説明

畦塗り機の整畦体

【課題】畦を整形する整畦体を装着した畦塗り機において、整畦体の内、畦の上面を整形する上面整畦部に、畦上面に確実に圧力を与えながら、損傷に対する高い耐久性を持たせる。
【解決手段】軸回りの回転により畦70の法面を整形する法面整畦部2、その軸方向先端部に連結されて法面整畦部2と共に回転し、畦70の上面70aを整形する上面整畦部3とを有する整畦体1を装着した畦塗り機において、上面整畦部3を多角柱状の筒状部材31と、筒状部材31の側面に重なり、筒状部材31の周方向に間隔を置いて接続される複数枚の弾性を有する羽根板32から構成し、複数枚の羽根板32を全体として筒状部材31の表面を覆う状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畦を整形する整畦体を有する畦塗り機において、整畦体の内、畦の上面を整形する上面整畦部に、畦上面の表層土を適度に圧密させる機能を持たせた畦塗り機の整畦体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畦塗り機の整畦体は円錐台形状の法面整畦部とその軸方向先端に連結される円筒形状の上面整畦部を持ち、畦塗り機の走行時に軸回りに回転することにより前処理体が先行して緩めた旧畦の土を新たに法面と上面を有する畦として整形する。整畦体は畦塗り機の走行速度より速い速度で転動し得る回転速度が与えられ、スリップ回転することで、畦の法面と上面を転圧し、表層土を圧密させる機能を発揮する(特許文献1参照)。
【0003】
整畦体がスリップ回転することで、法面整畦部と上面整畦部が畦の法面と上面の双方に圧力を加えるため、引き締まった畦を整形することができる。土は上面から作用する圧力によって法面側へ滑ろうとし、そのときの反力を法面整畦部が受けることができるため、上面整畦部によって上面から圧力を与えるだけでも畦に対する一定の締め固め効果を得ることはできる(特許文献2参照)。
【0004】
但し、特許文献1、2では、整畦体が回転するときの落差や段差を利用して畦上面を叩くことにより土に動的な圧力を与えるため、表層土を乱す、あるいは飛散させる可能性がある。
【0005】
これに対し、上面整畦部の外周に接続される、特許文献1のような複数枚の羽根板を屈曲させ、1枚の羽根板が2段階に畦上面に接触する形状にすることで、円筒面を有する羽根板を畦上面に接触させる場合より羽根板による土への加圧効果を向上させる方法がある(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−37106号公報(請求項1、段落0013、0019、図3、図4、図7〜図9)
【特許文献2】特開2006−55121号公報(請求項1、段落0021〜0022、図2、図3)
【特許文献3】特許第3997473号公報(請求項1、段落0008、0012〜0014、図3、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3のように屈曲した羽根板を畦上面に接触させる方法によれば、上面整畦部の軸方向を向いた凸条部を挟んで羽根板表面の向きが相違することで、凸条部がない連続した平面、もしくは曲面を有する羽根板を用いる場合より、軸回りの回転時に畦上面に接触する面積が小さくなる。この結果、畦上面に接触するときに土に与える圧力が大きくなり、加圧効果が高まる利点を有するとされている(段落0012)。
【0008】
特許文献3では羽根板が屈曲することで、屈曲しない場合より羽根板から畦上面に与える圧力が大きくなり、その分、羽根板が受ける反力も大きくなるため、羽根板から畦上面に十分な圧力を与える目的を果たすには上面整畦部自体が反力に抵抗できるだけの剛性を有している必要がある。
【0009】
しかしながら、上面整畦部の本体は対向する円形状のリングと、両リングを軸方向につなぐプレート状のつなぎ材から、半径方向の剛性、あるいはねじり剛性が乏しい骨組みとして構成されているため、上面整畦部の本体自体が畦上面を押圧するときに半径方向等に変形し易く、所期の目的を達成するだけの圧力を与えられない可能性がある。
【0010】
また羽根板は周方向の一端部において本体のつなぎ材にボルト等により接合されるが(段落0008)、上記の通り、上面整畦部の本体が半径方向の力に対して抵抗できるだけの剛性を持たないことから、つなぎ材が半径方向に変形(振動)し易いため、羽根板の接合状態での安定性に欠け、羽根板が畦上面を押圧するときに損傷する可能性がある。加えて羽根板はボルトを覆う状態にないため(図6)、ボルトによる羽根板の接合部分に土が入り込み、ボルトと羽根板の接合部分の損傷を早める可能性もある。
【0011】
なお、特許文献3で上面整畦部の本体を骨組み(フレーム)構造にしていることは、本体のプレート状のつなぎ材に羽根板をボルトを用いて接合するために必要な要件とされている(段落0008)。すなわちリングとつなぎ材から本体を構成することは、羽根板とつなぎ材を貫通するボルトにつなぎ材の背面(裏面)からナット等を締結するためであるから、ボルトの挿入とナット締め付け作業を行う上で、本体を開放した形状にしておくことは不可欠になっている。
【0012】
本発明は上記背景より、整畦体のスリップ回転により畦上面の表層土を押圧する上で、確実に圧力を与えながら、損傷に対する耐久性の高い形態の畦塗り機の整畦体を提案するものである。
【0013】
請求項1に記載の発明の整畦体は、軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、その軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを有する整畦体を装着する畦塗り機において、
