異方性磁性材料の製造方法および異方性磁性材料
【課題】磁性粒子の配向を制御したバルク体を得ることが可能である異方性磁性材料の製造方法を提供する。
【解決手段】反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程と、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体へ変態させる反応工程と、を含むことを特徴とする異方性磁性材料の製造方法。
【解決手段】反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程と、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体へ変態させる反応工程と、を含むことを特徴とする異方性磁性材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異方性磁性材料の新規な製造方法および異方性磁性材料に関し、さらに詳しくは弱磁性材料を出発材料として該弱磁性材料に外場を付与して配向させる工程と配向状態にある材料を磁性体へ変態させる反応工程とを組み合わせることによって、配向した磁性バルク体を得ることが可能である異方性磁性材料の製造方法および異方性磁性材料に関する。なお、弱磁性とは磁性を担う電子スピン間の相互作用が弱く、スピンの自発的配向がない場合の弱い磁性をいい、強磁性に対する語である。具体的には常磁性または反磁性をいう。
【背景技術】
【0002】
従来、異方性磁石は、磁性材料である磁石原料を溶解・鋳造して得られたインゴットを粉砕して微粒化し、その微粒子を磁場中で成形し、次いで焼結により製造している。この場合、配向は固相で行われるため微粒子の配向自由度が小さく、十分な配向は不可能である。また、微粒化が粉砕により行われるため、得られる微粒子は高性能磁石として期待される粒子サイズを小さくしたナノコンポジット磁石を与えるナノ粒子を得ることが困難である。また、粉砕工程が必須であり、機械的接触により不純物が混入する可能性が高い。さらに、高性能磁石として知られるNd2Fe14B系磁石のような酸素を含まない磁石の場合は、製造工程において酸化などによって入ってくる酸素等の不純物を除去することが必要である。一方、配向制御が可能であるボンド磁石では、樹脂を含んでいるため耐熱性が著しく低下してしまう。
【0003】
一方、磁性材料の配向制御技術として、磁場中で製膜する磁気テープの製造方法が知られている。この技術はベースフィルムに磁性微粒子を塗布した後に磁場配向するものであり、得られる異方性磁性材料は膜厚がミクロンオーダーの薄膜に限定され、この技術を用いてバルク体を得ることは不可能である。つまり、前記の磁性微粒子を磁場中で製膜して得られた磁性材料をバルク化して磁気テープ以外の用途、例えば、磁気ヘッド、高周波用トランス、モータなどに使用することはできない。
また、この磁性微粒子塗布―磁場配向による配向制御技術とは別に、磁気テープにおけるナノ粒子の配向を向上させる改良技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、酸素を含むバルク体用の磁性材料としては、酸化鉄が知られており(非特許文献1)、また軟磁性材料の代表例としてソフトフェライトが挙げられ、高比磁化率と低保磁力(HC)が求められる用途では式:MFe2O4(M:MnおよびZn)で示されるMnZnフェライト、高透磁率が求められる用途ではパーマロイ(78.5Ni+Fe)あるいはスーパーマロイ(5Mo+79Ni+Fe)などが使用されている。これら酸化鉄およびフェライトについても配向を制御したバルク体は知られていない。また、これらのMn、Zn、Mo、NiなどのFe以外の金属は、地球上の可採レベルの高い元素を数値化したクラーク数の比較的小さい元素(例えば、各元素のクラーク数、Fe:4.70、Mn:0.09、Zn:0.004、Mo:0.0013、Ni:0.01)である。
【0005】
他方、近年、弱磁性セラミックス粒子を磁場などの外場中で配向制御してバルク体を製造する技術が開発されている。
例えば、磁場中鋳込み成形技術として「配向性セラミックス焼結体およびその製造方法」(特許文献2)が、磁場配向電気泳動堆積技術として「単結晶粒子が配向されたセラミックス高次構造体の製造方法」(特許文献3)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−134040号公報
【特許文献2】特開2002−193672号公報
【特許文献3】特開2004−131363号公報
【非特許文献1】防食技術、32、657−667(1983年)
【0007】
前記特開2004−134040号公報に記載の改良技術によれば、熱処理と磁場配向によってL10−FePtCu又はL10−FePt結晶粒を低融点金属酸化物又は低融点金属マトリックス中に完全c軸配向させたナノ粒子磁気記録媒体が得られる。
しかし、ここに具体的に記載されているナノ粒子はスパッタリング法によって形成された薄膜であり、この改良技術によってもバルク体を得ることは不可能である。
【0008】
前記特開2002−193672号公報には、等軸晶ではない結晶構造を持つ非強磁性体粉末をスラリーに分散し、そのスラリーを磁場中で成形し、成形体を焼結する配向性セラミック焼結体およびその製造方法が記載されている。
また、前記特開2004−131363号公報には、溶媒中に帯電、分散させたセラミックス単結晶粒子サスペンションに強磁場を印加することにより、その結晶磁気異方性を利用して個々の粒子を配向させ、その配向状態のサスペンションに電場を印加して、帯電・配向セラミックス粒子を堆積させて単結晶粒子の方位や層厚が高度に制御されたセラミックス構造体を得る、単結晶粒子が配向されたセラミックス高次構造体の製造方法が記載されている。
これらの成形技術によれば、具体例としては結晶子が一定方向に配向したセラミック焼結体であるバルク体が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、磁性粒子が一定方向に高配向したバルク構造体およびその製造方法は知られていない。
このため、セラミックス粒子のバルク体を与える配向制御技術を前記の磁性ナノ粒子に適用して磁性ナノ粒子からバルク体を形成するために、前記公報に記載のようにスラリー状の磁性ナノ粒子を磁場配向させることが考えられるが、磁場中で磁性ナノ粒子を配向制御しようとすると磁場中で磁性ナノ粒子間の磁気的相互作用が大きくなるため磁性ナノ粒子が凝集しやすく、配向制御されたバルク体を得ることは困難である。
【0010】
つまり、従来公知の技術を組み合わせたのでは、磁性粒子の配向を制御したバルク体を得ることはできなかったのである。
従って、この発明の目的は、磁性粒子の配向を制御したバルク体を得ることが可能である異方性磁性材料の製造方法および前記特性を有する異方性磁性材料を提供することである。
また、この発明の他の目的は、金属として地球上の可採レベルの高い元素(クラーク数の大きい元素)を使用して、又は少なくともクラーク数の小さい金属元素の使用量を低下させて磁性粒子の配向を制御したバルク体を得ることが可能である異方性磁性材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程と、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体へ変態させる反応工程と、を含むことを特徴とする異方性磁性材料の製造方法、およびそれによって得られる異方性磁性材料に関する。
また、この発明は、磁性粒子がバルク化された磁性体であって、該磁性体の3方向のうち2方向が等方性で1方向が異方性であり、且つ異方性度が1.2以上である異方性磁性材料に関する。
【0012】
この発明における異方性磁性材料における異方性とは、後述の実施例の欄に詳細に説明される方法によって測定される成形体の磁気特性を示すVSM測定によるMH曲線における磁化容易軸方向の曲線と磁化困難軸方向の曲線とから求められる異方性度が1.2以上であることを意味する。
【0013】
また、この発明においてトポタクチック(変態)反応とは、出発物質の形状(例えば、粒子の配向など)を維持したまま、生成物(得たい物質)に変化させる反応である。このトポタクチック(変態)反応自体は公知の反応であり、セラミックの配向性付与等に利用する例が知られている。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、磁性粒子、例えば含酸素磁性粒子の配向を制御したバルク体である異方性磁性材料を得ることができる。
また、この発明によれば、金属成分としてクラーク数の大きい金属、例えばFeのみを使用して磁性粒子の配向を制御したバルク体である異方性磁性材料、例えば含酸素異方性磁性材料を得ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明における好適な態様を次に示す。
1)前記配向状態にある材料又は前記磁性体が、バルク成形体に成形可能である前記の異方性磁性材料の製造方法。
2)前記反応が、トポタクチック(変態)反応である前記の異方性磁性材料の製造方法。
3)前記材料がα−FeOOHであり、前記磁性材料がα−Fe2O3である前記の異方性磁性材料の製造方法。
【0016】
この発明においては、反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程と、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体へ変態させる反応工程とを組み合わせることが必須である。出発材料として磁性体に変態しない材料に外部磁場を加えて配向させた後、トポタクチック(変態)反応を適用しても、また出発材料が磁性体に変態する材料であってもその材料に外部磁場を付与することで配向させないと、最終的に配向したバルク構造体である磁性材料を得ることはできない。
【0017】
以下、この発明について、この発明の1実施態様のナノ材料の配向・配列制御によるバルク化のモデル図である図1を用いて説明する。
