説明

畦塗り機

【課題】土質に拘わらず畦形成体にて盛土を適切に締め固めることができ、崩れにくい強固な畦を形成できる畦塗り機を提供する。
【解決手段】畦塗り機は、トラクタの後部に連結する機体を備える。機体の伝動ケース16には、駆動回転しながら土を盛り上げる盛土体21を回転可能に設ける。機体の伝動ケース16には、駆動回転しながら盛土体21による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体22を回転可能に設ける。盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比が変更可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質に拘わらず畦形成体にて盛土を適切に締め固めることができ、崩れにくい強固な畦を形成できる畦塗り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の走行車の後部に連結される機体と、機体に回転可能に設けられ駆動回転しながら土を盛り上げる盛土体と、機体に回転可能に設けられ駆動回転しながら盛土体による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを備え、盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比が常に一定である畦塗り機が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−174501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の畦塗り機では、例えば砕土しにくい土質の場合等、土質に応じて盛土体の回転速度を速くすると、畦形成体の回転速度も速くなり、畦形成体による盛土の締め固めが不十分となるおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、土質に拘わらず畦形成体にて盛土を適切に締め固めることができ、崩れにくい強固な畦を形成できる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の畦塗り機は、機体と、この機体に回転可能に設けられ、駆動回転しながら土を盛り上げる盛土体と、前記機体に回転可能に設けられ、駆動回転しながら前記盛土体による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを備え、前記盛土体の回転速度と前記畦形成体の回転速度との回転速度比が変更可能となっているものである。
【0006】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、盛土体側回転軸と、畦形成体側回転軸と、前記盛土体側回転軸に対して着脱可能な第1および第2盛土体側歯車と、前記畦形成体側回転軸に対して着脱可能で、前記第1および第2盛土体側歯車と噛み合う第1および第2畦形成体側歯車とを備え、互いに噛み合う前記第1盛土体側歯車および前記第1畦形成体側歯車にて構成された第1歯車体と互いに噛み合う前記第2盛土体側歯車および前記第2畦形成体側歯車にて構成された第2歯車体とのいずれか一方に代えていずれか他方を前記盛土体側回転軸および前記畦形成体側回転軸に取り付けることにより、盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比が変更可能となっているものである。
【0007】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項2記載の畦塗り機において、機体は、歯車体収納部を有し、第1歯車体および第2歯車体のいずれか一方は、前記歯車体収納部に収納されているものである。
【0008】
請求項4記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、盛土体側回転軸と、畦形成体側回転軸と、前記盛土体側回転軸に取り付けられ、この盛土体側回転軸とともに駆動回転する第1および第2盛土体側歯車と、前記畦形成体側回転軸に回転可能に取り付けられ、前記第1および第2盛土体側歯車と噛み合う第1および第2畦形成体側歯車と、前記畦形成体側回転軸にこの畦形成体側回転軸の軸方向に沿って移動可能に設けられ、第1状態では前記第1畦形成体側歯車との係合によりこの第1畦形成体側歯車からの回転力を前記畦形成体側回転軸に伝達し、第2状態では前記第2畦形成体側歯車との係合によりこの第2畦形成体側歯車からの回転力を前記畦形成体側回転軸に伝達する回転力伝達体とを備え、前記回転力伝達体を前記第1状態および前記第2状態のいずれか一方の状態からいずれか他方の状態に切り換えることにより、盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比が変更可能となっているものである。