上面整畦部が多角柱状の筒状部材と、この筒状部材の側面に重なり、筒状部材の周方向に間隔を置いて接続される複数枚の弾性を有する羽根板を備え、前記複数枚の羽根板が全体として前記筒状部材の表面を覆う状態にあることを構成要件とする。筒状部材の側面は筒状部材の周方向の面を指す。
【0014】
複数枚の羽根板が全体として筒状部材を覆うとは、上面整畦部が回転するときに、常にいずれかの羽根板が畦上面に接触する状態になるように複数枚の羽根板が筒状部材を覆うことを言い、筒状部材の側面部分が畦上面に対向するときと稜線部分が畦上面に対向するときのいずれも、筒状部材と畦上面との間に羽根板が介在する状態になることを言う。
【0015】
具体的には羽根板が筒状部材のいずれかの側面に重なって接続される接続部と、この接続部に連続し、上面整畦部の回転方向下流側に隣接する側面側へ張り出す張出部からなり、この張出部が上面整畦部の回転方向下流側に位置する羽根板の接続部を覆う状態にあることにより(請求項2)、複数枚の羽根板が全体として筒状部材を覆う形になる。回転方向下流側とは、上面整畦部が軸回りに回転するときに回転の向きの後方側を指し、回転方向下流側の羽根板は畦上面には、相対的に上流側である回転の向きの前方側に位置する羽根板の後に接触する。
【0016】
いずれかの羽根板が畦上面に接触する状態となるように、羽根板が筒状部材の表面を覆うことで、筒状部材の稜線部分が畦上面を押圧するときと、側面部分が畦上面を押圧するときのいずれのときにも直接的には羽根板を介して畦上面を押圧することになる。
【0017】
複数枚の羽根板が全体として筒状部材を覆う状態は、上面整畦部が回転し、少なくとも1枚の羽根板が畦上面に接触しているときに得られればよいが、例えば羽根板が筒状部材の外周側へ凸となる曲面を形成していれば、上面整畦部の回転中に羽根板が筒状部材を覆う状態を得易い。羽根板が接続部と張出部からなる場合には、張出部が筒状部材の外周側へ凸となる曲面を形成していればよい。
【0018】
羽根板の張出部が接続部と同一の平面をなして張り出す場合には、上面整畦部の回転中に羽根板の全面がほぼ同時に畦上面に接触し易く、羽根板の一部が土と接触している時間が長くなるため、平面が畦上面の土を引き摺る可能性がある。これに対し、張出部が筒状部材の外周側へ凸の曲面をなすことで、各羽根板が円筒面の一部に近い形状を形成し、羽根板の一部が土と接触している時間が短くなるため、羽根板は土を引き摺ることなく、スリップ回転により同一箇所を曲面によって連続的に均すことができることになる。
【0019】
上面整畦部が多角柱状の筒状部材と筒状部材の側面に重なって接続される弾性を有する羽根板からなることで、畦上面に直接、接触する羽根板は筒状部材の形状に倣って変形しながら畦上面を押圧する。一方、筒状部材は断面上の中心位置を一定にしたまま回転するから、中心から多角柱の稜線までの距離と側面までの距離が相違するため、稜線部分が押圧するときと、側面部分が押圧するときとでは圧力に差が生じ、稜線部分から押圧するときに圧力が大きくなる。
【0020】
従って上面整畦部は筒状部材の稜線部分の外周側に位置する羽根板から畦上面を押圧するときと、側面部分の外周側に位置する羽根板から畦上面を押圧するときとで異なる圧力で畦上面を押圧するため、スリップ回転することにより同一地点を羽根板から2通りの圧力で加圧することが可能である。
【0021】
同一地点を2通りの圧力で加圧できることで、畦上面を締め固める効果と畦を長さ方向に均等に仕上げる効果が得られ、土質、あるいは土の含水量の差異に関係なく、畦上面の表層土を適度に圧密させながら、均質に仕上げることが可能になる。含水量が多ければ、圧密により余剰水は自然に土から排除される。
【0022】
ここで、筒状部材の稜線部分(角部分)が直接、畦上面に接触する場合には、稜線部分から畦上面に与える圧力が側面部分からの圧力より大きいため、羽根板が均した土を稜線部分の両側に押し出すように作用し、畦上面に稜線部分の痕跡として溝が形成されることが想定される。このことは多角形状の表面を形成する特許文献3の凸条部にも言える。
【0023】
これに対し、本発明では複数枚の羽根板が全体として筒状部材の表面を覆うことで、筒状部材の稜線部分から畦上面を押圧するときに羽根板が圧力を分散させる作用を果たすため、稜線部分から畦上面を押圧し、締め固めながらその圧力を分散させ、土を均等に均すことが可能になっている。
【0024】
また上面整畦部の本体である筒状部材は多角柱状で、骨組み形式ではない多面体であることで、筒状部材自体が半径方向及び周方向に高い剛性を有し、ねじり剛性も高く、半径方向と周方向への圧力に対して変形しにくい性質を有するため、筒状部材自体が反力に対して高い安定性を保有する。このため、畦上面の押圧時に羽根板から十分な反力を与えることができる上、筒状部材自体が変形しにくいことで、羽根板からの加圧効果が確実に発揮され、想定通りの圧力を与えることが可能である。
【0025】
筒状部材に必要とされる曲げ剛性とねじり剛性はそれを構成する板(プレート)の板厚を一定以上に設定することで確保されるが、筒状部材の端面を閉塞する板や内接する板を付加することで剛性は格段に向上する。
【0026】
更に筒状部材が多面体であることで、ボルト等を用いて羽根板を筒状部材に接合する上で、筒状部材との十分な接触面積を確保することができるため、羽根板自体の変形に対する安定性が向上し、損傷に対する耐久性が高まる。
【0027】
