異常検知装置、サーバ、システムおよび方法
【課題】集計するデータの量を抑制しつつ、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを容易に特定可能な異常検知装置、サーバ、システムおよび方法を提供することを課題とする。
【解決手段】固定局3の電波を受信する受信装置12の異常の有無を検知する異常検知装置10であって、前記受信装置12が前記固定局3から所定距離に存在する際の受信状態と、前記固定局3から所定距離における各受信装置12の受信状態を集計した統計データとを比較して、前記受信装置12の異常の有無を検知する第一の演算部11を備える。
【解決手段】固定局3の電波を受信する受信装置12の異常の有無を検知する異常検知装置10であって、前記受信装置12が前記固定局3から所定距離に存在する際の受信状態と、前記固定局3から所定距離における各受信装置12の受信状態を集計した統計データとを比較して、前記受信装置12の異常の有無を検知する第一の演算部11を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知装置、サーバ、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信エラーを防止するDSRC(Dedicated Short Range Communications)車載機等が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−308740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DSRCのように、各地に点在する固定局を介した事業者から受信装置への無線通信においては、通信装置に発生した何らかの不具合により、通信が正常に行なわれない場合がある。ここで、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを特定する手段として、受信装置から提供される受信状態の情報を集計して解析する方法がある。しかしながら、固定局が各地に点在していると集計するデータが膨大となり、また、ユーザ側である受信装置においては通信が正常に行なわれない場合に固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを特定することが難しい。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、集計するデータの量を抑制しつつ、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを容易に特定可能な異常検知装置、サーバ、システムおよび方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、各受信装置が固定局の所定付近に居る際に蓄積した受信状態の数値データを集計した統計データと実際の受信状態とを比較し、異常の有無を検知することにした。
【0007】
詳細には、固定局の電波を受信する受信装置の異常の有無を検知する異常検知装置であって、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態と、前記固定局から所定距離における各受信装置の受信状態を集計した統計データとを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する第一の演算部を備える。
【0008】
上記異常検知装置であれば、各受信装置が固定局の所定付近に居る際に蓄積したデータを集計した統計データに基づいて異常の有無を検知しているため、固定局の付近以外のデータも含めて集計する場合に比べて、集計するデータの量を抑制することができる。
【0009】
また、固定局の電波を受信する受信装置側で、上記集計データと実際の受信状態との比較を行い、受信装置の異常の有無を検知しているため、受信状態が正常でなかった場合であっても、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを受信装置側で容易に特定することができる。
【0010】
なお、前記統計データは、前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計するサーバが生成し、前記サーバから前記異常検知装置へ提供したものであり、前記第一の演算部は、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在す
る際の受信状態を示すデータを定期的に前記サーバへ提供するものであってもよい。上記異常検知装置であれば、各受信装置の情報がサーバで共有されるので、集計するデータの量を抑制しつつ精度の高い検知結果を得ることができる。
【0011】
また、前記第一の演算部は、前記統計データと前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態との比較を少なくとも2箇所の固定局について実行し、前記少なくとも2箇所の固定局の比較結果に基づいて、前記受信装置の異常の有無を検知するものであってもよい。受信装置の異常の有無の検知を少なくとも2箇所の固定局に基づいて実行すれば、固定局に異常が生じた直後であっても、異常検知装置は、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを精度よく検知することができる。
【0012】
また、前記各受信装置の受信状態を示すデータは、前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在することを測位データと前記固定局の位置を規定した位置データとの比較によって検知した際に蓄積されたものであってもよい。受信状態を示すデータを測位データに沿って提供することにより、電波が送信されていない固定局の異常を、各受信装置の受信状態を示す数値データの解析から特定することができる。
【0013】
また、本発明は、固定局の電波を受信する各受信装置から提供されるデータを処理するサーバであって、各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計して、前記固定局の電波の受信状態の統計データを生成し、前記統計データに基づいて前記固定局の異常の有無を検知する第二の演算部を備えるものであってもよい。
【0014】
上記サーバであれば、各受信装置が固定局の所定付近に居る際に蓄積したデータの集計結果に基づいて異常の有無を検知しているため、固定局の付近に居ない際のデータも含めて集計する場合に比べて、集計するデータの量を抑制しつつ、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかをサーバ側で容易に特定することができる。
【0015】
また、本発明は、システム、方法、プログラム、或いはプログラムを記録した記録媒体として捉えることもできる。例えば、本発明は、無線通信する固定局と各受信装置の異常を検知する異常検知システムであって、前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計して、前記固定局の電波の受信状態の統計データを生成する第二の演算部と、前記第二の演算部が生成した前記統計データと、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態とを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する第一の演算部と、を備えるものであってもよいし、或いは、固定局の電波を受信する受信装置に設けた演算部に実行させる異常検知プログラムであって、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態と、前記固定局から所定距離における各受信装置の受信状態を集計した統計データとを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する処理を実行させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
集計するデータの量を抑制しつつ、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを容易に特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】異常検知システムの構成図である。
【図2】システム全体で実行される処理のイメージを示した図である。
【図3】システム全体で実行される処理の概要を示した図である。
【図4】路側機または車載機が故障した場合の態様を示した図である。
【図5】受信状態判断処理のフローチャートである。
【図6】各路側機の電波到達エリア、想定受信範囲、及びログ収集範囲を示した図である。
【図7】路側機マップの一例を示した図である。
【図8】ログデータの一例を示した図である。
【図9】受信感度マップの一例を示した図である。
【図10】ログ送信処理のフローチャートである。
【図11】マップ更新処理のフローチャートである。
【図12】ログ蓄積処理のフローチャートである。
【図13】ログ解析処理のフローチャートである。
【図14】ログリストの集計および受信感度マップの作成の処理内容を示した図である。
【図15】電波到達エリアを簡略化した図である。
【図16】「正常パターン」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を示した図である。
【図17】「異常パターン(出力過小)」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を示した図である。
【図18】「異常パターン(出力過大)」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を示した図である。
【図19】受信状態の判断処理のシーケンスである。
【図20】ログデータの定期的な集計および解析、及び受信感度マップの更新処理のシーケンスである。
【図21】データ量を従来例と実施例とで比較した図である。
【図22】道路IDの一例である。
【図23】受信感度マップの変形例である。
【図24】変形例に係る受信状態判断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明を実施するための形態を例示的に説明する。以下に示す実施形態は例示であり、本願発明の技術的範囲をこれらに限定するものではない。
【0019】
<構成>
図1は、本願発明の一実施形態に係る異常検知システム100の構成図である。異常検知システム100は、車両1に搭載されたDSRC車載機(以下、単に車載機10という)およびGPS(Global Positioning System)装置16と、センター2に設置されたサ
ーバ20とを含む。車載機10は、ITS(Intelligent Transport System)車載機の一種であり、例えば、ETC(Electronic Toll Collection system)端末やカーナビゲー
ション装置等を例示できる。なお、車載機10は、本願でいう異常検知装置の一態様として捉えることができる。しかし、本願でいう異常検知装置は、このような態様に限定されるものでなく、車載機10とは別の装置としてもよい。
【0020】
サーバ20は、プロセッサ21やメモリ22、通信インターフェース(通信I/F)24、データベース23を備えており、メモリ22にロードされたコンピュータプログラムをプロセッサ21が実行することにより、後述する異常検知処理等を実行する。一連の処理は、プロセッサ21がメモリ22、通信I/F24、データベース23と協働することによって実現される。プロセッサ21は、通信I/F24を介して公衆通信回線4に繋がっており、公衆通信回線4を介して車両1の車載機10と通信可能である。
【0021】
車載機10は、プロセッサ11や不揮発性のメモリ13、送受信部12、通信I/F14、入力I/F15を備えており、メモリ13にロードされたコンピュータプログラムをプロセッサ11が実行することにより、路側機3から各種のデータ(例えば、車載機10がETC端末であれば決済に必要なデータであり、車載機10がカーナビゲーション装置
であれば交通情報等のデータである)を得る。送受信部12は、車両1が走行する道路に設置された各種の路側機3との間で無線通信回線を確立し、プロセッサ11と路側機3との間で交換されるデータを中継したり、CN比やパケットエラー率等の情報をプロセッサ11へ渡したりする。メモリ13には、路側機3のCN比等の情報を記録するためのログや、路側機3の位置データや受信感度のマップ等が格納されている。
