、図1に比較して少し拡大された食道1の図を示す図2に関連して詳述する。
【0032】
図2に示すように、本発明は、食道1内に導入するように設計されかつ適合されたカテーテル6の使用に基づく。さらに詳しくは、カテーテル6は、特定の剛性を有する可撓性で電気絶縁性(プラスチックまたはゴム)の材料から製造される。カテーテル6の材料の剛性は、カテーテル6を食道内に導入するのに充分に硬直である一方、食道がその長手方向に収縮しても依然としてその意図された形状を取るように、選択することが好ましい。
【0033】
図2は、カテーテル6が一連の電極7を備えることを概略的に開示する。本発明の第1実施形態では、前記電極7は、カテーテル6に沿って延びかつカテーテル6の長手方向に間隔を置いて配置された開口を持つ、複数の管腔によって構成される。本発明の第2実施形態では、前記電極7は、カテーテル6の外面に好ましくは0.5から1cmの間の予め定められた間隔を置いて取り付けられた、一連の導電性接点によって、好ましくは適切な金属によって構成される。
【0034】
第1実施形態の場合、各管腔は、適切な電解質を各管腔に供給しかつ各管腔の開口の位置に対応する食道に沿った位置で電位を測定するためのユニット8に接続される。第2実施形態の場合、各接点は、接点の位置に対応する食道に沿った位置の電位を測定するためのユニット8に接続される。
【0035】
本発明のどの実施形態を使用するかに関係なく、図2は検出ユニット8およびカテーテル6から検出ユニット8への結線9を示すことに注目することができる。これは、結線9が、電極の各々を検出ユニット8に接続する多重管腔コネクタ、または電極接点の各々から検出ユニット8への1組の電気ケーブルのいずれかとすることができることを意味する。
【0036】
使用中に、カテーテル6は好ましくは鼻(図示せず)を介して導入され、かつそれが食道1に沿って延びて胃食道接合部すなわち上述した移行帯3をまたぐ位置に到達し、前記電極7の幾つかが胃2の内部および食道1のその他の部分の内部に配置されるように導入される。また、図2に概略的に示すように、電極7の各々は結線9を介して検出ユニット8に接続される。
【0037】
本発明の第1実施形態に係るカテーテル6について、今、第1実施形態に係るカテーテル6の断面を図2に比較して拡大された図で示す図3を参照してさらに詳しく説明する。前述の通り、第1実施形態に係るカテーテル6は、一般的に8〜22個の規模であってカテーテル6の外周部に配設された、管腔7の形の複数の電極を含む。しかし、簡潔にするために、図3にはこれらの管腔7のうちの数本だけを示す。本発明は特定の個数の管腔7に限定されないことに留意されたい。各適用における管腔の個数の特定の選択は主として、カテーテルおよび測定に使用される他の機器のコストおよび複雑度のような他の因子も考慮して、測定中の所望の精度によって決定される。通常の適用では、食道1は、移行帯3の位置が約2〜5cm移動するように収縮すると期待することができる。移行帯3を正確に決定するためには、管腔開口間の距離を約0.5cmとすべきであると仮定することができる。また電極の組は移行帯3をまたがなければならないので、8〜22個の電極が適切である。
【0038】
各管腔7は、カテーテル6に沿って延びかつカテーテル6に沿った所定の位置の開口7aで終端する、管状ダクトとして形成される。特に、全ての管腔7に対応する開口7aは、カテーテル6の長手方向の延びに沿って好ましくは略均等に、カテーテル6に沿って間隔を置いて配置される。これは、開口7aが、食道の延びに沿って略均等間隔の複数の位置で食道1の内側に面することを意味する。
【0039】
したがって、第1実施形態では、カテーテル6は、各々がカテーテル6に沿った固定位置の側孔7aで終端する複数のチャネルの形の電極7を備えた、プラスチック管によって構成される。電解質(好ましくは生理食塩水、すなわち150mMのNaCl)が一定の遅い速度で各側孔7aを介して腸管内腔に流入し、外部電圧計への導体として働く。こうして各チャネルは別個の電極7として働く。
【0040】
図3は模式図であり、第1実施形態の場合、開口7aはカテーテル6の外周部に分布することに注目されたい。
【0041】
したがって、カテーテル6の電極7の各々と、基準として使用されるさらなる電極10との間の電位差を、検出ユニット8によって測定することができる。該実施形態では、参照電極10は、測定が行なわれる個人の皮下に、または電解質ブリッジを介して血流中に配設することが好ましい。さらに、参照電極10はさらなる結線11を介して検出ユニット8に接続される。
【0042】
図2を参照すると、測定対象者である個人は破線および参照番号12で示される。また、カテーテル6の電極7と参照電極10との間の前記電位差を測定するために、検出ユニット8は、好ましくは従来の高インピーダンス電圧計の形の電圧測定ユニットを備える。検出ユニット8はさらに、さらなる結線14を介して評価ユニット13に接続される。評価ユニット13は好ましくはコンピュータベースであり、検出ユニット8によって提供される電位差測定値に基づいて食道1の長手方向運動の量を評価するように適合される。また評価ユニット13は、運動の評価の結果をグラフで示すためのディスプレイ(図示せず)を随伴することができる。一般的に、評価ユニットは、測定電位の少なくとも1つの略階段状変化を検出し、かつ前記階段状変化に対応する前記カテーテルに沿った位置と、カテーテルを取り付けることのできる予め定められた固定点(以下で説明する)との間の距離を決定するように構成される。