特に羽根板の張出部がその周方向に、その羽根板が接続されている筒状部材の側面から前記下流側の側面を超える長さを有している場合には(請求項3)、筒状部材の稜線部分に2枚の羽根板が重なるため、羽根板が畦上面を均す上で、筒状部材の稜線部分に1枚の羽根板が位置する場合より羽根板による畦上面への圧力を分散させることが可能であり、畦上面を平滑に仕上げる効果が向上する。
【0028】
例えば稜線部分が直接、畦上面に接触する場合には、稜線部分からの圧力が集中的に畦上面に作用するが、筒状部材の稜線部分に2枚の羽根板が重なることで、稜線部分から畦上面に与える圧力の分散効果が増すことになる。また羽根板は弾性を有する(曲げ変形可能な)板であるから、2枚の羽根板が重なる場合には、畦上面に直接、接触する上面整畦部の表面の曲率が羽根板が1枚の場合より小さくなり、曲面が緩やかになるため、畦上面の均し効果も向上し、より平滑に仕上げることが可能である。
【0029】
また複数枚の羽根板が全体として筒状部材の表面を覆う状態にあることで(請求項1)、あるいは羽根板の張出部が上面整畦部の回転方向下流側に位置する羽根板の表面を覆う状態にあることで(請求項2)、上流側に位置する羽根板の下流側の部分が下流側に位置する羽根板の接合部を覆う(被覆する)状態が得られるため、羽根板の接合部分に土が入り込み、接合部分の損傷を早める可能性が低下し、損傷が抑制される。
【0030】
上面整畦部の回転に伴い、羽根板が畦上面から離脱しようとするときには、羽根板が弾性を有することで、復元力によって畦上面の土を跳ね上げることが想定されるが、この問題は羽根板の張出部の周方向先端部を筒状部材側へ湾曲、もしくは屈曲させることで(請求項4)、抑制することが可能である。張出部の周方向先端部は上面整畦部の回転方向下流側の端部であり、張出部は筒状部材の外周側へ凸の曲面を形成し得ることから、筒状部材側へ湾曲、もしくは屈曲するとは、先端部をそれ以外の張出部の部分より大きい曲率で湾曲させる、もしくは屈曲させることを言う。
【0031】
例えば羽根板の張出部の先端部がそれ以外の部分と同一の曲率である(羽根の張出部が先端部まで一様の曲面、もしくは平面である)場合、先端部が畦上面から離脱するときに、弾性変形状態から急激に復元するときの反力により畦上面の土を畦側へ弾くことが考えられる。これに対し、張出部の周方向先端部が筒状部材側へ湾曲等することで、図2に鎖線で示すように先端部が離脱するまで畦上面に接触した状態を維持することができる上、離脱時には上面整畦部の回転に伴って先端部が畦上面上を滑りながら離脱するため、土を弾くことなく、均すことが可能である。
【0032】
請求項2では羽根板が筒状部材の側面に重なる接続部と側面から回転方向下流側へ張り出す張出部を有することで、張出部が上面整畦部の回転時に筒状部材の周面(側面と稜線)に重なる状態と周面から離れる状態を繰り返すため、張出部は法面整畦部との境界(連結)部分において畦上面上の土と畦法面の土を不連続にする可能性がある。
【0033】
畦上面と畦法面の境界部分における土が不連続になる可能性は、羽根板の法面整畦部側の端部に、上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部側から法面整畦部側へ接近する形状をした移行部が形成されることで(請求項5)、回避することが可能である。移行部は羽根板の、主に張出部の法面整畦部側に形成される。
【0034】
移行部は回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部の軸方向の長さが大きくなる形状をし、例えば三角形状や台形状等に形成され、少なくとも一部は法面整畦部の羽根板に畦側から重なる。移行部はそれがない場合の、例えば長方形状の羽根板に付加的に接続されるか、一体となった形で連続する。
【0035】
移行部は上面整畦部の一部であることで、上面整畦部の回転に伴って畦上面に接近し、接触するときに筒状部材の周面に重なろうとするため、羽根板の法面整畦部側の端部に形成され、法面整畦部の羽根板に重なることと併せて、畦上面上の土を法面整畦部側へ流す働きをする。加えて法面整畦部の羽根板と共に、あるいは法面整畦部の羽根板の一部として畦上面と法面の境界部分における土を均し、畦の内部側へ圧密させる働きをする。結果的に畦上面と畦法面の境界部分における土が連続的に、均等に均されるため、不連続になる事態が回避される。
【0036】
羽根板は上面整畦部の使用状態では筒状部材の外周に固定された状態にあるが、筒状部材に対して着脱自在に接続されていれば(請求項6)、上面整畦部の清掃に加え、損傷、もしくは摩耗した羽根板の交換に対応可能になる。具体的には羽根板と筒状部材のいずれか一方に係合部が突設され、他方にこの係合部が係合可能な被係合部が形成され、係合部と被係合部が互いに係合することにより、羽根板は前記筒状部材の側面に着脱自在に接続される(請求項7)。
【0037】
係合部は羽根板の筒状部材側の面と、筒状部材の羽根板側の面のいずれかに形成され、被係合部は係合部に対向する側の面に形成される。係合部と被係合部は互いに係合したときに、羽根板を筒状部材に接続した状態を維持できる関係を持てばよく、例えば係合部が被係合部に係合したときに、係合部が羽根板の離脱の向き、すなわち筒状部材の軸方向、もしくは径方向に被係合部に係合すればよい。係合部は後述の、羽根板を筒状部材に押さえ付けるための接合部材に形成されることもあり、その場合、係合部は羽根板を貫通して筒状部材側へ突出することにより羽根板に突設されることになる。この場合、係合部は筒状部材に形成される被係合部に係合する。
【0038】
羽根板の筒状部材への接続が係合部と被係合部の係合によって行われることで、羽根板の筒状部材への接続作業と分離作業が単純化され、上面整畦部の清掃や羽根板の交換作業の効率が向上する。
【0039】
