説明

畦塗り機用整畦体

【課題】畦を強固に整形することができるとともに、整形後の畦に引っ掻き痕などが残りにくく滑らかな畦にすることができる畦塗り機用整畦体を提供する。
【解決手段】回転中心軸(回転軸81)を中心に回転する回転体(法面整畦部82,上面整畦部83)を備え、該回転体の外周面によって土を旧畦Kに塗り付ける整畦体80であって、回転体は、その外周面において、回転方向Fの反対側に向かって回転中心軸からの距離が徐々に減少して湾曲面841aが形成されている曲面部841と、回転方向Fの反対側に向かって回転中心軸からの距離が徐々に増加して端面842aが形成されているエッジ部842とが形成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦塗り機に用いられる畦塗り機用整畦体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畦塗り機用整畦体として、円錐台形状の法面整畦部と、その回転軸方向に連結される円筒形状の上面整畦部とを持ち、畦塗り機の走行時に軸回りに回転することにより、前処理体が先行して切り崩した旧畦の土を、この旧畦上に塗りつけることで新たに法面と上面とを有する新畦として整畦するものが知られている。
【0003】
このような畦塗り機用整畦体として、例えば特許文献1には、法面整畦部の表面を側面視ジグザグ状に形成することで、進行方向に対して前進角を設けるとともに、逃げ角を設けたものが開示されている。また、特許文献2には、法面整畦部として、隣接する整畦板同士の一部が重なるように複数の整畦板を配設し、当該重なり部分に所定の上下間隔が形成されたものが開示されている。さらに、特許文献3には、円錐形状の修復面に対して修復羽根が回転方向の後方に向かって突出するように形成された法面整畦部が開示されている。
【0004】
このような特許文献1乃至特許文献3に開示された整畦体を用いれば、確かに、畦に対する加圧を大きくすることができるため、旧畦の法面に対して土を強く押し込んで塗り付けることができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−276504号公報
【特許文献2】特開2003−70303号公報
【特許文献3】特開2001−148904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、整畦体の表面や整畦板を上記のような形状にすると、畦に対する加圧を高めることにより崩れにくい強固な畦に整畦できるものの、最終的に整畦板の端部(特許文献1においては、ジグザグ状部分の畦側の頂点部であり、特許文献2においては、整畦板の重なり部分であり、特許文献3においては、修復羽根の回転方向後方部分である)によって畦表面を引っ掻いてしまい、畦表面に引っ掻き跡が残り見栄えが悪くなる虞があった。
【0007】
本発明は、畦を強固に整畦することができるとともに、整形後の畦に引っ掻き痕などが残り難い畦塗り機用整畦体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明による畦塗り機用整畦体は、回転中心軸を中心に回転する回転体を備え、該回転体の外周面によって土を旧畦に塗り付ける畦塗り機用整畦体であって、前記回転体は、その外周面において、回転方向の反対側に向かって回転中心軸からの距離が徐々に減少して湾曲面が形成される曲面部と、回転方向の反対側に向かって回転中心軸からの距離が徐々に増加して端面が形成されるエッジ部とが形成されていることを特徴とする。
また、前記回転体は、前記曲面部及び前記エッジ部が形成された複数の整畦板を備えることを特徴とする。
また、前記回転体は、ベース体に対して前記整畦体が着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
また、前記回転体は、前記曲面部の部分と前記エッジ部の部分とが厚肉に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、畦を強固に整畦することができるとともに、整形後の畦に引っ掻き痕などが残り難い畦塗り機用整畦体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態による畦塗り機の平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態による畦塗り機の作業部の部分断面平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による整畦体の斜視図である。