【0043】
本発明では、カテーテルの電極7の各々と参照電極10との間の電位差、すなわち移行帯3をまたぐ部分に沿った電位差を示す値は、検出ユニット8によって測定され、評価ユニット13に転送される。これに関連して、電位差は関数V(d)と表わすことができ、ここで電位差Vはカテーテルの電極7の各々の鼻孔からの距離の関数であり、すなわち電位差はV(d)として示すことができる。このために、カテーテル6を鼻の特定の点に、すなわちそれが長手方向に移動しないように固定する必要がある。代替的に、カテーテル6の上端部を他の適切な基準点に、例えば口腔または咽頭に固定することができる。図2において、固定点(すなわち好ましくは鼻)は参照番号16によって模式的に示される。
【0044】
電位差は移行帯3の両側で測定されるので、カテーテルの電極7は、測定中にそれらが移行帯3をまたぐように配設しなければならない。これは、たとえ食道1が図2に矢印15によって示されるように収縮するかあるいは伸長しても、移行帯3の位置を、カテーテル6に沿ったある位置における電位差の略階段状変化として検出することができることを意味する。
【0045】
参照電極10が皮下に配設された参照電極によって構成される図2に示した実施形態の代替例として、参照電極は、既存の電極の1つの形、例えば図2に参照番号7bで示される電極7の最上位の1つとすることもできる。したがって、第1実施形態は経粘膜電位差の測定に依存するが、第2実施形態は経粘膜的に測定されず、代わりに基準として選択された特定の電極に比較した電極の各々の間の相対的電位差に依存する。
【0046】
図4において、各電極と参照電極10との間の電位差V(d)が、鼻孔からの距離の関数として表示される。これは、複数の電位差測定がカテーテルの電極7の位置に対応する食道に沿った位置で実行されることを意味する。これらの位置は図4に小さい丸で示される。
【0047】
上に説明した通り、食道から胃へ(またはその逆)の経路に沿って電位差の鮮明かつ明確な段差があるという事実のため、移行帯3は、電位差が食道の値から胃の値へ(またはその逆)の段差を生じる位置として識別される。これは、参照番号17によって示される図4の曲線の第1部分が食道の略均等電位値に対応する一方、曲線の第2部分18が胃の略均等電位値に対応することを意味する。最後に移行帯は、曲線で階段状変化を形成する第3の急勾配部分19として示される。これに関して、用語「階段状変化」は、この文脈では、カテーテルに沿った電位値が比較的均等な値からその後の異なる(すなわち、より高いかより低い)値にかなり急激に変化し、それによって固定点16からの距離の関数としての電位のグラフに比較的急勾配が形成されるという事実を記載するために使用される。
【0048】
さらに、図4において、収縮(短縮)は左を指す矢印によって示され、弛緩(伸長)は右を指す矢印によって示される。
【0049】
本発明は、食道の長手方向の筋肉活動による収縮および伸長を検出するために使用することができる。これは図に破線で示され、それは食道の収縮および移行帯の上向き方向すなわち口腔への方向の偏位に対応する。換言すると、固定点から図4にdで示される移行帯までの距離は、食道収縮すなわち短縮の結果減少する。これは、本発明が、運動性の評価中に予め定められた固定点16に取り付けるように適合された、カテーテル6に対する食道1の運動性を評価するために使用されることを意味する。
【0050】
評価ユニット13(図2参照)による提示のために、データは次の3つの寸法、すなわちX軸上の距離、Y軸上の電位差(代替的に、各距離に表示されるデルタ値として、例えば1つの近位食道電極と残りの食道および胃の電極との間の差)、およびZ軸の時間で表示することが好ましい。
【0051】
本発明の適切な実施形態では、食道胃粘膜の電位差の測定および同じ位置の電圧の測定を同時に行なうように使用することができる。流路の圧力を体外で同時に測定し、別個に表示し、マノメトリ解析に使用することができることは公知である。この低コンプライアンス流動システムの圧力変化はしたがって流動抵抗の変化に依存し、それは今度は、環状筋肉活動のため食道内腔に存在する静水圧に依存する。
【0052】
マノメトリック測定の原理はそれ自体、既知である。しかし、食道の周方向および長手方向両方の収縮の組合せ評価は、食道および胃の疾患に新しい洞察をもたらすものと期待できることに注目することができる。
【0053】
代替実施形態では、カテーテルは、例えばマノメトリ、超音波、およびインピーダンス測定に使用される他のセンサシステムをも組み込んで、固体状に幾つかの導体に分割された低電気抵抗の材料から構成される。
【0054】
