説明

疎水性保護コロイド微粒子分散液その製造方法及び熱現像感光材料

【課題】従来から用いられているゼラチン等の親水性分散剤を保護コロイドとして分散し得る親水性微粒子分散液の技術的な優位性を有しつつ、かつ、疎水性保護コロイド微粒子分散液を提供する。
【解決手段】親水性分散剤を保護コロイドとして分散した微粒子の親水性微粒子分散液に、該親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤を添加して疎水性保護コロイド微粒子分散液とすることを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液の製造方法、得られた疎水性保護コロイド微粒子分散液及び画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性保護コロイド微粒子分散液その製造方法及び熱現像感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な分野でナノオーダー微粒子の必要性が高まっており、そのナノ微粒子分散技術が重要視されている。特にその中でも無機微粒子の溶剤系樹脂中での分散技術の技術的ハードルは高い、なぜなら無機微粒子の表面は一般的に親水性であるため、溶剤系分散は非常に困難であると言える。過去の研究として親水性無機粒子を溶剤中に分散するために、微粒子表面に対し、化学結合を介して疎水性分散剤を保護コロイドとして施す分散技術は開示されて(例えば、特許文献1参照。)いる。ただし、どの公知例においても、水系において分散可能な親水性保護コロイド粒子に対して疎水性分散剤を施すことによる溶剤系微粒子分散技術には全く触れられていない。
【0003】
両親媒性分散系における過去の研究としては、分散剤ポリマーの相転移温度を閾値にして親水性/疎水性が可逆的に変化し得る感熱性高分子について開示されて(例えば、特許文献2参照。)いる。ただし、この技術は温度により可逆的であるため、水系及び溶剤系での修飾バリエーションにそれぞれ大きな制約が生じる欠点がある。
【0004】
つまり本発明の特徴は、ナノオーダー微粒子を水系及び溶剤系の両方で分散可能である点である。水系での微粒子修飾と溶剤系での修飾が各液相で別々に可能であることは全く新しい技術であり、且つ非常にメリットが大きく将来性がある技術と言える。
【0005】
従来、溶剤系熱現像感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤は、ゼラチン等の親水性分散剤を保護コロイドとしており、有機溶剤中に該ハロゲン化銀粒子が晒された際に凝集及び熟成が生じる問題を抱えている。反面、水中でのハロゲン化銀粒子形成技術、水溶性増感剤による化学増感技術、ゼラチンゲル化によるセット保存技術等、親水性ゼラチンを保護コロイドとして用いることで優位性のある従来の技術が多く、溶剤中でハロゲン化銀粒子が凝集する課題をある程度妥協してきた。従来の粒子凝集回避策としては、熱現像感光材料に含まれる有機銀塩粒子形成中に該ハロゲン化銀粒子を添加することにより、長鎖脂肪酸をハロゲン化銀粒子の分散剤とすることで凝集緩和される。ただしこの技術では、分散性も不十分であり、更に有機銀塩との混合系であるため写真材料として重要なカブリも劣化し、課題は解決しきれていない。
【特許文献1】特開平5−111631号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開平7−276792号公報 (第2〜5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来から用いられているゼラチン等の親水性分散剤を保護コロイドとして分散し得る親水性微粒子分散液の技術的な優位性を有しつつ、かつ、疎水性保護コロイド微粒子分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0008】
1.親水性分散剤を保護コロイドとして分散した微粒子の親水性微粒子分散液に、該親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤を添加して疎水性保護コロイド微粒子分散液とすることを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液の製造方法。
【0009】
2.前記1に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【0010】
3.前記微粒子の平均球相当径が1nm〜1000nmであることを特徴とする前記2に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【0011】
4.前記親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤の官能基が、カルボキシル基、またはアミド基であることを特徴とする前記2又は3に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【0012】
5.前記親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤の質量平均分子量が1万〜20万であることを特徴とする前記2〜4のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【0013】
6.前記4又は5に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液を、更にメチルエチルケトン溶媒中に分散することを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液の製造方法。
【0014】
7.前記6に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【0015】
8.前記微粒子がハロゲン化銀であることを特徴とする前記2〜5又は7のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【0016】
9.前記2〜5又は7、8のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0017】
10.支持体上に感光乳剤、非感光性銀塩及びバインダーを含有する層を有する熱現像感光材料において、該層が前記2〜5又は7、8のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0018】
11.感光乳剤が、前記2〜5又は7、8のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液を非感光性銀塩粒子形成後に添加して作製した感光乳剤であることを特徴とする前記10に記載の熱現像感光材料。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、疎水性保護コロイド微粒子分散液を得ることにより、低カブリ、高カバリングパワー(CP)で最高濃度が高く、湿度耐性に優れた熱現像感光材料を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を更に詳しく説明する。本発明における「親水性分散剤」について説明するが、これにより限定されるものではない。
