説明

畳床の製造方法及び畳床

【課題】芯材自体の強度を確保して畳の薄型化や軽量化を可能にしつつ、芯材に積層する緩衝材や補強材をバインダで接着することなく一体化できるようにして製造コストの低減。
【解決手段】上金型3と下金型1とを開いた型開き状態において、キャビティSを形成する凹部2Aの底面上に、第1層として予め成形されたMFシート5を配置する。このMFシート5の上に熱硬化性の液状のバイオマスポリウレタン原料が注入され、バイオマスポリウレタン原料の上に第3層としてMFシート7が浮かせて配置される。この状態で型閉めし、下金型1及び上金型3を加熱手段で加熱して、バイオマスポリウレタン原料を発泡硬化させ、芯材(第2層)としてバイオマスポリウレタン層6Aが形成される。この発泡硬化の際に、第1層のMFシート5と第3層のMFシート7はバイオマスポリウレタン層6Aの下面と上面に接着され、これら3層が一体化された成形品が畳床となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳を薄型化するのに適した畳床の製造方法及び畳床に関する。
【背景技術】
【0002】
畳は、稲藁を積層圧縮して縫い上げた畳床にイ草の畳表を取付け、布製の畳縁を縫着したものが一般的であったが、近年の和用折衷型の住宅では、ポリスチレン樹脂を発泡させたポリスチレンフォームなどの新しい素材を使った畳床に、天然材とプラスチックの複合材から成る新素材畳表を取付けた新しい畳が多く用いられ、薄型化や軽量化が図られるようになってきた。例えば、特許文献1には、発泡ポリスチレンフォームの上下面に合成樹脂板をバインダを用いて接着し、裏面に合成樹脂製の裏地シートを接着した畳床と、プラスチックと、天然樹脂、カルシウムなどの天然材とを複合して形成した人造イ草を用いて織製した畳表と、合成繊維製の布地を用いた畳縁とからなる畳が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−30327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のものでは、畳床の芯材となるポリスチレンフォームは熱可塑性合成樹脂が主要発泡原料であり、変形したり、潰れやすいという欠点があり、また芯材の上下面を合成樹脂板等で補強する必要があり、合成樹脂板等をバインダで接着しているため、製造コストが高くなる問題があった。
【0005】
そこで本発明は、芯材自体の強度を確保して畳の薄型化や軽量化を可能にしつつ、芯材に積層する緩衝材や補強材をバインダで接着することなく一体化できるようにして製造コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明の畳床の製造方法は、ポリウレタン成形用の金型装置内で熱硬化性のポリウレタン原料を発泡硬化させてポリウレタン層を形成するとともに、このポリウレタン層と他の材質で予め成形された少なくとも一層以上の他の層とを積層状態で一体成形することを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明の畳床の製造方法は、ポリウレタン成形用の金型装置内に第1層を配置し、この第1層の上に熱硬化性のポリウレタン原料を注入し、このポリウレタン原料の上に第1層と同材質若しくは異なる材質の第3層を配置し、前記ポリウレタン原料を加熱して発泡硬化させることにより前記第1層、ポリウレタン層及び前記第3層とを積層状態で一体成形することを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明の畳床の製造方法は、第1の発明又は第2の発明の畳床の製造方法において、前記ポリウレタン原料にはバイオマス原料が添加されていることを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明の畳床は、少なくとも一層以上の層と熱硬化性のポリウレタン原料を発泡硬化させたポリウレタン層とが積層状態で一体成形されていることを特徴とする。
【0010】
また、第5の発明の畳床は、第4の発明の畳床において、ポリウレタン原料にはバイオマス原料が添加されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリウレタン層を芯材として使用することによって畳床自体の強度(剛性)を確保し、畳のより一層の薄型化や軽量化を可能にすることができると共に、ポリウレタン層に積層する緩衝材や補強材がポリウレタン成形時にポリウレタン層に一体化されるようにしてバインダによる接着を不要にし、製造コストを低減して安価に製造できる。また、熱硬化性のバイオマスポリウレタン層を芯材として使用することによって畳床自体の強度(剛性)を確保できるばかりでなく、畳床の焼却等の廃棄処理の際に環境への影響を小さくすることができ、自然環境を守る上でも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態の畳床の製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の畳床の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の畳床の製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の畳床の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態の畳床の製造方法について、図1に基づいて説明する。ポリウレタン成形用の金型装置の下金型1には凹部2Aが形成され、上金型3と下金型1とでキャビティSが形成される。