係合部が被係合部に係合するのみで、羽根板が筒状部材への接合状態での安定性を確保できない場合には、羽根板は係合部において被係合部に係合した状態で、羽根板のいずれかの部分において直接、もしくは間接的に筒状部材にボルト等により接合されることにより筒状部材への接合状態での安定性が向上する。羽根板の筒状部材への接合に上記した接合部材が使用される場合には、羽根板は間接的に筒状部材にボルト等により接合されることになる。
【0040】
係合部が被係合部に係合したときには、係合の離脱の向きに羽根板が筒状部材から分離する可能性があるから、係合の離脱を拘束するように、例えば羽根板をその外周側からプレート等の接合部材により筒状部材側へ押さえ付けた状態で、接合部材を筒状部材にボルト接合すれば、係合の離脱が確実に防止される。接合部材は筒状部材の側面に当接、もしくは側面と端面に当接する形をし、筒状部材に対しては側面、もしくは端面にボルトが螺入することにより着脱自在に接合される。
【発明の効果】
【0041】
上面整畦部が多角柱状の筒状部材と筒状部材の側面に重なって接続される弾性を有する羽根板からなることで、筒状部材の稜線部分の外周側に位置する羽根板から畦上面を押圧するときと、側面部分の外周側に位置する羽根板から畦上面を押圧するときとで異なる圧力で畦上面を押圧することができる。
【0042】
この結果、上面整畦部がスリップ回転することにより同一地点を2通りの圧力で加圧することができ、畦上面を締め固める効果と畦を長さ方向に均等に仕上げる効果が得られるため、土質、あるいは土の含水量の差異に関係なく、畦上面の表層土を適度に圧密させながら、均質に仕上げることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0044】
図1は軸回りの回転により畦70の法面を整形する円錐台形状の法面整畦部2と、その軸方向先端に連結されて法面整畦部2と共に回転し、畦70の上面(以下、畦上面)70aを整形する上面整畦部3とを有する整畦体1を装着した畦塗り機において、上面整畦部3が多角柱状の筒状部材31と、筒状部材31の側面に重なり、筒状部材31の周方向に間隔を置いて接続される複数枚の弾性を有する羽根板32を備え、複数枚の羽根板32が全体として筒状部材31の表面を覆う状態にある整畦体1の軸方向の端面を示す。
【0045】
畦塗り機本体10は基本的に図6に示すようにトラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して連結される、並列する連結フレーム11、11と、並列する連結フレーム11、11を互いに畦塗り機の幅方向に連結するヒッチフレーム12と、ヒッチフレーム12の後方に鉛直軸回りに揺動自在に連結されるオフセットフレーム13から構成される。
【0046】
オフセットフレーム13の前進方向後方側の先端位置からは畦塗り機本体10の幅方向に連結材14が張り出し、この連結材14とヒッチフレーム12との間に、オフセットフレーム13と平行にリンクフレーム15が架設され、双方に回動自在に連結される。オフセットフレーム13はこのリンクフレーム15とヒッチフレーム12、及び連結材14によって平行リンクを構成し、ヒッチフレーム12とオフセットフレーム13の先端位置との間に架設され、双方に連結されるシリンダ16の伸縮によってヒッチフレーム12に対してオフセット自在になる。
【0047】
ヒッチフレーム12のトラクタ側にはトラクタのPTO軸にユニバーサルジョイント等を介して連結されるギアボックス17が固定され、PTO軸からの動力はギアボックス17の入力軸に伝達され、入力軸からギアボックス17内の駆動軸を経てオフセットフレーム13の内部を通じ、オフセットフレーム13の先端に軸支された従動軸18に伝達される。
【0048】
畦塗り機の作業機50は図7に示すように主にオフセットフレーム13先端の従動軸18と同軸で、従動軸18から動力を伝達される伝動軸55を有する駆動ボックス51に連結される整畦体1と、駆動ボックス51から整畦体1に対して進行方向前方側へ張り出し、整畦体1の整形に先だって旧畦の土砂を緩める前処理体52から構成される。前処理体52は駆動ボックス51から動力を受けて回転する畦切り爪52aを有し、作業機50の走行中、整畦体1の前方位置で畦切り爪52aが旧畦の土砂を切り崩して緩めることで、整畦体1による整形の準備をする。
【0049】
図6に示すように連結材14の、リンクフレーム15との連結部分には整畦体1側へ張り出すアーム53が連結され、このアーム53と、駆動ボックス51との間に、作業機50を畦塗り機本体10に対して揺動させる作業機用シリンダ54が架設され、双方に連結される。作業機50はこの作業機用シリンダ54の伸縮によって作業姿勢の制御を行う。
【0050】
駆動ボックス41内には前記伝動軸55から動力が伝達される回転軸が配置され、この回転軸に整畦体1の法面整畦部2が連結される。法面整畦部2は回転軸の回転によって回転し、同時に上面整畦部3が回転する。
【0051】
法面整畦部2は例えば図8に示すように複数枚の扇形をした羽根板21を半径方向の直線部分で互いに連結することにより全体として円錐台形状に形成され、その先端位置である中心部には複数枚の羽根板21を連結する際の位置決めの基準になり、上面整畦部3と連結されるための連結部22が配置される。連結部22は法面整畦部2から上面整畦部3側へ突出した状態にある。
【0052】
連結部22の上面整畦部3側の端面には上面整畦部3とのボルト7等による連結のためのねじ孔22aが形成されており、上面整畦部3は図3−(a)に示すようにそれを軸方向に貫通するボルト7がねじ孔22aに螺入することによって連結部22に連結される。ボルト7は上面整畦部3の全長を貫通する必要はなく、上面整畦部3の先端側の端面からボルト7が単に挿通する挿通孔を形成し、その先の法面整畦部2寄りにボルト7が螺合するねじ孔を形成しておくことで、ボルト7の長さを短縮することができる。