【0021】
本発明の親水性分散剤としては、一般の写真用に用いられゼラチンが好ましい。一般の写真用に用いられるゼラチンについては、詳しくは、例えば日本写真学会編「写真工学の基礎・銀塩写真編」(コロナ社刊、122〜124頁)を参照することができる。
【0022】
ゼラチンは動物の結合組織の主成分であるコラーゲンから製造され、写真用ゼラチンの原料としては、牛骨、牛皮、豚皮等が挙げられるが、牛骨、牛皮を用いるのが一般的である。又、コラーゲンの処理方法として酸処理法と石灰処理法の2種類の方法が存在するが、写真用ゼラチンとしては石灰処理法を用いるのが一般的であり、本発明に係わるゼラチンにおいても石灰処理法を用いるのが好ましい。一例として、牛骨から石灰処理により写真用ゼラチンを製造する場合、通常、脱灰・石灰処理・抽出・濾過・濃縮・ゲル化・乾燥のプロセスを経る。乾燥した牛骨を4〜8日程度希塩酸溶液に漬けて脱灰を施し、水洗・中和を経て、ケラチン等を除くために牛の皮や骨を2〜3カ月飽和石灰水中に漬けた後、水洗・中和を経て50〜60℃位の湯で6〜8時間抽出(1番抽出)を行い、その後5〜10℃程度高い湯を加え、2番・3番と抽出を行う。抽出後、濾過工程を経て減圧下で一般に60℃以下の温度にて濃縮し、冷却、ゲル化を経て25℃位で乾燥して最終ゼラチンを得る。
【0023】
本発明に用いられるゼラチンは、上記の製造方法において、原料として牛骨のハードボーンを用いるのが好ましい。ゼラチン抽出温度は60℃以下に設定し、濾過工程後、陽イオン及び陰イオン交換樹脂による処理の両方を行うことによって得ることができる。ゼラチンの抽出温度としては、好ましくは55℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0024】
脱イオン工程はゼラチン抽出工程後のどこで行ってもよいが、濾過工程後に行うのが好ましい。
【0025】
イオン交換樹脂としては陽イオン交換基として−H型、−Na型のもの、陰イオン交換基として−OH型、−Cl型のものがあるが、陽イオン交換基として−H型また陰イオン交換基として−OH型のものが好ましい。処理条件は、イオン交換樹脂による処理が充分に行われてゼラチン溶液からイオン成分が無くなり、ゼラチン溶液のpH値が4.9〜5.3程度になるようにイオン交換樹脂の使用量及び処理時間を設定するのが好ましい。又、先に陽イオン交換樹脂による処理を行うのが好ましい。
【0026】
イオン交換処理を行ったゼラチン溶液は、通常のpH調整剤を用いてpH値の調整を行ってもよいが、調整しない等電点のpHのまま用いるのが好ましい。
【0027】
本発明における「親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤」について説明する。本発明において、「親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤」としては、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマーのいずれであっても良い。例えば、ゼラチン類、ゴム類等を改質して本発明の範疇に属するよう改質したものを用いる事ができる。また親水性分散剤の親水性基がカルボキシル基である場合は、イオン結合可能な官能基としてアミド基含有の分散剤が好ましい。一方、親水性分散剤の親水性基がアミノ基である場合は、イオン結合可能な官能基としてカルボキシル基含有の分散剤が好ましい。以下に具体的な分散剤の例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0028】
以下の分類に属するポリマーを、本発明に適するよう官能基を導入して用いる事が可能である。ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸およびアクリル酸エステル)類、ポリ(メチルメタクリル酸およびメタクリル酸エステル)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。これらのポリマーは数種類がコポリマーとなっていても良いが、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステル類のモノマーを共重合したポリマーが好ましい。
【0029】
溶解性の観点から、直鎖のポリマーよりも、いわゆるブロックポリマーやクシ型(グラフト)ポリマーが適している。特にクシ型ポリマーは好ましい。クシ型ポリマーを製造する場合は、各種の手法を用いることができるが、クシ部(側鎖)に200以上の分子量の側鎖を導入できるモノマーを用いる事が望ましい。特にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなど、ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和モノマーを用いる事が好ましい。
【0030】
ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、特に、下記一般式であらわされるポリオキシアルキレン基を有しているものが好ましい。
【0031】
−(EO)l−(PO)m−(TO)n−R
式中、Eはエチレン基を、Pはプロピレン基を表し、Tはブチレン基を表し、Rは置換基を表す。ブチレン基としてはテトラメチレン基、イソブチレン基等を含む。lは1〜300の、mは0〜60の、またnは0〜40の整数を表す。好ましくはlは1〜200の、mは0〜30の、またnは0〜20である。但し、l+m+n≧2である。
【0032】
Rで表される置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基等を表し、アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、へキシル、オクチル。ドデシル等を、またアリール基としてはフェニル、ナフチル等の基が、またヘテロ環基としては、チエニル、ピリジル等の基があげられる。また、これらの基はさらにハロゲン原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、ブチルチオ基等)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基等)、アルカンアミド基(アセトアミド基、プロピオンアミド基等)、アリールアミド基(ベンゾイルアミド基等)等によって更に置換されていてもよい。またこれらの置換基が更にこれらの基により置換されていてもよい。
【0033】
