説明

異種内容物収納容器

【課題】 移行中栓とキャップとの間に内容物収納室を形成した異種内容物収納容器において、中栓が液体注出の邪魔となることがなく、部品数が少なくかつ脱栓操作の誤操作を生じないものを提供する。
【解決手段】 容器体2の口頸部8外面へ着脱自在にキャップ40を、又上記口頸部8内面へ抜出し不能に有底筒形の中栓20をそれぞれ嵌合させ、該中栓底壁22中央部を上方へ凸形の栓部22aに形成して、該栓部外周面へ、上記キャップ40の頂板42裏面からの垂下筒50下端部を密嵌させて、該垂下筒内部を内容物収納室60とし、かつ栓部22a外方の中栓部分下部に内容物流出口24を開口した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
上述の移行中栓、即ち、予めキャップ裏面側に一体的に装着され、該キャップを容器体口頸部へ嵌合した後再びキャップを除去したときに口頸部側へ残るように構成された中栓は従来から知られているが(例えば特許文献1)、近年、この移行中栓とキャップとの間に異種液体を収納可能とした容器が提案されている。
【0002】
例えば特許文献2のものは、容器体口頸部へ装着したキャップ頂板を貫通して有頂の収納室形成用筒を垂下するとともに、該筒下面を閉塞する栓体一側から上記口頸部の基部下面へ突き当てる突片を突設して、上記キャップの引上げにより上記栓体が脱栓して、上記収納室から内容物が流下して容器体内の他種内容物と混合するように設けている。
【背景技術】
【0003】
【特許文献1】実公昭57−3966号
【特許文献2】特開平7−300162号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2は、蓋板の引上げにより栓板が脱落するように構成したから、部品数が多くなるとともに、容器を傾けて液体を注出する際に上記栓体が重力と液圧とで収納室形成用筒側へ引き寄せられ、流路を妨げる可能性がある。又、上記容器の外面に蓋板とキャップとが露出しているので、誤ってキャップを容器体から外して、混合前の容器体内内容物を使用してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、これら従来技術の問題点を解決するため、容器体の口頸部外面へ着脱自在にキャップを、又上記口頸部内面へ抜出し不能に有底筒形の中栓をそれぞれ嵌合させ、該中栓底壁中央部を上方へ凸形の栓部に形成して、該栓部外周面へ、上記キャップの頂壁裏面からの垂下筒下端部を密嵌させて、該垂下筒内部を内容物収納室とし、かつ垂下筒外方の中栓部分下部に内容物流出口を開口したものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、容器体の口頸部へ、予め中栓と一体化したキャップを、キャップ除去により口頸部側への中栓の移行が可能に装着した容器において、容器体2の口頸部8外面へ着脱自在にキャップ40を、又上記口頸部8内面へ抜出し不能に有底筒形の中栓20をそれぞれ嵌合させ、該中栓底壁22中央部を上方へ凸形の栓部22aに形成して、該栓部外周面26へ、上記キャップ40の頂板42裏面からの垂下筒50下端部を密嵌させて、該垂下筒内部を内容物収納室60とし、かつ栓部22a外方の中栓部分下部に内容物流出口24を開口している。
【0007】
「キャップ」は有頂筒形のものであり、容器体口頸部と該口頸部内に付設した中栓との各外面を覆って利用者が該中栓を誤って操作することを防いでいる。
【0008】
「中栓」は、上端開口で有底筒形のもので、該筒壁(周壁)外面に付設した外向きフランジを上記口頸部上端面に係止させることで口頸部内に支持されている。後述の内容物収納室の容積を大とするため、中栓周壁は縦長に形成することが望ましく、該周壁上部を口頸部上方に延長して、該延長周壁部分を注ぎ口とすることができる。又、中栓の底壁は、周壁下部と連設した内向きフランジ状壁部と、該壁部内縁より上方突出する栓部とで形成されている。
【0009】
「栓部」は、外部から見て帽状の凸部で上記垂下筒内面下端部を密閉可能な外周面26を有するものであれば足り、中空乃至中実のいずれでも良い。
【0010】
「栓部22a外方の中栓部分下部」とは、栓部22a外方の中栓底壁部分、即ち上述の内向きフランジ状壁部と、該内向きフランジ状壁部周辺に連設する周壁下部とのいずれをも含む意味である。尚これら内向きフランジ状壁部と周壁下部との双方に亘って単一の内容物流出口を形成し、或いはこれら両壁にそれぞれ内容物流出口を形成しても良い。
【0011】