【0009】
請求項5記載の畦塗り機は、請求項4記載の畦塗り機において、回転力伝達体の状態を切り換える際に手動操作する切換操作体を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比が変更可能となっているため、土質に拘わらず畦形成体にて盛土を適切に締め固めることができ、崩れにくい強固な畦を形成できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、第1歯車体および第2歯車体のいずれか一方に代えていずれか他方を盛土体側回転軸および畦形成体側回転軸に取り付けることにより、盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比を適切に変更できる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、盛土体側回転軸および畦形成体側回転軸から取り外した第1歯車体および第2歯車体のいずれか一方を機体の歯車体収納部に収納しておくことができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、回転力伝達体を第1状態および第2状態のいずれか一方の状態からいずれか他方の状態に切り換えることにより、盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比を適切に変更できる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、切換操作体の手動操作によって盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比を簡単に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の畦塗り機の一実施の形態を図1および図2に参照して説明する。
【0016】
図1において、1は畦塗り機で、この畦塗り機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されトラクタの走行により進行方向前方に移動しながら畦形成作業をするものである。
【0017】
畦塗り機1は、トラクタの後部に脱着可能に連結される機体2を備えている。機体2は、トラクタの後部の3点リンク(作業機昇降支持装置)に連結される固定機枠3と、固定機枠3に一端部が上下方向の軸線を中心として回動可能に連結された回動アーム4と、回動アーム4の他端部に上下方向の軸線を中心として回動可能に連結された可動機枠5とを有している。そして、可動機枠5には、作業時にトラクタより側方に突出した状態でトラクタの走行により進行方向前方に移動しながら畦形成作業をする作業手段6が設けられている。なお、作業手段6は、トラクタより右側方に突出した状態でトラクタの前進走行に基づいて移動しながら畦形成作業をする前進作業状態と、トラクタより左側方に突出した状態でトラクタの後退走行に基づいて移動しながら畦形成作業をする後退作業状態とに選択的に切換可能となっている。
【0018】
固定機枠3は、軸保持部11を有し、この軸保持部11には前後方向の入力軸12が回転可能に設けられている。入力軸12は、トラクタのPTO軸にジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続される。入力軸12は、トラクタからの動力(回転力)を受けて駆動回転するものであるが、その入力軸12の回転速度は、トラクタの運転席に設けられた速度調整用の操作部(図示せず)の操作により調整可能となっている。また、固定機枠3は、トラクタの後部の3点リンクに連結される3点連結部13を有し、この3点連結部は、トップマストおよびロワアーム等にて構成されている。
【0019】
可動機枠5は、ギアボックス等からなる中空状の軸保持部である伝動ケース16を有している。この伝動ケース16は、図1および図2に示されるように、箱状の本体ケース部17と、本体ケース部17に固着されこの本体ケース部17から前方に向って突出する細長い円筒状の軸ケース部18と、本体ケース部17の一側部である左側部に脱着可能に取り付けられ歯車体収納部20を区画形成する歯車体収納用ケース部19とにて構成されている。
【0020】