さらに、電位の測定は、カテーテルに沿ったPH測定またはインピーダンス測定のようなさらなる型の測定と組み合わせることができる。この方法で、その後の解析をより正確にすることができる。また、幾つかのパラメータが同時に検出されるという事実のため、時間の節約を達成することができる。
【0055】
マルチチャネルマノメトリは、LESの高圧帯の動力学の識別記録を可能にする。さらに、管腔内圧に重ね合わされた呼吸依存圧力振動を解析することによって、胸腔(負吸気圧)と腹腔(正吸気圧)との間の機能境界を非常に高い精度で識別することが可能である。これは、LESの高圧帯が胸腔の周囲負圧によって変形する裂孔ヘルニアの場合には特に興味深いかもしれない。この図式は多重電位差記録の使用によるZ線上の位置ステートメントと組み合わされ、裂孔ヘルニア、特にバリウム嚥下または内視鏡検査中には捕捉することが難しいかもしれない摺動型の裂孔ヘルニアの新規の診断ツールの基礎となる。
【0056】
円柱状胃腸粘膜上皮の特徴的電位差は、食道内腔内のそのような上皮の病理学的発生の診断に使用することもできる。この状態はバレット食道と呼ばれ、後で食道癌が発生する顕著な危険があるとみなされる。
【0057】
好ましくは、本発明は、消化管運動活性の他の評価、例えばマノメトリ、(例えばインピーダンス測定による)管腔内容物の流れの記録、または(例えば超音波による)他の機能評価と組み合わされる。
【0058】
症状の発生は長手方向の筋系の強力な内因性収縮または拡張/延伸のいずれかに依存し、両方とも結果的に器官の軸方向の運動を引き起こすので、隣接し合う器官すなわち胃および十二指腸の機械的事象を評価することは非常に重要である。上述した本発明による食道の収縮および伸長の評価は、こうして、図5に示す代替的実施形態によってさらに改善することができる。この実施形態では、カテーテル6’には、以下で詳述するように前記カテーテル6’の幾何学形状を示すためのセンサ装置が設けられる。
【0059】
十二指腸5は、ヒトまたは特定の動物の消化器系の略管状器官である。胃腸管は主に、筋繊維が周方向に配向された1つの内側層と、筋繊維が軸方向に配向された1つの外側層とから構成された2層筋肉管である。これらの筋肉層の活性による機械的機能は消化管に沿って多少異なる。第1部分すなわち食道は主として輸送である。胃は貯蔵所として働き、研磨機能のみならず輸送的性質をも有する。後者の機能は、糜粥の対応部分を胃から小腸へ送り出すために、消化能に関連して正確な調整を受ける。
【0060】
消化器系の略管状器官の環状筋肉層(すなわち周方向に配向された上述の筋繊維から成る)の収縮は、管腔内容物を混合しかつ推進する圧力勾配を形成することがよく知られている。機能の観点から見ると、環状筋肉層は蠕動ポンプとして働く。他方、消化器系の長手方向の筋肉層(すなわち軸方向に配向された上述の筋繊維から構成される)の機能はあまり明確ではなく、適切な方法論の欠如のため、周方向の活性ほど広範には研究されていない。消化管の軸方向の短縮は、消化管壁が運動シリンダとして働きかつ管腔内容物が受動ピストンとして働くピストンポンプの構成要素を形成することによって、推進に貢献すると考えることができる。環状蠕動活性と統合して、そのような機械的事象は、推進および混合のための複雑かつ効果的な力を生成することができる。
【0061】
図5に概略的に示すように、十二指腸5は一点に、あるいはむしろ一領域21に、固定されると言うことができる。十二指腸5のための固定領域21は、十二指腸5(胃2の続きとして形成される)の下行部が腹膜後に固定され、それによって図5において参照番号21で示す第1の解剖学的固定領域が形成されることから画定される。さらに、第2の解剖学的固定領域22は、十二指腸5がいわゆるトライツ靭帯によって吊着されることから画定される。この領域は、図5において参照番号22によって示される。
【0062】
この代替実施形態では、食道の運動性の評価が、十二指腸の幾何学的形状の評価を提供することによっても改善することができる。前記代替実施形態は図5に示されており、2つの部分、すなわち一般的に食道1、胃2を通して十二指腸5に入るまで延びる第1部分と、十二指腸5に沿って(少なくとも第1固定領域21の前の点から)さらに延びる第2部分とによって構成されるということができるカテーテル6’を含む。
【0063】
図6aおよび6bは、2つの異なる状態にあるヒトの消化器系23の一部分の概略簡易図である。図6aはヒトの弛緩状態の上部消化器系の一部分を示す一方、図6bは、収縮状態の上部消化器系の同一部分を示す。図6aに示すように、十二指腸5は胃2の下部から湾曲状に延びる。
【0064】
第1組の矢印24によって図6aに示すように、十二指腸5は周方向に収縮するように機能する。この理由から、第1組の矢印24は、十二指腸5の範囲に対して略直角の方向に構成される。そのような管状収縮は結果的に十二指腸5に圧力勾配を生じ、それは管腔内容物を混合し、推進する。さらに、第2組の矢印25によって図6aに示すように、十二指腸5は、十二指腸5に沿って略長手方向に収縮するようにも機能する。長手方向に延びる筋繊維の活性による十二指腸のこの軸方向の短縮は、管腔内容物の推進に貢献すると考えることができる。