【0022】
GPS装置16は、衛星から送信された信号に基づいて車両1の位置を測位する。GPS装置16は、車載機10の入力I/F15と接続されており、車両1の位置データを車載機10のプロセッサ11へ送る。
【0023】
<システム全体で実行される処理の概要>
図2は、システム全体で実行される処理のイメージを示した図である。異常検知システム100は、各車両1の車載機10から送られる受信感度や位置等のデータをセンター2のサーバ20が処理する。各車両1の車載機10から送られるデータをサーバ20が処理することにより、車載機10や路側機3の故障をユーザあるいは管理者が検知し、故障発生箇所を特定できる。
【0024】
図3は、システム全体で実行される処理の概要を示した図である。車両1とセンター2との間で交換されるデータは、次のように処理される。
【0025】
すなわち、車両1側では、車両1が路側機3の付近を走行したときに得た路側機3の電波の受信感度のデータが車載機10のプロセッサ11によって解析され、受信状態の判断が行なわれる(S1000)。また、車両1側では、受信感度のデータがログに蓄積され、サーバ20へ定期的に送信される(S2000)。また、車両1側では、サーバ20で作成された受信感度のマップの受信が行なわれ、マップが逐次更新される(S3000)。
【0026】
センター2側では、車載機10から送信されるデータがプロセッサ21によってデータベース23へ蓄積されると共に(S4000)、蓄積されたデータの定期的な解析が行なわれ、路側機3の故障の有無の診断と受信感度のマップの作成が行なわれる(S5000)。
【0027】
以上がシステム1全体で実行される処理の概要であり、各処理の実行主体は下記の表に示す通りである。
【表1】
【0028】
路側機3または車載機10が故障する場合の態様としては、図4に示されるように、4つのパターンが考えられる。すなわち、車載機10が路側機3の想定受信範囲内に居て電
波も受信可能な場合(パターン1)と、車載機10が路側機3の想定受信範囲内に居るにも関わらず電波が受信不能な場合(パターン2)と、車載機10が路側機3の想定受信範囲外に居るにも関わらず電波が受信可能な場合(パターン3)と、車載機10が路側機3の想定受信範囲外に居て電波も受信不能な場合(パターン4)の4つである。パターン1で考えられるのは、路側機3の出力が正常か過大の場合であるため、路側機3が異常の可能性を含むことになる。パターン2で考えられるのは、路側機3の出力が正常か過小の場合であるため、路側機3および車載機10の何れか又は両方が故障している可能性を含むことになる。パターン3で考えられるのは、路側機3の出力が過大の場合だけであるため、路側機3が故障しているということになる。パターン4は、基本的には路側機3と車載機10の何れも正常の場合のパターンであるが、路側機3が故障して出力が過小の場合や、車載機10が故障して正常に受信できていない状態の可能性を含んでいる。
【0029】
本異常検知システム100では、パターン1からパターン3の何れかの態様において、路側機3や車載機10の異常を検知するものであり、車両1側ではパターン2の場合の車載機10の異常の有無を受信感度マップに基づいて検知し、センター2側ではパターン1,2,3の場合の路側機3の異常の有無を各車両1の車載機10から送られるログデータに基づいて検知する。
【0030】
以下、サーバ20のプロセッサ21や車載機10のプロセッサ11が実行する処理の詳細について説明する。なお、説明の便宜上、以下においては上記表に示す各処理(S1000〜S5000)について個別に説明するが、上記各処理は、必ずしも他の処理の前後で実行されるものではなく、他の処理と並列に実行される場合もある。下記に示す各処理フローは、各プロセッサがコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0031】
<車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理(S1000)>
以下、車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理の詳細について、図5のフローチャートに沿って説明する。
【0032】
(ステップS1101)車載機10のプロセッサ11は、車両1の駆動源が作動状態(以下、ACCオンという)、すなわち、駆動源が内燃機関であればエンジンが始動し、ハイブリッドシステムやEV(Electric Vehicle)システムであればシステム電源がオンになると、車両1の位置に関するデータをGPS装置16から取得する。
【0033】
(ステップS1102)車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から位置データを取得するとメモリ13にアクセスし、路側機3の位置を示すマップ(以下、路側機マップという)を参照する。路側機マップは、ITS(Intelligent Transport System)事業者等が作成したものであり、メモリ13に予め格納されている。
【0034】
車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から取得した位置データと路側機マップとを比較し、車両1が路側機3の所定付近に位置しているか否かを判定する。ここでいう路側機3の所定付近とは、路側機3の送信出力が過大である場合に電波が到達し得る範囲よりも内側の範囲であり、例えば、図6で「ログ収集範囲」として示す範囲内である。
【0035】
路側機3が、例えば、図6に示すよう、路側機マップ上で位置C−3と位置D−10と位置K−6にあるものとする。また、路側機3が情報を提供する範囲は「想定受信範囲」で示される範囲内に限定されていると仮定する。この場合、路側機3の送信出力が正常であれば、例えば位置C−3の路側機3のように、電波が実際に到達しているエリア(以下、電波到達エリアという)が「想定受信範囲」と概ね一致することになる。一方、路側機3の送信出力が過大であれば、路側機3が情報を提供する範囲よりも外側の範囲にまで電波が届くことになり、例えば位置D−10の路側機3のように、電波到達エリアが「想定
受信範囲」よりも広くなる。また、路側機3の送信出力が過小であれば、例えば位置K−6の路側機3のように、電波到達エリアが「想定受信範囲」よりも狭くなる。
【0036】
そこで、本異常検知システム100では、収集データの量を抑制しつつも、送信出力が過大の路側機3を検知できるようにするため、車両1が「ログ収集範囲」にあることを車載機10のプロセッサ11がGPS装置16の位置情報に基づいて検知すると、受信感度のデータをログへ記録する。路側機マップは、車両1が「ログ収集範囲」にあるか否かをGPS装置16の位置情報に基づいて検知するためのものであり、例えば、図7に示すように、各路側機3を識別するためのID情報や提供エリアの情報、周辺エリアの情報を有している。図7の表で「提供エリア」が図6の「想定受信範囲」に対応しており、図7の表で「周辺エリア」が図6の「ログ収集範囲」に対応している。
【0037】
車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から通知される緯度・経度の位置情報が、路側機マップが示す何れかの路側機3の提供エリアまたは周辺エリアのメッシュIDに一致すれば、車両1が当該路側機3の付近に居ると判定する。一方、車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から取得した緯度・経度の位置情報が、路側機マップが示す何れの路側機3の提供エリアおよび周辺エリアのメッシュIDにも一致しなければ、車両1が何れの路側機3の付近にも居ないと判定する。
【0038】
ここで、メッシュIDとは、地図上の特定の位置を示すための情報であり、各メッシュIDには対応する緯度・経度の情報が付されている。車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から通知される緯度・経度の情報と路側機マップのメッシュIDに付されている緯度・経度の情報とを比較することにより、車両1が特定の路側機3の付近に居るか否かの判定を行なう。なお、「ログ収集範囲」を示す路側機マップの「周辺エリア」は、図7の表に示すように予め明示されていてもよいし、路側機3からの距離に応じてプロセッサ11が判別してもよい。
【0039】
(ステップS1103)車載機10のプロセッサ11は、ステップS1102の処理で車両1が「ログ収集範囲」内に位置していることを検知した場合、送受信部12から通知される路側機3の電波のCN比(Carrier to Noise Ratio)およびパケットエラー率(受信データの誤り率)の情報を取得する。これにより、図8に示すように、路側機のIDや日時、電波を受信したチャンネル、緯度および経度、CN比、及びパケットエラー率の7つの情報で構成されるログデータが生成される。
【0040】
(ステップS1104)車載機10のプロセッサ11は、生成したログデータをメモリ13に格納する。
【0041】
(ステップS1105)車載機10のプロセッサ11は、ログデータをメモリ13に格納した後、受信状態の判断を行なう。なお、受信状態の判断は、ログデータをメモリ13に格納する前に行なっても良い。
【0042】
車載機10のプロセッサ11は、ログデータをメモリ13に格納した後、メモリ13にアクセスして受信感度マップを参照する。受信感度マップは、車載機10が正常であるか否かを検知するためのものであり、例えば、図9に示すように、路側機3の電波のCN比の平均やその標準偏差、パケットエラー率の平均やその標準偏差の情報を有している。
【0043】
受信感度マップが示すこれらの情報は、各車両1の車載機10がセンター2へ送った情報に基づいて生成されたものであるため、ステップS1103で生成したログデータのCN比やパケットエラー率が、受信感度マップが示すデータから逸脱していれば、本車載機10に何らかの異常があることが推測される。
【0044】
そこで、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1103で生成したログデータのCN比が小さい場合、すなわち、下記の数式に示す「分布の下限値」よりも下回っていれば、車載機10に異常があると判定する。
【数1】
【0045】
例えば、ステップS1103で生成したログデータが図8に示す通りであり、当該ログデータの緯度・経度に対応する受信感度マップが図9に示す通りであった場合を考える。上記数式(数1)と図9の受信感度マップより、当該ログデータの緯度・経度におけるCN比の分布の下限値は、23dB(CN比平均)から2dB(CN比標準偏差の2倍)を減算した21dBとなる。一方、ログデータのCN比は22dBであり、CN比の分布の下限値を上回っているため、車載機10のプロセッサ11は、CN比に関しては正常と判定する。
【0046】
また、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1103で生成したログデータのパケットエラー率が大きい場合、すなわち、下記の数式に示す「分布の上限値」よりも上回っていれば、車載機10に異常があると判定する。
【数2】
【0047】
例えば、ステップS1103で生成したログデータが図8に示す通りであり、当該ログデータの緯度・経度に対応する受信感度マップが図9に示す通りであった場合を考える。上記数式(数2)と図9の受信感度マップより、当該ログデータの緯度・経度におけるパケットエラー率の分布の上限値は、0.01%(パケットエラー率平均)から0.002%(パケットエラー率標準偏差の2倍)を加算した0.012%となる。一方、ログデータのパケットエラー率は0%であり、パケットエラー率の分布の上限値を下回っているため、車載機10のプロセッサ11は、パケットエラー率に関しても正常と判定する。
【0048】
(ステップS1106)車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れも正常であれば、受信状態に異常が無く、車載機10が正常であると判定する。一方、車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れかが異常であれば、受信状態に異常があり、車載機10が正常でないと判定する。
【0049】
(ステップS1107)車載機10のプロセッサ11は、ステップS1106の処理で受信状態に異常があり、車載機10が正常でないと判定した場合、車載機10に異常がある旨を表示灯あるいは音声でユーザへ通知する。
