説明

疎水性助剤の送達のための肉眼用装置

疎水性助剤を装用者の目に送達する能力を有する、ソフトハイドロゲルコンタクトレンズ、特にシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ。その疎水性助剤としては、非限定的に、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリピド、スフィンゴ糖脂質、リン脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、C12−C28鎖長を有する炭化水素、鉱物油、シリコーン油、又はそれらの混合物が挙げられる。それは、装用中にソフトハイドロゲルコンタクトレンズから装用者の目に放出されることで、涙膜脂質層を強化及び安定化して目の乾燥を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装用中に1種以上の疎水性助剤(hydrophobic comfort agents)を徐々に放出することが可能な肉眼用装置、詳細にはコンタクトレンズに関する。本発明は、本発明の肉眼用装置を製造する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
涙膜は、通常、三層構造(脂質層、中間水層、及びムチン層)を含む。脂質層は、最外層であり、マイボーム腺の分泌物から誘導される。それは、二層(水性ムチン相に隣接する薄い極性相、ならびに極性相及び空気界面の両方に会合している厚い非極性相)で構成されているらしい(McCully and Shine, Tr. Am. Soc. Vol. XCV, 1997)。中間水層は、大及び小涙腺(major and minor lacrimal glands)により提供され、水溶性物質を含む。最も内側のムチン相は、糖タンパク質であるムチンで構成され、角膜及び結膜上皮細胞を覆っている。上皮細胞膜は、リポタンパク質で構成されており、そのため一般に疎水性である。涙膜成分のいずれかが欠けると、涙膜が破壊されて、角膜及び結膜上皮にドライスポットが形成される。3種の成分(水層、ムチン層又は脂質層)のいずれかが欠けると、目が乾燥する場合がある。
【0003】
近年では、快適剤を送達することが可能なコンタクトレンズの開発に、多大な努力が払われてきた。例えば、米国特許第4,045,547号、同第4,042,552号、同第5,198,477号、同第5,219,965号、同第6,367,929号、同第6,822,016号及び同第7,279,507号、ならびに所有者が共通する(commonly owned)同時係属の米国特許出願公開第2006/0079598A1号及び同第2006/0251696A1号(それらの全体が本明細書に参考として援用される)には、浸出性湿潤剤を、コンタクトレンズを製造するためのレンズ配合剤に組み入れて、コンタクトレンズの表面親水性及び/又は装用快適性を改善しうることが開示されている。
【0004】
別の例では、所有者が共通する同時係属の米国特許出願公開第2008/0124376A1号(それらの全体が本明細書に参考として援用される)に開示されたとおり、コンタクトレンズに1種以上の生物活性剤を組入れており、それの放出は、装置が涙と接触した時に、目から産生される1種以上の涙液成分により惹起される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、類膜脂質層の構成物質などであり、涙膜脂質層を強化及び安定化して、目の乾燥を軽減しうる疎水性助剤を送達することが可能なコンタクトレンズは存在しない。それゆえ、長期間にわたり持続的な様式で疎水性助剤を送達することが可能なコンタクトレンズが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、一態様において、ポリマーマトリックスと、そのポリマーマトリックスに共有結合しておらずその内部に分配されている疎水性助剤と、を含むソフトハイドロゲルコンタクトレンズを提供し、そのポリマーマトリックスは、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導された疎水性単位と、親水性モノマー又はマクロマーから誘導された親水性単位と、を含み、そのソフトコンタクトレンズは、装用中に疎水性助剤をポリマーマトリックスから装用者の目に徐々に放出する能力を特徴とする。
【0007】
本発明は、別の態様において、パッケージ溶液及びソフトハイドロゲルコンタクトレンズを含む密閉容器を含む肉眼用製品を提供し、そのハイドロゲルコンタクトレンズは、ポリマーマトリックスと、そのポリマーマトリックスに共有結合しておらずその内部に分配されている疎水性助剤と、を含み、そのポリマーマトリックスは、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導された疎水性単位と、親水性モノマー又はマクロマーから誘導された親水性単位と、を含み、そのソフトコンタクトレンズは、装用中に疎水性助剤をポリマーマトリックスから装用者の目に徐々に放出する能力を特徴とする。
【0008】
本発明は、更なる態様において、コンタクトレンズの装用中に疎水性助剤を徐々に送達することが可能なソフトコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明の方法は、a)疎水性助剤及び水と混和性の有機溶媒を含む溶液に、ソフトハイドロゲルコンタクトレンズを浸漬する工程であって、そのソフトハイドロゲルコンタクトレンズが、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導された疎水性単位と、親水性モノマー又はマクロマーから誘導された親水性単位と、を含むポリマーマトリックスを含み、その有機溶媒が、ソフトハイドロゲルコンタクトレンズを膨潤させて、疎水性助剤をソフトハイドロゲルコンタクトレンズのポリマーマトリックスに組み込ませる工程と;b)内部に分配された快適剤を含むソフトハイドロゲルコンタクトレンズを、水又は緩衝された水溶液で水和させる工程と;c)水和させたソフトハイドロゲルコンタクトレンズを、レンズパッケージ溶液を含むレンズ容器内に入れて密閉する工程と、を含む。
【0009】
本発明は、更なる態様において、コンタクトレンズの装用中に疎水性助剤を徐々に送達することが可能なソフトコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明の方法は、a)第一の有機溶媒、化学線架橋性レンズ形成材料、及び疎水性助剤を含む流体プレポリマー組成物を得る工程であって、その化学線架橋性レンズ形成材料が、化学線架橋基を含み、そして熱又は化学線により重合してソフトコンタクトレンズのポリマーマトリックスを形成することができ、その化学線架橋性レンズ形成材料が、モノマー、マクロマー、及び/又はプレポリマーを含み、その疎水性助剤が、任意の化学線架橋性基を含まない工程と;b)一定量の流体プレポリマー組成物を、コンタクトレンズを製造するための金型に導入する工程と;c)化学線架橋性プレポリマーを金型内で重合して、ポリマーマトリックスに共有結合しておらず実質的に均一な様式でその内部に分配されている疎水性助剤を含むソフトコンタクトレズを形成させる工程と;d)得られたソフトコンタクトレンズを水又は水溶液で水和させて、第一の有機溶媒を水又はその水溶液と交換する工程と;e)パッケージ溶液を含む容器内に、水和させたソフトコンタクトレンズをパッケージする工程と;f)ソフトコンタクトレンズを容器内で滅菌する工程であって、滅菌されたソフトコンタクトレンズが、装用中に疎水性助剤を徐々に放出することが可能な工程と、を含むが、但し、その方法は、第二の有機溶媒を用いる任意の抽出工程を含まないこと条件とする。
【0010】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の目下好ましい実施態様の記述から明白となろう。詳細な記述は、単に本発明の例示であり、本発明の範囲を限定するものではなく、それは添付の特許請求の範囲及びその均等物により定義される。当業者には自明であろうが、開示の新規な概念の本質及び範囲を逸脱することなく、本発明の多くの変形及び改良を実行してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な記述
他に断りがない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に本明細書で用いられる命名法及び実験室手順は、周知であり、当該技術分野で一般に用いられている。当該技術分野及び様々な一般的参考文献の中で提供される方法など、従来の方法が、これらの手順に用いられる。用語が、単数形で示されている場合、本発明人は、その用語の複数も企図する。本明細書で用いられる命名法及び以下に記載される実験室手順は、周知のものであり、当該術分野で一般に用いられている。本開示全体をとおして用いられる以下の用語は、他に断りがない限り、以下の意味を有すると理解されたい。
【0012】
本明細書において用いられる「肉眼用装置」は、目又は目の周囲に接触して使用される、又はその周辺で使用されるコンタクトレンズ(ハード又はソフト)、眼内レンズ、角膜アンレー、他の肉眼用装置(例えば、ステント、緑内障シャントなど)を指す。
【0013】
「コンタクトレンズ」は、装用者の目の表面又は内部に設置しうる構造を指す。コンタクトレンズは、使用者の視野を修正、改善、又は変化させることができるが、そうである必要はない。コンタクトレンズは、当該技術分野で公知の、又はより近年に開発された任意の適切な材料のものであってもよく、そしてソフトレンズ、ハードレンズ、又はハイブリッドレンズであってもよい。「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ」は、シリコーンハイドロゲル材料を含むコンタクトレンズを指す。
【0014】
「ハイドロゲル」又は「ハイドロゲル材料」は、完全に水和されると、水を少なくとも10重量%吸収しうる高分子材料を指す。
【0015】
「シリコーンハイドロゲル」は、少なくとも1種のシリコーン含有モノマー、又は少なくとも1種のシリコーン含有マクロマー、又は少なくとも1種の架橋性シリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物の共重合により得られるシリコーン含有ハイドロゲルを指す。
【0016】
本明細書において用いられる「親水性」は、脂質よりも水と容易に会合する材料又はその部分を説明する。
【0017】
「モノマー」は、化学線により重合されうる低分子量化合物を意味する。低分子量は、典型的には、700ダルトン未満の平均分子量を意味する。本発明によれば、モノマーは、チオール基を2個含むビニルモノマー又は化合物であってもよい。チオール基を2個有する化合物は、ビニル基を有するモノマーとのチオール−エン・逐次ラジカル重合に関わり、ポリマーを形成することができる。逐次ラジカル重合は、所有者が共通する同時係属の米国特許出願第12/001562号(全体が本明細書に参考として援用されている)に記載されたとおり、コンタクトレンズを製造するのに用いることができる。
【0018】
「シリコーン含有モノマー」は、シリコーンを含み、そして化学線により架橋してポリマーを得ることができるモノマーを指す。
【0019】
本明細書で用いられる「ビニルモノマー」は、エチレン性不飽和基を有し、そして化学線又は熱により重合しうるモノマーを指す。
【0020】