【0065】
図6aは、弛緩状態である第1状態の、すなわち十二指腸5の長手方向の筋肉層が弛緩した状態の十二指腸5を示す。この第1状態とは対照的に、図6bは、第2状態、より正確には収縮した状態の十二指腸5を概略的に示す。収縮状態は、前記長手方向に配向された筋肉層の収縮による十二指腸5の軸方向の短縮の結果、発生する。
【0066】
この代替実施形態では、図6bに示すように、消化器系、例えば十二指腸5のそのような軸方向または長手方向の収縮度の測定は、食道1の特定部分および胃2の特定部分に沿った電位の測定によって、移行帯3の上述した検出と一緒に使用することのできる貴重な情報を提供することができる。この目的を達成するために、代替実施形態は、食道1、胃2、および十二指腸5内を延びるカテーテル6’の使用に基づく。カテーテル6は、低剛性を有する材料から製造され、消化器系内に導入することができる。好ましくは、プラスチックまたはゴム材が使用される。
【0067】
カテーテル6’は、収縮状態(図6b)中のその形状と比較して、弛緩状態(図6a)中に異なる形状を取る。さらに、該実施形態では、カテーテル6’の物理的形状すなわち幾何学的形状は、それぞれ弛緩および収縮状態中に決定される。カテーテル6’の形状に関する情報は次いで、十二指腸5の収縮度の評価に使用される。この原理について、今、さらに詳述する。
【0068】
図7を参照すると、該実施形態に係る装置が示されている。すなわち、カテーテル6’は、上述の通り移行帯3をまたいで配設された幾つかの電極7を有している。図7において、カテーテル6’は、消化器系内に導入されていない状態で示されている。さらに、カテーテル6’は、十二指腸5内部におけるカテーテル6’の幾何学的形状を捕捉するように適合されたセンサ装置を含む。前記センサ装置は、カテーテル6’の下部に沿って、すなわちセンサ7の下に配置された複数の放射線不透過マーカ26によって構成されることが好ましい。マーカ26は、ヒトまたは動物のX線画像を得る技術である蛍光透視によって観察可能となるように、すなわち可視化されるように適合される。この実施形態では、マーカ26付きのカテーテル6’は、前記マーカ26の各々の位置を検出するように適合された、蛍光透視スキャンニング装置27に関連して使用される。蛍光透視スキャンニング装置27は測定ユニットを形成し、該ユニットは中央制御ユニット28をも含み、それは好ましくはコンピュータをベースとするが、他の方法でも実現することができる。
【0069】
カテーテル6’の使用中に、マーカ26はX線装置27によって検出可能である。特に、マーカ26の各々の位置が、例えば直交座標系を基準にして決定される。マーカ26の各々の位置に関するデータは、さらなる評価のために制御ユニット28に転送される。X線装置27からの情報に基づいて、制御ユニット28は、マーカ26によって提供される幾何学的形状を示す値に基づいて、十二指腸5の長手方向の収縮度を決定するように適合される。換言すると、制御ユニット28は、胃腸系が弛緩から収縮状態になったときのカテーテル6’の形状の幾何学的変化を評価するように適合される。
【0070】
さらに、カテーテル6’の形状に関する情報は、コンピュータ30の一部を形成するディスプレイ29に表示することができる。これは、制御ユニット28およびディスプレイ29と関連ソフトウェアとを備えたコンピュータ30が一緒に、消化管壁の軸方向の変化の推定を含め、変化したカテーテルの曲率の解析に使用できる測定ユニットの一部を形成することを意味する。そのような解析は、上述した移行帯3の移動の解析を改善するために使用することができる。この目的を達成するために、図7に係るカテーテル6’はカテーテル6’に沿って配置された放射線不透過マーカ26、および上述の通り移行帯3をまたぐように配設された電極7の両方を有する。このようにして、カテーテル6’は上述の通り2つの部分に分割されると言うことができる。
【0071】
また、カテーテル6’は、幾つかの側孔31によるマノメトリ測定のための手段を備えることが好ましい。マノメトリックセンサは結線32によって制御ユニット28に接続される一方、電極7は、電解質を供給しかつ食道に沿った位置で電位を測定するためのユニット8に接続される。前記ユニット8、カテーテル6’へのその結線9、ならびに評価ユニット13およびその結線14もまた、図7に概略的に示される。参照電極(図7には図示せず)からの結線11もまた、図7に概略的に示される。
【0072】
したがって、図5〜7に示した実施形態に係るカテーテル装置は、消化管、例えば十二指腸または結腸の特定部分の運動性を検出するため、および食道の運動性を評価するための一体化された構成を形成する。これらの2つの測定は、図7に係る装置によって同時に実行することができる。これは、そのような測定のためのコスト、時間、および手間を低減するので、実務的観点から有利である。また、2つの測定の結果を相関させて、食道、胃、および十二指腸の特定の疾患に関して新しい洞察をもたらすことができる。
【0073】
