説明

異常判定装置及び方法

【課題】複数のセンサからのセンサ信号を複合的に使用し、異常判定を行うことで、誤警報の少ない異常判定装置及び方法を提供する。
【解決手段】衝撃音センサ16によって測定されたセンサ信号と、衝撃音の発生を判定する衝撃音判定しきい値とを比較して、衝撃音の発生を検出する衝撃音検出処理と、振動センサ14によって測定されたセンサ信号と、所定レベル以上の振動の発生を判断する振動判定しきい値との比較により所定レベル以上の振動の発生を検出する振動検出処理と、衝撃音検出処理で検出される衝撃音の発生タイミングと、振動検出処理で検出される所定レベル以上の振動の発生タイミングとを比較して、車両10に異常状態が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、車両10に異常状態が発生していると判定された場合に、各警報装置60を用いて車両10の異常状態の発生を通知する異常通知処理とを実行する制御部31とを有する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常判定装置及び方法に関する。特に本発明は、車両の異常発生を判定する異常判定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の盗難や車両内の物品盗難の対策として、車内の異常を検知する各種センサが車両に搭載され、これらのセンサの測定する信号に基づいて異常判定装置で車両の異常を判定している。車両に搭載されるセンサには、例えば、電波を車室内に放出して侵入者を検知する電波式侵入検知センサ、車両の振動をとらえ車両の異常を検知する振動検出センサ、マイクで車室内の音を集音し異常を検知する音センサ、カメラで車室内の画像を撮影し異常を検知する画像センサなどがある。
【0003】
特許文献1では、複数のセンサと、駐車場所ごとに時刻、曜日、および季節を考慮して設定した各種センサの異常検出の閾値を記憶した記憶手段とを用いて、誤警報の防止を図っている。
【特許文献1】特開2005−7999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、センサの測定値を用いた判定では、ノイズ等による誤検知も多く、車両異常の検出精度の向上が求められている。例えば、車両に複数のセンサが搭載されていても、複数のセンサのうちの1つでも異常値を検出した場合に異常の発生と判断して警報してしまうと、誤警報の発生頻度が高くなる。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、複数のセンサの測定値に基づいて車両の異常状態を総合的に判断し、誤警報の発生頻度を低減させた異常判定装置および方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異常判定装置は、車両に搭載された複数のセンサが測定するセンサ信号に基づいて、前記車両の異常状態を判定する異常判定装置であって、前記複数のセンサの測定するセンサ信号を入力する入力部と、前記複数のセンサに含まれる衝撃音センサによって測定されたセンサ信号のセンサ値と、衝撃音の発生を判定する衝撃音判定しきい値とを比較して、衝撃音の発生を検出する衝撃音検出処理と、前記複数のセンサに含まれる振動センサによって測定されたセンサ信号のセンサ値と、振動の発生を判定する振動判定しきい値との比較により振動の発生を検出する振動検出処理と、前記衝撃音検出処理で検出される衝撃音の発生タイミングと、前記振動検出処理で検出される振動の発生タイミングとを比較して、前記車両に異常状態が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、前記車両に異常状態が発生していると判定された場合に、報知手段を用いて前記車両の異常状態の発生を通知する異常通知処理と、を実行する制御部と、を有する構成を採用する。
上記異常判定装置は、複数のセンサのセンサ信号を複合的に使用して、車両の異常を判定するため、異常検知の精度が向上し、誤警報を減少させることができる。
【0007】
上記異常判定装置において、衝撃音センサと振動センサとは、監視対象となる車両の窓ガラスから等距離に設置されている構成を採用する。
上記異常判定装置は、衝撃音センサと振動センサとが監視対象となる車両の窓ガラスから等距離に取り付けられているため、所定レベル以上の衝撃音が発生したタイミングと、所定レベル以上の振動が発生したタイミングとを対比して、車両の異常を判定することができる。