用語「オレフィン性不飽和基」又は「エチレン性不飽和基」は、本明細書では広義で用いられ、>C=C<基を含む任意の基を包含するものとする。例示的なエチレン性不飽和基としては、非限定的に、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル、又は他のC=C含有基が挙げられる。
【0021】
本明細書で用いられるような、重合性の組成物、プレポリマー又は材料の硬化、架橋又は重合に関する「化学線により」は、硬化(例えば、架橋及び/又は重合)が、化学線照射、例えば、UV照射、電離放射線照射(例えば、γ線又はX線照射)、マイクロ波照射などにより実施されることを意味する。熱硬化法又は化学線硬化法は、当業者に周知である。
【0022】
本明細書において用いられる用語「流体」は、材料が液体のように流動可能であることを示す。
【0023】
「親水性モノマー」は、化学線により重合して水溶性のポリマーを形成しうるか、又は水を少なくとも10重量%吸収しうるモノマーを指す。
【0024】
「疎水性モノマー」は、化学線により重合して水に不溶性のポリマーを形成しえて、水を10重量%未満吸収しうるモノマーを指す。
【0025】
「マクロマー」は、化学線により重合及び/又は架橋しうる中及び高分子量化合物を指す。中及び高分子量は、典型的には、700ダルトンを超える平均分子量を意味する。本発明によれば、マクロマーは、エチレン性不飽和基を1個以上又はチオール基を2個以上有し、フリーラジカル鎖成長重合又はチオール−エン・逐次ラジカル重合のどちらかに関わりうるマクロマーであってもよい。好ましくはマクロマーは、エチレン性不飽和基を含み、そして化学線又は熱により重合することができる。「シロキサン含有マクロマー」は、シリコーンを含み、そして化学線により架橋しうるマクロマーである。
【0026】
「プレポリマー」は、複数の化学線架橋性基を含み、そして化学線により硬化(例えば、架橋)して、出発ポリマーよりもかなり高い分子量を有する架橋ポリマーを得ることができる出発ポリマーを指す。
【0027】
「化学線架橋性基」は、エチレン性不飽和基又はチオール基を指す。
【0028】
「シリコーン含有プレポリマー」は、シリコーンを含み、そして化学線により架橋して出発ポリマーよりもかなり高い分子量を有する架橋ポリマーを得ることができるプレポリマーを指す。
【0029】
本明細書で用いられる高分子材料(モノマー又はマクロマー材料を含む)の「分子量」は、他に明記されない限り、又は検査条件が他に示されない限り、数平均分子量を指す。
【0030】
「ポリマー」は、モノマー1種以上を重合することにより形成される材料を意味する。
【0031】
本明細書で用いられる用語「複数」は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3を指す。
【0032】
「光開始剤」は、光の使用によりラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。適切な光開始剤としては、非限定的に、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocur(登録商標)類及びIrgacure(登録商標)類、好ましくは、Darocur(登録商標)1173及びIrgacure(登録商標)2959が挙げられる。
【0033】
「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用によりラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。適切な熱開始剤の例としては、非限定的に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)などが挙げられる。好ましくは熱開始剤は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。
【0034】
「化学線照射の空間的限定」は、輻射線の形態のエネルギー照射を、例えば、マスク、スクリーン又はその組合わせにより指図して、空間的に限定された手法で、明確な周辺境界を有する領域に衝突させる行為又は方法を指す。例えば、UV照射の空間的限定は、米国特許第6,627,124号(その全体が本明細書に参考として援用されている)の図1〜9に概略的に示されたとおり、UV不透過領域(マスク領域)に囲まれた透明又は開放領域(非マスク領域)を有するマスク又はスクリーンを用いることにより実現することができる。非マスク領域は、非マスク領域での明確な周辺境界を有する。架橋のために用いられるエネルギーは、照射エネルギー、特にUV照射、γ線照射、電子照射又は熱照射であり、好ましくは照射エネルギーは、一方では良好な制限を実現するため、そして他方ではエネルギーの十分な使用のために、実質的に平行な光線の形態である。
【0035】
レンズに関する「可視性着色(visibility tinting)」は、レンズ貯蔵、殺菌又は洗浄容器内の透明溶液中のレンズを、ユーザが容易に位置づけできるように、レンズを染色(又は着色)することを意味する。染色剤及び/又は顔料をレンズの可視性着色に用いうることは、当該技術分野で周知である。
【0036】
「染色剤」は、溶媒に可溶性であり、色を付けるために用いられる物質を意味する。染色剤は、典型的には、半透明であり光を吸収するが散乱させない。任意の適切な生体適合性染色剤を、本発明に用いることができる。
【0037】
「顔料」は、不溶性の液体に懸濁されている粉末物質を意味する。顔料は、蛍光顔料、リン光性顔料、パールエッセント顔料、又は従来の顔料であってもよい。任意の適切な顔料を用いてもよいが、顔料が耐熱性、非毒性、及び水性溶液に不溶性であることが、目下好ましい。
【0038】
本明細書で用いられる「表面改質」は、物品形成の前又は後に、表面処理加工(又は表面改質加工)で処理して、(1)物品の表面にコーティングを施していること、(2)物品の表面に化学物質を吸着させていること、(3)物品の表面の化学基の化学的性質(例えば、静電荷)を変化させていること、又は(4)物品の表面特性を他の方法で改質していること、を意味する。例示的な表面処理加工としては、非限定的に、電離気体を物品の表面に塗布するプラズマ加工(例えば、全体が本明細書に参考として援用されている米国特許第4,312,575号及び同第4,632,844号参照);プラズマ以外のエネルギー(例えば、静電気、放射線又は他のエネルギー源)による表面処理;化学処理;物品の表面への親水性モノマー又はマクロマーのグラフト化;米国特許第6,719,929号(全体が本明細書に参考として援用されている)に開示されたモールドトランスファコーティング加工;米国特許第4,045,547号、同第4,042,552号、同第5,198,477号、同第5,219,965号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、及び同第7,279,507号(それらの全体が本明細書に参考として援用されている)で提案されたコンタクトレンズを製造するためのレンズ配合物への湿潤剤の組み入れ(即ち、重合前の表面処理);PCT特許出願公開WO2007/146137号(その全体が本明細書に参考として援用されている)で開示されている、強化されたモールドトランスファコーティング;ならびに米国特許第6,451,871号、同第6,719,929号、同第6,793,973号、同第6,811,805号、同第6,896,926号(それらの全体が本明細書に参考として援用されている)に記載された方法により得られる交互積層コーティング(LbLコーティング)が挙げられる。
【0039】
例示的なプラズマガス及び加工条件は、米国特許第4,312,575号及び同第4,632,844号に記載されている。プラズマガスは、好ましくは低級アルカンと、窒素、酸素又は不活性ガスとの混合物である。
【0040】
本明細書で用いられる「LbLコーティング」は、コンタクトレンズ又は金型半部に共有結合しておらず、そしてレンズ又は金型半部上でのポリイオン(又は帯電)及び/又は非帯電材料の交互積層(LbL)付着をとおして得られるコーティングを指す。LbLコーティングは、1種以上の層で構成させることができる。
【0041】
本明細書で用いられる「ポリイオン材料」は、複数の帯電した基又は電離可能な基を有する高分子材料、例えば、高分子電解質、p−及びn−型ドープ電導性ポリマーを指す。ポリイオン材料は、ポリカチオン(正電荷を有する)材料及びポリアニオン(負電荷を有する)材料の両方を含む。
【0042】
コンタクトレンズ又は金型半部上でのLbLコーティングの形成は、例えば、米国特許第6,451,871号、同第6,719,929号、同第6,793,973号、同第6,811,805号、同第6,896,926号(その全体が本明細書に参考として援用されている)に記載された多数の方法で果たしてもよい。
【0043】
シリコーンハイドロゲル材料又はソフトコンタクトレンズに関する「硬化後表面処理」は、金型内でハイドロゲル材料又はコンタクトレンズを形成(硬化)させた後に実施される表面処理加工を意味する。
【0044】
シリコーンハイドロゲル材料又はソフトコンタクトレンズに関する「親水性表面」は、シリコーンハイドロゲル材料又はコンタクトレンズが、約90°以下、好ましくは約80°以下、より好ましくは約70°以下、より好ましくは約60°以下の平均水接触角を有することを特徴とする表面親水性を有することを意味する。
【0045】
「平均接触角」は、少なくとも3枚の各コンタクトレンズの測定値を平均することにより得られる水接触角(セシルドロップ法により測定される前進角)を指す。
【0046】
本明細書で用いられる「抗菌剤」は、当該技術分野で公知のとおり、微生物の増殖を減少又は除去又は阻害することができる化学物質を指す。
【0047】
「抗菌性金属」は、そのイオンが抗菌作用を有し、そして生体適合性がある金属である。好ましい抗菌性金属としては、Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Sn、Cu、Sb、Bi及びZnが挙げられ、Agが最も好ましい。
【0048】
「抗菌性金属含有ナノ粒子」は、1マイクロメータ未満の寸法を有していて、1種以上の酸化状態で存在する抗菌性金属を少なくとも1種含む粒子を指す。
【0049】
「抗菌性金属ナノ粒子」は、実質的に抗菌性金属で生成されていて、1マイクロメータ未満の寸法を有する粒子を指す。抗菌性金属ナノ粒子中の抗菌性金属は、1種以上の酸化状態で存在することができる。例えば、銀含有ナノ粒子は、1種以上の酸化状態の銀、例えば、Ag、Ag1+、及びAg2+を含むことができる。
【0050】
本明細書で用いられる、レンズの「酸素伝達率」は、酸素が特定の肉眼用レンズを透過する割合である。酸素伝達率Dk/tは、従来からバレル/mmの単位で表されるが、ここで、tは、測定された領域での材料の平均の厚さ(mm単位)であり、そして「バレル/mm」は、
[(酸素cm)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−9
と定義される。
【0051】
レンズ材料の固有「酸素透過性」Dkは、レンズの厚さに依存しない。固有酸素透過性は、酸素が材料を透過する割合である。酸素透過性は、従来からバレルの単位で表され、ここで、「バレル」は、
[(酸素cm)(mm)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−10
と定義される。これらは、当該技術分野で一般に用いられる単位である。つまり当該技術分野での使用と一致させるために、単位「バレル」は、先に定義された意味を有する。例えば、90バレルのDk(酸素透過性バレル)及び90ミクロン(0.090mm)の厚さを有するレンズは、100バレル/mmのDk/t(酸素伝達率バレル/mm)を有することになる。本発明によれば、材料又はコンタクトレンズに関する高度の酸素透過性は、100ミクロン厚の試料(フィルム又はレンズ)で測定すると、少なくとも40バレル以上の見かけ上の酸素透過性を特徴とする。