前記一般式で表されるポリオキシアルキレン基は、これらポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることにより、ポリマー中に導入できる。これらの基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(ポリオキシアルキレン)アクリレートおよびメタアクリレート等があり、(ポリオキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名“プルロニック”[Pluronic(旭電化工業(株)製)]、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)、カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、トリトン[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))]およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0034】
また、市販品のモノマーとしては、日本油脂株式会社製の水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどがあげられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどがあげられる。
【0035】
本発明においては、いわゆるマクロマーを使用したグラフトポリマーを用いる事もできる。たとえば“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄也著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。マクロマーのうち有用な分子量は1万〜10万の範囲、好ましい範囲は1万〜5万、特に好ましい範囲は1万〜2万の範囲である。分子量が1万以下では効果を発揮できず、また10万以上では主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が悪くなる。具体的には、東亞合成株式会社製AA−6、AS−6S、AN−6S等をもちいることができる。
【0036】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和モノマーは、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0037】
上記のモノマーと具体的に反応させる他のモノマーとしては、以下の単量体をあげることができる。
【0038】
アクリル酸エステル類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、クロルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等、
メタクリル酸エステル類:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、クロルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等、
アクリルアミド類:アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミドなど。また、アルキルオキシアクリルアミドとして、メトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド等、
メタクリルアミド類:メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド、メトキシメチルメタアクリルアミド、ブトキシメチルメタアクリルアミド等、
アリル化合物:アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノールなど、
ビニルエーテル類:アルキルビニルエーテル(例えばヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテルなど)、
ビニルエステル類:ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレートなど、
イタコン酸ジアルキル類:イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなど。フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類:ジブチルフマレートなどその他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレンなどが挙げられる。
【0039】
アミド基やC4−C22の直鎖ないし分岐アルキル基、芳香族基、ないし5員環以上の複素環基を導入する場合は、上記のモノマーあるいは、その他のモノマーの中でこれらの官能基を含有するモノマーを選択すればよい。例えば、5員環以上の複素環基の導入には、1−ビニルイミダゾールやその誘導体を用いる事ができる。さらに、あらかじめポリマー中にイソシアネートやエポキシ基を導入しておき、それらを直鎖ないし分岐アルキル基、芳香族基、ないし5員環以上の複素環基を含有するアルコール類や、アミン類と反応させる事で、ポリマー中に各種の官能基を導入しても良い。イソシアネートやエポキシを導入するには、カレンズMOI(昭和電工製)やブレンマーG(日本油脂製)を用いる事ができる。ウレタン結合を導入する事も本発明においては好ましい。
【0040】
重合開始剤としては、アゾ系高分子重合開始剤、有機過酸化物を用いることができる。アゾ系高分子重合開始剤としては、日本ヒドラジン工業株式会社製 ABN−R(2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)、ABN−V(2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))、ABN−E(2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))等がある。また有機過酸化物としては、過酸化ベゾイル、ジメチルエチルケトンパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、日本油脂株式会社製 パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサTMH、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH、パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルS、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40、ナイパーBMT−T40、ナイパーBMT−M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルEEP、パーロイルMBP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーシクロND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーヘキシルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルIB、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーヘキサ25MT、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ等が挙げられる。
