説明

疎水性タンパク質の発現

細菌宿主(例えば、大腸菌)などの発現系内で効率的に発現する確率が増加した、一部の疎水性アミノ酸を含む非ネイティブ(すなわち異種の)ポリペプチドを設計する方法を開示する。その方法は、対象ポリペプチド内の1つまたは複数の疎水性ペプチド配列を同定するステップと、上記ポリペプチド内の少なくとも1つの疎水性ペプチド配列を、疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した候補ポリペプチドを生成するように、配置または再配置するステップとを含む。そうした方法は特に、ポリエピトープポリペプチドの設計に有用であり、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する、そうした特定的な実施例を述べる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌宿主(例えば、大腸菌(E. coli))などの発現系内における、一部の疎水性アミノ酸を含む非ネイティブ(すなわち異種の)ポリペプチドの発現に関する。特に、本発明は、効率的に(すなわち、SDS-PAGEによって検出可能な量で)発現する確率が上昇したポリエピトープポリペプチドを設計する方法を提供する。本発明の具体的な用途の1つは、エプスタイン-バーウイルス(EBV)関連疾患[例えば、伝染性単核細胞症(IM)および上咽頭癌(NPC)]を予防するためにCTL免疫応答を誘発することができるポリエピトープワクチンにおいて使用するためのEBV由来細胞障害性T細胞リンパ球(CTL)エピトープを含むポリエピトープポリペプチドの作製に関する。他の具体的な用途は、C型肝炎ウイルス(HCV)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)を予防かつ/または治療するためのポリエピトープワクチンにおける使用に適したポリエピトープポリペプチドの作製に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌宿主(例えば、大腸菌)内における組換えポリペプチドの産生を最大にするために、転写に影響を及ぼす因子(例えば、プロモータ選択など)および稀少コドン使用の最小化など翻訳メカニズムに影響を及ぼす因子を含むいくつかの要因を考えることができる。しかし、これらは、疎水性アミノ酸配列を含む組換えポリペプチド(以前より組換え細菌発現系内で産生しにくいことが証明されている)の産生に対して影響力をもっていないようである。実際、膜内外配列を含むポリペプチドの場合、これらの疎水性配列を除去すると、概して、組換え分子の産生量が向上する(Fraceら、1999、Hobmanら、1994、Polteら、1991、EMBL website-protein toxicity:www.embl-heidelberg.de / ExternalInfo)。
【0003】
疎水性領域を有する外来ポリペプチド(特に、融合タンパク質などの非ネイティブ配列を有するもの)の産生において発生する問題の最も可能性の高い理由は、大腸菌groELなどのシャペロンタンパク質と新生ポリペプチドが翻訳後に一体化することである。groELは、リボソームから出てくるポリペプチドの再フォールディングプロセスに関与しており、タンパク質は、正しい高次構造が達成されるまで、またはそのタンパク質が分解の標的となるまで、シャペロンシステムによって再循環する。groELは疎水性アミノ酸を結合させることが知られており、再フォールディングプロセスの一部は、タンパク質の内部にあるこれら疎水性配列を実質的に覆い隠す(Fisher and Yuan, 1994、Zahn and Pluckthun, 1994、Hayer-Hartl et.al,1994、Richarme and Kohiyama, 1994、Hendrick and Hartl, 1995、Linら、1995)。
【0004】
ポリエピトープまたは「ポリトープ(polytope)(登録商標)」構築体[すなわち、エピトープの直列アレイ(連続していてもよいし、例えば長さ1から5アミノ酸の短い介在アミノ酸配列によって隔てられていてもよい)]は、天然配列ではなく、天然タンパク質が内蔵しているフォールディング能力をもたないため、生来、疎水性領域をインターナライズすることができないことが予想される。したがって、非ネイティブ配列からなるポリペプチド、特に疎水性アミノ酸の割合が高いものは、シャペロンフォールディング経路内に隔離されやすく、ある程度の構造安定性が達成されない場合は、最終的に分解の標的になりやすい。
【0005】
ポリエピトープワクチンは、一般的に、それぞれCTLエピトープの直列アレイでできた1つまたは複数のポリペプチドを含む。これらのCTLエピトープ、特にHLA A2型のものは、優勢的に疎水性アミノ酸を含むことが多く、HLA A2は40%を越えるヒト集団で現れるため、効果的なポリエピトープワクチン製剤には、これらのエピトープが含まれることが必須である。
【0006】
ポリエピトープワクチンの例は、オーストラリア特許第736336号で開示されており、その開示はすべて、参照によって本明細書に援用されるとみなされる。この特許で、合成もしくは組換えポリペプチド、または組換えワクシニアウイルスまたはそれをコードするDNAワクチンを含むワクチンが開示されており、上記合成または組換えポリペプチドは、一般にCTLエピトープの直列アレイ(例えば、2から10のCTLエピトープの直列アレイ)を含み、上記CTLエピトープの少なくとも2つが連続しているか、または介在配列によって隔てられている(介在配列は、上記エピトープの天然隣接配列の実質的な長さを含まない)。特に、上記先行特許に記述されているのは、EBV由来の9つのCTLエピトープ(それぞれのCTLエピトープは9から10アミノ酸の長さである)を含むポリエピトープポリペプチドをコードするポリエピトープワクシニアウイルスを含むワクチンである。このウイルスを用いて、標準的クロムリリースアッセイを実行すると(エフェクター細胞としてそれぞれのエピトープに特異的な自家性CTLクローンを使用し、それぞれのエピトープを制限するために、HLA対立遺伝子を発現している一団の標的細胞内で実行)、それぞれのエピトープを、ポリエピトープポリペプチドから効率的に処理することができたことが示された。というのは、全ての場合において、CTLクローンは、ポリエピトープワクシニアウイルスに感染したHLA適合標的細胞を認識して殺したが、負の対照(すなわち、TKワクシニア)はいずれも殺さなかったからである。
【0007】
ポリエピトープワクチンのさらなる例は、国際特許明細書WO 01/47541号で開示されており、その開示はすべて、参照によって本明細書に援用されるとみなされる。この明細書に、複数のHLAエピトープを含むワクチンが記載されており、その複数のHLAエピトープをソーティングして「ジャンクショナルエピトープ(junctional epitope)」(すなわち、他の2つのエピトープが並置されることによって偶然作り出されるエピトープ)の数を最小化させ、ジャンクショナルエピトープが回避できないところにはどこにでも、隣接アミノ酸残基を導入する。
【0008】
ポリエピトープワクチンは、標的集団のHLA多様性をカバーするように、多数のCTLエピトープ(例えば、10個以上)を含んでもよい。したがって、本出願人らは、HLA A2、A3、A11、A23、A24、B7、B8、B27、B35、B44、B46、B57、B58、B60、およびB62によって制限されるEBVエピトープを含むEBVポリエピトープワクチンを作製し、ヒト集団の90%以上におけるEBVに対する防御を提供することを考えてきた。これは、約26個のEBV CTLエピトープをポリエピトープポリペプチドに組み入れることが含まれる。上述の理由のため、そうしたポリペプチドが疎水性領域を含むこと、および適切な宿主内での発現が非常に困難になることが予想された。
【非特許文献1】Fraceら、1999
【非特許文献2】Hobmanら、1994
【非特許文献3】Polteら、1991
【非特許文献4】EMBL website-protein toxicity:www.embl-heidelberg.de / ExternalInfo
【非特許文献5】Fisher and Yuan, 1994
【非特許文献6】Zahn and Pluckthun, 1994
【非特許文献7】Hayer-Hartl et.al,1994
【非特許文献8】Richarme and Kohiyama, 1994
【非特許文献9】Hendrick and Hartl, 1995
【非特許文献10】Linら、1995
【特許文献1】オーストラリア特許第736336号
【特許文献2】国際特許明細書 WO 01/47541号
【非特許文献11】Fauschere and Pliska,1983
【非特許文献12】Hopp and Woods, 1981
【非特許文献13】Hortonら、(1995)
【非特許文献14】Wadaら、1992
【特許文献3】米国特許第5,679,354号
【非特許文献15】Elliotら、1999
【非特許文献16】Thuyら、2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明に至る作業は、大腸菌などの細菌宿主内での、ある割合の疎水性アミノ酸を含む非ネイティブポリペプチド(例えば、ポリエピトープポリペプチド)の発現における困難を克服する方法または手順を解明することを目標としていた。その作業の結果として、本出願人らは、細菌宿主内での効率的な発現および/または水溶液可溶性の精製ポリエピトープポリペプチド産生の確率が増加した候補ポリエピトープポリペプチドを設計する新規な方法を同定した。この方法の同定は、疎水性領域が1つまたは複数の特定領域に集まるのではなく分子全体により等しく分布するように、個別エピトープをポリエピトープポリペプチド内で非ランダムに配置する必要を認識したことから生じた。したがって、この新規な方法は、ポリペプチド内の1つまたは複数の疎水性ペプチド配列を同定するステップと、(a)ポリペプチド全長にわたる疎水性の強さ(すなわち、ピーク)を減少または最小化させるように、および/または(b)ポリペプチド内の疎水性領域の長さ合計を減少または最小化させるように、少なくとも1つの疎水性ペプチド配列を配置するまたは再配置するステップとを含む。この方法の有用性を助長するため、本出願人らはまた、いかなる数のエピトープでも、相対的に高い疎水性領域がない、または減少したポリエピトープポリペプチド配列になるように、容易に順序づけるアルゴリズムを同定した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様において、本発明は、原核生物または真核生物宿主内における発現のための候補ポリペプチドを設計する方法を提供し、上記方法は、
対象ポリペプチド内の1つまたは複数の疎水性ペプチド配列を同定するステップと、
疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した上記候補ポリペプチドを生成するように、上記ポリペプチド内の上記疎水性ペプチド配列の少なくとも1つを配置または再配置するステップとを含む。
【0011】
上記対象ポリペプチドは、意図する宿主に対して非ネイティブであることが好ましい。最も好ましい宿主は大腸菌であるため、上記ポリペプチドが大腸菌に対して非ネイティブであることが最も好ましい。
【0012】
対象ポリペプチドは、複数の対象アミノ酸配列(そのいくつかは、疎水性であるか、または疎水性であると推測されていてもよい。そして、それらは上記宿主内で効率的に発現されないことが判明しているか、または発現されないと推測される)を含む非天然ポリペプチドまたは理論的非天然ポリペプチド(すなわち、これから合成または発現されるはずのポリペプチド)であることが好ましい。そうした対象ポリペプチドのために、第1の態様の方法は、対象ポリペプチド内の(もし、あれば)1つまたは複数の疎水性ペプチド配列を同定するステップと、疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した上記候補ポリペプチドを生成するように上記ポリペプチド内の少なくとも1つの上記疎水性ペプチド配列を配置または再配置するステップと、したがって適切な宿主内で効率的に発現される確率を増加させる可能性とを提供する。
【0013】
好ましくは、対象ポリペプチドが、対象エピトープの直列アレイを含む合成または理論的ポリエピトープポリペプチドであってもよい(例えば、上述のように、優勢的に疎水性アミノ酸を含むCTLエピトープ)。そうした対象ポリペプチドのために、第1の態様の方法は、適切な宿主内で効率的に発現される確率が増加した、1つまたは複数の疎水性エピトープを同定し、疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した候補ポリエピトープポリペプチドが生成するように少なくとも1つの疎水性エピトープを配置または再配置する可能性を有効化することによって、多数の対象エピトープ(例えば、5から100個以上)を含む候補ポリエピトープポリペプチドの設計を可能にする。
【0014】
第1の態様の方法は、候補ポリエピトープポリペプチドの設計に対して、以下のように応用するのが最良であることがわかっている。すなわち、選択したエピトープのそれぞれの相対的な疎水性を同定かつ分類し[注意:対象エピトープは、標的集団のHLA多様性をカバーするポリエピトープポリペプチドを提供するために選択された単一病原(例えば、EBV)由来の様々なエピトープであってもよい。対象エピトープはまた、様々な病原由来の1つまたは複数のエピトープであってもよく、また上記エピトープは癌を治療または予防する腫瘍細胞などの非微生物源由来であってもよい]、分類したエピトープを、同定された相対的な疎水性に基づいて、実質的に等しい数の3つのグループにグループ分けし[すなわち、グループ1=疎水性が最も高い、グループ2=疎水性が中程度、およびグループ3=疎水性が最も低い、ならびに「残りの」エピトープ、といった諸グループを作製する。エピトープの合計数(N)は3で割り切れない]、その後、そのエピトープを3つ組に配置する。その3つ組は、それぞれのグループ(すなわち、3つの連結したエピトープ:エピトープ1-エピトープ2-エピトープ3)からのエピトープを含み、式(3つ組1-3つ組2-...3つ組N/3)を有する候補ポリエピトープポリペプチドに、下記のように配置される。
【0015】
【表A】