尚、容器体口頸部8にキャップ40を嵌合する前において、該キャップへの中栓20の取付は、後述の如く中栓の周壁の一部をキャップ周壁44に固定することが望ましいが、必ずしもこれに限るものではなく、例えば中栓20の栓部22aに対する垂下筒50の嵌合力を大として、該嵌合により中栓20とキャップ40とを一体化することも可能である。
【0012】
第2の手段は、上記第1の手段を有し、かつ上記容器体口頸部8内面へ嵌合させた中栓20の周壁28を、上記口頸部8上端より上方へ延長して、口頸部上方の中栓周壁28部分をキャップ周壁44に固定するとともに、該固定力に抗して、上記中栓がキャップ40の引上げにより該キャップから分離して口頸部8内に残るように設けている。
【0013】
上記キャップ40の引上げによりキャップと中栓20とを分離させるためには、上記口頸部8内面に対する中栓20周壁の嵌合摩擦力が、上記キャップ周壁に対する中栓周壁の固定力と、上記垂下筒50に対する栓部22aの嵌合摩擦力との和よりも大となるようにすればよい。
【0014】
又、上記キャップ周壁に対して中栓の周壁を固定するためには、口頸部上方の中栓周壁部分の外面から外向きフランジを介して口頸部外面への取付筒を垂下するとともに、該取付筒外面を上記キャップ周壁内面へ嵌合させると良い。
【0015】
第3の手段は、上記第1の手段又は第2の手段を有し、かつ上記栓部22a外方の中栓底壁部分に上記内容物流出口24を開口している。
【0016】
「栓部22a外方の中栓底壁部分」とは、上述の如く中栓周壁の下部に連設させた内向きフランジ状壁部に相当する。尚、該内向きフランジ状壁部は、上内方或いは下内方へ傾斜するテーパ状壁とするとよく、これにより該壁部に穿設する内容物流出口の開口面積を大きくとることができる。
【0017】
第4の手段は、上記第1の手段又は第2の手段を有し、かつ上記垂下筒50外方の中栓底壁部分の上面から下方シール筒36を起立して、該下方シール筒36を上記垂下筒50外面下端部に密嵌させるとともに、上記中栓20の底壁周縁から起立する周壁28下端部を、上記容器体口頸部8より下方へ露出させて、該露出周壁部分に上記内容物流出口24を開口している。
【0018】
該内容物流出口は、上記露出周壁部分から上方へ延びる縦溝とすることができる。
【0019】
第5の手段は、上記第1の手段乃至第6の手段のいずれかを有し、かつ上記垂下筒50外方のキャップ40頂板部分の下面から上方シール筒52を垂下して、該上方シール筒52を上記中栓20の周壁28上端部に密嵌させている。
【発明の効果】
【0020】
第1の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○キャップ40の垂下筒50と中栓20の底壁中央部である栓部22aとで内容物収納室60を形成し、かつ栓部22a外方の中栓部分下部に内容物流出口を形成したから、キャップを外しても中栓20は口頸部8内から脱落しないので、液体注出の妨げとならない。
○脱落用の栓部を別個に設ける必要がないので、部材数を少なくすることができる。
○キャップは、口頸部と該口頸部に装着した中栓を覆っているので、誤って中栓を誤操作することを防止できる。
○上記中栓は移行中栓としたから、組立作業が容易である。
【0021】
第2の手段に係る発明によれば、上記容器体口頸部8内面へ嵌合させた中栓20の周壁28を、上記口頸部8上端より上方へ延長して、口頸部上方の中栓周壁部分をキャップ周壁44に固定したから、予め栓部22aと垂下筒50とで形成する収納室60内に液体などを収納した状態を確実に維持することができる。
【0022】
第3の手段に係る発明によれば、中栓底壁22の一部に上記内容物流出口24を開口したから、該開口を介して内容物を速やかに容器体2側へ流下させることができる。
【0023】
第4の手段によれば、垂下筒50外方の中栓底壁部分の上面から起立した下方シール筒36を、上記垂下筒50外面下端部に密嵌させたから、収納室と容器体との間のシール性を高め、液漏れなどによりキャップ除去前に異種内容物が混合する虞を排除できる。
【0024】
第5の手段によれば、上記垂下筒50外方のキャップ40頂板部分の下面から垂下した上方シール筒52を、上記中栓20の周壁28上端部に密嵌させたから、キャップ40除去前に容器体2の内容物が上記内容物流出口24から口頸部外面とキャップ周壁44との間隙を通って外部に漏れる虞を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1乃至図4は、本発明の第1実施形態に係る容器を示している。
