説明

疎水性のフュームドシリカおよびそのフュームドシリカを含有するシリコーンゴム材料

本発明は、シラン処理によって表面上にジメチルシリルおよび/またはモノメチルシリル基を固定されたフュームドシリカを粉砕することによって得られる疎水性のフュームドシリカ、および本発明によるシリカの製造方法、および本発明によるシリカを含有するシリコーンゴム材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎水性のフュームドシリカ、その製造方法、その使用およびそのフュームドシリカを含有するシリコーンゴム材料に関する。
【0002】
フュームドシリカは、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie[ウルマン工業化学辞典]、Volume 21、464ページ (1982)から公知である。該フュームドシリカは蒸発可能なケイ素化合物、例えば、四塩化ケイ素などを水素と酸素との混合物として燃焼させることによって製造される。
【0003】
シリコーンゴム材料およびシリコーンゴム材料中でのフュームドシリカ(AEROSIL(登録商標))の使用は公知である(ウルマン工業化学辞典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)、Volume A 23、Rubber、1、221以下参照;Rubber、3、3、6以下参照;Volume A 24、Silicones、57以下参照、1993)。
【0004】
それらの優れた増粘効果のおかげで(チキソトロープ効果)、フュームドシリカはシリコーン封止用コンパウンド中で使用され、それらは該用途において接合部の封止材として必要とされている。しかしながら、該シリコーンゴム材料が被膜材料として使用される場合、増粘がほとんどないことが有利である(US6268300号)。しかしながら、シリコーン加硫物の表面の光学的品質は全ての場合において決定的に重要である。
【0005】
従って本発明の課題は、改善した特性を有するフュームドシリカ、およびこのフュームドシリカを活性な充填材として使用した結果としての光学的に高品質の表面を加硫後に示すシリコーンゴム材料を提供することである。
【0006】
前記の技術的課題は、シラン処理によって表面上にジメチルシリル基および/またはモノメチルシリル基を固定されたフュームドシリカを粉砕することによって得られる疎水性のフュームドシリカによって解決される。
【0007】
本発明によるシリカが、エアジェットミルまたはピン付きディスクミルによって粉砕されたシリカである場合、特に好ましい。そのように得られたシリカは、未粉砕の出発材料、即ち未粉砕のシリカよりも低いグラインドメーター値を有する。従って、本発明による粉砕されたシリカは、例えば、シリコーンゴム材料中で該出発材料よりも良好且つ素早く分散できる。従って、未粉砕のシリカが50μmのグラインドメーター値を有する一方で、本発明によるシリカのグラインドメーター値は20μmである。従って、本発明によるシリカは、好ましくは20μm未満のグラインドメーター値を有するか、あるいは出発材料と比較して60%より多く低減されたグラインドメーター値を有する。
【0008】
シリカが突き固め密度(tamped density)10〜80g/l、特に好ましくは10〜60g/lを有する場合、さらに好ましい。
【0009】
本発明によるシリカのさらなる実施態様において、それはBET比表面積150〜200m2/g、好ましくは160〜180m2/g、特に好ましくは165〜175m2/gを有する。
【0010】
本発明によるシリカは好ましくはシーラス(Cilas)による平均粒径3.0〜20.0μmを有する。
【0011】
さらなる実施態様において、該シリカはpH範囲4.0〜5.0、好ましくは4.0〜4.5、特に好ましくは4.2〜4.3を有する。
【0012】
さらなる実施態様において、該シリカは炭素含有率0.1〜10.0、好ましくは0.5〜3.0、特に好ましくは0.5〜1.5質量%を有する。
【0013】
本発明はさらには、本発明によるフュームドシリカの製造方法において、シラン処理によって表面上にジメチルシリル基および/またはモノメチルシリル基を固定されたフュームドシリカを粉砕する工程を特徴とする方法に関する。好ましくは、使用されるシリカはBET比表面積130〜250m2/g、好ましくは150〜190m2/g、および突き固め密度30〜100g/l、好ましくは40〜60g/l、特に好ましくは約50g/lを有する。
【0014】
