説明

異常検知装置、異常検知方法及び保守点検方法

【課題】テンパーカラーの色を正確に識別可能で、且つ当該識別した色に基づいて履歴温度を算出可能な異常検知装置及び異常検知方法等を提供する。
【解決手段】異常検知装置1は、検知対象部位2aの反射光のスペクトルを計測する反射率計測手段4と、検知対象部位2aの反射率と反射率データベース12に格納されているテストピースの反射率との差分を算出する差分演算手段16と、当該差分に基づいて検知対象部位2aの履歴温度を推定する温度推定手段18と、温度推定手段18により推定された履歴温度Tが閾値Tup以上である場合に異常と判定する判定手段20と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを構成する燃料噴射系部品の加熱される部位の異常を検知する異常検知装置及び異常検知方法並びに保守点検方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを構成する燃料噴射系部品、例えば、燃料噴射ポンプ、燃料噴射弁、燃料噴射ノズル等には、高い噴射圧に耐えうるように浸炭焼き入れ材が用いられている。この浸炭焼き入れ材は焼き入れ後、200℃程度の低温焼き戻しが施されている。
燃料噴射系部品は、流体摩擦や断熱圧縮等により、250℃程度の高温状態にさらされる場合がある。この温度条件下では、変態応力が生じるため、高温状態にさらされた燃料噴射系部品の部位は、変形したり、クラックが発生したりする可能性がある。また、高温状態にさらされた燃料噴射系部品の部位にはテンパーカラーが発生する。
【0003】
そこで、エンジンを開放して燃料噴射系部品を点検する際は、テンパーカラーの発生の有無を確認している。テンパーカラーが発生している場合には、作業員がテンパーカラーの色を目視で識別し、その識別結果に基づいて履歴温度を推定する。そして、当該履歴温度が予め設定された上限値(例えば、250℃)以上の場合には、上述したように変形やクラック等が発生している可能性があるため、テンパーカラーが発生している部位の補修を行う。
【0004】
ところで、特許文献1には、テンパーカラーを発生させない焼鈍方法が開示されている。この方法は、コイル状の冷延鋼板をバッチ式焼鈍炉のインナーカバー内に配置して、1〜20%(容積)のHを含有し、残部が実質的にNであるH+N混合ガス中で焼鈍するに際し、焼鈍過程の鋼板温度が300℃以上で所定の露点にすることにより、コイル状のエッジ部の強酸化を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−157943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、定期点検時に作業員がテンパーカラーの色を目視で識別する作業は、個人差が生じるため、作業員ごとに色が異なる場合がある。したがって、作業員によって履歴温度が異なってしまう場合がある。これにより、履歴温度によって発生する変形やクラック等を見逃してしまうおそれがあった。
また、特許文献1に記載された方法には、テンパーカラーの色に基づいて履歴温度を推定することについての記載が無い。
【0007】
そこで、本発明は係る従来技術の問題点に鑑み、テンパーカラーの色を正確に識別可能で、且つ当該識別した色に基づいて履歴温度を算出可能な異常検知装置及び異常検知方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した問題を解決する本発明に係る異常検知装置は、エンジンを構成する燃料噴射系部品の加熱される部位の異常を検知する異常検知装置であって、
検知対象部位を構成する材料の反射率と波長との関係を含むデータを所定温度ごとに複数格納した反射率データベースと、
前記検知対象部位に加熱によって生じたテンパーカラー領域に光を照射してその反射光を受光し、当該テンパーカラー領域の反射率と波長との関係を計測する反射率計測手段と、
前記反射率計測手段により計測された反射率と、前記反射率データベースに格納されている前記データの反射率との差分を、前記所定温度ごとにそれぞれ算出する差分演算手段と、
前記差分演算手段によって算出された各差分と各所定温度との関係に基づいて、前記検知対象部位の履歴温度を推定する温度推定手段と、
