説明

異方性色素膜用アゾ色素

【課題】偏光膜などの異方性色素膜に有用な、短波長領域(380nm〜500nm)で二色性が高く、耐久性に優れた有機系色素を提供する。
【解決手段】遊離酸の形が、例えば下式で表される異方性色素膜用アゾ色素。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光素子や液晶素子(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)などの発光型の表示素子、タッチパネルなどの入出力素子に具備される偏光板等に有用な異方性色素膜用アゾ色素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LCDなどの平面型ディスプレイはテレビ受像機に広く用いられるようになり、従来のCRTを用いたテレビに置き換わろうとしている。また、現在のテレビシステムであるNTSCの色再現性は、CRTの蛍光体の特性を基準に決められたものであり、実在する物体の色の約半分しか表現できないという問題があった。一方、デジタルカメラやカムコーダーなどの撮像装置は、NTSCで定義された範囲よりも広範囲な色表現(色再現)が近年可能となり、その情報をより正確に再現する拡張色空間に対応したディスプレイが望まれている。
【0003】
このような背景において、LCDなどのCRTに代わる平面型ディスプレイは、原理上CRTよりも高彩度色の表現が可能なデバイスであり、平面型ディスプレイが有する高機能性を生かした新動画用拡張色空間の規格化が進められてきた。その結果、国際規格IEC61966−2−4として「動画用拡張色域YCC色空間(Extended-gamut YCC color space for video application-xyYCC)」が発行された。
【0004】
xyYCC色空間は、実在する物体色のほぼ全てが表現できる規格であり、これにより色鮮やかな物体の素材感や立体感までも表現できるようになった。
【0005】
しかし、拡張された色空間情報を従来のLCDで表示しようとした場合、LCDに使用される各種部材の特性が充分でないため、xyYCC色空間に対応したディスプレイを構築するために幾つかの改良が進められている。
【0006】
その例として、
(1)RGB3原色の色純度が良好なバックライトの採用、
(2)RGB3原色に補色を加えたマイクロカラーフィルターの採用
などが挙げられる。
(1)の代表的な手段としてはLEDの採用や冷陰極管に用いられる蛍光体の発光波長の最適化であり、(2)ではイエロー、シアンを追加したマイクロカラーフィルターの採用が挙げられる(特許文献1,2参照)。
【0007】
このように、LCDの色再現性を支配する因子は、発光に関係する部材や可視光波長域に吸収を有する部材であるが、マイクロカラーフィルターと同様に可視光波長域に吸収を有する偏光フィルムについては、まだ充分な検討が進められていない状況にある。
【0008】
xyYCC拡張色空間への対応には、バックライトやマイクロカラーフィルターの改良内容から推定されるように、可視光線の両端部に当たる短波長領域と長波長領域の特性を改善することが必要である。
【0009】
しかしながら、従来の偏光フィルムは、可視光波長領域における吸光度や二色性などの光学特性が一定でないため、特定の波長や色におけるコントラスト比が低下する問題があった。特に、青色光の補色である短波長領域(380nm〜500nm)の二色性が低いために、青色光の色純度が低下し、色再現性が十分に得られないことがあった。
【0010】
また、拡張色空間対応ディスプレイ以外においても、液晶プロジェクタや車載用液晶パネルの場合には、高温時の耐久性の問題からヨウ素ではなく、二色性を有する有機系色素が用いられているが、短波長に吸収を有する色素は、π共役の広がりが長波長に吸収を有する色素よりも小さいため、二色性色素に必要とされる十分なアスペクト比が得られず、こちらにおいても短波長領域で高い二色性を有する色素の開発が望まれていた。これらの用途においては、高温時の耐久性が必要とされために額縁故障あるいは額縁むらと呼ばれる、温湿度変化に伴うフィルムの収縮などが原因となる欠陥が生じる問題があること、また、この問題を解決する変性ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール誘導体)などの高分子材料と二色性物質の組み合わせが重要となってきていることからも新規の二色性色素の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2007−73290号公報
【特許文献2】特開2007−25285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、広範囲な色表現が可能な偏光膜に有用である短波長領域(380nm〜500nm)に吸収を有する異方性色素膜用有機系色素を提供することを課題とする。
また、本発明は耐久性に優れた異方性色素膜用有機系色素を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが鋭意検討した結果、分子末端に特徴的な基を有するアゾ色素が、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、遊離酸の形が、下記式(1)で表されることを特徴とする、異方性色素膜用アゾ色素、に存する。
【化5】

