説明

畦用マルチ被覆装置

【課題】本発明は、畦にフィルムロールを確実に敷設固定して所望の効果を達成可能な畦用マルチ被覆装置を提供することを目的とする。
【解決手段】マルチフィルムを巻いたフィルムロール(46)を推進機体(2)の進行方向とは直交する方向で且つ傾斜した姿勢で当該機体(2)の後部に設置し、このフィルムロール(46)の両端のうち高い方の上端を推進機体(2)より側方に突出すると共に、低い方の下端を推進機体(2)の中央付近に位置させる。そして、このフィルムロール(46)の後方には、畦の裾部を移動する低位車輪(44)と畦の頂面を移動する高位車輪(45)をそれぞれ設けて、両車輪でフィルムロール(46)より繰り出たマルチフィルムを上から踏圧するようになし、さらにフィルムロール(46)の下端の前方かつ下方に位置して溝切器(41)を設けると共に、フィルムロール(46)の下端の後方には土掛けディスク(43)を配備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦にマルチフィルムを敷設するための畦用マルチ被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水田の畦の法面(傾斜面)にマルチフィルムを張ると、雑草の生育を妨げ、水漏れや畦の崩壊を防止して、水田の水量や水温を適正に保つことができる。
このような畦のマルチ掛けは、平坦な圃場の畝にマルチを掛けるのと違って、フィルムの両側縁の高さが左右異なるため確実に敷設するのが難しい。
従来のマルチ掛けは手作業が一般的で、機械化したものも手押し式程度である(特許文献1)。
【0003】
手押し式では、労力の点で手作業と大差ないうえフィルムを確実に固定するのも困難で、水漏れ等の防止には不十分であった。
【特許文献1】実開昭61−50118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、マルチフィルムの敷設作業に労力を要するうえにマルチフィルムの敷設状態が不十分であった点であり、本発明の目的は、マルチフィルムを確実に固定して所望の効果を達成できる畦用マルチ被覆装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明では、マルチフィルムを巻いたフィルムロールを推進機体の進行方向とは直交する方向で且つ傾斜した姿勢で当該機体の後部に設置し、このフィルムロールの両端のうち高い方の上端を推進機体より側方に突出すると共に、低い方の下端を推進機体の中央付近に位置させ、そしてフィルムロールの後方には、畦の裾部を移動する低位車輪と畦の頂面を移動する高位車輪をそれぞれ設けて、両車輪でフィルムロールより繰り出たマルチフィルムを上から踏圧するようになし、さらにフィルムロールの下端の前方かつ下方に位置して溝切器を設けると共に、フィルムロールの下端の後方には土掛けディスクを配備する。
【0006】
請求項2記載の発明では、前記推進機体の駆動輪とフィルムロールの中間に耕耘部を設け、この耕耘部の畦寄りに土壌を膨軟にする棒爪を配すると共に、耕耘部の畦と反対側には土壌を中央に寄せる畝立て爪を配する。
【0007】
請求項3記載の発明では、前記高位車輪の車軸を圃場側よりも畦側を高く傾斜して取り付ける。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明では、推進機体の後部に進行方向と直行する方向に傾斜して設置したフィルムロールの上端を推進機体より側方に突出すると共に、下端を推進機体の中央付近に位置させ、このフィルムロールの後方に畦の裾部を移動する低位車輪と畦の頂面を移動する高位車輪とを設けて、両車輪によりフィルムロールから繰り出たマルチフィルムを上から踏圧することにより、畦の法面に沿ってマルチフィルムを均一に引き出し、さらに、フィルムロールの下端の前方かつ下方に位置して溝切器を設けると共にフィルムロールの下端の後方に配備した土掛けディスクにより、マルチフィルムの下端を畦の裾部の深い位置に引き出しつつ、溝を埋めるように土をかけることでマルチフィルムの下端を確実に固定し、水漏れの防止や雑草の生育抑制などの所望の効果を得ることができる。