前記温度推定手段により推定された前記履歴温度が閾値以上である場合に異常と判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記異常検知装置によれば、反射率計測手段を備えているため、人が目視にて色を識別する場合と比べて、識別結果のばらつきが無く、検知対象部位のテンパーカラーの色を正確に識別することができる。
そして、反射率データベース、差分演算手段及び温度推定手段を備えているため、反射率計測手段によって計測した反射率と、反射率データベースに格納されている反射率とを比較して差分を算出し、当該差分に基づいて検知対象部位の履歴温度を推定することができる。
さらに、判定手段を備えているため、検知対象部位の履歴温度が閾値以上か否かを短時間で判定することができる。
【0010】
また、前記温度推定手段は、特定波長における前記所定温度ごとの前記差分に基づいて、温度と前記差分との相関関係を算出するとともに、前記所定温度間の不連続部分の温度に対する差分の値を補完してもよい。
【0011】
このように温度推定手段は、特定波長における所定温度ごとの差分に基づいて、温度と差分との相関関係を算出して所定温度間の不連続部分の温度に対する差分の値を補完するため、温度と差分との関係を詳細に把握することができる。
【0012】
また、前記温度推定手段は、特定波長における前記所定温度ごとの前記差分に基づいて、前記差分の絶対値が最小となる温度を前記履歴温度としてもよい。
【0013】
このように温度推定手段は、特定波長における所定温度ごとの差分に基づいて、差分が最小となる温度を履歴温度とすることで、検知対象部位の履歴温度を正確に推定することができる。
【0014】
また、前記反射率計測手段から照射される光を縮径する縮径手段を備えてもよい。
【0015】
このように、縮径手段を備えているため、反射率計測手段から照射される光を検知対象部位に形成されたテンパーカラーの領域のみに照射することができる。これにより、反射率計測手段は、テンパーカラー領域のみから反射する反射光を受光することができる。したがって、テンパーカラー領域の色を正確に識別することができる。
【0016】
また、前記判定手段によって判定された結果を表示する表示手段を備えてもよい。
【0017】
このように、表示手段を備えているため、判定手段によって判定された結果を表示手段に表示することができる。これによって、判定結果を目視にて確認することができる。
【0018】
また、本発明の異常検知方法は、エンジンを構成する燃料噴射系部品の加熱される部位の異常を検知する異常検知方法であって、
検知対象部位を構成する材料の反射率と波長との関係を含むデータを所定温度ごとに取得する反射率データ取得ステップと、
前記検知対象部位に加熱によって生じたテンパーカラー領域に光を照射してその反射光を受光し、当該テンパーカラー領域の反射率と波長との関係を計測する反射率計測ステップと、
前記反射率計測ステップにより計測された反射率と、前記反射率データベースに格納されている前記データの反射率との差分を、前記所定温度ごとにそれぞれ算出する差分演算ステップと、
前記差分演算ステップによって算出された各差分と各所定温度との関係に基づいて、前記検知対象部位の履歴温度を推定する温度推定ステップと、
前記温度推定ステップにより推定された前記履歴温度が閾値以上である場合に異常と判定する判定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0019】
上記異常検知方法によれば、反射率計測手段で検知対象部位の反射率を取得する反射率計測ステップを備えているため、人が目視にて色を識別する場合と比べて、識別結果のばらつきが無く、検知対象部位のテンパーカラーの色を正確に識別することができる。
そして、反射率データ取得ステップ、差分演算ステップ及び温度推定ステップを備えているため、反射率計測手段によって計測した反射率と、反射率データ取得ステップにて取得した反射率とを比較して差分を算出し、当該差分に基づいて検知対象部位の履歴温度を推定することができる。
さらに、判定ステップを備えているため、検知対象部位の履歴温度が閾値以上か否かを短時間で判定することができる。
【0020】
また、本発明の保守点検方法は、エンジンを構成し、加熱される部位を有する燃料噴射系部品を保守点検する保守点検方法であって、
前記保守点検対象部位を構成する材料の反射率と波長との関係を含むデータを所定温度ごとに取得する反射率データ取得ステップと、
前記保守点検対象部位に加熱によって生じたテンパーカラー領域に光を照射してその反射光を受光し、当該テンパーカラー領域の反射率と波長との関係を計測する反射率計測ステップと、