一方、作業手段6は、機体2の伝動ケース16に回転可能に設けられ所定方向に駆動回転しながら田面および畦の土を耕耘して畦上に盛り上げる盛土体(ロータリー)21と、機体2の伝動ケース16に回転可能に設けられ盛土体21の進行方向後方で所定方向に駆動回転しながら盛土体21による盛土を締め固めて畦(図示せず)を形成する畦形成体(ディスク)22と、盛土体21の進行方向前方でその盛土体21側から動力を受けて駆動回転しながら畦上面削り作業をする畦上面削り体23とを有している。
【0021】
盛土体21は、後端側が伝動ケース16の軸ケース部18内に収納されこの軸ケース部18にてベアリング26,27を介して回転可能に支持された前後方向の駆動回転軸28を有している。駆動回転軸28のうち軸ケース部18外に位置する前端側外周部には、土を耕耘して畦上に盛り上げる複数の耕耘爪29が取り付けられている。
【0022】
畦形成体22は、一方側である左端側が伝動ケース16の本体ケース部17内に収納されこの本体ケース部17にてベアリング31,32を介して回転可能に支持された左右方向の畦形成体側回転軸である駆動回転軸33を有している。駆動回転軸33のうち本体ケース部17外に位置する他方側である右端側の外周部には、盛土体21による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成部材34が取付部材35を介して取り付けられている。畦形成部材34は、田面側に向って下り傾斜する傾斜状の畦側面を形成する略截頭円錐状の側面形成部36と、側面形成部36の縮径端部に連結され水平状の畦上面を形成する略円筒状の畦上面形成部37とにて構成されている。
【0023】
また一方、ジョイントおよび伝動シャフト等からなる動力伝達手段40を介して入力軸12に接続された左右方向の中間入力軸41は、図2に示されるように、可動機枠5の伝動ケース16の本体ケース部17にてベアリング42,43を介して回転可能に支持されている。中間入力軸41の右端側が本体ケース部17内に収納され、中間入力軸41の左側側が本体ケース部17外に位置し、この本体ケース部17外の部分に動力伝達手段40が接続されている。
【0024】
そして、中間入力軸41の右端部には平歯車である第1歯車46が固着され、この第1歯車46は平歯車である第2歯車47と噛み合っており、この第2歯車47は中間入力軸41と平行状に位置する盛土体側回転軸である中間駆動回転軸48に固着されている。この中間駆動回転軸48は、本体ケース部17にてベアリング49,50を介して回転可能に支持され、この中間駆動回転軸48の右端部には第1傘歯車51が固着され、この第1傘歯車51は第2傘歯車52と噛み合っており、この第2傘歯車52は中間駆動回転軸48と直交状に位置する駆動回転軸28の後端部に固着されている。
【0025】
また、中間駆動回転軸48の左端部には平歯車である第1盛土体側歯車53が着脱可能に取り付けられ、この第1盛土体側歯車53は歯車体収納用ケース部19内の歯車体収納部20に収納されている。畦形成体22の駆動回転軸33の左端部には、第1盛土体側歯車53より径大な平歯車である第1畦形成体側歯車54が着脱可能に取り付けられ、この第1畦形成体側歯車54は歯車体収納用ケース部19内の歯車体収納部20に収納され第1盛土体側歯車53と噛み合っている。これら互いに噛み合う第1盛土体側歯車53および第1畦形成体側歯車54にて、第1歯車体55が構成されている。
【0026】
さらに、歯車体収納用ケース部19内の歯車体収納部20には、中間駆動回転軸48の左端部に対して着脱可能な平歯車である第2盛土体側歯車(交換用歯車)58と、駆動回転軸33の左端部に着脱可能で第2盛土体側歯車58と噛み合う平歯車である第2畦形成体側歯車(交換用歯車)59とが収納されている。第2畦形成体側歯車59は第2盛土体側歯車58より径大なもので、これら互いに噛み合う第2盛土体側歯車58および第2畦形成体側歯車59にて、第2歯車体60が構成されている。なお、第2盛土体側歯車58は第1盛土体側歯車53より径小なもので、第2畦形成体側歯車59は第1畦形成体側歯車54より径大なものである。歯車体収納用ケース部19は、不使用の第1歯車体55または第2歯車体60を保持する歯車保持部(図示せず)を有している。
【0027】
そして、第1歯車体55つまり第1盛土体側歯車53および第1畦形成体側歯車54を中間駆動回転軸48および駆動回転軸33からそれぞれ取り外し、その第1歯車体55の代わりに、第2歯車体60つまり第2盛土体側歯車58および第2畦形成体側歯車59を中間駆動回転軸48および駆動回転軸33にそれぞれ取り付けることが可能である。すなわち、第1歯車体55および第2歯車体60とのいずれか一方に代えて、いずれか他方を中間駆動回転軸48および駆動回転軸33に取り付けることにより、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比(盛土体21に対する畦形成体22の回転速度比)が変更可能となっている。
