説明

疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物

以下の物理化学的性質:BET表面積20〜75m/g、炭素含量0.5〜10質量%、突き固め密度150〜600g/l、塩素含量0.1〜3.0%、乾燥減量0.1〜4質量%、DVS等温線(60%)0.5〜1.5質量%、加熱速度(Is、10%)50〜550℃/s、90%領域(数)5〜50nm、90%領域(質量)5〜150nm、全領域2〜200nmを有することを特徴とする疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末を、ケイ素−鉄混合酸化物粉末を噴霧又は蒸気の形での表面変性剤で処理し、その後に熱処理することによって製造する。表面変性された酸化粒子は、接着剤中の増量剤として使用することができる。他の使用分野は、データ記憶媒体のため、画像処理における造影剤として、生物化学的分離及び分析プロセスのため、医学的適用のため、研磨剤として、触媒として又は触媒支持材料として、増粘剤として、断熱のため、分散助剤として、流れ調整剤として並びに強磁性流体中での使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末、その製造方法及びその使用に関する。
【0002】
EP-A 1 284 485は、塩素化物含有出発材料を使用することができ、かつ得られたケイ素−鉄混合酸化物粒子が1000ppmまでの塩化物含量であるにも拘わらず、依然として良好な磁性特性を有する方法を開示している。EP-A 1 284 485中に開示された粒子は、二酸化ケイ素含有マトリックス中で3〜20nmの直径を有する超常磁性酸化鉄領域を含む。純粋な有機プロセスと比較して、EP-A 1 284 485中で開示された方法は、経済的利点を提供する。しかしながら、依然としてよりコストがかからずして製造することができる粒子が望まれている。
【0003】
したがって本発明の課題は、経済的な方法によって製造することが可能な、良好な磁性特性を有する粒子を提供することである。
【0004】
ケイ素−鉄混合酸化物粉末は、EP 071097863.8(国際番号2007P00380EP)から知られている。
【0005】
本発明は、疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末を提供し、この場合、この粉末は、以下の物理化学的性質を有することにより特徴付けられる:
【表1】

【0006】
さらに本発明は、本発明による疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末を製造するための方法を提供するものであって、この場合、この方法は、ケイ素−鉄混合酸化物粉末を、場合によっては最初に水でかつその後に表面変性剤を用いて室温で噴霧し、場合によってはさらに15〜30分に亘って混合し、かつその後に1〜6時間に亘って50〜400℃で熱処理をおこなった。
【0007】
使用される水を、酸、たとえば塩酸で、pH7から1に低下させて酸性化することができる。
【0008】
代替的に、ケイ素−鉄混合酸化物の疎水化は、ケイ素−鉄混合酸化物を、気体の形の表面改質化剤で処理することによって実施し、その後に混合物を0.5〜6時間に亘って50〜800℃の温度で熱処理する。
【0009】
熱処理を、保護ガス下で、例えば窒素下で実施することができる。
【0010】
疎水化は、加熱可能な混合機及びスプレー装置を備えた乾燥機中で、連続的にまたは回分的に実施することができる。
【0011】
適した装置は、例えばプロシェアミキサ、プレート式乾燥器又は流動床乾燥器であってもよい。
【0012】
本発明による疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物のために使用される反応体は、凝集された一次粒子の形で磁性特性を有するケイ素−鉄混合酸化物粉末である。これはEP 071097863.8から知られている。これらの反応体の場合には、TEM画像は、二酸化ケイ素及び酸化鉄の空間的に分離した領域から成る一次粒子の存在を示す。酸化鉄の平均粒径は2〜100nmである。
【0013】
SiOとして計算されたケイ素の割合は5〜65質量%、Feとして計算された鉄の割合は30〜90質量%、及びケイ素及び鉄の割合は、それぞれ前記酸化物として計算して少なくとも95質量%であり、塩化物の割合は0.2〜3質量%である。
【0014】
磁性特性は、フェリ磁性、フェロ磁性及び/又は超常磁性特性を意味するものと理解される。本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物は、好ましくは、超常磁性特性を有する粉末であってもよい。
【0015】
超常磁性物質は、外部の活性の磁場の不在下において、基本的な磁気双極子の永久(同時)整列を有しない。これらは、低い残留磁化を有するものであってもよい。
【0016】
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物は、好ましくは、ケイ素の割合が50±10質量%又は20±10質量%である粉末であってもよい。
【0017】
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物は、さらに好ましくは鉄の割合が50±10質量%又は80±10質量%である粉末であってもよい。
【0018】
一次粒子は、混合酸化物成分が、一次粒子の表面中及び表面上に存在するものを含む。
【0019】
一次粒子の範囲内における二酸化ケイ素と酸化鉄の接触領域において、Si−O−Feが存在していてもよい。
【0020】
