説明

異方導電性接合パッケージ

【課題】導通路の設置密度を飛躍的に向上させ、高集積化構造においても半導体素子等の電子部品の異方導電性部材または検査用コネクタ等として使用することができる異方導電性接合パッケージ、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】導電素材に異方性導電膜51を接合したパッケージであって、該異方性導電膜51は、絶縁性基材2中に、導電性部材からなる複数の導通路3が、互いに絶縁された状態で前記絶縁性基材2を厚み方向に貫通し、かつ、前記各導通路3の一端が前記絶縁性基材2の一方の面において露出し、前記各導通路3の他端が前記絶縁性基材2の他方の面において露出した状態で設けられており、前記導通路3の密度が300万個/mm2以上であり前記絶縁性基材2がマイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜からなる構造体であり、前記マイクロポアが深さ方向に対して分岐構造をもたないことを特徴とする異方導電性接合パッケージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属充填微細構造体を用いた異方性導電膜およびその製造方法に関する。詳細には、金属充填微細構造体を用いた異方性導電膜を有する異方導電性接合パッケージおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の接続部材及び機能検査を行う際の検査用コネクタ等、広く使用されているほか、光伝送素材の用途としても応用が期待でき、注目度が高い部材である。
【0003】
特に半導体素子等の電子接続部材は、そのダウンサイジング化が顕著であり、従来のワイヤーボンディングのような直接配線基板を接続するような方式では、接続の安定性を十分に保証することができない。これに代わり近年注目されているのが異方導電性部材であり、絶縁素材の皮膜中に導電部材が貫通林立したタイプや、金属球を配置したタイプのものが注目されている。
【0004】
検査用コネクタは、半導体素子等の電子部品を回路基板に実装した後に機能検査を行うと、電子部品が不良であった場合に、回路基板もともに処分されることとなり、金額的な損失が大きくなってしまうという問題を回避するため開発された。検査用コネクタは、半導体素子等の電子部品を、実装時と同様のポジションで回路基板に異方導電性部材を介して接触させて機能検査を行うことで、電子部品を回路基板上に実装せずに、機能検査を実施でき、上記の問題を回避することができる。
【0005】
このような用途に用いる異方導電性部材として、特許文献1には、「接着性絶縁材料からなるフィルム基板中に、導電性材料からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で、かつ該フィルム基板を厚み方向に貫通した状態で配置され、フィルム基板の長手方向と平行な導通路の断面における形状の外周上の2点間の最大長の平均が10〜30μmであり、隣接する導通路の間隔が、上記最大長の平均の0.5〜3倍であることを特徴とする異方導電性フィルム。」が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、「絶縁性樹脂よりなるフィルム基材中に、複数の導通路が、互いに絶縁されて、該フィルム基材を厚み方向に貫通し、かつ、千鳥配列で配置されている、異方導電性フィルムであって、導通路列内の導通路間距離よりも、隣り合う導通路列間での導通路間距離が小さいことを特徴とする、異方導電性フィルム。」が開示されている。
【0007】
このような異方導電性フイルムの製造方法として、特許文献1および2には、異方導電性材料の細線を絶縁性フィルム上に挟み込んだ後、加熱及び加圧により一体化し、厚み方向にスクライブする方法が開示されている。
また、特許文献3には、レジストとマスクを用いて導電性の柱を電鋳で作製し、これに絶縁性素材を流し込み硬化させることで異方導電性フイルムを製造する方法が検討されている。
【0008】
一方、特許文献4には、「電気的絶縁材からなる保持体と、該保持体中に互いに絶縁状態にて備えられた複数の導電部材とを有し、前記各導電部材の一端が前記保持体の一方の面において露出しており、前記各導電部材の他端が前記保持体の他方の面において露出している電気的接続部材を製造する方法において、
基体と、該基体に積層されて設けられるところの前記保持体となる絶縁層とを有する母材に対し前記絶縁層側から高エネルギビームを照射して、複数の領域において前記絶縁層の全部と前記基体の一部とを除去し、前記母材に複数の穴を形成する第1の工程と、
形成された複数の穴に、前記絶縁層の面と面一またはこの面より突出させて、前記導電部材となる導電材料を充填する第2の工程と、前記基体を除去する第3の工程と、を有することを特徴とする電気的接続部材の製造方法。」が開示されており、絶縁層として、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の種々の材質に関する検討も行なわれている。
【0009】
ところで、近年、半導体素子等の電子部品は、高集積化が一層進むことに伴い、電極(端子)サイズはより小さくなり、電極(端子)数はより増加し、端子間の距離もより狭くなってきている。また、狭ピッチで多数配置されている各端子の表面が本体表面よりも奥まった位置にある表面構造の電子部品も現れてきている。
そのため、このような電子部品に対応できるよう、異方導電性部材における導通路もその外径(太さ)をより小さくし、かつ、狭ピッチで配列させる必要が生じている。
しかしながら、上記特許文献1〜4等に記載されている異方導電性フイルムや電気的接続部材を製造する方法では、導通路のサイズを小さくすることは非常に困難であり、狭ピッチに対応した導電部材を高密度で充填させる方法が期待されている。
【0010】
【特許文献1】特開2000−012619号公報
【特許文献2】特開2005−085634号公報
【特許文献3】特開2002−134570号公報
【特許文献4】特開平03−182081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、異方性導電膜を接合させる配線基板である、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、インジウムがドープされたスズ酸化物(以下ITOという)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、Pd(パラジウム)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)、等の素材に接合された、異方導電性接合パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、上記接合の温度、荷重、時間を制御することにより、導電性の信頼性に優れた異方導電性接合パッケージを開発することができた。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、インジウムがドープされたスズ酸化物(以下ITOという)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、Pd(パラジウム)、ベリリウム(Be)、およびレニウム(Re)からなる群から選択される少なくとも1つの導電素材に異方性導電膜を接合したパッケージであって、
該異方性導電膜は、絶縁性基材中に、導電性部材からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で前記絶縁性基材を厚み方向に貫通し、かつ、前記各導通路の一端が前記絶縁性基材の一方の面において露出し、前記各導通路の他端が前記絶縁性基材の他方の面において露出した状態で設けられ、
前記導通路の密度が300万個/mm2以上であり、前記絶縁性基材がマイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜からなる構造体であり、
前記マイクロポアが深さ方向に対して分岐構造をもたないことを特徴とする異方導電性接合パッケージ。
(2)前記異方性導電膜が、マイクロポア中に導電性部材を充填した領域と導電性部材を充填していない領域とをパターン化した異方性導電膜である(1)に記載の異方導電性接合パッケージ。
(3)前記絶縁性基材の厚みが1〜1000μmであり、前記導通路の直径が5〜500nmである、(1)または(2)に記載の異方導電性接合パッケージ。
(4)前記導電素材が、前記異方性導電膜を介して2層であり、2層の導電素材の間の異方性導電膜を含む層に接着性組成物が充填される(1)〜(3)のいずれかに記載の異方導電性接合パッケージ。