【0052】
レンズへの「イオン透過性」は、イオノフラックス拡散係数Dと相関し、それは、以下のとおりFickの法則を適用することにより測定される:
D=−n’/(A×dc/dx)
(式中、n’=イオン輸送率[mol/分];A=暴露されたレンズの面積[mm2];D=イオノフラックス拡散係数[mm2/分];dc=濃度差[mol/L];dx=レンズの厚さ[mm])。約1.5×10−6mm/分を超えるイオノフラックス拡散係数Dが好ましく、約2.6×10−6mm/分を超えることがより好ましく、そして約6.4×10−6mm/分を超えることが最も好ましい。
【0053】
涙液の良好な交換を確保し、最終的には、角膜の良好な健康を確保するために、レンズの眼球上での運動が必要であることは公知である。イオン透過性は、水の透過性に正比例すると考えられるため、イオン透過性は、眼球上での運動の予測変数の一つである。
【0054】
本発明は、一般に、装用者の目に疎水性助剤を送達する可能性を有するソフトコンタクトレンズ、特にシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに向けられる。装用中にソフトコンタクトレンズから送達される疎水性助剤(非限定的に、脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、C16−C36長の炭化水素、シリコーン油、及び鉱物油など)が、涙膜脂質層を強化及び安定化することができ、それにより目の乾燥を軽減することができる。本発明は、一部は、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが、多量の疎水性助剤1種以上を閉じ込めることができる顕微鏡スケールの疎水性領域、又は疎水性成分を有しうる、という発見に基づいている。本発明のコンタクトレンズ中のそれらの疎水性助剤は、緩衝された水溶液を含むレンズ容器内へ放出し難い。しかし、装用者の目に装用すると、それらの疎水性助剤を涙膜に放出することができ、それが涙膜脂質層の構築材料になると考えられる。涙膜脂質層の主たる機能は、水層の蒸発を遅延させることであることも考えられる。安定化された脂質層を有することにより、水の蒸発を減少させることができ、そして目の乾燥症状を軽減することができる。
【0055】
一態様において、本発明は、ポリマーマトリックスと、そのポリマーマトリックスに共有結合しておらずその内部に分配されている疎水性助剤と、を含むソフトハイドロゲルコンタクトレンズを提供し、そのポリマーマトリックスは、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導された疎水性単位と、親水性モノマー又はマクロマーから誘導された親水性単位と、を含み、そのソフトコンタクトレンズは、装用中に疎水性助剤をポリマーマトリックスから装用者の目に徐々に放出する能力を特徴とする。
【0056】
ポリマーマトリックス内のポリマー単位(例えば、疎水性又は親水性単位)に関する用語「から誘導された」は、ポリマー単位が重合反応において特定のモノマーから得られることを意味する。
【0057】
本発明によれば、疎水性助剤は、涙膜脂質層を強化及び/又は安定化しうる化合物、又は化合物の混合物である。疎水性助剤の例としては、非限定的に、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリピド、スフィンゴ糖脂質、脂肪アルコール、C12−C28鎖長を有する炭化水素、ワックスエステル、脂肪酸、鉱物油、及びシリコーン油が挙げられる。
【0058】
例示的なリン脂質としては、非限定的に、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リソレシチン、リソホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスファート、ホスファチジルコリン、ジパリミトイルホスファチジルコリン、N−(カルボニルメトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩(L−PEG−2000)及びそれらの混合物が挙げられる。好ましいリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物である。
【0059】
糖脂質は、炭水化物が結合した脂質である。例示的な糖脂質としては、非限定的に、グリセロ糖脂質、グリコスフィンゴリピド、ガングリオシドが挙げられる。例示的なグリセロ糖脂質としては、非限定的に、ガラクトリピド、スルホリピド、及びそれらの混合物が挙げられる。グリコスフィンゴリピドは、1−ヒドロキシル位のβ−グリコシド結合に連結した糖残基を1個以上有するセラミドである。ガングリオシドは、少なくとも3種の糖を有し、その1種は、シアル酸でなければならない。
【0060】
例示的なスフィンゴリピドとしては、非限定的に、スフィンゴミエリンが挙げられる。スフィンゴミエリンは、セラミドの1−ヒドロキシ基にエステル化されたホスホリルコリン又はホスホロエタノールアミン分子を有する。
【0061】
例示的な脂肪アルコールとしては、非限定的に、カプリルアルコール(1−オクタノール)、2−エチルヘキサノール、ペラルゴンアルコール(1−ノナノール)、カプリンアルコール(capric-alcohol)(1−デカノール、デシルアルコール)、1−ドデカノール(ラウリルアルコール)、ミリスチルアルコール(1−テトラデカノール)、セチルアルコール(1−ヘキサデカノール)、パルミトレイルアルコール(シス−9−ヘキサデセン−1−オール)、ステアリルアルコール(1−オクタデカノール)、イソステアリルアルコール(16−メチルヘプタデカン−1−オール)、エライジルアルコール(9E−オクタデセン−1−オール)、オレイルアルコール(シス−9−オクタデセン−1−オール)、リノレイルアルコール(9Z,12Z−オクタデカジエン−1−オール)、エライドリノレイルアルコール(9E,12E−オクタデカジエン−1−オール)、リノレニルアルコール(9Z、12Z,15Z−オクタデカトリエン−1−オール)、エライドリノレニルアルコール(9E,12E,15E−オクタデカトリエン−1−オール)、リシノレイルアルコール(12−ヒドロキシ−9−オクタデセン−1−オール)、アラキジルアルコール(1−エイコサノール)、ベヘニルアルコール(1−ドコサノール)、エルシルアルコール(シス−13−ドコセン−1−オール)、リグノセリルアルコール(1−テトラコサノール)、セリルアルコール(1−ヘキサコサノール)、モンタニルアルコール、クルイチルアルコール(1−オクタコサノール)、ミリシルアルコール、メリシルアルコール(1−トリアコンタノール)、ゲジルアルコール(geddyl alcohol)(1−テトラトリアコンタノール)、セテアリルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0062】
脂肪酸は、炭素が8〜14個の脂肪族テールを有する中鎖脂肪酸又は炭素が少なくとも16個の脂肪族テールを有する長鎖脂肪酸であってもよい。好ましい脂肪酸は、長鎖脂肪酸である。例示的な脂肪酸としては、非限定的に、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン鎖、ミリスチン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、それらの組合せが挙げられる。
【0063】
モノグリセリドは、エステル結合をとおしてグリセロール分子に共有結合している脂肪酸鎖1個からなるグリセリドであり、広義では、グリセロール部分でのエステル結合の位置に応じて、1−モノアシルグリセロール及び2−モノアシルグリセロールの2群に分けることができる。ジグリセリドは、エステル結合をとおしてグリセロール分子に共有結合している脂肪酸鎖2個からなるグリセリドである。トリグリセリドは、グリセロールが脂肪酸3個でエステル化されているグリセリドである。
【0064】
本発明の好ましい実施態様において、疎水性助剤は、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリピド、スフィンゴ糖脂質、炭素原子を8〜36個有する脂肪酸、炭素原子を8〜36個有する脂肪アルコール、C12−C28鎖長を有する炭化水素、又はそれらの混合物である。
【0065】
リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリピド、スフィンゴ糖脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、及びC12−C28鎖長を有する炭化水素が、不飽和炭素−炭素結合を含みうることを理解しなければならない。
【0066】
本発明によれば、ソフトコンタクトレンズは、当業者に公知のレンズ形成材料から製造され、ソフトコンタクトレンズのポリマーマトリックスは、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導されるポリマー単位を含む。
【0067】
任意のレンズ形成材料を、本発明で用いることができる。コンタクトレンズの製作に適したレンズ形成材料は、多数の発行された米国特許に例示されており、当業者に精通されている。好ましいレンズ形成材料は、ハイドロゲルを形成することができる。レンズ形成材料は、親水性モノマー、疎水性モノマー、マクロマー、プレポリマー、分子量が1000ダルトン未満の架橋剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される物質を少なくとも1種含むことができる。レンズ形成材料は、更に、他の成分、例えば、開始剤(例えば、光開始剤又は熱開始剤)、可視性着色剤、UV遮断剤、光増感剤などを含むことができる。好ましくは、本発明で用いられるシリコーンハイドロゲルレンズ形成材料は、シリコーン含有マクロマー又はプレポリマーを含む。
【0068】
好ましくは、シリコーンハイドロゲルレンズ形成材料が、本発明で用いられる。シリコーンハイドロゲルレンズ形成材料は、少なくとも1種のシリコーン含有モノマー、少なくとも1種のシリコーン含有マクロマー、少なくとも1種のシリコーン含有プレポリマー、又はそれらの混合物を含む。あるいはシリコーンハイドロゲルレンズ形成材料は、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造するための任意のレンズ配合剤であってもよい。例示的なレンズ配合剤としては、非限定的に、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、エタフィルコンA、ゲンフィルコンA、レネフィルコンA、ポリマコン、アクアフィルコンA、バラフィルコン、セノフィルコンA、コムフィルコンAなどの配合剤が挙げられる。
【0069】
コンタクトレンズを製造するのに適した任意のモノマーを、本発明で用いることができる。好ましくは、ビニルモノマーが、本発明で用いられる。
【0070】