【0050】
車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理の詳細については以上の通りである。車載機10のプロセッサ11は、車両1がACCオンの状態になると上記ステップS1101〜S1107の処理を定期的(例えば、1秒毎あるいは車両1が数メートル移動する毎等)繰り返し実行する。
【0051】
なお、上記ステップS1105の処理では、車載機10が正常であるか否かの判定の閾値を、正規分布上で約95%のデータが該当することになる標準偏差の2倍(2σ)に設定していた。しかし、車載機10が正常であるか否かの判定の閾値は、例えば、標準偏差の1倍(σ)や3倍(3σ)といった具合に、適宜変更してもよい。
【0052】
<車載機10のプロセッサ11が実行するログ送信処理(S2000)>
以下、車載機10のプロセッサ11が実行するログ送信処理の詳細について、図10のフローチャートに沿って説明する。
【0053】
(ステップS2101)車載機10のプロセッサ11は、車両1がACCオンの状態になると、メモリ13に蓄積されたログをセンター2へ送信する所定のタイミングであるか否かの判定を行なう。メモリ13に蓄積されたログをセンター2へ送信するタイミングは任意であり、例えば、10分毎、車両1の駆動源が停止状態(以下、ACCオフという)になった時、或いはメモリ13の空き容量が無くなった時等、異常検知システム100の仕様等を考慮して適宜設定する。
【0054】
(ステップS2102)車載機10のプロセッサ11は、ステップS2101の処理でログをセンター2へ送信する所定のタイミングであると判定した場合、通信I/F14で公衆通信回線4を経由してサーバ20にアクセスし、メモリ13に蓄積されている多数のログデータ(以下、ログリストという)をサーバ20へ送る。車載機10のプロセッサ11は、メモリ13に蓄積されているログリストを送信した後、メモリ13に蓄積されているログリストを消去する。
【0055】
車載機10のプロセッサ11が実行するログ送信処理の詳細については以上の通りである。車両1がACCオンの状態になると、車載機10のプロセッサ11が上記ステップS2101〜S2102の処理を繰り返し実行することにより、ログリストが所定のタイミングでセンター2へ定期的に送信される。なお、前記所定のタイミングが、車両1の駆動源が停止状態(以下、ACCオフという)になった時である場合には、ログリストをセンター2へ送信し、メモリ13に蓄積されているログリストを消去した後、上記ステップS2101〜S2102の処理の実行を終了する。
【0056】
<車載機10のプロセッサ11が実行するマップ更新処理(S3000)>
以下、車載機10のプロセッサ11が実行するマップ更新処理の詳細について、図11のフローチャートに沿って説明する。
【0057】
(ステップS3101)車載機10のプロセッサ11は、車両1がACCオンの状態になると、通信I/F14で公衆通信回線4を経由してサーバ20にアクセスし、サーバ20のデータベース23に格納されている受信感度マップが更新されているか否かを照会する。データベース23に格納されている受信感度マップが更新されているか否かは、メモリ13に格納されている受信感度マップのプロパティ情報(バージョン情報や更新日時の情報)とデータベース23に格納されている受信感度マップのプロパティ情報とを比較して行なう。
【0058】
(ステップS3102)車載機10のプロセッサ11は、データベース23に格納されている受信感度マップが更新されていると判定した場合、サーバ20に対し、受信感度マップのデータの送信を要求する。
【0059】
(ステップS3103)車載機10のプロセッサ11は、サーバ20からデータが送信されると、新たな受信感度マップのデータをメモリ13に格納すると共に、メモリ13に格納されていた古い受信感度マップのデータを削除する。
【0060】
車載機10のプロセッサ11が実行するマップ更新処理の詳細については以上の通りである。車載機10のプロセッサ11は、車両1がACCオンの状態になると上記ステップS3101〜S3103の処理を実行することにより、メモリ13に格納されている受信感度マップを最新の状態に保つ。
【0061】
なお、受信感度マップの更新は、車両1がACCオンの状態になったときのみならず、ACCオンの状態において繰り返し実行してもよいし、例えば月1回等の更新であってもよい。また、受信感度マップと合わせて路側機マップも更新するようにしてもよい。
【0062】
<サーバ20のプロセッサ21が実行するログ蓄積処理(S4000)>
以下、サーバ20のプロセッサ21が実行するログ蓄積処理の詳細について、図12のフローチャートに沿って説明する。サーバ20のプロセッサ21は、サーバ20が起動されてコンピュータプログラムがメモリ22にロードされるとこれを実行し、下記に示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0063】
(ステップS4101)サーバ20のプロセッサ21は、車載機10のプロセッサ11が公衆通信回線4を経由してサーバ20にアクセスし、ログリストを送信しているか否かを判定する。
【0064】
(ステップS4102)サーバ20のプロセッサ21は、車載機10のプロセッサ11がログリストを送信している場合、通信I/F24を介して取得したログリストをデータベース23へ格納する。
【0065】
サーバ20のプロセッサ21が実行するログ蓄積処理の詳細については以上の通りである。サーバ20のプロセッサ21は、サーバ20が起動されると上記ステップS4101〜S4102の処理を繰り返し実行することにより、各車両1から送信されるログリストをデータベース23に蓄積する。
【0066】
<サーバ20のプロセッサ11が実行するログ解析処理(S5000)>
以下、サーバ20のプロセッサ21が実行するログ解析処理の詳細について、図13のフローチャートに沿って説明する。サーバ20のプロセッサ21は、サーバ20が起動されてコンピュータプログラムがメモリ22にロードされるとこれを実行し、下記に示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0067】
(ステップS5101)サーバ20のプロセッサ21は、データベース23に蓄積されたログリストを解析する所定のタイミングであるか否かの判定を行なう。データベース23に蓄積されたログリストを解析するタイミングは任意であり、例えば、1ヶ月毎等、異常検知システム100の仕様等を考慮して適宜設定する。
【0068】
(ステップS5102)サーバ20のプロセッサ21は、ステップS5101の処理でログリストを解析する所定のタイミングであると判定した場合、データベース23に蓄積されているログリストの集計および受信感度マップの作成を行なう。データベース23には様々な緯度および経度のログリストが蓄積されているため、サーバ20のプロセッサ21は、各ログリストの緯度および経度からログリストをメッシュID毎に分類し、メッシュID毎にログリストの集計および受信感度マップの作成を行なう。
【0069】
サーバ20のプロセッサ21が実行するログリストの集計および受信感度マップの作成の処理内容を図14に基づいて説明する。サーバ20のプロセッサ21は、各車両1から送られたログリストのCN比やパケットエラー率をメッシュID毎に合計してその平均値と標準偏差とを算出し、各メッシュIDの受信感度マップを作成してメモリ22へ格納する。
【0070】
(ステップS5103)サーバ20のプロセッサ21は、受信感度マップを作成した後、作成した受信感度マップを解析し、各路側機3の送信出力の異常の有無を路側機3毎に
以下のように判定する。すなわち、サーバ20のプロセッサ21は、メモリ22に格納した受信感度マップを参照し、各メッシュIDのCN比の平均とその標準偏差から、各メッシュIDにおける受信可否および漏洩有無の判定を地点毎に行なう。
【0071】
ここで、受信可否の判定とは、送信出力が過小の路側機3の検知を目的としており、想定受信範囲内の地点で、大多数の車載機10が路側機3の電波を正常に受信できるか否か、より詳細には、正規分布上で約95%の車載機10が路側機3の電波を正常に受信できるか否かに基づいて判定する。例えば、想定受信範囲内にある特定の地点について、CN比平均から標準偏差の2倍(2σ)を減算した値(以下、受信下限値という)を算出し、算出した受信下限値が規定の受信強度(例えば、19dB等)以上であれば当該地点の受信可否は良好(OK)となり、算出した受信下限値が規定の受信強度未満であれば当該地点の受信可否は不良(NG)となる。
【0072】
ここで、漏洩有無の判定とは、送信出力が過大の路側機3の検知を目的としており、想定受信範囲外の地点で、大多数の車載機10が路側機3の電波を受信できるか否か、より詳細には、正規分布上で約95%の車載機10が路側機3の電波を受信できるか否かに基づいて判定する。例えば、想定受信範囲外にある特定の地点について、CN比平均から標準偏差の2倍(2σ)を加算した値(以下、漏洩上限値という)を算出し、算出した漏洩上限値が規定の漏洩強度(例えば、19dB等)以下であれば当該地点の漏洩有無は良好(OK)となり、算出した漏洩上限値が規定の漏洩強度よりも強ければ当該地点の漏洩有無は不良(NG)となる。
【0073】
上記受信可否の判定および漏洩有無の判定の具体例を以下に説明する。なお、説明を容易にするため、図6で示した電波到達エリアを簡略化した図15を使って説明する。
【0074】
路側機3が正常で送信出力に過不足が無い場合、図15で「正常パターン」として示すように、想定受信範囲内である地点2〜4には電波が到達し、想定受信範囲外である地点1,5には電波が到達しないことになる。図15の「正常パターン」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を図16に示す。
【0075】
路側機3が正常で送信出力に過不足が無い場合、図16に示すように、想定受信範囲内である地点2,4の受信下限値は19dBであり、地点3の受信下限値は20dBなので、何れの箇所も規定の受信強度以上であり、受信可能なので受信可否の判定結果は良好(OK)となる。また、想定受信範囲外である地点1,5の漏洩上限値は18dBなので、何れの箇所も規定の漏洩強度以下であり、漏洩が無いので漏洩有無の判定結果は良好(OK)となる。
【0076】
一方、路側機3が異常で送信出力が過小の場合、図15で「異常パターン(出力過小)」として示すように、想定受信範囲内である地点2,4には電波が到達しないことになる。図15の「異常パターン(出力過小)」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を図17に示す。
【0077】
路側機3が異常で送信出力が過小の場合、図17に示すように、想定受信範囲内である地点2,4の受信下限値が16dBとなり、規定の受信強度未満であり、受信不能なので受信可否の判定結果は否(NG)となる。
【0078】
また、路側機3が異常で送信出力が過大の場合、図15で「異常パターン(出力過大)」として示すように、想定受信範囲外である地点1,5にも電波が到達することになる。図15の「異常パターン(出力過大)」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を図18に示す。
【0079】
路側機3が異常で送信出力が過大の場合、図18に示すように、想定受信範囲外である地点1,5の漏洩上限値が20dBとなり、規定の漏洩強度よりも強く、漏洩が有るので漏洩有無の判定結果は有(NG)となる。
【0080】
サーバ20のプロセッサ21は、上記受信可否および漏洩有無の判定を地点毎に行ない、何れも正常であれば路側機3の異常は無いものと判断し、何れかが異常であれば当該路側機3が異常と判断し、路側機3の管理者へ報知する。路側機3の管理者への報知は、サーバ20の表示画面へのメッセージ表示等により、サーバ20の管理者であるセンター2のオペレータが路側機3の管理事業者へ連絡するようにしてもよいし、サーバ20から路側機3の管理事業者のコンピュータ端末やその他の各種情報端末へ電子メール等で報知してもよい。なお、サーバ20のプロセッサ21は、路側機3の異常の有無をCN比平均およびその標準偏差に基づいて判定しているが、パケットエラー率平均およびその標準偏差に基づいて判定するようにしてもよい。
【0081】