(5)前記導電素材と前記異方性導電膜とが、それぞれ2層以上交互に積層され、各導電素材層間の異方性導電膜を含む層に接着性組成物が充填される(1)〜(3)のいずれかに記載の異方導電性接合パッケージ。
(6)前記導電素材の少なくとも1層が、インターポーザの内部配線に電気的に接続し、インターポーザの一方の表面に配置された電極である(1)〜(5)のいずれかに記載の異方導電性接合パッケージ。
(7)前記異方性導電膜を前記導電素材と、または
該異方性導電膜を介して2層の導電素材とを
電気的に接続するように接合する(1)〜(6)のいずれかに記載の異方導電性接合パッケージの製造方法。
(8)上記接合方法が加熱圧着による接合であり、圧着温度が140℃以上800℃以下、電極単位面積当たりの圧着圧力が1MPa以上500MPa以下、圧着時間が5秒以上10分以下である(7)に記載の異方導電性接合パッケージの製造方法。
(9)前記加熱圧着接合中の雰囲気が10-1Pa以上の真空中である(7)または(8)に記載の異方導電性接合パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
以下に示すように、本発明によれば、導通路の設置密度を飛躍的に向上させ、高集積化が一層進んだ半導体素子等の電子部品の異方導電性部材または検査用コネクタ等として使用することができる異方導電性接合パッケージ、および、その製造方法を提供することができる。
【0015】
また、本発明に用いる異方性導電膜は、導電部材の密度が非常に高いことから、その接続の信頼性に優れ、かつナノオーダーの導電凸部(バンプ)が存在することから、アンカー効果並びに、接続部材への金属拡散等の影響により、より低温での圧着で信頼性の高い導電性を有する異方導電性接合パッケージの製造が可能であり、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の異方導電性接合パッケージは、導電素材に異方性導電膜を接合したパッケージである。
始めに、図3、図4および図6の図面により本発明の異方導電性接合パッケージ10の構造を説明するが、本発明はこれらの図面に記載の構造に限定されない。
【0017】
図3(A)は、本発明の異方導電性接合パッケージ10を用いたマルチチップモジュール58を示す斜視図である。図6は、図3Aと同様のマルチチップモジュール58を示す断面図である。図3(B)では、図3(A)の異方導電性接合パッケージ10を抜き出して図示する。
図6のマルチチップモジュール58は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のマルチチップモジュール58で、貫通電極基板であるICチップ53が、ベース基板56上に本発明の異方導電性接合パッケージ10を介して3層電気的に接続されている。具体的には、導電素材55である一方の電極55aと他方の電極55bとが異方性導電膜51を介して電気的に接続されて本発明の異方導電性接合パッケージ10を構成する。ベース基板56上に第一の異方導電性接合パッケージ10が設けられ、その上に第一のICチップが設けられ、その上に第二の異方導電性接合パッケージ10、第二のICチップ、第三の異方導電性接合パッケージ10、第三のICチップが設けられ、第三のICチップ上には、電極55が設けられて、これらが電気的に接続されて図6のマルチチップモジュール58が構成される。ICチップ53等の貫通電極基板は、ICチップの他に配線基板、インターポーザ等が例示できる。
【0018】
図3Aのマルチチップモジュール58は、任意の対象装置の回路基板に取り付けられて電気接続を行うためのものであって、ベース(チップ)基板56と2つのICチップ53と、本発明の異方導電性接合パッケージ10に接続されたインターポーザ50とを備えている。
チップ基板56は、プリント配線基板から構成され、プリント配線基板中の図示しない電極はICチップ53と図示しない配線で電気的に接続されている。本発明の異方導電性接合パッケージ10は、チップ基板56上に配置され、電極55bを一方の表面に有し、他方の表面に電極55aを備えている。電極55aはインターポーザ50内の内部配線と接続された電極で、電極55bの対極である。異方導電性接合パッケージ10では、電極55aと電極55bとが、それぞれ異方性導電膜51の分岐構造を持たないマイクロポア16で形成された導通路3で電気的に接続される。
【0019】
図4は、本発明の異方導電性接合パッケージ10をビアホール63を形成する代わりに用いた半導体装置65を示す断面図である。
半導体装置65は、インターポーザ75上に電極64、ICチップ53を備え、ビアホール63で他方の表面の電極55bと電気的に接続する再配線層74を備えている。
本発明の異方導電性接合パッケージ10は、再配線層74上に配置され、電極55bを一方の表面に有し、他方の表面に電極55bの対極でインターポーザ50内の内部配線と接続された電極55aを備えている。
異方導電性接合パッケージ10では、電極55aと電極55bとが、それぞれ異方性導電膜51の分岐構造を持たないマイクロポアで形成された導通路3で電気的に接続される。
このため、図示する再配線層74のように煩雑な工程でビアホール63を形成しなくても導通路3で簡易に電気的に接続することができる。
【0020】
本発明の異方導電性接合パッケージ10では、導電素材が、異方性導電膜を介して2層、または3層以上、多層であってもよく、各導電素材層間の異方性導電膜を含む層52(図6で例示すると、異方性導電膜51を介する一方の電極55aと他方の電極55b層との間、電極自身およびその層を含んでも含まなくても良い)に接着性組成物が充填されていても良く、されていなくても良い。多層に積層することにより放熱性を上げることができ装置の信頼性があがる。
【0021】
次に、本発明の異方性導電膜およびその製造方法を詳細に説明する。
本発明の異方導電性導電膜は、絶縁性基材中に、導電性部材からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で上記絶縁性基材を厚み方向に貫通し、かつ、上記各導通路の一端が上記絶縁性基材の一方の面において露出し、上記各導通路の他端が上記絶縁性基材の他方の面において露出した状態で設けられる異方性導電膜であって、
上記導通路の密度が300万個/mm2以上であり、上記絶縁性基材がマイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜からなる構造体であり、
上記マイクロポアが深さ方向に対して分岐構造を持たない異方性導電膜である。
次に、本発明の異方性導電膜51について、図1を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明の異方性導電膜の好適な実施態様の一例を示す簡略図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)の切断面線Ib−Ibからみた断面図である。
本発明の異方性導電膜51は、絶縁性基材2および導電性部材からなる複数の導通路3を備えるものである。
この導通路3は、軸線方向の長さが絶縁性基材2の厚み方向Zの長さ(厚み)以上で、かつ、密度が300万個/mm2以上となるよう互いに絶縁された状態で絶縁性基材2を貫通して設けられる。
また、この導通路3は、各導通路3の一端が絶縁性基材2の一方の面において露出し、各導通路3の他端が絶縁性基材2の他方の面において露出した状態で設けられるが、図1(B)に示すように、各導通路3の一端が絶縁性基材2の一方の面2aから突出し、各導通路3の他端が絶縁性基材2の他方の面2bから突出した状態で設けられるのが好ましい。即ち、各導通路3の両端は、絶縁性基材の主面である2aおよび2bから突出する各突出部4aおよび4bを有するのが好ましい。
更に、この導通路3は、少なくとも絶縁性基材2内の部分(以下、「基材内導通部5」ともいう。)が、異方性導電膜の絶縁性基材2の厚み方向Zと略平行(図1においては平行)となるように設けられるのが好ましい。
次に、絶縁性基材および導通路のぞれぞれについて、材料、寸法、形成方法等について説明する。
【0023】
[絶縁性基材]
本発明の異方性導電膜を構成する上記絶縁性基材は、マイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜からなる構造体であり、該マイクロポアは皮膜の深さ方向に対して分岐構造を有さない構造体である。
【0024】
従って、酸化皮膜を断面方向から観察すると、直管構造のマイクロポアのみが確認できる。従って、酸化皮膜の一方の表面の単位面積あたりのマイクロポア数Aと、他方の表面の単位面積あたりのマイクロポア数Bの比率は、A/B=0.90〜1.10が好ましく、A/B=0.95〜1.05がより好ましく、A/B=0.98〜1.02が特に好ましい。マイクロポア数はFE−SEM等で観察し拡大して数えることで得られる。