【0016】
エピトープ3つ組間、または3つ組内のエピトープ間のいずれかもしくはすべてに、介在配列(好ましくは、1から10アミノ酸の短い配列)があってもよい。疎水性の局所的ピークを減少させるように、介在配列は、随意、親水性(例えば、リジン-リジン)であってもよい。3つ組内のエピトープは連続しているのが好ましい。
【0017】
ポリエピトープポリペプチドの疎水性の過剰を最小化するように、エピトープを配置する他の単純な方法は、当業者には容易に理解され、本発明の一部を形成すると考えられる。例えば、上述の方法の変形の1つのにおいて、再び表1を参照して、エピトープ1を代わりにエピトープ2に対する規定の規準を使用して選択し、エピトープ2を代わりにエピトープ3に対する規定の規準を使用して選択し、およびエピトープ3を代わりにエピトープ1に対する規定の規準を使用して選択する。もう1つ変形において、そのエピトープを、分類したエピトープの4つのグループから選択し、つづいて、4つのエピトープセットに配置する。
【0018】
上述のように、第1の態様の方法は、疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した候補ポリペプチドを生成する。その方法を天然ポリペプチドに応用する文脈において、「疎水性の強さの減少」は、候補ポリペプチドの疎水性のピーク[すなわち、Mimotopes Pty Ltd(Melbourne, Australia)のPinsoft 2を使用して算出/測定されるもののような]を、天然ポリペプチドと比較して、減少させることを意味すると理解されるべきであり、「疎水性領域の長さの減少」は、候補ポリペプチド内の疎水性領域のアミノ酸配列の長さを、天然ポリペプチドに比較して、減少させることを意味すると理解されるべきである。上記方法を、非天然ポリペプチド(理論的非天然ポリペプチドを含む)に応用する文脈において、「疎水性振幅の減少」は、同様に、候補ポリペプチドの疎水性のピーク(すなわち、Mimotopes Pty LtdのPinsoft 2を使用して算出/測定されるもののような)を、非天然ポリペプチドに比較して、減少させることを意味すると理解されるべきであり、「疎水性領域の長さの減少」は、候補ポリペプチド内の疎水性領域のアミノ酸配列の長さを、非天然ポリペプチドに比較して、減少させることを意味すると理解されるべきである。上記方法を、ポリエピトープポリペプチドのより特異的な非天然ポリペプチド例に、応用する文脈において、「疎水性振幅の減少」は、候補ポリペプチドの疎水性のピーク(すなわち、後述の数学的表現を使用して算出するもののような)を、ポリエピトープポリペプチドを含むエピトープの可能なランダム配置メントの大部分に比較して、減少させることを意味すると理解されるべきであり、「疎水性領域の長さの減少」は、候補ポリペプチド内の疎水性領域のアミノ酸配列の長さを、ポリエピトープポリペプチド内のエピトープの可能なランダム配置メントの大部分と比較して、減少させることを意味すると理解されるべきである。
【0019】
いったん、候補ポリペプチドを第1の態様の方法によって設計すると、候補ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当業者に周知の方法によって合成してもよい。そのコーディングポリヌクレオチドは、例えば、ウイルスベクター(例えば、組換えポリエピトープウイルスワクチンを提供するためのワクシニア)などのベクター、または、適切な宿主内での発現に適したベクターなどの発現ベクター内に組み込んでもよい。
【0020】
このように、第2の態様において、本発明は適切な宿主内でポリペプチドを発現させる方法を提供する。その方法は、第1の態様の方法によってポリペプチドを設計するステップと、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に、その宿主細胞が上記ポリペプチドを発現させることができるように導入するステップと、そのポリペプチドの発現に適した条件下でその宿主細胞を培養するステップとを含む。発現したポリペプチドは、細胞を溶解させる、生成した細胞溶解産物からポリペプチドを精製することによって、宿主細胞培養から単離してもよい。
【0021】
宿主細胞に導入されるポリヌクレオチドは、ポリペプチドと適切な担体タンパク質との融合の形のポリペプチドをコードしてもよい。あるいは、そのポリペプチドは、発現して、適切な担体タンパク質と実質的に連結する、または一体化してもよい。適切な担体タンパク質は当業者に周知であり、β-ガラクトシダーゼ、グルタチオンS-トランスフェラーゼまたはEBV由来gp350構造タンパク質もしくはその断片を含む。担体タンパク質は有用な付加的エピトープを含んでもよい。担体タンパク質によって、順序づけによって提供される発現上の利点をさらに増加させてもよい。
【0022】
第3の態様において、本発明は、第1の態様の方法によって設計したポリペプチドを提供する。
【0023】
所望の場合、第3の態様のポリペプチドは、ポリペプチドと適切な担体タンパク質との融合の形であってもよい。
【0024】
第4の態様において、本発明は、第1の態様の方法によって設計したポリエピトープポリペプチドを提供する。
【0025】
所望の場合、第4の態様のポリペプチドは、ポリペプチドと適切な担体タンパク質との融合の形であってもよい。
【0026】
第5の態様において、本発明は、N個のエピトープ[Nは整数(好ましくは5から100、より好ましくは10から35の範囲の整数)]を含むポリエピトープポリペプチドを提供する。上記ポリエピトープポリペプチドは、次の式:
3つ組1-3つ組2-...-3つ組N/3
を有し、上記3つ組はそれぞれ、
N個のエピトープそれぞれの相対的な疎水性を同定し分類するステップと、
分類したN個のエピトープを実質的に等しい数の3つのグループにグループ分けして、N個のエピトープの同定された相対的な疎水性に基づいて、疎水性が最も高いエピトープを含む第1のグループ(すなわち、グループ1)、中程度疎水性を有するエピトープを含む第2のグループ(すなわち、グループ2)、および疎水性が最も低いエピトープを含む第3のグループ(すなわち、グループ3)を作製するステップと、
次の表:
【0027】
【表B】