(ステップS5104)サーバ20のプロセッサ21は、受信感度マップを解析して路側機3の異常の有無を判定した後、ステップS5102で作成したメモリ22に格納されている受信感度マップと、過去に作成したデータベース23に格納されている受信感度マップとの比較を行い、差分があるか否かの判定を行なう。
【0082】
(ステップS5105)サーバ20のプロセッサ21は、メモリ22に格納されている受信感度マップとデータベース23に格納されている受信感度マップとの間に差異があれば、データベース23に格納されている受信感度マップを削除すると共に、メモリ22に格納されている受信感度マップをデータベース23へ新たなプロパティ情報と共に格納することにより、データベース23の受信感度マップを更新する。
【0083】
サーバ20のプロセッサ21が実行するログ解析処理の詳細については以上の通りである。サーバ20のプロセッサ21は、サーバ20が起動されると上記ステップS5101〜S5105の処理を繰り返し実行することにより、路側機3の異常の検出や受信感度マップの更新を行なう。
【0084】
<効果>
車載機10のプロセッサ11が上記一連の処理(S1000)を実行することにより、図19に示すように、各地点のCN比やパケットエラー率とメモリ13の受信感度マップとに基づく受信状態の判断が行なわれる。
【0085】
また、車載機10のプロセッサ11およびサーバ20のプロセッサ21が上記一連の処理(S2000〜S5000)を実行することにより、図20に示すように、各地点のCN比やパケットエラー率が車載機10のメモリ13にログとして蓄積される。メモリ13に蓄積されたログは定期的にサーバ20のデータベース23へ送信される。サーバ20側では、データベース23に蓄積されたログデータの定期的な集計および解析が行なわれ、データベース23の受信感度マップが定期的に更新される。
【0086】
よって、上記異常検知システム100であれば、車両1が路側機3の付近を走行しているときの車載機10の受信状態のみがログデータとして蓄積され、センター2のサーバ20へアップロードされるので、異常検知システム100全体のデータのトラフィックを最小量に抑えることができる。すなわち、例えば図21に示す従来例のように、全ての地点の受信感度のデータを収集する場合、本実施例に係る異常検知システム100のように各路側機3の周辺の受信感度のデータのみを収集する場合に比べて、異常検知システム100全体のデータのトラフィックを大幅に削減できる。また、異常検知システム100全体
のデータのトラフィックを最小量に抑制しつつ、車載機10の異常が車両1側で、路側機3の異常がセンター2側で瞬時に検知可能である。
【0087】
なお、上記異常検知システム100では、地図を区切ったメッシュ毎の受信感度マップを用いていたが、このような態様に限定されるものではない。例えば、図22に示すように道路毎に付与された道路IDを使い、図23に示すような道路ID毎の受信感度マップを用いてもよい。
【0088】
また、上記異常検知システム100では、公衆通信回線4を経由してログや受信感度マップ等のデータが交換されていたが、車載機10とサーバ20との間におけるデータの交換は、路側機3を介して行っても良い。
【0089】
また、上記異常検知システム100は、車両1に搭載された車載機10を例示していたが、このような情報端末に限定されるものではない。上記異常検知システム100は、測位可能な情報端末であれば如何なるものであっても適用可能であり、例えば、携帯電話や無線LANといった各種の無線通信システムに対しても適用可能である。
【0090】
<変形例>
ところで、上記異常検知システム100では、路側機3が故障し、路側機3の送信出力が異常に低下している場合であって、当該路側機3が故障直後であることなどの理由により車載機10の受信感度マップが更新されていない場合、ステップS1106の処理において車載機10が故障していないにも関わらず車載機10が異常であるとの誤判定がなされる可能性がある。そこで、本変形例では、車載機10のプロセッサ11は2箇所の路側機3での受信状態に基づいて処理を行うものとし、2箇所連続で受信状態が異常の場合に車載機10の異常を確定し、1箇所目で受信状態が異常であったにも関わらず2箇所目で受信状態が正常であった場合には1箇所目の路側機3が異常である旨をセンター2のサーバ20へ報知するものとする。具体的には、図5に示した受信状態判断処理(S1000)を以下のように変形する。
【0091】
<車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理(S1000)の変形例>
以下、本変形例に係る車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理の詳細について、図24のフローチャートに沿って説明する。なお、図5に示したものと同一の処理(S1101〜S1105)については図24においても同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0092】
(ステップS1206)車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れも正常であれば、後述するステップS1211の処理を実行する。一方、車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れかが異常であれば、ステップS1207の処理を実行する。
【0093】
(ステップS1207)車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れかが異常であれば、メモリ13にアクセスしてエラーフラグの状態を判定する。
【0094】
(ステップS1208)車載機10のプロセッサ11は、ステップS1207の処理においてエラーフラグの状態がオフであると判定した場合、メモリ13にアクセスしてエラーフラグをオンにすると共に、ステップS1102で検知した車両1付近の路側機3のID、すなわち、受信状態が異常であった路側機3の路側機IDを格納する。そして、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1101以降の処理を繰り返す。
【0095】
(ステップS1209)一方、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1209の
処理においてエラーフラグの状態がオンであると判定した場合、メモリ13にエラーフラグと共に格納されている路側機IDを参照する。ここで、参照した路側機IDが、ステップS1102で検知した車両1付近の路側機3のID、すなわち、受信状態が異常であった路側機3のIDと一致していなければ、2箇所の路側機3で連続して受信状態が異常であったことになるため、車載機10が異常である事が確定的になる。
【0096】
(ステップS1210)そこで、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1209において、メモリ13にエラーフラグと共に格納されている路側機IDが、ステップS1102で検知した車両1付近の路側機3のIDと一致していないと判定した場合、車載機10に異常がある旨を表示灯あるいは音声でユーザへ通知する。一方、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1209において、メモリ13にエラーフラグと共に格納されている路側機IDが、ステップS1102で検知した車両1付近の路側機3のIDと一致していると判定した場合、本ステップを省略してステップS1101以降の処理を繰り返す。
【0097】
(ステップS1211)また、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1206の処理において、CN比とパケットエラー率の何れも正常であると判定した場合、メモリ13にアクセスしてエラーフラグの状態を判定する。ここで、エラーフラグがオンであれば、以前の路側機3では受信状態が異常であったにも関わらず、今回の路側機3では受信状態が正常であったことになるため、車載機10は正常であり、以前の路側機3に異常があったことが確定的になる。
【0098】
(ステップS1212)そこで、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1211の処理においてエラーフラグの状態がオンであると判定した場合、通信I/F14で公衆通信回線4を経由してサーバ20にアクセスし、メモリ13にエラーフラグと共に格納されている路側機IDの情報をサーバ20へ送ることで、路側機3の異常を報知する。サーバ20のプロセッサ21は、車載機10のプロセッサ11から路側機IDの情報が送られた場合、サーバ20の表示画面へのメッセージ表示等により、サーバ20の管理者であるセンター2のオペレータが路側機3の管理事業者へ連絡するようにしてもよいし、サーバ20から路側機3の管理事業者のコンピュータ端末やその他の各種情報端末へ電子メール等で報知してもよい。
【0099】
(ステップS1213)車載機10のプロセッサ11は、ステップS1212の処理において路側機3の異常を報知した後、メモリ13にアクセスしてエラーフラグをオフにする。そして、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1101以降の処理を繰り返す。
【0100】
上記異常検知システム100であれば、路側機3が故障し、路側機3の送信出力が異常に低下している場合であって、当該路側機3が故障直後であることなどの理由により車載機10の受信感度マップが更新されていない場合であっても、車載機10が故障していないにも関わらず車載機10が異常であるとの誤判定がなされることが無い。
【符号の説明】
【0101】
100・・異常検知システム:1・・車両:2・・センター:3・・路側機:4・・公衆通信回線:10・・車載機:20・・サーバ:11,21・・プロセッサ:12・・送受信部:13,22・・メモリ:14,24・・通信I/F:15・・入力I/F:16・・GPS装置:23・・データベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知装置、サーバ、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信エラーを防止するDSRC(Dedicated Short Range Communications)車載機等が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−308740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DSRCのように、各地に点在する固定局を介した事業者から受信装置への無線通信においては、通信装置に発生した何らかの不具合により、通信が正常に行なわれない場合がある。ここで、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを特定する手段として、受信装置から提供される受信状態の情報を集計して解析する方法がある。しかしながら、固定局が各地に点在していると集計するデータが膨大となり、また、ユーザ側である受信装置においては通信が正常に行なわれない場合に固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを特定することが難しい。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、集計するデータの量を抑制しつつ、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを容易に特定可能な異常検知装置、サーバ、システムおよび方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、各受信装置が固定局の所定付近に居る際に蓄積した受信状態の数値データを集計した統計データと実際の受信状態とを比較し、異常の有無を検知することにした。
【0007】
詳細には、固定局の電波を受信する受信装置の異常の有無を検知する異常検知装置であって、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態と、前記固定局から所定距離における各受信装置の受信状態を集計した統計データとを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する第一の演算部を備える。
【0008】
上記異常検知装置であれば、各受信装置が固定局の所定付近に居る際に蓄積したデータを集計した統計データに基づいて異常の有無を検知しているため、固定局の付近以外のデータも含めて集計する場合に比べて、集計するデータの量を抑制することができる。