【0008】
上記異常判定装置において、前記異常判定処理は、前記振動センサのセンサ信号により振動を検出したタイミングが、前記衝撃音センサのセンサ信号により衝撃音の発生を検出したタイミングよりも早い場合に前記車両に異常状態が発生していると判定する処理を採用する。
上記異常判定装置は、所定レベル以上の衝撃音が発生したタイミングと、所定レベル以上の振動が発生したタイミングとの相関関係を用いて車両の異常を判定するため、さらに異常検知の精度を向上させることができる。
【0009】
上記異常判定装置において、前記異常判定処理は、更に、傾斜センサの測定するセンサ信号に基づいて車両の傾斜を検出した場合、又は侵入センサ又は画像センサにより車両内への不審者の侵入を検出した場合に前記車両に異常状態が発生していると判定する処理を採用する。
上記異常判定装置は、他のセンサを併用することで異常検知の精度をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明の異常判定方法は、前記複数のセンサに含まれる衝撃音センサによって測定されたセンサ信号のセンサ値と、衝撃音の発生を判定する衝撃音判定しきい値とを比較して、衝撃音の発生を検出するステップと、前記複数のセンサに含まれる振動センサによって測定されたセンサ信号のセンサ値と、振動の発生を判断する振動判定しきい値との比較により振動の発生を検出するステップと、前記衝撃音の発生タイミングと、前記所定レベル以上の振動の発生タイミングとを比較して、前記車両に異常状態が発生しているか否かを判定するステップと、前記車両に異常状態が発生していると判定された場合に、報知手段を用いて前記車両の異常状態の発生を通知するステップとを有している。
上記異常判定方法方法は、複数のセンサのセンサ信号に基づいて、複合的に車両の異常を判定するため、異常検知の精度が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のセンサ信号に基づいた異常判定を行うことで、誤警報を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0013】
図1に本発明を車両に搭載された制御装置に適用した実施例の構成を示す。
車両10には、異常を検知するための各種センサと、各センサからのセンサ信号を使用して異常判定処理を行うセンサECU(Electronic Control Unit)20と、センサECU20からの異常通知信号を受けて無線通信機器50と各警報装置60とを作動させるセキュリティECU40と、セキュリティECU40からの命令を受けてセキュリティセンタ80に異常を通知する無線通信機器50と、セキュリティECU40からの命令を受けてサイレン等を鳴らす各警報装置60とが設置されている。
【0014】
異常を検知するための各種センサとして、画像センサ11と、侵入センサ(電波式)12と、侵入センサ(超音波式)13と、振動センサ14と、傾斜センサ15と、衝撃音センサ16と、その他センサ17を設けている。画像センサ11は車室内の画像を撮影してセンサ信号としてセンサECU20へ出力し、侵入センサ(電波式)12および侵入センサ(超音波式)13は、車室内に電波または超音波を放出して送信波と受信波の解析結果をセンサ信号としてセンサECU20へ出力し、振動センサ14は車両10の振動をセンサ信号としてセンサECU20へ出力し、傾斜センサ15は車両10の傾斜度をセンサ信号としてセンサECU20へ出力する。なお、上記センサの全てが必ず必要なわけではなく、必要に応じて取捨選択が可能である。
【0015】
センサECU20は、センサ信号を増幅するためのアンプ21と、センサ信号をフィルタリングするためのフィルタ22とを画像センサ11を除く各センサに対応して設けている。また、センサECU20は、各種センサから出力されるセンサ信号に基づいて車両10の異常を判定する制御装置30とから構成される。本発明の異常判定装置は、本実施例の制御装置30に該当する。
【0016】
画像センサ11の信号を除いた上記各センサからのセンサ信号は、アンプ21を通して増幅された後、フィルタ22によってフィルタリングされ、制御装置30に取り込まれる。また、画像センサ11のセンサ信号は直接制御装置30に取り込まれる。
制御装置30は、複数のセンサ信号を用いて異常判定処理(詳細は後述する)を行い、異常を検知した場合には、セキュリティECU40へ異常を通知する。