【0025】
また、アルミニウムの陽極酸化皮膜の素材であるアルミナは、従来公知の異方導電性フィルム等を構成する絶縁性基材(例えば、熱可塑性エラストマー等)と同様、電気抵抗率は1014Ω・cm程度である。
【0026】
本発明においては、上記絶縁性基材の厚み(図1(B)においては符号6で表される部分)は、1〜1000μmであるのが好ましく、30〜1000μm、50〜300μmであるのがより好ましい。絶縁性基材の厚みがこの範囲であると、絶縁性基材の取り扱い性が良好となる。
【0027】
また、本発明においては、上記絶縁性基材における上記導通路間の幅(図1(B)においては符号7で表される部分)は、10nm以上であるのが好ましく、20〜100nmであるのがより好ましく、20〜50nmであるのが更に好ましい。絶縁性基材における導通路間の幅がこの範囲であると、絶縁性基材が絶縁性の隔壁として十分に機能する。
【0028】
本発明においては、上記絶縁性基材は、例えば、アルミニウム基板を陽極酸化し、陽極酸化により生じたマイクロポアを貫通化することにより製造することができる。
ここで、陽極酸化および貫通化の処理工程については、後述する本発明の異方性導電膜の製造方法において詳述する。
【0029】
マイクロポアは、下記式(i)により定義される規則化度が50%以上である異方性導電膜が好ましい。
規則化度(%)=C/D×100 (i)
前記式(i)中、Dは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Cは、一のマイクロポアの長軸に直角方向の断面の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
【0030】
[導通路]
本発明の異方性導電膜を構成する上記導通路は導電性部材からなるものである。
上記導電性部材は、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料であれば特に限定されず、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、Pd(パラジウム)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)等が好適に例示される。
中でも、電気伝導性の観点から、銅、金、アルミニウム、ニッケルが好ましく、銅、金がより好ましい。
また、コストの観点から、導通路の上記絶縁性基材の両面から露出した面や突出した面(以下、「端面」ともいう。)の表面だけが金で形成されるのがより好ましい。
【0031】
本発明においては、上記導通路は柱状であり、その直径(図1(B)においては符号8で表される部分)は20〜400nmであるのが好ましく、40〜200nmであるのがより好ましく、50〜100nmであるのが更に好ましい。導通路の直径がこの範囲であると、電気信号を流した際に十分な応答が得ることができるため、本発明の異方導電性部材を電子部品の検査用コネクタとして、より好適に用いることができる。
【0032】
また、本発明においては、上記導通路の両端が上記絶縁性基材の両面から突出している場合、その突出した部分(図1(B)においては符号4aおよび4bで表される部分。以下、「バンプ」ともいう。)の高さは、5〜500nmであるのが好ましく、10〜200nmであるのがより好ましい。バンブの高さがこの範囲であると、電子部品の電極(パッド)部分との接合性が向上する。
【0033】
本発明においては、上記導通路は上記絶縁性基材によって互いに絶縁された状態で存在するものであるが、その密度は300万個/mm2以上であり、1000万個/mm2以上であるのが好ましく、5000万個/mm2以上であるのがより好ましく、1億個/mm2以上であるのが更に好ましい。
上記導通路の密度がこの範囲にあることにより、本発明の異方性導電膜は高集積化が一層進んだ現在においても半導体素子等の電子部品の検査用コネクタ、導電性接続部材等として使用することができる。
本発明の異方導電性接合パッケージは、上記密度の導通路を有する場合、貫通電極1個あたりの平均的な抵抗値は、50Ω以下、好ましくは10Ω以下、より好ましくは5Ω以下とすることが出来、この範囲であれば高集積化された電子部品の異方導電性部材として使用することができる。
【0034】
本発明においては、隣接する各導通路の中心間距離(図1においては符号9で表される部分。以下、「ピッチ」ともいう。)は、30〜500nmであるのが好ましく、40〜200nmであるのがより好ましく、50〜140nmであるのが更に好ましい。ピッチがこの範囲であると、導通路直径と導通路間の幅(絶縁性の隔壁厚)とのバランスがとりやすい。
【0035】
本発明においては、上記導通路は、例えば、上記絶縁性基材における貫通化したマイクロポアによる孔の内部に導電性部材である金属を充填することにより製造することができる。
ここで、金属を充填する処理工程については、後述する本発明の異方性導電膜の製造方法において詳述する。
【0036】
本発明の異方性導電膜は、上述したように、上記絶縁性基材の厚みが1〜1000μmであり、かつ、上記導通路の直径が5〜500nmであるのが、高い絶縁性を維持しつつ、かつ、高密度で導通が確認できる理由から好ましい。
【0037】
異方性導電膜は、すべてのマイクロポア中に導電性部材を充填した構造であっても良い。充填された領域と充填されていない領域がランダム混在する場合でも必要な充填されたマイクロポア数の密度があれば異方性導電膜と電極とを電気的に接合することが出来る。また、マイクロポア中に導電性部材を充填した領域と導電性部材を充填していない領域とをパターン化した異方性導電膜であってもよい。パターン化することによって不要な部分へ導電性部材を充填することが無くなりコストの低減が出来る。
【0038】
[異方導電性接合パッケージの製造方法]
本発明の異方導電性接合パッケージは、以下の製造方法で得られる異方性導電膜に、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、ITO、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、Pd(パラジウム)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)のいずれか1種または2種以上の導電素材を接合して製造される。
異方性導電膜の製造方法は、少なくとも、
アルミニウム基板を陽極酸化する陽極酸化処理工程、
上記陽極酸化処理工程の後に、上記陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して上記絶縁性基材を得る貫通化処理工程、および、
上記貫通化処理工程の後に、得られた上記絶縁性基材における貫通化した孔の内部に導電性部材である金属を充填して異方性導電膜を得る金属充填工程、を具備する異方性導電膜の製造方法である。
次に、本発明に用いられるアルミニウム基板ならびに該アルミニウム基板に施す各処理工程について詳述する。
【0039】
[アルミニウム基板]
本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
【0040】
本発明においては、アルミニウム基板のうち、後述する陽極酸化処理工程により陽極酸化皮膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であるのが好ましく、99.9質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、マイクロポアの直管性が十分となる。
【0041】
また、本発明においては、アルミニウム基板のうち後述する陽極酸化処理工程を施す表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理が施されるのが好ましい。
【0042】
<熱処理>
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。これにより、後述する陽極酸化処理工程により生成するマイクロポアの配列の規則性が向上する。
熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法が挙げられる。
【0043】
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
【0044】