【0009】
また、固定局の電波を受信する受信装置側で、上記集計データと実際の受信状態との比較を行い、受信装置の異常の有無を検知しているため、受信状態が正常でなかった場合であっても、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを受信装置側で容易に特定することができる。
【0010】
なお、前記統計データは、前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計するサーバが生成し、前記サーバから前記異常検知装置へ提供したものであり、前記第一の演算部は、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在す
る際の受信状態を示すデータを定期的に前記サーバへ提供するものであってもよい。上記異常検知装置であれば、各受信装置の情報がサーバで共有されるので、集計するデータの量を抑制しつつ精度の高い検知結果を得ることができる。
【0011】
また、前記第一の演算部は、前記統計データと前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態との比較を少なくとも2箇所の固定局について実行し、前記少なくとも2箇所の固定局の比較結果に基づいて、前記受信装置の異常の有無を検知するものであってもよい。受信装置の異常の有無の検知を少なくとも2箇所の固定局に基づいて実行すれば、固定局に異常が生じた直後であっても、異常検知装置は、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを精度よく検知することができる。
【0012】
また、前記各受信装置の受信状態を示すデータは、前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在することを測位データと前記固定局の位置を規定した位置データとの比較によって検知した際に蓄積されたものであってもよい。受信状態を示すデータを測位データに沿って提供することにより、電波が送信されていない固定局の異常を、各受信装置の受信状態を示す数値データの解析から特定することができる。
【0013】
また、本発明は、固定局の電波を受信する各受信装置から提供されるデータを処理するサーバであって、各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計して、前記固定局の電波の受信状態の統計データを生成し、前記統計データに基づいて前記固定局の異常の有無を検知する第二の演算部を備えるものであってもよい。
【0014】
上記サーバであれば、各受信装置が固定局の所定付近に居る際に蓄積したデータの集計結果に基づいて異常の有無を検知しているため、固定局の付近に居ない際のデータも含めて集計する場合に比べて、集計するデータの量を抑制しつつ、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかをサーバ側で容易に特定することができる。
【0015】
また、本発明は、システム、方法、プログラム、或いはプログラムを記録した記録媒体として捉えることもできる。例えば、本発明は、無線通信する固定局と各受信装置の異常を検知する異常検知システムであって、前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計して、前記固定局の電波の受信状態の統計データを生成する第二の演算部と、前記第二の演算部が生成した前記統計データと、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態とを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する第一の演算部と、を備えるものであってもよいし、或いは、固定局の電波を受信する受信装置に設けた演算部に実行させる異常検知プログラムであって、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態と、前記固定局から所定距離における各受信装置の受信状態を集計した統計データとを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する処理を実行させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
集計するデータの量を抑制しつつ、固定局と受信装置の何れに不具合があるのかを容易に特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】異常検知システムの構成図である。
【図2】システム全体で実行される処理のイメージを示した図である。
【図3】システム全体で実行される処理の概要を示した図である。
【図4】路側機または車載機が故障した場合の態様を示した図である。
【図5】受信状態判断処理のフローチャートである。
【図6】各路側機の電波到達エリア、想定受信範囲、及びログ収集範囲を示した図である。
【図7】路側機マップの一例を示した図である。
【図8】ログデータの一例を示した図である。
【図9】受信感度マップの一例を示した図である。
【図10】ログ送信処理のフローチャートである。
【図11】マップ更新処理のフローチャートである。
【図12】ログ蓄積処理のフローチャートである。
【図13】ログ解析処理のフローチャートである。
【図14】ログリストの集計および受信感度マップの作成の処理内容を示した図である。
【図15】電波到達エリアを簡略化した図である。
【図16】「正常パターン」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を示した図である。
【図17】「異常パターン(出力過小)」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を示した図である。
【図18】「異常パターン(出力過大)」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を示した図である。
【図19】受信状態の判断処理のシーケンスである。
【図20】ログデータの定期的な集計および解析、及び受信感度マップの更新処理のシーケンスである。
【図21】データ量を従来例と実施例とで比較した図である。
【図22】道路IDの一例である。
【図23】受信感度マップの変形例である。
【図24】変形例に係る受信状態判断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明を実施するための形態を例示的に説明する。以下に示す実施形態は例示であり、本願発明の技術的範囲をこれらに限定するものではない。
【0019】
<構成>
図1は、本願発明の一実施形態に係る異常検知システム100の構成図である。異常検知システム100は、車両1に搭載されたDSRC車載機(以下、単に車載機10という)およびGPS(Global Positioning System)装置16と、センター2に設置されたサ
ーバ20とを含む。車載機10は、ITS(Intelligent Transport System)車載機の一種であり、例えば、ETC(Electronic Toll Collection system)端末やカーナビゲー
ション装置等を例示できる。なお、車載機10は、本願でいう異常検知装置の一態様として捉えることができる。しかし、本願でいう異常検知装置は、このような態様に限定されるものでなく、車載機10とは別の装置としてもよい。
【0020】
サーバ20は、プロセッサ21やメモリ22、通信インターフェース(通信I/F)24、データベース23を備えており、メモリ22にロードされたコンピュータプログラムをプロセッサ21が実行することにより、後述する異常検知処理等を実行する。一連の処理は、プロセッサ21がメモリ22、通信I/F24、データベース23と協働することによって実現される。プロセッサ21は、通信I/F24を介して公衆通信回線4に繋がっており、公衆通信回線4を介して車両1の車載機10と通信可能である。
【0021】
車載機10は、プロセッサ11や不揮発性のメモリ13、送受信部12、通信I/F14、入力I/F15を備えており、メモリ13にロードされたコンピュータプログラムをプロセッサ11が実行することにより、路側機3から各種のデータ(例えば、車載機10がETC端末であれば決済に必要なデータであり、車載機10がカーナビゲーション装置
であれば交通情報等のデータである)を得る。送受信部12は、車両1が走行する道路に設置された各種の路側機3との間で無線通信回線を確立し、プロセッサ11と路側機3との間で交換されるデータを中継したり、CN比やパケットエラー率等の情報をプロセッサ11へ渡したりする。メモリ13には、路側機3のCN比等の情報を記録するためのログや、路側機3の位置データや受信感度のマップ等が格納されている。
【0022】
GPS装置16は、衛星から送信された信号に基づいて車両1の位置を測位する。GPS装置16は、車載機10の入力I/F15と接続されており、車両1の位置データを車載機10のプロセッサ11へ送る。
【0023】
<システム全体で実行される処理の概要>
図2は、システム全体で実行される処理のイメージを示した図である。異常検知システム100は、各車両1の車載機10から送られる受信感度や位置等のデータをセンター2のサーバ20が処理する。各車両1の車載機10から送られるデータをサーバ20が処理することにより、車載機10や路側機3の故障をユーザあるいは管理者が検知し、故障発生箇所を特定できる。
【0024】
図3は、システム全体で実行される処理の概要を示した図である。車両1とセンター2との間で交換されるデータは、次のように処理される。
【0025】
すなわち、車両1側では、車両1が路側機3の付近を走行したときに得た路側機3の電波の受信感度のデータが車載機10のプロセッサ11によって解析され、受信状態の判断が行なわれる(S1000)。また、車両1側では、受信感度のデータがログに蓄積され、サーバ20へ定期的に送信される(S2000)。また、車両1側では、サーバ20で作成された受信感度のマップの受信が行なわれ、マップが逐次更新される(S3000)。
【0026】
センター2側では、車載機10から送信されるデータがプロセッサ21によってデータベース23へ蓄積されると共に(S4000)、蓄積されたデータの定期的な解析が行なわれ、路側機3の故障の有無の診断と受信感度のマップの作成が行なわれる(S5000)。
【0027】
以上がシステム1全体で実行される処理の概要であり、各処理の実行主体は下記の表に示す通りである。
【表1】
【0028】
路側機3または車載機10が故障する場合の態様としては、図4に示されるように、4つのパターンが考えられる。すなわち、車載機10が路側機3の想定受信範囲内に居て電
波も受信可能な場合(パターン1)と、車載機10が路側機3の想定受信範囲内に居るにも関わらず電波が受信不能な場合(パターン2)と、車載機10が路側機3の想定受信範囲外に居るにも関わらず電波が受信可能な場合(パターン3)と、車載機10が路側機3の想定受信範囲外に居て電波も受信不能な場合(パターン4)の4つである。パターン1で考えられるのは、路側機3の出力が正常か過大の場合であるため、路側機3が異常の可能性を含むことになる。パターン2で考えられるのは、路側機3の出力が正常か過小の場合であるため、路側機3および車載機10の何れか又は両方が故障している可能性を含むことになる。パターン3で考えられるのは、路側機3の出力が過大の場合だけであるため、路側機3が故障しているということになる。パターン4は、基本的には路側機3と車載機10の何れも正常の場合のパターンであるが、路側機3が故障して出力が過小の場合や、車載機10が故障して正常に受信できていない状態の可能性を含んでいる。
【0029】
本異常検知システム100では、パターン1からパターン3の何れかの態様において、路側機3や車載機10の異常を検知するものであり、車両1側ではパターン2の場合の車載機10の異常の有無を受信感度マップに基づいて検知し、センター2側ではパターン1,2,3の場合の路側機3の異常の有無を各車両1の車載機10から送られるログデータに基づいて検知する。
【0030】