【0053】
上面整畦部3の連結部22への連結にボルト7を使用する場合には、上面整畦部3を交換可能に連結することができる利点があるが、上面整畦部3と連結部22との連結はこの他、上面整畦部3と連結部22のいずれか一方の外周面に雄ねじを形成し、他方の内周面に雌ねじを形成しておくことで、上面整畦部3を軸回りに回転させ、直接、連結部22に交換可能に連結することもできる。
【0054】
図1は前記の通り、上面整畦部3の軸方向先端側の端面を示す。ここに示すように上面整畦部3の本体を構成する筒状部材31の本体部31aは1枚の、もしくは複数枚のプレートを折り曲げ加工することにより、あるいは複数枚のプレートを組み立て、互いに溶接することにより多角柱状の形状に形成される。
【0055】
本体部31aの軸方向両側の端部、または端部と軸方向中間部には本体部31aが中空であることによる剛性不足を補うためと、羽根板32を接合するための補剛板31bが配置され、本体部31aに接合される。図面では図3−(a)に示すように上面整畦部3の軸方向先端側の端面と法面整畦部2寄りの中間部に補剛板31bを配置し、端面に配置された補剛板31bを、羽根板32を固定するために利用している。
【0056】
補剛板31bは本体部31aに内接した状態で、または本体部31aの端面に接触した状態で、溶接やボルト接合等の手段により本体部31aに接合される。プレートからなる本体部31aの側面部分は剛性を確保する上では盲板が望ましいが、軽量化を図る目的で側面部分の一部に開口が形成されることもある。
【0057】
補剛板31bには上面整畦部3を法面整畦部2の連結部22に連結するためのボルト7が挿通する挿通孔31cが形成される。補剛板31bにはまた、接合部材4を用いて羽根板32を補剛板31bに当接させ、その状態で接合部材4を貫通するボルト5により補剛板31b接合するためのねじ孔31dが形成されている。図1ではねじ孔31dを断面上の中心に関して円弧状の長孔に形成することで、ボルト7の、連結部22のねじ孔22aへの位置調整を行えるようにしている。
【0058】
図1は上面整畦部3の筒状部材31の断面が正八角形である場合を示しているが、筒状部材31の断面形状は必ずしも正多角形である必要はない。筒状部材31の断面が多角形状であれば、筒状部材31(多角形)の稜線部分と側面部分で畦上面70aを押圧することができるから、図2に示すように各側面の幅が相違する多角形であることもある。但し、筒状部材31が正多角形であれば、上面整畦部3の回転時に一定の時間的間隔で稜線部分と側面部分から畦上面70aを押圧することができる。
【0059】
羽根板32は畦上面70aに接触したときに筒状部材31の外形に沿って弾性変形し、畦上面70aから離脱するにつれて元の形状に復元する弾性を有するポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂や鋼板等の金属材料等から成形され、筒状部材31の側面部分に着脱自在に接合される。
【0060】
図面では羽根板32の筒状部材31への接続状態での安定性を確保する(羽根板32を筒状部材31から離脱させない)ために、羽根板32の外周側に上記した接合部材4を配置し、接合部材4を筒状部材31に接合することにより羽根板32を筒状部材31に着脱自在に接続している。図面では特に接合部材4に、羽根板32を筒状部材31(本体部31a)の側面に押さえ付けた状態で、筒状部材31に接続しながら、筒状部材31の端面に接合されている補剛板31bに接合する機能を持たせている。
【0061】
図面ではまた、羽根板32と筒状部材31との着脱自在な接続作業を単純にするために、いずれか一方に、他方に係合する係合部を形成し、他方に係合部が係合する被係合部を形成している。上記のように図面では羽根板32の筒状部材31への接続を補うために接合部材4を使用していることから、接合部材4に係合部43を形成し、筒状部材31に被係合部33を形成しているが、接合部材4の係合部43が羽根板32を貫通し、筒状部材31側へ突出することで、羽根板32に係合部43を突設したことと同等になる。
【0062】
接合部材4に係合部43を形成した場合、図3−(a)に示すように接合部材4は羽根板32の表面に重なる当接部41と、筒状部材31の端面に接合されている補剛板31bに重なる接合部42の2部分からなり、当接部41の羽根板32側の面と、筒状部材31(本体部31a)の側面のいずれか一方に、他方に係合する係合部43が突設される。図3−(b)は(a)の係合部43部分の拡大図である。ここでは上記のように接合部材4の当接部41に係合部43を形成し、筒状部材31の側面に被係合部33を形成しているが、逆の場合もある。
【0063】
接合部材4に係合部43を形成したことに伴い、筒状部材31(本体部31a)の側面には係合部43が係合する被係合部33が形成される。係合部を筒状部材31に形成した場合には、羽根板32、もしくは接合部材4に被係合部が形成される。また接合部材4に係合部43を形成したことに伴い、図3−(b)に示すように羽根板32には係合部43が挿通する挿通孔32aが形成されるが、係合部43は羽根板32の筒状部材31側の面に突設されることもあり、その場合には、接合部材4の当接部41は羽根板32を単純に筒状部材31に押さえ付ける働きをする。
【0064】