前記反射率計測ステップにより計測された反射率と、前記反射率データベースに格納されている前記データの反射率との差分を、前記所定温度ごとにそれぞれ算出する差分演算ステップと、
前記差分演算ステップによって算出された各差分と各所定温度との関係に基づいて、前記保守点検対象部位の履歴温度を推定する温度推定ステップと、
前記温度推定ステップにより推定された前記履歴温度が閾値以上である場合に異常と判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより異常と判定された際に前記保守点検対象部位を有する前記燃料噴射系部品を補修する補修ステップと、を備えることを特徴とする。
【0021】
上記保守点検方法によれば、反射率計測手段で検知対象部位の反射率を取得する反射率計測ステップを備えているため、人が目視にて色を識別する場合と比べて、識別結果のばらつきが無く、検知対象部位のテンパーカラーの色を正確に識別することができる。
そして、反射率データ取得ステップ、差分演算ステップ及び温度推定ステップを備えているため、反射率計測手段によって計測した反射率と、反射率データ取得ステップにて取得した反射率とを比較して差分を算出し、当該差分に基づいて検知対象部位の履歴温度を推定することができる。
また、判定ステップを備えているため、検知対象部位の履歴温度が閾値以上か否かを短時間で判定することができる。
さらに、補修ステップを備えているたえ、検知対象部位を補修することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、テンパーカラーの色を正確に識別可能で、且つ当該識別した色に基づいて履歴温度を算出可能な異常検知装置及び異常検知方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る異常検知装置のブロック構成図である。
【図2】検知対象部位の反射光のスペクトルを示す図である。
【図3】(A)はテストピースを常温(20℃)の温度条件下にそれぞれ載置した際に発生するテンパーカラーの反射光のスペクトルデータを示す図である。(B)はテストピースを100℃の温度条件下にそれぞれ載置した際に発生するテンパーカラーの反射光のスペクトルデータを示す図である。(C)はテストピースを200℃の温度条件下にそれぞれ載置した際に発生するテンパーカラーの反射光のスペクトルデータを示す図である。(D)はテストピースを250℃の温度条件下にそれぞれ載置した際に発生するテンパーカラーの反射光のスペクトルデータを示す図である。(E)はテストピースを300℃の温度条件下にそれぞれ載置した際に発生するテンパーカラーの反射光のスペクトルデータを示す図である。
【図4】検知対象部位の反射率とテストピースの反射率との差分と、波長との関係を示す図である。
【図5】(A)は波長Aにおける温度と反射率の差分との関係を示す図である。(B)は波長Bにおける温度と反射率の差分との関係を示す図である。(C)は波長Cにおける温度と反射率の差分との関係を示す図である。
【図6】異常検知方法のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る異常検知装置のブロック構成図である。
図1に示すように、エンジンを構成する燃料噴射系部品2の加熱される部位(以下、検知対象部位2aという)の異常を検知する異常検知装置1は、燃料噴射系部品2の反射率を計測する反射率計測手段4と、反射率計測手段4によって計測された反射率に基づいて、燃料噴射系部品2の履歴温度を推定する温度推定装置6と、を備えている。
【0026】
反射率計測手段4は、照射部4aから、検知対象部位2aに生じたテンパーカラー領域に光を照射する。テンパーカラーは、検知対象部位2aが加熱されることによって生じる。
その後、当該テンパーカラー領域からの反射光を受光部4bにて受光し、図2に示すように、テンパーカラー領域の反射スペクトルのデータを計測する。本実施形態では、反射率計測手段4として、検知対象部位2aに非接触で計測可能なベリカラー(vericolor、商標、X−Rite社製)を用いたが、これに限定されるものではない。
反射率計測手段4から照射される光がテンパーカラー領域にのみ照射されるように、当該光を縮径する縮径手段10が、反射率計測手段4の照射部4aと検知対象部位2aとの間に配置されている。本実施形態では、縮径手段10として凸レンズを用いたが、これに限定されるものではない。