【0028】
なお、第1盛土体側歯車53、第1畦形成体側歯車54、第2盛土体側歯車58、第2畦形成体側歯車59および歯車体収納用ケース部19等にて、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比を変更するための速度比変更手段66が構成されている。
【0029】
また、図1に示されるように、盛土体21の駆動回転軸28には延長回転軸61が連結され、この延長回転軸61にチェーン等の伝動手段を介して畦上面削り体23の駆動回転軸62が接続され、この駆動回転軸62に複数の削り爪63が取り付けられている。盛土体21および畦上面削り体23は図示しないカバー体にて覆われている。また可動機枠5には接地輪64が取り付けられている。
【0030】
次に、畦塗り機1の作用等を説明する。
【0031】
図1に示すように作業手段6を前進作業状態に設定した状態で、トラクタを前進走行させると、畦塗り機1はトラクタとともに前方に向って移動し、盛土体21、畦形成体22および畦上面削り体23がそれぞれ駆動回転する。この際、畦形成体22は、その周速がトラクタの走行速度より速い値で、畦に対してスリップするように駆動回転する。
【0032】
そして、畦上面削り体23にて畦上面削り作業が行われ、盛土体21にて田面および畦の土が耕耘されて畦上に盛り上げられ畦形成体22にて盛土が締め固められて新たな畦が形成される。
【0033】
ここで、例えば田面および畦の土が砕土しにくい土質のものである場合には、作業者は、第1盛土体側歯車53および第1畦形成体側歯車54を中間駆動回転軸48および駆動回転軸33から取り外し、それに代えて、第2盛土体側歯車58および第2畦形成体側歯車59を中間駆動回転軸48および駆動回転軸33に取り付けることにより、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比を変更した後、速度調整用の操作部の操作により入力軸12の回転速度を調整して盛土体21の回転速度を速くすることで、盛土体21および畦形成体22の回転速度を最適な値に設定する。
【0034】
このように畦塗り機1によれば、例えば土質に応じて盛土体21の回転速度を速くしても畦形成体22の回転速度を最適な値に設定できるため、田面および畦の土質に拘わらず畦形成体22にて盛土を適切に締め固めることができ、崩れにくい強固な畦を形成できる。
【0035】
また、第1歯車体55および第2歯車体60のいずれか一方に代えていずれか他方を中間駆動回転軸48および駆動回転軸33に取り付けることにより、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比を適切に変更できる。
【0036】
さらに、中間駆動回転軸48および駆動回転軸33から取り外した不使用の第1歯車体55および第2歯車体60のいずれか一方を歯車体収納部20に収納しておくことができ、別に収納部を確保する必要もない。
【0037】
本発明の畦塗り機の他の実施の形態を図3および図4を参照して説明する。
【0038】
図3および図4に示す畦塗り機1の可動機枠5の伝動ケース16は、箱状の本体ケース部17と、本体ケース部17に固着されこの本体ケース部17から前方に向って突出する細長い円筒状の軸ケース部18とにて構成されている。
【0039】
盛土体側回転軸である中間駆動回転軸48は、本体ケース部17にてベアリング49,50を介して回転可能に支持され、この中間駆動回転軸48の左端側に第2歯車47および第1傘歯車51が固着されている。中間駆動回転軸48の軸方向中央部には、この中間駆動回転軸48とともに駆動回転する平歯車である第1盛土体側歯車71が固着されている。中間駆動回転軸48の右端側には、この中間駆動回転軸48とともに駆動回転する平歯車である第2盛土体側歯車72が固着され、この第2盛土体側歯車72は第1盛土体側歯車71より径小なものである。
【0040】
また、畦形成体22の畦形成体側回転軸である駆動回転軸33には、平歯車である第1畦形成体側歯車76がベアリング78を介してその駆動回転軸33に対して回転可能に取り付けられ、この第1畦形成体側歯車76は第1盛土体側歯車71と噛み合っている。また、駆動回転軸33には、第1畦形成体側歯車76より径大な平歯車である第2畦形成体側歯車77がベアリング79を介してその駆動回転軸33に対して回転可能に取り付けられ、この第2畦形成体側歯車77は第2盛土体側歯車72と噛み合っている。第1畦形成体側歯車76および第2畦形成体側歯車77には、クラッチ孔である孔状の係合受部76a,77aが形成されている。