脱脂処理としては、具体的には、例えば、各種アルコール(例えば、メタノール等)、各種ケトン(例えば、メチルエチルケトン等)、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法);等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない観点から、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
【0046】
また、脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
【0047】
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による粒子形成処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。アルミニウム基板の表面の凹凸としては、例えば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合における、圧延時に発生した圧延筋が挙げられる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
【0048】
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法等が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる場合、使用する研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
【0049】
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法等が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に例示される。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
【0050】
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
【0051】
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更する機械研磨を施し、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
【0052】
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRaが0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
【0053】
[陽極酸化処理工程]
陽極酸化工程は、上記アルミニウム基板に陽極酸化処理を施すことにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する工程である。
本発明の製造方法における陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、アルミニウム基板の陽極酸化皮膜のマイクロポアを分岐構造を有さない構造とするため、後述する定電圧処理を用いるのが好ましい。公知の再陽極酸化処理により、一旦陽極酸化処理した後、脱膜処理により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成しても良い。
【0054】
定電圧処理は、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を一定に制御することが必須となる。途中で電圧を変えるとマイクロポアは分岐してしまう。
【0055】
陽極酸化処理における電解液の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、マイクロポアを分岐構造を有さない構造で得ることができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
【0056】
陽極酸化処理は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。
陽極酸化処理に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.1〜20質量%、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜50時間であるのが好ましく、電解液濃度0.5〜15質量%、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度1〜10質量%、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
【0058】
陽極酸化処理の処理時間は、0.5分〜16時間であるのが好ましく、1分〜12時間であるのがより好ましく、2分〜8時間であるのが更に好ましい。
【0059】
本発明においては、このような陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜1000μmであるのが好ましく、5〜500μmであるのがより好ましく、10〜300μmであるのが更に好ましい。
【0060】
また、本発明においては、このような陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
また、マイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
ここで、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合で定義される。
【0061】
[貫通化処理工程]
貫通化処理工程は、上記陽極酸化処理工程の後に、陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して絶縁性基材を得る工程である。
貫通化処理工程としては、具体的には、例えば、陽極酸化処理工程の後に、アルミニウム基板を溶解し、陽極酸化皮膜の底部を除去する方法;上記陽極酸化処理工程の後に、アルミニウム基板およびアルミニウム基板近傍の陽極酸化皮膜を切断する方法;等が挙げられる。次に、好適態様である前者の方法について詳述する。
【0062】
<アルミニウム基板の溶解>
陽極酸化処理工程の後のアルミニウム基板の溶解は、陽極酸化皮膜(アルミナ)は溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いる。
即ち、アルミニウム溶解速度1μm/分以上、好ましくは3μm/分以上、より好ましくは5μm/分以上、および、陽極酸化皮膜溶解速度0.1nm/分以下、好ましくは0.05nm/分以下、より好ましくは0.01nm/分以下の条件を有する処理液を用いる。
具体的には、アルミよりもイオン化傾向の低い金属化合物を少なくとも1種含み、かつ、pHが4以下8以上、好ましくは3以下9以上、より好ましくは2以下10以上の処理液を使用して浸漬処理を行う。
【0063】
このような処理液としては、酸またはアルカリ水溶液をベースとし、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀、銀、パラジウム、白金、金の化合物(例えば、塩化白金酸)、これらのフッ化物、これらの塩化物等を配合したものであるのが好ましい。
中でも、酸水溶液ベースが好ましく、塩化物を混合するのが好ましい。
特に、塩酸水溶液に塩化水銀を混合した処理液(塩酸/塩化水銀)、塩酸水溶液に塩化銅を混合した処理液(塩酸/塩化銅)が、処理ラチチュードの観点から好ましい。
なお、このような処理液の組成は特に限定されず、例えば、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、王水等を用いることができる。
【0064】
また、このような処理液の酸またはアルカリ濃度は、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。
【0065】
更に、このような処理液を用いた処理温度は、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
【0066】
本発明においては、アルミニウム基板の溶解は、上記陽極酸化処理工程の後のアルミニウム基板を上述した処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましい。
【0067】
<陽極酸化皮膜の底部の除去>
アルミニウム基板を溶解した後の陽極酸化皮膜の底部の除去は、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより行う。底部の陽極酸化皮膜が除去されることにより、マイクロポアによる孔が貫通する。