【0014】
そして、前記上金型3と下金型1とを開いた型開き状態において、前記キャビティSを形成する前記凹部2Aの底面上に、先ず第1層として予め成形された、例えば厚さが1mmのMFシート(丸三製紙株式会社製)5を配置する。このMFシート5は丸網式緩衝紙と言われているものであり、紙繊維に無機材料、例えば石膏等を混ぜて成形したものであり、緩衝材及び補強材として機能するものである。
【0015】
このMFシート5の上に熱硬化性の液状のバイオマスポリウレタン原料が注入され、バイオマスポリウレタン原料の上に第3層として予め成形された、例えば厚さが1mmのMFシート7が浮かせて配置される。バイオマスポリウレタン原料はポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤、触媒及び着色剤等からなる液状のポリウレタン原料に、木材、植物繊維、トウモロコシ澱粉等のバイオマス原料を微細粒にして添加し、溶かし込んだものである。
【0016】
この状態で型閉めし、前記下金型1及び上金型3を図示しない加熱手段で加熱することにより、バイオマスポリウレタン原料を発泡硬化させ、芯材(第2層)としての、例えば厚さが13mmのバイオマスポリウレタン層6Aとなる。この発泡硬化の際に、第1層のMFシート5と第3層のMFシート7はバイオマスポリウレタン層6Aの下面と上面に接着され、これら3層が積層状態で一体化され、その後、型開きして取り出された成形品が畳床となる。このようして成形された畳床に畳表(図示せず)を縫い合わせることにより、畳が完成する。
【0017】
MFシート5及びMFシート7の厚さを前述したように、それぞれ1mm、バイオマスポリウレタン層6Aの厚さを8mmとすると、畳床は厚さが10mmとなり、畳を薄型で、かつ、軽量にすることができるため、和用折衷やバリアフリーの住宅に適している。
【0018】
図2は本発明の第2実施形態の畳床の製造方法を示すものであり、図1に示すものと共通する部分には同一符号を付してあり、説明は省略する。
【0019】
前記上金型3と下金型1とを開いた型開き状態において、前記キャビティSを形成する凹部2Bの底面上に、先ず第1層として予め成形されたMFシート5が配置され、このMFシート5の上に熱硬化性のバイオマスポリウレタン原料が注入され、バイオマスポリウレタン原料の上に第3層として予め成形されたインシュレーションボード8が浮かせて配置される。
【0020】
このインシュレーションボード9は木材のチップを圧縮成形したもので、断熱材、防音材、及び補強材として機能するものである。このインシュレーションボード9の代わりに、パルプ質植物性繊維などを高温高圧で蒸してほぐした繊維をすき出し、さらに乾燥して固めたインシュレーションファイバーボード等を使用しても良い。
【0021】
この状態で型閉めし、下金型1及び上金型3を加熱することにより、バイオマスポリウレタン原料は発泡硬化して、芯材(第2層)としてのバイオマスポリウレタン層6Bとなる。
【0022】
この発泡硬化の際に第1層のMFシート5と第3層のインシュレーションボード9はバイオマスポリウレタン層6Bの下面と上面に接着され、これら3層が積層状態で一体化され、その後、型開きして取り出された成形品が畳床となる。このようして成形された畳床に畳表を縫い合わせることにより、畳が完成する。
【0023】
MFシート5の厚さを2mm、インシュレーションボード9の厚さを15mmとし、バイオマスポリウレタン層6Bの厚さを33mmとすると、畳床は厚さが50mmとなり、軽量にすることができ、一般の和室の畳の畳床として使用することもできる。
【0024】
図1及び図2に示す実施形態では3層の畳床の製造方法及び畳床について説明したが、畳床を2層とする場合には第3層のMFシート7又はインシュレーションボード8を省略することができる。
【0025】
図3は本発明の第3の実施形態の畳床の製造方法を示すものであり、図1及び図2に示すものと共通する部分には同一符号を付してあり、説明は省略する。図3において、
前記上金型3と下金型1とを開いた型開き状態において、前記キャビティSを形成する前記凹部2Cの底面上に、先ず第1層として予め成形されたMFシート5が配置され、このMFシート5の上に熱硬化性のバイオマスポリウレタン原料が注入され、このバイオマスポリウレタン原料の上に第3層として予め成形された複合層10が浮かせて配置される。
【0026】
この複合層10はMFシート11と電子線架橋したポリプロピレンシート12とを予めバインダにて接着したものであり、緩衝材及び補強材として機能するものである。
【0027】
この状態で型閉めし、下金型1及び上金型3を加熱することにより、バイオマスポリウレタン原料は発泡硬化して、芯材(第2層)としてのバイオマスポリウレタン層6Cとなる。この発泡硬化の際に第1層のMFシート5と第3層の複合層10はバイオマスポリウレタン層6Cの下面と上面に接着され、これら3層(複合層10が2層のため計4層)が積層状態で一体化され、その後、型開きして取り出された成形品が畳床となる。このようして成形された畳床に畳表を縫い合わせることにより、畳が完成する。
【0028】
第1層のMFシート5の厚さを1mm、第2層のバイオマスポリウレタン層6Cの厚さを10mm、第3層の複合層10のMFシート11とポリプロピレンシート12の厚さをそれぞれ1mm、3mmとすると、畳床は厚さが15mmとなり、畳を薄型で、かつ、軽量にすることができるため、和用折衷やバリアフリーの住宅に適している。