【0041】
さらに、駆動回転軸33のうち第1畦形成体側歯車76および第2畦形成体側歯車77間に位置する部分には、駆動回転軸33とともに駆動回転する略円板状の回転力伝達体(クラッチ)81が駆動回転軸33の軸方向に沿って移動可能に設けられている。この回転力伝達体81は、本体ケース部17内において駆動回転軸33に対してその軸方向にスライド移動可能なもので、駆動回転軸33に嵌合装着されてこの駆動回転軸33と一体となって回転する。
【0042】
また、回転力伝達体81は、第1畦形成体側歯車76の係合受部76aと係脱可能に係合する凸状の第1係合部83と、第2畦形成体側歯車77の係合受部77aと係脱可能に係合する凸状の第2係合部84と、凹状部85とを有している。この凹状部85には、作業者が回転力伝達体81の状態を切り換える際に手動操作する切換操作体86の挿入部87が挿入されている。切換操作体86の操作部であるレバー部88は、本体ケース部17に左右方向長手状に形成されたガイド用の長孔部89に挿通されている。
【0043】
そして、切換操作体86のレバー部88の操作により回転力伝達体81を駆動回転軸33に対して左方向にスライド移動させて図3に示す第1状態に切り換えると、第1係合部83と第1畦形成体側歯車76の係合受部76aとが互いに係合し、第1畦形成体側歯車76からの動力である回転力が回転力伝達体81にて畦形成体22の駆動回転軸33に伝達され、その結果、畦形成体22の駆動回転軸33は、第1畦形成体側歯車76と一体となって駆動回転する。
【0044】
また、切換操作体86のレバー部88の操作により回転力伝達体81を駆動回転軸33に対して右方向にスライド移動させて図4に示す第2状態に切り換えると、第2係合部84と第2畦形成体側歯車77の係合受部77aとが互いに係合し、第2畦形成体側歯車77からの動力である回転力が回転力伝達体81にて畦形成体22の駆動回転軸33に伝達され、その結果、畦形成体22の駆動回転軸33は、第2畦形成体側歯車77と一体となって駆動回転する。
【0045】
そして、このように切換操作体86を操作して回転力伝達体81を第1状態および第2状態のいずれか一方の状態からいずれか他方の状態に切り換えることにより、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比(盛土体21に対する畦形成体22の回転速度比)が変更可能となっている。
【0046】
なお、第1盛土体側歯車71、第1畦形成体側歯車76、第2盛土体側歯車72、第2畦形成体側歯車77、回転力伝達体81および切換操作体86等にて、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比を変更するための速度比変更手段90が構成されている。また、互いに噛み合う第1盛土体側歯車71および第1畦形成体側歯車76にて第1歯車体が構成され、互いに噛み合う第2盛土体側歯車72および第2畦形成体側歯車77にて第2歯車体が構成されている。なお、その他の構成部材は図1および図2に示す畦塗り機1の構成部材と基本的に同一である。
【0047】
そして、図3および図4に示す畦塗り機1でも、例えば土質に応じて盛土体21の回転速度を速くしても畦形成体22の回転速度を最適な値に設定できるため、田面および畦の土質に拘わらず畦形成体22にて盛土を適切に締め固めることができ、崩れにくい強固な畦を形成できる。
【0048】
また、切換操作体86の手動操作によって回転力伝達体81を第1状態および第2状態のいずれか一方の状態からいずれか他方の状態に切り換えることにより、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比を簡単かつ適切に変更できる。
【0049】
なお、いずれの実施の形態においても、盛土体21に対する畦形成体22の回転速度比が変更可能なものには限定されず、畦形成体22に対する盛土体21の回転速度比が変更可能なものでもよい。
【0050】
また、盛土体21と畦形成体22との回転速度比を2パターンに設定可能な構成には限定されず、回転速度比を3パターン或いは4パターン以上設定可能な構成とすることも可能である。
【0051】
さらに、例えば速度調整用の操作部の操作に基づく入力軸12の回転速度の調整に応じて盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比が自動的に変更される構成でもよい。
【0052】
また、例えば図2に示す構成において、第1盛土体側歯車53を畦形成体側回転軸(駆動回転軸33)に付け換え、第1畦形成体側歯車54を盛土体側回転軸(中間駆動回転軸48)に付け換えることにより、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比を変更できるようにしてもよい。