【0009】
請求項2記載の発明では、前記推進機体の駆動輪とフィルムロールの中間に耕耘部を設け、この耕耘部の畦寄りに土壌を膨軟にする棒爪を配すると共に、耕耘部の畦と反対側には土壌を中央に寄せる畝立て爪を配したことにより、土壌が膨軟になり溝切器によって容易に深い溝を形成してマルチフィルムの下端を深い位置に張ることができると共に、土掛けディスクによって中央に寄せられた土壌で溝を埋めてマルチフィルムの下端に充分な量の土壌を掛け確実に固定することができる。
【0010】
請求項3記載の発明では、高位車輪の車軸を圃場側よりも畦側を高く傾斜して取り付けたことにより、畦の頂面よりも高い位置にあるフィルムロールの上端からマルチフィルムを確実に引き出しつつ畦の頂面によれることなく張っていき、マルチフィルムを畦の裾部から頂面を覆うように確実に敷設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る畦用マルチ被覆装置について、図1乃至図3を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る畦用マルチ被覆装置の側面図である。図2は畦用マルチ被覆装置の構成の概略を示した平面概略図であり、図3は畦用マルチ被覆装置の背面概略図である。
【0012】
畦用マルチ被覆装置1は、エンジン20を搭載する推進機体2と、畦の裾部を耕耘する耕耘部3と、畦面に張るフィルムロール46を備えたシート張り部4とを側面視左方から順に配置して構成する。
【0013】
推進機体2は、エンジン20と、ミッションケース21と、このエンジン20によって駆動される左右一対の駆動輪22、22と、畦用マルチ被覆装置1を操向するハンドル23と、エンジン20の動力を耕耘部3に伝達するドライブケース24とにより構成し、エンジン20の動力は、ミッションケース21を介して駆動輪22、22に伝達されると共に、推進機体2から前方に張り出したドライブケース24を介して耕耘部3に伝達する。
【0014】
耕耘部3は、推進機体2の中央から張り出したセンタードライブ型のドライブケース24の前部から左右に延出した耕耘軸30と、耕耘軸30に取り付けられる耕耘爪31と、これらの上方を覆うメインカバー32とにより構成する。
【0015】
図2に示すように、左右の耕耘軸30R、30Lには、それぞれ異なる耕耘爪を取り付ける。図例では、図面右方の畦に近い側の耕耘軸30Rには土壌を膨軟にするための棒爪310を取り付け、図面左方の畦から遠い側の耕耘軸30Lの軸端には螺旋状の畝立て爪311を取り付けている。これにより、棒爪310で畦の裾部を深く耕耘し、土壌を膨軟にして溝切りを行いやすくすると共に、畝立て爪311によって圃場側から畦寄りの位置に土を集める。
【0016】
シート張り部4は、耕耘部3に設けられた支持杆40と、支持杆40の下端に取り付けられた溝切器41と、溝切器41から畦側に傾けて取り付けられた支軸42と、支持杆40より後方に延出されたフレーム5、及び、このフレーム5に取り付けられる土掛けディスク43、低位車輪44並びに高位車輪45とにより構成する。
【0017】
支持杆40は、耕耘部3の後端部に上下向きに取り付けると共に上下に摺動自在かつ任意の位置で固定可能に構成して上下位置調節可能とする。支持杆40の下端には溝切器41を取り付け、支持杆40を上下に摺動して溝切器41の上下位置を変えることにより溝切器41による溝切深さを調節する。
【0018】
溝切器41は二枚の溝切板により形成し、図2及び図3に示すように、畦用マルチ被覆装置1の中心から畦側に寄った位置に配置する。支軸42は、溝切器41の一方の溝切板から畦の法面に沿うように畦側に傾けて取り付ける。そして、マルチフィルムをロール状に巻いたフィルムロール46をこの支軸42で軸支すると共にフィルムロール46の下端は溝切器41に当接し、上端は畦用マルチ被覆装置1から側方に突出させて、フィルムロール46が畦の法面に沿う方向で且つ推進機体2の進行方向とほぼ直行する方向に傾斜した状態で保持する。