本発明は、同じ位置で圧力を同時測定するために使用することができる。流路内の圧力を体外で同時に測定し、別個に表示し、マノメトリ解析に使用することができることは公知である。この低コンプライアンス流動システムの圧力変化はしたがって流動抵抗の変化に依存し、それは今度は、環状筋肉活動のため管腔に存在する静水圧に依存する。
【0074】
マノメトリック測定の原理はそれ自体、既知である。しかし、周方向および長手方向両方の運動性の組合せ評価は食道、胃、および十二指腸の疾患に新しい洞察をもたらすものと期待できることに注目することができる。
【0075】
代替実施形態の背後の原理について、今、図8aおよび8bに関連してさらに詳述する。図8aは、カテーテル6’の長さに沿って配置された複数のマーカ26によって提示される、カテーテルの第1曲率33を簡素かつ概略的に示す。さらに、図8aに示された曲率は、十二指腸の弛緩状態に対応する(図6aと比較されたい)。
【0076】
他方、図8bは、十二指腸の収縮状態に対応するカテーテルの第2曲率34を示す(図6bと比較されたい)。明確にするために、上述した第1曲率33は、参考として図8bにも示される。十二指腸の収縮状態では、カテーテルの曲率はより尖鋭になる。代替実施形態では、収縮度の尺度は、カテーテルおよびしたがって十二指腸の収縮量を定義する適切な幾何学的パラメータを選択することによって得られる。
【0077】
長手方向の弛緩中に、十二指腸5の可動セグメントは解剖学的固定領域21から始まる曲線を形成する傾向がある。長手方向に配向された筋肉層の収縮のため、軸方向短縮が発生したときに、この曲率は図8bに示すようにより顕著になる。要するに、管腔内に配置された可撓性カテーテルの形状は、管腔の伸長の変化を達成し、それに従う。
【0078】
カテーテルの形状を記録することにより、検討中の曲率に当てはまる仮想的円の半径を計算することが可能になる。円周に対する半径の比例関係は、十二指腸5の固定部に対する長手方向の移動の絶対尺度として有用である。
【0079】
図8aに示すように、カテーテル6’の曲率を表わす円形セグメント35は、十二指腸5の弛緩状態を表わす曲率33に当てはめられる。同様にして、図8bに示すように、収縮状態のカテーテルの曲率を表わすさらなる円形セグメント36が曲率33に当てはめられる。さらに、図8aおよび3bにおいて、円形セグメント35、36は、十二指腸の弛緩状態および収縮状態の両方で同一でありかつ上述した第1固定領域21に対応する、固定基準点37から延びる。
【0080】
好ましくは、本発明は、円形セグメント35、36を使用して、十二指腸の弛緩状態および収縮状態の両方の仮想円周を計算するように構成される。弛緩状態の半径r1(図8a)および収縮状態の半径r2(図8b)は示されるため、対応する円周の値は周知の公式2*π*rを用いて計算することができる。次いで、2つの円周の計算値を使用して、十二指腸の長手方向の収縮度が評価される。
【0081】
加えて、カテーテル6’の幾何学的形状は、コンピュータ30と協働するディスプレイ29に表示することができ、該コンピュータは次に制御ユニット28に接続される。
【0082】
代替的に、カテーテルの延び33、34に沿って、2つ以上の曲率を画定することができる。この実施形態の原理は図には示さない。例えば、第1曲率は第1固定領域21の前に画定することができ、第2固定領域は、第1固定領域21、および第2固定領域22により近い第3のより扁平な曲率のすぐ後に画定することができる。これは、経時的な十二指腸の長手方向の収縮のずっと正確な評価の可能性をさらに増大させる。
【0083】
該実施形態は、幾何学的形状を示すものとして円形セグメントを決定する上述の方法に限定されない。一般的に、十二指腸の長手方向の収縮度を決定するために、カテーテル6’の範囲に沿った位置、傾き、曲率、および形状を決定するためのどんな方法でも使用することができる。
【0084】
さらなる実施形態では、上述した複数の放射線不透過マーカ26は、一般的に同一の目的に役立つ他のセンサ装置に置き換えることができる。例えば、カテーテルの曲げの測定、すなわちカテーテルの幾何学的形状の測定を達成するために、複数のひずみゲージの形のセンサ装置を使用することができる。ひずみゲージは、4つの抵抗素子を有する電気回路網であるホイートストンブリッジに構成することができる。これらの素子の1つまたは幾つかを、ひずみゲージで構成することができる。曲げひずみがこれらのひずみゲージの1つに作用すると、このゲージの抵抗が変化する。ホイートストンブリッジ構成によって、ひずみゲージによって発生する抵抗の変化を測定することができる。
【0085】
幾つかのそのようなひずみゲージをカテーテルに沿って配設することができる。各々のゲージは、使用中にカテーテルに作用する曲げ歪みを反映し、かつしたがってカテーテルの幾何学をも反映する測定値を提供するために、ホイートストンブリッジの一部として電気的に接続される。
【0086】