【0029】
図4は本発明の第4の実施形態の畳床の製造方法を示すものであり、図1乃至図3に示すものと共通する部分には同一符号を付してあり、説明は省略する。
【0030】
前記上金型3と下金型1とを開いた型開き状態において、前記キャビティSを形成する前記凹部2Cの底面上に、先ず第1層として予め成形されたMFシート5が配置され、このMFシート5の上に熱硬化性のバイオマスポリウレタン原料が注入され、バイオマスポリウレタン原料の上に第3層として予め成形された複合層13が浮かせて配置される。複合層13はインシュレーションボード(又はインシュレーションファイバーボード)14と電子線架橋したポリプロピレンシート15とを予めバインダにて接着したものであり、緩衝材、断熱材、防音材、及び補強材として機能するものである。
【0031】
この状態で型閉めし、下金型1及び上金型3を加熱することにより、バイオマスポリウレタン原料は発泡硬化して、芯材(第2層)としてのバイオマスポリウレタン層6Dとなる。この発泡硬化の際に第1層のMFシート5と第3層の複合層13はバイオマスポリウレタン層6Dの下面と上面に接着され、これら3層(複合層13が2層のため計4層)が積層状態で一体化され、その後、型開きして取り出された成形品が畳床となる。このようして成形された畳床に畳表を縫い合わせることにより、畳が完成する。
【0032】
第1層のMFシート5の厚さを2mm、第2層のバイオマスポリウレタン層6Dの厚さを28mm又は33mm、第3層の複合層10のインシュレーションボード11とポリプロピレンシート12の厚さをそれぞれ15mm、5mmとすると、畳床は厚さが50mm又は55mmとなり、一般の和室の畳の畳床として使用することもできる。
【0033】
また、第1層のMFシート5の厚さを1mm、第2層のバイオマスポリウレタン層6Dの厚さを9mm、第3層の複合層10のインシュレーションボード11とポリプロピレンシート12の厚さをそれぞれ10mm、5mmとすると、畳床は厚さが25mmとなり、畳を薄型で、且つ、軽量にすることができるため、和用折衷やバリアフリーの住宅に適している。
【0034】
以上の第1の実施形態における各層の厚さは、適宜選択でき、用途に応じて選択することができる。この場合、従来に比べて、畳を薄型で、且つ、軽量にすることができる。図3及び図4の実施形態のものでは、畳床としての強度(剛性)を保ちながら、図1及び図2の実施形態のものに比べて柔らかな畳床に仕上げることができる。
【0035】
上述した実施態様の畳床の製造方法及び畳床では、熱硬化性のバイオマスポリウレタンフォームを芯材として使用することによって畳床自体の強度(剛性)を確保し、畳のより一層の薄型化や軽量化を可能にすることができると共に、バイオマスポリウレタン層に積層する緩衝材や補強材がポリウレタン成形時にバイオマスポリウレタン層に一体化されるようにしてバインダによる接着を不要にし、製造コストを低減して安価に製造できる。
【0036】
また、バイオマス原料を添加したポリウレタン原料を使用してバイオマスポリウレタンフォームを形成しているので、従来のポリスチレンフォームを芯材に使用するもの比べて畳床の焼却等の廃棄処理の際に環境への影響を小さくすることができ、自然環境を守る上でも有用である。
【0037】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものであり、例えば、バイオマス原料を添加しない熱硬化性の液状のポリウレタン原料を用いて形成したポリウレタン層を芯材として使用しても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 下金型
2A〜2D 凹部
3 上金型
5 MFシート
6A〜6D バイオマスポリウレタン層
7 MFシート
8 インシュレーションボード
10、13 複合層
11 MFシート
12 ポリプロピレンシート
14 インシュレーションボード
15 ポリプロピレンシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン成形用の金型装置内で熱硬化性のポリウレタン原料を発泡硬化させてポリウレタン層を形成するとともに、このポリウレタン層と他の材質で予め成形された少なくとも一層以上の他の層とを積層状態で一体成形することを特徴とする畳床の製造方法。
【請求項2】
ポリウレタン成形用の金型装置内に第1層を配置し、この第1層の上に熱硬化性のポリウレタン原料を注入し、このポリウレタン原料の上に第1層と同材質若しくは異なる材質の第3層を配置し、前記ポリウレタン原料を加熱して発泡硬化させることにより前記第1層、ポリウレタン層及び前記第3層とを積層状態で一体成形することを特徴とする畳床の製造方法。
【請求項3】
前記ポリウレタン原料にはバイオマス原料が添加されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の畳床の製造方法。
【請求項4】
少なくとも一層以上の層と熱硬化性のポリウレタン原料を発泡硬化させたポリウレタン層とが積層状態で一体成形されていることを特徴とする畳床。
【請求項5】
ポリウレタン原料にはバイオマス原料が添加されていることを特徴とする請求項4に記載の畳床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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