本発明による製造方法のさらに好ましい実施態様において、使用されるシリカは下記の物理化学的特性を有する:
【表1】

【0015】
フュームドシリカはWinnacker−Kuechler Chemische Technologie[科学技術],Volume 3 (1983) 第4版,77ページおよびUllmanns Enzyklopadie der technischen Chemie[ウルマン工業化学辞典],第4版 (1982),Volume 21,462ページから公知である。
【0016】
特に、フュームドシリカは蒸発可能なケイ素化合物、例えばSiCl4または有機ケイ素化合物など、例えばトリクロロメチルシランの、酸水素炎中での火炎加水分解によって製造される。
【0017】
使用されるシラン処理されたフュームドシリカは、フュームドシリカを公知の手段でジメチルクロロシランおよび/またはモノメチルトリクロロシランで処理することによって製造され、該ジメチルシリルおよび/またはモノメチルシリル基はフュームドシリカ表面上に固定されている。
【0018】
本発明の特定の実施態様において、使用される出発シリカはジメチルジクロロシランによって疎水化されたフュームドシリカであってよい。
【0019】
シラン処理されたフュームドシリカの粉砕をピン付きディスクミルまたはエアジェットミルを使用して実施できる。
【0020】
本発明によるシリカを増粘剤またはチキソトロープ剤としてシリコーンゴム材料中で使用する。
【0021】
前記の技術的課題は、さらに、シラン処理によって表面上にジメチルシリル基および/またはモノメチルシリル基を固定されたフュームドシリカを粉砕することによって得られる本発明による疎水性のフュームドシリカを含有するシリコーンゴム材料によって解決される。
【0022】
グラインドメーター値は、測定の結果、相応する未粉砕のシリカの存在下よりも低い。従って、本発明によるシリカのグラインドメーター値は出発材料のものよりも低く、分散時間30分で20μm未満である一方、未粉砕のシリカのグラインドメーター値は50μm未満である。従って、本発明によるシリカのグラインドメーター値は未粉砕のシリカでの値と比較して60%より多く減少している場合が好ましい。
【0023】
好ましい実施態様において、シリコーンゴム中に存在するシリカの突き固め密度が10〜80g/lである場合が好ましく、特に好ましくは10〜60g/lである。
【0024】
さらに好ましい実施態様において、該シリコーンゴム材料は全材料に対して、シラン処理によってジメチルシリル基および/またはモノメチルシリル基を表面上に固定されたフュームドシリカを粉砕することによって得られた前記の疎水性フュームドシリカを0.5〜60質量%、および式:
n Si R3-n−O−[Si R2 O]x−Si R3-n−Z’n
[式中、
R=1〜50個の炭素原子を有し、置換されていない、またはそれぞれ同一あるいは異なるO、S、F、Cl、BrまたはIによって置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、オキシム、アセトキシまたはアルキル基、および/または40〜10000個の繰り返し単位を有するポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびポリアクリロニトリル基。
Z=OH、Cl、Br、アセトキシ、アミノ、アミノキシ、オキシム、アルコキシ、アミド、アルケニルオキシ、アクリロイルオキシ(acryloylxy)またはリン酸基。該有機基は20個までの炭素原子をそれぞれ同一あるいは異なって有することが可能である。
Z’=オキシム、アルコキシ、アセトキシ、アミノまたはアミド
n=1〜3
X=100〜15000。]
のオルガノポリシロキサンを40〜99.5質量%含有する。
【0025】
使用できるオルガノポリシロキサンは、室温加硫(RTV)材料のためのベースとして現在までに使用された、あるいは使用され得る全てのポリシロキサンである。それらは例えば一般式:
n Si R3-n−O−[Si R2 O]x−Si R3-n−Z’n
[式中、X、R、Z’およびZは以下の意味を有する:
R=1〜50個の炭素原子を有し、置換されていない、またはそれぞれ同一あるいは異なるO、S、F、Cl、BrまたはIによって置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、オキシム、アセトキシまたはアルキル基、および/または40〜10000個の繰り返し単位を有するポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびポリアクリロニトリル基。