【0041】
また本発明の重合禁止剤としては、キノン系の禁止剤が用いられるが、ハイドロキノン、p−メトキシフェノールが挙げられる。セイコーケミカル株式会社製 フェノチアジン、メトキノン、ノンフレックスアルバ、MH(メチルハイドロキノン)、TBH(tert−ブチルハイドロキノン)、PBQ(p−ベンゾキノン)、トルキノン、TBQ(tert−ブチル−p−ベンゾキノン)、2,5ジフェニル−p−ベンゾキノン等が挙げられる。
【0042】
本発明ではポリマーの等電点がpH6以下である事が好ましい。等電点が高いポリマーを用いると、後述するように、凝集沈殿法により、ハロゲン化銀粒子の脱塩を行う時、ハロゲン化銀粒子の分解を促進し、写真性能に悪影響を与えるからである。また、溶剤中にハロゲン化銀微粒子を分散する時にもpHを上げないと分散させにくく、カブリの観点から好ましくない。ポリマーの等電点の測定は、例えば等電点電気泳動法や、1%水溶液をカチオン及びアニオン交換樹脂の混床カラムに通したあとのpHを測定することで測定することができる。
【0043】
ポリマーの等電点を下げるため、各種の酸性基を導入することができる。例としては、カルボン酸やスルホン酸基が挙げられる。カルボン酸の導入には、アクリル酸、メタクリル酸のモノマーを用いるほか、メタクリル酸メチルなどを含有するポリマーを、一部加水分解して得る事も可能である。スルホン酸基の導入には、スチレンスルホン酸や2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をモノマーとして用いるほか、各種硫酸化の手法でポリマー作製後に導入する事もできる。特にカルボン酸を用いると、未中和の状態で溶剤に対する溶解性が比較的高く、中和ないし半中和にする事で水溶性に性質を変えることができ特に好ましい。中和はナトリウムやカリウム塩で行う事もでき、アンモニアやモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど有機塩としても良い。イミダゾール類やトリアゾール類、アミドアミン類を用いる事もできる。
【0044】
重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも実施できるが、作業性の点から溶剤存在下の場合の方が好ましい。溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類及びそのエステル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフロロオクタン、パーフロロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられ、これらのいずれも使用できる。
【0045】
各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。カラム濾過、再沈精製、溶剤抽出、などによって除去することで、未反応モノマーを除去することができる。あるいは、低沸点の未反応モノマーはストリッピングにより除去することが可能である。
【0046】
溶剤の存在下以外で、乳化重合や懸濁重合で得られたポリマー分散液を用いることもできる。これらのポリマー作製法については、例えば「合成ラテックスの化学:室井宗一著、高分子刊行会発行(1970)」に記載されている。
【0047】
ポリマーの分子量は、質量平均分子量、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定値のポリスチレン換算値で10,000〜100,000が好ましく、10,000〜50,000がより好ましい。分子量が10,000以下であると、ハロゲン化銀粒子に対する保護コロイド作用が不充分であり分散能が十分に得られず、ハロゲン化銀の微粒化ができない。また分子量が大きすぎる場合は、分散液の粘度が高くなりすぎたり、ハロゲン化銀粒子の凝集を起こす場合があるからである。
【0048】
本発明の合成ポリマーがアクリル系ポリマーである場合には、通常のラジカル重合のほか、イオン重合、リビング重合法など各種の手法を用いる事ができる。例えば「季刊化学総説 18 精密重合(日本化学会編 企画・編集担当者;清水剛夫・井上祥平・城田靖彦・柘植 新・東村敏延)」などを参考にする事ができる。重合開始剤や触媒には、公知のすべての材料を適用することが可能である。
【0049】
本発明で使用できる微粒子としては公知の無機や有機の微粒子を使用できるが、例えば無機顔料超微粒子、高分子微粒子、グラフトポリマー微粒子運搬体(DDS)、導電性金属酸化物微粒子、半導体コロイド微粒子、金属コロイド微粒子が挙げられ、これらの中でも金属コロイド微粒子が好ましく用いられる。無機顔料超微粒子としては、例えば酸化チタン、窒化ホウ素、SnO2、SiO2、Cr23、α−Al23、α−Fe23、−FeOOH、SiC、酸化セリウムが、高分子微粒子としては例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、テフロン(登録商標)が、導電性金属酸化物微粒子としては例えばSnやSbで表面処理したZnO、TiO2及びSnO2が、金属コロイド微粒子としては、例えば金、銀、ハロゲン化銀、銅、白金、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、FePt、CoPtのコロイド微粒子が用いられ、特にハロゲン化銀のコロイド微粒子が好ましく用いられる。
【0050】
微粒子の平均球相当径は1nm〜1000nmであることが好ましく、10〜500nmであることがより好ましく、30〜100nmであることが特に好ましい。粒径をこの範囲とすることで凝集を防止でき、分散安定性を向上させることができる。微粒子の平均球相当径とは当該微粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を粒径として算出する。測定は電子顕微鏡写真を用いて行い、300個の粒子の粒径の測定値を平均することで平均球相当径を求めた。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を示す。
【0052】
実施例1
《ポリマーA、B、Cの合成》
