説明

異常検知装置

【課題】行動者の取った行動により、権限が変化することがある。従って、変化した権限に合わせ、異常・正常行動の判断基準を変化させる必要がある。
【解決手段】行動者が取った行動に応じて、異常・正常行動の判断基準を変化させた行動権限情報を算出し、行動者が示す行動が異常か否かを検知し、異常を検知した場合には警報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証機器と監視機器で監視される行動者の異常行動の検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は認証情報と対応する行動権限に応じて、行動者の違反行動や禁止行動を検知する方法が多く提案されている。
【0003】
上記の方法を実現する具体的な技術としては、例えば、特許文献1では、色情報,顔画像など認証情報により、行動者の行動権限を決定し、行動者の行動が行動権限を越えた場合に異常を判断する方法が開示されている。この技術により監視される行動者の行動を詳細に分析し、行動者に与えられた行動権限の範囲内であれば、警報を発することなしに、行動権限を越えた場合に異常行動を検知し警報を発することが可能である。
【0004】
一方で、特許文献2では、行動者の行動や状況の特定のパターンを認識し、異常行動や状況を判断する方法が開示されている。例えば、解除可能時間内に3回のドア開閉があれば特定のパターンと一致したとしてセキュリティの警戒モードを解除し、3回以上のドア開閉があれば、特定のパターンと一致しないので異常事態であるとして警報を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2007/138811号
【特許文献2】特開2006−65719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、通常の監視する場合は行動者の取った行動により、権限が変化することがある。従って、変化した権限に合わせ、正常や異常の判断基準を変化させる必要がある。例えば、店舗の場合は、客が物を取ったら、お金を払わないで、店を出ることができず、お金を払わなければならない。普通では、店を出る行動は正常であるが、物を取った行動が発生した場合は、権限が変わり、出る行動は異常行動になる。従って、変化した権限に合わせ、正常・異常の判断基準を変化させることが必要である。
【0007】
特許文献1では、行動者の取った行動が正常や異常の判断に反映されないため、このことを考慮できないという問題がある。例えば、店舗の場合では、客に対しては、店に入る,店を出る,物を取る,物を買うなど様々な正常な行動がある。しかし、客は物を取ったら、買わないで、そのまま店を出ると異常と判断する必要がある。
【0008】
特許文献2では、上記と同じ例を考えれば、物を取る,物を買う,店を出るが一連のパターンとして認識される場合は警報を発しないが、特定のパターンの何れにも該当しない場合には異常事態や異常行動と判断し、警報を発することが可能である。しかし、この技術では、判断可能なのは予め定められた特定のパターンに限られ、行動者の様々な行動に適応できず、行動者の取った行動が正常や異常の判断基準の変化に反映されないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記したような従来の問題点を改善するために、行動者の取った行動により行動権限を変更することで、状況に応じた異常判断が可能な異常検知装置を実現することを目的とする。
【0010】
尚、上記した課題以外のその他の課題は、本願明細書全体の記載または図面から明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
カメラにより行動者を撮影して動画像を画像情報として出力する画像情報入力手段と、行動者を認証して行動者の認証情報を出力する認証情報入力手段と連携し、行動者の異常行動を検知する異常検知装置であって、
前記画像情報入力手段からの動画像に含まれる行動者を検出し、行動者の行動を認識し、行動者の行動を抽出して行動者行動情報として出力する行動認識手段と、
前記認証情報入力手段からの認証情報に対応して、予め異常・正常行動を定義する行動権限リストと、
前記認証情報入力手段より入力された行動者の認証情報に応じて、前記行動権限リストを参照し、行動者の異常・正常行動情報を得て、行動権限情報リストとして出力する行動権限決定手段と、
前記行動認識手段から入力された行動者行動情報と前記行動権限決定手段から入力された行動権限情報リストによって、行動者の行動に応じて、行動者の行動権限を算出し、行動者の行動権限情報として出力する行動権限管理手段と、