【0019】
フレーム5は、長尺の杆部とこの杆部が挿通される筒部とを略L字型に連結して形成した第1乃至第5フレーム51〜55、及び杆部のみからなる第6フレーム56、第7フレーム57により形成されている。
【0020】
第1フレーム51は、支持杆40の途中から後方に延伸された杆部の先端部に左右向きの二つの筒部を取り付けて形成される。
【0021】
一方の筒部には第2フレーム52を挿通し、第2フレームの筒部は圃場側(図2において左側)に上下向きに配置する。そして、これに第6フレーム56を挿通して、この第6フレーム56の下端に土掛けディスク43を取り付ける。土掛けディスク43は、溝切器41の後方で圃場寄りの位置に配置し、畦用マルチ被覆装置1の進行方向に対して後部を畦側に傾けた状態で取り付けておく。
【0022】
第1フレーム51の他方の筒部には第3フレーム53を挿通し、第3フレームの筒部に第4フレーム54を上下向きに挿通する。そして、第4フレーム54の下端には畦の裾部を転動する低位車輪44を取り付ける。低位車輪44は、フィルムロール46の下端の後方で、土掛けディスク43よりも前方か、又は土掛けディスク43と前後方向略同位置に配置する。
【0023】
第4フレーム54には、第5フレーム55を左右向きに取り付ける。そして、第5フレームには上下向きに第7フレーム57を挿通して、第7フレーム57の下端に畦の頂面を転動する高位車輪45を取り付ける。高位車輪45は、フィルムロール46の上端の後方で低位車輪46と前後方向略同位置に配置する。
【0024】
次に、畦用マルチ被覆装置1の使用態様について説明する。
まず、支持杆40や第1乃至第7フレーム51〜57をそれぞれ上下又は左右に摺動させて適切な位置で固定し、作業を行う圃場と畦に合うように溝切器41、土掛けディスク43及び両車輪44、45のそれぞれの上下位置及び左右位置を調節する。
【0025】
フレーム5の調整により、溝切器41は、耕耘部3の棒爪310の後方に配置して畦の裾部に溝を形成するようにし、土掛けディスク43を溝切器41の後方で畦より遠い側に配置して、耕耘部3の畝立て爪311によって畦側に寄せた土を溝に落とすようにする。
また、低位車輪44は、溝切器41により形成した溝の上を移動させ、高位車輪45は、畦の頂面を移動させる。
【0026】
次に、フィルムロール46を支軸42に取り付けて下端を溝切器41で保持し、マルチフィルムの端縁を引き出してその下端縁側を低位車輪44の下に入れて押え、上端縁側を高位車輪45の下に入れて押える。
【0027】
マルチフィルムの敷設作業を行うときは、作業者はハンドル23をもって後方(図1において右方向)を向き、畦側の駆動輪22が畦の裾部に沿って走行するように確認しながら、前方(図1において左方向)に向かって畦用マルチ被覆装置1を進行させる。
【0028】
畦用マルチ被覆装置1を前方に進行させると、耕耘部3の棒爪310によって畦の裾部の土が掘り起こされて膨軟になると共に、膨軟になった土壌を溝切器41によって押し分けることで畦の裾部に沿って溝が形成される。
【0029】
また、畦用マルチ被覆装置1の進行に伴って、上下端縁を両車輪44、45で踏圧されたフィルムロール46は支軸42周りに回転してマルチフィルムが順次繰り出されていき、溝切器41によって形成された溝から畦の法面に沿って畦の頂面までを覆うように敷設されていく。
【0030】
さらに、耕耘部3の畝立て爪311によって土を掘り起こすと共に圃場側から畦寄りに土を集め、これらの土や溝切器41によって押し分けられた土を土掛けディスク43によって溝に落とし、溝を埋めつつマルチフィルムの下端縁に土をかけて固定していく。マルチフィルムの上端側は、随時、マルチフィルムの上に土を盛るなどして固定する。