Z=OH、Cl、Br、アセトキシ、アミノ、アミノキシ、オキシム、アルコキシ、アミド、アルケニルオキシ、アクリロイルオキシまたはリン酸基。該有機基は20個までの炭素原子をそれぞれ同一あるいは異なって有することが可能である。
Z’=オキシム、アルコキシ、アセトキシ、アミノまたはアミド
n=1〜3
X=100〜15000。]
によって記載される。
【0026】
上述の式において、一般に不純物としてのみ存在する他のシロキサン単位、例えば式RSiO3/231/2およびSiO4/2(それぞれのRは上述の意味を有する)のものも存在できる。前記の他のシロキサン単位の量は10モル%を超えるべきではない。
【0027】
アルキル基の意味を有するRの例は、例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシルおよびオクチル基であり、使用できるアルケニル基はビニル、アリル、エチルアリル、およびブタジエニル基であり、且つ、使用できるアリール基はフェニルおよびトリル基である。
【0028】
置換された炭化水素基Rの例は、特に、ハロゲン化炭化水素基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、およびブロモトリル基;およびシアノアルキル基、例えばβ−シアノエチル基である。
【0029】
基Rに関するポリマーの例は、炭素を介してケイ素に結合するポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、およびポリアクリロニトリル基である。
【0030】
より容易な利用性のために、基Rの主な部分はメチル基からなる。他の基Rは特にビニルおよび/またはフェニル基である。
【0031】
特に、水不在下で貯蔵可能で且つ室温で水を吸収することで硬化してエラストマーが得られる配合物を考慮すれば、ZおよびZ’は加水分解性の基である。かかる基の例は、アセトキシ、アミノ、アミノオキシ(aminoxy)、アルケニルオキシ(例えばH2C=(CH3CO−))、アシルオキシおよびホスフェート基である。特に、容易な利用性のために、アシルオキシ基、特にアセトキシ基がZとして好ましい。しかしながら、例えばオキシム基、例えば式−ON=C(CH3)(C25)のものをZとして用いても優れた結果が得られる。加水分解性の原子のZの例は、ハロゲンおよび水素原子である。アルケニル基のZの例は、特にビニル基である。
【0032】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサンの粘度は、25℃で500000cPを超えるべきではなく、好ましくは25℃で150000cPを超えるべきではない。従って、その値xは好ましくは40000を超えるべきではない。
【0033】
使用できるオルガノポリシロキサンの例は、GE Bayer Silicones製のシリコーンポリマーE50(α,ω−ヒドロキシジメチルシリルオキシポリジメチルシロキサン)またはM50(α,ω−ヒドロキシジメチルシリルオキシポリジメチルシロキサン)である。
【0034】
種々のオルガノポリシロキサンの混合物を使用することもまた可能である。
【0035】
それらのオルガノポリシロキサンと本発明によるシリカと、随意に本発明による配合物のさらなる成分との混合を、任意の所望の公知の手段、例えば機械的な混合装置内で実施できる。該混合物の成分の添加が行われた順序にはかかわらず、非常に素早く且つ容易に実施される。
【0036】
好ましくは、本発明によって使用されるシリカを、硬化してエラストマーが得られる材料の総質量に対して0.5〜60質量%、好ましくは3〜30質量%の量で使用する。
【0037】
Si−結合したヒドロキシル基を有する反応性の末端単位が、反応性末端単位を含有するジオルガノポリシロキサン中の基としてのみ存在する場合、それらのジオルガノポリシロキサンは架橋されていなければならない。これは本質的に公知の手段で空気中に存在する水によって、随意に架橋剤を含むさらなる水を添加して実施される。ここで、例えばGE Bayer Silicones製のシロプレン(Silopren)架橋剤3034、随意に公知の手段における縮合触媒の存在下でエチルトリアセトキシシランを使用することが可能である。本発明による全ての配合物に適した触媒は例えば、同一の製造元からのシロプレン触媒DBTAまたはタイプ162ジブチルスズジアセテートまたはジラウレートである。
【0038】
本発明によるシリコーンゴム材料の特定の変型物において、式