さらに、一様に二酸化ケイ素及び/又は酸化鉄のみから成る個々の一次粒子が存在していてもよい。
【0021】
一次粒子は、極めてほぼ孔不含であるが、しかしながら、表面上に遊離ヒドロキシル基を有し、かつ凝集の異なる程度を有するものであってもよい。
【0022】
凝集物は、三次元の凝集物である。一般に、凝集物直径は、それぞれの場合において一の三次元方向が好ましくは250nmを上廻ることなく、一般には30〜200nmである。
【0023】
図1は、135nm〜80nmの凝集物直径を有するこのような三次元構造図を示す。幾つかの凝集物が一緒になって凝塊を形成してもよい。これらの凝塊は、簡単に再度分離することができる。対照的に、凝集物の一次粒子への分散は一般には不可能である。
【0024】
本発明にしたがって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末は、特に、ケイ素−鉄混合酸化物に粒子対する0.2〜3質量%の高い塩化物含量において顕著である。粒子、例えば本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末の製造から生じる塩化物含量は、塩素含有前駆体を使用する高熱プロセスによって得られる。形成される粒子は一般に塩素を塩酸の形で含有する。これは、形成される粒子の範囲内で付着するか、あるいは混合することができる。
【0025】
しかしながら、0.2〜3質量%の塩化物含量は、粉末の磁性特性上で取るに足らない影響のみを有するものであることが見出された。
【0026】
好ましくは、0.5〜2.5質量%の塩化物含量を有するケイ素−鉄混合酸化物、特に、1〜2質量%の塩化物含量を有するケイ素−鉄混合酸化物粉末を使用することができる。
【0027】
全塩化物含量は、Wickbold型燃焼法又は引き続いての滴定又はイオンクロマトグラフィーを含むダイジェスション(digestion)によって測定される。
【0028】
さらに、本発明による粉末のTEM画像は、二酸化ケイ素及び酸化鉄の空間的に別個の領域からなる一次粒子の存在を示す。二酸化ケイ素は1〜15nmの層厚で酸化鉄周囲に外被を形成するものであってもよい。
【0029】
酸化鉄成分の平均直径は2〜100nm、好ましくは70nm未満、特に>20〜60nmであってもよい。
【0030】
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末は、さらに、二酸化ケイ素又は酸化鉄から成る、すなわち、二酸化ケイ素及び酸化鉄は一緒には存在しない、少なくとも1又はそれ以上の一次粒子を含有していてもよい。
【0031】
二酸化ケイ素又は酸化鉄のみを有する一次粒子の割合は、TEM画像からカウントすることによって得ることができ、一般には数千の一次粒子が測定される。割合は0〜最大5%、一般には0〜<1%のカウントされた一次粒子である。
【0032】
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末中の二酸化ケイ素成分は、結晶質又は不定形の形で存在していてもよく、その際、純粋な不定形二酸化ケイ素が好ましい。
【0033】
本発明により使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末の粒子の酸化鉄成分は、好ましくは、主成分としてマグネタイト及び/又はマグヘマイトを有していてもよい。さらに、酸化鉄に対して15%まで、一般には10%未満のヘマタイト、β−Fe及びケイ酸鉄を含有していてもよい。
【0034】
より好ましくは、本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末は、酸化鉄に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%のマグネタイト及び/又はマグヘマイトの割合を有していてもよい。
【0035】
本発明によって使用されるケイ素−鉄混合酸化物粉末の磁性特性を変化させる意図がある場合には、さらに、本発明によって使用されるケイ素−鉄混合酸化物粉末を提供することが有利であってよく、その際、マグヘマイト/マグネタイトの質量比は0.3:1〜100:1である。酸化鉄が、マグヘマイトの形でのみ存在することも同様に可能である。
【0036】
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末中で、Feとして算定された酸化鉄の割合は30〜90質量%である。本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末は、好ましくは50±10質量%又は80±10質量%の酸化鉄の割合を有していてもよい。特に好ましくは、50±5質量%又は80±5質量%の範囲であってもよい。
【0037】
本発明によって使用されるケイ素−鉄混合酸化物粉末中の二酸化ケイ素及び酸化鉄の合計は、少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%及びより好ましくは少なくとも98.5質量%である。
【0038】
二酸化ケイ素、酸化鉄及び塩化物に加えて、本発明による混合酸化物粉末は、少なくとも1種のドーピング成分を含有していてもよい。これは、好ましくはマンガン、コバルト、クロム、ユーロピウム、イットリウム、サマリウム、ニッケル及びガドリウムの酸化物から成る群から選択される。
【0039】
特に好ましいドーピング成分は、酸化マグネシウムである。
【0040】
ドーピング成分の割合は、それぞれの場合に酸化物として算定し、かつ混合酸化物粉末に対して、好ましくは0.005〜2質量%、より好ましくは0.5〜1.8質量%及びより好ましくは0.8〜1.5質量%であってもよい。