図1において、反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程である工程Aと、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程である工程Bよって、配列制御された弱磁性材料のバルク体を得る。
【0018】
この発明においては、図1の工程Aに示すように、先ず反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する。図1には明示されていないが、材料は通常は容器中に分散されて用意される。
前記の磁性体および材料としては、磁性体は単一金属を含むものであってもよく又は2種類以上の金属を含むものであってもよいが、単一金属を含む場合の物質としてはFe2O3、Fe3O4などの酸化鉄、CoO、CoO2などの酸化コバルト、2種類以上の金属を含む場合の物質として、例えば、Fe2 O3 にMnO、ZnO、NiO、MgO、CuO、Li2 O等を組み合わせたフェライト、例えばNiO−MnO−ZnO−Fe2 O3 、MnO−ZnO−Fe2 O3 、NiO−ZnO−Fe2 O3 等のスピネル型フェライト、ガーネット型フェライト、スピネル型(立方晶)のγ−Fe2 O3 、γ−Fe3 O4 等を挙げることができる。なかでも、好適にはα−Fe2O3、Fe3O4、γ−Fe2O3など、特にα−Fe2O3が挙げられる。また、磁性材料は単一形状のものであってもよいが、2種類以上の形状のものであってよい。
【0019】
前記の材料物質としては、前記の磁性体が酸化鉄あるいは酸化コバルトである場合にはFeOOH、Fe(OH)3や、Co(OH)2などが挙げられ、好適にはFeOOHが挙げられる。また磁性体がフェライトである場合は前記鉄成分以外の金属酸化物を与える出発物質としてはそれら金属の水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩などが挙げられる。前記の材料は、外部磁場により配向可能であるために結晶磁気異方性を有することが必須である。形状は任意の形状でよい。
【0020】
この発明の好適な態様である出発原料が鉄系化合物である場合、図2に示すように、前記の防食技術(非特許文献1)に示す鉄の酸化物―水酸化物系の構造変態図が知られている。
この変態図に示すように、以下の式で示される弱磁性材料のゲーサイト:α−FeOOHを出発物質とし、脱水工程によって磁性材料であるヘマタイト:α−Fe2O3を得ることができる。
【0021】
【化1】
【0022】
得られたα−Fe2O3から、引き続いて以下の式に示す還元・酸化の工程によって強磁性材料であるγ−Fe2O3を得ることができる。
【0023】
【化2】
【0024】
この発明における材料から磁性体への変態の例として、特に材料としてのゲーサイト:α−FeOOHから弱い強磁性材料であるヘマタイト:α−Fe2O3へ、材料としてのレピッドクロサイト:γ−FeOOHから強磁性材料であるマグヘマイト:γ−Fe2O3への変態を好適に挙げることができる。
また、この発明においては、前述の鉄以外の金属を含む磁性材料を与える材料を出発材料として用いることができる。
【0025】
この発明においては、材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体に変態させる反応工程とを組み合わせることが必要であり、材料から磁性体への変態工程のみでは配向した磁性バルク体を得ることができない。
このため、外部磁場によって材料が容易に回転して配向し得る条件を選択することが必要となる。
前記の条件を満足させるために、材料としてのナノ粒子を分散させた溶媒混合物であるスラリーによって液相中での配向制御工程を用意することができる。
【0026】
前記の溶媒混合物の溶媒としては、粒子と反応しない溶媒であれば水または非水溶媒で特に制限はなく、通常は安定したスラリーの調製しやすさから水、メタノール、エタノール、水/メタノール混合液、水/エタノール混合液、好適には水を用いる。
前記の材料を分散させた溶媒混合物スラリー中の固相の割合としては高分散スラリーの得られる範囲であれば特に制限はないが、溶媒混合物全量中の固相の割合が5〜50質量%、特に10〜50質量%程度であることが好ましい。
また、前記の材料を分散させた溶媒混合物スラリー中には、粒子間の凝集を防止するため界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0027】
前記の界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤の多種にわたるものが適用できる。
前記の材料、溶媒および界面活性剤を含む溶媒混合物によって均一なスラリーを形成することが好ましい。
【0028】
この発明においては、前記の材料、好適には前記のスラリー中の材料に、前記図1の工程Bに示すように、外部磁場を付与することで材料の構成材料を配向させる。
この配向工程を、この工程の1実施態様により外部磁場の印加方向が重力方向(重力に平行な方向)である磁場中でスリップキャストしたゲーサイト成形体の例で説明する。
図3は出発原料として用いたゲーサイト粒子のTEM像を示し、図4において、左図は磁場を加えて配向させた容器中のゲーサイト成形体を示し、右図は容器から取り出したゲーサイト成形体を示す。
図4に示すように、この発明の前記の工程によって肉厚のゲーサイト成形体を得ることができる。
【0029】
前記の図4に示すように、材料は容器中に用意される。容器としては、外部磁場によって影響を受けない物質から形成されているものであれば特に制限はなく、例えば樹脂製、セラミック製又はガラス製の容器が挙げられる。
【0030】
この発明においては、材料に外部磁場を付与することで材料の構成材料を配向させることが必要であり、そのため、例えば容器中の材料を含む溶媒混合物に外部磁場を加えて配向させた、配向した材料を堆積、バルク化して配向成形体として取得する必要がある。
前記の材料の構成材料を配向させた配向成形体として取得する方法としては、外場を加えつつ材料の配向と堆積、バルク化を同時に行う方法が好ましく、このような条件を満足できる方法としては、例えば外部磁場を加えつつスリップキャストや電気泳動などによって堆積、バルク化を行う方法を挙げることができる。
【0031】
この発明の方法において、外部磁場を加えつつ材料の配向と堆積、バルク化を同時に行う場合、磁場と堆積、バルク化手段としてのスリップキャストとの組合せが簡便であり好適である。
このため、例えば、溶媒を分離可能な容器を使用し、磁場によって配向させた材料を含む溶媒混合物から材料の堆積、バルク化を達成することによって、材料の配向成形体を得ることが好ましい。
前記の材料の配向成形体は、外部から力を加えない限り形状保持性を有するが比較的脆いバルク体であって、ナイフやカッターなどによって切断して容易に所望の形状のバルク成形体に成形することができる。
【0032】
この発明の好適な態様において、材料を含む溶媒混合物であるスラリー中の溶媒は、スラリーを設置している溶媒を分離可能な容器によって吸収される。この時の吸収速度は大きすぎては非磁性材料粒子の配向度を低下させ、吸収速度が小さ過ぎては固化成形時間がかかりすぎるので、適した速度となるように容器の細孔径、細孔密度を調整することが好ましい。このため、前記容器としては多孔性容器、例えば、石こうやアルミナ多孔体などの容器を用いることが好ましい。そして、多孔性容器を使用するとともに孔径の決ったフィルターを適宜選定・利用することが好ましい。また、多孔性基板上にフィルターを置き、その上にガラスまたは樹脂製の円筒容器を設置する形態とすることもできる。
【0033】
また、磁場の磁界強度が強過ぎると材料粒子同士又は粒子と磁場を与えるマグネットとの磁気的相互作用が大きくなり均一な成形体を得ることが困難となり、従ってバルク成形体に成形することが困難になる。また磁界強度が弱すぎては、材料粒子を配向させることができない。磁界強度は磁場を印加する間一定でもよく徐々に増大させてもよい。好適な磁界条件としては、均一な成形体を得ることが可能である、従ってバルク成形体に成形することが可能である条件である。磁界強度の目安としては1T以上10T未満、特に1.5T以上8T以下であることが好ましい。また、磁場を加える場合、磁界の方向については特に制限がなく任意の方向であり得るが、例えば重力の方向に対して反対方向(地面に対して垂直方向)であってもよくあるいは重力の方向に対して直角方向(地面に平行方向)であってよい。外部磁場を印加する時間は1〜24時間が目安である。
【0034】
外場として磁場を用いて、前記の材料粒子を回転・配向させる駆動力(磁化エネルギー)は次式で表される。
ΔE=ΔχVB2/2μ0
但し、Δχ:磁化率の異方性
V:体積
B:磁場強度
μ0:真空の透磁率
そして、粒子が配向するための配向条件は、下記の関係にある場合である。
ΔE>kT
kT:熱振動エネルギー
【0035】
この発明の実施態様において、前記の外場として磁場を、堆積、バルク化の方法としてのスリップキャストとを組合せて用い、さらに、前記の材料としてFeOOH粒子を使用することが好ましく、磁場の強さは1T(テスラ)以上7T未満、特に1.5〜6.5T以下であることが好ましい。
【0036】
次いで、この発明においては、配向状態にある配向成形体の材料を反応により磁性体に変態させる。
この磁性体に変態させる反応工程を、材料から磁性体に変態させる反応工程の1実施態様のゲーサイト配向体からヘマタイト配向体への変態を示すモデル図である図5を用いて説明する。
図5の左図において、針状ゲーサイト粒子は横に寝た状態である。一方、図5の右図において、焼成後のヘマタイトは板状となっている。
このゲーサイト配向体から焼成後のヘマタイト配向体への変態によって、図5に示すように粒子の形骸は失われるが、粒子の配向で示される異方性が得られる。
【0037】
この配向状態にある材料を磁性体に変態させる反応としては、例えば、加熱による脱水反応が挙げられる。