R’4-tSi Z’4
[式中、
R’=1〜50個の炭素原子を有し、置換されていない、またはそれぞれ同一あるいは異なるO、S、F、Cl、BrまたはIによって置換されたアルキル、アルコキシ、アセトキシ、オキシム、アリールまたはアルケン基、および/または5〜5000個の繰り返し単位を有するポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびポリアクリロニトリル基。
Z’=OH、Cl、Br、アセトキシ、オキシム、アミノ、アミノキシ、アルケニルオキシ、またはリン酸基。該有機基は20個までの炭素原子をそれぞれ同一あるいは異なって有することが可能である。
t=3または4]
を有する架橋剤が0.5〜20質量%、好ましくは2〜10質量%、追加的に存在してもよい。
【0039】
全ての質量のデータはシリコーンゴム材料の総量に基づいている。
【0040】
上述の式のシランの例は、エチルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、イソプロピルトリアセトキシシラン、イソプロポキシトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリスジエチルアミノオキシシラン、メチルトリス(シクロヘキシルアミノ)シラン、メチルトリス(ジエチルホスファート)シラン、およびメチルトリス(メチルエチルケトオキシモ(methylethylketoximo))シランである。
【0041】
当然、オルガノポリシロキサン、撥水性のシリカ、架橋剤および架橋触媒の他に、本発明による配合物は、硬化してエラストマーが得られる材料において多くの場合または頻繁に通常使用される充填材を随意に含有できる。かかる物質の例は、50m2/g未満の表面積を有する充填材、例えば石英粉末、カオリン、フィロケイ酸塩、粘土鉱物、けいそう土、さらにはジルコニウムシリケート、および炭酸カルシウム、およびさらには未処理のフュームドシリカ、有機樹脂、例えばポリ塩化ビニル粉末、オルガノポリシロキサン樹脂、繊維充填材、例えばアスベスト、ガラス繊維および有機顔料、可溶性染料、香料、腐食防止剤、硬化を遅らせる薬剤、例えばベンゾトリアゾール、および可塑剤、例えばトリメチルシリルオキシ基によってエンドキャップされたジメチルポリシロキサンである。
【0042】
本発明によるRTV 1−成分シリコーンゴム材料は、随意に(配合物の総量に対して)0.1〜20、好ましくは0.1〜15、特に好ましくは0.1〜10質量%の水分結合物質(water−binding substances)を含有できる。この目的に適した物質は、例えば、カルボン酸無水物、例えば酢酸無水物またはマレイン酸無水物、および/または炭酸エステル、例えばジエチルカーボネートまたはエチルカーボネートなど、および/またはアルケニルオキシ化合物、および/またはケタール、例えばジメチルジオキソランなどである。1つまたはそれより多くの前記の物質を使用することもまた可能である。
【0043】
さらには、該シリコーンゴム材料は0.01〜99.5質量%の非官能化ポリシロキサンを含有してよい。既出のポリシロキサンをここで使用できるが、ただし、それらは官能化されていない。適した非官能化ポリシロキサンは、例えば、GE Bayer Silicones製のBaysilone oil M1000(ポリジメチルシロキサン)である。
【0044】
さらには、該シリコーンゴム材料は、触媒としての金属Pt、Sn、Ti、および/またはZnの有機または無機化合物0.01〜6質量%、および/または阻害剤0.01〜6質量%、および/または殺真菌剤および/または殺菌剤0.01〜6質量%、および/または密着促進剤(例えば、組成物:ジ−tert−ブトキシジアセトキシシランを有するGE Bayer Silicones製のシロプレン密着促進剤3001など)0.01〜6質量%を含有してよい。使用できる殺真菌剤/殺菌剤は、例えばイソチアゾリノン、ヴァイナイシン(vinycin)またはベンズイソチアゾリノンである。
【0045】
本発明によるシリコーンゴム材料を、室温加硫一成分シリコーンゴム封止用コンパウンド(1C−RTV)および自己レベリング室温加硫シリコーンゴム材料(1C−RTV)からなる群からのシリコーンゴム系として使用できる。
【0046】
該シリコーンゴム材料を、ジョイントコンパウンド、窓の封止用コンパウンド、自動車内、スポーツ用品および家庭用電化製品の封止材、耐熱封止材、オイル滲出封止材、耐化学薬品性の封止材、および耐水蒸気封止材、および電気および電子素子における封止材として使用できる。
