説明

異方性導電膜の製造方法およびその方法により製造した異方性導電膜ならびにその異方性導電膜を備える検査装置および電子機器

【課題】 電極の微細化および高密度化に対応することができ、安価な異方性導電膜を提供する。また、かかる異方性導電膜を備える検査装置および電子機器を提供する。
【解決手段】 本発明は、厚さ方向に導電性を有する異方性導電膜の製造方法であって、紫外線またはX線を用いたリソグラフィにより電気絶縁性の光反応性樹脂膜に貫通孔を形成する工程と、メッキにより貫通孔内に導電性金属を形成する工程とを備える。光反応性樹脂膜には、気泡を混入した樹脂液のシロップを塗布し、硬化して形成した多孔質樹脂膜が好適である。また、光反応性樹脂膜は、プリント配線基板上に形成する態様が好ましく、複数の異方性導電膜を形成する態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICまたはLSIなどからなる電子機器または検査装置などの電極に接触して電気的な導通を得るために使用し、厚さ方向に導電性を有する異方性導電膜とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICまたはLSIなどからなる半導体ウェハの電気的導通などを検査する際には、半導体ウェハ表面の電極パッドの高さのバラツキと検査装置のヘッド電極の高さのバラツキによる接触不良を解消するために、平坦で柔らかな異方性導電膜を電極と電極の間に挟んで行なう。異方性導電膜は、表面電極のパターンに沿って配置された導電部分において厚さ方向にのみ導電性を有する。また、電子機器においても、パッケージした集積回路をプリント配線基板に実装する際に、電極の高さのバラツキによる接触不良を解消するために異方性導電膜を使用する。異方性導電膜には、接続する電極の数に対応した導電性部分が設けられ、電子機器における電極に対応して高密度化が求められている。
【0003】
弾力性があり、低荷重で導通が得られ、導通部の大きさおよびピッチのファイン化にも適する異方性導電膜が知られている(特許文献1参照)。この膜は、ポリテトラフルオロエチレンなどの合成樹脂からなる電気絶縁性の多孔質膜を基材とし、基材の厚さ方向に貫通電極を形成したものである。多孔質膜の所定の位置に貫通孔を形成する方法は、シンクロトロン放射のX線または波長250nm以下のレーザ光の照射によるアブレーション法、あるいは超音波法などがある。超音波法は、超音波ヘッドの先端にあるロッドを多孔質膜の表面に押し付けて、超音波を加える方法であり、超音波を加えた部位では、超音波の振動エネルギにより温度が上昇し、多孔質膜が熔融し、蒸発するため、貫通孔を形成することができる。
【特許文献1】特開2004−265844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シンクロトロン放射のX線または紫外線を用いたアブレーション法により、貫通孔の大きさおよびピッチのファイン化が可能な異方性導電膜を製造することができるが、かかる方法は、スループットが低く、製造装置が高額であるため、製造コストが高い。一方、超音波法では、形成される貫通孔の口径が超音波ヘッドにおけるロッドの口径に依存し、ロッドの強度を確保するため、一般に、口径50μm以下の貫通孔の形成は困難であり、また貫通孔の精度が低い。
【0005】
本発明の課題は、電極の微細化および高密度化に対応することができ、安価な異方性導電膜を提供することにある。また、かかる異方性導電膜を備える検査装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、厚さ方向に導電性を有する異方性導電膜の製造方法であって、紫外線またはX線を用いたリソグラフィにより電気絶縁性の光反応性樹脂膜に貫通孔を形成する工程と、メッキにより貫通孔内に導電性金属を形成する工程とを備える。光反応性樹脂膜には、気泡を混入した樹脂液のシロップを塗布し、硬化して形成した多孔質樹脂膜が好適である。また、光反応性樹脂膜は、プリント配線基板上に形成する態様が好ましく、複数の異方性導電膜を形成する態様が好ましい。本発明の異方性導電膜は、かかる方法により製造され、本発明の検査装置および電子機器は、かかる異方性導電膜を備える点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法により製造する異方性導電性膜は、弾力性があり、低荷重で導通が得られ、導通部の大きさおよびピッチのファイン化に適し、製造コストも低廉である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の異方性導電膜の製造方法は、紫外線またはX線を用いたリソグラフィにより電気絶縁性の光反応性樹脂膜に貫通孔を形成する工程と、メッキにより貫通孔内に導電性金属を形成する工程とを備えることを特徴とする。光反応性樹脂膜を用いたリソグラフィにより貫通孔を形成するため、アブレーション法により貫通孔を形成する場合と比較して生産性が高く、装置コストも低廉である。また、超音波法などでは50μm以下の微細加工が困難であるが、本発明の方法によれば、口径5μmの貫通孔であっても、±1μmの精度で再現性よく形成することができる。したがって、微細口径の貫通孔を狭ピッチで形成した異方性導電膜を低コストで提供することができる。また、かかる異方性導電膜を備える検査装置および電子機器は安価であり、精度が高い。