前記行動権限管理手段から入力された行動権限情報を参照し、前記行動認識手段から入力された行動者行動情報が示す行動体の行動が異常か否かを検知し、異常であると判断した場合には警報情報を出力する異常判断手段と、
前記異常判断手段から警報情報が入力されると警報を出力する出力手段とを有する。
【0012】
尚、上記した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、上記した構成以外の本発明の構成の例は、本願明細書全体の記載または図面から明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の異常検知装置は、行動者の取った行動により、正常・異常の判断基準を変化できるようになる。本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例による異常検知装置全体の機能構成図である。
【図2】異常検知装置の行動権限管理手段の内部構成である。
【図3】本発明の一実施例による異常検知装置のデータフローである。
【図4】本発明の一実施例による行動権限リストである。
【図5】本発明の一実施例による異常検知装置のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例による異常検知装置全体の機能構成図である。
【図7】異常検知装置の一実施例である異常作業検知装置の例を示す図である。
【図8】異常検知装置の一実施例である店舗の異常検知装置の例を示す図である。
【図9】異常検知装置の一実施例である不正立ち入り異常検知装置の例を示す図である。
【図10】異常検知装置の一実施例である避難案内装置の例を示す図である。
【図11】異常検知装置の一実施例である空港搭乗案内装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。尚、各図および各実施例において、同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0016】
本発明は、行動者の取った行動により行動権限を変更することにより、状況に応じた異常判断が可能な異常検知装置を実現した。
【0017】
図1は、本発明の一実施例による異常検知装置全体の機能構成図である。本実施形態は、図示するように、画像情報入力手段10,行動認識手段11,認証情報入力手段12,行動権限決定手段13,行動権限リスト14,行動権限管理手段15,異常判断手段16、及び出力手段17から構成される。
【0018】
画像情報入力手段10は、ビデオカメラなどの撮影装置であり、撮影された画像のデータを取り込み、動画像を画像情報として行動認識手段11へ出力する。
【0019】
行動認識手段11では、画像情報人力手段10より入力された画像データに含まれる行動者を検出し、行動者の行動を認識し、行動者の行動情報を抽出して、行動者行動情報として行動権限管理手段15と異常判断手段16へ出力する。
【0020】
認証情報入力手段12では、例えば、暗証番号,監視カメラ,静脈,顔,指紋,虹彩,ICカード,携帯などによって行動者を証明できる行動者のID,証明番号,顔画像,指紋画像などを認証情報として行動権限決定手段13へ出力する。
【0021】
行動権限決定手段13では、認証情報人力手段12より入力された行動者の認証情報に対応する行動権限情報を得るために、行動権限リスト14にアクセスする。行動権限リスト14により、その行動者に対応した、正常な行動や異常な行動、あるいは、許可されている行動や禁止されている行動を得て、行動権限情報リストとして、行動権限管理手段15へ出力する。
【0022】
行動権限リスト14は、予め設定され、それぞれの行動者(行動者の認証情報)に対応して、正常な行動や異常な行動、あるいは、許可されている行動や禁止されている行動を定義するリストである。
【0023】
行動権限管理手段15では、行動認識手段11より入力された行動者行動情報と行動権限決定手段13により入力された行動者の行動権限情報リストによって、行動者の取った行動に応じて行動者の行動権限(行動者の行動によって変更後の行動権限)を算出し、行動者の行動権限情報として、異常判断手段16へ出力する。
【0024】
異常判断手段16では、行動権限管理手段15により入力された行動者の行動権限情報を参照し、行動認識手段11により入力された行動情報が示す行動者の行動が正常行動や異常行動であることを判断し、異常行動や禁止行動であることを検知した場合は警報情報として出力手段17へ出力する。