【0068】
陽極酸化皮膜の底部の除去は、予めpH緩衝液に浸漬させてマイクロポアによる孔の開口側から孔内にpH緩衝液を充填した後に、開口部の逆面、即ち、陽極酸化皮膜の底部に酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させる方法により行うのが好ましい。
【0069】
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
一方、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
【0070】
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液や、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
【0071】
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
また、予めpH緩衝液に浸漬させる場合は、上述した酸/アルカリに適宜対応した緩衝液を使用する。
【0072】
この貫通化処理工程により、アルミニウム基板およびバリア層がなくなった状態の構造物、即ち、図2(A)に示される絶縁性基材20が得られる。
【0073】
[金属充填工程]
金属充填工程は、貫通化処理工程の後に、得られた絶縁性基材における貫通化した孔の内部に導電性部材である金属を充填して異方性導電膜を得る工程である。
ここで、充填する金属は、異方性導電膜の導通路を構成するものであり、本発明の異方性導電膜において説明したものである。
【0074】
本発明の製造方法においては、金属の充填方法として、電解メッキ法または無電解メッキ法を用いることができる。
ここで、着色などに用いられる従来公知の電解メッキ法では、選択的に孔中に金属を高アスペクトで析出(成長)させることは困難である。これは、析出金属が孔内で消費され一定時間以上電解を行なってもメッキが成長しないためと考えられる。
【0075】
そのため、本発明の製造方法においては、電解メッキ法により金属を充填する場合は、パルス電解または定電位電解の際に休止時間をもうける必要がある。休止時間は、10秒以上必要で、30〜60秒が好ましい。
また、電解液のかくはんを促進するため、超音波を加えることも望ましい。
更に、電解電圧は、通常20V以下であって望ましくは10V以下であるが、使用する電解液における目的金属の析出電位を予め測定し、その電位+1V以内で定電位電解を行なうことが好ましい。なお、定電位電解を行なう際には、サイクリックボルタンメトリを併用できるものが望ましく、Solartron社、BAS社、北斗電工社、IVIUM社等のポテンショスタット装置を用いることができる。
【0076】
メッキ液は、従来公知のメッキ液を用いることができる。
具体的には、銅を析出させる場合には硫酸銅水溶液が一般的に用いられるが、硫酸銅の濃度は、1〜300g/Lであるのが好ましく、100〜200g/Lであるのがより好ましい。また、電解液中に塩酸を添加すると析出を促進することができる。この場合、塩酸濃度は10〜20g/Lであるのが好ましい。
また、金を析出させる場合、テトラクロロ金の硫酸溶液を用い、交流電解でメッキを行なうのが望ましい。
【0077】
なお、無電解メッキ法では、アスペクトの高いマイクロポアからなる孔中に金属を完全に充填には長時間を要するので、本発明の製造方法においては、電解メッキ法により金属を充填するのが望ましい。
【0078】
この金属充填工程により、図2(B)に示される異方性導電膜21が得られる。
【0079】
マイクロポア中に導電性部材を充填した領域と導電性部材を充填していない領域とをパターン化した異方性導電膜の製造方法は、無電解メッキ、電解メッキ法においてマスクを用いてパターン化する、メッキ用の電極をパターン化する、またはメッキする必要の無いマイクロポア表面を樹脂等でふさぐ等の方法を用いることができる。
【0080】
[表面平滑化処理]
本発明の製造方法においては、上記金属充填工程の後に、化学機械研磨処理によって表面および裏面を平滑化する表面平滑処理工程を具備するのが好ましい。
化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことにより、金属を充填させた後の表面および裏面の平滑化と表面に付着した余分な金属を除去することができる。
CMP処理には、フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE−7000、日立化成社製のGPX HSC800、旭硝子(セイミケミカル)社製のCL−1000等のCMPスラリーを用いることができる。
なお、陽極酸化皮膜を研磨しないようにするため、層間絶縁膜やバリアメタル用のスラリーを用いるのは好ましくない。
【0081】
[トリミング処理]
本発明の製造方法においては、上記金属充填工程または上記CMP処理を施した場合は上記表面平滑処理工程の後に、トリミング処理工程を具備するのが好ましい。
トリミング処理工程は、金属充填工程またはCMP処理を施した場合は表面平滑処理工程の後に、異方性導電膜表面の絶縁性基材のみを一部除去し、導通路を突出させる工程である。トリミング処理は後に説明する接合処理の直前に行うのが導通路表面に不要な酸化皮膜を作らないので好ましい。
ここで、トリミング処理は、導通路を構成する金属を溶解しない条件であれば、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより行う。
【0082】
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
一方、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
【0083】
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液や、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。酸化皮膜溶解処理の処理条件で施すことができる。特に、溶解速度を管理しやすいリン酸を用いるのが好ましい。
このトリミング工程により、図2(C)に示される異方導電性部材21が得られる。
【0084】
本発明の製造方法においては、上記トリミング処理工程に代え、またはトリミング処理の後に、図2(B)に示される導通路3の表面にのみ、更に同一のまたは異なる導電性金属を析出させる電着処理工程を具備するものであってもよい(図2(D))。
【0085】
[保護膜形成処理]
本発明の製造方法においては、アルミナで形成された絶縁性基材が、空気中の水分との水和により、経時により孔径が変化してしまうことから、上記金属充填工程前に、保護膜形成処理を施すことが好ましい。
【0086】
保護膜としては、Zr元素および/またはSi元素を含有する無機保護膜、あるいは、水不溶性ポリマーを含有する有機保護膜が挙げられる。
【0087】
Zr元素を有する保護膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、ジルコニウム化合物が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的である。また、保護膜の強固性と安定性の観点から、リン化合物をあわせて溶解させた水溶液を用いることが好ましい。
【0088】
ここで、ジルコニウム化合物としては、具体的には、例えば、ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カルシウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド等が挙げられ、中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウムが好ましい。
また、水溶液におけるジルコニウム化合物の濃度としては、保護膜厚の均一性の観点から、0.01〜10wt%が好ましく、0.05〜5wt%がより好ましい。
【0089】
リン化合物としては、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられ、中でも、リン酸水素ナトリウムが好ましい。
また、水溶液におけるジルコニウム化合物の濃度としては、保護膜厚の均一性の観点から、0.1〜20wt%が好ましく、0.5〜10wt%がより好ましい。
【0090】
また、処理温度としては、0〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。
【0091】