シリコーン含有モノマーの例としては、非限定的に、3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン;ビス(メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;トリストリメチルシリルオキシシリルプロピルメタクリラート(TRIS);N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド(TSMAA);N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド(TSAA);(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン;(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン;3−メタクリルオキシ−2−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン;N−2−メタクリルオキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバマート;シリコーン含有ビニルカルボナート又はビニルカルバマートモノマー、例えば、1,3−ビス[4−ビニルオキシカルボニルオキシ)ブタ−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン、3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカルボナート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボナート、t−ブチルジメチルシロキシエチルビニルカルボナート、トリメチルシリルエチルビニルカルボナート、及びトリメチルシリルメチルビニルカルボナート;様々な分子量のモノメタクリル化又はモノアクリル化ポリジメチルシロキサン(例えば、モノ−3−メタクリルオキシプロピル末端、モノブチル末端のポリジメチルシロキサン又はモノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端、モノブチル末端のポリジメチルシロキサン);様々な分子量のジメタクリル化又はジアクリル化ポリジメチルシロキサン;ビニル末端のポリジメチルシロキサン;様々な分子量のビニル末端のポリジメチルシロキサン;メタクリルアミド末端のポリジメチルシロキサン;アクリルアミド末端のポリジメチルシロキサン;アクリラート末端のポリジメチルシロキサン;メタクリラート末端のポリジメチルシロキサン;ビス−3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン;N,N,N’,N’−テトラキス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−α,ω−ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン;ポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリル酸モノマー;米国特許第5,760,100号(その全体が本明細書に参考として援用されている)に記載されているマクロマーA、マクロマーB、マクロマーC、及びマクロマーDからなる群から選択されるシロキサン含有マクロマー;グリシジルメタクリラートとアミノ官能基ポリジメチルシロキサンとの反応生成物;ヒドロキシル官能化シロキサン含有モノマー又はマクロマー;米国特許第6,762,264号(その全体が本明細書に参考として援用されている)に開示されているシロキサン含有マクロマーが挙げられる。ポリジメチルシロキサン及びポリアルキレンオキシドからなるジ及びトリブロックマクロマーも、利用性を有する可能性がある。例えば、メタクリラートエンドキャップのポリエチレンオキシド・ブロック・ポリジメチルシロキサン・ブロック・ポリエチレンオキシドを用いて、酸素透過性を高めてもよい。適切な一官能基ヒドロキシル官能化シロキサン含有モノマー及び適切な多官能基ヒドロキシル官能化シロキサン含有モノマーは、Gelest, Inc, Morrisville, PAから市販されている。
【0071】
ハイドロゲルコンタクトレンズを製造する際に用いられうるほとんど任意の親水性モノマーを、本発明で用いることができる。とりわけ好ましい親水性モノマーは、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、トリメチルアンモニウム2−ヒドロキシプロピルメタクリラート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリラート(DMAEMA)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、グリセロメタクリラート、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、アクリル酸、メタクリル酸、N−ビニルオキシカルボニル−L−アラニン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、及びN−ビニルカプロラクタムである。
【0072】
コンタクトレンズを製造する際に用いられうるほとんど任意の疎水性モノマーを、本発明で用いることができる。疎水性モノマーの例としては、非限定的に、シリコーン含有ビニルモノマー、C−C18アルキルアクリラート及び−メタクリラート、C−C18アルキルアクリルアミド及び−メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニル−C−C18アルカノアート、C−C18アルケン、C−C18ハロアルケン、スチレン、C−Cアルキルスチレン、アルキル部分が炭素原子を1〜6個有するビニルアルキルエーテル、C−C10ペルフルオロアルキル−アクリラート及び−メタクリラート又は対応する部分フッ素化されたアクリラート及びメタクリラート、C−C12ぺルフルオロアルキル−エチル−チオカルボニルアミノエチル−アクリラート及び−メタクリラート、ならびにアクリルオキシ及びメタクリルオキシ−アルキルシロキサンが挙げられる。好ましい疎水性モノマーとしては、非限定的に、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、イソプロピルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、tert−ブチルメタクリラート、イソボルニルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、プロピルメタクリラート、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート、ビニルブチラート、ビニルバレラート、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ぺルフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリラート、イソボルニルメタクリラート、トリフルオロエチルメタクリラート、ヘキサフルオロ−イソプロピルメタクリラート、及びヘキサフルオロブチルメタクリラートが挙げられる。
【0073】
任意の化学線架橋性プレポリマーを、本発明で用いることができる。化学線架橋性プレポリマーの例としては、非限定に、米国特許第5,583,163号及び同第6,303,687号(全体が参考として援用されている)に記載された水溶性架橋性ポリ(ビニルアルコール)プレポリマー;米国特許出願公開第2004/0082680号(全体が本明細書に参考として援用されている)に記載された水溶性ビニル基末端ポリウレタンプレポリマー;米国特許第5,849,841号(全体が参考として援用されている)に開示されたポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン又はポリビニルアミンの誘導体;米国特許第6,479,587号及び米国特許出願公開第2005/0113549号(全体が本明細書に参考として援用されている)に記載されている水溶性架橋性ポリ尿素プレポリマー;架橋性ポリアクリルアミド;欧州特許第655,470号及び米国特許第5,712,356号に開示されたビニルラクタムとMMAとコモノマーとの架橋性統計共重合体;欧州特許第712,867号及び米国特許第5,665,840号に開示されたビニルラクタムとビニルアセタートとビニルアルコールとの架橋性共重合体;欧州特許第932,635号及び米国特許第6,492,478号に開示された架橋性側鎖を有するポリエーテル−ポリエステル共重合体;欧州特許第958,315号及び米国特許第6,165,408号に開示された分枝状ポリアルキレングリコールウレタンプレポリマー;欧州特許第961,941号及び米国特許第6,221,303号に開示されたポリアルキレングリコールテトラ(メタ)アクリラートプレポリマー;国際特許出願WO2000/31150号及び米国特許第6,472,489号に開示された架橋性ポリアリルアミングルコノラクトンプレポリマー、ならびに化学線架橋性シリコーン含有プレポリマーが挙げられる。
【0074】
任意の適切な化学線架橋性シリコーン含有プレポリマーを、本発明で用いることができる。好ましくは、シリコーン含有プレポリマーは、親水性セグメント及び疎水性セグメントを含む。シリコーン含有プレポリマーの例は、所有者が共通する米国特許第6,039,913号、同第7,091,283号、同第7,268,189号及び同第7,238,750号ならびに米国特許出願第09/525,158号、同第11/825,961号、同第12/001,562号、同第12/001,521号、同第12/077,773号、同第12/077,772号(全体が本明細書に参考として援用されている)に記載されたものである。
【0075】
レンズ形成材料は、1種以上の架橋剤(即ち、アクリル基を2個以上又はチオールもしくはエン含有基を3個以上有し、分子量が700ダルトン未満の化合物)を含むことができる。好ましいビニル架橋剤の例としては、非限定的に、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、エチレングリコールジメタクリラート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート(TEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリラート(TrEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、トリアリルイソシアヌラート、エチレンジアミンジメチルアクリルアミド、グリセロールジメタクリラート、及びそれらの組合わせが挙げられる。
【0076】
本発明によれば、レンズ形成材料は、約80℃未満の温度で、溶液又は無溶媒液又は融解物であってもよい。当業者は、シリコーンハイドロゲルレンズ形成材料を製造する方法について周知であろう。
【0077】
例えば、レンズ形成材料を、当業者に公知の任意の適切な溶媒に溶解することにより、溶液を調製することができる。適切な溶媒の例としては、非限定的に、水、アルコール、例えばC−C14アルカノール(好ましい例:エタノール、メタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、2−ブタノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、エキソノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−エチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール、2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、又は3−エチル−3−ペンタノール)、カルボン酸アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、二極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン)、ケトン(例えば、アセトン、ブタノン、又はシクロヘキサノン)、炭化水素(例えば、トルエン、エーテル、THF、ジメトキシエタン又はジオキサン)、及びハロゲン化炭化水素(例えば、トリクロロエタン)、水とアルコールとの混合物、水と1種以上の有機溶媒との混合物、ならびに2種以上の有機溶媒の混合物が挙げられる。