さらなる代替例では、カテーテルは、カテーテルの湾曲に従うように好ましくはカテーテルの内部に沿って延びる、1つ以上の光ファイバの形のセンサ装置を設けることができる。さらに、前記ファイバの曲げの程度および無期を測定するために、光ファイバ曲げセンサを設けることは既知である。曲げの程度は、例えばそのような単数または複数のファイバ中を伝搬しかつファイバの曲げの結果変調される光から結果的に得られる干渉パターンを検出することによって、評価することができる。この目的を達成するために、ファイバは、カテーテルの曲げを反映するようにカテーテル内に配置することのできる、例えば曲げ感応素子を含むことができる。そのような仕方で、ファイバ(およびしたがってカテーテル)に存在する曲げの程度および向きを評価することができ、したがってカテーテルの幾何学的形状の測定を達成するために使用することもできる。
【0087】
さらなる代替実施形態では、カテーテルは、それらの位置に関する情報を提供しかつ前記情報を外部送受信ユニットに送信するように適合された、幾つかのトランスポンダの形のセンサ装置を設けることができる。この目的を達成するために、送受信ユニットには、前記トランスポンダと通信するためのアンテナが設けられる。また、送受信ユニットは、アンテナ付きの送受信ユニットによって捕捉されるトランスポンダの各々の位置に関する情報に基づいて、カテーテルの実際の幾何学的形状を評価するように適合された制御ユニットに接続される。
【0088】
トランスポンダは、例えば受動トランスポンダタグの形を取ることができ、各々のそのようなタグの位置を検出するためにアンテナと協働する。このようにして、そのようなセンサ装置を使用して、カテーテルの幾何学的形状の測定を達成することができる。
【0089】
また、該実施形態は、消化管の運動活性の他の評価、例えばマノメトリまたは管腔内容物の流動の記録(例えばインピーダンス測定による)または他の機能評価(例えば経粘膜電位差の記録)と結合することができる。
【0090】
長手方向の筋肉活動の本発明の集中的評価をマノメトリ測定と結合する可能性は、カテーテル6’に幾つかの側孔31によるマノメトリ測定のための手段が設けられることを示す、図7に概略的に示される。このようにして、管に沿った所定の位置にマノメトリックセンサが配置され、圧力が経時的に記録されかつ表示される。この目的を達成するために、マノメトリックセンサは結線9によって制御ユニット28に接続される。そのような多重管腔マノメトリックカテーテルは、胃腸の環状筋肉層の活性によって生じる周方向収縮による管腔内圧の変化を記録するために使用される。そのようなマノメトリック測定の原理はそれ自体既知である。このため、それらについてここでは詳述しない。
【0091】
代替的実施形態は、腸の延びに沿って特定の位置に配置された腔内の可撓性カテーテルの三次元形状を評価しかつ表示することによって、消化管壁の長手方向の運動を推定するために使用することができる。
【0092】
幾何学的形状の評価は、消化器系の様々な部分、例えば十二指腸のみならず、例えば結腸でも、筋肉収縮を評価するために使用することができる。この評価は、挿管処置によって到達でき、かつ消化管の可動部分のみならず既知の解剖学的位置に固定された部分も存在する、消化管の特定領域でも適用可能である。消化管のそのような解剖学固定点の例として、図6aおよび6bに示すように可動部分として近位部および遠位部の両方を持つ十二指腸の下行部が挙げられる。別の例として、可動である横行結腸を持つ上行および下行大腸が挙げられる(図示せず)。第3の例として、可動部分としてS字結腸を持つ骨盤底との肛門結腸結合部が挙げられる。また、この評価は、消化器系以外の略管状の解剖学的器官に関連して使用することもできる。例えば、本発明は胆道または尿生殖路の導管の測定に使用することができる。
【0093】
要約すると、図5〜8に示した代替的実施形態は、上述の通り予め定められた固定点16に取り付けられたカテーテル6’に対する食道1の運動性を評価するためのプロセスと組み合わせて、消化管、例えば十二指腸の特定部分の軸方向の運動を、そのような部分の幾何学的形状の解析によって評価するために使用される。
【0094】
電位差の測定を含むさらなる実施形態では、そのような測定は、食道1と胃との間の移行帯3、および経粘膜電位差が一般的に胃の30〜55mVから十二指腸の4〜6mVに明瞭に低下する、胃と十二指腸5との間の第2移行帯38の両方で実行することができる。この原理を図9に示す。ここに前記第2移行帯は参照番号38で示されている。これらの移行帯3、38の両方を上述した電位差の測定によって検出することによって、食道または胃の収縮を含む胃の長さ(すなわち、いわゆる胃の小曲率)を測定することができる。そのような場合、カテーテル6”は、2つの移行帯3、38をまたぐように配置された2組のセンサ(図2および7に示したセンサ7に対応する)と共に使用する必要がある。この実施形態はまた、図5〜8に関連して上述した幾何学的図形を評価するための装置と組み合わせることもできる。特に、該実施形態は、胃内腔で発生しかつ2つの粘膜移行帯3、38間の直線距離Dの評価を著しくゆがめるおそれのある、カテーテル6”の曲げを補償するために使用することができる。これは、図9に示すようにカテーテル6”によって画定される湾曲形状に基づいて幾何学的形状を評価し、かつ前記幾何学的形状の評価から前記距離Dを決定することによって行なわれる。これを図10に概略的に示す。図10は、前記距離Dを決定するためにカテーテル6”の幾何学的形状の評価を使用できることを示す。これは、上述の通り、図8aおよび8bに対応する方法で実行され、仮想円39がカテーテル6”の曲率に当てはめられ、円39の円周に対する半径の比例関係を使用して、距離Dを計算することができる。