【0028】
によって上記3つ組それぞれに対するエピトープを選択するステップとによって、選択された3つの連結したエピトープを含む。
【0029】
第1、第2および第3のグループは、同一数のエピトープを含むのが好ましい。Nが3で割り切れない整数(すなわち、例えば6、9、12、15、および18以外の整数)である場合は、そのときは、残りのエピトープを第3のグループ内に含むのが好ましい。
【0030】
上記3つ組それぞれに対するエピトープを選択するステップの最後に、レフトオーバーエピトープ(すなわち、グループ3の親水性が最も低いエピトープ)がある場合、そのときは、これ/これらは3つ組N/3のC末端に付加してもよいし、あるいは、疎水性の局所的ピークを減少させるように候補ポリエピトープポリペプチド配列内に配置してもよい。
【0031】
エピトープ3つ組間、または3つ組内のエピトープ間のいずれかもしくはすべてに、介在配列(好ましくは、1から10アミノ酸の短い配列)があってもよい。介在配列は、疎水性の局所的ピークを減少させるように、あるいは、ジャンクショナルエピトープができるのを回避するように、随意、親水性(例えば、リジン-リジン)であってもよい。3つ組内のエピトープは連続しているのが好ましい。
【0032】
所望の場合、第5の態様のポリエピトープポリペプチドは、ポリエピトープポリペプチドと適切な担体タンパク質との融合の形であってもよい。
【0033】
第6の態様において、本発明は、第4または第5の態様によるポリエピトープポリペプチドならびに薬学的に許容される担体および/またはアジュバントを含むポリペプチドワクチンを提供する。
【0034】
第7の態様において、本発明は、
FLRGRAYGL - PYLFWLAAI - HRCQAIRKK - RRIYDLIEL - VQPPQLTLQV - GLCTLVAML - RLRAEAQVK -IEDPPFNSL -YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - AVLLHEESM - IALYLQQNWWTL-RAKFKQLL - SSCSSCPLSKI- TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - RPPIFIRRL- VSFIEFVGW - YPLHEQHGM - VEITPYKPTW - CLGGLLTMV - EENLLDFVRF - TYSAGIVQI - LLDFVRFMGV -EGGVGWRHW (配列番号1)、
FLRGRAYGL - PYLFWLAAI - HRCQAIRKK - RRIYDLIEL - GLCTLVAML - RLRAEAQVK - IEDPPFNSL - TYSAGIVQI - LLDFVRFMGV - EGGVGWRHW - IALYLQQNWWTL - RAKFKQLL - SSCSSCPLSKI - TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - RPPIFIRRL - VSFIEFVGW - YPLHEQHGM - VEITPYKPTW - CLGGLLTMV - EENLLDFVRF - YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - AVLLHEESM - VQPPQLTLQV (配列番号2)、
SSCSSCPLSKI - HRCQAIRKK - CLGGLLTMV - LTAGFLIFL - RLRAEAQVK - IEDPPFNSL - LLSAWILTA - RRRWRRLTV - PYLFWLAAI - YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - VMSNTLLSAW - ALLVLYSFA - RAKFKQLL - IALYLQQNW - TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - YLQQNWWTL - YPLHEQHGM - CPLSKILL (配列番号3)、
IPIVAIVALV - RLRPGGKKK - ILKEPVHGV - PLVKLWYQL - RPGGKKKYKL - KYKLKHIVW - TWETWWTEYW - EIKDTKEAL - KRWIILGLNK - KLWVTVYYGV - KIEELRQHL - MTNNPPIPV - VTLWQRPLV - WASRELERF - LLWKGEGAV - YTAFTIPSI - IYQEPFKNLK - SLYNTVATL - AIIRILQQL - AIFQSSMTK - VIYQYMDDL - LVGPTPVNI - TPQDLNTML - YLAWVPAHK - ALVEICTEM-TLNAWVKVV (配列番号4)、
および
LLFNILGGWV - KTSERSQPR - FLLLADARV - LLFLLLADA - RLGVRATRK - GVAGALVAFK - LPGCSFSIF - RMYVGGVEHR - VAGALVAFK - DLMGYIPLV - LIFCHSKKK - ILAGYGAGV - HMWNFISGI - QLFTFSPRR - VGIYLLPNR - FWAKHMWNF - YLVTRHADV - LSAFSLHSY - WMNRLIAFA - YLLPRRGPRL - YLVAYQATV - RLIVFPDLGV - TLGFGAYMSK - IPFYGKAI - VLVGGVLAA - CTCGSSDLY (配列番号5)
からなる群から選択されたアミノ酸配列と実質的に対応するアミノ酸配列を含むポリエピトープポリペプチドを提供する。
【0035】
第8の態様において、本発明は、第7の態様によるポリエピトープポリペプチドならびに薬学的に許容される担体および/またはアジュバントを含むポリエピトープワクチンを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本出願人らは、原核生物または真核生物宿主内で効率的に(すなわち、SDS-PAGEによって検出可能な量で)発現される確率が増加した候補ポリエピトープポリペプチドを設計する新規な方法を同定した。その方法は、1つまたは複数の疎水性エピトープを同定するステップと、少なくとも1つの疎水性エピトープを、疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さの減少した候補ポリエピトープポリペプチドを生成するように配置または再配置するステップとを含む。
【0037】
アミノ酸配列の疎水性値を算出し、つづいて、(a)疎水性の強さを減少もしくは最小化させ、かつ/または(b)疎水性配列の長さを減少もしくは最小化させるように、配列を配置するアルゴリズムを生成し、最初に、EBV由来の26のCTLエピトープ配列に応用した。この結果、最初の2つの候補ポリエピトープポリペプチド(後述の、指定されたPT26AおよびPT26B)が設計されたが、そのうちの1つは、大腸菌内で効率的に発現することが証明されている。発現したポリエピトープポリペプチドは、伝染性単核細胞症および/またはバーキットリンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、上咽頭癌、胃腺癌、免疫抑制関連リンパ腫、リンパ上皮腫様癌、および免疫不全関連平滑筋肉腫など、EBVに関連する癌を予防または治療するためのEBVワクチンのベースとして将来性を示している。
【0038】
類似した2つの候補ポリエピトープポリペプチドに対する大腸菌の発現能力が異なる理由についての説明を探しているとき、疎水性の局所的エリアを同定するため、候補ポリエピトープポリペプチド全長にわたる異なる数のエピトープに対する疎水性値(指定された疎水性指標(HI)値)を合計した。3および4エピトープにわたって合計すると、非発現ポリペプチド内に、発現したポリペプチド内よりもHI値が高い領域があることが示された。この情報によって、その閾値を越えるHI値を有する領域を含むポリペプチド配列は細菌宿主内で効率的に発現される見込みが少ないと予測することができるような、HI閾値の同定が可能になった。
【0039】
したがって、候補ポリペプチドを設計する本発明の方法の好ましい実施形態において、上記方法は、まず、疎水性値を算出し、ならびに(a)疎水性の強さを減少または最小化させ、かつ(b)疎水性配列の長さを減少または最小化させるために、ペプチド配列を配置するステップと、その後、必要な場合は、異なるペプチド配列グループにわたるHI値を算出することによって「微調整(fine-tuning)」するステップと、こうして、比較のための数値を提供し、候補ポリペプチド配列が細菌宿主内で効率的に発現する見込みを予測するステップとを含む。そのように、この好ましい実施形態を候補ポリエピトープポリペプチド設計に応用するにあたって、上記方法は、以下のステップを含む。
(i)適切なアルゴリズム(例えば、Mimotopes Pty Ltdのソフトウェアパッケージ「Pinsoft 2」内に含まれるFauschere and Pliska,1983)を使用して、それぞれのエピトープに対する疎水性値を算出する。
(ii)疎水性を減少させる順序でエピトープのセットを分類する。
(iii)分類し順序づけられたエピトープのセットを多くの等しいグループに分け[例えば、3つの等しいグループ、すなわち、グループ1=疎水性が最も高い、グループ2=疎水性が中程度およびグループ3=疎水性が最も低い(親水性が最も高い)]、残りのエピトープを親水性が最も高いグループに含める。
(iv)エピトープのセット(例えば、3つ組)を作製する。例えば、エピトープを3つのグループに分ける場合、グループ2の親水性が最も高いエピトープ(すなわち、グループ2の最後)、その後、疎水性が最も高いエピトープ(すなわち、グループ1内の第1番目)、最後に、親水性が最も高いエピトープ(すなわち、グループ3内の最後)に、グループ1および2のエピトープがすべて使用されるまで、取り込んで作製する[注意:「レフトオーバー」エピトープは、以下のステップ(ix)で示されるように取り扱う]。
(v)エピトープのセット(例えば、3つ組)を、それらが作製される順序の配列に配置する(例えば、3つ組1-3つ組2-3つ組3-など)。
(vi)適切なアルゴリズム(例えば、Fauschere and Pliska,1983、またはHopp and Woods, 1981)を使用して、配置したポリエピトープポリペプチド配列の疎水性をプロットする。
(vii)必要な場合、疎水性の低いエリアからのエピトープのセット(例えば、3つ組)を、高いピーク疎水性のエリアへ再配置することによって、および/または、ピーク疎水性のエリアからの個別疎水性(すなわち、グループ1)エピトープを、疎水性の低いエリア内に再配置することによって、疎水性振幅を減少させる。
(viii)疎水性プロットを再計算する。そして、必要な場合、エピトープのセット(例えば、3つ組)をシャッフルしつづけ、上記ステップ(vii)のように、最終配列配置メントを作製する。
(ix)レフトオーバーエピトープ(例えば、グループ3の親水性が最も低いエピトープ)を、疎水性の局所的ピークをさらに減少させるように(すなわち、それらをピーク疎水性エピトープに隣接して挿入することによって)、最終配列配置メントのC末端または他の場所に配置する。
(x)親和性タグ(通常は親水性、例えば、ヘキサヒスチジン配列)を、最終ポリエピトープポリペプチド配列のN末端またはC末端両方に、または、最終ポリエピトープポリペプチド配列が融合タンパク質として発現する場合はC末端に、配置する。
【0040】
HI値は、次の数学的表現を使用して算出してもよい。
e=m+n-1
HIm=Σxe
e=m
[式中、m=グループ数、n=グループサイズ、e=整数(エピトープ数)、x=エピトープ疎水性値]。
【0041】
n=3およびn=4のとき、HI値は、この数学的表現を使用して算出するのが好ましい。この後提示する実施例において、この計算によって、xをPinsoft 2(Mimotopes Pty Ltd)を使用して算出し、N末端をN-アセチルとして、C末端をカルボキシアミドとして特定したとき、大腸菌内で、SDS-PAGE検出可能量で、連結した、ランダムな、短いアミノ酸配列を発現させるには、3つのエピトープ配列のグループにわたる疎水性指標は1.8(HI3<1.8)未満である必要があり、かつ/または4つのエピトープ配列のグループにわたる疎水性指標は2.5未満である必要があることが予測された。異なったカットオフ値は、異なった疎水性アルゴリズムで得られる。
【0042】
天然非細菌ポリペプチドまたはその誘導体が大腸菌内で効率的に発現することができるかどうかを予測するのに、このようなHI値の算出が有用であることは容易に理解されるであろう。したがって、本発明は、さらに、適切な宿主(例えば、細菌宿主)内でのポリペプチドの効率的発現を予測する方法にまで拡張される。その方法には、次の数学的表現によるHI値の算出が含まれる。
e=m+n-1
HIm=Σxe
e=m
[式中、m=グループ数、n=グループサイズ、e=整数(エピトープ数)、x=エピトープ疎水性値]。
【0043】
本発明の方法は、適切な宿主(例えば、細菌宿主)内で効率的に発現する確率が増加した多数の対象エピトープ(例えば、5から100個以上)を含む候補ポリエピトープポリペプチドの設計を可能にする。対象エピトープは、標的集団のHLA多様性をカバーするポリエピトープポリペプチドを提供するために選択された単一の病原由来の様々なエピトープであってもよく、または対象エピトープは、様々な病原または腫瘍抗原由来の、1つまたは複数のエピトープであってもよい。上記から明らかなように、本発明の方法の具体的な用途の1つは、ヒト集団の90%以上におけるEBVに対する防御を提供するワクチンで使用するため、またはNPCなどのEBV関連疾患を治療するため、26のEBV CTLエピトープを含む候補ポリエピトープポリペプチドの設計への応用である。本発明の方法の他の具体的な用途は、HCVおよびHIVを予防かつ/または治療するための、ポリエピトープワクチンでの使用に適した候補ポリエピトープポリペプチドの設計に関するものである。本発明の方法のもう1つの応用は、CMV-原因疾患を予防または治療するためのワクチンで使用するための、サイトメガロウイルス(CMV)由来CTLエピトープを含む候補ポリエピトープポリペプチドの設計に対するものである。
【0044】
本発明の方法によって設計される候補ポリペプチドは、まず、当業者に周知の方法によって候補ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを合成し、その後、適切な宿主内にそのポリヌクレオチドを導入することによって、発現させてもよい。概してこれは、そのポリヌクレオチドを発現ベクター内にクローニングすることによって達成され、その後、当業者に周知の形質転換法によって、発現ベクターを上記宿主内に導入する。発現ベクターから発現された結果、そのポリペプチドは、そのポリペプチドおよび適切な担体タンパク質(例えば、β-ガラクトシダーゼ、グルタチオンS-トランスフェラーゼまたはEBV由来gp350構造タンパク質もしくはその断片)を含む融合タンパク質として発現してもよい。あるいは、そのポリペプチドは、宿主細胞によって発現されてもよく、ポリペプチドの単離の後、そのポリペプチドは、適切な担体タンパク質と連結される、あるいは、一体化してもよい。上記担体タンパク質にはまた、有用な付加的特徴を与えてもよい(すなわち、上記担体タンパク質は、可溶性を強化するための、さらに精製手順を強化するための、アジュバントとの一体化を容易にするための、または免疫応答が所望される、有用なエピトープまたは配列を含んでもよい)。
【0045】
さらに、本発明の方法によって設計した候補ポリペプチドは大腸菌以外の原核生物発現系で発現させることが考えられる。典型的な代替発現系には、枯草菌(B.subtilis)、サルモネラ菌種(Salmonella sp.)、レンサ球菌種(Streptococcus sp.)、ラクトバシラス種(Lactobacillus sp.)、およびストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)が含まれる。
【0046】
また、本発明の方法によって設計した候補ポリペプチドは、細胞溶解産物全体および非細菌宿主細胞の中でも同様に容易に発現することができると考えられる。したがって、候補ポリペプチドのそのような代替え発現方法は、本発明の一部を形成するものと考えられるべきである。特に、本発明は、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞またはCOS細胞系)、酵母菌細胞(例えば、サッカロミケスセレビシェ(Saccharomyces cerevisiae))または昆虫細胞(例えば、SF9細胞系)などの非細菌宿主細胞内でポリペプチドを発現させる方法を拡張したものと考えるべきであり、その方法は、第1の態様の方法によってポリペプチドを設計するステップと、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に、その宿主細胞が上記ポリペプチドを発現させることができるように導入するステップと、そのポリペプチドの発現に適した条件下でその宿主細胞を培養するステップとを含む。発現したポリペプチドは、細胞を溶解させることによって、または生成した細胞溶解産物からポリペプチドを精製することによって、宿主細胞培養から単離してもよい。あるいは、上記ポリペプチドは、ポリペプチドが培養液内(そこからポリペプチドが精製される)に分泌されるような適切な分泌シグナルによって、発現させることができるかもしれない。本発明の方法よるポリエピトープポリペプチドの設計は、また、疎水性ポリペプチドが外来の分泌シグナルによって発現されるときにときどき発生する非分泌の問題を解決することもできる。
【0047】