係合部43は軸部43aの先端側(筒状部材31側)に頭部43bを有するピン形の形状をし、被係合部33は係合部43の頭部43bが挿通可能な挿通孔33aと、この挿通孔33aに連続し、係合部43の軸部43aが移動(スライド)自在な長孔状の溝33bを有する開口状の形状を有する。係合部43には頭部43bを有するピンやボルト等が使用される。
【0065】
接合部材4の筒状部材31(本体部31a)への装着時には、係合部43の頭部43bが羽根板32に形成されている挿通孔32aを貫通し、被係合部33の挿通孔33aを貫通して軸部43aまで挿通する。その状態で軸部43aが被係合部33の溝33bに沿って移動(スライド)することで、頭部43bが溝33bに、軸方向一方側と径方向外周側へ係合した状態になり、接合部材4が筒状部材31に接続された状態になる。接合部材4の離脱時には、接続時とは逆に、軸部43aを溝33bに沿って移動(スライド)させ、頭部43bを挿通孔33aから抜き出すことにより筒状部材31から外される。
【0066】
接合部材4の接合部42には接合部材4を補剛板31bに接合するためのボルト5が挿通する挿通孔42aが形成され、接合部材4はこの接合部42の挿通孔42aを貫通し、補剛板31bに螺入するボルト5によって補剛板31bに接合される。
【0067】
接合部材4の当接部41が羽根板32を筒状部材31の側面に押さえ付けた状態で、接合部42が筒状部材31の補剛板31bに接合されることで、羽根板32が筒状部材331に一体化し、上面整畦部3が形成される。筒状部材31に羽根板32が一体化した上面整畦部3は図3−(a)に示すように前記した法面整畦部2の連結部22に直接、連結される芯材6にボルト7により接合されることにより法面整畦部2と一体化する。
【0068】
芯材6は円筒形の本体61の内周側に軸方向に間隔を置いて配置された、剛性を確保するための複数枚の、挿通孔を有するフランジ62が接合されて形成される。土質条件によってはこの芯材6を上面整畦部3として使用することも可能である。上面整畦部3は筒状部材31の端面に接合されている補剛板31bと芯材6のフランジ62を貫通し、法面整畦部2の連結部22に形成されているねじ孔22aに到達するボルト7がねじ孔22aに螺入することにより芯材6に接合される。図3−(c)は図3−(a)に示す上面整畦部3の補剛板313b側の端面を示す。図4−(a)〜(d)は法面整畦部2に上面整畦部3が一体化した整畦体1の外観を示している。図4−(a)、(b)の矢印は整畦体1の回転の向きを示す。
【0069】
上面整畦部3の羽根板32は図1に示すように筒状部材31のいずれかの側面に重なって接続される接続部32aと、これに連続し、筒状部材31の回転方向下流側に隣接する側面(羽根板32)側へ張り出す張出部32bからなり、張出部32bはその幅方向に上面整畦部3の回転方向下流側に位置する羽根板32の接続部32aを覆う長さを有する。
【0070】
具体的には羽根板32の張出部32bはその周方向に、その羽根板32が接続されている筒状部材31の側面から回転方向下流側に隣接する側面を超える長さを有している。すなわち羽根板32の張出部32bの下流側の端部はその側に隣接する側面の稜線部分を超え、更に隣接する側面にまで跨る長さを有し、上面整畦部3の転動時には図2に示すように2枚の羽根板32が重なった状態で、進行方向前方に存在する畦上面70a上の土を羽根板32の下に巻き込みながら、スリップ回転する。
【0071】
図2は正多角形でない筒状部材31を持つ上面整畦部3が畦上面70a上を転動しているときの様子を示す。羽根板32の張出部32bの下流側の端部がその側に隣接する側面の稜線部分を超える長さを有することで、羽根板32が畦上面70aを押圧するときには、複数枚の、図面では2枚の羽根板32が重なった状態になり、筒状部材31からの圧力は複数枚の羽根板32を介して畦上面70aに伝達されることになる。
【0072】
羽根板32は接続部32aにおいて上記した接合部材4によって筒状部材31の側面に重なり、断面上の中心側へ押し付けられた状態で筒状部材31に接合される。接続部32aは面で筒状部材31の平面をなす側面に重なった状態で接合されることで、接合部材4によって筒状部材31に拘束された状態にある。この状態で、張出部32bは筒状部材31の外周側へ凸となる円筒面等の曲面を形成し、筒状部材31に対して曲げ(弾性)変形可能な状態にある。
【0073】
張出部32bが筒状部材31の外周側へ凸となる曲面を形成することで、張出部32bは畦上面70aに接触したときに、筒状部材31の中心からその稜線までの距離を半径とする円弧面を有する円筒に近い形状になる。
【0074】
前記のように張出部32bが周方向に回転方向下流側に隣接する側面を超える長さを有することと、筒状部材31の外周側へ凸となって湾曲することで、上面整畦部3の転動時には2枚の羽根板32が重なって土を羽根板32の下に巻き込み始め、羽根板32の回転方向下流側に先端部32cが畦上面70aから離脱するまで、土を曲面で均すことになる。このとき、上面整畦部3はスリップ回転するため、畦上面70aは圧密され、表面は平滑に仕上げられる。
【0075】
上面整畦部3の転動時には上面整畦部3の断面上の中心位置が一定に保たれることで、筒状部材31の稜線部分が畦上面70aに接近し、押圧しようとするときと、側面部分が接近し、押圧しようとするときとでは、羽根板32からの押圧力に差が生じ、稜線部分が押圧しようとするときの圧力が大きくなる。
【0076】
この関係で、筒状部材31の稜線部分から羽根板32を介して畦上面70aを押圧するときに土をより大きい圧力で加圧し、側面部分から羽根板32を介して押圧するときにはそれより小さい圧力で加圧するため、上面整畦部3は2通りの圧力で畦上面70aを圧密することができる。また上面整畦部3は移動速度より大きい速度で畦上面70a上を転動(スリップ回転)するため、畦上面70aを下方へ加圧しながら、表面を均質に均すことになる。