【0041】
ドーピング成分は、一般には粉末中で均一に分散されてもよい。ドーパントの型及び反応に依存して、ドーピング成分は、二酸化ケイ素又は酸化鉄の領域で富化した形で存在していてもよい。
【0042】
本発明による混合酸化物粉末のBET表面積は、広範囲に可変であってもよい。好ましいBET表面積は10〜100m/gの範囲で見出すことができる。好ましくは、BET表面積は40〜70m/gを有する混合酸化物粉末であってもよい。
【0043】
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末の粒子は、同一又は異なるポリマー又はポリマー混合物の1種又はそれ以上の殻によって包囲されていてもよい。特に適したポリマーはポリメチルメタクリレートであってもよい。
【0044】
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末は、高い飽和磁性を示す。本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末は、好ましくは40〜120Am/kgのFeの飽和磁性、より好ましくは60〜100Am/kgのFeの飽和磁性を有していてもよい。
【0045】
本発明によって使用された有利なケイ素−鉄混合酸化物粉末は、以下の特徴を有するものであることが見出された:
a)BET表面積は50±5m/gであり、
b)SiOとして算定されたケイ素は50±5質量%、Feとして算定された鉄は45±5質量%、塩化物は1.5±0.5質量%、MnOとして算定されたマンガンは0.5±0.3質量%である割合を有し、その際、酸化物の合計は100%になり、
c)酸化鉄の平均直径は10〜30nmであり、
d)酸化鉄に対する割合(マグネタイト+マグヘマイト)は90±10質量%である。
【0046】
さらに、本発明によって使用された有利なケイ素−鉄混合酸化物粉末は、以下の特徴を有することが見出された:
a)BET表面積は50±10m/gであり、
b)SiOとして算定されたケイ素は10±5質量%、Feとして算定された鉄は85±5質量%、塩化物は1.0±0.2質量%、MnOとして算定されたマンガンは1.8±0.2質量%である割合を有し、
c)酸化鉄の平均直径は10〜30nmであり、
d)酸化鉄に対する割合(マグネタイト+マグヘマイト)は90±10質量%である。
【0047】
さらに、本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末は、
a)SiOとして算定された1種又はそれ以上の気体状のハロゲン化ケイ素化合物10〜60質量%、
b)Feとして算定された、溶液の形の塩化鉄40〜90質量%、及び
c)場合によっては、酸化物として算定された1種又はそれ以上のドーピング成分0.005〜2質量%を、
d)別個に反応器の高温帯域に供給し、
e)これらを高温帯域中で、700〜2500℃の温度で過剰量の酸素又は酸素含有ガスと一緒に反応させ、
f)かつ、高温帯域下流の反応器の第2帯域中で、還元ガスを反応混合物に、1又はそれ以上の箇所で、この第2帯域全体に還元雰囲気が生じる程度の量で添加し、かつ温度を500℃から150℃に低下させ、
g)生じる固体をガス状物質から、還元雰囲気が同様になおも存在する他の第3帯域中で分離し、かつ、
h)場合によっては、排ガスが還元雰囲気を生じない程度に、ガス状物質に対して十分な空気を添加する、
ことによって製造することができる。
【0048】
溶液とは、液相の主成分が水、水及び1種又はそれ以上の有機溶剤、又は水と1種又はそれ以上の有機溶剤との混合物であるものを意味すると理解される。使用される好ましい有機溶剤は、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はイソブタノールまたはtert−ブタノールであってもよい。特に好ましくは、水が主成分であるこれらの溶液である。
【0049】
ドーピング成分とは、本発明によって使用された珪素−鉄混合酸化物粉末中に存在する元素の酸化物を意味するものと理解される。
【0050】
ドーパントは、ドーピング成分を得るために方法において使用される化合物を意味するものと理解される。ドーパントは、ハロゲン化ケイ素化合物及び塩化鉄とは別個に添加することができる。これは、気体又は溶液の形で実施することができる。さらにドーパントは、気体の形でハロゲン化ケイ素化合物と一緒にか、あるいは、塩化鉄含有溶液の成分として導入することができる。
【0051】
温度は、1種又はそれ以上の燃焼ガス及び酸素含有ガスを含み、かつ反応チャンバー中で燃焼する混合物を発火させることにより生じる火炎によるものであってもよい。
【0052】
適した燃焼ガスは水素、メタン、エタン、プロパン、天然ガス、アセチレン、一酸化炭素又は前記ガスの混合物であってもよい。水素は最も適している。使用される酸素含有ガスは一般には空気である。
【0053】
混合酸化物と同様に、反応混合物はさらにガス状反応生成物及び任意の未反応のガス状原料を含有する。ガス状反応生成物は、たとえば塩化水素及び二酸化炭素であってもよい。
【0054】
反応混合物は、還元ガス又は還元ガスと反応器の帯域II中に添加された空気との混合物と一緒に混合する。還元ガスは、たとえばフォーミングガス、水素、一酸化炭素、アンモニア又は前記ガスの混合物、及び特に好ましくはフォーミングガスであってもよい。このような還元ガスは、還元雰囲気を生じさせる量で、反応混合物に添加する。
【0055】
還元雰囲気は、ラムダ値が1未満であるものを意味すると理解される。
【0056】
ラムダは、酸素含有ガスの酸素含量の合計を、酸化及び/又は加水分解される鉄及び珪素化合物と水素含有燃焼ガスの合計で割ることによって計算することができ、この場合、これらはそれぞれmol/hである。