セキュリティECU40は、制御装置30からの異常通知を検知すると、セキュリティセンタ80へ異常を通知するために無線通信機器50を作動させたり、サイレンなどの各警報装置60を作動させる。
【0017】
制御装置30は、図2に示すハードウェアを備えている。制御装置30は各センサの信号を入力する入力部32と、異常判定処理314および異常通知処理315を実行する制御部31と、制御部31が異常を検知した場合に異常通知をセキュリティECU40へ出力する出力部33とから構成される。制御部31は、ECUによる制御処理を実現するためのプログラムや、後述する異常判定処理プログラムなどが格納されたROM313と、ROM313に格納されたプログラムを読み込んで実行する中央処理装置(CPU)311と、プログラムを実行する際に使用される一時的なデータを保存するRAM312とから構成される。
【0018】
図3はCPU311などのハードウェアとROM313に格納されたソフトウェアとの協働によって実現される制御装置30の機能ブロック図の一例である。
入力部32はセンサ信号を入力して制御部31へ出力する。制御部31は入力したセンサ信号値に基づいて、異常判定処理314を行い、異常を検知した場合には、異常通知処理315を行う。制御部31からの異常通知は、出力部33によってセキュリティECU40へ出力される。
【0019】
図4に、侵入センサ(電波式)12、振動センサ14および衝撃音センサ16の車両10への配置の一例を示す。
本実施例では、振動センサ14および衝撃音センサ16を監視対象となる車両10の窓ガラスから等距離、かつフロント部分の同位置に配置する。侵入センサ(電波式)12は、車室内のどこに取り付けてもよいが、本実施例ではルーフ部分に配置している。なお、各種センサの最適な取り付け位置については、車両10の種類や大きさによって変化するため、本実施例に拘束されるものではない。
【0020】
次に、制御部31が各センサ信号の入力に基づいて実行する異常判定処理314と異常通知処理315について説明する。説明を簡略化するために、図1に図示された各種センサのうち、侵入センサ(電波式)12、振動センサ14および衝撃音センサ16を選択した場合を例に挙げて説明する。
図5は、制御部31が各センサ信号を入力し、異常判定処理314と異常通知処理315を実行するステップの一例を表したフローチャートである。
【0021】
制御部31は、運転者が車両10に対してワイヤレスロックを行った後、所定時間経過後(例えば、30秒後)から異常検知のための警戒を開始してセンサ信号の入力を開始する(ステップS1)。
制御部31は、警戒開始後に侵入センサ(電波式)12と振動センサ14と衝撃音センサ16とのいずれか1つのセンサのセンサ信号が各センサごとに設けられた判定しきい値を超えると(ステップS2/YES)、全てのセンサのセンサ信号を取り込む(ステップS3)。
ここで判定しきい値とは、センサ信号をその信号値に応じて大、中、小の3段階に分類するための値であり、各センサごとに3種類設定される。
各センサ信号は、判定しきい値によって、レベル3、レベル2、レベル1にレベル分けされ(以後、検知レベルと略記する)、本実施例ではいずれか1つのセンサのセンサ信号がレベル1の判定しきい値を超えた場合に、全てのセンサのセンサ信号を取り込むこととした。なお、各レベルの判定しきい値のうち、どの判定しきい値を用いるか、また、判定しきい値の値をどのように設定するかは本実施例に拘束されるものではない。
センサ信号の取込みは、予め設定された取込設定時間が終了するまで続けられる(ステップS4/NOかつステップS3)。
なお、以降の説明において、侵入センサ(電波式)12の判定しきい値を侵入判定しきい値、振動センサ14の判定しきい値を振動判定しきい値、衝撃音センサ16の判定しきい値を衝撃音判定しきい値という。
【0022】
信号の取込みが終了すると(ステップS4/YES)、制御部31は各センサの信号の信号値と検知レベルの設定基準とを比較して、各センサの検知レベルを決定する(ステップS5)。
例えば、侵入センサ(電波式)12は、反射物体に対して電波を送信し、反射物体が反射した電波を受信して送信波と受信波とを合成した合成波を作成し、合成波の振幅の変化を利用して侵入を検知する。反射物体が移動していない場合には、送信波と受信波との位相差は一定であるため合成波の振幅は変化しないが、反射物体が移動している場合には、送信波と受信波の位相差が変化するため合成波の振幅が変化する。そこで、侵入センサ(電波式)12は、合成波の振幅が変調している時間が2秒以上の場合には検知レベル3、1秒以上2秒未満の場合には検知レベル2、1秒未満の場合には検知レベル1と検知レベルを設定する。また、振動センサ14および衝撃音センサ16は、信号値が4V以上ならば検知レベル3、3V以上4V未満であれば検知レベル2、2V以上3V未満であれば検知レベル1と検知レベルを設定する。