【0078】
レンズ形成材料が、当業者に公知の様々な成分、例えば、重合開始剤(例えば、光開始剤又は熱開始剤)、ビジビリディーティンティング剤(例えば、染色剤、顔料又はそれらの混合物)、UV遮断(吸収)剤、光増感剤、阻害剤、抗菌剤(例えば、好ましくは銀ナノ粒子、又は安定化銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性の滑剤、充填剤などを含みうることも、理解しなければならない。
【0079】
これらの抗菌剤(例えば、好ましくは銀ナノ粒子、又は安定化銀ナノ粒子)を得られるコンタクトレンズに組み入れることで、得られるコンタクトレンズに抗菌性を付与しなければならない。
【0080】
「浸出性湿潤剤」は、得られるコンタクトレンズのポリマーマトリックスに共有結合しておらず、代わりに、得られるレンズのポリマーマトリックス内に物理的に捕捉されている湿潤材料を説明するものとする。任意の非架橋性親水性ポリマーを、本発明の浸出性湿潤剤として用いることができる。例示的な非架橋性親水性ポリマーとしては、非限定的に、ポリビニルアルコール(PVA);ポリエチレンオキシド;ポリエチレン−ポリプロピレン・ブロック共重合体;ポリアミド;ポリイミド;ポリラクトン;N−ビニルピロリドンのホモポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、PVP);N−ビニルピロリドンと先に記載された1種以上の親水性ビニルモノマーとの共重合体;アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー;アクリルアミド又はメタクリルアミドと先に記載された1種以上の親水性ビニルモノマーとの共重合体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、又はN−ビニル−N−メチルアセトアミドのホモポリマー;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、又はN−ビニル−N−メチルアセトアミドと先に記載された1種以上の親水性ビニルモノマーとの共重合体、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0081】
非架橋性親水性ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは、20,000〜500,000、より好ましくは30,000〜100,000、更により好ましくは35,000〜70,000である。
【0082】
疎水性助剤と浸出性湿潤剤との組合せは、涙膜の水層及び脂質層の両方に働きかけることにより、より大きな利益をもたらす可能性がある。
【0083】
開始剤は、例えば、重合の技術分野のそのような使用で周知の材料から選択されるが、重合反応を促進するため、そして/又は重合反応の速度を上昇させるために、レンズ形成材料に含まれていてもよい。開始剤は、重合反応を開始しうる化学剤である。開始剤は、光開始剤又は熱開始剤であってもよい。
【0084】
光開始剤は、光の使用によりフリーラジカル重合及び/又は架橋を開始することができる。適切な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンならびにDarocur及びIrgacure類、好ましくはDarocur1173(登録商標)及びDarocur2959(登録商標)である。ベンゾイルホスフィン開始剤の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド;及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。例えば、マクロマーに組み入れることができる、又は特別なモノマーとして用いることができる反応性光開始剤も、適している。反応性光開始剤の例は、全体が本明細書に参考として援用されている欧州特許第632,329号に開示されたものである。その後、重合を、化学線、例えば光、特に適切な波長のUV光により惹起することができる。したがって、スペクトル要件を、適宜、適切な感光剤の添加により、制御することができる。
【0085】
適切な熱開始剤の例としては、非限定的に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)などが挙げられる。好ましくは熱開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0086】
好ましい顔料の例としては、医療装置内での使用を承認され、FDAにより認可されている任意の色素、例えば、D&C Blue No.6、D&C Green No.6、D&C Violet No.2、カルバゾールバイオレット、特定の銅錯体、特定の酸化クロム、様々な酸化鉄、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、二酸化チタンなどが挙げられる。本発明で用いてもよい色素の列挙として、Marmiom DM Handbook of U. S. Colorantsを参照されたい。顔料のより好ましい実施態様(C.I.は、色インデックス番号である)としては、非限定的に、青色では、フタロシアニンブルー(顔料青15:3、C.I.74160)、コバルトブルー(顔料青36、C.I.77343)、Toner cyan BG(Clariant)、Permajet blue B2G(Clariant);緑色では、フタロシアニングリーン(顔料緑7、C. I.74260)及び三二酸化クロム;黄色、赤色、茶色及び黒色では、様々な酸化鉄;PR122;PY154;紫色では、カルバゾールバイオレット;黒色では、Monolith black C-K(CIBA Specialty Chemicals)が挙げられる。
【0087】
本発明のコンタクトレンズは、好ましくは少なくとも約40バレル、より好ましくは少なくとも約60バレル、更により好ましくは少なくとも約80バレルの酸素透過性を有する。本発明によれば、酸素透過性は、実施例に記載された手順による見かけ上の(厚さ約100ミクロンの試料を検査した場合に直接測定される)酸素透過性である。
【0088】
本発明のコンタクトレンズは、約0.2MPa〜約2.0MPa、好ましくは約0.3MPa〜約1.5MPa、より好ましくは約0.4MPa〜約1.2MPa、更により好ましくは約0.5MPa〜約1.0MPaの弾性係数を有する。
【0089】
本発明のコンタクトレンズは、好ましくは少なくとも約1.5×10−6mm/分、より好ましくは少なくとも約2.6×10−6mm/分、更により好ましくは少なくとも約6.4×10−6mm/分のイオノフラックス拡散係数Dを有する。
【0090】
本発明のコンタクトレンズは、更に、完全に水和されると、好ましくは約15重量%〜約70重量%、より好ましくは約20重量%〜約55重量%の水分量を有する。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの水分量は、米国特許第5,849,811号に開示されたBulk Techniqueにより測定することができる。
【0091】
本発明のコンタクトレンズは、約90°以下、好ましくは約80°以下、より好ましくは約70°以下、より好ましくは約60°以下の平均水接触角を有することで特徴付けられる表面親水性を有する。そのようなレンズ表面親水性は、先に記載された表面改質法の一つを用いることにより実現することができる。
【0092】
別の態様において、本発明は、パッケージ溶液及びソフトハイドロゲルコンタクトレンズを含む密閉容器を含む肉眼用製品を提供し、そのハイドロゲルコンタクトレンズは、ポリマーマトリックスと、そのポリマーマトリックスに共有結合しておらずその内部に分配されている疎水性助剤と、を含み、そのポリマーマトリックスは、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導された疎水性単位と、親水性モノマー又はマクロマーから誘導された親水性単位と、を含み、そのハイドロゲルコンタクトレンズは、パッケージ溶液中に少なくとも約1ヶ月間貯蔵した後、少なくとも約4時間にわたり、装用中に疎水性助剤を徐々に放出する能力を有する。
【0093】
先に記載されたソフトハイドロゲルコンタクトレンズ、レンズ形成材料、及び疎水性助剤の様々な実施態様の全てを、本発明のこの態様で用いることができる。
【0094】
レンズ容器(又はコンテナ)は、ソフトコンタクトレンズをオートクレーブ処理して貯蔵する技術分野の当業者に周知である。任意のレンズ容器を、本発明で用いることができる。好ましくはレンズ容器は、本体及びカバーを含むブリスタパックであり、そのカバーは、着脱可能に本体に密閉されており、本体は、滅菌パッケージ溶液及びコンタクトレンズを受けるためのキャビティを含む。
【0095】
レンズは、使用者に供給する前に、各容器にパッケージされ、密閉及び滅菌される(例えば、約120℃以上での少なくとも30分間のオートクレーブによる)。当業者は、レンズ容器を密閉及び滅菌する方法を十分に理解しているであろう。
【0096】
本発明によれば、パッケージ溶液は、肉眼的に適合性があり、つまり、その溶液で処理されたコンタクトレンズは、一般に、すすぎを行わなくとも目に直接設置するのに適切及び安全であり、即ち、その溶液は、その溶液で湿潤されたコンタクトレンズを介して目と接触しても安全及び快適である。本発明のパッケージ溶液は、コンタクトレンズの貯蔵用に用いられる任意の水性溶液であってもよい。典型的な溶液としては、非限定的に、生理食塩溶液、他の緩衝溶液、及び脱イオン水が挙げられる。好ましい水溶液は、当業者に公知の他の成分を1種以上含む、塩含有の生理食塩溶液である。他の成分の例としては、非限定的に、適切な緩衝剤、等張剤、水溶性増粘剤、界面活性剤、抗菌剤、防腐剤、及び滑剤(例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)が挙げられる。
【0097】
本発明の好ましいパッケージ溶液は、増粘性ポリマーを含む。増粘性ポリマーは、好ましくは非イオン性である。溶液の粘度を上昇させると、レンズ上にフィルムが得られるが、それがコンタクトレンズの快適な装用を促進する可能性がある。増粘性成分は、挿入中に目の表面への衝撃のクッションとして作用する可能性もあり、目の刺激を軽減する働きもある。
【0098】
好ましい増粘性ポリマーとしては、非限定的に、水溶性セルロース誘導性ポリマー、水溶性ポリビニルアルコール(PVA)、約2000(10,000,000まで)ダルトンを超える分子量を有する高分子量ポリ(エチレンオキシド)、約30,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンの分子量を有するポリビニルピロリドン、少なくとも1種のビニルラクタムと1種以上の親水性モノマーとの共重合体などが挙げられる。水溶性セルロース誘導性ポリマーが、最も好ましい増粘性ポリマーである。有用なセルロース誘導性ポリマーの例としては、非限定的に、セルロースエーテルが挙げられる。