【図4】本発明の法面整畦部の実施例1において、法面整畦板が旧畦に接触する状態における法面整畦板の一部の拡大端面図である。
【図5】本発明の法面整畦部の実施例1の変形例における法面整畦板の一部の拡大端面図である。
【図6】本発明の法面整畦部の実施例2において、法面整畦板が旧畦に接触する状態における法面整畦板の一部の拡大端面図である。
【図7】本発明の法面整畦部の実施例2の変形例における法面整畦板の一部の拡大端面図の変形例である。
【図8】整畦板の変形例における一部の拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0012】
(実施の形態1)
畦塗り機1は、図1に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構(図示せず)に連結されて、走行機体90の前進動に応じて畦塗り作業を行なうものである。畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸4を備えた装着部10と、装着部10に設けられた旋回シリンダ3によって装着部10から左右方向に移動可能なオフセット機構部20と、オフセット機構部20の移動端側(後端側)に垂直方向に延びる回動支点Oを設け、この回動支点Oを回動中心として水平方向に回動可能に配設されて入力軸4から伝達される動力によって走行機体90の走行位置に対して側方にオフセットした位置で作業を行なう作業部50とを有してなる。
【0013】
装着部10は、左右方向に延びるヒッチフレーム11と、ヒッチフレーム11の前側に取り付けられて走行機体90の三点リンク連結機構に連結可能な連結フレーム13とを有してなる。
【0014】
オフセット機構部20は、前端側をヒッチフレーム11に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム21と、オフセットフレーム21の右側に沿って並設されて前端側がヒッチフレーム11の右側端部に回動自在に連結されたリンク部材25とを有してなる。リンク部材25の後端側は、オフセットフレーム21の後端部に回動自在に設けられた連結部材23に回動自在に設けられている。オフセット機構部20は、オフセットフレーム21、リンク部材25、ヒッチフレーム11及び連結部材23によって平行リンク機構を形成している。
【0015】
オフセットフレーム21は、この後端部とヒッチフレーム11の左側端部との間に枢結された前述した旋回シリンダ3の伸縮動作により左右方向に揺動可能である。オフセットフレーム21内には動力伝達機構(図示せず)が設けられている。この動力伝達機構は、チェーン伝動機構であり、オフセットフレーム21の後端側に作業部50の回動支点Oと同軸上に回動自在に配設された従動軸29を備えて、走行機体90から入力軸4に伝達された動力を従動軸29に伝達可能に構成されている。
【0016】
従動軸29の下部にはこれと同軸上に配置されて下方へ延びる主軸7が連結されている。主軸7は、従動軸29の回転動とともに回転して、作業部50への動力伝達が可能である。主軸7の外側には主軸7を覆う主軸ケースが配設され、この主軸ケースの上端部はオフセットフレーム21の後端下部に回動可能に連結され、主軸ケースの下端部には作業部50が固定された状態で取り付けられている。
【0017】
作業部50は、連結部材23と主軸ケースとの間に繋がれた伸縮シリンダ41の伸縮により回動支点Oに対して回動可能であるとともに、伸縮シリンダ41の伸縮規制によりオフセット機構20の揺動に対して作業部50の作業方向が走行機体90の進行方向Aと平行になるように保持される。
【0018】
作業部50は、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部51と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部61と、盛られた土を外周面によって切り崩された旧畦上に塗り付ける回転体としての整畦体80とを有してなる。
【0019】
前処理部61は、図2を更に追加して説明すると、前処理動力伝達ケース64を介して主軸ケースに連結されて支持される。前処理動力伝達ケース64内には、主軸7からの動力を受けて回転駆動する前処理側駆動軸66を有した動力伝達機構65が内蔵されている。前処理側駆動軸66の先端部に前処理部61が接続されている。前処理部61の回転軸である耕耘軸62は前処理側駆動軸66に同軸上に接続されている。前処理部61の耕耘軸62は、平面視において旧畦K側に傾斜している。