【0027】
温度推定装置6は、反射率データベース12と、算出手段14と、表示手段8と、入力手段(図示しない)と、を備えている。
反射率データベース12には、検知対象部位2aの材料と同一の材料からなるテストピースの反射光のスペクトルデータが当該材料ごとに格納されている。検知対象部位2aの材料としては、例えば、SCM420、S45C、SKD10等が用いられる。
また、反射率データベース12には、各材料に対して、所定温度ごとの反射光のスペクトルデータがそれぞれ紐付けられて格納されている。
【0028】
図3(A)〜図3(E)は、テストピースを所定温度(常温(20℃)、100℃、200℃、250℃、300℃)の温度条件下にそれぞれ載置した際に発生するテンパーカラーの反射光のスペクトルデータを示す図である。
図3(A)〜図3(E)に示すように、反射光のスペクトルデータは、テンパーカラーの色によって異なっている。反射率データベース12に格納される反射光のスペクトルデータは、反射率計測手段4から光をテストピースのテンパーカラー領域に照射しその反射光を受光することにより取得される。なお、テストピースの反射光のスペクトルデータは、予め取得されている。本実施形態では、図2(A)〜図2(E)に示すように、常温(20℃)、100℃、200℃、250℃、300℃の温度条件下における反射光のスペクトルデータを取得したが、この温度に限定されるものではなく、設計等により適宜決定することができる。
【0029】
また、図1に示すように、算出手段14は、CPUからなる演算部(図示しない)と、差分演算手段16と、温度推定手段18と、判定手段20とを有する。また、算出手段14は、これらの手段を実現するソフトウエアのプログラムを記録した記憶媒体(図示しない)を有しており、必要に応じて演算部が記憶媒体に格納されたプログラムを読み出し実行することによって各手段が実現される。
【0030】
差分演算手段16は、反射率計測手段4から出力された検知対象部位2aの反射光のスペクトルデータを受信する。そして、差分演算手段16は、図4に示すように、検知対象部位2aの反射率と反射率データベース12に格納されているテストピースの反射率との差分を算出する。このとき、当該差分は、20℃、100℃、200℃、250℃、300℃ごとに、それぞれ算出される。なお、図4中には、100℃及び250℃における反射率の差分を示している。
【0031】
図5(A)〜図5(C)は、それぞれ波長A、波長B、波長Cにおける温度と反射率の差分との関係を示す図である。
図5(A)〜図5(C)に示すように、温度推定手段18は、差分演算手段16によって算出された各差分と各所定温度との関係に基づいて、検知対象部位2aの履歴温度を推定する。具体的には、温度推定手段18は、各差分に基づいて、温度と差分との相関関係を算出するとともに、所定温度間の不連続部分の温度に対する差分の値を補完する(図5(A)〜図5(C)の曲線部分に相当)。当該補完の方法としては、例えば、回帰分析方法を用いることができる。なお、回帰分析方法に限定されるものではなく、他の一般的な方法を用いることができる。
続いて、温度推定手段18は、波長ごとに反射率の差分の絶対値が最小となる温度をそれぞれ検出する。本実施形態の場合、波長A、波長B、波長Cにおける履歴温度は、それぞれ271℃、273℃、275℃である。
そして、温度推定手段18は、これらの推定された温度を平均して、検知対象部位2aの履歴温度と推定する。本実施形態の場合、検知対象部位2aの履歴温度を273(=(271+273+275)/3)℃と推定する。
【0032】
また、判定手段20は、温度推定手段18により推定された履歴温度が閾値以上である場合に異常と判定する。本実施形態では、閾値を250℃と設定した。かかる場合、温度推定手段18により推定された履歴温度は、閾値以上なので、検知対象部位2aは異常であると判定する。
【0033】
表示手段8は、例えばモニタで構成され、判定手段20によって判定された結果を画面表示する。
【0034】
入力手段(図示しない)は、例えばキーボードやマウスで構成され、検知対象部位2aに使用されている鋼材名を入力することにより、反射率データベース12内に格納されている複数種の材料のなかから、所望の材料のスペクトルデータを選定することができる。入力手段は、例えば、キーボードやマウスで構成されている。
【0035】