【0025】
出力手段17では、異常判断手段16からの警報情報が入力されると、警報を出力する。
【0026】
なお、行動認識手段11では、画像や映像から行動者を検出し、検出した行動者の行動を認識し、行動情報を作成する。ここで、認識される行動者の行動は、監視領域により様々な種類がある。例えば、店舗では、物を取る,物を見る,お金を払う,店を出るなどの行動が挙げられる。工場のラインでは、位置情報を行動とみなし、行動情報を作成することも可能である。また、作業服の色や様子などの行動者の状態を行動とみなし、行動者の行動情報を作成することも可能である。行動権限リスト14など、他の部分における「行動」の定義も、狭義の行動に限定されず、行動者の位置や状態を含むものとすることができる。
【0027】
行動認識手段11における、行動者の検出アルゴリズムと行動者の認識アルゴリズムと行動者の位置を求め、行動者を追跡するアルゴリズムは、例えば、“A System for Video Surveillance and Monitoring”tech. report CMU-RI-TR-00-12, Robotics Institute, Carnegie Mellon University, May, 2000.に記載の方法を用いることができる。また、センサを用いて、位置,振動,光など状態を示す情報を行動とみなした行動情報を作成することも可能である。
【0028】
認証情報入力手段12は、オフィスセキュリティの入退室管理装置(アクセスコントロール装置)と連携することも可能である。尚、同じ行動者に対して異常検知する場合に、最初の一回のみ認証情報入力手段12で認証情報を作成し、行動権限決定手段13へ出力するようにしてもよいし、入退室の度に、毎回、認証情報入力手段12で認証情報を作成するようにしてもよい。
【0029】
行動権限決定手段13は、行動権限リスト14によりリアルタイムで行動者の行動権限情報リストを取得することができる。認証情報入力手段12により行動者の認証情報を入力される際、行動権限リスト14にアクセスし、行動権限情報リストを作成する。尚、同じ行動者の異常を検知する場合は、最初一回のみ、行動権限リスト14にアクセスし、正常・異常行動情報を得て、行動権限情報リストを作成するようにしてもよい。
【0030】
行動権限リスト14では、正常・異常行動の定義は、動的に変更することができる。例えば、監視領域,時間帯に応じて、正常・異常行動の定義を変更することができる。例えば、所定の時間になった場合や、行動者が所定の監視領域に入った場合に、定義を変更することができる。行動権限リスト14の変更が発生する際、行動権限決定手段13へ自動的に通報し、新しい行動権限情報リストを更新する。また、行動権限リスト14は、同じ認証情報を持つ集団行動者に対して、行動権限を定義することもできる。例えば、同じ作業服を着用している作業員は集団行動者として、同じ行動権限を持ったものであるとみなして、異常検知することが可能である。
【0031】
出力手段17は、異常を検知した際は警報を出すものであり、伝統的な色,音,光などの警報方法が利用可能である。携帯電話や電子メールに配信することが可能であり、異常検知される行動者の実画像も転送することも可能である。異常行動の定義や緊急度に応じて、出力手段を変更することも可能である。
【0032】
また、他の装置と連携し、例えば、ドアを開けたり,閉めたり、制御装置に対して異常防止などの制御をすることも可能である。PDAや携帯端末に異常行動の警報や正常行動の案内などを出力することも可能である。
【0033】
図2は、本発明の一実施例による異常検知装置の行動権限管理手段の内部構成である。図示するように、行動権限管理手段15は、行動状態捜索手段22,行動権限抽出手段23から構成される。
【0034】
図1の行動認識手段11により入力された行動者が取った行動情報20と、図1の行動権限決定手段13により入力された行動者の行動権限情報リスト21とを、行動権限管理手段15に入力する。行動状態捜索手段22は、行動者の行動権限情報リスト21を参照し、行動者が取った行動を捜索し、行動状態情報として行動権限抽出手段23へ出力する。行動権限抽出手段23は、入力された行動状態情報に応じて、行動者の正常・異常行動を抽出し、行動権限情報24として出力する。この行動権限情報24は、行動者の行動によって変更後の行動権限である。
【0035】
図3は、本発明の一実施例による異常検知装置のデータフローを示す。カメラ装置など画像情報入力手段10を用いて、行動者を含む画像情報30を行動認識手段11へ出力する。行動認識手段11は、画像情報30により、行動者の行動を認識し、行動情報31を行動権限管理手段15へ出力する。例えば、行動者の行動はAと認識された場合は、Aを出力する。