0.3リットルの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付し、メチルエチルケトン20gを仕込み、表1記載の温度に加熱した。さらに表1に記載の組成割合のモノマー(単位g)を秤量し、更にN,N′−アゾビスイソバレロニトリル2gを前記モノマーに加えた混合液を、フラスコ中に2時間かけて滴下し、同温度にて5時間反応させた。その後メチルエチルケトン80gを添加し冷却、ポリマー50質量%のポリマー溶液A、B、Cを得た。分子量は、GPCでポリスチレン換算の質量平均分子量として求めた。
【0053】
【表1】

【0054】
ブレンマーPME−400:−(EO)m−CH3 (m≒9)を有するメタアクリレート
ブレンマーPSE−400:−(EO)m−C1837 (m≒9)を有するメタアクリレート
(EO;エチレンオキシ基)
上記はすべて日本油脂製。
Aam:アクリルアミド
DAAM:ダイサセトンアクリルアミド(協和発酵)。
【0055】
《ハロゲン化銀乳剤の調製》
〔ハロゲン化銀乳剤1の調製〕
(溶液A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物A(*1)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げた
(溶液B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
(溶液C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げた。
【0056】
(溶液D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
3IrCl6(4×10-5mol/Ag相当) 50.0ml
水で1982mlに仕上げた。
【0057】
(溶液E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(溶液F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げた。
【0058】
(溶液G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
(溶液H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げた。
【0059】
(*1)化合物A:HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH (m+n=5〜7)
特公昭58−58288号に記載の混合撹拌機を用いて、溶液A1に、溶液B1の1/4量及び溶液C1の全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液F1の全量を添加した。この間pAgの調整を、溶液E1を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液B1の3/4量及び溶液D1の全量を、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間撹拌した後、溶液G1を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、撹拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、撹拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液H1を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、ハロゲン化銀乳剤1を得た。
【0060】
以上の様にして調製したハロゲン化銀乳剤1中のハロゲン化銀粒子は、平均球相当径0.060μm、球相当径の変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。平均球相当径、球相当径の変動係数については電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。またこの粒子の[100]面比率は、クベルカムンク法を用いて求めた。
【0061】
なお、ハロゲン化銀乳剤1中の平均粒径が0.001μm以上、0.050μm以下のハロゲン化銀粒子の比率は、銀量換算で全ハロゲン化銀粒子の61質量%であった。
【0062】
〔ハロゲン化銀乳剤2〜4の調製:分散剤の吸着〕
ポリマーA溶液20gをメタノールで60gに仕上げ40℃30分攪拌した。そこに40℃に調整したハロゲン化銀乳剤1を59.2g添加しさらに30分攪拌し、ハロゲン化銀乳剤2を得た。ポリマーA溶液の代わりにポリマーB溶液を用いた以外はハロゲン化銀乳剤2と同様の方法で調製し、ハロゲン化銀乳剤3を得た。またポリマーA溶液の代わりにポリマーC溶液を用いた以外はハロゲン化銀乳剤2と同様の方法で調製し、ハロゲン化銀乳剤4を得た。
【0063】
〔ハロゲン化銀MEK乳剤1〜4の調製〕
ハロゲン化銀乳剤1〜4を各々ハロゲン化銀等モルになるよう取り分け、MEKで2倍希釈を行い、ロータリーエバポレーターにて減圧蒸留で水分を除去した。ハロゲン化銀MEK乳剤1〜4をこうして調製した。含水率は、カールフィッシャー法で測定し、MEK中での分散性を目視で、よく分散されているかまたは凝集しているか評価し、表2に記載した。
【0064】
【表2】

【0065】
《粉末有機銀塩の調製》
〔ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩A−1の調製〕
未精製のベヘン酸(市販の試薬)を用いて、有機銀塩粒子を調製した。このベヘン酸を後述の分析方法で分析を行ったところ、ベヘン酸含有率が80質量%であった。残りはアラキジン酸とステアリン酸が含まれていたため、アラキジン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸の試薬を用いて、ベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gとなるように各有機酸試薬を混合し、4720mlの純水中に投入し、80℃で溶解した。次に、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して混合脂肪酸ナトリウム溶液を得た。光を遮断した状態(以降、光を遮断した状態を続ける)でこの混合脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの前記ハロゲン化銀乳剤1と純水450mlを添加し5分間攪拌した。次に、1mol/Lの硝酸銀水溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌してハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子分散物A−1を得た。