【0057】
たとえば、水素及び空気を、高温帯域(帯域I)中で使用し、かつ、空気及びフォーミングガス(80:20N/H)を帯域II中で使用する場合には、ラムダ値は以下の式にしたがって、帯域II及びIII中で算定され、それぞれの場合において、単位時間当たり導入されたガスの量に対して0.21・過剰量の帯域Iからの空気/0.5・(H+0.2・フォーミングガス)となる。
【0058】
帯域Iに関して、ラムダ値は1を上廻る。水素及び空気を使用する場合には、帯域I中のラムダ値は、以下の式によって定められる:
0.21・空気/0.5・H
【0059】
第1帯域中の滞留時間は0.8〜1.5秒であってもよい。
【0060】
第2及び第3帯域中の滞留時間の合計は、15秒〜15分であってもよい。
【0061】
さらに水蒸気(steam)を、第2反応帯域中に導入することも可能である。
【0062】
図2は、たとえばプロセスを実施するための概略図を示す。I、II及びIIIは3個の反応帯域を示す。さらに:
1=塩化鉄の噴霧溶液、場合により付加的なドーパントを含むもの;
2=酸素−含有ガス、好ましくは空気;
3=燃焼ガス、好ましくは水素;
4a=還元ガス;4b=水蒸気(任意);4c=空気(任意);
5=フィルター上に析出したケイ素−鉄混合酸化物粉末;
6=排ガス。
【0063】
使用される塩化鉄は塩化鉄(II)(FeCl)、塩化鉄(III)(FeCl)又は2個の混合物であってもよい。塩化鉄は溶液として導入される。塩化鉄の濃度は、それぞれの場合において溶液に対して好ましくは1〜30質量%及びより好ましくは10〜20質量%であってもよい。
【0064】
好ましくは使用されるハロゲン化ケイ素化合物は、SiCl、CHSiCl、(CHSiCl、(CHSiCl、(CHSi、HSiCl、(CHHSiCl、CHSiCl、一般式RCl3−nSiSiRCl3−m
[式中、RはCHであり、かつn+mは2、3、4、5及び6である]のジシラン、及びさらには前記化合物の混合物である。特に好ましくは四塩化ケイ素の使用である。
【0065】
さらに、ミューラー・ロショー合成で得られたこれらのフラクションカットからのハロケイ素化合物を使用することも可能であり、かつ、このフラクションカットはさらに、C〜C12−炭化水素の割合を含有していてもよい。これらの炭化水素の割合は、1個のフラクションに対して10質量%までであってもよい。通常、これらの割合は0.01〜5質量%であり、かつC炭化水素の割合は、例えばcis−及びtrans−2−ヘキセン、cis−及びtrans−3−メチル−2−ペンテン、2,3−ジメチル−2−ブテン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタンによって一般には占められる。ミューラー・ロショー合成からのハロゲン化ケイ素化合物を使用する場合には、これは好ましくは、四塩化ケイ素との混合物の形でおこなう。
【0066】
本発明によって使用されるケイ素−鉄混合酸化物粉末は、さらに、
a)SiOとして計算された1種又はそれ以上の気体状のハロゲン化ケイ素化合物10〜60質量%、
b)Feとして計算された溶液の形の塩化鉄40〜90質量%、及び
c)場合によっては、酸化物として計算された1種又はそれ以上のドーピング化合物0.005〜2質量%
を、
d)別個に、反応器の高温帯域に供給し、
e)これらを高温帯域中で700〜2500℃の温度で、火炎中で反応させ、この場合、この火炎は、1種又はそれ以上の燃焼ガス及び酸素含有ガスを含有する混合物の発火によって生じるものであって、かつ、反応チャンバー中を燃焼させ、かつ、その際、酸素は欠乏状態で使用され、
f)高温帯域下流の反応器の第2帯域において、空気又は空気及び水蒸気を反応混合物に対して、1又は複数の箇所で、この第2帯域全体に亘って、還元雰囲気又は酸化雰囲気を生じさせる量で添加し、かつ、温度を500℃から150℃に減少させ、かつ、
g)生じる固体を、さらなる第3帯域中で、第2帯域において存在するのと同様の雰囲気のガス物質から除去し、かつ、
h)場合によっては、十分な空気をガス状物質に添加して、排ガスが還元雰囲気を生じさせないようにする。
【0067】
還元雰囲気は、帯域I、帯域II及び帯域IIIにおけるラムダ値が1未満の雰囲気であるものを意味すると理解される。
【0068】
酸化雰囲気は、帯域II及びIII中のラムダ値は1を上廻る雰囲気であるものを意味すると理解される。
【0069】
使用された化合物の型及び反応パラメータに関連して、方法を実施するための様式はすでに具体的に適用している。
【0070】
図2は、たとえば、この方法を実施するための概略図の例を示す。I、II及びIIIは、3個の反応帯域を示す。さらに以下のものを示す:
1=塩化鉄の噴霧溶液、場合によっては付加的なドーパントを含有するもの;
2=酸素−含有ガス、好ましくは空気;
3=燃焼ガス、好ましくは水素(過剰量);
4a=空気(過剰又は不足);4b=水蒸気(任意);4c=空気(任意);
5=フィルター上に析出したケイ素−鉄混合酸化物粉末;
6=排ガス。
【0071】
本発明にしたがって使用可能な粒子は、高熱プロセスの構成に依存して、種々の凝集の程度を有する。影響するパラメータは滞留時間、温度、圧力、使用された化合物の部分圧、反応後の冷却型及び位置であってもよい。したがって、ほぼ球状の粒子からほぼ凝集された粒子への広範囲のスペクトルを得ることができる。
【0072】
本発明によって使用可能な粒子のドメインは、空間的に分離した超常磁性領域を意味するものであると理解される。高熱プロセスの結果として、本発明によって使用可能な粒子はほぼ孔不含であり、かつ表面上において遊離ヒドロキシル基を有する。これらは、外的な磁界が適用された場合には超常磁性特性を有する。しかしながら、これらは、永久的に磁化されるものではなく、かつ低い残留磁性のみを有する。