【0031】
上記のごとく構成した畦用マルチ被覆装置は、以下の効果を奏する。
本発明に係る畦用マルチ被覆装置は、畦の裾部を耕耘すると共に畦に沿って配置した溝切器によって畦の裾部に沿う溝を形成しロール状のフィルムロールを畦の法面に沿って傾けると共にその下端を溝切器で保持したことにより、畦の裾部に深い溝を形成し、畦の裾部から頂面にわたって張ったマルチフィルムを法面に沿って敷設していくと共に、低位車輪によりフィルムロールの下端縁を溝の深い位置へ引き出しつつ、土掛けディスクにより溝を埋めてマルチフィルムの下端を畦裾の深い位置で確実に固定することができ、畦の法面や頂面の草の繁茂や畦の下部からの水漏れ等を防止して所望の効果を得ることができる。
【0032】
次に、畦用マルチ被覆装置の別の実施形態について説明する。図4は、別の実施形態に係る畦用マルチ被覆装置の背面概略図である。
【0033】
本実施形態においては、シート張り部4の第7フレームを折曲げており、畦の頂面を転動する高位車輪45の車軸が圃場側(図4中左側)よりも畦側(図4中右側)を高く傾いている。
【0034】
上記のごとく、高位車輪の車軸を、圃場側よりも畦側を高く傾けたことにより、畦の頂面よりも高い位置にあるフィルムロールの上端縁を確実に引き出し、畦方向に引張りながら踏圧することができ、フィルムロールを畦の法面に隙間なく張ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る畦用マルチ被覆装置の側面図
【図2】畦用マルチ被覆装置の構成を示す平面概略図
【図3】畦用マルチ被覆装置の構成を示す背面概略図
【図4】別の実施形態の畦用マルチ被覆装置の構成を示す背面概略図
【符号の説明】
【0036】
1 畦用マルチ被覆装置
2 推進機体
20 エンジン
21 ミッションケース
22 駆動輪
23 ハンドル
24 ドライブケース
3 耕耘部
30 耕耘軸
31 耕耘爪
310 棒爪
311 畝立て爪
32 メインカバー
4 シート張り部
40 支持杆
41 溝切器
42 支軸
43 土掛けディスク
44 低位車輪
45 高位車輪
46 フィルムロール
5 フレーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィルムを巻いたフィルムロールを推進機体の進行方向とは直交する方向で且つ傾斜した姿勢で当該機体の後部に設置し、このフィルムロールの両端のうち高い方の上端を推進機体より側方に突出すると共に、低い方の下端を推進機体の中央付近に位置させ、
そしてフィルムロールの後方には、畦の裾部を移動する低位車輪と畦の頂面を移動する高位車輪をそれぞれ設けて、両車輪でフィルムロールより繰り出たマルチフィルムを上から踏圧するようになし、
さらにフィルムロールの下端の前方かつ下方に位置して溝切器を設けると共に、フィルムロールの下端の後方には土掛けディスクを配備してなる畦用マルチ被覆装置。
【請求項2】
前記推進機体の駆動輪とフィルムロールの中間に耕耘部を設け、この耕耘部の畦寄りに土壌を膨軟にする棒爪を配すると共に、耕耘部の畦と反対側には土壌を中央に寄せる畝立て爪を配してなる請求項1記載の畦用マルチ被覆装置。
【請求項3】
前記高位車輪の車軸を圃場側よりも畦側を高く傾斜して取り付けたことを特徴とする請求項1記載の畦用マルチ被覆装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−48631(P2008−48631A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225886(P2006−225886)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000113816)マメトラ農機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】