説明

異物除去装置

【課題】異物除去装置を提案する。
【解決手段】異物除去装置1は、ワークWを搬送する長尺形状のトラフ20と、該トラフを振動させてワークを一定方向へ搬送する力を発生させる振動モータ30とを有している振動コンベア10と、前記トラフの搬送方向WDでの途中に設定される異物除去ステーションSTとを含み、前記異物除去ステーションSTは、前記トラフ20の下面側から上面側への空気の流れAを許容するパンチ孔25aをトラフ20の全幅に亘って複数設けてある開口部25と、該開口部25の上方に離間して配置される空気吸引口51を備えて前記パンチ孔を通過した空気を吸引する吸引手段50とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動コンベアを利用して異物を除去する異物除去装置に関する。より詳細には、被搬送物(以下、ワークと称す)を振動コンベアで一定方向へ搬送しながら、ワークに付着あるいは混入している異物を、分離し、更にこれを除去することも可能な異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製造業において、工場で製造した自社の製品が一定品質を保持して出荷されるように、異物混入防止の検査がなされている。例えば、その製品が消費者に提供される食品などである場合には、髪の毛、糸クズ、包装材のクズ、ホコリなどの異物が混入していると製品の信用が一気に傷付くことになる。よって、異物を確実に除去することが望まれており、そのような異物除去装置について従来から要請がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、茶葉などの食品材料に混入する異物を選別して、分離、除去するための異物選別装置を提案している。この異物選別装置は、これより以前において、作業者が不良の茶葉や異物を目視で発見して、手作業で摘み取るという作業を行っていたものを改善するために提案された装置である。この装置は、一般的な搬送コンベアの途中に、振動板などでコンベアベルトを叩打して振動させる振動部を設けることで、団子状の塊となり易い茶葉(ワーク)を均一に分散させて、作業者による不良物や異物の発見と、その摘み取りを容易にしている。また、この異物選別装置は、振動部の鉛直上方に電磁石などで構成した異物吸着体を配設して茶葉の品質を悪化させる鉄粉などを除くことができるように改善した構成についても開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−306070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による異物選別装置は一般的な搬送コンベアを改造してコンベアベルトを叩打して振動させる振動部を設けている。そのため、搬送コンベアの構造が複雑化することが避けられない。また板状部材でコンベアベルトを局所的に叩打するので、コンベアベルトの早期の摩耗や破損などの懸念もある。更に、この異物選別装置は茶葉を均一に分散させ、これにより作業者による不良物や異物の発見を容易にすることを意図しており、発見した異物は作業者が手作業で摘み取るので、取り損じなどの可能性がある。
そして、特許文献1による異物選別装置は手作業では除き難い異物である鉄粉などを除去する異物吸着体を設ける構造についても開示しているが、対象が手作業では除き難い異物である鉄粉などの吸着に限られている。この異物選別装置は、作業者が発見した異物などは、手作業で摘み取ることを前提にしているので、長時間作業での疲労や、取り損じが発生し易いという根本的な問題がある。
【0006】
よって、本発明の目的は、人を介さずに、ワークに付着、混入している異物を分離でき、更にこの異物を除去することも可能な異物除去装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は本発明の異物除去装置によって達成され、この異物除去装置は、ワークを搬送する長尺形状のトラフと、該トラフを振動させてワークを一定方向へ搬送する力を発生させる振動モータとを有している振動コンベアと、前記トラフの搬送方向での途中に設けられ、ワークに対して異物除去処理を実行する異物除去ステーションとを含み、
前記異物除去ステーションは、前記トラフの下面側から上面側への空気の流れを許容するパンチ孔を前記トラフの全幅に亘って複数設けてある開口部と、該開口部の上方に離間して配置される空気吸引口を備えて前記パンチ孔を通過した空気を吸引する吸引手段とを含んでいることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