【0014】
[(式(1)中、Dは、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
nは、0または1を表す。
は、下記式(1−1)〜(1−3)のいずれかを表す。
【0015】
【化6】

(式(1−1)中、環Aは、−OR以外にも置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
【0016】
【化7】

(式(1−2)中、環Bは、−NR以外にも置換基を有していてもよい。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
【0017】
【化8】

(式(1−3)中、Q11およびQ12は、それぞれ独立に、酸素原子またはNH基を表す。R91およびR92は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアミノ基を表す。R91とR92は、結合して環を形成していてもよい。)]
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、偏光膜などの異方性色素膜に有用な、短波長領域(380nm〜500nm)で二色性が高く、耐久性に優れた有機系色素を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の異方性色素膜用アゾ色素の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
【0020】
なお、本発明でいう異方性色素膜とは、色素膜の厚み方向および任意の直交する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる任意の2方向における電磁気学的性質に異方性を有する色素膜である。電磁気学的性質としては、吸収、屈折などの光学的性質、抵抗、容量などの電気的性質などが挙げられる。吸収、屈折などの光学的異方性を有する膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜、位相差膜、導電異方性膜などがある。
【0021】
本発明でいう色素膜とは、色素を含有する層を指し、通常、さらに低分子材料および/または高分子材料を含有する層をいい、例えば色素のみから構成される層であってもよい。
本発明の異方性色素膜用アゾ色素を用いて製造された異方性色素膜は、主たる効果として吸収異方性を有する機能性膜に用いられることが好ましく、偏光膜に用いられることがより好ましい。
【0022】
なお、本発明において置換基を有していてもよいとは、置換基を1または2以上有していてもよいことを意味する。
【0023】
[異方性色素膜用アゾ色素]
本発明の異方性色素膜用アゾ色素は、遊離酸の形が下記式(1)で表されることを特徴とする。
【0024】
【化9】

【0025】
[(式(1)中、Dは、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
nは、0または1を表す。
は、下記式(1−1)〜(1−3)のいずれかを表す。
【0026】
【化10】

(式(1−1)中、環Aは、−OR以外にも置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
【0027】
【化11】

(式(1−2)中、環Bは、−NR以外にも置換基を有していてもよい。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
【0028】
【化12】