【0047】
該シリコーンゴム材料を、織物、例えばレーステープ(スリップ防止)、および織物材料、例えばガラス繊維織物またはナイロン繊維織物用の被膜材料として使用できる。
【0048】
本発明によるシリコーンゴム材料の加硫物は有利にも、高品質の表面を有する。本発明による粉砕されたシリカは、出発材料と比較して、一定のままである比表面積と不変のpH値とを有するが、しかし有利にも、20μm未満の低いグラインドメーター値を有する。該出発材料はグラインドメーター値50μmを有している。驚くべきことに、前記の比較的低いグラインドメーター値は、突き固め密度から明らかなように(表3参照)、袋詰めまたは袋詰め/レベリングによる圧縮にもかかわらず、および袋詰め/レベリング/貯蔵の後でさえも保持されている。本発明によるシリカを含有するシリコーンゴム材料も同様に、出発材料(粉砕前のシリカ)のみしか含有しないそれらの材料と比較して有利な特性を有している。シリカの使用によって、出発材料と比較して(表3、比較例)、驚くべきことにシリコーン加硫物の良好な表面特性が得られるが、それらのシリカはより高い突き固め密度を有しており、それは通常は乏しい表面特性をもたらす。流動学的特性は、それによって影響されないままである(表4参照)。
【0049】
本発明を以下の実施例を参照して説明するが、しかし該実施例は保護の範囲を制限するわけではない。
【0050】
実施例
1. 粉砕
本発明による実施例の製造のために、市販のAEROSIL(登録商標)R974(袋入り製品)を、計量天秤を用いて計量し、使用するミルに入れ、そして粉砕した。
【0051】
AEROSIL(登録商標)R974は、DDS(ジメチルジクロロシラン)を用いて疎水化されたフュームドシリカであり、比表面積200m2/gを有する疎水性フュームドシリカAEROSILに基づく。
【0052】
AEROSIL(登録商標)R974の物理化学的特性を表1に示す。
【0053】
表1:使用されたフュームドシリカ
【表2】

【0054】
本発明による実施例の製造のために、市販のAEROSIL(登録商標)R974(袋入り製品)を、計量天秤を用いて計量し、使用するミルに入れ、そして粉砕した。ピン付きディスクミル(アルパイン(Alpine)160Z、ローター直径160mm)またはエアジェットミル(粉砕チャンバー直径:240mm、粉砕チャンバー高さ:35mm)を本実験に使用した。粉砕された製品を袋濾過器(フィルター面積:3.6m2、フィルター材料:ナイロン繊維織物)を使用して単離した。さらなる実験において、得られた粉砕された製品を市販の袋詰め機を用いて市販の袋内に詰める。さらなる実験において、粉砕された製品を詰めた袋を、この目的に適した技術的に慣例の方法によって平らにした後、パレットに載せる。貯蔵のために、袋内に詰めて平らにした試料を、9層からなるパレットの最下層で35日間貯蔵して試験する。本製造方法のパラメータを表2に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
2. 粉砕されたシリカの物理化学的特性測定
2.1 BET比表面積
BET比表面積をDIN ISO 9277に従って測定する。
【0057】
2.2 突き固め密度
突き固め密度の測定をDIN EN ISO 787−11に従って実施する。
【0058】
突き固め密度の測定原理:
突き固め密度(以前の突き固め容積)は、質量と、突き固め密度測定器内で特定の条件下で突き固めた後の粉末の容積との商に等しい。DIN ISO 787/XIによれば、突き固め密度はg/cm3で示されている。しかしながら、該酸化物の非常に低い突き固め密度ゆえに、我々は前記の値をg/lで示す。さらには、乾燥およびふるい分けおよび突き固め工程の繰り返しを省略する。
【0059】
突き固め密度測定用器具:
突き固め密度測定器
メスシリンダー
ラボ用天秤(読み取り精度0.01g)。
【0060】
突き固め密度測定方法:
200±10mlの酸化物を、突き固め密度測定器のメスシリンダー内に、空隙を残さず且つ表面が水平になるように導入する。導入された試料の質量を0.01gの精度で測定する。該試料が入ったメスシリンダーを、突き固め密度測定器のメスシリンダーホルダ(cylinderhalter)容器に差し込み、そして1250回突き固める。突き固められた酸化物の容積を1mlの精度で読み取る。
【0061】
突き固め密度測定の評価:
【数1】

【0062】
2.3 pH測定
pH測定のための試薬:
蒸留水または脱塩水、 pH>5.5
メタノール、分析用(p.a.)