【0036】
カードリーダなど認証情報入力手段12を利用し、行動者が持つカードを読み込み、認証情報33を行動権限決定手段13へ出力する。例えば、行動者のIDは1であれば、ID=1という認証情報を出力する。行動権限決定手段13は、行動権限リスト14にアクセスし、ID=1に対して、正常・異常行動の定義リストを取り出し、行動権限情報リスト34として行動権限管理手段15へ出力する。
【0037】
行動権限管理手段15では、行動権限情報リスト34と行動者の行動情報31とが入力され、行動権限情報リスト34を参照して、行動情報31の行動に応じて、行動権限情報35を抽出する。例えば、行動者がAの行動を実行した場合は、正常な行動はA,B,C,Fであり、異常な行動はD,Eであるという行動権限情報35を抽出し、異常判断手段16へ出力する。この行動権限情報35は、行動情報31の行動に応じて正常・異常が変化した、変更後の行動権限である。
【0038】
異常判断手段16は行動権限情報35を参照し、行動認識手段11から入力された行動者の行動情報32が正常か異常かを判断する。例えば、認識された行動情報がEの場合は、行動権限情報35ではEが異常行動であるため、異常行動と判断する。異常行動と判断された場合、警報情報36を出力手段17へ出力する。
【0039】
出力手段17では、警報情報36を受け、警報を出す。
【0040】
図4は、本発明の行動権限リストの一例である。行動権限リスト14は、行動者(行動者の認証情報)に対応して、予め正常行動と異常行動とを定義するものである。40は行動者の行動及び行動順序を定義する行動リストである。例えば、A−>B−>Dの意味は、行動者の行動はA,B,Dである。それらの行動順序は、Aをした後でBをし、Bをした後でDをするという意味である。この行動リスト40を参考し、行動マトリックス41を作成する。この行動マトリックス41の作成は、予め作成して行動権限リストに保存しておくか、行動権限決定手段13,行動権限管理手段15の何れかで作成すればよい。ここでは、予め作成されているものとして説明する。表の中で、1は正常行動、0は異常行動を示す。最左列,最下行は行動者の行動であり、各マトリックスの値は、最左列の行動があった後における、最下行の行動の正常・異常行動を定義するものである。例えば、第一行目の行動権限情報42は、行動認識手段11において行動権限管理手段に入力された行動がAであった場合に対応し、行動Aに応じて、最下行の各行動A〜Fが、正常行動であるか異常行動であるかを定義している。すなわち、行動者が行動Aを実行したら、その後の行動者の行動A,B,C,Fは1であり、正常行動と定義する。同様に、行動者の行動D,Eは0であり、異常行動と定義する。A−>B−>Dが正常行動であれば、この行動の順に行った場合に全て正常行動であると判定されるように、対応するマトリックスの値を1で埋めてゆく。たとえば、A−>Bは正常行動なので、最左列A,最下列Bに対応する欄は1となり、その後のB−>Dについても、最左列B,最下列Dに対応する欄を1とする。同様に、これを全ての行動リストの中の行動に対して行うことで、行動マトリックス41を作成できる。
【0041】
そして、例えば、行動権限決定手段13は、行動権限リスト14を参照して、認証情報33(ID=1)に対応する行動マトリックス41を抽出し、行動権限情報リスト34として行動権限管理手段15に出力する。行動権限管理手段15は、Aの行動情報31を入力されれば、行動マトリックス41を参照して、第一行目の行動権限情報42を行動権限情報として出力する。
【0042】
また、認証情報入力手段12において、行動者を認証できない場合は、行動者に最低権限であるIDを付け、行動権限決定手段13は、行動権限リスト14を参照して、予め設定した最低行動権限情報リストを行動権限情報リスト34として出力する。例えば、この最低行動権限情報リストでは、各行動マトリックスの値は0を設定することができ、すべて行動に対して、異常と判断できる。この最低行動権限情報リストは、時間,監視領域などに応じて変更可能である。
【0043】