【0020】
耕耘軸62には、その外周に複数の耕耘爪67が放射状に取り付けられて、耕耘爪67は耕耘軸62とともに回転して、圃場の耕土を耕耘して旧畦側に土盛りする。
【0021】
天場処理部51は、天場動力伝達ケース54を介して前処理部61に支持されている。天場処理部51の回転軸52には複数の耕耘爪53が放射状に取り付けられ、天場処理部51の回転軸52は平面視において旧畦K側に傾斜して配置されている。天場動力伝達ケース54内には動力伝達機構55が設けられ、動力伝達機構55は前処理部61の耕耘軸62に接続されて前処理部61からの動力を天場処理部51に伝達可能である。
【0022】
天場動力伝達ケース54は天場処理部51の基端側に配置されて天場処理部51の回転軸52に対して直交する方向に延び、この基端部は前処理部61の耕耘軸62の先端部に対して上下回動自在に取り付けられている。このため、天場動力伝達ケース54は基端部を回動中心として上下方向に回動自在である。
【0023】
整畦体80は、左右方向に延びて回転動自在に支持された回転軸81に取り付けられた法面整畦部82と、法面整畦部82の右側端部に取り付けられて横方向に延びる上面整畦部83とを有してなる(図2及び図3参照)。整畦体80は整畦動力伝達ケース87を介して主軸ケースに連結されて支持される。整畦動力伝達ケース87内には図示しない整畦側動力伝達機構が内蔵され、この整畦側動力伝達機構は主軸7に繋がって、主軸7からの動力を整畦体80に伝達可能に構成されている。上面整畦部83は全体として略円筒状に形成されており、その後端位置である中心部において連結部86に連結している。そして、上面整畦部83の外周面には、弾性体で形成された複数の矩形状の上面整畦板85が周方向に放射状に設けられている。なお、複数の上面整畦板85は、端辺で互いに連結されていてもよいし、それぞれの上面整畦板85が互いに連結せずに独立して上面整畦部83に取り付けられていてもよい。
【0024】
次に、法面整畦部82に設けられた法面整畦板84(法面整畦板84A、法面整畦板84B)の詳細について説明する。図4は、複数の法面整畦板84が連設されて構成される法面整畦部82が旧畦Kに接する様子を模式的に表したものである。なお、法面整畦部82が平坦状に描画されており、複数の整畦板が旧畦に接しているが、実際には法面整畦部82は回転軸を中心とした円弧状に湾曲するものである。図4は端面図として描かれているが、任意の断面図であっても同様の形状となるものである。以下、図5乃至8についても同様である。
【0025】
図2に示すように、法面整畦部82は全体として円錐台形状に形成されており、その先端位置(図2において右側端部)に上面整畦部83と連結する連結部86が上面整畦部83に向かって突設されている。
【0026】
法面整畦部82の外周面は、複数の略扇形状をした法面整畦板84が回転軸81を中心に放射状に連設されており、これにより円錐台形状を形成している。なお、法面整畦板84は、例えばステンレス、鋼板等の金属材料等や、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成されるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
図4に示すように、法面整畦部82は法面整畦板84A及び法面整畦板84Bが交互に重なり合いながら扇形状における半径部分が連設されて構成されている。なお、図4においては、この半径部分は法面整畦板84A及び法面整畦板84Bにおける左右の両端部に相当する。法面整畦板84A及び法面整畦板84Bは、いずれも回転方向F側の端部が所定の段部を備えた接合面843となっており、回転方向F側に隣接する法面整畦板84B及び法面整畦板84Aの回転方向Fと逆側の端部の内側面と接合している。
【0028】
法面整畦板84Aは、回転方向F側の端部から逆側の端部に向かうにつれて、回転軸81からの距離(回転半径に相当)が大きくなるように構成される。これにより、図面上、法面整畦板84Aにおいて、回転方向Fの後方側は旧畦Kに向かって突出することになり、この突出した法面整畦板84Aにおける回転方向Fの後方側によって土が旧畦Kに押し込まれて塗り付けられる。そして、この突出した法面整畦板84Aの後方側において、回転軸81からの距離が最も大となる部分(図4において畦面Kと接する部分)が曲面部841となっている。
【0029】