緩衝液 pH7.00、pH4.66
pH測定のための器具:
ラボ用天秤(読み取り精度0.1g)
ビーカー、250ml
磁気攪拌器
磁気棒、長さ4cm
複合pH電極
pHメーター
ディスペンサー(Dispensette)、100ml
pH測定のための作業法:
該測定をDIN EN ISO 787−9に基づいて実施する。
【0063】
キャリブレーション:pH測定の前に、前記のメーターを緩衝液でキャリブレーションする。複数の測定を連続して行う場合、一回のキャリブレーションで充分である。
【0064】
酸化物4gを、250mlのビーカー内でメタノール48g(61ml)を用いてペーストに変換し、そしてその懸濁液を水48g(48ml)で希釈し、そして磁気攪拌器で5分間、pH電極を浸漬させて攪拌する(速度約1000分-1)。
【0065】
攪拌器のスイッチを切った後、1分間の放置時間の後、pHを読み取る。結果を小数点第一位まで報告する。
【0066】
2.4 グラインドメーター値
基本原理:
分散の度合いが、本発明によるシリカによって増粘された液体の性能特性を決定する。グラインドメーター値の測定は、分散度合いを評価するために役立つ。前記のグラインドメーター値は、それ未満では広げられた試料の表面に存在する微小片または凝集物が可視である、限界の層厚を意味するとして理解される。試料を、片側の端での深さが最大のAerosil粒子の直径の2倍大きく且つ他端に向かって連続的に0へと減少していく溝内に、ドクターブレードを用いて広げる。溝の深さを示す目盛り上で、それ未満では比較的多くの数のAerosil粒子が、結合系(binder system)の表面上の微小片または擦り傷によって可視である深さの値をミクロンで読み取る。読み取られた値が、該当の系のグラインドメーター値である。
【0067】
器具および試薬:
深さ範囲100〜0ミクロンを有するHegmannのグラインドメーター。
【0068】
分散液の調製(Bekanol中のAerosil):
Bekanol 96gとAerosil 4gとをプラスチックのビーカーに計量投入し、そしてスパチュラを用いて手で混合する。該混合物を、溶解機を使用して5000分-1で5分間分散させる(分散ディスクはプラスチックビーカーの底から約1mm離れている)。前記のプラスチックビーカーを、穴を空けた蓋で覆って、前記の混合物が飛び出すのを防ぐべきである。
【0069】
分散後、該試料を短く排気して、含まれている気泡を除去する。該分散液を、蓋をしたビーカー内で45分間放置する。
【0070】
手順:
前記のグラインドメーターのブロックを水平で滑らない表面に置き、試験の直前に拭いて綺麗にする。Aerosilの分散液は無気泡でなければならず、該分散液を溝の最も低い点に封入し、従ってそれは溝の端をいくぶん超えて流れる。この際、ドクターブレードを両手で支え、そしてグラインドメーターのブロックに対して垂直、且つその縦方向の端に対して直角に、該分散液が存在する溝の端の上にわずかな圧力で置く。該分散液をその後、該ドクターブレードをゆっくりと均一に引くことによって、ブロック上の溝の中に広げる。遅くとも、分散液を広げた3秒後に該グラインドメーターの値を読み取る。
【0071】
広げられた分散液の表面(溝に対して横方向に)を、(表面に対して)20〜30゜の角度で斜め上から見る。該ブロックに光を当て、従って広げられた分散液の表面構造がすぐに確認可能である。それ未満では比較的多くの数のAerosil粒子が微細片または擦り傷として表面上で可視である値をミクロンで、グラインドメーター値として目盛り上で読み取る。個々の無作為に生じる微細片または擦り傷は考慮に入れない。その粒状性を少なくとも2回、特に新しく塗布した分散液に対してそれぞれの場合、評価する。
【0072】
評価:
算術平均値を測定値から計算する。グラインドメーターのミクロンでの値と、インチ系およびFSPT単位に基づくHegmann単位との間には下記の関係が存在する:
B=8〜0.079A
C=10〜0.098 A=1.25B
ここで、意味は以下の通りである:
A=ミクロンでのグラインドメーター値
B=Hegmann単位でのグラインドメーター値
C=FSPT単位でのグラインドメーター値。
【0073】
表3に本発明によるシリカの物理化学的データ、例えば比表面積、pH、突き固め密度、グラインドメーター値およびシーラスによる平均粒径をまとめる。
【0074】
表3: 本発明によるシリカの物理化学的データ
【表4】

【0075】
粉砕された製品のデータは、事実上、一定の比表面積および不変のpH、グラインドメーター値50μmを有する出発材料と比べて、20μm未満の比較的低いグラインドメーター値を示す。驚くべきことに、前記の比較的低いグラインドメーター値は、突き固め密度から明らかなように、袋詰めまたは袋詰め/レベリングの結果としての圧縮にもかかわらず、および袋詰め/レベリング/貯蔵の後でさえも保持されている。