発現したポリペプチドが薬理学的または獣医学的に重要である場合、そのポリペプチドを薬学的または獣医学的組成物の中に配合してもよい。概して、そのような組成物は、薬学的に許容されるまたは獣医学的に許容される担体を含んでもよく、必要に応じて、他の物質および賦形剤を含んでもよい。ポリエピトープポリペプチドは、ワクチン組成物内に配合してもよい。概して、そうした組成物は、薬学的に許容されるまたは獣医学的に許容される担体を含んでもよく、必要に応じて、アジュバント(例えば、ISCOM(登録商標)アジュバント、DEAE、多糖体、サポニン、リポソーム、およびウイルス様粒子)、ならびに他の物質および賦形剤を含んでもよい。そのワクチン組成物はまた、ヘルパーエピトープ/CD4エピトープまたはB細胞エピトープを含んでもよい。そのワクチン組成物は、被験者に、例えば、筋肉内注射、エアロゾルスプレイによる鼻孔内投与、または経口投与によって、投与するために、適応してもよい。そのワクチン組成物は、ISCOM(登録商標)アジュバント組成物であることが好ましい。ポリエピトープポリペプチドはまた、被験者に、ウイルスワクチン(例えば、組換えポリエピトープワクシニアもしくはアデノウイルス)またはDNAワクチンの形で投与してもよい。
【0048】
したがって、さらなる態様において、本発明は、第1の態様の方法によって設計したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドならびに薬学的に許容される担体および/またはアジュバントを含むポリヌクレオチドワクチンを提供する。
【0049】
本明細書全体にわたって、「comprise(含む)」という語、または「comprises」もしくは「comprising」などの変化形は、明言された要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップのグループを含むが、他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップのグループを除外するものではないことを意味すると理解される。
【0050】
「実質的に対応する(substantially corresponding)」という用語は、本明細書でアミノ酸配列に関連して使用されているように、正確なアミノ酸配列、およびそのアミノ酸配列の生物学的活性を実質的に減少させない小さな変形(例えば、エピトープの、CTL免疫応答を惹起する能力を消滅させない変形)を包含することを意図する。これらの変形は、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含んでもよい。考えられる保存的アミノ酸置換は、G、A、V、I、L、M;D、E、N、Q;S、C、T;K、R、H;およびP、Nα-アルキルアミノ酸、である。
【0051】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、論文またはその他の議論は、ただ本発明のコンテキストを提供する目的のためだけのものである。したがって、それは、これらの事柄のいくつかまたはすべてが、先行技術ベースの一部を形成すること、または、本発明に関連する業界で共通の一般的知識であったことを認めるものとしてとられるべきではない。それは、本明細書の出願日または優先日以前に、オーストラリアまたはどこにおいても、存在したためである。
【0052】
この後、以下の非限定的な実施例および添付図面によって、本発明をさらに記述する。
【実施例1】
【0053】
ワクチン候補としてのEBVポリエピトープ融合体
材料と方法
エピトープ配列
EBVワクチン内に含有するための26のCTLエピトープ、それらが発生したタンパク質、およびHLA型を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
エピトープの設計/順序づけ
以下の方法を使用して、CTLエピトープの、順序づけられた配置メントを生成し、好ましい疎水性特徴を有するポリエピトープ配列を生成した。
(i)適切なアルゴリズム(すなわち、Mimotopes Pty LtdのPinsoft 2。N末端をN-アセチルとして、C末端をカルボキシアミドとして特定)を使用して、それぞれのエピトープに対する疎水性値を算出した。
(ii)エピトープのセットを、疎水性が減少する順序で分類した。
(iii)分類順序づけしたエピトープのセットを3つの等しいグループ(すなわち、グループ1=疎水性が最も高い、グループ2=疎水性が中程度、およびグループ3=疎水性が最も低い(親水性が最も高い))に分けた。残りのエピトープ(すなわち、26のセットを3で割った後に残った2つのエピトープ)は、親水性が最も高いグループに入れた。
(iv)グループ2の親水性が最も高い(すなわち、グループ2の最後)、その後、疎水性が最も高いエピトープ(すなわち、グループ1内の第1番目)、最後に、親水性が最も高いエピトープ(すなわち、グループ3内の最後)を取って、エピトープの3つ組を作製した。これをグループ1および2のエピトープがすべて使用されるまでつづけた[注意:「レフトオーバー」エピトープは、最終配列配置メントのC末端に付加した]。
(v)3つ組を、その後、それらが作製された順序で、配列に配置した(すなわち、3つ組1-3つ組2-3つ組3-など)。
(vi)この3つ組配置メントの疎水性を、その後、適切なアルゴリズム(すなわち、Fauschere and Pliska)を使用してプロットした。
(vii)必要な場合、必要なところで、3つ組を疎水性の低いエリアから高いピーク疎水性のエリアへ再配置して、疎水性振幅を減少させる。
(viii)疎水性プロットを再計算し、必要な場合、上記ステップ(vii)のように、3つ組をシャッフルしつづける。
(ix)残りのエピトープ(すなわち、グループ3の親水性が最も低いもの)は、最終配列配置メントのC末端に配置することができ、また、組み立てた3つ組の疎水性プロットにしたがってそれらをピーク疎水性エピトープに隣接して挿入することによって疎水性の局所的ピークをさらに減少させるために使用することができる。
(x)親和性タグ(通常は親水性、例えば、ヘキサヒスチジン配列)は、N末端もしくはC末端いずれかに、または好ましくは、構築体が融合タンパク質である場合は、C末端に配置すべきである。
(xi)満足できるHIを確認する。
【0056】
このプロセスを使用して、EBVポリエピトープ構造PT26AおよびPT26Bを作製した。PT26Aの例を表4に示す。
【0057】
疎水性指標(HI)算出
好ましい立体構造(PT26A、PT26B)に対するHI値を、下記の数学的表現によって算出した。
e=m+n-1
HIm=Σxe
e=m
[式中、m=グループ数、n=グループサイズ、e=整数(エピトープ数)、x=エピトープ疎水性値]nの値は、2から5。
【0058】
組換えタンパク質の調製
ポリエピトープ(PT26AおよびPT26B)をコードするDNA配列は、Splicing by Overlap Extension 技術(SOE)を使用して、Hortonら、(1995)の記述のように、合成オリゴヌクレオチドから作製した。コドン使用は、大腸菌発現のために最適化した(Wadaら、1992)。タンパク質の精製および検出のために、ポリエピトープを、C末端で、ヘキサヒスチジンタグによってタグづけした。そのDNAをpET28b(Novagen)内にサブクローニングし、発現のため、大腸菌BL21(DE3)細胞(Novagen)内に形質転換した。
【0059】
EBVgp350のN末端領域(アミノ酸残基21〜447)に対応する断片を、PCRによって、全長gp350配列を含むプラスミドDNAから、下記のオリゴヌクレオチド:
5' AGGGATCCCATGGAAGATCCTGGTTTTTTC 3'(順方向)(配列番号32)および
5' TCTAGAGGTCGACACCTGTCGTTGTATTGGG 3'(逆方向)(配列番号33)
を使用して増幅した。このDNA断片を、ポリエピトープ挿入部分を含むpET28b(Novagen)内にサブクローニングし、その結果、gp350と上記ポリエピトープポリペプチドの間のフレーム内融合が生じた。その構築体は、gp350/PT26A(図3A)およびgp350/PT26B(図3B)と呼ばれる。
【0060】
タンパク質発現を調べるため、形質転換した細胞を、カナマイシン50mg/mlを含むLブロス内で、37℃で、OD600が2になるまで培養した。IPTG(0.25mM)を添加して、タンパク質の発現を誘導し、細胞をさらに3時間培養した。細胞をペレット化し、SDS試料緩衝液内で煮沸して、SDS-PAGEで分析した。
【0061】
タンパク質精製のため、IPTGで誘導した細胞をペレット化し、結合緩衝液(20mM Tris-HCl pH7.9、0.5M NaCl、5mMイミダゾール)内で再懸濁し、その後、超音波処理をした。封入体をペレット化し、緩衝液内で洗浄した。タンパク質を8M尿素含有の結合緩衝液内で一晩可溶化し、Ni++-NTAカラムで精製した。
【0062】
ISCOM(登録商標)製剤の調製
アジュバント構成要素を製剤容器内で結合させて、ISCOMATRIX(登録商標)アジュバントを調製した。コレステロール、1,2,ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、および精製Quillajaサポニン源としてISCOPREP(登録商標)を、濃度2%の洗浄剤Mega-10(米国特許第5,679,354号)の存在下、重量比1:1:5で混合した。上記洗浄剤を、PBSを用いたダイアフィルトレーションによって除去し、ISCOMATRIX(登録商標)の構造をネガティブコントラスト電子顕微鏡によって確認し、一般的に直径40nmのケージ様構造を含む複合体を明らかにした。EBVポリエピトープ抗原と前処理したISCOMATRIX(登録商標)アジュバントとを混合して、ISCOM(登録商標)アジュバント付加ワクチンを、下記のように調製した。サポニンとしてのISCOMアジュバントの用量強度は、逆相HPLCアッセイによって定量化した。
【0063】
ISCOM(登録商標)ワクチンは、22℃で、等しい量の2×最終用量強度ISCOMATRIX(登録商標)と、等しい量の2×最終用量強度EBVポリエピトープ抗原(gp350-PT26AおよびB)とを、穏やかに混合して調製した。尿素を除去するため、60分後、その製剤を、12,000分子量カットオフ透析膜(Cellu Sep T3, San Antonio Texas)を使用して、4℃で、PBS緩衝液pH6.2内に、迅速透析した。
【0064】
マウス免疫原性
投与
メスのHLA A2トランスジェニックC57BI/6マウス(HDD)を、クィーンズランド医学研究所(Queensland Institute of Medical Research(QIMR, Brisbane, Australia))で飼育し、5〜7週齢で免疫化した。マウスを、QIMRのPC3動物施設で、フィルタートップケージ内に収容した。4または5匹のマウスのグループで、尾の根本に、製剤0.1mlを皮下投与した。その後、21日目に、ex-vivo ELISPOTアッセイ(下記)のために、脾臓を除去した。
【0065】
皮下投与したマウスは、10μgISCOM(登録商標)アジュバント(サポニンとして)および10μgEBVポリエピトープ抗原を受けた。ワクチン対照群として、マウスに、破傷風トキソイドおよびMontanide ISA 720(SEPPIC, Paris, France)と共に製剤とした遊離ペプチド(Mimotopes Pty Ltd)を含むペプチド混合物を、以前述べられているように(Elliotら、1999)、皮下投与した。ペプチド対照免疫化は、マウスの2つのグループからのものであり、1つのグループはGLCTLVAML(配列番号6)/YLLEMLWRL(配列番号9)/LLDFVRFMGV(配列番号8)ペプチド混合物で免疫化され、もう1つのグループはYLQ/CLGで免疫化されている。5のエピトープ混合物はすべて、不溶性の問題をいくらか示した。
【0066】
CTL活性(ex-vivo ELISPOT)
ex vivo ELISPOTは、IFNγを分泌するエフェクターおよびメモリーCTL両方を測定/定量する。ペプチド特異的IFNγ分泌細胞を、Murali-Krishnaらから改変した酵素結合免疫スポット(ELISpot:enzyme linked immuno-spot)アッセイによって列挙する。平底96穴マイクロタイタープレートを、一晩、5μg/mLのラット抗マウスIFNγ抗体(クローンRA-6A2, BD PharMingen, San Diego, California, USA)で被覆する。その後、被覆プレートを、PBS内で、1時間、1%FBSでブロックし、その後、PBS/0.05%Tween20(PBS-T)で3回洗浄し、1時間、37℃で、100μg/mlストレプトマイシンおよび100IU/mlペニシリン、10%FBSおよび10-5M2-メルカプトエタノールを補ったRPMI1640を含む培地でインキュベートした。その後、マウス脾細胞を、ex vivo IFNγELISPOTアッセイで使用するために、培地内で、1×107cells/mlまで赤血球溶菌緩衝液で処理し、洗浄および再懸濁した。その後、脾細胞(1×106/ウェル)を、ELISpotプレートの第1ウェル内に置き、順次、2倍に希釈する。その後、組換えヒトIL-2(Cetus Corp., Emeryville, California, USAから、好意により提供)を最終濃度5IU/ウェルでプレートに添加し、EBVペプチド(Mimotopes Pty Ltd)も最終濃度100μg/mlでともに添加する。ペプチドを含まないIL-2含有培地を、対照ウェルに添加する。それぞれのウェルにおける最終体積は、100μlである。プレートを、37℃で、5%CO2内で、約18時間、インキュベートする。インキュベーションの後、プレートをH2O内で水洗して、細胞を溶解し、その後、PBS-T内で2回洗浄する。ビオチン標識した抗マウスIFNγ抗体クローンXMG1.2(BD Phar Mingen)をPBS-T/5% FBS内で1:500(2μg/ml最終濃度)に希釈し、50μl/ウェルで、全ウェルに添加し、RTで、2時間インキュベートした。その後、プレートをPBS-Tで洗浄し、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(PBS-T/5%FBS内で、1:400に希釈)を50μl/ウェルで添加し、さらに2時間インキュベートした。洗浄後、Sigma Fast BCIP/NBT基質を50μl/ウェルで添加することによって、プレートを展開した。着色させるため、プレートを、37℃で、約20分間インキュベートし、その後、水で洗浄して反応を止めた。KS ELISPOT Reader(Zeiss)を使用して、IFNγ特異的スポットを数えた。
【0067】
結果
エピトープ融合
26のEBV CTLエピトープを選択して、ワクチン製剤のための、90%を越えるヒト集団の適用範囲を提供した。
【0068】
これらのCTLエピトープ(表1)を連結するため、かつEBV予防ワクチンのベースを形成するためのポリエピトープ抗原の設計を促進するため、それぞれのエピトープの疎水性値を、Pinsoft 2ソフトウェア(表2)を使用して算出した。26エピトープの2ヴァージョンを、その後、立体構造PT26AおよびPT26B(図1)内に順序づけし、それらは、ピーク疎水性および疎水性配列の長さ(図2)を減少させた。これらの構築体を大腸菌内での発現のために、クローニングしたとき、上記立体構造の1つだけ(PT26A)が、ポリエピトープポリペプチドを生産することができることが判明した(図4A)。PT26Bは生産されなかった(図4C)。
【0069】
この予想外の所見に対する、ありうる理由を同定するため、オーバーラップしている疎水性値を合計して、高い疎水性の局所的エリアを調査し(Pinsoft 2, Mimotopes Pty Ltd)、グループ(n)内の様々な数のペプチドにわたる疎水性指標(HI)を提供した。n=2では、明白な相関はなかった。しかし、n=3およびn=4(表3)では、発現した配列(PT26A)の最も高いHI値(それぞれ、1.79および2.51)は、非発現配列に対して得られた最高値(それぞれ、2.02および2.54)より低かった。n=5のときはまた、有意差が見られなかった。このことは、PT26B内には、PT26Aより少し高い疎水性の局所的エリアがあることを示していた。
【0070】
上記の分析は、次の数学的表現によって表すことができる。
e=m+n-1
HIm=Σxe
e=m
[式中、m=グループ数、n=グループサイズ、e=整数(エピトープ数)、x=エピトープ疎水性値]。
【0071】
全体的には、n=3およびn=4での結果が最も特徴的な差を示すように見えた。これは、大腸菌内で、SDS-PAGE検出可能量で、連結した、ランダムな、短いアミノ酸配列を発現させるには、3つのエピトープ配列のグループにわたる疎水性指標は、好ましくは、1.8未満(HI3<1.8)である必要があり、かつ/または4つのエピトープ配列のグループにわたる疎水性指標は、好ましくは、2.5未満(HI4<2.5)である必要があることを予測させる(xを、Pinsoft 2(Mimotopes Pty Ltd)を使用して算出し、N末端をN-アセチルとして、C末端をカルボキシアミドとして特定した場合)。異なったカットオフ値は、異なった疎水性アルゴリズムで得られる。
【0072】
表4は、生成され、HI算出によって分析される26のEBV CTLエピトープの15のランダム配置メントに対する、3つのペプチドにわたるHI値(n=3)を示す。これは、15のランダム立体構造すべてが、大腸菌内における組換えポリペプチド産生を不可能にすると予測された範囲にある多数のHI値(すなわち、1.8を越えるHI)を含むことを示す。このことはまた、本発明において具現化された洞察の応用なくしては、本方法によって作製された配置メントは達成できそうにないことをも示す。
【0073】
表2:26*EBV CTLエピトープ(PT26A)に対するポリエピトープポリペプチドの生成のための順序づけプロセス。
それぞれのエピトープに対する疎水性値を算出し、その後、そのエピトープを分類順序づけし、諸3つ組内にグループ分けする。その配列を、疎水性プロットを使用して評価し、移動する3-merウィンドウにわたってエピトープ疎水性値を合計することによって、そのHI値を算出する。必要な場合、エピトープ順序の微調整をおこない、配列を再評価する。26*EBV CTLエピトープおよびヘキサヒスチジン親和性タグの最終的エピトープ順序およびアミノ酸配列を次に示す。
【0074】
【表2a】