そして、前記吸引手段は、前記空気吸引口を有する吸口部と、吸引する空気流を発生させる負圧源と、前記空気吸引口と負圧源とを少なくとも接続する管路部を有し、前記空気吸引口から吸引した空気中に含まれる異物を捕捉する異物捕捉手段とを備えているのが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、前記管路部は吸引した空気を吐き出す終端開口部を含み、該終端開口部が前記異物除去ステーションの前記開口部の下面に向けて配置してあるのが好ましい(請求項3)。
また、前記異物除去ステーションの下流にワークへの異物除去処理を再度繰り返すべく、ワークの表裏を反転させる反転機構を更に設けておけば(請求項4)、表裏がある場合のワークの表裏面それぞれについて、異物除去処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異物除去装置では、振動コンベアの途中に異物除去ステーションが設置してある。この異物除去ステーションでは、振動を受けて繰り返し跳ね上げられ且つ展開しながら(広がりながら)搬送されているワークが、開口部を通過する際に開口部のパンチ孔から上方の空気吸入口へと流れる上昇空気流が吹き付けられることになる。よって、発明によると、ワークに付着あるいは混入していた異物を上昇空気流により分離でき、そしてワークに比して相対的に軽量である髪の毛、糸クズ、ホコリなどの異物であれば、振動コンベアの搬送速度や振幅と共に、上昇空気流の量やその圧力を調節することで、人手を介さずに分離した異物を空気吸入口側に吸い込んで回収、除去することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る異物除去装置について示した正面図である。
【図2】図1におけるII−II矢視方向へ見たときの側面図である。
【図3】図2中の矢印Xで示す異物除去ステーションの周辺を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る異物除去装置について示した正面図、そして図2は図1におけるII−II矢視方向へ見たときの側面図である。
この異物除去装置1は、主要構造として振動コンベア10を備えている。振動コンベア10は、従来のものと同様の構造である。すなわち、この振動コンベア10は架台12を備え、この架台12は下側に複数の支持脚14、上側には正面視において概ね矩形型の支持フレーム16を備えている。各支持脚14と架台12との間には、弾性変形可能なゴムスプリングやコイルばね(内部の詳細な構造は省略する)を用いて形成した防振装置13が配備してある。
【0013】
振動コンベア10の上方位置には、ワークを搬送する長尺で溝形状のトラフ20が配設される。このトラフ20は支持フレーム16の長手方向(ワーク搬送方向WDと平行、図1では左右方向)に延在しており、複数の加振ばね21を介して、前記支持フレーム16に支持されている。
各部をより詳しく説明すると、図2で示すように架台12上において支持フレーム16は前後(図2においては左右)に間隔も持って対向する1組の壁構造を含むフレームであり、また各加振ばね21はリーフスプリングからなっている。加振ばね21はトラフ20の両側にて、図1で示すように支持フレーム16の長手方向に所定の間隔を存して配置され、その上下端がブラケット22、24のそれぞれを介してトラフ20及び支持フレーム16に取り付けられている。
【0014】
そして、図1から明らかなように各加振ばね21は所定の角度をもって傾斜し、支持フレーム16の長手方向に隣接する加振ばね21は平行四辺形の互いに対向する二辺を形成している。なお、ここでは支持フレーム16の長手方向で両端の2カ所にだけ加振ばね21を配置してある例であるが、必要により適宜に、特にトラフ20の長さに応じて加振ばね21の配置数は増加される。
【0015】
そして、ここで例示する構造では、支持フレーム16の一端側(図1で左端側)を傾斜させて取付面16aとしてある。この取付面16aに取り付け板31及びホルダ32を介してワークを一定方向へ搬送する力を発生させる振動モータ30が支持フレーム16の前後に一対で取り付けられている。これら振動モータ30はその回転軸が加振ばね21と平行となるように傾斜して取り付けられ、回転軸の両端に取付けられた偏心ウエイト(図示しない)の回転により、加振ばね21に対して直交する方向に加振力を発生する。より具体的には、振動モータ30はその加振力の作用線がトラフ20の重心を通過すべく配置されている。
【0016】