【0076】
3. 性能特性の試験
3.1 一般的な実施試験
RTV−1シリコーン封止材中の本発明によるシリカの性能特性を試験するために、相応するシリコーン材料を標準的な配合に従って実験室規模で作製する。この目的のために使用される遊星型溶解機は下記の要求に対応しているべきである:約2リットル入る攪拌容器であり、且つ冷却水の接続を有する二重ジャケットと共に提供される。遊星部の駆動と溶解機の駆動とは独立している。真空ポンプが存在しなければならない。追加的なドラムプレスによって充填が容易になる。洗浄のための分解は素早くすべきである。
【0077】
シリコーンゴム材料の製造のために、下記の配合を例として使用する:
シリコーンポリマー 62.4%
シロプレン E50(GE Bayer Silicones)
シリコーンオイル 24.6%
シリコーンオイル M1000(GE Bayer Silicones)
アセテート架橋剤 4.0%
架橋剤 AC 3034 (GE Bayer Silicones)
密着促進剤 1.0%
密着促進剤 AC 3001 (GE Bayer Silicones)
ジブチルスズジアセテート触媒 0.01%
フュームドシリカ 8.0%
AEROSIL(登録商標) (Degussa AG)。
【0078】
手順:
シリコーンポリマー468.0g、シリコーンオイル184.5g、架橋剤30.0g、および密着促進剤7.5gを攪拌容器内に計量投入し、そして1分間、遊星部の駆動50rpm、且つ溶解機500rpmの速度で均質化する。その後、シリカ60gを同じ速度で2段階(各30g)にて混合し、そして湿潤に必要な時間を測定する。
【0079】
シリカが完全に湿潤したらすぐに、約200mbarの真空を適用し、そして分散を5分間、遊星型攪拌機100rpm且つ溶解機の駆動2000rpmで実施する。封止材を2つのアルミニウム管内にドラムプレスを使用して充填する。そのように得られたシリコーンゴム材料をナイフコーターを使用して広げ、そして室温で大気中、24時間の間、加硫する。前記の加硫物の表面を光学的に評価し、そして学校の評点システムに従ってランク付けする:
評点:1=非常に良好、2=良好、3=充分、4=不充分、5=不良。
【0080】
加硫物が無欠陥あるいは分散していない粒子が全くない場合、評点1が与えられる。評点2の場合、非常に少ない欠陥が可視であり、そしてそれよりわずかに多いのが評点3の場合である。評点4の場合、非常に多くの欠陥が可視であり、その表面の外観はもはや技術的な使用に耐えない。同様のもののより高い程度に評点5を適用する。
【0081】
表4に、本発明によるシリカを含有するシリコーンゴム材料の観察された特性をまとめる。実施例8および16のシリカの使用によって、比較例(出発材料:未粉砕のシリカ)と比べて、驚くべきことに良好な表面特性のシリコーン加硫物が得られるが、それらのシリカは比較的高い突き固め密度を有しており、それは通常は乏しい表面品質をもたらす。ここで流動学的特性は影響されないままである。
【0082】
表4: シリコーン封止材の特性
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン処理によって表面上にジメチルシリル基および/またはモノメチルシリル基を固定されたフュームドシリカを粉砕することによって得られる疎水性のフュームドシリカ。
【請求項2】
請求項1あるいは2に記載のシリカにおいて、粉砕をピン付きディスクミルまたはエアジェットミルを使用して実施することを特徴とするシリカ。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のシリカにおいて、得られたシリカが未粉砕のシリカよりも低いグラインドメーター値を有し、得られたシリカが好ましくは出発材料と比較して60%より多く低減したグラインドメーター値を有していることを特徴とするシリカ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のシリカにおいて、得られたシリカが突き固め密度10〜80g/l、好ましくは10〜60g/lを有することを特徴とするシリカ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のシリカにおいて、得られたシリカがBET比表面積150〜200m2/g、好ましくは160〜180m2/g、特に好ましくは165〜175m2/gを有することを特徴とするシリカ。