曲面部841は、最も外方に突出した位置から回転方向Fの後方に連続的に設けられ、回転方向の反対側に向かって回転軸81からの距離が徐々に減少する湾曲面841aが形成されて構成される。この湾曲面841aは、回転方向Fの後方に向かって回転軸81からの距離が徐々に縮まるように形成されており(図面上は、畦面から徐々に離れるように描画されている)、緩やかな円弧状をなしている。曲面部841が旧畦Kに接するときは、最も外方に突出した曲面部841の頂部が旧畦Kに接した後も、法面整畦部82の回転にともなって連続的に湾曲面841a側が旧畦Kに接する。そのため、曲面部841における連続的な平面形状が旧畦Kを塗りつけるように動作し、法面整畦部82の回転にしたがって湾曲部841aが徐々に旧畦から離れていくので、畦面に対して引っ掻き痕が残ることを防止し、畦の表面を滑らかな形状に仕上げ易くなっている。
【0030】
法面整畦板84Bは、回転方向F側の端部から逆側(回転方向後方側)の端部に向かうにつれて、回転軸81からの距離が大きくなるように構成される。これにより、図面上、法面整畦板84Bにおいて、回転方向Fの後方側は畦面に向かって突出することになり、この突出した法面整畦板84Bにおける回転方向Fの後方側によって土が畦面に押し込まれて塗り付けられる。そして、この突出した法面整畦板84Bの後方側において、法面整畦板84Aでは、回転軸81からの距離が最も大となる部分が湾曲面841aの形成された曲面部841になっているのに対し、法面整畦板84Bでは、湾曲面841aに相当する形状のないエッジ部842となっている。
【0031】
エッジ部842は、法面整畦板84Bにおける回転方向Fの逆側に臨む端部であり、畦側に向かって最も突出した位置が端面842aとなっている。そして、この端面842aよりも回転方向Fの後方には旧畦Kに接する部分が形成されていないため、回転方向Fの反対側に向かって回転軸81からの距離が徐々に増加した状態のまま端面842aまで至ることになる。これにより、エッジ部842が旧畦Kに接するときは、最も外方に突出している位置に形成された端面842aに旧畦への圧力が集中し、強力に土を畦に押し込むことができる。なお、端面842aから法面整畦板84Aまでの半径方向の距離は、曲面部841の端面から法面整畦板84Bまでの半径方向の距離より大となる。
【0032】
このように、法面整畦部82は、回転方向後部に曲面部841が形成された法面整畦板84Aと、同回転方向後部にエッジ部842が形成された法面整畦板84Bとが、法面整畦部82の外周面に対して複数が交互に設けられている。そのため、法面整畦部82が回転することにより、法面整形板84Bのエッジ部842によって土を旧畦に強固に押し込みつつ、法面整形板84Aの曲面部841によって土を旧畦に滑らかに塗り付けることができる。これにより、法面整畦部82によって、強固かつ表面が滑らかな形状の畦に形成し易くなっている。
【0033】
本実施形態において複数の法面整畦板84は、扇形の半径にあたる直線部分で互いに連結されているが、これ以外にも、例えば図5に示すように、それぞれの法面整畦板84同士を連結させずに取り付けても構わない。この場合、円錐台形状のベース体182に対して法面整畦板184(184A,184B)の回転方向側の端部185(185a,185b)を接合する。図示例では、法面整畦板184が合成樹脂によって形成される例であり、ビス等の締結部材によってベース体182に締結されるものであるが、ステンレス等の金属によって形成されるときには、溶接等によって接合されても構わない。ただし、法面整畦板184を締結部材によって着脱可能に取り付ければ、法面整畦板184に摩耗や損傷などが生じても、摩耗等が生じた法面整畦板184のみを簡単に交換することができる。
【0034】
また、ベース体182への取付に際しては、法面整畦板184Bの接合部分(端部185b)と法面整畦板184Aの曲面部181aや、法面整畦板184Aの接合部分(端部185a)と法面整畦板184Bのエッジ部181bのような、隣接する端部同士が重複するように配置される。これにより、ベース体182に対する法面整畦板184の接合部分が隣接する法面整畦板184によって被覆されるため、作業時に接合部分が畦面に接してしまうことがなく、畦の表面がより滑らかな形状に整畦される。
【0035】
なお、本実施の形態においては、図4に示すように、法面整畦板84Aと法面整畦板84Bとが周方向に交互に設けられているが、これに限らず、例えば、法面整畦板84Aが周方向に所定数連続して設けられたり、法面整形板84Bが周方向に所定数連続して設けられたりして構わない。さらに、法面整形板84A又は法面整形板84Bのいずれか一方が多く設けられていても構わない。
【0036】
(実施の形態2)