一方、Si元素を有する保護膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的である。
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す。)と濃度によって保護膜厚の調節が可能である。
ここで、Mとしては、特にナトリウム、カリウムが好適に用いられる。
また、モル比は、〔SiO2〕/〔M2O〕が0.1〜5.0が好ましく、0.5〜3.0がより好ましい。
更に、SiO2の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0092】
有機保護膜としては、水不溶性ポリマーが溶解している有機溶剤に、直接浸せきしたのち、加熱処理により溶剤のみを揮発させる方法が好ましい。
水不溶性ポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等が挙げられる。
濃度としては、0.1〜50wt%が好ましく、1〜30wt%がより好ましい。
また、溶剤揮発時の加熱温度としては、30〜300℃が好ましく、50〜200℃がより好ましい。
【0093】
保護膜形成処理後において、保護膜を含めた陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜1000μmであるのが好ましく、1〜500μmであるのが更に好ましい。
【0094】
本発明の製造方法においては、得られる異方導電性部材の用途に応じて、加熱処理を施すことにより、硬度および耐ヒートサイクル性を制御することができる。
例えば、100℃以上で加熱することが好ましく、200℃以上がより好ましく、400℃以上が特に好ましい。また加熱時間としては、10秒〜24時間が好ましく、1分〜12時間がより好ましく、30分〜8時間が特に好ましい。このような加熱処理により硬度が向上し、半導体製造工程等における加熱および冷却のヒートサイクル時においても伸縮が抑制される。
【0095】
[導電素材への接合によるパッケージ化]
本発明は、上記のようにして製造した異方性導電膜を、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、ITO、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、Pd(パラジウム)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)のいずれか1種または2種以上の導電素材に接合して、パッケージ化し、異方導電性接合パッケージを製造する。
【0096】
接合方式は、特に制限されないが、接合時の導電信頼性が高い観点から、圧着接合が好ましく、加熱圧着接合がより好ましい。また、超音波接合も好ましい。
[圧着接合]
圧着荷重としては、電極単位面積当たりの圧力が1MPa以上500MPa以下である事が好ましい。より好ましくは、電極単位面積当たりの圧力が100〜500MPaである。この範囲より荷重が小さいと接続部の導電信頼性が低く、この範囲より荷重が大きいと異方性導電膜自体または/および電極の破損が生じ、それぞれ好ましくない。
また、圧着時間としては、5秒以上10分以下が好ましく、10秒以上7分以下がより好ましく、30秒以上5分以下が特に好ましい。この範囲より時間が短いと接続部の導電信頼性が低く、この範囲より時間を長くしても接合性の顕著な向上効果はなく、それぞれ好ましくない。
【0097】
また、接合を加熱圧着で行う場合には、上記の範囲に加えて温度により接合性を制御できる。圧着温度としては、140℃以上800℃以下が好ましく、160℃以上500℃以下がより好ましく、180℃以上300℃以下が特に好ましい。この範囲より温度が低いと接続部の導電信頼性が低く、この範囲より温度が高いと異方性導電膜自体の破損が生じ、それぞれ好ましくない。
【0098】
また、接合時においてその雰囲気下をより真空に近い状態で接合する方が、接合強度向上の観点から好ましい。値としては10-1Pa以下の圧力が好ましく、10-3Pa以下がより好ましく、10-5Pa以下が特に好ましい。
【0099】
[超音波接合]
接合面に中庸な圧力を加えながら並行振動を与えることにより原子拡散を誘起させ、相互金属を原子結合して接合する。接触している金属面に局部的なスリップや弾性変形、塑性変形が起こり温度上昇するが溶接中溶融することは無い。通常接合する金属融点の35%〜50%である。溶接前の金属表面には酸化皮膜や汚れが付着しているが、初期の振動によりそれらは破壊、飛散して清浄な面同士が接触し、更に振動が継続すると原子拡散を惹起する。ウェッジリード方式、またはラテラルドライブ方式を用いることができる。
【0100】
[導電素材の具体例]
導電素材の具体例は例えば電極であり、電極はどのような部材に形成されるものでもよいが、本発明の異方性導電膜の、一方の表面と他方の表面に接合され、さらにこの電極が、インターポーザ内の内部配線と接続された電極であるのが好ましい。
インターポーザは変換基板、再配線基板とも呼ばれ、基板内の内部配線によってその表面に接続される外部電極の配置に応じて電極の配置を任意に設計できる。電極以外のインターポーザの部材は、シリコンウエハ、GaN基板等の無機化合物、ガラス繊維含浸・エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の各種プラスチックで製造できる。電極部分は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、ITO、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、Pd(パラジウム)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)のいずれか1種または2種以上、等で製造できる。
【0101】
インターポーザは本発明の異方導電性接合パッケージの一方の面に接合されていてもよいが、異方導電性接合パッケージを中間層として上下2層に接合されるのが好ましい。
図5は、インターポーザを上下2層に有する本発明の異方導電性接合パッケージの断面図を示す。図5(A)は、インターポーザ50、75の間に異方性導電膜51の一方の表面に電極55aを接合し、他方の表面に電極55bを接合した本発明の異方導電性接合パッケージ10を示す。図5(B)は、図5(A)の2層のインターポーザの間の異方性導電膜を含む層に接着性樹脂組成物であるアンダーフィル80が充填されている異方導電性接合パッケージ10を示す。
【0102】
[接着性組成物]
接着性組成物としては、市販のものが使用でき、例えば、通称:アンダーフィル材(液体)、NCP(ペースト状)、NCF(フィルム状)と呼称された半導体用の接着剤が好ましい。これらの接着性組成物は線膨張係数が基板に合うように調整されており、基板との繰り返し熱応力による剥離が発生し難いので好ましい。
具体的な商品名の例:
日立化成工業(株)製 商品名 液状封止材 型番:CEL-C-3900
ナガセケムテックス(株)製 商品名 Flip Chip封止用非導電フィルム(NCF)型番:T693/R6000 series
ナガセケムテックス(株)製 Flip Chip圧接用非導電ペースト(NCP)型番:T693/UFR series
ナガセケムテックス(株)製 Flip Chip液状サイドフィル用アンダーフィル剤T693/R3000 series
スリーボンド(株)製アンダーフィル剤 商品名ThreeBond 型番:2202、2274、2274B
図5(C)は、図5(A)の電極55aと55bとがそれぞれ異種金属で形成されている接合部材(異方導電性接合パッケージ)を示す。
電極55aと55bとの配置は同一であっても異なる配置であっても良いが、本発明の異方性導電膜が膜の厚さ方向に導通路を300万個/mm2以上で有するので、電気的に接続したい電極55aと55bの水平位置の少なくとも一部が重なっており、逆に電気的に接続してはいけない電極同士の水平位置が十分離れていることが必要である。
【0103】
図7に示す本発明の異方導電性接合パッケージ10は、第一のピッチである通常ピッチ型貫通電極を有するICチップ53aと、第二のピッチである狭ピッチ型貫通電極を有するICチップ53bとを電気的に接続する際に用いるものを説明する斜視図である。異方性導電膜51は、第二のピッチである狭ピッチ型貫通電極に対応する位置にパターン化された導通路3を有し、一方の表面にB面電極パターン55bを有する。B面電極パターンは、狭ピッチ型貫通電極を有するICチップ53bの表面の電極パターンであっても良いが、図7にB面電極パターン55bとして図示するように通常ピッチ型電極と狭ピッチ型貫通電極との両方に対応する位置に電極を有していても良い。一方A面電極パターン55aは、B面電極パターン中の通常ピッチ型電極と狭ピッチ型貫通電極とがそれぞれ対応する組として配線パターンで電極間が電気的に繋がれている構成である。この構成の異方導電性接合パッケージ10を用いれば、異方性導電膜51は、マイクロポア中に導電性部材を充填した領域と導電性部材を充填していない領域とがパターン化されていて、さらに、A面電極パターン55aがピッチの異なる貫通電極間をつなぐ配線を有しているので、ピッチの異なる、例えばICチップ53a、53b等の素子を容易に電気的に接続して積層する事もできる。