【0053】
さらに、例えば歯車53,54に代えて、異なる大きさの2つのスプロケット(回転体)とこれらスプロケットに掛け渡されたチェーン(無端体)とを備えた構成において、盛土体側回転軸に着脱可能に取り付けられた一方のスプロケットを畦形成体側回転軸に付け換え、畦形成体側回転軸に着脱可能に取り付けられた他方のスプロケットを盛土体側回転軸に付け換えることにより、盛土体21の回転速度と畦形成体22の回転速度との回転速度比を変更できるようにしてもよい。なお、回転体がプーリでかつ無端体がベルトの構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の平面図である。
【図2】同上畦塗り機の要部断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る畦塗り機の要部断面図である。
【図4】同上畦塗り機の要部断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 畦塗り機
2 機体
20 歯車体収納部
21 盛土体
22 畦形成体
33 畦形成体側回転軸である駆動回転軸
48 盛土体側回転軸である中間駆動回転軸
53 第1盛土体側歯車
54 第1畦形成体側歯車
55 第1歯車体
58 第2盛土体側歯車
59 第2畦形成体側歯車
60 第2歯車体
71 第1盛土体側歯車
72 第2盛土体側歯車
76 第1畦形成体側歯車
77 第2畦形成体側歯車
81 回転力伝達体
86 切換操作体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
この機体に回転可能に設けられ、駆動回転しながら土を盛り上げる盛土体と、
前記機体に回転可能に設けられ、駆動回転しながら前記盛土体による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを備え、
前記盛土体の回転速度と前記畦形成体の回転速度との回転速度比が変更可能となっている
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
盛土体側回転軸と、
畦形成体側回転軸と、
前記盛土体側回転軸に対して着脱可能な第1および第2盛土体側歯車と、
前記畦形成体側回転軸に対して着脱可能で、前記第1および第2盛土体側歯車と噛み合う第1および第2畦形成体側歯車とを備え、
互いに噛み合う前記第1盛土体側歯車および前記第1畦形成体側歯車にて構成された第1歯車体と互いに噛み合う前記第2盛土体側歯車および前記第2畦形成体側歯車にて構成された第2歯車体とのいずれか一方に代えていずれか他方を前記盛土体側回転軸および前記畦形成体側回転軸に取り付けることにより、盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比が変更可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項3】
機体は、歯車体収納部を有し、
第1歯車体および第2歯車体のいずれか一方は、前記歯車体収納部に収納されている
ことを特徴とする請求項2記載の畦塗り機。
【請求項4】
盛土体側回転軸と、
畦形成体側回転軸と、
前記盛土体側回転軸に取り付けられ、この盛土体側回転軸とともに駆動回転する第1および第2盛土体側歯車と、
前記畦形成体側回転軸に回転可能に取り付けられ、前記第1および第2盛土体側歯車と噛み合う第1および第2畦形成体側歯車と、
前記畦形成体側回転軸にこの畦形成体側回転軸の軸方向に沿って移動可能に設けられ、第1状態では前記第1畦形成体側歯車との係合によりこの第1畦形成体側歯車からの回転力を前記畦形成体側回転軸に伝達し、第2状態では前記第2畦形成体側歯車との係合によりこの第2畦形成体側歯車からの回転力を前記畦形成体側回転軸に伝達する回転力伝達体とを備え、
前記回転力伝達体を前記第1状態および前記第2状態のいずれか一方の状態からいずれか他方の状態に切り換えることにより、盛土体の回転速度と畦形成体の回転速度との回転速度比が変更可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項5】
回転力伝達体の状態を切り換える際に手動操作する切換操作体を備える
ことを特徴とする請求項4記載の畦塗り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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