【表2b】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
これらのポリエピトープと天然EBVタンパク質(gp350)のN-末端400アミノ酸との融合
以前より、CD4ヘルパー細胞の提供によって、CTL誘導が向上することが示されており(Thuyら、2001)、EBV構造タンパク質gp350は、同族ヘルパー細胞を提供するため、この特徴を提供する好ましい候補として同定された。したがって、2つのポリエピトープ、PT26AおよびPT26B(後者は、大腸菌内で発現させることができなかった)を、gp350(図3)N末端の400アミノ酸のC末端にクローニングし、大腸菌内で、融合タンパク質として発現させた。これらの融合ポリペプチドは両方とも、よく産生され、クーマシー染色したゲル上で、大腸菌タンパク質のバックグラウンドの上で、明瞭に視認された。(PT26Aのプロフィールを図4Bに示す)。
【0078】
CTL活性
HLA A2トランスジェニックマウスに、gp350-PT26A-ISCOM(登録商標)ワクチンまたはgp350-PT26B-ISCOM(登録商標)ワクチンのどちらかを接種すると、5つのA2エピトープすべてに対するCTL免疫応答(IFN ELISPOT)が誘導され(図5)、したがって、A2エピトープすべてが適切に処理され、免疫システムに提示したことを示した。
【実施例2】
【0079】
上咽頭癌ワクチン候補としてのEBVポリエピトープ融合体
材料と方法
エピトープ配列
EBV-NPCワクチンに含有するための20のCTLエピトープ、それらが発生したタンパク質、およびHLA型を表5に示す。
【0080】
エピトープの設計/順序づけ
実施例1(i)〜(xi)で記述した方法によって、CTLエピトープの、順序づけられた配置メントを生成し、好ましい疎水性特徴を有するポリエピトープ配列を生成した。
【0081】
最終的シャッフルは、エピトープ18、19および20を合計して出た高い疎水性指標(HI)を減少させるために、3位からYPLHEQHGM(配列番号23)を取り、19位でCLGGLLTMV(配列番号16)と変換することを含む。
【0082】
この最適化したEBV-NPCポリエピトープ(EBV-NPCa)立体構造のための順序づけプロセスを表6に示す。
【0083】
疎水性指標(HI)算出
EBV-NCPaのHI値を次の数学的表現によって算出した。
e=m+n-1
HIm=Σxe
e=m
[式中、m=グループ数、n=グループサイズ、e=整数(エピトープ数)、x=エピトープ疎水性値、nの値は2から5]。
【0084】
DNA構築体の生成
EBV-NPCポリエピトープのアミノ酸配列を、Dnastar Editseqソフトウェア(DNASTAR Inc, Madison, Wisconsin, USA)および大腸菌発現に最適化したコドンを使用してDNAに翻訳しなおした。精製および検出のために、C末端ヘキサヒスチジンタグを組み込んだ。ポリエピトープをコードするDNAを、Splicing by Overlap Extension 技術(SOE)を使用して、Hortonら、(1995)の記述のように、合成オリゴヌクレオチドから作製した。これを、pET24b(Novagen)内にクローニングし、その結果できた構築体をエラーが存在しないことを確実にするために配列した(Big Dye Terminator Kit V3.1; Applied Biosystems)。発現のため、DNAを大腸菌BL21(DE3)細胞(Novagen)内に形質転換した。
【0085】
タンパク質発現および分析
形質転換した細胞を、カナマイシン50mg/ml含有のTerrific Broth内で、37℃で、培養した。OD600約2で、IPTG0.5mMの添加によって、タンパク質発現が誘導され、誘導後1時間、2時間、3時間、および一晩で、試料を取り出した。細胞をペレット化し、等しい密度になるまで再懸濁し、SDS試料緩衝液内で煮沸し、その後、Novex 4〜20%トリス-グリシンゲル上で、SDS-PAGEによって分析した。クーマシーブルー染色法および免疫ブロット法両方によって、ゲルを分析した。Dianova抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体を用いて、ブロットを調査した。
【0086】
【表5】