その後、得られたハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子分散物A−1を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させてハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子分散物A−1を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施し、ケーキ状のハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子A−1を得た。ケーキ状のハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子A−1を、流動層乾燥機(ミゼットドライヤー MDF−64型 株式会社ダルトン社製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により、含水率が0.1%になるまで乾燥してハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩A−1を得た。ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩A−1の含水率測定には赤外線水分計を使用した。このハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩A−1中のベヘン酸量を下記の分析法により定量した結果、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩粒子A−1中に含まれるベヘン酸銀比率は54質量%であった。尚、混合後の有機酸について分析して行った結果は、含有重金属含量5ppm、ヨウ素価1.5であった。
【0066】
〈有機銀塩分析方法〉
ベヘン酸銀含有率は、次のようにして求めた。有機銀塩約10mgを正確に秤量し、200mlナス型コルベンに入れる。メタノール15mlと4mol/Lの塩酸3mlを加え、1分間超音波分散する。テフロン(登録商標)製の沸石を入れ、60分間リフラックスする。冷却後、冷却物の上からメタノール5mlを加え、冷却管に付着したものをナス型コルベンに洗い入れる(2回)。得られた反応液を酢酸エチル抽出(酢酸エチル100ml、水70mlを加えて分液、2回)する。30分間真空乾燥する。10mlメスフラスコにベンズアントロン溶液(内部標準)1mlをいれる。サンプルをトルエンに溶かしてメスフラスコに入れトルエンでメスアップする。これをGCで測定し、各有機酸のピーク面積からのmol%を求め、質量%を求めることで全有機酸の組成を知ることができる。
【0067】
続いて、有機銀塩となっていないフリーの有機酸の定量を行う。有機銀塩試料を約20mg正確に秤量し、メタノール10mlを加えて1分間超音波分散する。それをろ過してろ液を乾固するとフリーの有機酸が抽出される。以下全有機酸の場合と同様にしてGCで測定をすることでフリーの有機酸組成及び全有機酸に対する割合を知ることが出来る。全有機酸からフリーの有機酸を差し引いた分を有機銀塩として存在する有機酸の組成とした。
【0068】
〔ハロゲン化銀粒子なしの粉末有機銀塩A−2の調製〕
上記ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩A−1の調製において、ハロゲン化銀乳剤1に代えて、水を同量用いた以外は同様にして、ハロゲン化銀粒子なしの粉末有機銀塩A−2を調製した。このハロゲン化銀粒子なしの粉末有機銀塩A−2中のベヘン酸銀比率は55質量%であった。
【0069】
《感光性乳剤分散液A−1の調製》
分散バインダーとしてポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)の26.26gを、メチルエチルケトンの2000gに溶解し、VMA−GETZMANN社製のディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら、上記ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩A−1の500gを徐々に添加し、十分に混合することにより予備分散液A−1を調製した。
【0070】
上記予備分散液A−1を、ポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製 トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/secにて分散を行い、感光性乳剤分散液A−1を調製した。
【0071】
《非感光性乳剤分散液A−2の調製》
上記感光性乳剤分散液A−1の調製において、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩A−1に代えて、ハロゲン化銀粒子なしの粉末有機銀塩A−2を用いた以外は同様にして、非感光性乳剤分散液A−2を調製した。
【0072】
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色した175μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの片方の面に、0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを、乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更に、もう一方の面に、同様に0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Bを用いて下引層bを、乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群からなるフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃にて15分熱処理を行った。
【0073】
(下引塗布液A)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)の270g、界面活性剤(UL−1)の0.6g及びメチルセルロースの0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(サイロイド350:富士シリシア社製)の1.3gを、水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間の分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて、これを下引塗布液Aとした。
【0074】
(下引塗布液B)