【0073】
特別な実施態様において、本発明によって使用可能な粒子の炭素含量は500ppm未満であってもよい。この範囲は、より好ましくは100ppm未満であってもよい。
【0074】
本発明による粒子のDIN66131によって測定されたBET表面積は、10〜600m/gの広い範囲で可変であってもよい。この範囲は、50〜300m/gで特に有利である。
【0075】
DIN ISO 787/11によって測定された、本発明の粒子の突き固め密度は、150〜500g/lの広い範囲に亘って可変であってもよい。この範囲は、200〜350g/lであることが特に有利である。
【0076】
DIN ISO 787/2によって測定された本発明による粒子の乾燥減量(105℃で2時間)は、0.1〜4.0質量%の広い範囲に亘って可変であってもよい。この範囲は、0.5〜2.0質量%で特に有利である。
【0077】
加熱速度は、以下の装置を用いる2個の異なる方法によって測定される。測定装置:Celes GCTM25、プレートインダクタN=3、Da=48、Di=8、Cu 6x1、約655kHz。
方法A:1s、10%粉末、粉末バルク密度
方法B:6s、5%粉末、粉末バルク密度
【0078】
AN-SOP 1326 (Aqura GmbH)の方法によって測定された、本発明による粒子のDVS等温線は、相対空気湿度に依存して0.04〜1.65の広い範囲に亘って可変であってもよい。
【0079】
好ましい実施態様において、本発明によって使用可能な粒子の超常磁性挙動をもはや検出することができない温度を下廻る「ブロッキング温度」は、150Kを上廻ることはできない。粒子組成と同様にこの温度はさらに、超常磁性ドメインの大きさ及びこれらの異方性に依存するものであってもよい。
【0080】
本発明によって使用可能な粒子の超常磁性ドメインの割合は、1〜99.6質量%であってもよい。この範囲において、非磁性マトリックスの結果として、超常磁性ドメインの空間的に分離した領域が存在する。超常磁性ドメインの割合を有する領域は、好ましくは30質量%を上廻り、さらに好ましくは50質量%を上廻る。本発明によって使用可能な粒子の達成可能な磁性作用は、さらに、超常磁性領域の割合と共に増加する。
【0081】
超常磁性ドメインは、好ましくはFe、Cr、Eu、Y、Sm又はGdの酸化物を含むものであってもよい。これらのドメインにおいて、金属酸化物は、同一又は異なる多形体(Polymorph)で存在していてもよい。
【0082】
さらに、非磁性多形体の領域が粒子中に存在することも可能である。これらは、非磁性マトリックスとドメインとの混合酸化物であってもよい。これらの1個の例は、鉄シリカライト(FeSiO)である。これらの非磁性成分は、超常磁性、たとえば非磁性マトリックスの方向に作用する。いいかえれば:この粒子は超常磁性であるが、しかしながら、飽和磁性は、非磁性成分の割合が増加するにつれて低下する。
【0083】
さらに、その大きさに応じて、超常磁性を示すことなく、かつ残留磁性を誘発する磁性ドメインが存在することも可能である。これは、比容積飽和磁性における増加を導く。使用分野に応じて、このようにして適合された粒子を製造することが可能である。
【0084】
特に好ましい超常磁性ドメインは、γ−Fe、Fe、γ−FeとFeとの混合物及び/又は前記のものと鉄含有の非磁性化合物との混合物の形での鉄酸化物である。
【0085】
非磁性マトリックスは、Si、Al、Ti、Ce、Mg、Zn、B、Zr又はGeの金属及びメタロイドの酸化物を含有していてもよい。特に好ましくは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン及び酸化セリウムである。超常磁性ドメインの空間的分離に加えて、マトリックスはさらに、ドメインの酸化状態の安定化の課題を有する。例えば、超常磁性酸化鉄相としてのマグネタイトは、二酸化ケイ素マトリックスにより安定化される。
【0086】
本発明によって使用可能な粒子は、吸着、表面での反応又は無機及び有機反応体の錯化又は前記反応体での錯化によって変性することができる。
【0087】
本発明によって使用可能な粒子は、さらに部分的又は完全に他の金属酸化物で被覆することができる。これは、例えば、本発明によって使用可能な粒子を、有機金属化合物を含有する溶液中に分散することによって実施することができる。加水分解触媒の添加後に、有機金属化合物はその酸化物に変換され、この場合、これは、本発明によって使用可能な粒子上に付着する。このような有機金属化合物の例は、ケイ素アルコキシド(Si(OR))、アルミニウムアルコキシド(Al(OR))又はチタンアルコキシド(Ti(OR))である。
【0088】
本発明によって使用可能な粒子の表面は、さらに、生物有機材料、たとえば核酸又はポリサッカリドの吸着によって変性することができる。この変性は、生物有機材料及び本発明によって使用可能な粒子を含有する分散液中で実施することができる。
【0089】
本発明は、さらに本発明によって使用可能な粒子を製造するための方法を提供し、この場合、この方法は、超常磁性ドメインの金属成分を含有する化合物、及び非磁性マトリックスの金属又はメタロイド成分を含有する化合物であって、その際、少なくとも1種の化合物が塩素を含有しているものを蒸発させ、超常磁性ドメインと非磁性マトリックスとの最終的に望ましい比に相当する気体の量を、キャリアガスと一緒に、空気及び/又は酸素及び燃焼ガスを含む混合ユニット中で混合し、この混合物は、公知デザインのバーナー中に供給し、かつ燃焼チャンバーの範囲内で、火炎中で反応させ、その後に、ホットガス及び固体を除去し、その後にガスを固体から除去し、かつ生成物を場合によっては熱処理によって、水蒸気による湿分を含むガスを用いて精製する。