(式(1−3)中、Q11およびQ12は、それぞれ独立に、酸素原子またはNH基を表す。R91およびR92は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアミノ基を表す。R91とR92は、結合して環を形成していてもよい。)]
【0029】
<R〜R
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0030】
該置換基を有していてもよいアルキル基は、通常、炭素数が1以上、4以下、好ましくは3以下のアルキル基である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0031】
該置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、通常、炭素数が1以上、4以下、好ましくは3以下のアルコキシ基である。該アルコキシ基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、2,3−ジヒドロキシプロポキシ基等の置換基を有していてもよいアルコキシ基が挙げられる。
【0032】
<D
は、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。
【0033】
が有していてもよい置換基としては、スルホ基、カルボキシ基、水酸基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基などが挙げられる。
【0034】
置換基としてのアルコキシ基は、炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該アルコキシ基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。
【0035】
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、2,3−ジヒドロキシプロポキシ基等の置換基を有していてもよいアルコキシ基が挙げられ、特に置換基を有していてもよい低級アルコキシ基が好ましい。
【0036】
置換基としてのアミノ基は、通常、−NH、−NHR81、−NR8283で表される。R81〜R83はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいアシル基を表す。該アルキル基は、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは10以下である。該アシル基は、−COR84で表され、R84は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該アルキル基および該アルコキシ基は、それぞれ、炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該アルケニル基は、それぞれ、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは10以下である。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基および該フェニル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。R81〜R83のアルキル基、フェニル基またはアシル基に置換していてもよい基としては、置換基を有していてもよいフェニル基、アルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。該フェニル基に置換していてもよい基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホ基、カルボキシ基、水酸基などが挙げられる。
【0037】
アミノ基の具体例としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、2−スルホエチルアミノ基、4−スルホフェニルアミノ基、4−カルボキシベンゾイルアミノ基、フマロイルアミノ基等が挙げられる。
【0038】
置換基としてのアルキル基は、炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。
【0039】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、特に置換基を有していてもよい低級アルキル基が好ましい。
【0040】
置換基としてのアルケニル基は、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは10以下である。該アルケニル基に置換していてもよい基としては、アルキル基、フェニル基およびカルボキシ基などが挙げられる。
【0041】
アルケニル基の具体例としては、トランス−2−カルボキシエテニル基、トランス−2−(2−スルホフェニル)エテニル基等が挙げられる。
【0042】
置換基としてのカルバモイル基は、炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該カルバモイル基に置換していてもよい基としては、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0043】
置換基を有していてもよいカルバモイル基の具体例としては、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基が挙げられる。
【0044】
置換基としてのスルファモイル基は、炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該スルファモイル基に置換していてもよい基としては、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
(置換基を有していてもよいスルファモイル基の具体例としては、スルファモイル基、N−メチルスルファモイル基が挙げられる。
【0045】
置換基としてのフェニル基は、炭素数が通常6以上、通常10以下、好ましくは8以下である。該フェニル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。具体例としては、フェニル基、3−スルホフェニル基、4−スルホフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基が挙げられる。
【0046】
置換基としてのアリールオキシ基を構成するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい、アリール基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基、水酸基などが挙げられる。
置換基を有していてもよいアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、2−ナフトキシ基、p−トリルオキシ基、p−メトキシフェノキシ基、o−カルボキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0047】
は、スルホ基およびカルボキシ基からなる群より選ばれる水溶性基を置換基として1以上有する、フェニル基またはナフチル基であることが好ましい。特に、Dは、スルホ基およびカルボキシ基からなる群より選ばれる水溶性基を置換基として1または2個有するフェニル基または該水溶性基を置換基として1〜3個有するナフチル基であることが好ましい。
【0048】
がフェニル基である場合には、アゾ基が結合するベンゼン環のパラ位に該水溶性基が結合していることが好ましい。
また、Dがナフチル基である場合には、ナフタレン環の2位にアゾ基が結合することが好ましい。また、その際、該水溶性基は、ナフタレン環の6位と8位に結合していることが好ましい。
は該水溶性基以外の置換基を有していてもよいが、該水溶性基のみを置換基として有することが好ましい。
【0049】
<K
は、下記式(1−1)〜(1−3)のいずれかを表す。
【0050】
【化13】

(式(1−1)中、環Aは、−OR以外にも置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
【0051】
の置換基を有していてもよいアルキル基としては、通常、炭素数が1以上、6以下、好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下のアルキル基である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0052】
の置換基を有していてもよいフェニル基に置換していてもよい基としては、置換基を有していてもよいアルキル基(該置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。)、アルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基、水酸基などが挙げられる。該フェニル基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−カルボキシフェニル基等が挙げられる。
【0053】
環Aが、−OR以外に有していてもよい置換基としては、スルホ基、カルボキシ基、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基が挙げられる。環Aは、これらの置換基を1つ有していてもよいし、2つ以上有していてもよい。
【0054】
該置換基を有していてもよいアルキル基は、通常、炭素数が1以上、6以下、好ましくは3以下のアルキル基である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、特に置換基を有していてもよい低級アルキル基が好ましい。
【0055】
該置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、通常、炭素数が1以上、4以下、好ましくは3以下のアルコキシ基である。該アルコキシ基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、2,3−ジヒドロキシプロポキシ基等の置換基を有していてもよいアルコキシ基が挙げられ、特に置換基を有していてもよい低級アルコキシ基が好ましい。
【0056】
該置換基を有していてもよいアミノ基としては、通常、−NH、−NHR21、−NR2223、−NHCOR24で表され、R21〜R24はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該アルキル基は、炭素数が通常1以上、通常4以下、好ましくは2以下である。該アルキル基および該フェニル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
【0057】
【化14】