下記コロイド状酸化錫分散液の37.5g、ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(20/30/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)の3.7g、ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(40/20/40%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)の14.8gと界面活性剤(UL−1)の0.1gとを混合し、水で1000mlに仕上げ、これを下引塗布液Bとした。
【0075】
〈コロイド状酸化錫分散液の調製〉
塩化第2錫水和物の65gを、水/エタノール混合溶液の2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸溜水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸溜水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸溜水を添加し、全量を2000mlとする。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して、容量が470mlになるまで濃縮してコロイド状酸化錫分散液を調製した。
【0076】
【化1】

【0077】
《試料101の作製》
下記の手順に従って、熱現像感光材料である試料101を作製した。
【0078】
〔バック面側塗布〕
メチルエチルケトンの830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB381−20)の84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社製:VitelPE2200B)の4.5gを添加し、溶解した。次に、溶解した液に、0.30gの赤外染料1、弗素系活性剤−1の4.5gと弗素系活性剤(ジェムコ社製:エフトップEF−105)1.5gを添加し、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ粒子(富士シリシア社製:サイリシア450)を75g添加、攪拌してバック面塗布液を調製した。
【0079】
弗素系活性剤−1:C917O(CH2CH2O)22917
次いで、調製したバック面塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押出しコーターを用いて、上記支持体の下引き層bを塗布した面上に、塗布、乾燥を行った。乾燥温度100℃で、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0080】
【化2】

【0081】
〔感光性層面側の塗布〕
(各添加液の調製)
〈安定剤液の調製〉
1.0gの安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムを、メタノール4.97gに溶解して安定剤液を調製した。
【0082】
〈赤外増感色素液Aの調製〉
19.2mgの赤外増感色素−1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤−2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールを、31.3mlのメチルエチルケトンに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
【0083】
〈添加液aの調製〉
現像剤として1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンを27.98g、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1を、メチルエチルケトンの110gに溶解し、添加液aとした。
【0084】
〈添加液bの調製〉
3.56gのカブリ防止剤−2、3.43gのフタラジンを、メチルエチルケトン40.9gに溶解し、添加液bとした。
【0085】
(感光性層塗布液1の調製)
不活性気体雰囲気下(窒素97%)で、50gの前記感光性乳剤分散液A−1及び15.11gのメチルエチルケトンを攪拌しながら18℃に保温し、カブリ防止剤−1(10%メタノール溶液)を390μl加え、1時間攪拌した。更に、臭化カルシウム(10%メタノール溶液)を494μl添加して20分攪拌した。続いて、安定剤液167μlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、バインダー樹脂としてポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)を13.31g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%メチルエチルケトン溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300(モーベイ社製の脂肪族イソシアネート 10%メチルエチルケトン溶液)、4.27gの添加液b、を順次添加して攪拌することにより感光性層塗布液1を得た。
【0086】
【化3】

【0087】
(感光性層塗布液2〜4の調製)
不活性気体雰囲気下(窒素97%)で、7.2gの前記ハロゲン化銀MEK乳剤2を攪拌しながら18℃に保温し、カブリ防止剤−1(10%メタノール溶液)を390μl加え、1時間攪拌した。更に、臭化カルシウム(10%メタノール溶液)を494μl添加して20分攪拌した。続いて、安定剤液167μlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌し、分光増感ハロゲン化銀MEK乳剤2を得た。それとは別釜の不活性気体雰囲気下(窒素97%)で、50gの前記ハロゲン化銀粒子なしの非感光性乳剤分散液A−2及び15.11gのメチルエチルケトンを攪拌しながら13℃に保温し、バインダー樹脂としてポリビニルブチラール(Butvar B−79)を13.31g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%メチルエチルケトン溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300(モーベイ社製の脂肪族イソシアネート 10%メチルエチルケトン溶液)、4.27gの添加液b、更に前記分光増感ハロゲン化銀MEK乳剤2を順次添加して攪拌することにより感光性層塗布液2を得た。またハロゲン化銀MEK乳剤2を前記ハロゲン化銀MEK乳剤3、及び4に置き換える以外は、同様な方法で調製することにより感光性層塗布液3、及び4を得た。
【0088】
(表面保護層塗布液の調製)
865gのメチルエチルケトンを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(CAB171−15:前出)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製:パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.0g、弗素系活性剤(ジェムコ社製:エフトップEF−105)1.0gを添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液の30gを添加、攪拌して、表面保護層塗布液を調製した。