図5は、本発明の一実施例による異常検知装置のフローチャートである。ステップ50では、認証情報入力手段12により、行動者のカードなどを読み込み、入退室管理入力を行う。ステップ51では、認証されるか否かを判断する。認証されない場合は、不審行動者と判断し、警報を生成する。認証された場合は、ステップ53を行い、認証情報が行動権限決定手段13に入力され、行動者の認証情報(IDなど)により、行動権限リストの参照を行うステップ52を介して、行動権限情報リストを決定する。そして、ステップ54では、カメラなどにより撮影された行動者の行動があるか否かを行動認識手段11で判断する。行動が発生した場合は、ステップ55で行動を認識する。ステップ56では、発生した行動により、行動権限管理手段15が行動権限を変更し、行動権限情報を算出する。また、ステップ57では、カメラなどにより撮影された行動者の次の行動を行動認識手段11が認識する。ステップ58では、算出した行動権限情報を参照し、ステップ57で認識された行動が異常か否かを異常判断手段にて判断する。ステップ59では、異常の行動を判断した場合は、警報する。異常がない場合には、ステップ54に戻る。
【0044】
図6は、本発明の一実施例による異常検知装置である。本実施形態は、図示するように、画像情報入力手段60,行動認識手段61,認証情報入力手段62,行動権限決定手段63,行動権限リスト64,行動権限管理手段65,異常判断手段66、及び出力手段67から構成される。
【0045】
本実施形態における各部の機能は、図1に示した画像情報入力手段10,行動認識手段11,認証情報入力手段12,行動権限決定手段13,行動権限リスト14,行動権限管理手段15,異常判断手段16、及び出力手段17と同様であるが、本実施形態における行動認識手段61は、行動権限管理手段65から行動者の行動権限情報が入力され、この行動権限情報に従って、行動者の異常行動に絞って認識を行う点が異なっている。
【0046】
また、認証情報入力手段62で最高行動情報権限を持つ行動者が認証された場合、あるいは、最高行動権限情報が行動権限管理手段65に入力された場合は、行動権限管理手段65は、行動認識手段61へ信号を出力し、行動者の正常・異常行動を認識する必要がないと判断することが可能であり、警報情報を生成しない。尚、行動認識手段61へ信号を出力する代わりに、異常判断手段66に信号を出力してもよく、この場合も同様に、行動者の正常・異常行動を認識する必要がないと判断することが可能であり、警報情報を生成しない。
【0047】
図7は、異常検知装置の一実施例である異常作業検知装置の例を示す図である。ここでは、図7に示すように、認証装置、例えばICカードリーダなどの入退室管理装置70,カメラ71と連携し、作業員の異常作業を検知した場合に、警報情報を作成するような異常作業検知装置の場合を例に説明する。例えば、データセンターで作業員72が認証され、入室する。この作業員72には、行動権限リスト74が与えられている。
【0048】
作業員72が入室する行動が発生した場合は、サーバの格納された棚のドア73を開ける行動と部屋を出る行動が正常行動であり、閉める行動が異常である。作業員72がドア73を開ける行動が発生した場合は、異常・正常の行動権限基準を変化し、閉める行動が正常行動になり、部屋を出る行動が異常行動になる。例えば、作業員72はドア73を開けたら、ドア73を閉めないで、部屋を出ることは異常であり、アラームなど警報を生成し、出力する。
【0049】
ドア73を開ける行動、閉める動作の認識はセンサ,画像処理で検出可能である。ドア73を開ける行動と閉める行動は音が発生するため、音による認識でも検出可能である。また、検知する行動の定義は監視目的により、追加することも可能である。
【0050】
図8は、異常検知装置の一実施例である店舗の異常検知装置の例を示す図である。ここでは、カメラ80の映像情報を用いて、店舗の店長,店員、及び客の異常行動を検知した場合、警報情報を作成するような異常検知装置の場合を例に説明する。
【0051】
例えば、カメラ80より、客81が認証された場合、行動権限リスト84を与える。この行動権限リスト84は、店に入る,物を取る,お金を払う,店を出るという各行動を定義する。この場合、客は店に入った場合は、取る,出る,払う行動がすべて正常である。客は物を取った行動が発生した場合は、行動権限が変化し、払う行動が正常行動になり、出る行動は異常行動になる。客は物を取った場合は、払わないで、直接出る行動が発生した場合は、異常行動と判断し、警報情報を生成する。通常の場合は、客はルート83が示すように、店に入って、棚で物を取って、レジでお金を払って、店を出た場合は正常であると判断し、警報しない。
【0052】
同じように、店員に行動権限情報リストを与えれば、正常・異常判断も可能である。また、店長82が認証された場合、最高行動情報権限を与える。行動権限管理手段15は、店長の最高行動情報権限に応じて、異常行動を認識する必要がないと判断し、行動認識手段11または異常判断手段16に信号を送り、異常判断や警報情報を生成しないようにする。