(式(1−2)中、環Bは、−NR以外にも置換基を有していてもよい。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
【0058】
およびRが置換基を有していてもよいアルキル基である場合の具体例としては、上記Rのアルキル基と同様である。
また、RおよびRが置換基を有していてもよいフェニル基である場合の具体例としては、上記Rのフェニル基と同様である。
【0059】
環Bが、−NR以外にも有していてもよい置換基は、上記環Aの置換基として例示したものと同様である。
【化15】

(式(1−3)中、Q11およびQ12は、それぞれ独立に、酸素原子またはNH基を表す。R91およびR92は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアミノ基を表す。R91とR92は、結合して環を形成していてもよい。)
【0060】
91およびR92の置換基を有していてもよいアルキル基は、炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、特に置換基を有していてもよい低級アルキル基が好ましい。
【0061】
91およびR92の置換基を有していてもよいアミノ基は、通常、−NH、−NHR211、−NR212213で表される。R211〜R213はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表す。該アルキル基は、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは10以下である。該アシル基は、−COR214で表され、R214は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該アルキル基および該アルコキシ基は、それぞれ、炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該アルケニル基は、それぞれ、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは10以下である。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基および該フェニル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。
【0062】
211〜R213のアルキル基、フェニル基またはアシル基に置換していてもよい基としては、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。該フェニル基に置換していてもよい基としては、スルホ基、カルボキシ基、水酸基などが挙げられる。
【0063】
なお、R91およびR92が結合して環を形成する場合などは、カルボニル基、チオカルボニル基などを有する基をアミノ基の置換基として用いることができる。
【0064】
式(1−3)で表される基は、下記式(1−4)または下記式(1−5)で表される基であることが好ましい。
【0065】
【化16】

(式(1−4)中、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基または置換基を有していてもよい炭素数1〜7のアシルアミノ基を表す。)
【0066】
11およびR12が置換基を有していてもよいアルキル基である場合の具体例としては、上記Rのアルキル基と同様である。
【0067】
11およびR12が、置換基を有していてもよいアルコキシ基である場合の、置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、炭素数が1以上、4以下、好ましくは3以下のアルコキシ基である。該アルコキシ基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、2,3−ジヒドロキシプロポキシ基等の置換基を有していてもよいアルコキシ基が挙げられる。
【0068】
置換基を有していてもよいアシルアミノ基としては、通常、−NHCOR99で表され、R99は、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該アルキル基は、炭素数が通常1以上、通常4以下、好ましくは2以下のアルキル基である。該アルキル基および該フェニル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。アシルアミノ基の具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
【0069】
【化17】

(式(1−5)中、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは、OまたはNHを表す。Yは、OまたはSを表す。)
【0070】
13およびR14が置換基を有していてもよいアルキル基である場合の具体例としては、上記Rのアルキル基と同様である。
【0071】
前記式(1−3)で表される基は、好ましくは炭素数3以上12以下であり、具体的には、次のようなものが挙げられる。
【0072】
【化18】