【0099】
例示的な好ましいセルロースエーテルは、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はそれらの混合物である。より好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びそれらの混合物である。
【0100】
増粘性ポリマーは、パッケージ溶液の総量に基づいて、約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは約0.05重量%〜約3重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の量で組成物中に存在する。
【0101】
ビニルピロリドンと少なくとも1種の親水性モノマーとの任意の共重合体を、本発明で用いることができる。ポリビニルピロリドン共重合体の好ましい分類は、ビニルピロリドンと少なくとも1種のアミノ含有ビニルモノマーとの共重合体である。アミノ含有ビニルモノマーの例としては、非限定的に、炭素原子を8〜15個有するアルキルアミノアルキルメタクリラート、炭素原子を7〜15個有するアルキルアミノアルキルアクリラート、炭素原子を8〜20個有するジアルキルアミノアルキルメタクリラート、炭素原子を7〜20個有するジアルキルアミノアルキルアクリラート、炭素原子を3〜10個有するN−ビニルアルキルアミドが挙げられる。好ましいN−ビニルアルキルアミドの例としては、非限定的に、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、及びN−ビニル−N−メチルアセトアミドが挙げられる。そのような好ましい共重合体は、市販されており、例えばISPのCopolymer 845及びCopolymer 937である。
【0102】
本発明のパッケージ溶液は、25℃で1.5センチポアズ〜約20センチポアズ、好ましくは25℃で約2.0センチポアズ〜約15センチポアズ、より好ましくは25℃で約2.0センチポアズ〜約8センチポアズの粘度を有する。
【0103】
本発明によれば、パッケージ溶液は、2000ダルトン以下、好ましくは1000ダルトン以下、より好ましくは600ダルトン以下、最も好ましくは約100〜約500ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールを含む。
【0104】
本発明の好ましい実施態様において、パッケージ溶液は、パッケージ溶液中でのポリエチレングリコールの酸化分解への抑圧された感受性を有するのに十分な量で、α−オキソ多酸(α-oxo-multi-acid)又はその塩を含む。所有者が共通する同時係属の特許出願(全体が本明細書に援用されている米国特許出願公開第2004/0116564A1号)には、オキソ多酸又はその塩がPEG含有高分子材料の酸化分解への感受性を低下しうることが開示されている。
【0105】
例示的なα−オキソ多酸又は生体適合性のあるその塩としては、非限定的に、クエン酸、2−ケトグルタル酸、もしくはリンゴ酸、又は生体適合性のある(好ましくは肉眼的に適合性のある)それらの塩が挙げられる。より好ましくはα−オキソ多酸は、クエン酸もしくはリンゴ酸、又は生体適合性のある(好ましくは肉眼的に適合性のある)それらの塩(例えば、ナトリウム、カリウムなど)である。
【0106】
本発明のパッケージ溶液は、好ましくは緩衝剤を含む。緩衝剤は、pHを、好ましくは所望の範囲で、例えば、約6〜約8の生理学的に許容しうる範囲内に保持する。任意の公知の生理学的に適合しうる緩衝剤を用いることができる。本発明のコンタクトレンズケア組成物の成分として適した緩衝剤は、当業者に公知である。例は、ホウ酸、ホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸塩、例えばクエン酸カリウム、重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、Bis−Tris(ビス−(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、それらの塩、リン酸緩衝剤、例えば、NaHPO、NaHPO及びKHPO、又はそれらの混合物である。好ましいビス−アミノポリオールは、1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]−メチルアミノ)プロパン(ビス−TRIS−プロパン)である。各緩衝剤の量は、組成物のpH約6.0〜約8.0の実現を効果的にするのに必要なその量である。典型的には、それは、0.001重量%〜2重量%、好ましくは0.01重量%〜1重量%、最も好ましくは約0.05重量%〜約0.30重量%の量で存在する。
【0107】
本発明のパッケージ溶液は、好ましくは、それらが涙液と等張になるように配合されている。涙液と等張の溶液は、一般に、その濃度が0.9%塩化ナトリウム溶液の濃度(308mOsm/kg)に対応するような溶液であると理解される。この濃度の偏差は、所望なら可能性のある全てである。
【0108】
張性に影響を及ぼす有機又は無機物質を添加することにより、涙液との等張性、又は他の所望の張性を調整してもよい。適切な肉眼的に許容しうる張性剤としては、非限定的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、溶液の張性の大部分は、非ハロゲン化物含有電解質(例えば、重炭酸ナトリウム)及び非電解質化合物からなる群から選択される化合物の1種以上により提供される。溶液の張性は、典型的には、約200〜約450ミリオスモル(mOsm)、好ましくは約250〜約350mOsmの範囲内で調整する。
【0109】
本発明によれば、その溶液は、更に、ムチン様材料、肉眼的に有益な材料、及び/又は界面活性剤を含むことができる。
【0110】
例示的なムチン様材料としては、非限定的に、ポリグリコール酸、ポリラクチドなどが挙げられる。ドライアイ症候群を処置するために目の眼球表面に長期間にわたり連続的して緩やかに放出されうるゲスト材料として、ムチン様材料を用いることができる。ムチン様材料は、好ましくは効果的量で存在する。
【0111】
例示的な肉眼的に有益な材料としては、非限定的に、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、アミノ酸(例えば、タウリン、グリシンなど)、α−ヒドロキシル酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸、及びクエン酸、ならびにそれらの塩など)、リノレン酸及びγリノレン酸、ならびにビタミン類(例えば、B5、A、B6など)が挙げられる。
【0112】
界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、及び両性の界面活性剤をはじめとする事実上、任意の肉眼的に許容しうる界面活性剤であってもよい。好ましい界面活性剤の例としては、非限定的に、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F108、F88、F68、F68LF、F127、F87、F77、F85、F75、F104、及びF84)、ポロアミン(例えば、Tetronic(登録商標)707、1107、及び1307)、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80)、C12−C18アルカンのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンエーテル(例えば、Brij(登録商標)35)、ポリオキシエチレンステアラート(Myrj(登録商標)52)、ポリオキシエチレンプロピレングリコールステアラート(Atlas(登録商標)G2612)、ならびに商品名Mirataine(登録商標)及びMiranol(登録商標)の両性界面活性剤が挙げられる。
【0113】
本発明は、更なる態様において、コンタクトレンズの装用中に疎水性助剤を徐々に送達することが可能なソフトコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明の方法は、a)疎水性助剤及び水と混和性の有機溶媒を含む溶液に、ソフトハイドロゲルコンタクトレンズを浸漬する工程であって、そのソフトハイドロゲルコンタクトレンズが、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導されたポリマー単位を含むポリマーマトリックスを含み、その有機溶媒が、ソフトハイドロゲルコンタクトレンズを膨潤させて、疎水性助剤をソフトハイドロゲルコンタクトレンズのポリマーマトリックスに組み込ませる工程と;b)内部に分配された快適剤を含むソフトハイドロゲルコンタクトレンズを、水又は緩衝された水溶液で水和させる工程と;c)水和させたソフトハイドロゲルコンタクトレンズを、レンズパッケージ溶液を含むレンズ容器内に入れて密閉する工程と、を含む。
【0114】
先に記載されたソフトハイドロゲルコンタクトレンズ、レンズ形成材料、疎水性助剤、レンズ容器、及びパッケージ溶液の様々な実施態様の全てを、本発明のこの態様で用いることができる。
【0115】
本発明は、更なる態様において、コンタクトレンズの装用中に疎水性助剤を徐々に送達することが可能なソフトコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明の方法は、a)第一の有機溶媒、化学線架橋性レンズ形成材料、及び疎水性助剤を含む流体プレポリマー組成物を得る工程であって、その化学線架橋性レンズ形成材料が、化学線架橋基を含み、そして熱又は化学線により重合してソフトコンタクトレンズのポリマーマトリックスを形成することができ、その化学線架橋性レンズ形成材料が、モノマー、マクロマー、及び/又はプレポリマーを含み、その疎水性助剤が、化学線架橋性基を含まない工程と;b)一定量の流体プレポリマー組成物を、コンタクトレンズを製造するための金型に導入する工程と;c)化学線架橋性プレポリマーを金型内で重合して、ポリマーマトリックスに共有結合しておらず実質的に均一な様式でその内部に分配されている疎水性助剤を含むソフトコンタクトレズを形成させる工程と;d)得られたソフトコンタクトレンズを水又は水溶液で水和させて、第一の有機溶媒を水又はその水溶液と交換する工程と;e)パッケージ溶液を含む容器内に、水和させたソフトコンタクトレンズをパッケージする工程と;f)ソフトコンタクトレンズを容器内で滅菌する工程であって、滅菌されたソフトコンタクトレンズが、装用中に疎水性助剤を徐々に放出することが可能な工程と、を含むが、但し、その方法は、第二の有機溶媒での任意の抽出工程を含まないこと条件とする。
【0116】
先に記載されたソフトハイドロゲルコンタクトレンズ、レンズ形成材料、親水性モノマー、疎水性モノマー、シリコーン含有モノマー、シリコーン含有マクロマー、シリコーン含有プレポリマー、疎水性助剤、レンズ容器、非架橋性親水性ポリマー、及びパッケージ溶液の様々な実施態様の全てを、本発明のこの態様で用いることができる。
【0117】
本発明によれば、レンズ形成材料は、任意の公知方法により、金型によって形成されるキャビティに導入(分注)することができる。
【0118】
コンタクトレンズを製造するためのレンズ金型は、当業者に周知であり、例えば、注入成形又はスピンキャスティングで用いられる。例えば、金型(注入成形用)は、一般に、少なくとも2個の金型区分(又は部分)又は金型半部、即ち、第一及び第二の金型半部を含む。第一の金型半部は、第一の成形(又は光学)表面を画定し、第二の金型半部は、第二の成形(又は光学)表面を画定する。第一及び第二の金型半部が互いを受け留めるように構成されているため、レンズ形成キャビティが、第一の成形表面と第二の成形表面の間で形成される。金型半部の成形表面は、金型のキャビティ形成表面であり、レンズ形成材料と直接接触している。