以下、サーバ20のプロセッサ21や車載機10のプロセッサ11が実行する処理の詳細について説明する。なお、説明の便宜上、以下においては上記表に示す各処理(S1000〜S5000)について個別に説明するが、上記各処理は、必ずしも他の処理の前後で実行されるものではなく、他の処理と並列に実行される場合もある。下記に示す各処理フローは、各プロセッサがコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0031】
<車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理(S1000)>
以下、車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理の詳細について、図5のフローチャートに沿って説明する。
【0032】
(ステップS1101)車載機10のプロセッサ11は、車両1の駆動源が作動状態(以下、ACCオンという)、すなわち、駆動源が内燃機関であればエンジンが始動し、ハイブリッドシステムやEV(Electric Vehicle)システムであればシステム電源がオンになると、車両1の位置に関するデータをGPS装置16から取得する。
【0033】
(ステップS1102)車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から位置データを取得するとメモリ13にアクセスし、路側機3の位置を示すマップ(以下、路側機マップという)を参照する。路側機マップは、ITS(Intelligent Transport System)事業者等が作成したものであり、メモリ13に予め格納されている。
【0034】
車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から取得した位置データと路側機マップとを比較し、車両1が路側機3の所定付近に位置しているか否かを判定する。ここでいう路側機3の所定付近とは、路側機3の送信出力が過大である場合に電波が到達し得る範囲よりも内側の範囲であり、例えば、図6で「ログ収集範囲」として示す範囲内である。
【0035】
路側機3が、例えば、図6に示すよう、路側機マップ上で位置C−3と位置D−10と位置K−6にあるものとする。また、路側機3が情報を提供する範囲は「想定受信範囲」で示される範囲内に限定されていると仮定する。この場合、路側機3の送信出力が正常であれば、例えば位置C−3の路側機3のように、電波が実際に到達しているエリア(以下、電波到達エリアという)が「想定受信範囲」と概ね一致することになる。一方、路側機3の送信出力が過大であれば、路側機3が情報を提供する範囲よりも外側の範囲にまで電波が届くことになり、例えば位置D−10の路側機3のように、電波到達エリアが「想定
受信範囲」よりも広くなる。また、路側機3の送信出力が過小であれば、例えば位置K−6の路側機3のように、電波到達エリアが「想定受信範囲」よりも狭くなる。
【0036】
そこで、本異常検知システム100では、収集データの量を抑制しつつも、送信出力が過大の路側機3を検知できるようにするため、車両1が「ログ収集範囲」にあることを車載機10のプロセッサ11がGPS装置16の位置情報に基づいて検知すると、受信感度のデータをログへ記録する。路側機マップは、車両1が「ログ収集範囲」にあるか否かをGPS装置16の位置情報に基づいて検知するためのものであり、例えば、図7に示すように、各路側機3を識別するためのID情報や提供エリアの情報、周辺エリアの情報を有している。図7の表で「提供エリア」が図6の「想定受信範囲」に対応しており、図7の表で「周辺エリア」が図6の「ログ収集範囲」に対応している。
【0037】
車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から通知される緯度・経度の位置情報が、路側機マップが示す何れかの路側機3の提供エリアまたは周辺エリアのメッシュIDに一致すれば、車両1が当該路側機3の付近に居ると判定する。一方、車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から取得した緯度・経度の位置情報が、路側機マップが示す何れの路側機3の提供エリアおよび周辺エリアのメッシュIDにも一致しなければ、車両1が何れの路側機3の付近にも居ないと判定する。
【0038】
ここで、メッシュIDとは、地図上の特定の位置を示すための情報であり、各メッシュIDには対応する緯度・経度の情報が付されている。車載機10のプロセッサ11は、GPS装置16から通知される緯度・経度の情報と路側機マップのメッシュIDに付されている緯度・経度の情報とを比較することにより、車両1が特定の路側機3の付近に居るか否かの判定を行なう。なお、「ログ収集範囲」を示す路側機マップの「周辺エリア」は、図7の表に示すように予め明示されていてもよいし、路側機3からの距離に応じてプロセッサ11が判別してもよい。
【0039】
(ステップS1103)車載機10のプロセッサ11は、ステップS1102の処理で車両1が「ログ収集範囲」内に位置していることを検知した場合、送受信部12から通知される路側機3の電波のCN比(Carrier to Noise Ratio)およびパケットエラー率(受信データの誤り率)の情報を取得する。これにより、図8に示すように、路側機のIDや日時、電波を受信したチャンネル、緯度および経度、CN比、及びパケットエラー率の7つの情報で構成されるログデータが生成される。
【0040】
(ステップS1104)車載機10のプロセッサ11は、生成したログデータをメモリ13に格納する。
【0041】
(ステップS1105)車載機10のプロセッサ11は、ログデータをメモリ13に格納した後、受信状態の判断を行なう。なお、受信状態の判断は、ログデータをメモリ13に格納する前に行なっても良い。
【0042】
車載機10のプロセッサ11は、ログデータをメモリ13に格納した後、メモリ13にアクセスして受信感度マップを参照する。受信感度マップは、車載機10が正常であるか否かを検知するためのものであり、例えば、図9に示すように、路側機3の電波のCN比の平均やその標準偏差、パケットエラー率の平均やその標準偏差の情報を有している。
【0043】
受信感度マップが示すこれらの情報は、各車両1の車載機10がセンター2へ送った情報に基づいて生成されたものであるため、ステップS1103で生成したログデータのCN比やパケットエラー率が、受信感度マップが示すデータから逸脱していれば、本車載機10に何らかの異常があることが推測される。
【0044】
そこで、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1103で生成したログデータのCN比が小さい場合、すなわち、下記の数式に示す「分布の下限値」よりも下回っていれば、車載機10に異常があると判定する。
【数1】
【0045】
例えば、ステップS1103で生成したログデータが図8に示す通りであり、当該ログデータの緯度・経度に対応する受信感度マップが図9に示す通りであった場合を考える。上記数式(数1)と図9の受信感度マップより、当該ログデータの緯度・経度におけるCN比の分布の下限値は、23dB(CN比平均)から2dB(CN比標準偏差の2倍)を減算した21dBとなる。一方、ログデータのCN比は22dBであり、CN比の分布の下限値を上回っているため、車載機10のプロセッサ11は、CN比に関しては正常と判定する。
【0046】
また、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1103で生成したログデータのパケットエラー率が大きい場合、すなわち、下記の数式に示す「分布の上限値」よりも上回っていれば、車載機10に異常があると判定する。
【数2】
【0047】
例えば、ステップS1103で生成したログデータが図8に示す通りであり、当該ログデータの緯度・経度に対応する受信感度マップが図9に示す通りであった場合を考える。上記数式(数2)と図9の受信感度マップより、当該ログデータの緯度・経度におけるパケットエラー率の分布の上限値は、0.01%(パケットエラー率平均)から0.002%(パケットエラー率標準偏差の2倍)を加算した0.012%となる。一方、ログデータのパケットエラー率は0%であり、パケットエラー率の分布の上限値を下回っているため、車載機10のプロセッサ11は、パケットエラー率に関しても正常と判定する。
【0048】
(ステップS1106)車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れも正常であれば、受信状態に異常が無く、車載機10が正常であると判定する。一方、車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れかが異常であれば、受信状態に異常があり、車載機10が正常でないと判定する。
【0049】
(ステップS1107)車載機10のプロセッサ11は、ステップS1106の処理で受信状態に異常があり、車載機10が正常でないと判定した場合、車載機10に異常がある旨を表示灯あるいは音声でユーザへ通知する。
【0050】
車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理の詳細については以上の通りである。車載機10のプロセッサ11は、車両1がACCオンの状態になると上記ステップS1101〜S1107の処理を定期的(例えば、1秒毎あるいは車両1が数メートル移動する毎等)繰り返し実行する。
【0051】
なお、上記ステップS1105の処理では、車載機10が正常であるか否かの判定の閾値を、正規分布上で約95%のデータが該当することになる標準偏差の2倍(2σ)に設定していた。しかし、車載機10が正常であるか否かの判定の閾値は、例えば、標準偏差の1倍(σ)や3倍(3σ)といった具合に、適宜変更してもよい。
【0052】
<車載機10のプロセッサ11が実行するログ送信処理(S2000)>
以下、車載機10のプロセッサ11が実行するログ送信処理の詳細について、図10のフローチャートに沿って説明する。
【0053】
(ステップS2101)車載機10のプロセッサ11は、車両1がACCオンの状態になると、メモリ13に蓄積されたログをセンター2へ送信する所定のタイミングであるか否かの判定を行なう。メモリ13に蓄積されたログをセンター2へ送信するタイミングは任意であり、例えば、10分毎、車両1の駆動源が停止状態(以下、ACCオフという)になった時、或いはメモリ13の空き容量が無くなった時等、異常検知システム100の仕様等を考慮して適宜設定する。
【0054】
(ステップS2102)車載機10のプロセッサ11は、ステップS2101の処理でログをセンター2へ送信する所定のタイミングであると判定した場合、通信I/F14で公衆通信回線4を経由してサーバ20にアクセスし、メモリ13に蓄積されている多数のログデータ(以下、ログリストという)をサーバ20へ送る。車載機10のプロセッサ11は、メモリ13に蓄積されているログリストを送信した後、メモリ13に蓄積されているログリストを消去する。
【0055】
車載機10のプロセッサ11が実行するログ送信処理の詳細については以上の通りである。車両1がACCオンの状態になると、車載機10のプロセッサ11が上記ステップS2101〜S2102の処理を繰り返し実行することにより、ログリストが所定のタイミングでセンター2へ定期的に送信される。なお、前記所定のタイミングが、車両1の駆動源が停止状態(以下、ACCオフという)になった時である場合には、ログリストをセンター2へ送信し、メモリ13に蓄積されているログリストを消去した後、上記ステップS2101〜S2102の処理の実行を終了する。
【0056】
<車載機10のプロセッサ11が実行するマップ更新処理(S3000)>
以下、車載機10のプロセッサ11が実行するマップ更新処理の詳細について、図11のフローチャートに沿って説明する。
【0057】
(ステップS3101)車載機10のプロセッサ11は、車両1がACCオンの状態になると、通信I/F14で公衆通信回線4を経由してサーバ20にアクセスし、サーバ20のデータベース23に格納されている受信感度マップが更新されているか否かを照会する。データベース23に格納されている受信感度マップが更新されているか否かは、メモリ13に格納されている受信感度マップのプロパティ情報(バージョン情報や更新日時の情報)とデータベース23に格納されている受信感度マップのプロパティ情報とを比較して行なう。
【0058】
(ステップS3102)車載機10のプロセッサ11は、データベース23に格納されている受信感度マップが更新されていると判定した場合、サーバ20に対し、受信感度マップのデータの送信を要求する。
【0059】