【0073】
<n>
nは0または1を表す。
【0074】
<分子量>
式(1)で表される異方性色素膜用アゾ色素(以下、「本発明の色素」という)の分子量は、遊離酸の形で、1500以下が好ましく、1200以下がさらに好ましい。
【0075】
<水溶性>
本発明の色素は、通常、水溶性の色素である。
【0076】
<塩型>
本発明の色素は、遊離酸の形(遊離酸型)のまま使用してもよく、酸基の一部が塩型を取っているものであってもよい。また、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。また、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。塩型の交換方法としては、公知の方法を任意に用いることができ、例えば以下の方法が挙げられる。
【0077】
1)塩型で得られた色素の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
2)塩型で得られた色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば塩化ナトリウム、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3)塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性陽イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
【0078】
また、本発明の色素の酸性基が遊離酸型をとるか、塩型を取るかは、色素のpKaと色素溶液のpHに依存する。そのため、本発明の色素の酸性基は、遊離酸型、いずれの塩型、酸性基が2つ以上ある場合には遊離酸型と塩型の混合または2種類以上の塩型の混合など、さまざまな型を取りうる。特に、異方性色素膜中でのアゾ色素の酸性基は、後述する異方性色素膜用組成物の好ましいpHや異方性色素膜用色素を含んだ基材の解離性の塩を含む溶液での処理の影響を受けて、異方性色素膜を作成する工程で用いたものとは異なる塩型をしていることもありうる。
【0079】
上記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、または有機アミンの塩が挙げられる。
【0080】
有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン等が挙げられる。
これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。また、化合物の一分子内に複数種混在してもよいし、組成物中に複数種混在していてもよい。
【0081】
本発明の色素の酸性基の好ましい型としては、色素の製造工程、後述する異方性色素膜用組成物の内容や好ましいpHなどによって異なるが、水に対して高溶解度が必要な場合(例えば、基材への色素移行能を高めるため、異方性色素膜用組成物中において高い色素濃度が必要な場合など)には、リチウム塩、トリエチルアミン塩、水溶性基が置換した有機アミン塩またはこれらの塩を1以上有することが好ましい。一方、水に対して低溶解度が必要な場合(例えば、色素製造工程において色素溶液から該色素を析出させたい場合など)には、遊離酸の型、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩またはこれらの塩を1以上有することが好ましい。
【0082】
<具体例>
本発明の色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の具体例は、遊離酸の形で記載する。
【0083】
【化19】

【0084】
【化20】

【0085】
【化21】

【0086】
【化22】

【0087】
【化23】

【0088】
<製造方法>
本発明の色素は、それ自体周知の方法に従って製造することができる。
例えば上記のNo.(2−1)で示される色素は、下記の方法で製造することができる。
即ち、4−アミノベンゼン−4´−スルホン酸ナトリウムを、常法[例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁第409頁参照]に従ってジアゾ化し、2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)に縮合させることにより、目的の色素No.(2−1)が得られる。
【0089】
[異方性色素膜用組成物]
異方性色素膜を製造するにあたって、異方性色素膜用組成物を用いることができる。
異方性色素膜用組成物は、本発明の色素を含有し、通常さらに溶剤を含有する。
この組成物中または下記詳述する異方性色素膜において、本発明の色素は1種を単独で使用できるが、本発明の色素同士やヨウ素等の他の二色性物質を組み合わせて使用することもできる。更には配向を低下させない程度に紫外線吸収色素や近赤外線吸収色素などの他の色素と混合して用いることができる。これにより、異方性色素膜の耐久性の向上、色相の補正、偏光性能の向上を図ると共に、各種の色相を有する異方性色素膜を製造ができる。
【0090】
異方性色素膜用組成物に用いる溶剤としては、水、水混和性のある有機溶剤、或いはこれらの混合物が適している。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶剤等の単独または2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0091】
これらの溶剤に色素を溶解する場合の濃度としては、色素の溶解性や会合状態の形成濃度にも依存するが、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0092】
また、異方性色素膜用組成物は、色素の溶解性向上等のため、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を加えることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれも使用可能である。その添加濃度は通常0.01重量%以上、10重量%以下が好ましい。
【0093】
さらに、本発明に係る異方性色素膜用組成物は、基材への染着性などの向上ため、必要に応じて添加剤を用いることができる。具体的には、浅原照三編「新染料加工講座 第7巻 染色II」共立出版株式会社、1972年6月15日発行、233頁から251頁や山下雄也、根本嘉郎共著「高分子活性剤と染色助剤の界面化学」株式会社誠文堂新光社、1963年9月5日発行、94頁から173頁などに記載の繊維用染色に用いられる染色助剤、およびその手法や前述の界面活性剤、アルコール類、グリコール類、尿素、塩化ナトリウム、ボウ硝等の無機塩などである。その添加濃度は通常0.01重量%以上、10重量%以下が好ましい。
【0094】
[異方性色素膜]
本発明の色素を用いて異方性色素膜を製造することができる。
この異方性色素膜は、本発明の色素の他に、必要に応じてその他の色素、例えば、公知の青色二色性染料、ヨウ素等や上記のような界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。もちろん、本発明の色素で表される色素同士を組み合わせて含有していてもよい。
【0095】
異方性色素膜の作製方法としては、次の(a)〜(c)の方法などが挙げられる。
(a)延伸したポリビニルアルコールなどの高分子基材を、色素を含有する溶液(異方性色素膜用組成物)等で染色する方法
(b)ポリビニルアルコールなどの高分子基材を、色素を含有する溶液(異方性色素膜用組成物)等で染色した後、延伸する方法
(c)ポリビニルアルコールなどの高分子基材を、色素を含有する溶液(異方性色素膜用組成物)等の溶液に溶解し、フィルム状に成膜した後に延伸する方法
【0096】
本発明の色素を用いて、異方性色素膜を形成する場合、例えば前記(a)〜(c)のいずれの方法においても、アゾ色素を適当な溶剤に溶解して使用する。溶剤としては、前記異方性色素膜用組成物に含有する溶剤が挙げられる。
【0097】
なお、前記(a)、(b)の方法における色素溶液で染色する基材や、前記(c)の方法において色素とともに延伸されてなる基材としては、ポリビニルアルコール系の樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールなど、色素との親和性の高い高分子材料が好ましい。
【0098】
ポリビニルアルコールの種類としては、一般的に高分子量かつ高ケン化度のものが、偏光度や二色性などの光学特性の観点から好ましいが、温湿度による収縮による欠陥を抑止することや光学特性と耐環境性能の両立を図るなどの目的から、二色性物質の種類とポリビニルアルコールのケン化度や変性度(疎水性共重合成分比)を適宜調整したポリビニルアルコール誘導体を選択することができる。
【0099】
高分子材料と色素の相互作用を制御する具体的手法としては、高分子材料と色素の各々にプロトン供与性の−OH,−NH,−NHR,−NHCO−,−NHCONH−などに対し、プロトン受容性の−N=N−,−OH,−NH,−NRR′,−OR,−CN,−C≡C−およびフェニル基やナフチル基などの芳香環を官能基として組み合わせることにより、有効なものにすることができる(RおよびR′は任意の置換基である)。さらに官能基の密度を調整することで、二色性や染着性の向上に効果が得られる。
【0100】
前記(a)〜(c)の方法における、染色および成膜並びに延伸は、一般的な下記の方法で行うことができる。
【0101】
上記の異方性色素膜用組成物および必要に応じて塩化ナトリウム、ボウ硝等の無機塩、界面活性剤等の染色助剤を加えた染浴中に、通常35℃以上、通常80℃以下で、通常10分以下、高分子フィルムを浸漬して染色し、次いで必要に応じてホウ酸処理し、乾燥する。あるいは、高分子重合体を水および/またはアルコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド等の親水性有機溶媒に溶解し、本発明に係る異方性色素膜用組成物を添加して原液染色を行い、この染色原液を流延法、溶液塗布法、押出法等により成膜して染色フィルムを作成する。溶媒に溶解させる高分子重合体の濃度としては、高分子重合体の種類によっても異なるが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上程度で、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下程度である。また、溶媒に溶解する色素の濃度としては、高分子重合体に対して通常0.1重量%以上、好ましくは0.8重量%以上程度で、通常5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下程度である。
【0102】
上記のようにして染色および成膜して得られた未延伸フィルムは、適当な方法によって一軸方向に延伸する。延伸処理することによって色素分子が配向し、二色性が発現する。一軸に延伸する方法としては、湿式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にてロール間圧縮延伸を行う方法等があり、いずれの方法を用いて行ってもよい。延伸倍率は2倍以上、9倍以下にて行われるが、高分子重合体としてポリビニルアルコールおよびその誘導体を用いた場合は3倍以上、6倍以下の範囲が好ましい。
【0103】
延伸配向処理したあとで、該延伸フィルムの耐久性向上と偏光度向上の目的でホウ酸処理を実施する。ホウ酸処理により、異方性色素膜の光線透過率と偏光度が向上する。ホウ酸処理の条件としては、用いる親水性高分子重合体および色素の種類によって異なるが、一般的にはホウ酸濃度としては、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上程度で、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下程度である。また、処理温度としては通常30℃以上、好ましくは50℃以上で、通常80℃以下の範囲にあることが望ましい。ホウ酸濃度が1重量%未満であるか、処理温度が30℃未満の場合は、処理効果が小さく、また、ホウ酸濃度が15重量%を超えるか、処理温度が80℃以上を超える場合は異方性色素膜がもろくなり好ましくない。
【0104】
(a)〜(c)の方法により得られる異方性色素膜の膜厚は通常50μm以上、特に80μm以上で、200μm以下が好ましく、特に100μm以下であることが好ましい。
【0105】
本発明の色素を含有する異方性色素膜は、光吸収の異方性を利用し、直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜として機能するほか、膜形成プロセスと基材や色素を含有する組成物の選択により、屈折率異方性や伝導異方性などの各種異方性膜として機能化が可能となり、様々な種類の、多様な用途に適用可能な偏光素子とすることができる。
【0106】
該異方性色素膜を偏光素子として使用する場合、前記(a)〜(c)に代表される方法で作成された異方性色素膜そのものを使用してもよく、また該色素膜上に保護層、粘着層、反射防止層、位相差層など、様々な機能をもつ層を積層形成し、積層体として使用してもよい。
【0107】
本発明の色素を含有する異方性色素膜を基板上に形成して偏光素子として使用する場合、形成された異方性色素膜そのものを使用してもよく、また上記の様な保護層のほか、粘着層或いは反射防止層、配向膜、位相差フィルムとしての機能、輝度向上フィルムとしての機能、反射フィルムとしての機能、半透過反射フィルムとしての機能、拡散フィルムとしての機能などの光学機能をもつ層など、様々な機能をもつ層を湿式成膜法などにより積層形成し、積層体として使用してもよい。
【0108】
これら光学機能を有する層は、例えば以下の様な方法により形成することが出来る。
【0109】
位相差フィルムとしての機能を有する層は、例えば特許第2841377号公報、特許第3094113号公報などに記載の延伸処理を施したり、特許第3168850号公報などに記載された処理を施したりすることにより形成することができる。
【0110】
また、輝度向上フィルムとしての機能を有する層は、例えば特開2002−169025号公報や特開2003−29030号公報に記載されるような方法で微細孔を形成すること、或いは、選択反射の中心波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を重畳することにより形成することができる。
【0111】
反射フィルムまたは半透過反射フィルムとしての機能を有する層は、蒸着やスパッタリングなどで得られた金属薄膜を用いて形成することができる。
【0112】
拡散フィルムとしての機能を有する層は、上記の保護層に微粒子を含む樹脂溶液をコーティングすることにより、形成することができる。
【0113】
また、位相差フィルムや光学補償フィルムとしての機能を有する層は、ディスコティック液晶性化合物、ネマティック液晶性化合物などの液晶性化合物を塗布して配向させることにより形成することができる。
【0114】
本発明の色素を用いた異方性色素膜は、広範囲な色表現が可能で、高耐熱性の偏光素子を得ることができるという点から、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイだけでなく液晶プロジェクタや車載用表示パネル等、高耐熱性が求められる用途に好適にも使用することができる。
【実施例】
【0115】
次に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0116】
なお、以下の実施例中、二色比は、プリズム偏光子を入射光学系に配した分光光度計で異方性色素膜の透過率を測定した後、次式により計算した。
二色比(D)=Az/Ay
Az=−log(Tz)
Ay=−log(Ty)
Tz:色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率
Ty:色素膜の偏光軸方向の偏光に対する透過率
【0117】
実施例1
蒸留水100重量部に下記構造式の色素No.(2−1)の色素のナトリウム塩0.05重量部と無水硫酸ナトリウム0.02重量部を加えて攪拌溶解し、染色液とした。日本合成化学工業社製のポリビニルアルコールフィルム(OPLフィルム)を、50℃の染色液に表1に記載した時間浸漬して染色し、50℃の水浴で余剰の染料を洗浄した後、50℃の4重量%ホウ酸水溶液中で6倍に延伸した。延伸後、室温の水浴中で余剰のホウ酸を洗浄し、送風乾燥することで異方性色素膜を得た。この異方性色素膜の最大吸収波長とその波長での単体透過率および二色比を表1に記載するが、高い二色性を有していることが分かった。
【0118】
【化24】