【0104】
本発明の異方導電性接合パッケージは、特に、商品に価格表示や日付表示などを表示する表示ラベルのように、所定径および所定幅の巻き芯71に巻き取られたテープ(台紙)72の外側面に、所定寸法の異方導電性接合パッケージ10を貼り付けた状態で供給することができる(図8参照)。
また、異方導電性接合パッケージはテープに貼り付けられているが、テープの材質は、異方導電性部材を剥した際に接着剤が異方導電性部材表面に残らないものであるのが好ましい。
この供給形態では、ユーザは、テープに貼り付けられた異方導電性接合パッケージを1枚ずつ剥がして使用することができる。
【0105】
また、本発明の異方導電性接合パッケージは、引き出し型の収納箱81の中に、所定寸法の異方導電性部材10を立てて並べて収納した状態で供給することができる(図9参照)。
また、収納箱の内部では、隣接する異方導電性接合パッケージ同士が接触するため、両者の間に緩衝材を挿入したり、個々の異方導電性接合パッケージを袋詰めするなど、隣接する異方導電性接合パッケージ同士が接触しないように収納することが望ましい。
この供給形態では、ユーザは、収納箱に収納された異方導電性接合パッケージを1枚ずつ取り出して使用することができる。
【0106】
また、本発明の異方導電性接合パッケージ10は、半導体装置の供給形態のように、製造現場で多数の異方導電性接合パッケージを例えばインターポーザ2層で上下を挟んだ状態でシリコン基板上に直接製造し、半導体チップのウェハレベルチップサイズパッケージ(Wafer Level Chip Size Package)と同様、これを使用する半導体装置の寸法と略同一寸法に切断して使用できるように、あらかじめ切れ目83を入れておくのが望ましい。(図10参照)。異方導電性接合パッケージは、この供給形態では、ユーザは、切れ目に沿って切断して個々に分割した後、異方導電性接合パッケージを使用することができる。
【実施例】
【0107】
(実施例1〜17、比較例1〜4)
(A)鏡面仕上げ処理(電解研磨処理)
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットし、以下の組成の電解研磨液を用い、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
【0108】
(電解研磨液組成)
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
【0109】
(B)陽極酸化処理工程
次いで、電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.20mol/L硫酸の電解液で、電圧20V、液温度10℃、液流速3.0m/minの条件で、12時間の陽極酸化処理を施した。
なお、陽極酸化処理は、いずれも陰極はステンレス電極とし、電源はGP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置にはNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置にはペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。更に、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。得られたマイクロポアの規則化度は65%であった。
【0110】
(C)貫通化処理工程
次いで、20質量%塩化水銀水溶液(昇汞)に20℃、3時間浸漬させることによりアルミニウム基板を溶解し、更に、5質量%リン酸に30℃、30分間浸漬させることにより陽極酸化皮膜の底部を除去し、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体(絶縁性基材)を作製した。
【0111】
(D)加熱処理
次いで、上記で得られた構造体に、温度400℃で1時間の加熱処理を施した。
【0112】
(E)金属充填処理工程
次いで、上記加熱処理後の構造体の一方の表面に銅電極を密着させ、該銅電極を陰極にし、白金を正極にして電解メッキを行なった。
硫酸銅/硫酸/塩酸=200/50/15(g/L)の混合溶液を25℃に保った状態で電解液として使用し、定電圧パルス電解を実施することにより、マイクロポアからなる孔に銅が充填された構造体(異方導電性部材)を製造した。
ここで、定電圧パルス電解は、山本鍍金社製のメッキ装置を用い、北斗電工社製の電源(HZ−3000)を用い、メッキ液中でサイクリックボルタンメトリを行なって析出電位を確認した後、皮膜側の電位を−2Vに設定して行った。また、定電圧パルス電解のパルス波形は矩形波であった。具体的には、電解の総処理時間が300秒になるように、1回の電解時間が60秒の電解処理を、各電解処理の間に40秒の休止時間を設けて5回施した。
銅を充填した後の表面をFE−SEMで観察すると、陽極酸化皮膜の表面から一部あふれるような形になっていた。
【0113】
(F)表面平滑化処理工程
次いで、銅が充填された構造体の表面および裏面に、CMP処理を施した。
CMPスラリーとしては、フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE−7000を用いた。
【0114】
(G)トリミング処理
次いで、CMP処理後の構造体をリン酸溶液に浸漬し、陽極酸化皮膜を選択的に溶解することで、導通路である銅の円柱を突出させた。
リン酸溶液は、上記貫通化処理と同じ液を使い、処理時間を5分とした。
【0115】
次いで、水洗し、乾燥した後に、FE−SEMで観察した。
その結果、導通路の突出部の高さ(バンプ高さ)が10nmであり、電極部サイズである導通路の直径が30nmであり、部材の厚みが100μmであること、および導通路は分岐構造がなく、酸化皮膜の一方の表面の単位面積あたりのマイクロポア数Aと、別表面の単位面積あたりのマイクロポア数Bの比率は、A/B=1.0であることを確認した。また、導通路の密度は、6200万個/mm2であった。
マイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体(絶縁性基材)の絶縁抵抗を構造体の面方向で測定したところ1014Ω・cm程度以上で十分な絶縁性を有していた。
【0116】
(H)接合によるパッケージ化
上記のようにして出来上がった異方性導電膜を、熱溶融樹脂(マルトー(株)製 商品名:アクアワックス)で平坦なガラスに接着し、サンプルの大きさが7cm角(サンプル面積:49cm2)になるようにダイヤモンドカッターにてカットした。40℃の温水で熱溶融樹脂を溶解除去し、大きさ7cm角の異方性導電膜を得た。
熱圧着装置 北川精機(株)製 HVHC-PRESS シリンダー面積201cm2を使って熱圧着試験をおこなった。
表示圧力とは装置に表示される油圧シリンダーの圧力[MPa]である。
実質圧力[MPa]=表示圧力[MPa]×(シリンダー面積/サンプル面積)
電極単位面積あたりの圧力[MPa]=実質圧力[MPa]×(電極総面積/サンプル面積)
製造された電極面積(配線のうち突出していて異方性導電膜と接する部分)はサンプル面積の4.2%であった。
得られた異方性導電膜に、表1記載の条件で導電素材を一方の面と他方の面とに接合し、実施例1〜15、比較例1〜4の異方導電性接合パッケージを作製した。
【0117】
(実施例16)
(A)〜(G)までの各処理を実施例1と同様に行なった後、更に、絶縁性基材(陽極酸化皮膜)表面から突出した銅を金で被覆する処理を行った。
具体的には、実施例1で得られたトリミング処理後の異方導電性部材を、金の無電解メッキ液(メルプレートAU−601、メルテックス社製)に70℃で10秒間浸漬させることにより、メッキを施した。
実施例1と同様にFE−SEMで観察すると、突出部分は丸みを帯びており、バンプ高さは20nm程度に増加していた。また、FE−SEMによる観察より、電極部サイズである導通路の直径が30nmであり、部材の厚みが100μmであること、および導通路は分岐構造がなく、酸化皮膜の一方表面の単位面積あたりのマイクロポア数Aと、別表面の単位面積あたりのマイクロポア数Bの比率は、A/B=1.0であることを確認した。