【0077】
図面ではまた、羽根板32の張出部32bの周方向先端部32c、すなわち回転方向下流側の先端部32cをそれ以外の張出部32bの部分より大きい曲率で湾曲、もしくは屈曲させることで、図2に示すように張出部32bの周方向先端部32cが畦上面70aから離脱するときに、この先端部32cが土を跳ね上げないようにしている。
【0078】
張出部32bは畦上面70aから離脱する直前には強制的に曲げ変形しているから、例えば張出部32bが周方向に一様の曲率を有している場合には、離脱しようとするときに、先端部32cが復元力によって急激に畦上面70aから跳ね上がることが想定される。これに対し、張出部32bの先端部32cが他の部分より大きい曲率で湾曲等することで、先端部32cが離脱するまで畦上面70a上を滑りながら畦上面70aに接触した状態を維持することができるため、土を跳ね上げることなく均すことが可能である。
【0079】
図5−(a)〜(e)は図1に示す上面整畦部3が畦上面70a上を転動し、1回転するときの様子を示す。上面整畦部3は畦上面70aから断面上の中心までの高さを一定に保持したまま回転する。上面整畦部3の断面上の中心位置は図2、図4に示すように筒状部材31の稜線部分と畦上面70aとの間に2枚の羽根板32が挟み込まれる程度の高さに設定される。
【0080】
図5−(a)は上面整畦部3を構成する筒状部材31の側面部分が畦上面70a側を向いている状況を示す。このとき、筒状部材31の側面部分は畦上面70aから浮いた状態にあり、その側面部分に固定された羽根板32の接続部32aの外周側に、その上流側の側面に固定された羽根板32の張出部32bが重なり、畦上面70aを適度の圧力で押圧する。
【0081】
筒状部材31の側面部分と畦上面70aとの間には間隔があるから、筒状部材31に関して外周側に位置する羽根板32の張出部32bは畦上面70aとの間で外周側へ凸の曲面状に弾性変形しながら土を押圧する。この状況では畦上面70a側を向いた筒状部材31の側面部分の外周側に張出部32bが位置する羽根板32の先端部32cは下流側の羽根板32の張出部32bに接触している。このとき、先端部32cは湾曲等していることで、先端が下流側の羽根板32の張出部32bに当接し、その先端部32cを有する羽根板32自身を下流側の羽根板32から突き放そうとするため、その先端部32cを有する羽根板32の張出部32bが円弧面等、外周側へ凸の曲面状に弾性変形させることに寄与している。
【0082】
図5−(b)は(a)から10°上面整畦部3が回転した状況を示す。このとき、筒状部材31の稜線部分が畦上面70aを押圧し始め、この稜線部分に押されて下流側の羽根板32を介して上流側の羽根板32の張出部32bが押し潰され、畦上面70aを(a)の状況より大きい圧力で押圧する。この状況では張出部32bにおいて畦上面70aに接触している羽根板32の上流側に位置する羽根板32の先端部32cが畦上面70aから離脱しようとしている。
【0083】
図5−(c)は(b)から更に10°上面整畦部3が回転し、筒状部材31の稜線部分が筒状部材31の中心のほぼ真下に位置し、稜線部分が畦上面70a側に最も接近した状況を示す。このときには筒状部材31の稜線部分が畦上面70aに最も接近しているから、(b)に続いて畦上面70aを最も大きい圧力で押圧する。(b)から(c)へ移行する過程で、畦上面70aに接触している羽根板32の上流側にある羽根板32の先端部32cは畦上面70aから離脱しているが、上記の通り、張出部32bの周方向の先端部32cは畦上面70a上を滑りながら離脱している。
【0084】
図5−(d)は(c)から更に10°上面整畦部3が回転し、筒状部材31の稜線部分が筒状部材31の中心の真下を通過し、稜線部分が畦上面70aを押圧し続けている状況を示す。(c)から(d)へ移行する間が最も畦上面70aに大きい圧力を与えるときになる。
【0085】
図5−(e)は(d)から更に10°上面整畦部3が回転し、(a)の状態から累積で40°回転し、(a)の直前の状況に至った様子を示す。このときには、筒状部材31の稜線部分が畦上面70aから離れ、側面部分が羽根板32を介して畦上面70aを押圧する状況へ移行しつつある。図5に示す上面整畦部3の筒状部材31は正八角形状であり、内角が135°で、外角が45°であるから、上面整畦部3は中心の回りに45°回転すれば、(a)の状態に復帰する。
【0086】
羽根板32の張出部32bの法面整畦部2側の端部には、図4に示すように上面整畦部3の回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部3側から法面整畦部2側へ接近する形状をした移行部32dが形成されている。移行部32dは主に張出部32bの端部位置から形成されるが、接続部32aと張出部32bに亘って形成されることもある。
【0087】
法面整畦部2を構成する複数枚の羽根板21はその回転方向下流側に位置する羽根板21が上流側に位置する羽根板21の背面に重なって組み合わせられることから、相対的に上流側に位置する羽根板21が上面整畦部3寄りに位置する。この関係で、法面整畦部2の相対的に上流側に位置する羽根板21との衝突を回避するために、移行部32dは上面整畦部3の回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部3の軸方向の長さが大きくなり、図4−(a)〜(d)に示すように三角形状、台形状、もしくは翼状、あるいはこれらに近い形状に形成される。
【0088】