【0087】
表6: 20のEBV CTLエピトープ(EBV-NPCa)に対するポリエピトープポリペプチドの生成のための順序づけプロセス。
それぞれのエピトープに対する疎水性値を算出し、その後、そのエピトープを分類順序づけし、各3つ組内にグループ分けする。その配列を、疎水性プロットを使用して評価し、移動する3-merウィンドウにわたってエピトープ疎水性値を合計することによって、そのHI値を算出する。必要な場合、エピトープ順序の微調整をおこない、配列を再評価する。20 EBV CTLエピトープおよびヘキサヒスチジン親和性タグの最終的エピトープ順序およびアミノ酸配列を次に示す。
太字体;それぞれの3つ組において第1のエピトープとして使用されたセットの疎水性が最も高いエピトープ。
イタリック体;それぞれの3つ組において第2のエピトープとして使用されたセットの親水性が最も高いエピトープ。
通常フォント;それぞれの3つ組において第3のエピトープとして使用されたセットの、中程度疎水性エピトープ。
【0088】
【表6】

【実施例3】
【0089】
ワクチン候補としてのHIVポリエピトープ融合
材料と方法
エピトープ配列
HIVワクチンに含有するための26のCTLエピトープ、それらが発生したタンパク質、およびHLA型を表7に示す。
【0090】
エピトープの設計/順序づけ
好ましい疎水性特徴を有するポリエピトープ配列を作製するための、CTLエピトープの、順序づけられた配置メントを、実施例1(i)〜(xi)で記述した方法によって生成した。同時に、5つのランダム配列を生成し、これらの1つ(HIVb)を、最適化した配列と比較するために取った。
【0091】
最適化したHIVポリエピトープ(HIVa)立体構造のための順序づけプロセスを表8に示す。
【0092】
疎水性指標(HI)算出
立体構造(HIVaおよびHIVb)両方のHI値を次の数学的表現によって算出した。
e=m+n-1
HIm=Σxe
e=m
[式中、m=グループ数、n=グループサイズ、e=整数(エピトープ数)、x=エピトープ疎水性値、nの値は2から5]。
【0093】
DNA構築体の生成
それぞれのポリエピトープアミノ酸配列を、Dnastar Editseqソフトウェアおよび大腸菌発現に最適化したコドンを使用してDNAに翻訳しなおした。精製および検出のために、C末端ヘキサヒスチジンタグを組み込んだ。ポリエピトープをコードするDNAを、Splicing by Overlap Extension技術(SOE)を使用して、Hortonら、(1995)の記述のように、合成オリゴヌクレオチドから作製した。これを、pET24b(Novagen)内にクローニングし、その結果できた構築体をエラーが存在しないことを確実にするために配列した(Big Dye Terminator Kit V3.1; Applied Biosystems)。発現のため、DNAを大腸菌BL21(DE3)細胞(Novagen)内に形質転換した。
【0094】
タンパク質発現および分析
形質転換した細胞を、カナマイシン50mg/ml含有のTerrific Broth内で、37℃で、培養した。OD600約2で、IPTG0.5mMの添加によって、タンパク質発現が誘導され、誘導後1時間、2時間、3時間、および一晩で、試料を取り出した。細胞をペレット化し、等しい密度になるまで再懸濁し、SDS試料緩衝液内で煮沸し、その後、Novex 4〜20%トリス-グリシンゲル上で、SDS-PAGEによって分析した。クーマシーブルー染色法および免疫ブロット法両方によって、ゲルを分析した。Dianova抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体を用いて、ブロットを調査した。
【0095】
結果
エピトープ融合
ワクチン形成の構成要素を提供するために、26のHIV CTLエピトープを選択した。これらのCTLエピトープ(表5)を連結するため、およびHIVワクチンのベースを形成するためのポリエピトープ抗原の設計を促進するため、それぞれのエピトープの疎水性値を、Pinsoft 2 ソフトウェアを使用して(実施例1の場合のように)算出した。その後、26エピトープの2ヴァージョンを、作製した(図7)。それらの1つは、ピーク疎水性および疎水性配列の長さを減少させ(HIVa)、もう1つの中では、エピトープはランダムに配置されていた(HIVb)。その後、これらの構築体を組み立て、ポリエピトープポリペプチドを産生する能力を比較するため、大腸菌内にクローニングした。
【0096】
HIVa(最適化したポリエピトープ)
予測されたMW 29kDaでのポリエピトープポリペプチドの良好な発現が、クーマシー染色ゲル上で、1時間の時点から観察され、そのタンパク質は、免疫ブロット上で、抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体によって認識された(図9および10)。誘導後1時間までに、最大の発現に達した。漏出性の、非誘導性発現が、それぞれの時点で見られ、一晩のインキュベーション後、徐々に、誘導性のレベルにまで増加した。ありうる二量体が、一晩の誘導後、免疫ブロットによってのみ視認され、それよりいくらか高い分子量の物質もまた、誘導後3時間および一晩の時点で検出された。
【0097】
HIVb(ランダムポリエピトープ)
ポリエピトープポリペプチドは、染色ゲル上でも、免疫ブロットによってでも検出されなかった(図9および10)。
【0098】
議論
26のCTLエピトープを順序づけるための上記アルゴリズムの使用によって、良好な産生量で、HIVポリエピトープポリペプチドを発現させることが可能になった。他方、ランダムに順序づけられたポリエピトープ配列の発現は、検出可能な生成物を産生することができなかった。
【0099】
【表7】

【0100】
表8: 26のHIV CTLエピトープ(HIVa)に対するポリエピトープポリペプチドの生成のための順序づけプロセス。
それぞれのエピトープに対する疎水性値を算出し、その後、そのエピトープを分類順序づけし、各3つ組内にグループ分けする。その配列を、疎水性プロットを使用して評価し、移動する3-merウィンドウにわたってエピトープ疎水性値を合計することによって、そのHI値を算出する。必要な場合、エピトープ順序の微調整をおこない、配列を再評価する。20 EBV CTLエピトープおよびC末端ヘキサヒスチジン親和性タグの最終的エピトープ順序およびアミノ酸配列を次に示す。
太字体;それぞれの3つ組において第1のエピトープとして使用されたセットの疎水性が最も高いエピトープ。
イタリック体;それぞれの3つ組において第2のエピトープとして使用されたセットの親水性が最も高いエピトープ。
通常フォント;それぞれの3つ組において第3のエピトープとして使用されたセットの、中程度疎水性エピトープ。
【0101】
【表8a】