【0053】
客,店員,店長の認証については、カメラ映像により、ユニフォーム,顔画像などを認証情報として利用可能である。
【0054】
本発明では、位置情報を行動とみなして、行動者の異常行動を検知することも可能である。位置の計測方法は様々であるが、例えば、GPSから直接求めたり、RFIDリーダを用いて、RFIDの電波強度を三角測量して、位置を求めることが可能である。また、画像情報を用いて、実世界座標に変換し、位置を求めることも可能である。具体例に基づいて、詳細に説明する。
【0055】
図9は、異常検知装置の一実施例である不正立ち入り異常検知装置の例を示す図である。ここでは、図9に示すように、入退室管理装置90とカメラ91と連携し、許可されないエリアに入る行動者を検知した場合、警報情報を作成するような異常検知装置の場合を例に説明する。
【0056】
例えば、データセンターで許可されないエリアに不正立ち入りする行動者92を検知したとする。行動者92が例えば暗証番号による入退室管理装置90で認証され、当人の行動権限リスト98が図のように与えられているとする。この行動権限リスト98を参照し、エリア93からエリア95へ移動すること、エリア93内で移動すること、エリア95からエリア93へ移動すること、エリア95内で移動することは正常行動であると分かった。行動者92は、正常ルート97が示すように、エリア93からエリア95へ移動してエリア95で徘徊する行動は行動権限の範囲内であるため、警報を出す必要がないと判断する。一方、行動者92は、異常ルート96が示すように、エリア93からエリア94へ移動する、またはエリア94内で移動することは行動権限の範囲外であるため、警報情報を生成する。
【0057】
図9のような不正立ち入り検知装置は空港,工場ラインでも利用可能である。例えば、客が持つ航空券,パスポートなどの認証情報により、エリアなどの行動権限情報を決め、カメラで客の位置情報を得て、異常検知することが可能である。
【0058】
また、本発明では、異常行動を検知すると同時に、正常行動を得て、行動者に案内することも可能である。具体例に基づいて、詳細に説明する。
【0059】
例えば、図10は、異常検知装置の一実施例である火事避難案内装置の例である。この例では、位置情報を行動とみなして行動情報を生成するものとして説明する。図10に示すように、エリア5で火事が発生した場合は、カメラ100が撮影した映像情報により、行動者101が認証され、行動権限リスト102を得る。行動者101がエリア7にいた行動に応じて、正しいルートを決め、エリア4を通って、エリア1の出口を案内することが可能である。具体的には、エリア5へ至る行動が異常行動となる。ここではさらに、エリア5から出る行動も異常行動とした。また、行動者101はエリア8を選択した場合は、エリア9を案内し、そして、エリア6,エリア3,エリア2を通って、エリア1の出口を案内することが可能である。
【0060】
このルートの情報を出力することも可能である。例えば、行動者が持つ携帯機器(携帯電話,PDAなど)に正しルートを案内する情報を出力可能である。
【0061】
この場合は、消防員は制服などにより、最高権限を持つ行動者と認識し、行動を認識することは必要がなく、どこのエリアにも入ることができる。
【0062】
図11は、図10と同じ原理で考えられ、異常検知装置の一実施例である空港搭乗案内装置の例である。例えば、行動者118がパスポート等による認証を経て、出発ロビー119に入った場合を説明する。航空券から、飛行機便,時間,出発カウンター,行動権限リスト116,出発前行動権限リスト117を得た。行動権限リスト116に示すように、出発時間まで余裕がある場合は、トイレエリア112,ショップエリア113,案内所エリア114,動く歩道115の間で自由に移動する行動権限があり、移動しても警報を生成しない。そして、飛行機の出発時間が迫った場合は、行動権限リスト116から出発前行動権限リスト117に変更する。出発前行動権限リスト117に示すように、速やかに出発カウンター111に移動すると正常と判断し、警報情報を生成しない。行動者118は、出発カウンター111以外、行動権限がないエリアに移動した場合は、異常行動と判断し、警報情報を生成することが可能となる。その際は、乗務員に通報し、案内情報を流すことも可能である。また、行動者が持つ携帯機器に案内メールやメッセージを送ることも可能である。
【0063】
尚、本発明における異常行動には、危険行動や禁止行動なども含まれる。
【0064】