(ステップS3103)車載機10のプロセッサ11は、サーバ20からデータが送信されると、新たな受信感度マップのデータをメモリ13に格納すると共に、メモリ13に格納されていた古い受信感度マップのデータを削除する。
【0060】
車載機10のプロセッサ11が実行するマップ更新処理の詳細については以上の通りである。車載機10のプロセッサ11は、車両1がACCオンの状態になると上記ステップS3101〜S3103の処理を実行することにより、メモリ13に格納されている受信感度マップを最新の状態に保つ。
【0061】
なお、受信感度マップの更新は、車両1がACCオンの状態になったときのみならず、ACCオンの状態において繰り返し実行してもよいし、例えば月1回等の更新であってもよい。また、受信感度マップと合わせて路側機マップも更新するようにしてもよい。
【0062】
<サーバ20のプロセッサ21が実行するログ蓄積処理(S4000)>
以下、サーバ20のプロセッサ21が実行するログ蓄積処理の詳細について、図12のフローチャートに沿って説明する。サーバ20のプロセッサ21は、サーバ20が起動されてコンピュータプログラムがメモリ22にロードされるとこれを実行し、下記に示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0063】
(ステップS4101)サーバ20のプロセッサ21は、車載機10のプロセッサ11が公衆通信回線4を経由してサーバ20にアクセスし、ログリストを送信しているか否かを判定する。
【0064】
(ステップS4102)サーバ20のプロセッサ21は、車載機10のプロセッサ11がログリストを送信している場合、通信I/F24を介して取得したログリストをデータベース23へ格納する。
【0065】
サーバ20のプロセッサ21が実行するログ蓄積処理の詳細については以上の通りである。サーバ20のプロセッサ21は、サーバ20が起動されると上記ステップS4101〜S4102の処理を繰り返し実行することにより、各車両1から送信されるログリストをデータベース23に蓄積する。
【0066】
<サーバ20のプロセッサ11が実行するログ解析処理(S5000)>
以下、サーバ20のプロセッサ21が実行するログ解析処理の詳細について、図13のフローチャートに沿って説明する。サーバ20のプロセッサ21は、サーバ20が起動されてコンピュータプログラムがメモリ22にロードされるとこれを実行し、下記に示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0067】
(ステップS5101)サーバ20のプロセッサ21は、データベース23に蓄積されたログリストを解析する所定のタイミングであるか否かの判定を行なう。データベース23に蓄積されたログリストを解析するタイミングは任意であり、例えば、1ヶ月毎等、異常検知システム100の仕様等を考慮して適宜設定する。
【0068】
(ステップS5102)サーバ20のプロセッサ21は、ステップS5101の処理でログリストを解析する所定のタイミングであると判定した場合、データベース23に蓄積されているログリストの集計および受信感度マップの作成を行なう。データベース23には様々な緯度および経度のログリストが蓄積されているため、サーバ20のプロセッサ21は、各ログリストの緯度および経度からログリストをメッシュID毎に分類し、メッシュID毎にログリストの集計および受信感度マップの作成を行なう。
【0069】
サーバ20のプロセッサ21が実行するログリストの集計および受信感度マップの作成の処理内容を図14に基づいて説明する。サーバ20のプロセッサ21は、各車両1から送られたログリストのCN比やパケットエラー率をメッシュID毎に合計してその平均値と標準偏差とを算出し、各メッシュIDの受信感度マップを作成してメモリ22へ格納する。
【0070】
(ステップS5103)サーバ20のプロセッサ21は、受信感度マップを作成した後、作成した受信感度マップを解析し、各路側機3の送信出力の異常の有無を路側機3毎に
以下のように判定する。すなわち、サーバ20のプロセッサ21は、メモリ22に格納した受信感度マップを参照し、各メッシュIDのCN比の平均とその標準偏差から、各メッシュIDにおける受信可否および漏洩有無の判定を地点毎に行なう。
【0071】
ここで、受信可否の判定とは、送信出力が過小の路側機3の検知を目的としており、想定受信範囲内の地点で、大多数の車載機10が路側機3の電波を正常に受信できるか否か、より詳細には、正規分布上で約95%の車載機10が路側機3の電波を正常に受信できるか否かに基づいて判定する。例えば、想定受信範囲内にある特定の地点について、CN比平均から標準偏差の2倍(2σ)を減算した値(以下、受信下限値という)を算出し、算出した受信下限値が規定の受信強度(例えば、19dB等)以上であれば当該地点の受信可否は良好(OK)となり、算出した受信下限値が規定の受信強度未満であれば当該地点の受信可否は不良(NG)となる。
【0072】
ここで、漏洩有無の判定とは、送信出力が過大の路側機3の検知を目的としており、想定受信範囲外の地点で、大多数の車載機10が路側機3の電波を受信できるか否か、より詳細には、正規分布上で約95%の車載機10が路側機3の電波を受信できるか否かに基づいて判定する。例えば、想定受信範囲外にある特定の地点について、CN比平均から標準偏差の2倍(2σ)を加算した値(以下、漏洩上限値という)を算出し、算出した漏洩上限値が規定の漏洩強度(例えば、19dB等)以下であれば当該地点の漏洩有無は良好(OK)となり、算出した漏洩上限値が規定の漏洩強度よりも強ければ当該地点の漏洩有無は不良(NG)となる。
【0073】
上記受信可否の判定および漏洩有無の判定の具体例を以下に説明する。なお、説明を容易にするため、図6で示した電波到達エリアを簡略化した図15を使って説明する。
【0074】
路側機3が正常で送信出力に過不足が無い場合、図15で「正常パターン」として示すように、想定受信範囲内である地点2〜4には電波が到達し、想定受信範囲外である地点1,5には電波が到達しないことになる。図15の「正常パターン」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を図16に示す。
【0075】
路側機3が正常で送信出力に過不足が無い場合、図16に示すように、想定受信範囲内である地点2,4の受信下限値は19dBであり、地点3の受信下限値は20dBなので、何れの箇所も規定の受信強度以上であり、受信可能なので受信可否の判定結果は良好(OK)となる。また、想定受信範囲外である地点1,5の漏洩上限値は18dBなので、何れの箇所も規定の漏洩強度以下であり、漏洩が無いので漏洩有無の判定結果は良好(OK)となる。
【0076】
一方、路側機3が異常で送信出力が過小の場合、図15で「異常パターン(出力過小)」として示すように、想定受信範囲内である地点2,4には電波が到達しないことになる。図15の「異常パターン(出力過小)」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を図17に示す。
【0077】
路側機3が異常で送信出力が過小の場合、図17に示すように、想定受信範囲内である地点2,4の受信下限値が16dBとなり、規定の受信強度未満であり、受信不能なので受信可否の判定結果は否(NG)となる。
【0078】
また、路側機3が異常で送信出力が過大の場合、図15で「異常パターン(出力過大)」として示すように、想定受信範囲外である地点1,5にも電波が到達することになる。図15の「異常パターン(出力過大)」に該当するときの各地点のCN比平均やその標準偏差の一例を図18に示す。
【0079】
路側機3が異常で送信出力が過大の場合、図18に示すように、想定受信範囲外である地点1,5の漏洩上限値が20dBとなり、規定の漏洩強度よりも強く、漏洩が有るので漏洩有無の判定結果は有(NG)となる。
【0080】
サーバ20のプロセッサ21は、上記受信可否および漏洩有無の判定を地点毎に行ない、何れも正常であれば路側機3の異常は無いものと判断し、何れかが異常であれば当該路側機3が異常と判断し、路側機3の管理者へ報知する。路側機3の管理者への報知は、サーバ20の表示画面へのメッセージ表示等により、サーバ20の管理者であるセンター2のオペレータが路側機3の管理事業者へ連絡するようにしてもよいし、サーバ20から路側機3の管理事業者のコンピュータ端末やその他の各種情報端末へ電子メール等で報知してもよい。なお、サーバ20のプロセッサ21は、路側機3の異常の有無をCN比平均およびその標準偏差に基づいて判定しているが、パケットエラー率平均およびその標準偏差に基づいて判定するようにしてもよい。
【0081】
(ステップS5104)サーバ20のプロセッサ21は、受信感度マップを解析して路側機3の異常の有無を判定した後、ステップS5102で作成したメモリ22に格納されている受信感度マップと、過去に作成したデータベース23に格納されている受信感度マップとの比較を行い、差分があるか否かの判定を行なう。
【0082】
(ステップS5105)サーバ20のプロセッサ21は、メモリ22に格納されている受信感度マップとデータベース23に格納されている受信感度マップとの間に差異があれば、データベース23に格納されている受信感度マップを削除すると共に、メモリ22に格納されている受信感度マップをデータベース23へ新たなプロパティ情報と共に格納することにより、データベース23の受信感度マップを更新する。
【0083】
サーバ20のプロセッサ21が実行するログ解析処理の詳細については以上の通りである。サーバ20のプロセッサ21は、サーバ20が起動されると上記ステップS5101〜S5105の処理を繰り返し実行することにより、路側機3の異常の検出や受信感度マップの更新を行なう。
【0084】
<効果>
車載機10のプロセッサ11が上記一連の処理(S1000)を実行することにより、図19に示すように、各地点のCN比やパケットエラー率とメモリ13の受信感度マップとに基づく受信状態の判断が行なわれる。
【0085】
また、車載機10のプロセッサ11およびサーバ20のプロセッサ21が上記一連の処理(S2000〜S5000)を実行することにより、図20に示すように、各地点のCN比やパケットエラー率が車載機10のメモリ13にログとして蓄積される。メモリ13に蓄積されたログは定期的にサーバ20のデータベース23へ送信される。サーバ20側では、データベース23に蓄積されたログデータの定期的な集計および解析が行なわれ、データベース23の受信感度マップが定期的に更新される。
【0086】
よって、上記異常検知システム100であれば、車両1が路側機3の付近を走行しているときの車載機10の受信状態のみがログデータとして蓄積され、センター2のサーバ20へアップロードされるので、異常検知システム100全体のデータのトラフィックを最小量に抑えることができる。すなわち、例えば図21に示す従来例のように、全ての地点の受信感度のデータを収集する場合、本実施例に係る異常検知システム100のように各路側機3の周辺の受信感度のデータのみを収集する場合に比べて、異常検知システム100全体のデータのトラフィックを大幅に削減できる。また、異常検知システム100全体
のデータのトラフィックを最小量に抑制しつつ、車載機10の異常が車両1側で、路側機3の異常がセンター2側で瞬時に検知可能である。
【0087】
なお、上記異常検知システム100では、地図を区切ったメッシュ毎の受信感度マップを用いていたが、このような態様に限定されるものではない。例えば、図22に示すように道路毎に付与された道路IDを使い、図23に示すような道路ID毎の受信感度マップを用いてもよい。
【0088】
また、上記異常検知システム100では、公衆通信回線4を経由してログや受信感度マップ等のデータが交換されていたが、車載機10とサーバ20との間におけるデータの交換は、路側機3を介して行っても良い。
【0089】
また、上記異常検知システム100は、車両1に搭載された車載機10を例示していたが、このような情報端末に限定されるものではない。上記異常検知システム100は、測位可能な情報端末であれば如何なるものであっても適用可能であり、例えば、携帯電話や無線LANといった各種の無線通信システムに対しても適用可能である。
【0090】
<変形例>