各振動モータ30が駆動されると、これら振動モータ30が発生する加振力は加振ばね21を介してトラフ20に伝達され、この結果、トラフ20が振動することで、トラフ20上のワークを一方向(図1では右方向)に搬送できる。なお、トラフ20の下流側(図1で右側)の搬送面Tfについては図1で図示するように、開閉可能なダンパとしておけば、下流に配置してある搬送コンベア100に異物除去したワークを簡単に移行させることができる。
【0017】
そして、図示している異物除去装置1は、上記のように振動コンベア10を主要構造として、振動コンベア10のトラフ20上で搬送しながら異物除去をするための新規な構造が設けてある。以下では、この構造を説明する。ここで更に図3を参照する。図3は図2中の矢印Xで指し示している部分の拡大図である。
この異物除去装置1は、トラフ20の搬送方向WDの途中に、異物除去ステーションSTを備えている。図において、異物除去ステーションSTは、後述するように開口部25及び空気吸引口51を備えて構成されている。
異物除去ステーションSTは、トラフ20上を搬送されるワークが通過するとき、このワークに付着或いは混入している異物に、上昇空気流を吹き付けることによりワークから異物を分離し、更に除去するための構成である。
【0018】
図3で示すように、異物除去ステーションSTには、開口部25が設けられ、この開口部25は上記トラフ20に下面側から上面側への空気の流れAを許容するパンチ孔25aを複数設けたものである。詳しくは、この開口部25のパンチ孔25aはトラフ20の全幅に亘って延び、且つワークの搬送方向に並ぶ複数の孔列を形成している。なお、パンチ孔25aの孔径はトラフ上を搬送されるワークWが落下したり、嵌り込んだりせず、その一方で、異物FをワークWから分離できる程度の空気流Aを形成できる大きさに設定される。
そして、この開口部25の上方に離間して、空気吸引口51が配置されている。この空気吸引口51は空気を吸引する空気吸引構造体(吸引手段)50の一部を成しており(図2、参照)、空気を吸引する先端部となっている。この空気吸引口51で空気を吸引することで、上記パンチ孔25aを介して下から上に向けて通過する(吹き上がる)空気流Aが形成される。
ここで例示の吸引構造体(吸引手段)50は、前記空気吸引口51を有する吸口部と、吸引する空気流を発生させる負圧源となる吸引用のブロア(送風機)52、そして空気吸引口51とブロア52とを接続する管路部としてのダクト53などを備えて構成してある。そして、空気吸引口51から吸引した空気流A中に含まれる異物Fを、ブロア52の上流で捕捉するための異物捕捉構造(異物捕捉手段)54を配置しておくのが望ましい。異物捕捉構造54として、ダクト53の途中に異物を捕捉して空気の流れを許容する異物捕捉フィルタや、渦巻き流を発生させて異物を分離するサイクロン分離器などを適宜に採用できる。ここでは、筐体55内にブロア52、異物捕捉構造54を収納した構造を例示している。
【0019】
そして、上記のように吸引した空気を吐き出す吐出口(終端開口部)56を前記開口部25の下側に戻すように、吐出側に循環路53aを敷設しておくのが望ましい。このようにすると異物除去に用いる空気の流れを効率良く循環させることができ、その際に開口部25上を通るワークに空気を下側からより強く吹きつけて異物の除去を効率良く、より確実にできる。
【0020】
以上のような異物除去装置では、振動コンベア10のトラフ20上に載置されたワークWは振動モータ30の振動を推進力として一方へ搬送されるが、その途中には異物除去ステーションSTが設定してある。この異物除去ステーションSTでは、パンチ孔25aを通過して下から上へと流れ、更に空気吸入口51に向けて流れる空気流Aが形成されている。
パンチ孔25aを通過して、トラフ20の上面に出た空気流は、振動しながら搬送されているワークに吹き付けられる。ワークは斜め上方への若干の跳ね上げを繰り返しながら搬送されるので、トラフ20上で均一に展開される。このような搬送状態にあるワークが、異物除去ステーションSTを通過する際には、上記空気流Aの中に置かれる(晒される)ので、ワークに付着していた或いは混入していた異物Fを空気流Aによって確実に分離できる。
【0021】
そして、分離された異物が搬送するワークよりも相対的に軽量である場合、図3で示すように発生する空気流Aは分離後の異物を乗せて空気吸入口51に吸引されるので、異物を一気に除去することができる。このようなワークの好適例としては、例えば、マカロニ、コーンフレーク、ポテトチップ、あられ(せんべい)、大豆タンパク等の食品を挙がることができ、分離除去される異物としては髪の毛、糸クズ、ホコリなどを挙げることができる。