図4−(a)、(b)、(d)中の破線は羽根板32の張出部32bと移行部32dの境界位置を示すが、移行部32dが張出部32bに連続し、張出部32bの一部として一体的に形成されている場合には、破線は実際には表れない。移行部32dは張出部32bとは別体の部品を張出部32bに連結することによっても形成される。移行部32dは図示するように法面整畦部2の羽根板21に上面整畦部3側、すなわち畦70側から重なり、例えば三角形状、もしくは台形状等の場合には、めくれを防止するために角部が落とされ、移行部32dの外形線は曲線状になる。
【0089】
上面整畦部3の回転に伴って羽根板32の張出部32bが畦上面70aに接触し、畦上面70aに押されて筒状部材31の周面(側面部分と稜線部分)に重なるときに、移行部32dも畦上面70aに押されるため、法面整畦部2の羽根板21の表面に重なろうとする。この結果、畦上面70a上の土は法面整畦部2側へ流されるため、畦上面70aと法面の境界部分における土は均等な圧力で均され、畦70の内部側へ圧密させられることになる。畦上面70aと法面の境界部分における土が均されることで、畦70の上面70aと法面との境界(面)が不連続になることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】正多角柱状の筒状部材に羽根板を接合した上面整畦部の構成例を示した端面図である。
【図2】正多角柱状でない筒状部材に羽根板を接合した上面整畦部の構成例と畦上面との関係を示した端面図である。
【図3】(a)は上面整畦部と法面整畦部との接合例を示した断面図、(b)は(a)の鎖線円部分の拡大図、(c)は(a)の端面図である。
【図4】(a)、(b)は法面整畦体に上面整畦部を接合して製作された整畦体を示した斜視図、(c)は(a)、もしくは(b)の端面図、(d)は側面図である。
【図5】(a)〜(e)は図1に示す上面整畦部が畦上面上を転動し、1回転するときの様子を示した端面図である。
【図6】畦塗り機全体の構成例を示した平面図である。
【図7】畦塗り機の作業機を示した平面図である。
【図8】整畦体の法面整畦部の例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0091】
1……整畦体、
2……法面整畦部、21……羽根板、22……連結部、22a……ねじ孔(ボルト7用)、
3……上面整畦部、31……筒状部材、31a……本体部、31b……補剛板、31c……挿通孔(ボルト7用)、31d……ねじ孔(ボルト5用)、
32……羽根板、32a……接続部、32b……張出部、32c……先端部、32d……移行部、
33……被係合部、33a……挿通孔、33b……溝、
4……接合部材、41……当接部、42……接合部、42a……挿通孔(ボルト5用)、43……係合部、43a……軸部、43b……頭部、
5……ボルト(接合部材4と補剛板31bとの接合用)、
6……芯材、
7……ボルト(上面整畦部3と法面整畦部2の接合用)、
10……畦塗り機本体、11……連結フレーム、12……ヒッチフレーム、13……オフセットフレーム、14……連結材、15……リンクフレーム、16……シリンダ、17……ギアボックス、18……従動軸、
50……作業機、51……駆動ボックス、52……前処理体、52a……畦切り爪、53……アーム、54……作業機用シリンダ、55……伝動軸、
70……畦、70a……上面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、その軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを有する整畦体を装着した畦塗り機において、
前記上面整畦部は多角柱状の筒状部材と、この筒状部材の側面に重なり、前記筒状部材の周方向に間隔を置いて接続される複数枚の弾性を有する羽根板を備え、前記複数枚の羽根板は全体として前記筒状部材の表面を覆う状態にあることを特徴とする畦塗り機の整畦体。
【請求項2】
前記羽根板は前記筒状部材のいずれかの側面に重なって接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に隣接する側面側へ張り出す張出部からなり、この張出部は前記上面整畦部の回転方向下流側に位置する羽根板の接続部を覆う状態にあることを特徴とする請求項1に畦塗り機の整畦体。
【請求項3】
前記羽根板の張出部はその周方向に、その羽根板が接続されている前記側面から前記下流側の側面を超える長さを有していることを特徴とする請求項2に記載の畦塗り機の整畦体。
【請求項4】
前記羽根板の張出部の周方向先端部は前記筒状部材側へ湾曲、もしくは屈曲していることを特徴とする請求項2、もしくは請求項3に記載の畦塗り機の整畦体。
【請求項5】
前記羽根板の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をした移行部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の畦塗り機の整畦体。
【請求項6】
前記羽根板は前記筒状部材に対して着脱自在に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の畦塗り機の整畦体。
【請求項7】
前記羽根板と前記筒状部材のいずれか一方に係合部が突設され、他方にこの係合部が係合可能な被係合部が形成され、前記羽根板は前記係合部と前記被係合部が互いに係合した状態で前記筒状部材の側面に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の畦塗り機の整畦体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate