説明

異物分離方法及び装置

【課題】期限切れのコンビニ弁当やレストラン残さに含まれる異物を、より安全に、より短時間に、より正確にエコフィードより分離する方法及び装置を提供することを目的とする。
【解決手段】異物分離と発酵処理を一体化させた処理装置とする。食品残さ等の有機物が麹菌による発酵で短時間で液状化する事に着目して、まず簡単に破砕した食品残さを発酵タンクに投入し麹菌で発酵させ液状化する。液状化した後に割り箸や発泡スチロール等の比重の低い表面に浮いた異物を分離する。一方で、発酵液をパンチングメタル又は網の穴を通過させる事で、その他の異物も分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品廃棄物からリキッドフィードを生産する際に異物分離を行う方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人はすでに麹菌を活用したリキッドフィード生産装置を開発しているが(特許文献1参照)異物分離が問題となっていた。従来の異物分離装置は、丸穴を空けたドラム内に食品残さを投入し高速回転させることで、スラリー状になった有機物をその穴から外部に排出させる一方、異物を内部に残すという原理を応用したものが主流である。
【0003】
しかし、この装置には以下の3つの欠点があった。
1.時間がかかる。
ドラムの回転にあわせて少量ずつ食品残さを投入しなければならないので、その処理に時間がかかり効率的でない。
2.危険かつ故障しやすい。
ドラムが内部で高速回転しているので、異物がコーヒーカップのような割れ物である場合には破片が飛び散り投入者にとっても危険であるし装置も往々にして損傷を受ける。また小さな破片はエコフィードに混入するのでこれを給餌される家畜にとっても危険である。
3.異物分離が完全でない。
爪楊枝や割り箸のように小さい異物は分離用の穴をすりぬけてエコフィードに混入し、これを食べた豚の喉や歯茎に刺さり獣医を呼ぶ事故も往々にして発生する。また食品の容器として使用されている発泡スチロールなどは壊れやすいため、高速回転しているドラム内への投入と同時に砕けてしまい分離用の穴をすりぬけてしまう。
【0004】
平成18年現在で食品卸小売り業界ならびに外食産業から排出される食品残さはおのおの年間336万tと304万tであり、このうち飼料として再利用されているのはおのおのわずか13%と4%である。これは食品製造業での再利用率に比較して極めて低い値である。その大きな原因の一つが含まれる異物の多さにある。従来の異物分離装置では一度に大量処理することが出来ないからである。異物分離を短時間に効率的に処理出来ればその再生利用率を大幅に向上できるものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−178787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
厨芥を微生物処理する前に異物の排除を行い、10mm程度の穴あきドラムに厨芥を入れて高速回転させるような従来の方法では、高速回転のために大きなエネルギーが必要になるし、発泡スチロールの弁当箱などは壊れて穴を通ってしまい、ビニール袋に入ったものは袋が破れず異物のほうに残ってしまうなどの問題があった。
本発明は上述の課題をすべて解決するために、より安全に、より短時間に、より正確に異物をエコフィードより分離する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、異物分離と発酵処理を一体化させた処理装置とすることを最も主要な特徴とする。
本発明の方法ではまず、必要に応じてスライサーなどによってある程度小さな塊した(袋を破る、弁当箱を大まかに壊す)食品廃棄物を麹発酵する。
発酵によって食品廃棄物が液状化した後、網又はパンチング穴のストレーナーを通過した流動物を流し出し(あるいは吸い出し)、浮いてきた異物とストレーナーを通らなかった異物を取り除く。
【0008】
本方法は、食品残さ等の有機物がある種の麹菌の発酵により短時間で液状化される事を利用したものである。
まず食品廃棄物を発酵タンクに投入して麹菌発酵させ液状化する。酸生産性麹菌、好ましくはAspergillus.awamoriの発酵によって液状化させる。液状化することによって割り箸や発泡スチロール等の比重の低い異物は表面に浮くため容易に分離することができる。一方で、ストレーナーを通過した液状物をタンク下部又は底部から排出する事で、液状化しなかったその他の異物も分離することができる。
本発明によれば、これまで分離不能とされてきた爪楊枝、発泡スチロールの弁当箱の分離を完全に行うとともに、目詰まりによる運転中の非常停止の頻度を激減させることができる。特に異物を多く含む食品卸小売業や外食産業の食品残さ処理に最適の異物分離法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、発酵と異物分離を組み合わせる事により短時間で効率的な異物分離が可能である。
また、期限切れのコンビニ弁当やレストラン残さに含まれる異物をより確実に分離することができる。食品残さが液状化するため、比重の軽い異物(割り箸、爪楊枝、発泡スチロールのようなもの)の除去率が非常に高いという利点がある。
さらに、ストレーナーの分離穴を通過する液状物はそれらの軽比重異物を除いたものであるため、目詰まりがなく稼働時の異常停止発生率も非常に低いという利点もある。
また、高速回転分離式ではないので異物分離時の飛散もなく、異物分離が確実なため家畜に安全な飼料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明装置の例を装置外観の斜視図で示す。
【図2】本発明装置の例を装置内部の斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好適な実施の形態を説明する。
本発明に係る方法の好ましい態様としては、まず水分75%以上、より好適には80%以上の食品残さを発酵タンクに投入する。食品残さは先に殺菌処理しておいてもよく、例えば異物を含んだままの状態で加熱殺菌し冷却したものを使用する。また、食品残さは、好ましくは包装材(弁当箱や袋など)が破れる程度に簡単に破砕しておく。食品残さは浮上異物がストレーナーより上に浮くように十分な量を投入することが好適である。
ここにクエン酸生成能の高いAspergillus.awamori等の酸生産性麹菌の胞子を散布し培養する。好適には、食品残さ1Kgに対して10個以上の麹菌胞子濃度となるように散布する。
麹菌が優勢に生育し好気発酵が進むように、至適温度にて好ましくはおよそ30℃にて通気撹拌しながら一晩培養する。好適には、タンク内原料1Kgに対して0.8リットル/分の通気を行う。
麹菌の成長とともに麹菌から酸が分泌されることによって腐敗が防止され、一方麹菌から同様に液化酵素が分泌され食品残さの粘度が低下する。粘度は、例えば5000CP以上から300CP程度へと激減する。培養時間は例えば6〜24時間である。好ましくは粘度5000mPa・s未満、より好ましくは粘度4000mPa・s未満の液状にまで発酵させる。
【0012】
液状化によって、プラスチックや木製などの比重の軽い異物は浮くため容易に除去できる。浮遊した異物は掬い取ってもよいが、下部からの液状物取り出し量を調節してタンク内に浮遊異物を残すようにしてもよい。液状物取り出し量の調節によって浮遊異物を分離する場合は、浮遊異物を含む上層がストレーナーより上の高さに残る限界まで液状物を排出させ、ストレーナー捕獲物と一緒に分離してもよい。
【0013】
また、その他の液状化しなかった異物はパンチングメタル又は網などのストレーナーによって分離する。パンチングメタルのストレーナーがより好適である。ストレーナーは好ましくは直径1cm以下の丸穴パンチングメタル又は目のサイズが1cm以下の金網である。また、ストレーナーは発酵タンク内に、投入口と液状物取り出し口との間に設けられ、ストレーナーに捕獲された異物は、好適にはストレーナーの高さに開口する異物取り出し扉から取り出す。
ストレーナーの穴を通過した液状物は発酵タンクの下部または底部から抜き取られる。液状物は吸引して発酵タンクから取り出してもよいし、重力によって液状物を流し出してもよい。
得られた液状物は、麹菌酵素を含む栄養価の高い液体飼料として利用することができる。
【0014】
本発明に係る装置は、異物分離装置と発酵処理装置が一体化した食品廃棄物処理装置である。本装置は上記方法の実施を可能にする。
本発明に係る装置に破袋投入装置を連結してもよい。破袋投入装置は、袋体に入った食品残さを温和に裁断する。従来の破袋は高速回転するドラム内で行われるので発泡スチロールなどは粉々に粉砕されてしまい分離用の穴を容易に通過してしまうが、本発明態様では液状化分離するため包材が破れる程度の裁断でよく、そのまま発酵タンクに投入して包材を容易に確実に分離することができ、温和な分離が可能である。
発酵タンクは、異物を含んだままの食品残さを麹菌によって発酵処理できるタンクである。発酵処理によって流動性を高めることが目的である。発酵タンクは円筒型でも角型でもそれ以外の形でもよいが、好ましくは円筒型である。
発酵タンクには撹拌手段を設けると発酵が促進され好適である。麹菌の発酵を促進させるための撹拌であるから、撹拌翼は例えば2〜12回転/分で回転する。
さらに好適には好気的発酵を促すエアレーション装置を備える。
【0015】
異物分離装置は発酵タンクと一体型である。発酵タンク内には、液状化物が重力によって又は吸引によって通過するように設けられたパンチングメタル又は網のようなストレーナーが設けられ、液化されずに残った異物を分離する。好適には、パンチングメタルのストレーナーである。穴のサイズは、例えば直径1cm以下の丸穴パンチングメタル又は目のサイズが1cm以下の金網である。ストレーナーは、好ましくは発酵タンクの下半分に水平に取り付けられ、それにより発酵タンクの内部は2つに分割される。
一方、爪楊枝や発泡スチロールなどの浮遊異物は発酵後の液状化物の表面に浮く。従って、発酵タンクから液状物を取り出す際、浮遊異物を含む上層がストレーナーより上に残るように液状物取り出し量を調節できるよう、液状物取り出し口には調節栓を設けてもよい。液状物取り出し口は、発酵タンクの底部又は下部に取り付けられる。
異物を取り出すための開閉可能な扉を、ストレーナーより高い位置に、好ましくは開口部下辺がストレーナーと同じ高さになるように設けてもよい。異物取り出し用のスクレーパーを取り付けてもよいが、発酵タンクが円筒形であるような場合には回転する撹拌翼底辺がストレーナーの上全体と接するように撹拌翼を設置することで、スクレーパーとしても機能させることができる。しかしながら、発酵タンクを角型にした場合には、撹拌翼とは別にスクレーパーを取り付けるのが便利である。
【実施例1】
【0016】
本発明装置の一実施例概略図を図1及び図2に示す。図1は装置外観を示す斜視図、図2は装置内部の斜視図である。
包装材を簡単に裁断し、水分を80%以上に調整した食品廃棄物を、円筒型の発酵タンク1の上部から投入する。さらに酸生産性麹菌であるAspergillus.awamoriを添加する。
エアレーション装置によってエアレーションを行いながら撹拌翼7を回転させて、食品廃棄物を発酵させる。食品廃棄物はスラリー状から液状に変化する。
12時間以上撹拌発酵させた後、取り出し口3から液状物を吸引し、液面がパンチングメタルより1cm〜5cm高になった時点で吸い出しを停止する。この液状物はリキッドフィードとして家畜の飼料に利用する。
一方、パンチングメタルの高さにある異物取り出し口2を開き、撹拌翼7を回転させると、パンチングメタル6の上に残った発砲スチロール、ビニール、爪楊枝、その他液状化しなかった廃棄物が全て押し出される。
【符号の説明】
【0017】
1 発酵タンク
2 異物取出口
3 取出口
4 エアレーションポンプ
5 撹拌用モーター
6 パンチングメタル
7 撹拌翼
8 エアレーションパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品廃棄物を酸生産性麹菌によって発酵処理する方法において、
異物を含んだままの食品廃棄物と酸生産性麹菌を、パンチングメタル又は網のストレーナーを有する発酵タンクに投入し、
麹菌発酵によって食品廃棄物が液状化した後に浮いた異物を、
掬い出して分離する、あるいは液状物下層のみをタンクから取り出してタンク内に上層を残すことにより分離する方法。
【請求項2】
発酵タンク投入の前に異物を含んだままの食品廃棄物を裁断することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸生産性麹菌が、Aspergillus.awamoriであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
麹菌発酵用の発酵タンクを有する、食品廃棄物の液状化処理装置であって、
発酵タンク内部を二分するようにタンク下半分に水平に取り付けられたパンチングメタル又は網のストレーナーを備え、ストレーナーよりも下部又はタンク底部に液状物取り出し口を有する装置。
【請求項5】
開閉可能な異物取り出し口を、取り出し口下辺がストレーナーの高さになるように設けることを特徴とする請求項4に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−92881(P2011−92881A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250289(P2009−250289)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(505165756)株式会社源麹研究所 (2)
【Fターム(参考)】