【表8b】

【実施例4】
【0102】
ワクチン候補としてのHCVポリエピトープ融合体
材料と方法
エピトープ配列
HCVワクチン細胞内に含有するための26のCTLエピトープ、それらが発生したタンパク質、およびHLA型を表9に示す。
【0103】
エピトープの設計/順序づけ
実施例1(i)〜(xi)で記述した方法によって、CTLエピトープの、順序づけられた配置メントを生成し、好ましい疎水性特徴を有するポリエピトープ配列を生成した。最終的シャッフルは、エピトープ24、25および26を合計した結果の高い疎水性指標(HI)を減少させるために、3位からCTCGSSDLY(配列番号68)を取り、26位でFLLLADARV(配列番号69)と変換することを含む。同時に、5つのランダム配列を生成し、これらの1つ(HCVb)を最適化した配列と比較するために取る。
【0104】
この最適化したHCVポリエピトープ(HCVa)立体構造のための順序づけプロセスを表10に示す。
【0105】
疎水性指標(HI)算出
両方の立体構造(HCVaおよびHCVb)のHI値を次の数学的表現によって算出した。
e=m+n-1
HIm=Σxe
e=m
[式中、m=グループ数、n=グループサイズ、e=整数(エピトープ数)、x=エピトープ疎水性値、nの値は2から5]。
【0106】
DNA構築体の生成
ポリエピトープのアミノ酸配列それぞれを、Dnastar Editseqソフトウェアおよび大腸菌発現に最適化したコドンを使用してDNAに翻訳しなおした。精製および検出のために、C末端ヘキサヒスチジンタグを組み込んだ。ポリエピトープ配列をコードするDNAを、Splicing by Overlap Extension技術(SOE)を使用して、Hortonら、(1995)の記述のように、合成オリゴヌクレオチドから作製した。これらを、pET24b(Novagen)内にクローニングし、その結果できた構築体をエラーが存在しないことを確実にするために配列した(Big Dye Terminator Kit V3.1; Applied Biosystems)。発現のため、DNAを大腸菌BL21(DE3)細胞(Novagen)内に形質転換した。
【0107】
タンパク質発現および分析
形質転換した細胞を、カナマイシン50mg/ml含有のTerrific Broth内で、37℃で、培養した。〜2のOD600で、IPTG0.5mMの添加によって、タンパク質発現が誘導され、誘導後1時間、2時間、3時間、および一晩で、試料を取り出した。細胞をペレット化し、等しい密度になるまで再懸濁し、SDS試料緩衝液内で煮沸し、その後、Novex 4〜20%トリス-グリシンゲル上で、SDS-PAGEによって分析した。クーマシーブルー染色法および免疫ブロット法両方によって、ゲルを分析した。Dianova抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体を用いて、ブロットを調査した。
【0108】
結果
エピトープ融合
ワクチン形成の構成要素を提供するために、26のHCV CTLエピトープを選択した。これらのCTLエピトープ(表7)を連結するため、およびHCVワクチンのベースを形成するためのポリエピトープ抗原の設計を促進するため、それぞれのエピトープの疎水性値を、Pinsoft 2ソフトウェアを使用して(実施例1の場合のように)算出した。その後、26エピトープの2ヴァージョンを、作製した(図8)。それらの1つは、ピーク疎水性および疎水性配列の長さを減少させ(HCVa)、もう1つの中では、エピトープはランダムに配置されていた(HCVb)。その後、これらの構築体を組み立て、ポリエピトープポリペプチドを産生する能力を比較するため、大腸菌内にクローニングした。
【0109】
HCVa(最適化したポリエピトープ)
誘導された単量体ポリエピトープポリペプチドは、クーマシー染色ゲル上で視認できなかったが、予測されたMW 27.5kDaのタンパク質は、免疫ブロットが抗ヘキサヒスチジン抗体を用いて調査されたとき、誘導後2および3時間で検出された(図9および10)。時間がたつにつれて、スメアとして、増加する高分子量生成物の存在があり、タンパク質凝集があることを示す。誘導の一晩後、これらの高分子量凝集物もまた、クーマシー染色ゲル上で視認できた(図10)。
【0110】
HCVb(ランダムポリエピトープ)
誘導された単量体ポリエピトープポリペプチドは、クーマシー染色ゲル上でも、免疫ブロットによってでも検出されなかった(図9および10)。一晩の誘導後、免疫ブロットによって、2つの薄いバンドが検出された。しかし、これらは〜24および30kDaであり、および明らかに、MW 27.5kDaの予測された生成物ではなかった。それらは、大腸菌の2つのヒスチジンが豊富なタンパク質、ローターマーゼ(〜23kDa; NCBI Accession NP_417808)および機能の知られていないタンパク質(〜32kDa; NCBI Accession BAA15973)に対応している可能性が最も高い。前者はタンパク質フォールディングに関与するペプチジルプロリルイソメラーゼであるため、おそらく、これがこの状況で過剰産生されることは驚くべきことではない。
【0111】
考察
HCVポリエピトープの設計において、26 CTLエピトープを順序づけるための上記アルゴリズムの使用によって、主に、凝集産物として、ポリペプチド配列を発現させることが可能になった。他方、ランダムに順序づけられたポリエピトープ配列の発現は、検出可能な生成物を産生することができなかった。
【0112】
【表9】

【0113】
表10: 26のHCV CTLエピトープ(HCVa)に対するポリエピトープポリペプチドの生成のための順序づけプロセス。
それぞれのエピトープに対する疎水性値を算出し、その後、そのエピトープを分類順序づけし、諸3つ組内にグループ分けする。その配列を、疎水性プロットを使用して評価し、移動する3-merウィンドウにわたってエピトープ疎水性値を合計することによって、そのHI値を算出する。必要な場合、エピトープ順序の微調整をおこない、配列を再評価する。20 EBV CTLエピトープおよびC末端ヘキサヒスチジン親和性タグの最終的エピトープ順序およびアミノ酸配列を次に示す。
太字体;それぞれの3つ組において第1のエピトープとして使用されたセットの疎水性が最も高いエピトープ。
イタリック体;それぞれの3つ組において第2のエピトープとして使用されたセットの親水性が最も高いエピトープ。
通常フォント;それぞれの3つ組において第3のエピトープとして使用されたセットの、中程度疎水性エピトープ。
【0114】
【表10a】

【表10b】

【0115】
広範に述べられた本発明の精神または範囲から離れることなく、特定の実施形態で示されたように、本発明に対して多数の変形および/または修飾をおこなうことができることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、全ての面において、例示的なものであり、非制限的なものであると考えられるべきである。
【0116】
(参考文献)


【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】EBVポリエピトープポリペプチド、PT26AおよびPT26Bに対するエピトープ構造およびアミノ酸配列を提供する図である。エピトープの上の数字は、アセチルN末端およびアミドC末端を特定して、Pinsoft 2ソフトウェアで算出した、それぞれのエピトープに対する疎水性値を表す。
【図2】PT26AおよびPT26Bの疎水性プロットを提供する図である。移動する9つのアミノ酸ウィンドウの疎水性値は、Fauchere and Pliska,1983のアルゴリズムを使用して求めた。
【図3】EBVgp350とPT26A(A)またはPT26B(B)の残基21から447の融合のアミノ酸配列を提供する図である。
【図4】(A)PT26A(約30kDaで)、(B)gp350/PT26A(約80kDaで)、および(C)PT26B発現を、IPTG(+IPTGまたはI)によって誘導した後の、発現のタイムコースを示すクーマシー染色したSDS-PAGEゲルを示す図である。矢印は、組換えタンパク質の位置を示す。
【図5】2つの製剤条件下における、ポリエピトープポリペプチド、PT26AおよびPT26B内に含まれる5つのHLA A2エピトープに対するCTL反応のELISPOTアッセイ結果を提供する図である。(A)10μg gp350-PT26A、(B)10μg gp350-PT26B、および(C)正の対照ペプチド混合物(ポリペプチドポリペプチドに含まれる5つのA2エピトープそれぞれの混合物を含む)。それぞれのエピトープを、最初の3つのアミノ酸によって下に表す。マウスM1〜M5それぞれのA2エピトープそれぞれに対するCTL反応を、生成したIFN-γスポットの数を示す棒線として表す。
【図6】EBVポリエピトープポリペプチド、EBV-NPCaに対するエピトープ構造およびアミノ酸配列を提供する図である。エピトープの上の数字は、アセチルN末端およびアミドC末端を特定して、Pinsoft 2ソフトウェアで算出した、それぞれのエピトープに対する疎水性値を表す。
【図7】HIVポリエピトープポリペプチド、HIVaおよびHIVbに対するエピトープ構造およびアミノ酸配列を提供する図である。エピトープの上の数字は、アセチルN末端およびアミドC末端を特定して、Pinsoft 2ソフトウェアで算出した、それぞれのエピトープに対する疎水性値を表す。3つのエピトープ(n=3)にわたる疎水性指標値を下に示す。
【図8】HCVポリエピトープポリペプチド、HCVaおよびHCVbに対するエピトープ構造およびアミノ酸配列を提供する図である。エピトープの上の数字は、アセチルN末端およびアミドC末端を特定して、Pinsoft 2ソフトウェアで算出した、それぞれのエピトープに対する疎水性値を表す。3つのエピトープ(n=3)にわたる疎水性指標値を下に示す。
【図9】クーマシー染色したSDS-PAGEゲル、およびまた構築体HIVa、HIVb、HCVaおよびHCVbの発現タイムコースからの免疫ブロットを示す図である。図9パネルA:1時間時点。列1)Novex SeeBlue+2 MWマーカー、2)負のベクター/宿主対照、3)HIVa非誘導、4)HIVa誘導、5)HlVb非誘導、6)HIVb誘導、7)HCVa非誘導、8)HCVa誘導、9)HCVb非誘導、10)HCVb誘導。パネルB:2時間時点。列1)負のベクター/宿主対照、2)Novex SeeBlue+2 MWマーカー、3)HIVa非誘導、4)HIVa誘導、5)HIVb非誘導、6)HIVb誘導、7)HCVa非誘導、8)HCVa誘導、9)HCVb非誘導。
【図10】クーマシー染色したSDS-PAGEゲル、およびまた構築体HIVa、HIVb、HCVaおよびHCVbの発現タイムコースからの免疫ブロットを示す図である。図10パネルA:3時間時点。列1)負のベクター/宿主対照、2)HIVa非誘導、3)HIVa誘導、4)HIVb非誘導、5)HIVb誘導、6)Novex SeeBlue+2 MWマーカー、7)HCVa非誘導、8)HCVa誘導、9)HCVb非誘導、10)HCVb誘導。パネルB:一晩時点。列1)負のベクター/宿主対照、2)HIVa非誘導、3)HIVa誘導、4)HIVb非誘導、5)HIVb誘導、6)HCVa非誘導、7)HCVa誘導、8)HCVb非誘導、9)HCVb誘導、10)Novex SeeBlue+2 MWマーカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適切な宿主内における発現のための候補ポリペプチドを設計する方法であって、
対象ポリペプチド内の1つまたは複数の疎水性ペプチド配列を同定するステップと、
疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した前記候補ポリペプチドを生成するように、前記ポリペプチド内の前記疎水性ペプチド配列の少なくとも1つを配置または再配置するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記対象ポリペプチドが細菌宿主内で発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細菌宿主が大腸菌(E. coli)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが大腸菌に対して非ネイティブである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象ポリペプチドが非天然ポリペプチドまたは理論的な非天然ポリペプチドを含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが対象エピトープの直列アレイを含むポリエピトープポリペプチドを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
適切な宿主内における発現のためのエピトープの直列アレイを含む候補ポリエピトープポリペプチドを設計する方法であって、
前記エピトープそれぞれの相対的な疎水性を同定するステップと、
同定した前記疎水性に基づいて、前記エピトープを実質的に等しい数のグループ(少なくとも、相対的な疎水性の最も高いエピトープの第1グループ、および相対的な疎水性の最も低いエピトープの第2グループを含む)に分けるステップと、
疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した前記候補ポリエピトープポリペプチドを生成するように、実質的に交互に、前記第1グループおよび前記第2グループのエピトープを配置するステップとを含む方法。
【請求項8】
適切な宿主内における発現のためのエピトープの直列アレイを含む候補ポリエピトープポリペプチドを設計する方法であって、
前記エピトープそれぞれの相対的な疎水性を同定するステップと、
同定した前記疎水性に基づいて、前記エピトープを実質的に等しい数の3つのグループ(相対的な疎水性の最も高いエピトープの第1グループ、相対的な疎水性が中等度のエピトープの第2グループ、および相対的な疎水性の最も低いエピトープの第3グループを含む)に分けるステップと、
前記第1、第2、第3グループからのエピトープを、それぞれのグループからのエピトープを含む3つ組に配置するステップと、
疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した前記候補ポリエピトープポリペプチドを生成するように、前記3つ組を連結した配列に配置するステップとを含む方法。
【請求項9】
適切な宿主内における発現のためのエピトープの直列アレイを含む候補ポリエピトープポリペプチドを設計する方法であって、
前記エピトープそれぞれの相対的な疎水性を同定するステップと、
同定した前記疎水性に基づいて、前記エピトープを実質的に等しい数の4つのグループ(相対的な疎水性の最も高いエピトープの第1グループ、相対的な疎水性がより低いエピトープの第2グループ、相対的な疎水性がさらに低いエピトープの第3グループ、および相対的な疎水性の最も低いエピトープの第4グループを含む)に分けるステップと、
前記第1、第2、第3グループからのエピトープを、それぞれのグループからのエピトープを含む4つ組に配置するステップと、
疎水性の強さおよび/または疎水性領域の長さが減少した前記候補ポリエピトープポリペプチドを生成するように、前記4つ組を連結した配列に配置するステップとを含む方法。
【請求項10】
前記ポリエピトープポリペプチドが5から100個のエピトープを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリエピトープポリペプチドが10から35個のエピトープを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリエピトープポリペプチドを含む前記エピトープが、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびサイトメガロウイルス(CMV)からなる群の前記ウイルスのいずれか1つのエピトープから選択される、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
適切な宿主内においてポリペプチドを発現させる方法であって、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によってポリペプチドを設計するステップと、
前記宿主が前記ポリペプチドを発現させることができるように、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを前記宿主に導入するステップと、
前記ポリペプチドの発現に適した条件下で、前記宿主を培養するステップとを含む方法。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法によって設計されたポリペプチド。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって設計されたポリエピトープポリペプチド。
【請求項16】
N個のエピトープ(Nは整数)を含むポリエピトープポリペプチドであって、前記ポリエピトープポリペプチドが、式:
3つ組1-3つ組2-...-3つ組N/3、
を有し、
前記3つ組それぞれが、
前記N個のエピトープそれぞれの相対的な疎水性を同定し、分類するステップと、
前記N個のエピトープの同定された相対的な疎水性に基づいて、分類された前記N個のエピトープを実質的に等しい数の3つのグループにグループ分け、相対的な疎水性の最も高いエピトープを含む第1グループ、相対的な疎水性が中等度のエピトープの第2グループ、および相対的な疎水性の最も低いエピトープの第3グループを作製するステップと、
次の表:
【表1】