図6に、実施の形態2として法面整畦板284によって構成される法面整畦部282の模式図を示す。なお、前記実施の形態1と同一または対応する部分には、図1乃至図5と同一の符号を用いて前記実施の形態1と異なる構成のみを説明する。なお、実施の形態2における法面整畦部282は、実施の形態1における法面整畦部82に代わるものである。図6は、複数の法面整畦板284が連設されて構成される法面整畦部282が旧畦Kに接する様子を模式的に表したものである。法面整畦部182が平坦状に描画されているが、実際には回転軸を中心に円弧状に湾曲するものである。
【0037】
法面整畦部282の外周面は、複数の略扇形状をした法面整畦板284が回転軸81を中心に放射状に連設されており、これにより円錐台形状を形成している。なお、法面整畦板284は、例えばステンレス、鋼板等の金属材料等や、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成されるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
図示例の法面整畦部282は、隣接する複数の法面整畦板284が重なり合いながら扇形状における半径部分が連設されて構成されている。法面整畦板284は、回転方向F側の端部が所定の段部を備えた接合面284eとなっており、回転方向F側に隣接する法面整畦板184における回転方向Fと逆側の端部の内側面と接合している。
【0039】
法面整畦板284は、回転方向F側の端部から逆側の端部に向かうにつれて、回転軸81からの距離(回転半径に相当)が大きくなるように構成される。これにより、図面上、回転方向Fの後方側に向かうにつれて、法面整畦板184の表面が旧畦Kに向かって突出することになる。そして、法面整畦板184の周方向の中間位置付近において、最も外方に突出した頂部(図6において畦面Kと接する部分)が設けられ、ここにエッジ部284bが形成される。エッジ部284bにおける回転半径は、回転方向F側から逆側に向かうにつれて連続的に徐々に大きくなり、これが回転方向Fの逆側に臨む端部に形成された端面284dを境に急激に所定の大きさだけ減少し段部を形成する。これにより、回転方向Fの反対側に向かって回転軸81からの距離が徐々に増加した状態のまま端面284dまで至ることになる。
【0040】
そして、段部によって一段下がった位置から、また回転方向F側の端部から逆側の端部に向かうにつれて、回転軸81からの距離が大きくなるように構成される。これにより、図面上、回転方向Fの後方側に向かうにつれて、法面整畦板284の表面が旧畦Kに向かって突出することになる。そして、この突出した法面整畦板284の後方側において、回転軸81からの距離が最も大となる部分(図6において畦面Kと接する部分)が曲面部284aとなっている。
【0041】
曲面部284aは、最も外方に突出した位置から回転方向後方に連続的に設けられ、回転方向の反対側に向かって回転軸81からの距離が徐々に減少する湾曲面284cが形成されて構成される。この湾曲面284cは、回転方向Fの後方に向かって回転軸81からの距離が徐々に縮まるように形成されており(図面上は、畦面から徐々に離れるように描画されている)、緩やかな円弧状をなしている。
【0042】
このように、回転方向中間位置にエッジ部284bが、回転方向後方部に曲面部284aがそれぞれ形成された法面整畦板284が、法面整畦部282の外周面に対して複数が交互に設けられている。そのため、法面整畦部282が回転することにより、法面整形板284のエッジ部284bによって土を旧畦に強固に押し込みつつ、曲面部284aによって土を旧畦に滑らかに塗り付けることができる。これにより、法面整畦部282によって、強固かつ表面が滑らかな形状の畦に形成し易くなっている。
【0043】
また、実施の形態1と異なり、1種類の法面整畦板によって法面整畦部が構成されるため、分品点数が少なくて済み、コストが抑えられ、また組立も容易になる。
【0044】
本実施形態において複数の法面整畦板284は、扇形の半径にあたる直線部分で互いに連結されているが、これ以外にも、例えば図7に示すように、それぞれの法面整畦板384同士を連結させずに取り付けても構わない。この場合、円錐台形状のベース体382に対して曲面部381及びエッジ部383を備えた法面整畦板384の回転方向側の端部385を接合する。図示例は、法面整畦板384が合成樹脂によって形成される例であり、ビス等の締結部材によってベース体に締結されるものであるが、ステンレス等の金属によって形成されるときには、溶接等によって接合されても構わない。ただし、法面整畦板384を締結部材によって着脱可能に取り付ければ、法面整畦板384に摩耗や損傷などが生じても、摩耗等が生じた法面整畦板384のみを簡単に交換することができる。