【0022】
更に、前述したように、異物捕捉フィルタやサイクロン分離器などの異物捕捉構造を設けておけば除去した異物を効率よく回収して廃棄できる。また更には、前述したように、吸引した空気流を異物除去ステーション下に戻す循環路53a(図2、参照)を設ければワークに空気を下側から強く吹き付けて、異物の除去を効率良く、より確実にできる。
【0023】
ところで、図1、2ではトラフ20がワークを一方向へ搬送する場合を例示し、途中に設けた異物除去ステーションSTで空気吸入口51に向けた空気吸引流を形成して、異物を分離、除去する場合を示したが、これに限らない。
ワークがある程度の大きさである場合、ワークを反転させて(すなわち、表裏をひっくり返して)ワークの両面に対して異物除去処理をするようにしてもよい。そのために、ワーク反転させる機構を設けて、異物除去処理が完了したワークを反転させて、再度、異物除去ステーションを通過させるのが好ましい。例えば、前述した図1で示した異物除去装置1を2段にして設け、その間にワークの表裏を反転させる反転機構を配置する。このような反転機構は、ワークに応じて適宜に構成すればよい。例えば、上流側の第1の異物除去装置から下流側の第2の異物除去装置へ移動するときに、ワークにエアなどを吹き付けて反転させるようにしてもよいし、第1の異物除去装置から第2の異物除去装置へ移行する落下時にワークが反転するような構造を採用してもよい。
また、異物除去後のワークを、異物除去ステーションSTの上流側に選択的に戻す環流搬送路を追加して、この搬送路の途中にワークを反転させる適宜の反転機構を配置してもよい。この場合は1つの異物除去ステーションSTで表裏の異物除去処理を行える。
【0024】
その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。例えば、前述ではワークとして食品の場合を例示したが、本異物除去装置が適用されるワークは食品に限らない。相対的に軽量な異物が付着、混入する可能があるワークの異物除去に、本発明の異物除去装置が好適であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
1 異物除去装置
10 振動コンベア
13 防振装置
16 支持フレーム
20 トラフ
21 加振ばね
25 開口部
25a パンチ孔
30 振動モータ
50 吸引構造体(吸引手段)
51 空気吸引口
ST 異物除去ステーション
W ワーク
WD 搬送方向
F 異物
A 空気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送する長尺形状のトラフと、該トラフを振動させてワークを一定方向へ搬送する力を発生させる振動モータとを有している振動コンベアと、
前記トラフの搬送方向での途中に設けられ、ワークに対して異物除去処理を実行する異物除去ステーションとを含み、
前記異物除去ステーションは、前記トラフの下面側から上面側への空気の流れを許容するパンチ孔を前記トラフの全幅に亘って複数設けてある開口部と、該開口部の上方に離間して配置される空気吸引口を備えて前記パンチ孔を通過した空気を吸引する吸引手段とを含んでいる
ことを特徴とする異物除去装置。
【請求項2】
前記吸引手段は、前記空気吸引口を有する吸口部と、吸引する空気流を発生させる負圧源と、前記空気吸引口と負圧源とを少なくとも接続する管路部を有し、前記空気吸引口から吸引した空気中に含まれる異物を捕捉する異物捕捉手段とを備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の異物除去装置。
【請求項3】
前記管路部は吸引した空気を吐き出す終端開口部を含み、該終端開口部が前記異物除去ステーションの前記開口部の下面に向けて配置してある、ことを特徴とする請求項2に記載の異物除去装置。
【請求項4】
前記異物除去ステーションの下流にワークへの異物除去処理を再度繰り返すべく、ワークの表裏を反転させる反転機構が更に設けてある、ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−250188(P2012−250188A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125356(P2011−125356)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(503282194)東京施設工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】