【0119】
コンタクトレンズを注入成形するための金型区分を製造する方法は、一般に当業者に周知である。本発明の方法は、金型を形成させる任意の特別な方法に限定されない。実際に、金型を形成させる任意の方法を、本発明において用いることができる。第一及び第二の金型半部は、様々な技術、例えば、射出成形又は旋盤加工により形成させることができる。金型半部を形成させる適切な方法の例は、本明細書に参考として援用されている、Schadへの米国特許第4,444,711号;Boehmらへの同第4,460,534号;Morrillへの同第5,843,346号;及びBonebergerらへの同第5,894,002号に開示されている。
【0120】
金型を製造するための当該技術分野で公知の材料の事実上全てを、肉眼用レンズを製造するための金型の製作に用いることができる。例えば、高分子材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、環状オレフィン共重合体(例えば、ドイツのフランクフルト及びニュージャージー州サミットのTicona GmbHのTopas(登録商標)COC;ケンタッキー州ルイビルのZeon Chemicals LPのZeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標))などを用いることができる。UV光を透過させる他の材料、例えば、水晶、ガラス、CaF、及びサファイアを用いることができる。
【0121】
好ましい実施態様において、レンズ形成材料が、本質的にプレポリマーで構成されていれば(即ち、700ダルトン未満の分子量を有するモノマー及び架橋剤を実質的に含まないなら)、再使用可能な金型を用いることができる。水晶又はガラスで製造された再使用可能な金型の例は、全体が参考として援用されている米国特許第6,627,124号に開示されたものである。この態様において、レンズ形成材料を、2個の金型半部からなる金型に注入するが、2個の金型半部は互いに接触しておらず、それらの間に配置された環状設計の薄い間隙を有する。その間隙は、金型キャビティに連結しているため、過剰なレンズ形成材料を間隙に流すことができる。一度しか使用できないポリプロピレン金型の代わりに、再使用可能な水晶、ガラス、サファイア金型を用いることが可能である。何故ならこれらの金型は、レンズの製造後に、水又は適切な溶媒を用いて迅速かつ効果的に洗浄して、未反応材料及び他の残渣を除去することができ、そして空気乾燥することができるためである。再使用可能な金型は、環状オレフィン共重合体、例えば、ドイツのフランクフルト及びニュージャージー州サミットのTicona GmbHのTopas(登録商標)COC等級8007-S10(エチレンとノルボルネンとの透明で非晶質の共重合体)ならびにケンタッキー州ルイビルのZeon Chemicals LPのZeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標)からも製造することができる。金型半部の再使用性ゆえ、極めて高度の正確性及び再現性のある金型を得るために、製造時に比較的高い経費がかかる可能性がある。金型半部は、製造されるレンズの領域、即ち、キャビティ又は実際の金型表面では互いに接触していないため、接触による損傷は問題外である。これにより、金型の高い使用寿命が確保され、特に、製造されるコンタクトレンズの高度の再現性、及びレンズ設計への高度の忠実度が確保される。
【0122】
レンズ形成材料を金型に分注した後、それを重合して、コンタクトレンズを製造する。金型内で、例えば、UV照射、電離放射線照射(例えば、γ線又はX線照射)などの化学線照射により、架橋を開始してもよい。レンズ形成材料中の重合性組成物が、本質的にプレポリマーである場合、レンズ形成材料を含む金型を、化学線照射の空間的限定にさらして、プレポリマーを架橋させることができる。
【0123】
本発明による架橋を、非常に短時間で、例えば、60分間以内で、有利には20分間以内で、好ましくは10分間以内で、最も好ましくは5分間以内で、特に好ましくは1〜60秒間で、そして最も特別には1〜30秒間で実行してもよい。
【0124】
成形された物品を金型から取り出すための金型の開口は、それ自体が公知の手法で実施してもよい。
【0125】
成形されたコンタクトレンズが、既に精製された本発明のプレポリマーから無溶媒で製造された場合、成形されたレンズを取り出した後は、通常、抽出などの精製工程を後に実行する必要がない。これは、用いられたプレポリマーが任意の望ましくない低分子量の成分を含まないためであり、その結果、架橋生成物も、そのような成分を含まず、又は実質的に含まず、次の抽出を省略することができる。したがってコンタクトレンズは、通常の方法で、加水分解及び水和により、即使用可能なコンタクトレンズに直接転換することができる。水和の適切な実施態様は、当業者に公知であるが、非常に様々な水分量の即使用可能なコンタクトレンズを得てもよい。コンタクトレンズは、例えば、水中で、水性塩溶液中で、特に1000ml中に約200〜450ミリオスモル(単位:mOsm/ml)、好ましくは約250〜350mOsm/l、そして特に約300mOsm/lのモル浸透圧濃度を有する水性塩溶液中で、又は水もしくは水性塩溶液と生理学的に適合性のある極性有機溶媒、例えばグリセロールとの混合物中で膨張する。好ましいのは、水中、又は水性塩溶液中での物品の膨張である。
【0126】
成形されたコンタクトレンズが既に精製された本発明のプレポリマーの溶液から製造された場合、架橋生成物も任意の面倒な不純物を含まない。それゆえ、次の抽出を実施する必要はない。この方法で得られたコンタクトレンズは、加水分解及び水和工程を受ける。
【0127】
同様に、成形されたコンタクトレンズが既に精製された本発明のプレポリマーの溶媒溶液から製造された場合、次の抽出を実施する必要はなく、水和工程の代わりに、溶媒を交換する。
【0128】
成形されたコンタクトレンズは、更なる工程、例えば、表面処理、滅菌などを更に受けることができる。
【0129】
これまでの開示により、当業者は本発明を実践することができよう。その具体的実施態様及び利点を読者によりよく理解させるために、以下の非限定的実施例の参照が示唆されている。しかし、以下の実施例を読むことで、本発明の範囲を限定してはならない。
【実施例】
【0130】
実施例1
酸素透過性の測定 レンズの酸素透過性及びレンズ材料の酸素伝達率を、米国特許第5,760,100号及びWintertonらによる論文(The Cornea: Transactions of the World Congress on the Cornea 111, H.D. Cavanagh Ed., Raven Press: New York 1988, pp273-280)(両者とも、全体が本明細書に参考として援用されている)に記載のものと類似の技術により測定した。酸素流量(J)を、湿潤(即ち、気流を約100%相対湿度で保持した)セル内で、Dk1000装置(Applied Design and Development Co., Norcross, GAより市販)又は類似の分析装置を使用して34℃で測定した。既知の割合%の酸素(例えば、21%)を有する気流を、レンズの片側に約10〜20cm/分の速度で透過させる一方、窒素気流をレンズの反対側に約10〜20cm/分の速度で透過させた。試料を、検査媒体(即ち、生理食塩水又は蒸留水)中で、規定の検査温度で、測定前の少なくとも30分間(但し、45分間未満の間)平衡化した。オーバーレイヤーとして使用した任意の検査媒体を、規定の検査温度で、測定前の少なくとも30分間(但し、45分間未満の間)平衡化した。ステッパ・モータ・コントローラでの表示設定400±15に対応して、撹拌モータの速度を1200±50rpmに設定した。システム周囲の大気圧Pmeasuredを測定した。ミツトヨ(Mitotoya)マイクロメータ VL-50又は同様の装置により約10箇所測定して、測定値の平均をとることにより、検査用に暴露された領域におけるレンズの厚さ(t)を測定した。窒素気流中の酸素濃度(即ち、レンズを通して拡散した酸素)を、Dk1000装置を使用して測定した。レンズ材料の見かけ上の酸素透過性Dkapp(バレル)を、以下の式から測定した:
Dkapp=Jt/(Poxygen)
(式中、J=酸素流量[OμL/cm2・分];Poxygen=(Pmeasured−Pwater水蒸気)=(気流中のO%)[mmHg]=気流中の酸素分圧;Pmeasured=大気圧(mmHg);Pwater水蒸気=34℃で0mmHg(乾燥セル内)(mmHg);Pwater水蒸気=34℃で40mmHg(湿潤セル内)(mmHg);t=暴露された検査領域のレンズの平均厚さ(mm))。材料の酸素伝達率(Dk/t)は、酸素透過性(Dkapp)をレンズの平均厚さ(t)で除算することにより計算してもよい。
【0131】
イオン透過性の測定 レンズのイオン透過性は、米国特許第5,760,100号(その全体が本明細書に参考として援用されている)に記載された手順により測定した。以下の実施例で報告されるイオン透過性の値は、参照材料としてのレンズ材料Alsaconに関する相対イオノフラックス拡散係数(D/Dref)である。Alsaconは、イオノフラックス拡散係数0.314×10−3mm/分を有する。
【0132】
実施例2
鎖延長PDMS−ジメタクリラートの合成
第一の工程において、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン(Mn=2000、Shin-Etsu、KF-6001a)49.85gを、ジブチルチンジラウラート(DBTDL)0.063gの存在下、乾燥メチルエチルケトン150g中のイソホロンジイソシアナート(IPDI)11.1gと反応させることにより、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサンをイソホロンジイソシアナートでキャップした。反応を40℃で4.5時間保持して、IPDI−PDMS−IPDIを形成させた。第二の工程において、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン(Mn=3000、Shin-Etsu、KF-6002)164.8gと乾燥メチルエチルケトン50gとの混合物を、IPDI−PDMS−IPDI溶液に滴下し、それに更なるDBTDL 0.063gを添加した。反応器を40℃で4.5時間保持して、HO−PDMS−IPDI−PDMS−IPDI−PDMS−OHを形成させた。その後、MEKを減圧下で除去した。第三の工程において、イソシアナトエチルメタクリラート(IEM)7.77g及び更なるDBTDL 0.063gを添加することにより、末端ヒドロキシル基をメタクリロイルオキシエチル基でキャップして、IEM−PDMS−IPDI−PDMS−IPDI−PDMS−IEMを形成させた。
【0133】
実施例3
実施例2で製造されたポリジメチルシロキサンマクロマー31.5重量%;TRIS−アクリルアミド(Shin-Etsu #805001)20.5重量%;DMA(ジメチルアクリルアミド)23重量%;N−(カルボニルメトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩(L−PEG−2000)0.5重量%;Darocur1173 1.0重量%;Cuフタロシアニン分散液(TRISメタクリラート中の5%)0.1重量%;及び1−プロパノール23.4重量%を混合することにより、レンズ配合剤を調製した。