上述した構成からなる異常検知装置1を用いた異常検知方法について以下で説明する。
【0036】
まず、燃料噴射系部品2の検知対象部位2aと同じ材料の反射光のスペクトルデータを取得する。具体的には、燃料噴射系部品2の検知対象部位2aと同じ材料からなるテストピースに光を照射して、反射光のスペクトルデータを所定温度ごとに取得する(図2(A)〜図2(E)参照)。各反射光のスペクトルデータは、各温度に紐付けられて反射率データベース12に格納される。
【0037】
図6は、異常検知方法のフローを示す図である。図6に示すように、燃料噴射系部品2の検知対象部位2aの材料名を入力手段に入力して、検知対象部位2aと同じ材料の反射光のスペクトルデータを選定する(ステップS10)。
【0038】
次に、検知対象部位2aのテンパーカラー領域に、反射率計測手段4から光を照射してその反射光を受光し、当該テンパーカラー領域の反射光のスペクトルを計測する(ステップS12)。
【0039】
次に、差分演算手段16は、ステップS12により計測された検知対象部位2aの反射率とテストピースの反射率との差分を、所定温度ごとにそれぞれ算出する(図4参照)(ステップS14)。
【0040】
次に、温度推定手段18は、ステップS14によって算出された各差分と各所定温度との関係に基づいて、波長ごとの相関関係を算出する(ステップS16)とともに、所定温度間の不連続部分の温度に対する差分の値を補完する(図5参照)。
続いて、温度推定手段18は、波長ごとに反射率の差分の絶対値が最小となる温度をそれぞれ検出する。
その後、温度推定手段18は、これらの推定された温度を平均して、検知対象部位2aの履歴温度Tを推定する(ステップS18)。
【0041】
次に、判定手段20は、ステップS18により推定された履歴温度Tが閾値Tup以上か否かを判定する(ステップS20)。
履歴温度Tが閾値Tup以上の場合、異常有りと判定する(ステップS22)。異常有と判定された場合、燃料噴射系部品2の検知対象部位2aを補修する。
一方、履歴温度Tが閾値Tup未満の場合、異常無しと判定する(ステップS22)。
【0042】
上述したように、本実施形態に係る異常検知装置1によれば、反射率計測手段4を備えているため、検知対象部位2aのテンパーカラーの色を正確に識別することができる。
【0043】
また、反射率データベース12、差分演算手段16及び温度推定手段18を備えているため、検知対象部位2aのテンパーカラーの色に基づいて、検知対象部位2aの履歴温度を推定することができる。
【0044】
そして、温度推定手段18は、特定波長における所定温度ごとの差分に基づいて、温度と差分との相関関係を算出して所定温度間の不連続部分の温度に対する差分の値を補完するため、温度と差分との関係を詳細に把握することができる。また、温度推定手段18は、特定波長における所定温度ごとの差分に基づいて、差分の絶対値が最小となる温度を履歴温度とすることで、検知対象部位2aの履歴温度を正確に推定することができる。
【0045】
さらに、判定手段20を備えているため、検知対象部位2aの履歴温度が閾値以上か否かを短時間で判定することができる。また、判定手段20によって履歴温度が閾値以上と判定された後、検知対象部位2aを補修することができる。これにより、エンジン等の運転中に燃料噴射系部品2が破損することを防止できる。
【0046】
そして、縮径手段10を備えているため、反射率計測手段4から照射される光を検知対象部位2aに形成されたテンパーカラーの領域のみに照射することができる。これにより、反射率計測手段4は、テンパーカラー領域のみから反射する反射光を受光することができる。したがって、テンパーカラー領域の色を正確に識別することができる。
【0047】
さらに、表示手段8を備えているため、判定手段20によって判定された結果を表示手段8に表示することができる。これによって、判定結果を目視にて確認することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 異常検知装置
2 燃料噴射系部品
2a 検知対象部位
4 反射率計測手段
4a 照射部
4b 受光部
6 温度推定装置
8 表示手段
10 縮径手段
12 反射率データベース
14 算出手段
16 差分演算手段
18 温度推定手段
20 判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを構成する燃料噴射系部品の加熱される部位の異常を検知する異常検知装置であって、