【0009】
実施の形態1
本実施の形態の製造方法は、図1(a)に示すように、まず、導電性基板1上に光反応性樹脂膜2を形成する。導電性基板として、たとえば、銅、ニッケル、ステンレス鋼などからなる金属製基板を使用する。また、チタン、クロムなどの金属材料をスパッタリングしたシリコン基板などを用いる。
【0010】
光反応性樹脂膜は、紫外線またはX線の照射により光反応性を有し、たとえば、ポジレジストとして、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂材料を使用する。また、ネガレジストとして、マイクロケミカルコーポレーション社製SU−8なども好ましく使用することができる。また、紫外線(UV)もしくはX線に感受性を有する化学増幅型樹脂材料などを用いることができる。光反応性樹脂膜の厚さは、異方性導電膜の貫通孔内に形成する導電性金属の厚さなどに合せて任意に設定することができ、たとえば、30μm〜100μmとする。光反応性樹脂膜の形成は、窒素ガスなどの気泡を混入した樹脂液のシロップを塗布し、硬化することにより形成すると、多孔質樹脂膜が得られ、弾力性があり、誘電率の小さい異方性導電膜が得られる点で好ましい。また、同様の観点から、多孔質膜の気孔率は20%〜60%が好ましい。
【0011】
つぎに、図1(b)に示すように、光反応性樹脂膜2上にマスク3を配置し、マスク3を介してUVまたはX線4を照射し、現像する。高いアスペクト比を有する貫通孔を形成するときは、UV(波長200nm)より短波長であるX線(波長0.4nm)が好ましい。また、X線の中でも指向性の高いシンクロトロン放射のX線(以下、「SR」という。)を使用する態様がより好ましい。SRを用いると、ディープなリソグラフィが可能であり、厚さ数100μmの貫通孔をミクロンオーダの高精度で大量に形成することができる。
【0012】
マスク3は、UVまたはX線4の吸収層3aと、透光性基材3bとからなる。吸収層3aは、使用する検査装置または電子機器の電極のパターンに応じて形成する。透光性基材3bには、窒化シリコン、シリコン、ダイヤモンド、チタンなどを用いる。また、吸収層3aには、金、タングステン、タンタルなどの重金属またはその化合物などを用いる。X線4の照射により、光反応性樹脂膜2のうち、光反応性樹脂膜2aは露光されるが、光反応性樹脂膜2bは吸収層3aにより露光されない。このため、ポジ型のレジストの場合、露光により分子鎖が切断し、低分子化した部分のみが現像により除去され、図1(c)に示すような、光反応性樹脂膜2bからなる樹脂型が得られる。一方、ネガ型のレジストを使用すると、露光により高分子化して難溶性になるため、露光されなかった部分のみが現像により除去される(図示していない。)。
【0013】
つぎに、メッキ(電鋳)を行ない、図1(d)に示すように、貫通孔内に導電性金属5を堆積する。導電性基板1により給電し、電解メッキを行なうことにより、導電性基板1上に中実電極を形成することができ、中実電極であるため、0.5A以上の大きな許容電流を導通することができる。金属材料としては、ニッケル、銅、パラジウム、ロジウムもしくは白金またはこれらの金属を含む合金であり、たとえばスルファミン酸ニッケル浴によりニッケル層を堆積することができる。メッキを貫通孔の途中で終了し、異方性導電膜の使用に際して、光反応性樹脂膜2bの弾力性を確保する態様が好ましい。
【0014】
メッキ後、必要に応じて、研磨または研削により所定の厚さに揃え、つぎに、図1(e)に示すように、酸もしくはアルカリによりウェットエッチングし、または機械加工により導電性基板1を除去すると、本発明の異方性導電膜を得ることができる。この異方性導電膜8は、電気絶縁性の樹脂膜内に貫通孔を有し、貫通孔内に導電性金属5が形成されているため、厚さ方向にのみ導電性を有する。
【0015】
導電性金属の形成後、その表面にコート層を形成することができる。たとえば、ニッケルもしくは銅またはこれらの金属を含む合金をベースとし、パラジウム、ロジウムもしくは白金またはこれらの金属を含む合金製のコート層を形成すると、電気的導通性が高まる点で好ましい。コーティングは、メッキ、スパッタリングまたは蒸着などにより行ない、たとえば厚さ0.05μm〜1μmのコート層を形成する。
【0016】
図1(a)において、導電性基板1の代りに、プリント配線基板を使用し、光反応性樹脂膜をプリント配線基板上に直接形成することができる。プリント配線基板を使用する場合は、異方性導電膜における貫通孔内の導電性金属5が、プリント配線基板上の電極の位置に形成されるように、マスク3のパターニングを調製すると、プリント配線基板の電極をメッキ電極として、貫通孔内に導電性金属を形成することができる。また、プリント配線基板上の所定の位置に異方性導電膜が形成されるため、図1(e)に示すように、導電性基板を除去する必要がない点で工程を短縮することができる。液状のレジストを使用し、レジストをプリント配線基板上に塗布し、乾燥することにより、光反応性樹脂膜を形成することができる((図1(a))。
【0017】
また、上記と同様の方法により、複数の異方性導電膜を積層することができ、たとえば、下層の異方性導電膜に形成する貫通孔の口径を5μmとし、上層の異方性導電膜に形成する貫通孔の口径を10μmとし、下層の貫通孔と上層の貫通孔との位置を合わせることにより、異方性導電膜を介して、口径5μmの電極を有する基板と、口径10μmの電極を有する基板とを接続することができる。
【0018】
実施の形態2
本実施の形態においては、異方性導電膜の貫通孔内に、導電性金属からなる中空電極をメッキにより形成する。なお、実施の形態1と重複する材料については同様の材料を同様の態様で使用することができる。本例では、プリント配線基板を使用し、図2(a)に示すように、まず、プリント配線基板21上に光反応性樹脂膜22を形成し、光反応性樹脂膜22上に、光反応性樹脂膜22と同様の材質からなる犠牲層26aを形成する。本実施の形態では、プリント配線基板21を使用するため、犠牲層26bを形成するが、プリント配線基板21の代わりに、通常の基板を使用することも可能であり、そのような態様においては、基板が犠牲層の機能を発揮するため、犠牲層26bは不要である。
【0019】
つぎに、図2(b)に示すように、マスク23を介して紫外線またはX線24を照射し、露光後、現像すると、図2(c)に示すような貫通孔を有する構造体が得られる。本実施の形態では、光反応性樹脂膜22としてポジレジストを使用する態様を例示する。その後、貫通孔の壁面を含む構造体の全表面に還元反応を促進する触媒粒子を付着させる。たとえば、無電解銅メッキをする場合には、触媒としてPd−Snコロイド触媒付与液を使用する。
【0020】
つぎに、図2(d)に示すように、犠牲層26a1、26bを剥離する。犠牲層の剥離により、無電解メッキを促進する触媒粒子が、貫通孔の内壁にのみ形成されている状態になる。その後、無電解メッキを行なう。無電解メッキにより、貫通孔の内壁にのみ導電性金属25が形成され、図2(e)に示すような異方性導電膜28が得られる。貫通孔の内壁は多孔質であり、無電解メッキ法により導電性金属が内壁面に析出する。
【0021】
異方性導電膜28は、プリント配線基板21を備え、貫通孔内であって、プリント配線基板の電極21a上に、導電性金属25からなる中空電極を有する。異方性導電膜28を厚さ方向に圧縮すると、導電性金属25が互いに接続して導電性を示す。圧力を除去すると、多孔質樹脂膜22aの弾力性により元の形状に復元する。したがって、検査装置または電子機器に接続すると、厚さ方向に導電性を示すとともに弾力性を有する。また、異方性導電膜が弾力性を有するため、接続する検査装置または電子機器の電極の高さのバラツキを吸収し、信頼性の高い安定した電気的接続を確保することができる。
【0022】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
高精度で微細な導電部を有する安価な検査装置および電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態における異方性導電膜の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態における異方性導電膜の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0025】
1 導電性基板、2,22 光反応性樹脂膜、3,23 マスク、4,24 X線、5,25 導電性金属、8,28 異方性導電膜、21 プリント配線基板、26a,26b 犠牲層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に導電性を有する異方性導電膜の製造方法であって、
紫外線またはX線を用いたリソグラフィにより電気絶縁性の光反応性樹脂膜に貫通孔を形成する工程と、
メッキにより前記貫通孔内に導電性金属を形成する工程と
を備える異方性導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記光反応性樹脂膜は、気泡を混入した樹脂液のシロップを塗布し、硬化して形成した多孔質樹脂膜である請求項1に記載の異方性導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記光反応性樹脂膜は、プリント配線基板上に形成する請求項1に記載の異方性導電膜の製造方法。
【請求項4】
複数の異方性導電膜を形成する請求項1に記載の異方性導電膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの方法により製造した異方性導電膜。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの方法により製造した異方性導電膜を備える検査装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかの方法により製造した異方性導電膜を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−216369(P2006−216369A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27728(P2005−27728)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】