【0089】
〈マット剤分散液の調製〉
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、シリカ粒子(富士シリシア社製:サイリシア320)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30分分散し、マット剤分散液を調製した。
【0090】
(塗布)
上記調製した感光性層塗布液1と表面保護層塗布液とを、公知のエクストルージョン型コーターを用いて、同時重層塗布した。塗布は感光性層が塗布銀量1.7g/m2、表面保護層が乾燥膜厚で2.5μmとなるように行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行い、試料101を作製した。
【0091】
《試料102〜104の作製》
上記試料101の作製において、感光性層塗布液1の代わりに感光性層塗布液2から4を用いて、試料102〜104を作製した。
【0092】
《熱現像感光材料の評価》
上記作製した試料101〜104について、下記の方法に従って各種評価を行った。
【0093】
〔露光及び現像処理〕
上記作製した各試料の感光性層塗設面側から、光学楔を介して高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機により、レーザ走査による露光を施した。この際に、試料の露光面と露光レーザ光の角度を75°として画像を形成した。この場合、当該角度を90°とした場合に比べ、ムラが少なく、かつ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得られた。
【0094】
その後、ヒートドラムと冷却ゾーンを有する自動現像機を用いて、試料の保護層とドラム表面が接触するようにして現像を行った。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0095】
〔感度、カブリ濃度及び最高濃度の測定〕
得られたウェッジ階調からなる銀画像の濃度を、濃度計により測定し、縦軸が銀画像濃度(D)、横軸が露光量(E)の対数(LogE)からなる特性曲線を作製した。
【0096】
この特性曲線において、最小濃度(カブリ濃度)よりも1.0高い濃度を与えるに要する露光量の比の逆数を感度と定義して、これを求めた。また、最小濃度(カブリ濃度)と最高濃度を求めた。なお、感度及び最高濃度は、試料101の感度及び最高濃度を100とした相対値で、表3に示した。
【0097】
〔塗布膜中での分散性評価〕
各塗布試料につき、前記の方法により、感光材料の露光方向から計測される粒径が0.005μm以上0.1μm以下である感光性ハロゲン化銀粒子の分散度について下記の透過型電子顕微鏡(以下、TEMと称す)画像にて目視評価を行った。
【0098】
即ち、ダイヤモンドナイフを用いて厚さ0.1乃至0.2μmの超薄切片を作製し、この超薄切片を、銅メッシュに支持し、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移したのち、液体窒素により−130℃以下に冷却しながら、TEMにより倍率として5,000乃至40,000倍にて明視野像を観察しCCDカメラに素早く記録した。カーボン膜としては極薄いコロジオン有機膜を、TEMの加速電圧としては、150kVとし記録されたTEM画像を目視観察し分散性評価を行い、表3に示した。
【0099】
〔湿度依存性の評価〕
試料101〜104について、23℃80%RH環境下で3日間調湿した後に、上記と同様の方法で露光および現像を行った。そのときのカブリ濃度を測定し、湿度依存性の評価とし、表3に示した。
【0100】
【表3】

【0101】
表3の結果より明らかなように、本発明の熱現像感光材料は、比較例に比べ、感度及び最高濃度が同等以上でありながらカブリが低く、さらに湿度影響の少ない、診断画像として適切な出力画像が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性分散剤を保護コロイドとして分散した微粒子の親水性微粒子分散液に、該親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤を添加して疎水性保護コロイド微粒子分散液とすることを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【請求項3】
前記微粒子の平均球相当径が1nm〜1000nmであることを特徴とする請求項2に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【請求項4】
前記親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤の官能基が、カルボキシル基、またはアミド基であることを特徴とする請求項2又は3に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【請求項5】
前記親水性分散剤の親水性基とイオン結合可能な官能基を有する分散剤の質量平均分子量が1万〜20万であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液を、更にメチルエチルケトン溶媒中に分散することを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【請求項8】
前記微粒子がハロゲン化銀であることを特徴とする請求項2〜5又は7のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液。
【請求項9】
請求項2〜5又は7、8のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【請求項10】
支持体上に感光乳剤、非感光性銀塩及びバインダーを含有する層を有する熱現像感光材料において、該層が請求項2〜5又は7、8のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【請求項11】
感光乳剤が、請求項2〜5又は7、8のいずれか1項に記載の疎水性保護コロイド微粒子分散液を非感光性銀塩粒子形成後に添加して作製した感光乳剤であることを特徴とする請求項10に記載の熱現像感光材料。

【公開番号】特開2006−159184(P2006−159184A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320791(P2005−320791)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】