本実施例で説明しない他のセンサについては、各センサの特性に応じて検知レベルを設定する。例えば、傾斜センサ15の場合には、例えば傾斜角度が10度以上ならば検知レベル3、5度以上10度未満ならば検知レベル2、2度以上5度未満ならば検知レベル1と検知レベルを設定できる。また、画像センサ11の場合には、その画像の変化率が45%以上の場合には検知レベル3、30%以上45%未満の場合には検知レベル2、15%以上30%未満の場合には検知レベル1と検知レベルを設定することができる。
検知レベルの設定基準は、車両10の種類、大きさ、センサの種類に依存するため、上記の設定基準に拘束されるものではない。
【0023】
検知レベルの設定後、制御部31は振動センサ14のセンサ信号がレベル1の振動判定しきい値よりも大きくなるタイミングと、衝撃音センサ16のセンサ信号がレベル1の衝撃音判定しきい値よりも大きくなるタイミングとを比較する(ステップS6)。
ここで、両者の当該タイミングを取得し、比較するために用いる各判定しきい値は、必ずしもレベル1の判定しきい値である必要はなく、センサごとに異なるレベルのしきい値を用いてもよい。例えば、振動センサ14はレベル2の振動判定しきい値を使用し、衝撃音センサ16はレベル1の衝撃音判定しきい値を使用して各タイミングを取得することも可能である。
【0024】
ここで、振動センサ14のセンサ信号がレベル1の振動判定しきい値よりも大きくなるタイミング(以後、振動センサ検知タイミングと略記する)と、衝撃音センサ16のセンサ信号がレベル1の衝撃音判定しきい値よりも大きくなるタイミング(以後、衝撃音センサ検知タイミングと略記する)とを比較する理由を図6と図7を用いて説明する。
図6と図7は、振動センサ14と衝撃音センサ16を車両10の同じ場所に配置し、前面または後面または左右両側の窓のいずれかに衝撃を与えた場合の、振動センサ14の信号波形および衝撃音センサ16の信号波形の一例を示している。
図6は、窓に対する衝撃が小さい場合、すなわち窓が割れない程度の衝撃を窓に与えた場合の衝撃音センサ16の信号波形と、振動センサ14の信号波形の一例を示している。衝撃音センサ16の衝撃音判定しきい値を2V、振動センサ14の振動判定しきい値を3Vとした場合、衝撃音センサ16のセンサ信号が2Vを越えるタイミングは、振動センサ14のセンサ信号が3Vを越えるタイミングよりも早いことが図6から読み取れる。つまり、窓に対する衝撃が小さい場合、衝撃音センサ検知タイミングは、振動センサ検知タイミングよりも早いことがわかる。
一方、図7は、窓に対する衝撃が大きい場合、つまり窓が割れてしまう程の衝撃を窓に与えた場合の衝撃音センサ16の信号波形と、振動センサ14の信号波形の一例を示している。この場合、衝撃音センサ検知タイミングは、振動センサ検知タイミングよりも遅くなっていることがわかる。
【0025】
すなわち、振動センサ検知タイミングと、衝撃音センサ検知タイミングとを比較する(ステップS6)ことで、窓が割れているかどうかの判定をすることができる。
本ステップS6の判定を行うためには、振動センサ14と衝撃音センサ16とが、監視対象の窓に与えた衝撃の大小と、衝撃音センサ検知タイミングと振動センサ検知タイミングとの関係が図6と図7に示す関係が成立する場所に配置されていればよい。
【0026】
振動センサ検知タイミングが、衝撃音センサ検知タイミングよりも早い場合には(ステップS6/YES)、窓が割れている可能性が高いため振動センサ14の検知レベルに1を加算する。この際、振動センサ14の検知レベルが既に3である場合には加算を行わない。
【0027】
制御部31は、各センサのセンサ信号を複合的に使用して異常判定を行うため、各センサの検知レベルの数値を足し合わせる。各センサの検知レベルの総和が5以下であった場合には、異常判定処理を継続する(ステップS8/NO)。
各センサの検知レベルの総和が6以上だった場合には、車両10内に異常があったとして、セキュリティECU40に異常通知を行う(ステップS9)。セキュリティECU40は制御部31からの通知に従ってライトを点滅させたり、セキュリティホーンを所定時間鳴らしたりする。