以上、本発明を実施例を用いて説明してきたが、これまでの各実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、それぞれの実施例で説明した構成は、互いに矛盾しない限り、組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0065】
10,60 画像情報入力手段

11,61 行動認識手段
12,62 認証情報入力手段
13,63 行動権限決定手段
14,64,74,84,98,102,116 行動権限リスト
15,65 行動権限管理手段
16,66 異常判断手段
17,67 出力手段
20 行動者が取った行動情報
21 行動者の行動権限情報リスト
22 行動状態捜索手段
23 行動権限抽出手段
24,35,42 行動権限情報
30 画像情報
31,32 行動情報
33 認証情報
34 行動権限情報リスト
36 警報情報
40 行動リスト
41 行動マトリックス
70,90 入退室管理装置
71,80,91,100,110 カメラ
72 作業員
73 ドア
81 客
82 店長
83 ルート
92,101,118 行動者
93,94,95 エリア
96 異常ルート
97 正常ルート
111 出発カウンター
112 トイレエリア
113 ショップエリア
114 案内所エリア
115 動く歩道
117 出発前行動権限リスト
119 出発ロビー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラにより行動者を撮影して動画像を画像情報として出力する画像情報入力手段と、行動者を認証して行動者の認証情報を出力する認証情報入力手段と連携し、行動者の異常行動を検知する異常検知装置であって、
前記画像情報入力手段からの動画像に含まれる行動者を検出し、行動者の行動を認識し、行動者の行動を抽出して行動者行動情報として出力する行動認識手段と、
前記認証情報入力手段からの認証情報に対応して、予め異常・正常行動を定義する行動権限リストと、
前記認証情報入力手段より入力された行動者の認証情報に応じて、前記行動権限リストを参照し、行動者の異常・正常行動情報を得て、行動権限情報リストとして出力する行動権限決定手段と、
前記行動認識手段から入力された行動者行動情報と前記行動権限決定手段から入力された行動権限情報リストによって、行動者の行動に応じて、行動者の行動権限を算出し、行動者の行動権限情報として出力する行動権限管理手段と、
前記行動権限管理手段から入力された行動権限情報を参照し、前記行動認識手段から入力された行動者行動情報が示す行動者の行動が異常か否かを検知し、異常であると判断した場合には警報情報を出力する異常判断手段と、
前記異常判断手段から警報情報が入力されると警報を出力する出力手段とを有することを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知装置において、
前記認証情報入力手段で最高行動情報権限を持つ行動者が認証された場合、あるいは、最高行動権限情報が前記行動権限管理手段に入力された場合は、前記行動権限管理手段は、前記行動認識手段または前記異常判断手段へ信号を出力し、行動者の異常・正常行動を認識する必要がないと判断し、警報情報を生成しないことを特徴とする異常検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異常検知装置において、
前記認証情報入力手段は、行動者の認証情報を認証できない場合は、行動者に最低権限である認証情報を付けて出力し、前記行動権限決定手段は、前記認証情報を用いて、前記行動権限リストを参照して、予め設定した最低行動権限リストを行動権限情報リストとして出力することを特徴とする異常検知装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の異常検知装置において、
前記行動権限リストは、行動者の認証情報に対応して、異常・正常行動を定義し、行動者の行動及び行動順序を表すデータを備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の異常検知装置において、
前記行動権限リストは、時間または監視領域に応じて変更されることを特徴とする異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−69023(P2012−69023A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214663(P2010−214663)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】