その後実施例1の(H)と同様の処理を行い、実施例16の異方導電性接合パッケージを作製した。
【0118】
(実施例17)
上記(B)陽極酸化処理工程における陽極酸化処理を0.20mol/Lシュウ酸の電解液、電圧50V、液温度20℃、液流速3.0m/minの条件に変え、上記(G)トリミング処理の処理時間を10分とした以外は、実施例1と同じ条件で処理を行い、構造体(異方導電性部材)を製造した。
実施例1と同様にFE−SEMで観察すると、バンプ高さは40nmであり、電極部サイズである導通路の直径が130nmであり、部材の厚みが90μmであることを確認した。
その後実施例1の(H)と同様の処理を行い、実施例17の異方導電性接合パッケージを作製した。
【0119】
(実施例18)
実施例17と同じ条件で処理を行い、構造体(異方性導電膜)を製造した。
厚み50μmのSiウエハに28μm角、ピッチ50μmのCuからなる貫通電極を形成し、構造体(異方性導電膜)を介して4層積層させた。
熱圧着条件:電極単位面積当たりの圧力 100MPa、温度 240℃、時間3分、真空度 10-1Paであった。得られた異方導電性接合パッケージにおける電気抵抗は、貫通電極1個当たり8Ωであった。
次に、スリーボンド製アンダーフィル剤 ThreeBond 2274Bを異方性導電膜を含む層の横からそれぞれ注入し、浸透させた。
熱硬化条件:85℃、45分間で、アンダーフィル剤を硬化した。
【0120】
(実施例19)
実施例17と同じ条件で処理を行い、構造体(異方性導電膜)を製造した。各処理を実施例17と同様に行なった後、更に、絶縁性基材(陽極酸化皮膜)表面から突出した銅をSn-Agで被覆する処理を行った。
具体的には、実施例1で得られたトリミング処理後の異方性導電膜を、Sn-Agの半田メッキ液(濃度:スズ金属イオン濃度20g/L、鉛金属イオン濃度10g/L及びアルカノールスルホン酸濃度150g/L、所定量の光沢剤を添加)を用いた。
攪拌速度(4m/分)、電流密度(1A/dm2)により、2μmの膜厚で半田メッキ処理を行った。厚み50μmのSiウエハに28μm角、ピッチ50μmのCuからなる貫通電極を形成し、構造体(異方性導電膜)を介して4層積層させた。
熱圧着条件:電極単位面積当たりの圧力 1MPa、温度 200℃、時間3分、真空度 10-1Paであった。得られた異方導電性接合パッケージにおける電気抵抗は、貫通電極1個当たり3Ωであった。
スリーボンド製アンダーフィル剤 ThreeBond 2274Bを異方性導電膜を含む層の横からそれぞれ注入し、浸透させた。
熱硬化条件:85℃、45分間で、アンダーフィル剤を硬化した。
【0121】
実施例1〜17ならびに比較例1で得られた異方性導電膜接合パッケージの配線抵抗を評価した。抵抗値が小さいほど良好であることを表す。結果を表1に示す。
配線抵抗の測定は、1個の導通部が電気的に接続していることを異方性導電膜の断面を研磨して確認できた異方性導電膜接合パッケージを用いて、直流電圧と電流とを測定して抵抗値を求め、30回の平均値を求めた。
【0122】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の異方性導電膜の好適な実施態様の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の製造方法における金属充填工程等の一例を説明する模式的な端面図である。
【図3】図3(A)は、本発明の異方導電性接合パッケージ10を用いたマルチチップモジュール58を示す斜視図である。図3(B)は、図3(A)の異方導電性接合パッケージ10を抜き出して図示する斜視図である。
【図4】本発明の異方導電性接合パッケージ10をビアホール71を形成する代わりに用いた半導体装置73を示す断面図である。
【図5】インターポーザを上下2層に有する本発明の異方導電性接合パッケージの断面図を示す。図5(A)〜図5(C)はそれぞれ異なる実施態様を示す。
【図6】本発明の異方導電性接合パッケージを用いたマルチチップモジュールを示す断面図である。
【図7】本発明の異方導電性接合パッケージの別の態様を示す斜視図である。
【図8】本発明の異方導電性接合パッケージの供給形態の一例を説明する模式図である。
【図9】本発明の異方導電性接合パッケージの供給形態の一例を説明する模式図である。
【図10】本発明の異方導電性接合パッケージの供給形態の一例を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0124】
2 絶縁性基材
3 導通路
4a,4b 突出部
5 基材内導通部
6 絶縁性基材の厚み
7 導通路間の幅
8 導通路の直径
9 導通路の中心間距離(ピッチ)
10,73 異方導電性接合パッケージ
12 アルミニウム基板
14d 陽極酸化皮膜
16、16d マイクロポア
20 絶縁性基材
21,51 異方性導電膜
50,75 インターポーザ
52 異方性導電膜を含む層
53 ICチップ
53a 通常ピッチ型貫通電極を有するICチップ
53b 狭ピッチ型貫通電極を有するICチップ
55 導電素材
65 電極
55a 電極
55b 電極
56 ベース基板(チップ基板)
58 マルチチップモジュール
63 ビアホール
64 半導体装置
71 巻き芯
72 テープ(台紙)
74 再配線層
80 アンダーフィル
81 収納箱
83 切れ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、インジウムがドープされたスズ酸化物(以下ITOという)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、Pd(パラジウム)、ベリリウム(Be)、およびレニウム(Re)からなる群から選択される少なくとも1つの導電素材に異方性導電膜を接合したパッケージであって、
該異方性導電膜は、絶縁性基材中に、導電性部材からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で前記絶縁性基材を厚み方向に貫通し、かつ、前記各導通路の一端が前記絶縁性基材の一方の面において露出し、前記各導通路の他端が前記絶縁性基材の他方の面において露出した状態で設けられ、
前記導通路の密度が300万個/mm2以上であり、前記絶縁性基材がマイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜からなる構造体であり、
前記マイクロポアが深さ方向に対して分岐構造をもたないことを特徴とする異方導電性接合パッケージ。
【請求項2】
前記異方性導電膜が、マイクロポア中に導電性部材を充填した領域と導電性部材を充填していない領域とをパターン化した異方性導電膜である請求項1に記載の異方導電性接合パッケージ。
【請求項3】
前記絶縁性基材の厚みが1〜1000μmであり、前記導通路の直径が5〜500nmである、請求項1または2に記載の異方導電性接合パッケージ。
【請求項4】
前記導電素材が、前記異方性導電膜を介して2層であり、2層の導電素材の間の異方性導電膜を含む層に接着性組成物が充填される請求項1〜3のいずれかに記載の異方導電性接合パッケージ。
【請求項5】
前記導電素材と前記異方性導電膜とが、それぞれ2層以上交互に積層され、各導電素材層間の異方性導電膜を含む層に接着性組成物が充填される請求項1〜3のいずれかに記載の異方導電性接合パッケージ。
【請求項6】
前記導電素材の少なくとも1層が、インターポーザの内部配線に電気的に接続し、インターポーザの一方の表面に配置された電極である請求項1〜5のいずれかに記載の異方導電性接合パッケージ。
【請求項7】
前記異方性導電膜を前記導電素材と、または
該異方性導電膜を介して2層の導電素材とを
電気的に接続するように接合する、
請求項1〜6のいずれかに記載の異方導電性接合パッケージの製造方法。
【請求項8】
上記接合方法が加熱圧着による接合であり、圧着温度が140℃以上800℃以下、電極単位面積当たりの圧着圧力が1MPa以上500MPa以下、圧着時間が5秒以上10分以下である、請求項7に記載の異方導電性接合パッケージの製造方法。
【請求項9】
前記加熱圧着接合中の雰囲気が10-1Pa以上の真空中である、請求項7または8に記載の異方導電性接合パッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−164095(P2009−164095A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118639(P2008−118639)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】