【0095】
本発明は上述した実施形態に限定されず、添付する請求の範囲内で変化させることができる。例えば、本発明は、上述したようにヒトおよび動物に関連する測定に使用することができる。
【0096】
最後に、本発明は、ヒトまたは動物の食道以外の略管状の解剖学的器官に、より正確には、異なる粘膜形態を有する2つの隣接する部分に異なる電位が存在しかつ2つのそのような部分の間の移行帯によって分離される器官に関連する測定に関係して使用することができる。
【0097】
本発明では、経口または経鼻ルートのカテーテル6の挿管を適用することができる。経口挿管の場合、カテーテルは、測定が行なわれる個人の前歯に固定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】ヒトの食道および胃の一部を概略的に示す。
【図2】本発明が利用される食道の断面を図1に比較して拡大して概略的に示す。
【図3】本発明の第1実施形態に係るカテーテルの断面を図2に比較して拡大された図で示す。
【図4】食道および胃の測定電位を示すグラフである。
【図5】本発明の代替実施形態に係る装置を示す。
【図6】図6aは第1弛緩状態にあるヒトの消化器系の一部を示す。図6bは第2収縮状態にあるヒトの消化器系の一部を示す。
【図7】本発明の代替実施形態に係る測定システムを示す。
【図8】図8aは第1状態の消化器系における本発明に係るカテーテルの曲率を示す。図8bは第2状態の消化器系における本発明に係るカテーテルの曲率を示す。
【図9】本発明のさらなる実施形態の背後にある原理を示す。
【図10】一般的に図9に対応し、前記のさらなる実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略管状の解剖学的器官(1)内に導入するように適合された長手方向に延びるカテーテル(6)を備えた、前記器官(1)の運動性を評価するための装置において、
前記カテーテル(6)の長手方向の範囲に沿って配設された電極装置(7)と、
前記器官(1)の長さに沿って少なくとも部分的に電位(V(d))を測定するための検出ユニット(8)と、
前記測定された電位の略階段状変化(19)を検出し、かつ前記階段状変化(19)に対応する前記カテーテル(6)に沿った位置と、前記カテーテル(6)を取り付けることのできる予め定められた固定点(16)との間の距離を決定するための評価ユニット(13)と、
をも備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
器官(1、2)の異なる粘膜形態のために、異なる電気特性を有する前記器官(1、2)で前記電位(V(d))を測定するように適合されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電極装置(7)が移行帯(3)をまたぐように配設され、それによって前記段階状変化(19)の両側で電位を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記電極装置(7)が、前記カテーテル(6)に沿って長手方向に間隔を置いて装着された複数の電極(7)を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記電極(7)が前記カテーテル(6)の内部に沿って延びる複数の別個の管腔(7)によって構成され、前記管腔(7)の各々が前記器官(1)の内側に面する開口(7a)を有することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記電極(7)が前記カテーテル(6)に沿って相隔たる構成に配設された複数の導電性接点によって構成されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記検出ユニット(8)に接続された参照電極(10)を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記参照電極(10)が、前記運動性の評価が実行される個人に皮下的に、または接触状態に配設するように適合されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記電極(7b)の1つが参照電極をも構成することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