【0026】
該容器は、容器体2と、中栓20と、キャップ40とで形成されている。
【0027】
容器体2は、胴部4から肩部6を介して口頸部8を起立しており、該口頸部の上端部を小外径部10に形成するとともに、口頸部下部外面に嵌合リブ12を周設し、かつ口頸部中間部外面にネジ部14を形成している。
【0028】
中栓20は、底壁22周縁から長尺の周壁28を起立している。
【0029】
上記中栓底壁22は、その中央部を、上方へ凸で中空帽状の栓部22aに、又その周辺部を、上内方に斜行するテーパ状の内向きフランジ状壁部22bにそれぞれ形成するとともに、該内向きフランジ状壁部に内容物流出口24を開口している。尚、図示の内向きフランジ状壁部22bでは、上記栓部22aの支持片となる放射状の複数壁部分を残して、その周方向全体に亘って複数の内容物流出口24…を開口している。
【0030】
上記中栓周壁28は、その外面中間部から外向きフランジ30を介して取付筒32を垂下し、かつ該取付筒32の外面にキャップ周壁との固定力増大用の係止突起34…を間欠的に付設している。
【0031】
上記外向きフランジ30下方の中栓周壁28部分は、上記容器体口頸部8内面へ抜出し不能に嵌合されており、かつ上記外向きフランジ30を上記口頸部8上端面へ係止し、かつ上記取付筒32を口頸部の小外径部10外面へ嵌合させることで支持されている。
【0032】
キャップ40は、頂板42の周縁からキャップ周壁44を垂下している。
【0033】
上記キャップ頂板42は、その裏面中央部から長尺の垂下筒50を、垂下筒外方の頂板部分裏面から、短尺の上方シール筒52をそれぞれ2重筒状に垂下している。
【0034】
上記キャップ周壁44は、その下半部を鍔部46を介して外方へ張り出す大径筒とし、かつキャップ周壁下端部45を破断線48穿設により周壁他部から切離可能としている。
【0035】
そしてこのキャップ40は、上記キャップ周壁44の下半部を上記口頸部8外面へ螺合し、かつキャップ周壁の下端部45を既述口頸部の嵌合リブ12に嵌着することで、該周壁下端部45を除いて取外し可能に口頸部8に嵌合させており、かつ該嵌合時に、上記垂下筒50内面下端部を上記栓部22bの外周面26に、又上記上方シール筒52を中栓周壁28の上端部内面にそれぞれ緊密に(例えば内容物が液体であれば液密に)嵌合するように設けている。
【0036】
又、上記キャップ40の頂板中央部裏面とキャップ40の垂下筒50内面と中栓20の栓部22aとは、上記内容物収納室60を構成している。更に又、上記口頸部8内面への中栓周壁28の嵌合力は、上記キャップ周壁44への上記外向きフランジ30の嵌合力と上記栓部22a外周面26への垂下筒50の嵌合力との和よりも大として、上記キャップ40を上方へ強制螺脱させたときに、中栓20がキャップ40から分離して口頸部8側へ残り、上記内容物収納室60の底部を形成する栓部22aが脱栓されるように設ける。
【0037】
上記構成において、図1の如く上記内容物収納室60に内容物を収納させるときには、図2に示す如く中栓20及びキャップ40を上下反転させて、該キャップの垂下筒50内に内容物を充填するとともに、該垂下筒50の開口部内へ上記中栓20の栓部22aを密嵌させれば良い。そして中栓20を装着したままキャップ40を正立状態に戻して、図3の如くキャップ周壁44を、上記容器体口頸部8外面へ嵌合させると、図1に示す状態となる。
【0038】
図1の状態で上方シール筒52は、上記中栓20の周壁28上端部内面に緊密に嵌合されており、例えば容器が倒れたときに容器体内の内容物が上記内容物流出口24よりキャップ40の垂下筒50と中栓20の周壁28との間隙を通って外部へ流出することを防止している。
【0039】
図1の状態から内容物を注出するときには、図4に示す如くキャップ40を開方向へ回すと、既述破断線48が破断して、キャップ周壁44の下端部45を口頸部側へ残したままキャップ40が上方に螺脱するとともに、収納室60内の内容物が上記内容物流出口24を介して、容器体2内へ流下し、該容器体内の内容物と混合することとなる。各内容物が十分に混合されたら、上記容器体2を傾けて、上記中栓20の周壁28の開口部を注ぎ口として混合された内容物を注出すればよい。
【0040】
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態に係る異種内容物収納容器を示している。この実施形態は中栓の下半部の構成を変更したものであり、第1実施形態と同じ構成に関しては、同一符号を付することで説明を省略する。