によって、前記3つ組のそれぞれに対する前記エピトープを選択するステップとによって選択された3つの連結したエピトープを含む、ポリエピトープポリペプチド。
【請求項17】
前記エピトープが連続している、または、前記エピトープに天然に隣接する配列を実質的に含まない介在配列によって隔てられた、請求項15または16に記載のポリエピトープポリペプチド。
【請求項18】
請求項14から17のいずれか一項に記載のポリエピトープポリペプチドおよび薬学的に許容される担体および/またはアジュバントを含むポリペプチドワクチン。
【請求項19】
FLRGRAYGL - PYLFWLAAI - HRCQAIRKK - RRIYDLIEL - VQPPQLTLQV - GLCTLVAML - RLRAEAQVK -IEDPPFNSL - YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - AVLLHEESM - IALYLQQNWWTL - RAKFKQLL - SSCSSCPLSKI- TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - RPPIFIRRL - VSFIEFVGW - YPLHEQHGM - VEITPYKPTW - CLGGLLTMV - EENLLDFVRF - TYSAGIVQI - LLDFVRFMGV - EGGVGWRHW (配列番号-1)、
FLRGRAYGL - PYLFWLAAI - HRCQAIRKK - RRIYDLIEL - GLCTLVAML - RLRAEAQVK - IEDPPFNSL - TYSAGIVQI - LLDFVRFMGV - EGGVGWRHW - IALYLQQNWWTL - RAKFKQLL - SSCSSCPLSKI - TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - RPPIFIRRL - VSFIEFVGW - YPLHEQHGM - VEITPYKPTW - CLGGLLTMV - EENLLDFVRF - YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - AVLLHEESM - VQPPQLTLQV (配列番号2)、
SSCSSCPLSKI - HRCQAIRKK - CLGGLLTMV - LTAGFLIFL - RLRAEAQVK - IEDPPFNSL - LLSAWILTA - RRRWRRLTV - PYLFWLAAI - YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - VMSNTLLSAW - ALLVLYSFA - RAKFKQLL - IALYLQQNW - TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - YLQQNWWTL - YPLHEQHGM - CPLSKILL (配列番号3)、
IPIVAIVALV - RLRPGGKKK - ILKEPVHGV - PLVKLWYQL - RPGGKKKYKL - KYKLKHIVW - TWETWWTEYW - EIKDTKEAL - KRWIILGLNK - KLWVTVYYGV - KIEELRQHL - MTNNPPIPV - VTLWQRPLV - WASRELERF - LLWKGEGAV - YTAFTIPSI - IYQEPFKNLK - SLYNTVATL - AIIRILQQL - AIFQSSMTK - VIYQYMDDL - LVGPTPVNI - TPQDLNTML - YLAWVPAHK - ALVEICTEM - TLNAWVKVV (配列番号4)、
および
LLFNILGGWV - KTSERSQPR - FLLLADARV - LLFLLLADA - RLGVRATRK - GVAGALVAFK - LPGCSFSIF - RMYVGGVEHR - VAGALVAFK - DLMGYIPLV - LIFCHSKKK - ILAGYGAGV - HMWNFISGI - QLFTFSPRR - VGIYLLPNR - FWAKHMWNF - YLVTRHADV - LSAFSLHSY - WMNRLIAFA - YLLPRRGPRL - YLVAYQATV - RLIVFPDLGV - TLGFGAYMSK - IPFYGKAI - VLVGGVLAA - CTCGSSDLY (配列番号5)
からなる群から選択されたアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含むポリエピトープポリペプチド。
【請求項20】
FLRGRAYGL - PYLFWLAAI - HRCQAIRKK - RRIYDLIEL - VQPPQLTLQV - GLCTLVAML - RLRAEAQVK -IEDPPFNSL - YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - AVLLHEESM - IALYLQQNWWTL - RAKFKQLL - SSCSSCPLSKI- TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - RPPIFIRRL- VSFIEFVGW - YPLHEQHGM - VEITPYKPTW - CLGGLLTMV - EENLLDFVRF - TYSAGIVQI - LLDFVRFMGV -EGGVGWRHW (配列番号1)
と実質的に対応するアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のポリエピトープポリペプチド。
【請求項21】
FLRGRAYGL - PYLFWLAAI - HRCQAIRKK - RRIYDLIEL - GLCTLVAML - RLRAEAQVK - IEDPPFNSL - TYSAGIVQI - LLDFVRFMGV - EGGVGWRHW - IALYLQQNWWTL - RAKFKQLL - SSCSSCPLSKI - TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - RPPIFIRRL - VSFIEFVGW - YPLHEQHGM - VEITPYKPTW - CLGGLLTMV - EENLLDFVRF - YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - AVLLHEESM - VQPPQLTLQV (配列番号2)
と実質的に対応するアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のポリエピトープポリペプチド。
【請求項22】
SSCSSCPLSKI - HRCQAIRKK - CLGGLLTMV - LTAGFLIFL - RLRAEAQVK - IEDPPFNSL - LLSAWILTA - RRRWRRLTV - PYLFWLAAI - YLLEMLWRL - GQGGSPTAM - VMSNTLLSAW - ALLVLYSFA - RAKFKQLL - IALYLQQNW - TYGPVFMCL - QAKWRLQTL - YLQQNWWTL - YPLHEQHGM - CPLSKILL (配列番号3)
と実質的に対応するアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のポリエピトープポリペプチド。
【請求項23】
IPIVAIVALV - RLRPGGKKK - ILKEPVHGV - PLVKLWYQL - RPGGKKKYKL - KYKLKHIVW - TWETWWTEYW - EIKDTKEAL - KRWIILGLNK - KLWVTVYYGV - KIEELRQHL - MTNNPPIPV - VTLWQRPLV - WASRELERF - LLWKGEGAV - YTAFTIPSI - IYQEPFKNLK - SLYNTVATL - AIIRILQQL - AIFQSSMTK - VIYQYMDDL - LVGPTPVNI - TPQDLNTML - YLAWVPAHK - ALVEICTEM - TLNAWVKVV (配列番号4)
と実質的に対応するアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のポリエピトープポリペプチド。
【請求項24】
LLFNILGGWV - KTSERSQPR - FLLLADARV - LLFLLLADA - RLGVRATRK - GVAGALVAFK - LPGCSFSIF - RMYVGGVEHR - VAGALVAFK - DLMGYIPLV - LIFCHSKKK - ILAGYGAGV - HMWNFISGI - QLFTFSPRR - VGIYLLPNR - FWAKHMWNF - YLVTRHADV - LSAFSLHSY - WMNRLIAFA - YLLPRRGPRL - YLVAYQATV - RLIVFPDLGV - TLGFGAYMSK - IPFYGKAI - VLVGGVLAA - CTCGSSDLY (配列番号5)
と実質的に対応するアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のポリエピトープポリペプチド。
【請求項25】
請求項19から24のいずれか一項に記載のポリエピトープポリペプチドおよび薬学的に許容される担体および/またはアジュバントを含むポリペプチドワクチン。
【請求項26】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって設計されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドならびに薬学的に許容される担体および/またはアジュバントを含むウイルスワクチンまたはDNAワクチン。
【請求項27】
請求項19から24のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドならびに薬学的に許容される担体および/またはアジュバントを含むウイルスワクチンまたはDNAワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−514606(P2006−514606A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−520192(P2004−520192)
【出願日】平成15年7月14日(2003.7.14)
【国際出願番号】PCT/AU2003/000910
【国際公開番号】WO2004/007556
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【出願人】(505013561)ザ・カウンシル・オブ・ザ・クィーンズランド・インスティテュート・オブ・メディカル・リサーチ (4)
【Fターム(参考)】