制御部31は、ワイヤレスアンロックを検知すると、警戒状態の解除を行い、異常判定処理を終了する(ステップS10)。
【0028】
以上の説明より明らかなように、本実施例によれば、1つのセンサの検知レベルが大きくても、他のセンサの検知レベルが小さく検知レベルの総和が5以下となる場合には、異常通知処理315を行わないので誤警報を減少させることができる。
一方、振動センサ検知タイミングが、衝撃音センサ検知タイミングよりも早い場合には、振動センサ14の検知レベルを1レベル大きくすることで、本処理を行わない場合には検知レベルの総和が5以下となって見過ごされてしまう異常を検知することができ、異常検知の精度が向上する。
【0029】
次に、各センサの検知レベルによって次ステップの処理を実行するかを判定する仮異常判定を行った後に、異常判定を行う異常判定処理314について説明する。
図8は、制御部31が各センサ信号を入力し、異常判定処理314と異常通知処理315を実行するステップの一例を表したフローチャートである。
制御部31は、運転者が車両10に対してワイヤレスロックを行った後、所定時間経過後(例えば30秒後)から異常検知のための警戒を開始し、センサ信号の入力を開始する(ステップS21)。
入力部32は、警戒開始後に侵入センサ(電波式)12または振動センサ14または衝撃音センサ16のいずれか1つのセンサからの割込み入力を検知すると(ステップS22/YES)、全てのセンサのセンサ信号を制御部31へと取り込む(ステップS23)。センサ信号の取込みは、予め設定された取込設定時間が終了するまで続けられる(ステップS24/NOかつステップS23)。
【0030】
制御部31は信号の取込みが終了すると(ステップS24/YES)、各センサの信号の信号値に応じた検知レベルを設定する(ステップS25)。
検知レベルの設定基準は、図5のフローチャートにて説明した基準と同様とする。
【0031】
制御部31は、検知レベルの設定後、全センサのうちいずれかの検知レベルが2以上であるかを判定する(ステップS26)。いずれのセンサの検知レベルも2以上でない場合には、車両10内には異常がないとみなして、警戒状態に戻る(ステップS26/NO)。
【0032】
制御部31は、全センサのうちいずれかの検知レベルが2以上である場合には、異常判定処理を継続する必要があるとして(ステップS26/YES)、振動センサ検知タイミングと、衝撃音センサ検知タイミングとを比較する(ステップS27)
【0033】
前述したとおり、振動センサ検知タイミングと衝撃音センサ検知タイミングとを比較する(ステップS27)ことで、窓が割れているかどうかの判定をすることができる。そこで、振動センサ検知タイミングが、衝撃音センサ検知タイミングよりも早い場合には(ステップS28/YES)、制御部31は、振動センサ14の検知レベルに1を加算する。この際、振動センサの検知レベルが既に3である場合には加算を行わない。
【0034】
制御部31は、各センサのセンサ信号を複合的に使用して異常を判定するために、各センサの検知レベルの数値を足し合わせる。各センサの検知レベルの総和が5以下であった場合には、制御部31は、異常判定処理を継続する(ステップS29/NO)。
各センサの検知レベルの総和が6以上だった場合には、制御部31は、車両10内に異常があったとして、セキュリティECU40に異常通知を行う(ステップS30)。セキュリティECU40は制御部31からの通知に従ってライトを点滅させたり、セキュリティホーンを所定時間鳴らしたりする。
制御部31は、ワイヤレスアンロックを検知すると、警戒状態を解除し異常判定処理を終了する(ステップS31)。
【0035】
以上の説明から明らかなように、本実施例によれば、全センサの検知レベルが1である場合には、制御部31は警戒状態に戻るため、誤警報を減少させることができる。
また、全センサのうちいずれかの検知レベルが2以上であっても、他のセンサの検知レベルが小さく検知レベルの総和が5以下となる場合には、制御部31は異常通知処理315を行わないので誤警報を減少させることができる。
一方、振動センサ検知タイミングが、衝撃音センサ検知タイミングよりも早い場合には、振動センサ14の検知レベルを1レベル大きくすることで、本処理を行わない場合には検知レベルの総和が5以下となって見過ごされてしまう異常を検知することができ、異常検知の精度が向上する。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が適用される車両の構成の一例を示した構成図である。