検知対象部位を構成する材料の反射率と波長との関係を含むデータを所定温度ごとに複数格納した反射率データベースと、
前記検知対象部位に加熱によって生じたテンパーカラー領域に光を照射してその反射光を受光し、当該テンパーカラー領域の反射率と波長との関係を計測する反射率計測手段と、
前記反射率計測手段により計測された反射率と、前記反射率データベースに格納されている前記データの反射率との差分を、前記所定温度ごとにそれぞれ算出する差分演算手段と、
前記差分演算手段によって算出された各差分と各所定温度との関係に基づいて、前記検知対象部位の履歴温度を推定する温度推定手段と、
前記温度推定手段により推定された前記履歴温度が閾値以上である場合に異常と判定する判定手段と、を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
前記温度推定手段は、特定波長における前記所定温度ごとの前記差分に基づいて、温度と前記差分との相関関係を算出するとともに、前記所定温度間の不連続部分の温度に対する差分の値を補完することを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記温度推定手段は、特定波長における前記所定温度ごとの前記差分に基づいて、前記差分の絶対値が最小となる温度を前記履歴温度とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記反射率計測手段から照射される光を縮径する縮径手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記判定手段によって判定された結果を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のうち何れか一項に記載の異常検知装置。
【請求項6】
エンジンを構成する燃料噴射系部品の加熱される部位の異常を検知する異常検知方法であって、
検知対象部位を構成する材料の反射率と波長との関係を含むデータを所定温度ごとに取得する反射率データ取得ステップと、
前記検知対象部位に加熱によって生じたテンパーカラー領域に光を照射してその反射光を受光し、当該テンパーカラー領域の反射率と波長との関係を計測する反射率計測ステップと、
前記反射率計測ステップにより計測された反射率と、前記反射率データベースに格納されている前記データの反射率との差分を、前記所定温度ごとにそれぞれ算出する差分演算ステップと、
前記差分演算ステップによって算出された各差分と各所定温度との関係に基づいて、前記検知対象部位の履歴温度を推定する温度推定ステップと、
前記温度推定ステップにより推定された前記履歴温度が閾値以上である場合に異常と判定する判定ステップと、を備えることを特徴とする異常検知方法。
【請求項7】
エンジンを構成し、加熱される部位を有する燃料噴射系部品を保守点検する保守点検方法であって、
前記保守点検対象部位を構成する材料の反射率と波長との関係を含むデータを所定温度ごとに取得する反射率データ取得ステップと、
前記保守点検対象部位に加熱によって生じたテンパーカラー領域に光を照射してその反射光を受光し、当該テンパーカラー領域の反射率と波長との関係を計測する反射率計測ステップと、
前記反射率計測ステップにより計測された反射率と、前記反射率データベースに格納されている前記データの反射率との差分を、前記所定温度ごとにそれぞれ算出する差分演算ステップと、
前記差分演算ステップによって算出された各差分と各所定温度との関係に基づいて、前記保守点検対象部位の履歴温度を推定する温度推定ステップと、
前記温度推定ステップにより推定された前記履歴温度が閾値以上である場合に異常と判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより異常と判定された際に前記保守点検対象部位を有する前記燃料噴射系部品を補修する補修ステップと、を備えることを特徴とする保守点検方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88404(P2013−88404A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232207(P2011−232207)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】