【0045】
また、ベース体382への取付に際しては、法面整畦板384の接合部分(端部385)と隣接する法面整畦板384の曲面部381のような、隣接する端部同士が重複するように配置される。これにより、ベース体382に対する法面整畦板384の接合部分が隣接する法面整畦板384によって被覆されるため、作業時に接合部分が畦面に接してしまうことがなく、畦の表面がより滑らかな形状に整畦される。
【0046】
なお、本実施形態では、一枚の法面整形板に曲面部とエッジ部とがそれぞれ1カ所ずつ形成されているが、これに限らず、例えば、エッジ部が複数形成されても構わない。また、エッジ部を回転方向逆側の端部に形成し、曲面部を回転方向中間位置に形成しても良く、この場合、曲面部が複数形成されても構わない。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。さらに、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。例えば、実施の形態1における法面整畦板84Aと法面整畦板84Bとの間に実施の形態2における法面整畦板284を挿入し連設しても構わない。
【0048】
また、畦の上面を強固かつ表面が滑らかな形状に整畦すべく、上面整畦部83に対して本発明を適用することもできる。この場合、回転軸81に直行する端面視(断面視)において、各上面整畦板85における形状が、法面整畦板84等と同様の形状をなすように形成される。例えば、上面整畦板85の上面整畦部83回転方向の後方側は、上面整畦部83の外周面より外方に突出しており、この突出した上面整畦板85の後方部によって土が旧畦上に押し込まれて塗り付けられる。そして、この突出した上面整畦板85の後方部には、曲面部又はエッジ部のいずれかが形成されるものである。
【0049】
なお、上記のように上面整畦部に対して曲面部及びエッジ部を形成する場合には、法面整畦部に対して曲面部及びエッジ部を設けることは任意であり、上面整畦部のみに対して曲面部及びエッジ部を形成しても構わないし、上面整畦部及び法面整畦部の双方に対して曲面部及びエッジ部を形成しても構わない。
【0050】
また、本実施形態においては、法面整畦板及び上面整畦板においては、各部の部材の厚みが略同一に形成されているが、部分的に厚みを変更しても構わない。例えば図8に示すように、整畦板484において曲面部484a及びエッジ部484bの部分の厚さを厚肉とし、その他の部分の厚さよりも大きく形成することができる。この場合、旧畦Kに土を押し込み塗り付ける際に、他の部分よりも圧力が加わり易く、摩耗し易い部分(曲面部484a、エッジ部484b)の強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 畦塗り機
80 整畦体
81 回転軸
82 法面整畦部
83 上面整畦部
84 法面整畦板
841 曲面部
841a 湾曲面
842 エッジ部
842a 端部
F 回転方向
K 旧畦


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心軸を中心に回転する回転体を備え、該回転体の外周面によって土を旧畦に塗り付ける畦塗り機用整畦体であって、
前記回転体は、その外周面において、回転方向の反対側に向かって回転中心軸からの距離が徐々に減少して湾曲面が形成される曲面部と、回転方向の反対側に向かって回転中心軸からの距離が徐々に増加して端面が形成されるエッジ部とが形成されていることを特徴とする畦塗り機用整畦体。
【請求項2】
前記回転体は、前記曲面部及び前記エッジ部が形成された複数の整畦板を備えることを特徴とする請求項1記載の畦塗り機用整畦体。
【請求項3】
前記回転体は、ベース体に対して前記整畦体が着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の畦塗り機用整畦体。
【請求項4】
前記回転体は、前記曲面部の部分と前記エッジ部の部分とが厚肉に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかに記載の畦塗り機用整畦体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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