【図2】制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の制御装置の機能ブロック図の一例である。
【図4】センサの取り付け位置の一例を示す図である。
【図5】異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】窓に与えた衝撃が小さい場合の、振動センサの信号波形と衝撃音センサの信号波形の一例を示した図である。
【図7】窓に与えた衝撃が大きい場合の、振動センサの信号波形と衝撃音センサの信号波形の一例を示した図である。
【図8】異常判定処理の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
10…車両
11…画像センサ
12…侵入センサ(電波式)
13…侵入センサ(超音波式)
14…振動センサ
15…傾斜センサ
16…衝撃音センサ
17…その他センサ
20…センサECU
21…アンプ
22…フィルタ
30…制御装置
31…制御部
32…入力部
33…出力部
40…セキュリティECU
50…無線通信機器
60…各警報装置
80…セキュリティセンタ
311…CPU
312…RAM
313…ROM
314…異常判定処理
315…異常通知処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された複数のセンサが測定するセンサ信号に基づいて、前記車両の異常状態を判定する異常判定装置であって、
前記複数のセンサの測定するセンサ信号を入力する入力部と、
前記複数のセンサに含まれる衝撃音センサによって測定されたセンサ信号のセンサ値と、衝撃音の発生を判定する衝撃音判定しきい値とを比較して、衝撃音の発生を検出する衝撃音検出処理と、
前記複数のセンサに含まれる振動センサによって測定されたセンサ信号のセンサ値と、振動の発生を判定する振動判定しきい値とを比較して、振動の発生を検出する振動検出処理と、
前記衝撃音検出処理で検出される衝撃音の発生タイミングと、前記振動検出処理で検出される振動の発生タイミングとを比較して、前記車両に異常状態が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、
前記車両に異常状態が発生していると判定された場合に、報知手段を用いて前記車両の異常状態の発生を通知する異常通知処理と、を実行する制御部と、
を有することを特徴とする異常判定装置。
【請求項2】
前記衝撃音センサと振動センサとは、監視対象となる車両の窓ガラスから等距離に設置されていることを特徴とする請求項1記載の異常判定装置。
【請求項3】
前記異常判定処理は、前記振動センサのセンサ信号により振動を検出したタイミングが、前記衝撃音センサのセンサ信号により衝撃音の発生を検出したタイミングよりも早い場合に前記車両に異常状態が発生していると判定することを特徴とする請求項1または2記載の異常判定装置。
【請求項4】
前記異常判定処理は、更に、傾斜センサの測定するセンサ信号に基づいて車両の傾斜を検出した場合、又は侵入センサ若しくは画像センサにより車両内への不審者の侵入を検出した場合に前記車両に異常状態が発生していると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の異常判定装置。
【請求項5】
車両に搭載された複数のセンサの測定するセンサ信号に基づいて、前記車両の異常状態を判定する異常判定方法であって、
前記複数のセンサに含まれる衝撃音センサによって測定されたセンサ信号のセンサ値と、衝撃音の発生を判定する衝撃音判定しきい値とを比較して、衝撃音の発生を検出するステップと、
前記複数のセンサに含まれる振動センサによって測定されたセンサ信号のセンサ値と、振動の発生を判定する振動判定しきい値とを比較して、振動の発生を検出するステップと、
前記衝撃音の発生タイミングと、前記振動の発生タイミングとを比較して、前記車両に異常状態が発生しているか否かを判定するステップと、
前記車両に異常状態が発生していると判定された場合に、報知手段を用いて前記車両の異常状態の発生を通知するステップと、
を有することを特徴とする異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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