【0119】
実施例2
上記色素No.(2−1)の色素のナトリウム塩を、下記構造式の色素No.(2−9)の色素のナトリウム塩に変更し、表1に記載した染色時間とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性色素膜を得た。この異方性色素膜の最大吸収波長とその波長での単体透過率および二色比を表1に記載するが、高い二色性を有していることが分かった。
【0120】
【化25】

【0121】
実施例3
上記色素No.(2−1)の色素のナトリウム塩を、下記構造式の色素No.(2−8)の色素のナトリウム塩に変更し、表1に記載した染色時間とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性色素膜を得た。この異方性色素膜の最大吸収波長とその波長での単体透過率および二色比を表1に記載するが、高い二色性を有していることが分かった。
【0122】
【化26】

【0123】
実施例4
上記色素No.(2−1)の色素のナトリウム塩を、下記構造式の色素No.(2−5)の色素のナトリウム塩に変更し、表1に記載した染色時間とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性色素膜を得た。この異方性色素膜の最大吸収波長とその波長での単体透過率および二色比を表1に記載するが、高い二色性を有していることが分かった。
【0124】
【化27】

【0125】
実施例5
上記色素No.(2−1)の色素のナトリウム塩を、下記構造式の色素No.(2−17)の色素のナトリウム塩に変更し、表1に記載した染色時間とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性色素膜を得た。この異方性色素膜の最大吸収波長とその波長での単体透過率および二色比を表1に記載するが、高い二色性を有していることが分かった。
【0126】
【化28】

【0127】
比較例1
上記色素No.(2−1)の色素のナトリウム塩を、下記構造式の色素No.(i−1)の色素のナトリウム塩に変更し、表1に記載した染色時間とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性色素膜を得た。この異方性色素膜の最大吸収波長とその波長での単体透過率および二色比を表1に記載するが、二色性が不十分であることが分かった。
【0128】
【化29】

【0129】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離酸の形が、下記式(1)で表されることを特徴とする、異方性色素膜用アゾ色素。
【化1】

[(式(1)中、Dは、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
nは、0または1を表す。
は、下記式(1−1)〜(1−3)のいずれかを表す。
【化2】

(式(1−1)中、環Aは、−OR以外にも置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
【化3】

(式(1−2)中、環Bは、−NR以外にも置換基を有していてもよい。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
【化4】

(式(1−3)中、Q11およびQ12は、それぞれ独立に、酸素原子またはNH基を表す。R91およびR92は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアミノ基を表す。R91とR92は、結合して環を形成していてもよい。)]
【請求項2】
が、スルホ基およびカルボキシ基からなる群より選ばれる水溶性基を置換基として1以上有する、フェニル基またはナフチル基であることを特徴とする、請求項1に記載の異方性色素膜用アゾ色素。

【公開番号】特開2008−56898(P2008−56898A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154158(P2007−154158)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】