【0090】
使用される燃焼ガスは、好ましくは水素またはメタンであってもよい。
【0091】
本発明によって使用可能な粒子は、さらに、エーロゾルを火炎加水分解または火炎酸化のガス混合物中に供給する方法によって得ることが可能であり、この場合、この方法は、非磁性マトリックスの前駆体を含み、エーロゾルをガス混合物と一緒に均一に混合させ、エーロゾルガス混合物を、公知デザインのバーナーに供給し、かつ燃焼チャンバーの範囲内で、火炎中で反応させ、その後に、ホットガス及び固体を冷却し、その後にガスを固体から除去し、かつ生成物を場合によっては熱処理によって、蒸気による湿分を含むガスを用いて精製し、その際、エーロゾルは、超常磁性金属酸化物の金属成分を含有し、かつ噴霧化により製造され、かつ、塩化物混合化合物は、マトリックスの前駆体として、及び/またはエーロゾルとして使用される。
【0092】
噴霧化は、好ましくは、1成分または2成分ノズルによって、あるいは、エーロゾル生成器を用いて実施することができる。
【0093】
金属酸化物またはメタロイド酸化物マトリックスの反応体、前駆体及び超常磁性ドメインの反応体、前駆体は、本発明によって使用可能な双方の方法において、たとえば、双方は、無機塩素含有塩であってもよい。さらに、金属酸化物またはメタロイド酸化物マトリックスの前駆体のみが塩素含有することも可能であり、かつ超常磁性ドメインの前駆体が塩素不含の無機塩、たとえば硝酸塩、または塩素不含の有機金属化合物、例えば、ペンタカルボニル鉄であることも可能である。さらに、金属酸化物またはメタロイド酸化物マトリックスの前駆体が、塩素不含の無機塩、例えば硝酸塩であるか、あるいは、塩素不含の有機金属化合物、例えばシロキサンであり、かつ、超常磁性ドメインが、塩素含有無機塩であることも可能である。特に好ましくは、金属酸化物またはメタロイド酸化物マトリックスの前駆体及び超常磁性ドメインの前駆体の双方が、塩素含有無機塩である。
【0094】
双方の方法において、冷却は、好ましくは熱交換器を用いて実施することができるか、あるいは、水またはガス、例えば空気または窒素中で直接混合させることによって、あるいは、ラバルノズルを介してプロセスガスを断熱圧縮することによって実施することができる。
【0095】
使用される疎水化剤は、以下の物質であってもよい:
オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン。
【0096】
より好ましくは、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びジメチルポリシロキサンを使用することができる。
【0097】
本発明による疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末は、充填剤として接着剤中で使用することができる。
【0098】
使用の他の分野はデータ記憶媒体として、画像処理における造影剤として、生化学的分離のために、及び分析プロセスのために、医学的適用のために、研磨剤として、触媒として、あるいは、触媒支持体として、増粘剤として、断熱材として、分散助剤として、流れ調整剤として及び強磁性流体における使用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】135nm〜80nmの凝集物直径を有する本発明による凝集物の三次元構造を示す図
【図2】プロセスを実施するための概略を示す図
【図3】例5の粉末からのX線回折図を示す図
【0100】

分析方法
BET表面積の測定:
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末のBET表面積は、DIN 66131によって測定された。
【0101】
二酸化ケイ素及び酸化鉄の含量の測定:
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末約0.3gを正確に計量し、白金るつぼに入れ、かつ、強熱減量を測定し、700℃で2時間に亘って、るつぼ中でか焼し、デシケータ中で冷却し、かつ再計量した。縁を超純水でリンスした後に、試料をホットプレート上で1mlのHSOp.a.1:1及び少なくとも3mlのHF40%p.a.を用いて乾燥するまで発煙させた。発煙の結果としての質量減量はSiOであると推測され、かつ残りはFeである。
【0102】
塩化物含量の測定:
本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末約0.3gを正確に計量し、20mlの20%水酸化ナトリウム溶液p.a.と混合し、溶解させ、かつ15mlの冷却したHNO中に攪拌しながら移した。溶液中の塩化物含量はAgNO溶液(0.1モル/1または0.01モル/1)で滴定した。
【0103】
断熱燃焼温度の測定:
反応器に導入する流の質量及びエネルギー平衡から算定した。エネルギー平衡は、水素燃焼と、四塩化ケイ素の二酸化ケイ素への変換及び塩化鉄(II)の酸化鉄(II)への変換の双方の反応エンタルピー並びに水性溶液の蒸発を考慮する。
【0104】
滞留時間の測定:
貫流するプラント容量と断熱燃焼温度でのプロセスガスの操作流量との商から算定した。
【0105】
キュリー温度の測定:
キュリー温度を、熱重量測定法(TG)を用いて測定した。この方法は、特徴的温度、すなわちキュリー温度でその磁化性を失う磁性物質の挙動に基づくものである。この温度で、元素磁石(the elementary magnet)のアライメントは増加する熱運動により妨げられる。不均一磁界で強磁曲線のTG曲線を測定した場合には、磁力は、キュリー温度で消失する。不均一磁界は、オーブン本体上に水平に2個の磁石を適用することにより生じる。キュリー点での急激な磁力の変化は、みかけの質量増加の終了をもたらす。このキュリー温度は、TGステージの外挿終点に相当する。純粋な磁石挙動を例証するために、本発明による粉末を1000℃まで、1.磁界内で、2.磁界なしで加熱し、かつ、測定値2を測定値1から引いた。この差分曲線は純粋な磁気挙動を示す。加熱の開始時において、TG曲線は、磁力の増加を示し、この場合、これは質量の見掛けの減少に相当する。特定温度から、磁力の減少が始まり、この場合、これは、見掛けの質量増加を導く。この質量増加はキュリー温度で終了する。
【0106】
X−線回折図(XRD)
分析:
反射、θ/θ回折計、Co−Kα、U=40kV、I=35mA、Feフィルターを備えた線状PSD、試料回転
スリット:2×8mm、0.8mm
角度の幅(2θ):15〜112.5゜
ステップ幅:0.2゜
評価:リートフェルドプログラムSiroQuant(登録商標)
【0107】
磁化:飽和磁化は、1単位体積当たりの最大達成可能な磁気モーメントである。飽和磁化は、無限に大きい磁場において得られる。B=5Tの外的領域において確立される磁化は、おおよそ飽和磁化に相当し、かつ、磁化の尺度として使用される。例1〜9からの本発明によって使用されたケイ素−鉄混合酸化物粉末の飽和磁気化は、比較例1〜3のものよりも顕著に高い。
【0108】
高解像度透過型電子顕微鏡(HR−TEM):
例5〜7からの本発明によって使用されたマンガン含有ケイ素−鉄混合酸化物に関して、格子間隔は、HR−TEM画像を用いて測定された。粉末は、0.25nm、0.26nm及び0.27nmの格子間隔を示す。これらの値は、マグヘマイト0.25nm、マグネタイト0.252nm及びヘマタイト0.269nmのための参考値と、極めて良好に一致する。酸化マンガンの存在を示唆する値は見出すことができない。これによって、マンガンが酸化鉄格子中に混合されていることを結論付けることができる。
【0109】
本発明によって使用されるケイ素−鉄混合酸化物粉末は、優れた磁気特性を示す。文献で記載された、塩化物の磁気特性における悪影響とは対照的に、本発明は、粉末中で3質量%までの塩化物が、磁気特性において何ら影響を与えないことを示す。
【0110】
例1:
0.87kg/hのSiClを蒸発させ、かつ7.0m(STP)/hの水素及び18.00m(STP)/hの空気と一緒に混合帯域中に供給した。
【0111】
さらに、水中、25質量%の塩化鉄(II)溶液から得られたエーロゾル、この場合、これは4.60kg/hの塩化鉄(II)に相当するものを、二成分ノズルを介して混合帯域中に、バーナーの範囲内で、キャリアガス(3m(STP)/hの窒素)によって導入した。均一に混合されたガス−エーロゾル混合物を、反応器の帯域I中に、約1300℃の断熱燃焼温度で、かつ約40m秒の滞留時間で燃焼させた。
【0112】
引き続いて、6500m(STP)/hのフォーミングガス(80:20容量% N/H)を、帯域Iから搬出した反応混合物に、帯域II中で添加した。これは、全体の反応混合物を250℃に冷却させた。
【0113】
帯域II下流の帯域III中で、固体を、フィルター上でガス状物質から析出させ、かつ、10m(STP)/hの空気を排ガス流に添加した。
【0114】
得られた固体の物理化学的値を、第1表中に示す。
【0115】
例2:
例1と同様におこなったが、SiCl及びFeClの異なる原料量を使用した。
【0116】
例3:
塩化鉄(II)97部及び塩化鉄(III)3部からなる溶液を、塩化鉄(II)の溶液の代わりに使用することを除いて、例1と同様におこなった。
【0117】
例4:
塩化鉄(II)の溶液の代わりに、塩化鉄(III)の溶液を使用することを除いて、例1と同様におこなった。さらに、付加的な6.0m(STP)/hの水蒸気を、帯域II中に導入した。
【0118】
例5〜7:
塩化鉄(II)25質量%及び塩化マンガン(II)20質量%の溶液を使用することを除いて、例1と同様におこなった。
【0119】
例8:
0.28kg/hのSiClを蒸発させ、かつ、7.0m(STP)/hの水素及び16m(STP)/hの空気と一緒に混合帯域中に供給した。
【0120】
さらに、水中25質量%の塩化鉄(II)溶液から得られたエーロゾルを、二成分ノズルを用いて、バーナーの範囲内で混合帯域に、キャリアガス(4.0m(STP)/hの窒素)を用いて導入した。均一に混合されたガスエーロゾル混合物を、反応器の帯域I中で、約1230℃の断熱燃焼温度及び約50m秒の滞留時間で燃焼させた。
【0121】
引き続いて、12kg/hの冷却空気を、帯域Iから搬出された反応混合物に、帯域II中で添加した。これは、全反応混合物を280℃に冷却した。
【0122】
帯域II下流の帯域III中で、固体を、フィルター上でガス状物質から析出させた。析出の過程において、酸化雰囲気が存在した。
【0123】
例9:
塩化鉄(II)25質量%及び塩化マンガン(II)20質量%の溶液を使用することを除いて、例8と同様におこなった。さらに、付加的な8kg/hの水蒸気を、帯域II中に導入した。
【0124】
帯域II下流の帯域III中で、固体をフィルター上でガス状物質から析出させた。析出の過程において、還元雰囲気が存在した。
【0125】
例1〜9の原料、使用量及び反応パラメータを、第1表に示す。得られた固体の物理化学的性質は、第2表に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
【表3】

【0128】
比較例1(C−1):