ヒトまたは動物の食道(1)の収縮度を決定するように適合されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記カテーテル(9)が、器官(4)の周方向の筋肉の収縮を評価するための、前記器官(4)の側孔マノメトリ用の手段(19)をも含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記カテーテル(9)が、前記カテーテル(9)に沿ったpH測定またはインピーダンス測定用のセンサ手段をも含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記カテーテル(6’)の幾何学的形状を示すためのセンサ装置(26)が前記カテーテル(6’)に設けられ、前記カテーテル(6’)と協働して、解剖学的器官(5)の収縮度を評価するように適合された測定ユニット(28)を備えることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記幾何学的形状を示す値に基づいて前記器官(5)の長手方向の筋肉の収縮度を決定するための手段が前記測定ユニット(28)に設けられることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項15】
カテーテル(6”)が使用中に沿わせて配置された2つの移行帯(3、38)に対応する2つの略階段状変化を検出するように前記カテーテル(6”)が適合されることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
長手方向に延びるカテーテル(6)を略管状の解剖学的器官(1)内に挿入するステップを含む、前記器官(1)の運動性を評価するための方法において、
前記カテーテル(6)の長手方向の範囲に沿って配設された電極装置(7)によって前記運動性を評価するステップと、
前記器官(1)の長さに沿って少なくとも部分的に電位(V(d))を測定するステップと、
前記測定された電位の略階段状変化(19)を検出するステップと、
前記階段状変化(19)に対応する前記カテーテル(6)に沿った位置と、カテーテル(6)を取り付けることのできる予め定められた固定点(16)との間の距離を決定するステップと、
をも含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記器官(1)の周方向の筋肉の収縮を評価するために、前記器官(1)の同時側孔マノメトリ測定をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カテーテル(6’)に設けられたセンサ装置(26)によって、前記カテーテル(6’)の幾何学的形状に関連する値を検出するステップと、
前記幾何学的形状を示す前記値に基づいて、解剖学的器官(5)の長手方向の筋肉の収縮度を決定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記幾何学的形状を示す値に基づいて、前記器官(5)の長手方向の筋肉の収縮度を決定するステップを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
カテーテル(6”)が使用中に沿わせて配置される2つの移行帯(3、38)に対応する2つの略階段状変化を検出するステップを含むことを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
略長手方向に延び、略管状の解剖学的器官(4)内に導入するように適合された略管状の解剖学的器官(1)の運動性を評価するためのカテーテル(6)において、
前記カテーテル(6)の長手方向の範囲に沿って、前記器官(1)の位置を画定する少なくとも1つの移行帯(3、38)に対応する位置に配設された電極装置(7)が前記カテーテル(6)に設けられ、少なくとも部分的に前記カテーテル(9)の長さに沿って測定された電位(V(d))の略階段状変化(19)の検出が可能となるように、かつ少なくとも前記移行帯(3、38)に配設されることを特徴とするカテーテル(6)。
【請求項22】
カテーテル(6’)の幾何学的形状を示すためのさらなるセンサ装置(26)を含むことを特徴とする請求項21に記載のカテーテル(6’)。
【請求項23】
前記センサ装置(26)が複数の放射線不透過マーカを含むことを特徴とする請求項22に記載のカテーテル(6’)。
【請求項24】
前記器官(5)内に側孔マノメトリのための手段(31)をも含むことを特徴とする請求項21、22、または23に記載のカテーテル(6’)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−535983(P2007−535983A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511318(P2007−511318)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000656
【国際公開番号】WO2005/104938
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506370799)ベンフ アーベー (1)
【Fターム(参考)】