前述のように、このトポタクチック(変態)反応自体は公知の反応であるが、この発明において従来公知の技術と異なる点は、適用される材料が変態後に磁性材料を与える材料であることと、予め配向された材料に適用する点である。
【0038】
この発明における前記の材料の磁性体へ変態させる反応、例えば、加熱による脱水反応は、使用する弱磁性材料によって適宜選択することができ、例えば出発原料として材料が反磁性のα−FeOOHの場合には250〜300℃以上の温度、好適には焼結体の得られる900〜1500℃、特に粒成長により配向度が向上する1100〜1200℃で加熱することが好ましい。
前記の脱水反応は配向状態の弱磁性材料からなる配向成形体をそのまま又は切断、積層などの任意の加工法によって板材あるいは立方体などの任意の形状に成形した後、耐熱性容器、例えばアルミナなどの任意の非磁性耐熱材料製の容器中で空気の存在下に脱水が完了する温度・時間で反応を行って、配向制御バルク成形体である異方性磁性材料を得ることができる。あるいは、前記の反応後に、さらに磁性体を任意の加工法によって任意の形状に成形して配向制御バルク成形体として異方性磁性材料を得ることも可能である。
【0039】
この発明によって得られる異方性磁性材料は新規な材料であり、個々の磁性粒子である磁性ナノ粒子が配向制御され且つ各寸法(縦、横、高さ)がmmあるいはcmオーダー以上の配向制御した機械的強度の大きいバルク構造体を得ることができる。
この発明によれば、構造体についての磁気特性を示すVSM測定によるMH曲線が磁気容易軸方向と磁化困難軸方向とで異方性を示す、異方性磁性材料からなる配向制御構造体を得ることができる。
【0040】
この発明における異方性磁性材料は、後述の実施例の欄に詳細に説明されるように成形体の磁気特性を示すMH曲線における磁化容易軸方向の曲線と磁化困難軸方向の曲線とを比較して、各曲線の実質的に重なっている部分を除いた曲線で囲まれる開口部の部分(菱形の部分、例えば、図15〜22のS字曲線)について、開口部の傾斜[tan(角度)(A)][(角度)(A):開口部の両頂点を結ぶ直線の横軸(磁化=0emu/g)に対する角度を示す。]、および開口部の幅(W)のいずれかで両方の開口部間で差が大きい因子(異方性因子:AF)を用いて、下記の式で示される異方性度を求め、この値で示される異方性度が1.2以上、特に1.5以上である場合をいう。この異方性度は通常10以下程度である。
異方性度=AD1/AD0
AD1:磁化容易軸方向の曲線のAFと磁化困難軸方向の曲線のAFとを比較して大き い方の軸
AD0:磁化容易軸方向の曲線のAFと磁化困難軸方向の曲線のAFとを比較して小さ い方の軸
この発明の磁性材料は、磁性粒子がバルク化された磁性体であって、該磁性体の3方向のうち2方向が等方性で1方向が異方性であり、且つ異方性度が1.2以上、特に1.5以上10以下である異方性磁性材料である。これに対して、外場を加えないで得られる磁性材料は、前記のAD1=AD0であり、異方性度が1である。
【0041】
この発明の異方性磁性材料は、軟磁性体であればそのまま磁気ヘッドや高周波トランスなどに、あるいは水素還元、空気酸化して変態させた強磁性体として、または強磁性体であればそのまま使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、この発明の実施例を示す。
以下の各例において、材料の配向状態および磁気特性の評価を以下のようにして行った。
ゲーサイト成形体およびヘマタイト焼成体の構造を、成形体のTOP面およびSIDE面についてX線回折(XRD)により評価した。このTOPとは重力に垂直な、従って地面に平行な面を示し、SIDE面とは重力に平行な面を示す。
ヘマタイト焼成体のMH曲線を、成形体のTOP面およびSIDE面についてVSM測定(振動試料型磁力計:Vibrating Sample Magnetometer System)により、装置としてLake Shorc社製のVSM測定装置を用いて異方性を評価した。
また、弱磁性材料のゲーサイト粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)によって粒子の形状を測定した。
この実施例で用いたゲーサイト粒子のTEM像を図3に示す。
【0043】
実施例1
1.弱磁性材料を出発材料として用意する工程
チタン工業株式会社製のゲーサイト(商品名:LEMON、形状:棒状、平均長さ800nm、アスペクト比は1:5〜1:10の範囲内)16g、東亞合成株式会社製の界面活性剤(商品名:アロンA6114)0.2g、イオン交換水36gをそれぞれ秤量し、混合、超音波ホモジナイザーにより分散し、安定なスラリーを調製した。
【0044】
2.弱磁性材料の構成材料を配向させる配向工程
アルミナ多孔体の上にフィルター(メンブレンシート)を敷き、この上にガラス製円筒を設置し、円筒内に前記のゲーサイト粒子を分散させたスラリーを流し込んだ。これを超伝導マグネットの中に設置し、円筒の下から上方向への磁界(B)方向で磁界強度6Tにて磁場を加えつつ、室温(図中ではRTで表示)で一晩静置し固化させて、ゲートサイト配向成形体を得た。
このゲートサイト配向成形体のXRDを図8に示す。また、比較のために原料のゲートサイト粉末のXRDを図9に示す。
この成形体自体は切断して任意の形状に加工可能であり、脆く強い力を加えるとボロボロと崩れる。
【0045】
3.磁性体へ変態させる反応工程
前の工程で得られた固化配向成形体を空気中で焼成した。焼成温度は900℃、焼成時間は2時間で行った。この熱処理によって、ゲーサイトからヘマタイトへの構造変化が生じた。得られたヘマタイトは赤茶色をしていた。
このヘマタイト配向焼成体の写真を後述の実施例3で得られたヘマタイト配向焼成体の写真とをまとめて図7に示す(図7の左図が900℃で焼成して得られた実施例1のヘマタイト配向焼成体であり、右図が1200℃で焼成して得られた実施例3のヘマタイト配向焼成体である。)。
【0046】
4.配向構造体の評価
このヘマタイト配向焼成体から物性測定用試料、例えばVSM測定用には最終形状が2mm×2mm×2mmの立方体を切出した。得られたヘマタイト配向焼成体(配向構造体)の構造のXRD、および磁気特性をVSMにより評価した。なお、VSMによるMH曲線の3方向は下記のとおりである。
T:TOP面が磁場方向と平行で、SIDE面が磁場方向と直交(磁化容易軸方向)
T2:上記試料のTOP面の法線を軸に90°回転(磁化容易軸方向)
S:TOP面が磁場方向と垂直、SIDE面が磁場方向と平行(磁化困難軸方向)
XRDの結果を図10に、VSMの結果を図15に示す。
【0047】
図15から、開口部の形状のうち他の2つの形状と異なる異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約1.5であり、図15での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の曲線のAF/磁化困難軸方向の曲線のAF
=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約4.5mm/約3mm
=約1.5
【0048】
比較例1
磁場を加えなかった(図中では0Tで表示)他は実施例1と同様にして、ゲーサイトの成形体を得た。
このゲーサイトの成形体を用いた他は実施例1と同様にして、900℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト焼成体を得た。
得られたヘマタイト焼成体のXRDの結果を図11に示す。
図11では、磁場なしで成形しているため、焼成体に配向が見られない。
【0049】
実施例2
焼成温度を900℃から1100℃に変えた他は実施例1と同様に実施して、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体の構造のXRD、およびVSMを測定した。
XRDの結果を図12に、VSMの結果を図16に示す。
図16から、開口部の形状のうち他の2つの形状と異なる異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約2.5であり、図16での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約10mm/約4mm
=約2.5
【0050】
実施例3
焼成温度を900℃から1200℃に変えた他は実施例1と同様に実施して、ヘマタイト配向焼成体を得た。得られたヘマタイトは銀黒色をしていた。
この1200℃で焼成して得られたヘマタイト配向焼成体の写真を実施例1のヘマタイトの写真とともに図7にまとめて示す(図7の右が実施例3のヘマタイト配向焼成体であり、図7の左図が実施例1のヘマタイト配向焼成体である。)。
得られたヘマタイト配向焼成体の構造のXRD、およびVSMを測定した。
XRDの結果を図13に、VSMの結果を図17に示す。
図17から、開口部の形状の他の2つの形状と異なる異方性因子:AFはtan[開口部の角度(A)]であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約5.4であり、図17での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=tan[磁化容易軸方向の開口部の角度(A)]/tan[磁化困難軸方向 の開口部の角度(A)]
=tan約72°/tan約38°
=約5.4
【0051】
以上の実施例1〜3のヘマタイト焼成体のVSMの図面(図15、図16、図17)の観察から、TとT2とはVSMのMH曲線が同一形状であり異方性方向はSであることから、以下の実施例ではTとSのみを測定し、Sでの異方性度を求める場合がある。
【0052】
実施例4
磁界強度を6Tから2Tに変えた他は実施例1と同様にして、円筒内に前記のスラリーを流し込み、磁場中でスリップキャストした均一なゲーサイト成形体を得た。
この磁場中でスリップキャストしたゲーサイト配向成形体の1例の写真を図4に示す。
このゲーサイト配向成形体を用いた他は実施例1と同様にして、900℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体のVSMの結果を図18に示す。
図18から、開口部の形状で異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約1.5であり、図20での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約7mm/約4.6mm
=約1.5
【0053】
実施例5
磁界強度を6Tから2Tに変えた他は実施例1と同様にして、ゲーサイト配向成形体を得た。
このゲーサイト配向成形体を用いた他は実施例2と同様にして、1100℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体のVSMの結果を図19に示す。
図19から、開口部の形状で異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約2.3であり、図19での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約9mm/約4mm
=約2.3
【0054】
比較例2
磁場を加えなかった(図中では0Tで表示)他は実施例1と同様にして、ゲーサイト成形体を得た。
このゲーサイト焼成体を用いた他は実施例5と同様にして、1100℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト焼成体を得た。
得られたヘマタイト成形体のVSMの結果を図20に示す。
図20から、開口部の形状で異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約1.0であり、図20での等方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約14mm/約14mm
=約1.0
【0055】
実施例6
磁界強度を6Tから2Tに変えた他は実施例1と同様にして、ゲーサイト配向成形体を得た。
このゲーサイト配向成形体を用いた他は実施例3と同様にして、1200℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体のVSMの結果を図21に示す。
図21から、開口部の形状で異方性因子:AFはtan[開口部の角度(A)]であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約4.8であり、図21での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=tan[磁化容易軸方向の開口部の角度(A)]/tan[磁化困難軸方向
の開口部の角度(A)]
=tan約81°/tan約28°
=約4.8
【0056】
比較例3
磁場を加えなかった(図中では0Tで表示)他は実施例1と同様にして、ゲーサイト成形体を得た。
このゲーサイト成形体を用いた他は実施例6と同様にして、1200℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト焼成体を得た。
得られたヘマタイト焼成体のVSMの結果を図22に示す。
図22から、開口部の形状で異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約1.0であり、図22での等方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約4mm/約4mm
=約1.0
【0057】
実施例7
磁界の方向を縦方向(地球の重力に平行な方向)から横方向(地面に平行)に変えた他は実施例2と同様に実施して、ゲーサイト配向焼成体を得た。
このゲーサイト配向成形体を用いた他は実施例2と同様にして、1100℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体のXRDの結果を図14に示す。
図14に示すように、磁界方向に平行なTOP面およびSIDE面(SIDE2)と磁界方向に垂直なSIDE面(SIDE1)とで異方性が明確に確認された。
【0058】
また、実施例1〜6および比較例1〜3におけるVSM測定結果について、磁気特性であるHci(保磁力)、Mr(残留磁化)、Ms(飽和磁化)を焼成温度(900℃、1100℃、1200℃)ごと、成形体のTOP、SIDEの各面についてまとめた結果を以下の表1〜表3に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
比較例4
磁界強度を6Tから12Tに変えた他は実施例1と同様にして、ゲーサイト成形体を得た。
容器中のゲートサイト成形体の写真を、実施例4のものとまとめて図6に示す(図6の左図が磁界強度が12Tの場合の比較例4の不均一なゲーサイト成形体を、図6の右図が磁界強度が2Tの場合の実施例4の均一なゲーサイト成形体を示す。)。
このように磁界強度が12Tでスリップキャストすると、磁界強度が強すぎて均一なゲーサイト成形体を得ることができない。
この磁界強度が10Tであっても、同様に磁界強度が強すぎて均一なゲーサイト成形体を得ることができないことを別途確認した。
【0063】
実施例1〜6で得られた磁場中固化成形後のゲーサイト配向体のSEM像を図23に、ヘマタイト配向焼成体の1例のSEM像を図24に示す。これらから明らかなように、これらの実施例で得られる配向焼成体はT面が等軸晶的な組織で、S面が横長の組織なっており、これらの実施例では焼成後のヘマタイトは板状組織になっているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、ナノ材料の配向制御バルク化のモデル図である。
【図2】図2は、非特許文献1に記載された鉄の酸化物−水酸化物系の構造変態図である。
【図3】図3は、ゲーサイト粒子のTEM像である。
【図4】図4は、重力に平行な磁界方向の磁場中でスリップキャストしたゲーサイト成形体の写真である。
【図5】図5は、材料から磁性体に変態させる反応工程の1実施態様のゲーサイト配向体からヘマタイト配向体への変態を示すモデル図である。
【図6】図6は、磁場強度を変えた場合の磁場中で固化したゲーサイト成形体の写真である。
【図7】図7は、異なる焼成温度で焼成した2種類のヘマタイト配向焼成体の写真である。
【図8】図8は、磁場中でスリップキャストした実施例1のゲーサイト配向成形体のXRDである。
【図9】図9は、実施例で用いたゲーサート粉末のXRDである。
【図10】図10は、磁場強度6Tで成形後、900℃で焼成した実施例1のヘマタイト配向焼成体のXRDである。
【図11】図11は、磁場なしで成形後、900℃で焼成した比較例1のヘマタイト焼成体のXRDである。
【図12】図12は、磁場強度6Tで成形後、1100℃で焼成した実施例2のヘマタイト配向焼成体のXRDである。
【図13】図13は、磁場強度6Tで成形後、1200℃で焼成した実施例3のヘマタイト配向焼成体のXRDである。
【図14】図14は、地面に平行な磁界方向の磁場中でスリップキャストしたゲーサイト配向成形体を1100℃で焼成した実施例8のヘマタイト配向成形体のXRDである。
【図15】図15は、磁場強度6Tで成形後、900℃で焼成した実施例1のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図16】図16は、磁場強度6Tで成形後、1100℃で焼成した実施例2のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図17】図17は、磁場強度6Tで成形後、1200℃で焼成した実施例3のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図18】図18は、磁場強度2Tで成形後、900℃で焼成した実施例4のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図19】図19は、磁場強度2Tで成形後、1100℃で焼成した実施例5のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図20】図20は、磁場なしで成形後、1100℃で焼成した比較例2のヘマタイト焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図21】図21は、磁場強度2Tで成形後、1200℃で焼成した実施例6のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図22】図22は、磁場なしで成形後、1200℃で焼成した比較例3のヘマタイト焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図23】図23は、実施例で得られたゲーサイト配向体の1例のSEM像である。
【図24】図24は、実施例で得られたヘマタイト配向焼成体の1例のSEM像である。
【技術分野】
【0001】
この発明は、異方性磁性材料の新規な製造方法および異方性磁性材料に関し、さらに詳しくは弱磁性材料を出発材料として該弱磁性材料に外場を付与して配向させる工程と配向状態にある材料を磁性体へ変態させる反応工程とを組み合わせることによって、配向した磁性バルク体を得ることが可能である異方性磁性材料の製造方法および異方性磁性材料に関する。なお、弱磁性とは磁性を担う電子スピン間の相互作用が弱く、スピンの自発的配向がない場合の弱い磁性をいい、強磁性に対する語である。具体的には常磁性または反磁性をいう。
【背景技術】
【0002】
従来、異方性磁石は、磁性材料である磁石原料を溶解・鋳造して得られたインゴットを粉砕して微粒化し、その微粒子を磁場中で成形し、次いで焼結により製造している。この場合、配向は固相で行われるため微粒子の配向自由度が小さく、十分な配向は不可能である。また、微粒化が粉砕により行われるため、得られる微粒子は高性能磁石として期待される粒子サイズを小さくしたナノコンポジット磁石を与えるナノ粒子を得ることが困難である。また、粉砕工程が必須であり、機械的接触により不純物が混入する可能性が高い。さらに、高性能磁石として知られるNd2Fe14B系磁石のような酸素を含まない磁石の場合は、製造工程において酸化などによって入ってくる酸素等の不純物を除去することが必要である。一方、配向制御が可能であるボンド磁石では、樹脂を含んでいるため耐熱性が著しく低下してしまう。
【0003】
一方、磁性材料の配向制御技術として、磁場中で製膜する磁気テープの製造方法が知られている。この技術はベースフィルムに磁性微粒子を塗布した後に磁場配向するものであり、得られる異方性磁性材料は膜厚がミクロンオーダーの薄膜に限定され、この技術を用いてバルク体を得ることは不可能である。つまり、前記の磁性微粒子を磁場中で製膜して得られた磁性材料をバルク化して磁気テープ以外の用途、例えば、磁気ヘッド、高周波用トランス、モータなどに使用することはできない。
また、この磁性微粒子塗布―磁場配向による配向制御技術とは別に、磁気テープにおけるナノ粒子の配向を向上させる改良技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、酸素を含むバルク体用の磁性材料としては、酸化鉄が知られており(非特許文献1)、また軟磁性材料の代表例としてソフトフェライトが挙げられ、高比磁化率と低保磁力(HC)が求められる用途では式:MFe2O4(M:MnおよびZn)で示されるMnZnフェライト、高透磁率が求められる用途ではパーマロイ(78.5Ni+Fe)あるいはスーパーマロイ(5Mo+79Ni+Fe)などが使用されている。これら酸化鉄およびフェライトについても配向を制御したバルク体は知られていない。また、これらのMn、Zn、Mo、NiなどのFe以外の金属は、地球上の可採レベルの高い元素を数値化したクラーク数の比較的小さい元素(例えば、各元素のクラーク数、Fe:4.70、Mn:0.09、Zn:0.004、Mo:0.0013、Ni:0.01)である。
【0005】
他方、近年、弱磁性セラミックス粒子を磁場などの外場中で配向制御してバルク体を製造する技術が開発されている。
例えば、磁場中鋳込み成形技術として「配向性セラミックス焼結体およびその製造方法」(特許文献2)が、磁場配向電気泳動堆積技術として「単結晶粒子が配向されたセラミックス高次構造体の製造方法」(特許文献3)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−134040号公報
【特許文献2】特開2002−193672号公報
【特許文献3】特開2004−131363号公報
【非特許文献1】防食技術、32、657−667(1983年)
【0007】
前記特開2004−134040号公報に記載の改良技術によれば、熱処理と磁場配向によってL10−FePtCu又はL10−FePt結晶粒を低融点金属酸化物又は低融点金属マトリックス中に完全c軸配向させたナノ粒子磁気記録媒体が得られる。
しかし、ここに具体的に記載されているナノ粒子はスパッタリング法によって形成された薄膜であり、この改良技術によってもバルク体を得ることは不可能である。
【0008】
前記特開2002−193672号公報には、等軸晶ではない結晶構造を持つ非強磁性体粉末をスラリーに分散し、そのスラリーを磁場中で成形し、成形体を焼結する配向性セラミック焼結体およびその製造方法が記載されている。
また、前記特開2004−131363号公報には、溶媒中に帯電、分散させたセラミックス単結晶粒子サスペンションに強磁場を印加することにより、その結晶磁気異方性を利用して個々の粒子を配向させ、その配向状態のサスペンションに電場を印加して、帯電・配向セラミックス粒子を堆積させて単結晶粒子の方位や層厚が高度に制御されたセラミックス構造体を得る、単結晶粒子が配向されたセラミックス高次構造体の製造方法が記載されている。
これらの成形技術によれば、具体例としては結晶子が一定方向に配向したセラミック焼結体であるバルク体が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、磁性粒子が一定方向に高配向したバルク構造体およびその製造方法は知られていない。
このため、セラミックス粒子のバルク体を与える配向制御技術を前記の磁性ナノ粒子に適用して磁性ナノ粒子からバルク体を形成するために、前記公報に記載のようにスラリー状の磁性ナノ粒子を磁場配向させることが考えられるが、磁場中で磁性ナノ粒子を配向制御しようとすると磁場中で磁性ナノ粒子間の磁気的相互作用が大きくなるため磁性ナノ粒子が凝集しやすく、配向制御されたバルク体を得ることは困難である。
【0010】
つまり、従来公知の技術を組み合わせたのでは、磁性粒子の配向を制御したバルク体を得ることはできなかったのである。
従って、この発明の目的は、磁性粒子の配向を制御したバルク体を得ることが可能である異方性磁性材料の製造方法および前記特性を有する異方性磁性材料を提供することである。
また、この発明の他の目的は、金属として地球上の可採レベルの高い元素(クラーク数の大きい元素)を使用して、又は少なくともクラーク数の小さい金属元素の使用量を低下させて磁性粒子の配向を制御したバルク体を得ることが可能である異方性磁性材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程と、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体へ変態させる反応工程と、を含むことを特徴とする異方性磁性材料の製造方法、およびそれによって得られる異方性磁性材料に関する。
また、この発明は、磁性粒子がバルク化された磁性体であって、該磁性体の3方向のうち2方向が等方性で1方向が異方性であり、且つ異方性度が1.2以上である異方性磁性材料に関する。
【0012】
この発明における異方性磁性材料における異方性とは、後述の実施例の欄に詳細に説明される方法によって測定される成形体の磁気特性を示すVSM測定によるMH曲線における磁化容易軸方向の曲線と磁化困難軸方向の曲線とから求められる異方性度が1.2以上であることを意味する。
【0013】
また、この発明においてトポタクチック(変態)反応とは、出発物質の形状(例えば、粒子の配向など)を維持したまま、生成物(得たい物質)に変化させる反応である。このトポタクチック(変態)反応自体は公知の反応であり、セラミックの配向性付与等に利用する例が知られている。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、磁性粒子、例えば含酸素磁性粒子の配向を制御したバルク体である異方性磁性材料を得ることができる。
また、この発明によれば、金属成分としてクラーク数の大きい金属、例えばFeのみを使用して磁性粒子の配向を制御したバルク体である異方性磁性材料、例えば含酸素異方性磁性材料を得ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明における好適な態様を次に示す。
1)前記配向状態にある材料又は前記磁性体が、バルク成形体に成形可能である前記の異方性磁性材料の製造方法。
2)前記反応が、トポタクチック(変態)反応である前記の異方性磁性材料の製造方法。
3)前記材料がα−FeOOHであり、前記磁性材料がα−Fe2O3である前記の異方性磁性材料の製造方法。
【0016】
この発明においては、反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程と、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体へ変態させる反応工程とを組み合わせることが必須である。出発材料として磁性体に変態しない材料に外部磁場を加えて配向させた後、トポタクチック(変態)反応を適用しても、また出発材料が磁性体に変態する材料であってもその材料に外部磁場を付与することで配向させないと、最終的に配向したバルク構造体である磁性材料を得ることはできない。
【0017】
以下、この発明について、この発明の1実施態様のナノ材料の配向・配列制御によるバルク化のモデル図である図1を用いて説明する。
図1において、反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程である工程Aと、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程である工程Bよって、配列制御された弱磁性材料のバルク体を得る。
【0018】
この発明においては、図1の工程Aに示すように、先ず反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する。図1には明示されていないが、材料は通常は容器中に分散されて用意される。
前記の磁性体および材料としては、磁性体は単一金属を含むものであってもよく又は2種類以上の金属を含むものであってもよいが、単一金属を含む場合の物質としてはFe2O3、Fe3O4などの酸化鉄、CoO、CoO2などの酸化コバルト、2種類以上の金属を含む場合の物質として、例えば、Fe2 O3 にMnO、ZnO、NiO、MgO、CuO、Li2 O等を組み合わせたフェライト、例えばNiO−MnO−ZnO−Fe2 O3 、MnO−ZnO−Fe2 O3 、NiO−ZnO−Fe2 O3 等のスピネル型フェライト、ガーネット型フェライト、スピネル型(立方晶)のγ−Fe2 O3 、γ−Fe3 O4 等を挙げることができる。なかでも、好適にはα−Fe2O3、Fe3O4、γ−Fe2O3など、特にα−Fe2O3が挙げられる。また、磁性材料は単一形状のものであってもよいが、2種類以上の形状のものであってよい。
【0019】
前記の材料物質としては、前記の磁性体が酸化鉄あるいは酸化コバルトである場合にはFeOOH、Fe(OH)3や、Co(OH)2などが挙げられ、好適にはFeOOHが挙げられる。また磁性体がフェライトである場合は前記鉄成分以外の金属酸化物を与える出発物質としてはそれら金属の水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩などが挙げられる。前記の材料は、外部磁場により配向可能であるために結晶磁気異方性を有することが必須である。形状は任意の形状でよい。
【0020】
この発明の好適な態様である出発原料が鉄系化合物である場合、図2に示すように、前記の防食技術(非特許文献1)に示す鉄の酸化物―水酸化物系の構造変態図が知られている。
この変態図に示すように、以下の式で示される弱磁性材料のゲーサイト:α−FeOOHを出発物質とし、脱水工程によって磁性材料であるヘマタイト:α−Fe2O3を得ることができる。
【0021】
【化1】
【0022】
得られたα−Fe2O3から、引き続いて以下の式に示す還元・酸化の工程によって強磁性材料であるγ−Fe2O3を得ることができる。
【0023】
【化2】
【0024】
この発明における材料から磁性体への変態の例として、特に材料としてのゲーサイト:α−FeOOHから弱い強磁性材料であるヘマタイト:α−Fe2O3へ、材料としてのレピッドクロサイト:γ−FeOOHから強磁性材料であるマグヘマイト:γ−Fe2O3への変態を好適に挙げることができる。
また、この発明においては、前述の鉄以外の金属を含む磁性材料を与える材料を出発材料として用いることができる。
【0025】
この発明においては、材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体に変態させる反応工程とを組み合わせることが必要であり、材料から磁性体への変態工程のみでは配向した磁性バルク体を得ることができない。
このため、外部磁場によって材料が容易に回転して配向し得る条件を選択することが必要となる。
前記の条件を満足させるために、材料としてのナノ粒子を分散させた溶媒混合物であるスラリーによって液相中での配向制御工程を用意することができる。
【0026】
前記の溶媒混合物の溶媒としては、粒子と反応しない溶媒であれば水または非水溶媒で特に制限はなく、通常は安定したスラリーの調製しやすさから水、メタノール、エタノール、水/メタノール混合液、水/エタノール混合液、好適には水を用いる。
前記の材料を分散させた溶媒混合物スラリー中の固相の割合としては高分散スラリーの得られる範囲であれば特に制限はないが、溶媒混合物全量中の固相の割合が5〜50質量%、特に10〜50質量%程度であることが好ましい。
また、前記の材料を分散させた溶媒混合物スラリー中には、粒子間の凝集を防止するため界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0027】
前記の界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤の多種にわたるものが適用できる。
前記の材料、溶媒および界面活性剤を含む溶媒混合物によって均一なスラリーを形成することが好ましい。
【0028】
この発明においては、前記の材料、好適には前記のスラリー中の材料に、前記図1の工程Bに示すように、外部磁場を付与することで材料の構成材料を配向させる。
この配向工程を、この工程の1実施態様により外部磁場の印加方向が重力方向(重力に平行な方向)である磁場中でスリップキャストしたゲーサイト成形体の例で説明する。
図3は出発原料として用いたゲーサイト粒子のTEM像を示し、図4において、左図は磁場を加えて配向させた容器中のゲーサイト成形体を示し、右図は容器から取り出したゲーサイト成形体を示す。
図4に示すように、この発明の前記の工程によって肉厚のゲーサイト成形体を得ることができる。
【0029】
前記の図4に示すように、材料は容器中に用意される。容器としては、外部磁場によって影響を受けない物質から形成されているものであれば特に制限はなく、例えば樹脂製、セラミック製又はガラス製の容器が挙げられる。
【0030】
この発明においては、材料に外部磁場を付与することで材料の構成材料を配向させることが必要であり、そのため、例えば容器中の材料を含む溶媒混合物に外部磁場を加えて配向させた、配向した材料を堆積、バルク化して配向成形体として取得する必要がある。
前記の材料の構成材料を配向させた配向成形体として取得する方法としては、外場を加えつつ材料の配向と堆積、バルク化を同時に行う方法が好ましく、このような条件を満足できる方法としては、例えば外部磁場を加えつつスリップキャストや電気泳動などによって堆積、バルク化を行う方法を挙げることができる。
【0031】
この発明の方法において、外部磁場を加えつつ材料の配向と堆積、バルク化を同時に行う場合、磁場と堆積、バルク化手段としてのスリップキャストとの組合せが簡便であり好適である。
このため、例えば、溶媒を分離可能な容器を使用し、磁場によって配向させた材料を含む溶媒混合物から材料の堆積、バルク化を達成することによって、材料の配向成形体を得ることが好ましい。
前記の材料の配向成形体は、外部から力を加えない限り形状保持性を有するが比較的脆いバルク体であって、ナイフやカッターなどによって切断して容易に所望の形状のバルク成形体に成形することができる。
【0032】
この発明の好適な態様において、材料を含む溶媒混合物であるスラリー中の溶媒は、スラリーを設置している溶媒を分離可能な容器によって吸収される。この時の吸収速度は大きすぎては非磁性材料粒子の配向度を低下させ、吸収速度が小さ過ぎては固化成形時間がかかりすぎるので、適した速度となるように容器の細孔径、細孔密度を調整することが好ましい。このため、前記容器としては多孔性容器、例えば、石こうやアルミナ多孔体などの容器を用いることが好ましい。そして、多孔性容器を使用するとともに孔径の決ったフィルターを適宜選定・利用することが好ましい。また、多孔性基板上にフィルターを置き、その上にガラスまたは樹脂製の円筒容器を設置する形態とすることもできる。
【0033】
また、磁場の磁界強度が強過ぎると材料粒子同士又は粒子と磁場を与えるマグネットとの磁気的相互作用が大きくなり均一な成形体を得ることが困難となり、従ってバルク成形体に成形することが困難になる。また磁界強度が弱すぎては、材料粒子を配向させることができない。磁界強度は磁場を印加する間一定でもよく徐々に増大させてもよい。好適な磁界条件としては、均一な成形体を得ることが可能である、従ってバルク成形体に成形することが可能である条件である。磁界強度の目安としては1T以上10T未満、特に1.5T以上8T以下であることが好ましい。また、磁場を加える場合、磁界の方向については特に制限がなく任意の方向であり得るが、例えば重力の方向に対して反対方向(地面に対して垂直方向)であってもよくあるいは重力の方向に対して直角方向(地面に平行方向)であってよい。外部磁場を印加する時間は1〜24時間が目安である。
【0034】
外場として磁場を用いて、前記の材料粒子を回転・配向させる駆動力(磁化エネルギー)は次式で表される。
ΔE=ΔχVB2/2μ0
但し、Δχ:磁化率の異方性
V:体積
B:磁場強度
μ0:真空の透磁率
そして、粒子が配向するための配向条件は、下記の関係にある場合である。
ΔE>kT
kT:熱振動エネルギー
【0035】
この発明の実施態様において、前記の外場として磁場を、堆積、バルク化の方法としてのスリップキャストとを組合せて用い、さらに、前記の材料としてFeOOH粒子を使用することが好ましく、磁場の強さは1T(テスラ)以上7T未満、特に1.5〜6.5T以下であることが好ましい。
【0036】
次いで、この発明においては、配向状態にある配向成形体の材料を反応により磁性体に変態させる。
この磁性体に変態させる反応工程を、材料から磁性体に変態させる反応工程の1実施態様のゲーサイト配向体からヘマタイト配向体への変態を示すモデル図である図5を用いて説明する。
図5の左図において、針状ゲーサイト粒子は横に寝た状態である。一方、図5の右図において、焼成後のヘマタイトは板状となっている。
このゲーサイト配向体から焼成後のヘマタイト配向体への変態によって、図5に示すように粒子の形骸は失われるが、粒子の配向で示される異方性が得られる。
【0037】
この配向状態にある材料を磁性体に変態させる反応としては、例えば、加熱による脱水反応が挙げられる。
前述のように、このトポタクチック(変態)反応自体は公知の反応であるが、この発明において従来公知の技術と異なる点は、適用される材料が変態後に磁性材料を与える材料であることと、予め配向された材料に適用する点である。
【0038】
この発明における前記の材料の磁性体へ変態させる反応、例えば、加熱による脱水反応は、使用する弱磁性材料によって適宜選択することができ、例えば出発原料として材料が反磁性のα−FeOOHの場合には250〜300℃以上の温度、好適には焼結体の得られる900〜1500℃、特に粒成長により配向度が向上する1100〜1200℃で加熱することが好ましい。
前記の脱水反応は配向状態の弱磁性材料からなる配向成形体をそのまま又は切断、積層などの任意の加工法によって板材あるいは立方体などの任意の形状に成形した後、耐熱性容器、例えばアルミナなどの任意の非磁性耐熱材料製の容器中で空気の存在下に脱水が完了する温度・時間で反応を行って、配向制御バルク成形体である異方性磁性材料を得ることができる。あるいは、前記の反応後に、さらに磁性体を任意の加工法によって任意の形状に成形して配向制御バルク成形体として異方性磁性材料を得ることも可能である。
【0039】
この発明によって得られる異方性磁性材料は新規な材料であり、個々の磁性粒子である磁性ナノ粒子が配向制御され且つ各寸法(縦、横、高さ)がmmあるいはcmオーダー以上の配向制御した機械的強度の大きいバルク構造体を得ることができる。
この発明によれば、構造体についての磁気特性を示すVSM測定によるMH曲線が磁気容易軸方向と磁化困難軸方向とで異方性を示す、異方性磁性材料からなる配向制御構造体を得ることができる。
【0040】
この発明における異方性磁性材料は、後述の実施例の欄に詳細に説明されるように成形体の磁気特性を示すMH曲線における磁化容易軸方向の曲線と磁化困難軸方向の曲線とを比較して、各曲線の実質的に重なっている部分を除いた曲線で囲まれる開口部の部分(菱形の部分、例えば、図15〜22のS字曲線)について、開口部の傾斜[tan(角度)(A)][(角度)(A):開口部の両頂点を結ぶ直線の横軸(磁化=0emu/g)に対する角度を示す。]、および開口部の幅(W)のいずれかで両方の開口部間で差が大きい因子(異方性因子:AF)を用いて、下記の式で示される異方性度を求め、この値で示される異方性度が1.2以上、特に1.5以上である場合をいう。この異方性度は通常10以下程度である。
異方性度=AD1/AD0
AD1:磁化容易軸方向の曲線のAFと磁化困難軸方向の曲線のAFとを比較して大き い方の軸
AD0:磁化容易軸方向の曲線のAFと磁化困難軸方向の曲線のAFとを比較して小さ い方の軸
この発明の磁性材料は、磁性粒子がバルク化された磁性体であって、該磁性体の3方向のうち2方向が等方性で1方向が異方性であり、且つ異方性度が1.2以上、特に1.5以上10以下である異方性磁性材料である。これに対して、外場を加えないで得られる磁性材料は、前記のAD1=AD0であり、異方性度が1である。
【0041】
この発明の異方性磁性材料は、軟磁性体であればそのまま磁気ヘッドや高周波トランスなどに、あるいは水素還元、空気酸化して変態させた強磁性体として、または強磁性体であればそのまま使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、この発明の実施例を示す。
以下の各例において、材料の配向状態および磁気特性の評価を以下のようにして行った。
ゲーサイト成形体およびヘマタイト焼成体の構造を、成形体のTOP面およびSIDE面についてX線回折(XRD)により評価した。このTOPとは重力に垂直な、従って地面に平行な面を示し、SIDE面とは重力に平行な面を示す。
ヘマタイト焼成体のMH曲線を、成形体のTOP面およびSIDE面についてVSM測定(振動試料型磁力計:Vibrating Sample Magnetometer System)により、装置としてLake Shorc社製のVSM測定装置を用いて異方性を評価した。
また、弱磁性材料のゲーサイト粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)によって粒子の形状を測定した。
この実施例で用いたゲーサイト粒子のTEM像を図3に示す。
【0043】
実施例1
1.弱磁性材料を出発材料として用意する工程
チタン工業株式会社製のゲーサイト(商品名:LEMON、形状:棒状、平均長さ800nm、アスペクト比は1:5〜1:10の範囲内)16g、東亞合成株式会社製の界面活性剤(商品名:アロンA6114)0.2g、イオン交換水36gをそれぞれ秤量し、混合、超音波ホモジナイザーにより分散し、安定なスラリーを調製した。
【0044】
2.弱磁性材料の構成材料を配向させる配向工程
アルミナ多孔体の上にフィルター(メンブレンシート)を敷き、この上にガラス製円筒を設置し、円筒内に前記のゲーサイト粒子を分散させたスラリーを流し込んだ。これを超伝導マグネットの中に設置し、円筒の下から上方向への磁界(B)方向で磁界強度6Tにて磁場を加えつつ、室温(図中ではRTで表示)で一晩静置し固化させて、ゲートサイト配向成形体を得た。
このゲートサイト配向成形体のXRDを図8に示す。また、比較のために原料のゲートサイト粉末のXRDを図9に示す。
この成形体自体は切断して任意の形状に加工可能であり、脆く強い力を加えるとボロボロと崩れる。
【0045】
3.磁性体へ変態させる反応工程
前の工程で得られた固化配向成形体を空気中で焼成した。焼成温度は900℃、焼成時間は2時間で行った。この熱処理によって、ゲーサイトからヘマタイトへの構造変化が生じた。得られたヘマタイトは赤茶色をしていた。
このヘマタイト配向焼成体の写真を後述の実施例3で得られたヘマタイト配向焼成体の写真とをまとめて図7に示す(図7の左図が900℃で焼成して得られた実施例1のヘマタイト配向焼成体であり、右図が1200℃で焼成して得られた実施例3のヘマタイト配向焼成体である。)。
【0046】
4.配向構造体の評価
このヘマタイト配向焼成体から物性測定用試料、例えばVSM測定用には最終形状が2mm×2mm×2mmの立方体を切出した。得られたヘマタイト配向焼成体(配向構造体)の構造のXRD、および磁気特性をVSMにより評価した。なお、VSMによるMH曲線の3方向は下記のとおりである。
T:TOP面が磁場方向と平行で、SIDE面が磁場方向と直交(磁化容易軸方向)
T2:上記試料のTOP面の法線を軸に90°回転(磁化容易軸方向)
S:TOP面が磁場方向と垂直、SIDE面が磁場方向と平行(磁化困難軸方向)
XRDの結果を図10に、VSMの結果を図15に示す。
【0047】
図15から、開口部の形状のうち他の2つの形状と異なる異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約1.5であり、図15での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の曲線のAF/磁化困難軸方向の曲線のAF
=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約4.5mm/約3mm
=約1.5
【0048】
比較例1
磁場を加えなかった(図中では0Tで表示)他は実施例1と同様にして、ゲーサイトの成形体を得た。
このゲーサイトの成形体を用いた他は実施例1と同様にして、900℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト焼成体を得た。
得られたヘマタイト焼成体のXRDの結果を図11に示す。
図11では、磁場なしで成形しているため、焼成体に配向が見られない。
【0049】
実施例2
焼成温度を900℃から1100℃に変えた他は実施例1と同様に実施して、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体の構造のXRD、およびVSMを測定した。
XRDの結果を図12に、VSMの結果を図16に示す。
図16から、開口部の形状のうち他の2つの形状と異なる異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約2.5であり、図16での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約10mm/約4mm
=約2.5
【0050】
実施例3
焼成温度を900℃から1200℃に変えた他は実施例1と同様に実施して、ヘマタイト配向焼成体を得た。得られたヘマタイトは銀黒色をしていた。
この1200℃で焼成して得られたヘマタイト配向焼成体の写真を実施例1のヘマタイトの写真とともに図7にまとめて示す(図7の右が実施例3のヘマタイト配向焼成体であり、図7の左図が実施例1のヘマタイト配向焼成体である。)。
得られたヘマタイト配向焼成体の構造のXRD、およびVSMを測定した。
XRDの結果を図13に、VSMの結果を図17に示す。
図17から、開口部の形状の他の2つの形状と異なる異方性因子:AFはtan[開口部の角度(A)]であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約5.4であり、図17での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=tan[磁化容易軸方向の開口部の角度(A)]/tan[磁化困難軸方向 の開口部の角度(A)]
=tan約72°/tan約38°
=約5.4
【0051】
以上の実施例1〜3のヘマタイト焼成体のVSMの図面(図15、図16、図17)の観察から、TとT2とはVSMのMH曲線が同一形状であり異方性方向はSであることから、以下の実施例ではTとSのみを測定し、Sでの異方性度を求める場合がある。
【0052】
実施例4
磁界強度を6Tから2Tに変えた他は実施例1と同様にして、円筒内に前記のスラリーを流し込み、磁場中でスリップキャストした均一なゲーサイト成形体を得た。
この磁場中でスリップキャストしたゲーサイト配向成形体の1例の写真を図4に示す。
このゲーサイト配向成形体を用いた他は実施例1と同様にして、900℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体のVSMの結果を図18に示す。
図18から、開口部の形状で異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約1.5であり、図20での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約7mm/約4.6mm
=約1.5
【0053】
実施例5
磁界強度を6Tから2Tに変えた他は実施例1と同様にして、ゲーサイト配向成形体を得た。
このゲーサイト配向成形体を用いた他は実施例2と同様にして、1100℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体のVSMの結果を図19に示す。
図19から、開口部の形状で異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約2.3であり、図19での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約9mm/約4mm
=約2.3
【0054】
比較例2
磁場を加えなかった(図中では0Tで表示)他は実施例1と同様にして、ゲーサイト成形体を得た。
このゲーサイト焼成体を用いた他は実施例5と同様にして、1100℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト焼成体を得た。
得られたヘマタイト成形体のVSMの結果を図20に示す。
図20から、開口部の形状で異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約1.0であり、図20での等方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約14mm/約14mm