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載のシリカにおいて、得られたシリカがシーラスによる平均粒径3.0〜20.0μmを有することを特徴とするシリカ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のシリカにおいて、得られたシリカがpH範囲4.0〜5.0、好ましくは4.0〜4.5、および特に好ましくは4.2〜4.3を有することを特徴とするシリカ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載のシリカにおいて、得られたシリカが炭素含有率0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%を有することを特徴とするシリカ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の疎水性のシラン処理されたフュームドシリカの製造方法において、シラン処理によってジメチルシリル基および/またはモノメチルシリル基を表面上に固定されたフュームドシリカを粉砕する工程を特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、粉砕に使用されるシリカがBET比表面積130〜250m2/g、好ましくは150〜190m2/g、および突き固め密度30〜100g/l、好ましくは40〜60g/l、特に好ましくは約50g/lを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の、あるいは請求項9または10に記載の方法によって得られるシラン処理されたフュームドシリカを、シリコーンゴム材料中の増粘剤またはチキソトロープ剤として用いる使用。
【請求項12】
シラン処理によって表面上にジメチルシリル基および/またはモノメチルシリル基を固定されたフュームドシリカを粉砕することによって得られる疎水性のフュームドシリカを含有することを特徴とするシリコーンゴム材料。
【請求項13】
請求項12に記載のシリコーンゴム材料において、得られたシリカのグラインドメーター値が相応する未粉砕のシリカのものよりも小さく、該グラインドメーター値が好ましくは出発材料の値と比較して60%より多く低減されていることを特徴とするシリコーンゴム材料。
【請求項14】
請求項12または13のいずれか一項に記載のシリコーンゴム材料において、存在するシリカが突き固め密度10〜80g/l、好ましくは10〜60g/lを有することを特徴とするシリコーンゴム材料。
【請求項15】
請求項12から14までのいずれか一項に記載のシリコーンゴム材料において、請求項1から10までのいずれか一項に記載のシリカを含有することを特徴とするシリコーンゴム材料。
【請求項16】
請求項12から15までのいずれか一項に記載のシリコーンゴム材料において、総質量に対して前記のシリカを0.5〜60質量%、および式
n Si R3-n−O−[Si R2 O]x−Si R3-n−Z’n
[式中、
R=1〜50個の炭素原子を有し、置換されていない、またはそれぞれ同一あるいは異なるO、S、F、Cl、BrまたはIによって置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、オキシム、アセトキシまたはアルキル基、および/または40〜10000個の繰り返しユニットを有するポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびポリアクリロニトリル基。
Z=OH、Cl、Br、アセトキシ、アミノ、アミノキシ、オキシム、アルコキシ、アミド、アルケニルオキシ、アクリロイルオキシまたはリン酸基。該有機基は20個までの炭素原子をそれぞれ同一あるいは異なって有することが可能である。
Z’=オキシム、アルコキシ、アセトキシ、アミノまたはアミド
n=1〜3
X=100〜15000。]
のオルガノポリシロキサンを40〜99.5質量%、含有することを特徴とするシリコーンゴム材料。
【請求項17】
請求項12から16までのいずれか一項に記載のシリコーンゴム材料において、シリカを0.5〜60質量%、好ましくは3〜30質量%含有することを特徴とするシリコーンゴム材料。

【公表番号】特表2010−527882(P2010−527882A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508783(P2010−508783)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055575
【国際公開番号】WO2008/141931
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】