【0041】
この実施形態では、内容物流出口24を、栓筒底壁22の内向きフランジ壁22bに代えて栓筒の周壁28の下端部に開口させ、かつ該下端部を口頸部8下方へ突出させて容器体内部へ露出させることで、各内容物流出口24と容器体2内部とを連通させるとともに、上記内向きフランジ状壁部22bの上面から下方シール筒36を起立し、該下方シール筒を上記垂下筒50の下端部外面へ嵌合させている。上記内容物流出口24は、少なくとも口頸部8下端から容器体内へ露出する中栓周壁部分に開口すれば足りるが、図示例の如く中栓周壁から上方へ延びる縦溝状にすると、図6に矢示する如く内容液の流下が円滑となる。
【0042】
本実施形態では、図5の状態で垂下筒50の下端部を上記栓部22aの外周面26と下方シール筒36とで挟持しているので、上記垂下筒50下端部を内外面で2重にシールすることで、垂下筒50からの栓部22aの脱栓前に内容物収納室60内の内容物が容器体2内へ漏れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る容器の一部縦断面図である。
【図2】図1容器の要部作用説明図である。
【図3】図2要部の他の作用説明図である。
【図4】図1容器の使用状態説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る容器の一部縦断面図である。
【図6】図5容器の使用状態説明図である。
【符号の説明】
【0044】
2…容器体 4…胴部 6…肩部 8…口頸部 10…小外径部 12…嵌合リブ
14…ネジ部
20…中栓 22…底壁 22a…栓部 22b…内向きフランジ状壁部
24…内容物流出口 26…外周面 28…周壁 30…外向きフランジ
32…取付筒 34…係止突起 36…下方シール筒
40…キャップ 42…頂板 44…キャップ周壁 45…同下端部 46…鍔部
48…破断線 50…垂下筒 52…上方シール筒 60…内容物収納室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体の口頸部へ、予め中栓と一体化したキャップを、キャップ除去により口頸部側への中栓の移行が可能に装着した容器において、容器体2の口頸部8外面へ着脱自在にキャップ40を、又上記口頸部8内面へ抜出し不能に有底筒形の中栓20をそれぞれ嵌合させ、該中栓底壁22中央部を上方へ凸形の栓部22aに形成して、該栓部外周面26へ、上記キャップ40の頂板42裏面からの垂下筒50下端部を密嵌させて、該垂下筒内部を内容物収納室60とし、かつ栓部22a外方の中栓部分下部に内容物流出口24を開口したことを特徴とする、異種内容物収納容器。
【請求項2】
上記容器体口頸部8内面へ嵌合させた中栓20の周壁28を、上記口頸部8上端より上方へ延長して、口頸部上方の中栓周壁28部分をキャップ周壁44に固定するとともに、該固定力に抗して、上記中栓がキャップ40の引上げにより該キャップから分離して口頸部8内に残るように設けたことを特徴とする、請求項1記載の異種内容物収納容器。
【請求項3】
上記栓部22a外方の中栓底壁部分に上記内容物流出口24を開口したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の異種内容物収納容器。
【請求項4】
上記垂下筒50外方の中栓底壁部分の上面から下方シール筒36を起立して、該下方シール筒36を上記垂下筒50外面下端部に密嵌させるとともに、上記中栓20の底壁周縁から起立する周壁28下端部を、上記容器体口頸部8より下方へ露出させて、該露出周壁部分に上記内容物流出口24を開口したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の異種内容物収納容器。
【請求項5】
上記垂下筒50外方のキャップ40頂板部分の下面から上方シール筒52を垂下して、該上方シール筒52を上記中栓20の周壁28上端部に密嵌させたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の異種内容物収納容器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−44691(P2006−44691A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224844(P2004−224844)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】