=約1.0
【0055】
実施例6
磁界強度を6Tから2Tに変えた他は実施例1と同様にして、ゲーサイト配向成形体を得た。
このゲーサイト配向成形体を用いた他は実施例3と同様にして、1200℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体のVSMの結果を図21に示す。
図21から、開口部の形状で異方性因子:AFはtan[開口部の角度(A)]であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約4.8であり、図21での異方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=tan[磁化容易軸方向の開口部の角度(A)]/tan[磁化困難軸方向
の開口部の角度(A)]
=tan約81°/tan約28°
=約4.8
【0056】
比較例3
磁場を加えなかった(図中では0Tで表示)他は実施例1と同様にして、ゲーサイト成形体を得た。
このゲーサイト成形体を用いた他は実施例6と同様にして、1200℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト焼成体を得た。
得られたヘマタイト焼成体のVSMの結果を図22に示す。
図22から、開口部の形状で異方性因子:AFは開口部の幅(W)であるから、前述の磁気特性の異方性度を以下の式から求めると約1.0であり、図22での等方性の視角的観察結果が数値的にも確認された。
異方性度=磁化容易軸方向の開口部の幅(W)/磁化困難軸方向の開口部の幅(W)
=約4mm/約4mm
=約1.0
【0057】
実施例7
磁界の方向を縦方向(地球の重力に平行な方向)から横方向(地面に平行)に変えた他は実施例2と同様に実施して、ゲーサイト配向焼成体を得た。
このゲーサイト配向成形体を用いた他は実施例2と同様にして、1100℃で2時間焼成を行って、ヘマタイト配向焼成体を得た。
得られたヘマタイト配向焼成体のXRDの結果を図14に示す。
図14に示すように、磁界方向に平行なTOP面およびSIDE面(SIDE2)と磁界方向に垂直なSIDE面(SIDE1)とで異方性が明確に確認された。
【0058】
また、実施例1〜6および比較例1〜3におけるVSM測定結果について、磁気特性であるHci(保磁力)、Mr(残留磁化)、Ms(飽和磁化)を焼成温度(900℃、1100℃、1200℃)ごと、成形体のTOP、SIDEの各面についてまとめた結果を以下の表1〜表3に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
比較例4
磁界強度を6Tから12Tに変えた他は実施例1と同様にして、ゲーサイト成形体を得た。
容器中のゲートサイト成形体の写真を、実施例4のものとまとめて図6に示す(図6の左図が磁界強度が12Tの場合の比較例4の不均一なゲーサイト成形体を、図6の右図が磁界強度が2Tの場合の実施例4の均一なゲーサイト成形体を示す。)。
このように磁界強度が12Tでスリップキャストすると、磁界強度が強すぎて均一なゲーサイト成形体を得ることができない。
この磁界強度が10Tであっても、同様に磁界強度が強すぎて均一なゲーサイト成形体を得ることができないことを別途確認した。
【0063】
実施例1〜6で得られた磁場中固化成形後のゲーサイト配向体のSEM像を図23に、ヘマタイト配向焼成体の1例のSEM像を図24に示す。これらから明らかなように、これらの実施例で得られる配向焼成体はT面が等軸晶的な組織で、S面が横長の組織なっており、これらの実施例では焼成後のヘマタイトは板状組織になっているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、ナノ材料の配向制御バルク化のモデル図である。
【図2】図2は、非特許文献1に記載された鉄の酸化物−水酸化物系の構造変態図である。
【図3】図3は、ゲーサイト粒子のTEM像である。
【図4】図4は、重力に平行な磁界方向の磁場中でスリップキャストしたゲーサイト成形体の写真である。
【図5】図5は、材料から磁性体に変態させる反応工程の1実施態様のゲーサイト配向体からヘマタイト配向体への変態を示すモデル図である。
【図6】図6は、磁場強度を変えた場合の磁場中で固化したゲーサイト成形体の写真である。
【図7】図7は、異なる焼成温度で焼成した2種類のヘマタイト配向焼成体の写真である。
【図8】図8は、磁場中でスリップキャストした実施例1のゲーサイト配向成形体のXRDである。
【図9】図9は、実施例で用いたゲーサート粉末のXRDである。
【図10】図10は、磁場強度6Tで成形後、900℃で焼成した実施例1のヘマタイト配向焼成体のXRDである。
【図11】図11は、磁場なしで成形後、900℃で焼成した比較例1のヘマタイト焼成体のXRDである。
【図12】図12は、磁場強度6Tで成形後、1100℃で焼成した実施例2のヘマタイト配向焼成体のXRDである。
【図13】図13は、磁場強度6Tで成形後、1200℃で焼成した実施例3のヘマタイト配向焼成体のXRDである。
【図14】図14は、地面に平行な磁界方向の磁場中でスリップキャストしたゲーサイト配向成形体を1100℃で焼成した実施例8のヘマタイト配向成形体のXRDである。
【図15】図15は、磁場強度6Tで成形後、900℃で焼成した実施例1のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図16】図16は、磁場強度6Tで成形後、1100℃で焼成した実施例2のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図17】図17は、磁場強度6Tで成形後、1200℃で焼成した実施例3のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図18】図18は、磁場強度2Tで成形後、900℃で焼成した実施例4のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図19】図19は、磁場強度2Tで成形後、1100℃で焼成した実施例5のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図20】図20は、磁場なしで成形後、1100℃で焼成した比較例2のヘマタイト焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図21】図21は、磁場強度2Tで成形後、1200℃で焼成した実施例6のヘマタイト配向焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図22】図22は、磁場なしで成形後、1200℃で焼成した比較例3のヘマタイト焼成体のVSMによる磁気特性である。
【図23】図23は、実施例で得られたゲーサイト配向体の1例のSEM像である。
【図24】図24は、実施例で得られたヘマタイト配向焼成体の1例のSEM像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程と、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体へ変態させる反応工程と、を含むことを特徴とする異方性磁性材料の製造方法。
【請求項2】
前記配向状態にある材料又は前記磁性体が、バルク成形体に成形可能である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応が、トポタクチック(変態)反応である請求項1又は2に記載の異方性磁性材料の製造方法。
【請求項4】
前記材料がα−FeOOHであり、前記磁性材料がα−Fe2O3である請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方性磁性材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られる異方性磁性材料。
【請求項6】
磁性粒子がバルク化された磁性体であって、該磁性体の3方向のうち2方向が等方性で1方向が異方性であり、且つ異方性度が1.2以上である異方性磁性材料。
【請求項1】
反応により磁性体に変態する弱磁性材料を出発材料として用意する工程と、該材料に外場を付与することで材料の構成材料を配向させる配向工程と、該配向状態にある材料を前記反応により磁性体へ変態させる反応工程と、を含むことを特徴とする異方性磁性材料の製造方法。
【請求項2】
前記配向状態にある材料又は前記磁性体が、バルク成形体に成形可能である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応が、トポタクチック(変態)反応である請求項1又は2に記載の異方性磁性材料の製造方法。
【請求項4】
前記材料がα−FeOOHであり、前記磁性材料がα−Fe2O3である請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方性磁性材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られる異方性磁性材料。
【請求項6】
磁性粒子がバルク化された磁性体であって、該磁性体の3方向のうち2方向が等方性で1方向が異方性であり、且つ異方性度が1.2以上である異方性磁性材料。
【図1】
【図2】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図23】
【図24】
【図2】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−188044(P2009−188044A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24123(P2008−24123)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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