ところで、上記異常検知システム100では、路側機3が故障し、路側機3の送信出力が異常に低下している場合であって、当該路側機3が故障直後であることなどの理由により車載機10の受信感度マップが更新されていない場合、ステップS1106の処理において車載機10が故障していないにも関わらず車載機10が異常であるとの誤判定がなされる可能性がある。そこで、本変形例では、車載機10のプロセッサ11は2箇所の路側機3での受信状態に基づいて処理を行うものとし、2箇所連続で受信状態が異常の場合に車載機10の異常を確定し、1箇所目で受信状態が異常であったにも関わらず2箇所目で受信状態が正常であった場合には1箇所目の路側機3が異常である旨をセンター2のサーバ20へ報知するものとする。具体的には、図5に示した受信状態判断処理(S1000)を以下のように変形する。
【0091】
<車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理(S1000)の変形例>
以下、本変形例に係る車載機10のプロセッサ11が実行する受信状態判断処理の詳細について、図24のフローチャートに沿って説明する。なお、図5に示したものと同一の処理(S1101〜S1105)については図24においても同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0092】
(ステップS1206)車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れも正常であれば、後述するステップS1211の処理を実行する。一方、車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れかが異常であれば、ステップS1207の処理を実行する。
【0093】
(ステップS1207)車載機10のプロセッサ11は、CN比とパケットエラー率の何れかが異常であれば、メモリ13にアクセスしてエラーフラグの状態を判定する。
【0094】
(ステップS1208)車載機10のプロセッサ11は、ステップS1207の処理においてエラーフラグの状態がオフであると判定した場合、メモリ13にアクセスしてエラーフラグをオンにすると共に、ステップS1102で検知した車両1付近の路側機3のID、すなわち、受信状態が異常であった路側機3の路側機IDを格納する。そして、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1101以降の処理を繰り返す。
【0095】
(ステップS1209)一方、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1209の
処理においてエラーフラグの状態がオンであると判定した場合、メモリ13にエラーフラグと共に格納されている路側機IDを参照する。ここで、参照した路側機IDが、ステップS1102で検知した車両1付近の路側機3のID、すなわち、受信状態が異常であった路側機3のIDと一致していなければ、2箇所の路側機3で連続して受信状態が異常であったことになるため、車載機10が異常である事が確定的になる。
【0096】
(ステップS1210)そこで、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1209において、メモリ13にエラーフラグと共に格納されている路側機IDが、ステップS1102で検知した車両1付近の路側機3のIDと一致していないと判定した場合、車載機10に異常がある旨を表示灯あるいは音声でユーザへ通知する。一方、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1209において、メモリ13にエラーフラグと共に格納されている路側機IDが、ステップS1102で検知した車両1付近の路側機3のIDと一致していると判定した場合、本ステップを省略してステップS1101以降の処理を繰り返す。
【0097】
(ステップS1211)また、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1206の処理において、CN比とパケットエラー率の何れも正常であると判定した場合、メモリ13にアクセスしてエラーフラグの状態を判定する。ここで、エラーフラグがオンであれば、以前の路側機3では受信状態が異常であったにも関わらず、今回の路側機3では受信状態が正常であったことになるため、車載機10は正常であり、以前の路側機3に異常があったことが確定的になる。
【0098】
(ステップS1212)そこで、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1211の処理においてエラーフラグの状態がオンであると判定した場合、通信I/F14で公衆通信回線4を経由してサーバ20にアクセスし、メモリ13にエラーフラグと共に格納されている路側機IDの情報をサーバ20へ送ることで、路側機3の異常を報知する。サーバ20のプロセッサ21は、車載機10のプロセッサ11から路側機IDの情報が送られた場合、サーバ20の表示画面へのメッセージ表示等により、サーバ20の管理者であるセンター2のオペレータが路側機3の管理事業者へ連絡するようにしてもよいし、サーバ20から路側機3の管理事業者のコンピュータ端末やその他の各種情報端末へ電子メール等で報知してもよい。
【0099】
(ステップS1213)車載機10のプロセッサ11は、ステップS1212の処理において路側機3の異常を報知した後、メモリ13にアクセスしてエラーフラグをオフにする。そして、車載機10のプロセッサ11は、ステップS1101以降の処理を繰り返す。
【0100】
上記異常検知システム100であれば、路側機3が故障し、路側機3の送信出力が異常に低下している場合であって、当該路側機3が故障直後であることなどの理由により車載機10の受信感度マップが更新されていない場合であっても、車載機10が故障していないにも関わらず車載機10が異常であるとの誤判定がなされることが無い。
【符号の説明】
【0101】
100・・異常検知システム:1・・車両:2・・センター:3・・路側機:4・・公衆通信回線:10・・車載機:20・・サーバ:11,21・・プロセッサ:12・・送受信部:13,22・・メモリ:14,24・・通信I/F:15・・入力I/F:16・・GPS装置:23・・データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定局の電波を受信する受信装置の異常の有無を検知する異常検知装置であって、
前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態と、前記固定局から所定距離における各受信装置の受信状態を集計した統計データとを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する第一の演算部を備える、
異常検知装置。
【請求項2】
前記統計データは、前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計するサーバが生成し、前記サーバから前記異常検知装置へ提供したものであり、
前記第一の演算部は、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを定期的に前記サーバへ提供する、
請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記第一の演算部は、前記統計データと前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態との比較を少なくとも2箇所の固定局について実行し、前記少なくとも2箇所の固定局の比較結果に基づいて、前記受信装置の異常の有無を検知する、
請求項1または2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
固定局の電波を受信する各受信装置から提供されるデータを処理するサーバであって、
各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計して、前記固定局の電波の受信状態の統計データを生成し、前記統計データに基づいて前記固定局の異常の有無を検知する第二の演算部を備える、
サーバ。
【請求項5】
無線通信する固定局と各受信装置の異常を検知する異常検知システムであって、
前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計して、前記固定局の電波の受信状態の統計データを生成する第二の演算部と、
前記第二の演算部が生成した前記統計データと、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態とを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する第一の演算部と、を備える、
異常検知システム。
【請求項6】
固定局の電波を受信する受信装置の異常の有無を検知する異常検知方法であって、
前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態と、各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計した統計データとを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する、
異常検知方法。
【請求項1】
固定局の電波を受信する受信装置の異常の有無を検知する異常検知装置であって、
前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態と、前記固定局から所定距離における各受信装置の受信状態を集計した統計データとを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する第一の演算部を備える、
異常検知装置。
【請求項2】
前記統計データは、前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計するサーバが生成し、前記サーバから前記異常検知装置へ提供したものであり、
前記第一の演算部は、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを定期的に前記サーバへ提供する、
請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記第一の演算部は、前記統計データと前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態との比較を少なくとも2箇所の固定局について実行し、前記少なくとも2箇所の固定局の比較結果に基づいて、前記受信装置の異常の有無を検知する、
請求項1または2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
固定局の電波を受信する各受信装置から提供されるデータを処理するサーバであって、
各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計して、前記固定局の電波の受信状態の統計データを生成し、前記統計データに基づいて前記固定局の異常の有無を検知する第二の演算部を備える、
サーバ。
【請求項5】
無線通信する固定局と各受信装置の異常を検知する異常検知システムであって、
前記各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計して、前記固定局の電波の受信状態の統計データを生成する第二の演算部と、
前記第二の演算部が生成した前記統計データと、前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態とを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する第一の演算部と、を備える、
異常検知システム。
【請求項6】
固定局の電波を受信する受信装置の異常の有無を検知する異常検知方法であって、
前記受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態と、各受信装置が前記固定局から所定距離に存在する際の受信状態を示すデータを集計した統計データとを比較して、前記受信装置の異常の有無を検知する、
異常検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−244266(P2012−244266A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110039(P2011−110039)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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