0.14kg/hのSiClを約200℃で蒸発させ、かつ3.5m(STP)/hの水素及び15m(STP)/hの空気と一緒に混合帯域中に供給した。さらに、10質量%の塩化鉄(III)水溶液から得られたエーロゾル、この場合、これは塩化鉄(II)の1.02kg/hに相当する、を、二成分ノズルで、バーナーの範囲内で、混合帯域中に、キャリアガス(3m(STP)/h窒素)を用いて導入した。
【0129】
ここで、均一に混合したガス−エーロゾル混合物を、約1200℃の断熱燃焼温度及び約50m秒の滞留時間で燃焼させた。火炎加水分解の後に、反応ガス及び形成された粉末を冷却し、かつ、固体を、フィルターを用いて排ガス蒸気から分離した。さらなる工程において、蒸気を含有する窒素を用いての処理は、粉末上に依然として付着している塩酸残留物を除去する。
【0130】
粉末は、50質量%の酸化鉄含量、146m/gのBET表面積、368ppmの塩化物含量及び17Am/kgの飽和磁化を有していた。
【0131】
比較例2(C−2):
0.23kg/hのSiCl及び0.41kg/hのFeClを使用することを除いて、C−1と同様におこなった。粉末は、50質量%の酸化鉄含量、174m/gのBET表面積、220ppmの塩化物含量及び6.5Am/kgの飽和磁化を有していた。
【0132】
比較例3(C−3):
0.21kg/hのSiCl及び0.40kg/hのFeClを使用することを除いて、C−1と同様におこなった。粉末は、25質量%の酸化鉄含量、143m/gのBET表面積、102ppmの塩化物含量及び10.4Am/kgの飽和磁化を有していた。
【0133】
X−線回折図(XRD):
ヘマタイトは、明らか反射によって明らに識別可能であった。マグネタイト及びマグヘマイトの反射は、互いに極めて高い程度に重複する。マグへマイトは、鋭角の範囲で(110)及び(211)の反射に基づいて、顕著に検出可能である。リートフェルト法を用いて、定量的な相分析を実施する(エラー、約10%相対)。図3は、例5の粉末からのX線回折図を示す。
【0134】
使用された反応体は、EP1284485によるケイ素−鉄混合酸化物である。物理化学的性質は、第3表に示す。
【0135】
反応体は、最初に混合機中に装填し、かつ激しく混合しながら、場合によっては最初に水及びその後に表面変性剤で噴霧した。
【0136】
噴霧を終了するやいなや、さらに15〜30分に亘って継続して混合することが可能であり、かつその後に50〜400℃で、1〜6時間に亘って熱処理をおこなった。
【0137】
使用された水は、酸で、たとえば塩酸で、pH7を1にまで低下させてもよい。使用されたシラン化剤は、溶剤中、たとえばエタノール中で溶解することができる。
【0138】
詳細については、第4表〜第7表に示す。
【0139】
【表4】

【0140】
【表5】

【0141】
【表6】

【0142】
【表7】

【0143】
【表8】

【0144】
本発明による表面変性超常磁性粒子は、アルコール中への良好な混合を示し、この場合、これは、接着剤中での使用スペクトルを拡大するものである。
【0145】
さらに、水を吸収する傾向は顕著に減少し(第4表、DVS等温線)、その結果、本発明による生成物は顕著に安定化し、かつより高い熱容量を示す。
【0146】
これは、水をより高い水を吸収する傾向が、熱容量を減少させうることによる。
【0147】
より高い熱容量によって、本発明による生成物は、電磁誘導型接着剤系で低周波電圧の範囲で使用することが可能である(第4表、加熱速度A及びB)。
【符号の説明】
【0148】
1 塩化鉄の噴霧溶液(場合により付加的なドーパントを含む)、 2 酸素−含有ガス、好ましくは空気、 3 燃焼ガス、好ましくは水素、 4a 還元ガス、 4b 水蒸気(任意)、 4c 空気(任意)、 5 フィルター上に析出したケイ素鉄混合酸化物粉末、 6 排ガス、 I 第1反応帯域、 II 第2反応帯域、 III 第3反応帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の物理化学的特徴:
【表1】

を有する、疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末。
【請求項2】
ケイ素−鉄混合酸化物粉末を、場合によっては最初に水と一緒に、かつその後に表面変性剤と一緒に室温で噴霧し、場合によってはさらに15〜30分に亘って混合し、かつその後に50〜400℃で1〜6時間に亘って熱処理する、請求項1に記載の疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末を製造するための方法。
【請求項3】
ケイ素−鉄混合酸化物粉末を、気体の形の表面変性剤で処理し、かつその後にこの混合物を50〜800℃の温度で0.5〜6時間に亘って熱処理する、請求項1に記載の疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末を製造するための方法。
【請求項4】
接着剤中の増量剤としての、請求項1に記載の疎水化されたケイ素−鉄混合酸化物粉末の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−518926(P2011−518926A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506634(P2011−506634)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053734
【国際公開番号】WO2009/132911
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】