【0134】
EFDオートマチックディスペンサを用いることにより、レンズ配合剤を雌型半部に分注した。その後、雌型半部を対応する雄型半部と結合させた。金型を空気圧閉鎖装置(pneumatic closing system)を用いることにより閉鎖した。配合剤を、合計暴露時間の約30秒間、2種の異なるUV光(各1.8mW/cm2)でUV硬化させた。
【0135】
レンズを金型から外して、有機溶媒(例えば、イソプロパノール、1−プロパノール、Dowanol、メチルエチルケトン(MEK)など)で抽出し、その後、ポリアクリル酸(0.1重量%、pH〜2.0)のDowanol PM(あるいはMEK又は1−プロパノール)溶液に浸漬した。その後、レンズを水で60秒間すすぎ、その後、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC、1%)のDowanol(あるいはMEK又は1−プロパノール)溶液に約60〜約100秒間浸漬した。その後、レンズを水で120秒間すすいで、PBS中でパッケージした。その後、レンズを121℃で30分間オートクレーブ処理した。
【0136】
実施例4
レンズ(実施例3で製造)を、リン脂質を用いずに調製された表1に示された組成を有する人工涙液(ATF)中で、2種の放出検査のうちの一方に供試した。
【0137】
【表1】

【0138】
第一の検査では、ATFを頻繁に交換することにより、レンズからのDMPCの放出が最大になるように設定した。一枚のレンズをATF 500μLに入れて、35℃で8時間インキュベートした。30分毎に試料をボルテックス処理して、ATFを除去し、新しいATFのアリコート(aliquot)500μLをレンズに添加し、試料を再度ボルテックス処理して、試料をインキュベータに戻した。8時間の終了時に、レンズをATFから取り出して、清浄なPBS1mLに入れて、DMPC含量の分析を実施した。
【0139】
第二のテストは、放出検査全体の間にレンズをATFに放置することにより、ATF中のDMPC量を最大にする試みを設定した。一枚のレンズをATF1mLに入れて、35℃で8時間インキュベートした。30分毎に試料をボルテックス処理し、その後、インキュベータに戻した。8時間の終了時に、レンズをATFから取り出し、ATFの分析を行った。分析は全て、酵素アッセイ法を用いて実施した。
【0140】
対照のレンズ組では、レンズへのDMPCの付加量を確認した。この対照試料組(n=5)は、レンズあたり200μgのDMPC平均付加量を示した。
【0141】
第一の検査(放出時にATFを頻繁に交換)により放出されたレンズ組は、レンズあたりDMPC平均含量177μgを示した(n=5)。
【0142】
3本のATF試料を混合して、DMPCシグナルを増加させた。3本の混合試料での検査から、ATF中のDMPCの存在が、レンズあたりDMPC 6μgであることが示された。3本の混合試料での値は、アッセイのダイナミックレンジをわずかに下回り、定量されたDMPCレベルを信頼することが困難であるが、それでもレンズからのDMPC放出の証拠は示された。
【0143】
実施例5
この実施例で用いられたDMPCが放射線標識DMPC(C14)であった以外は実施例3に記載された手順により、レンズを製造した。放射線標識DMPCは、New England Nuclear(マサチューセッツ州ウォルサム)により供給された。レンズを1−プロパノール中の放射線標識DMPCの溶液に浸漬することにより、レンズに放射線標識DMPCを付加した。その後、付加されたレンズを、人工涙液(ATF)を放出媒体として用いた放出検査に供試した。ATFの組成を、表2に示す。表1に列挙された成分を、リン酸緩衝生理食塩溶液に溶解して、生理学的に許容しうるpH及びモル浸透圧濃度を提供した。
【0144】
【表2】

【0145】
一枚のレンズをATF1mL中に入れ、その後、試料を24時間インキュベートすることにより、放出検査を実施した。特定の時点0、2、4、10及び24時間目に、放出媒体の少量の試料を抜き取り、シンチレーションカウンタを用いてDMPC含量について分析した(C14は弱いβ粒子を放出する)。
【0146】
レンズのDMPC含量も、2種の技術の一方を用いて測定した:
(1)それまでに放出検査に供試されたレンズを完全に抽出し、その後、溶離液をDMPC含量について分析した。このDMPC量を、放出媒体中で既に定量されたDMPCに数量的に加算した。つまり全DMPC量は、使用寿命全体での量(cradle-to-grave)を表す。
(2)放出検査を受けていない他のレンズも抽出して、初期DMPC含量(レンズ中のDMPCの合計付加量)を測定した。
【0147】
レンズの合計DMPC含量は、32.1±2.7μg DMPC/レンズであると推定された。ATF放出媒体中のDMPC含量は、放出検査の全期間をとおして増加した。8本の検査試料全てで、放出が良好な再現性が示された。レンズからの平均累積DMPC放出量は、24時間の検査期間全体で1.3μgであった。DMPC放出量は、一次関数であると思われ、拡散律速の放出メカニズムであることが示された。
【0148】
実施例6
実施例3に詳述されたとおりに、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)を0.75重量%の濃度で配合剤に添加して、配合溶媒である1−プロパノールを22.65重量%に低下させて、レンズ配合剤を調製した。レンズの硬化は、実施例3に記載されたとおりであった。
【0149】
レンズを金型から外し、その後、メチルエチルケトンで抽出して、脱イオン水で56秒間すすいだ。その後、レンズをポリアクリル酸の溶液(1−プロパノール中に0.36重量/容量%、pH〜2)に浸漬した。その後、レンズを水で120秒間すすいで、リン酸緩衝生理食塩水中でパッケージした。その後、レンズを121℃で30分間オートクレーブ処理した。
【0150】
快適剤DMPC及びL−PEGの含量を、以下のとおり測定した。レンズをイソプロパノールで完全に抽出して、抽出液をDMPC及びN−(カルボニルメトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩(L−PEG−2000)含量について検査した。レンズは、レンズあたりに平均でDMPCを30μg、そしてL−PEG−2000を10μg含んでいた。
【0151】
助剤(DMPC及びL−PEG)を含むコンタクトレンズの放出プロファイルを、以下のとおり測定した。レンズを、放出検査用の放出媒体(実施例4に記載された人工涙液(ATF))に入れた。レンズを混合し(ATF3.5mL中にレンズ35枚、そしてATF5mL中にレンズ50枚)、その後、37℃で24時間緩やかに撹拌した。24時間放出試験の終了時に、レンズをATFから取り出した。その後、残りのATFを遠沈管に移して、遠沈式エバポレータ(centrifugal evaporator)で一晩真空乾燥させた。
【0152】
その後、再懸濁の補助に音波処理を利用して、ATFの乾燥した残渣を1−プロパノールに再懸濁させた(元々のATF5mLあたり1−プロパノール1mL)。HPLCを利用して、得られた溶液を、DMPCの存在について分析した。
【0153】
DMPCの存在が陽性であった2種の試料の検査値は、0.48及び0.69μg/mL ATFであった。
【0154】
実施例7
レンズを、実施例3に詳述された方法により製造した。ポリアクリル酸溶液中に浸漬した後、レンズを水で1分間すすぎ、その後、0.10%(重量/容量)〜1.5%の範囲の濃度のビタミンE油を含む1−プロパノール溶液に浸漬した。リン酸緩衝生理食塩水を含むバイアルにレンズを入れて、121℃で30分間オートクレーブ処理した。透過率%の測定から、溶液中の高濃度のビタミンE油に暴露されたそれらのレンズで、透過率の低下が示され、レンズによるビタミンE油の取り込みが示された。
【0155】
レンズを、実施例3に詳述された方法で製造した。ポリアクリル酸溶液中に浸漬した後、レンズを0.2%(重量/容量)鉱物油を含むリン酸緩衝生理食塩水2mLに入れて、121℃で30分間オートクレーブ処理した。対照試料(即ち、鉱物油を含まないパッケージ溶液にパッケージされた同一レンズ)と比較した、鉱物油含有パッケージ溶液にパッケージされたレンズの表面湿潤性の低下の観察から、レンズによる鉱物油の取込みが示された。
【0156】
本発明の様々な実施態様を、専門の用語、装置及び方法を用いて記載したが、そのような記載は、単に例示を目的としたものである。用いた言葉は、限定ではなく説明のための言葉である。当業者が、以下の特許請求の範囲に示した、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、変更及び改良を施しうることを理解しなければならない。加えて、様々な実施態様の態様が、全体として、又は部分的に相互に交換可能であることを理解しなければならない。つまり添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に含まれる好ましい形態の説明に限定されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスと、前記ポリマーマトリックスに共有結合しておらずその内部に分配されている疎水性助剤と、を含むソフトハイドロゲルコンタクトレンズであって、前記ポリマーマトリックスが、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導された疎水性単位と、親水性モノマー又はマクロマーから誘導された親水性単位と、を含み、
前記疎水性助剤が、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリピド、スフィンゴ糖脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、C12−C28鎖長を有する炭化水素、又はそれらの混合物を含み、
前記ソフトコンタクトレンズが、装用中に前記疎水性助剤を前記ポリマーマトリックスから装用者の目に徐々に放出する能力によって特徴付けられる、ソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項2】
ソフトハイドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約40バレルの酸素透過性、約0.2MPa〜約2.0MPaの弾性係数、少なくとも約1.5×10−6mm/分のイオノフラックス拡散係数D、約15%〜約70%の水分量、約90°以下の平均水接触角を有することを特徴とする表面親水性、及びそれらの組合わせからなる群から選択される特性を少なくとも1種有する、請求項1記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記疎水性助剤が、リン脂質である、請求項2記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記疎水性助剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、又はそれらの混合物である、請求項2記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記疎水性助剤が、糖脂質、グリセロ糖脂質、又はそれらの混合物である、請求項2記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記疎水性助剤が、スフィンゴリピド、スフィンゴ糖脂質、又はそれらの混合物である、請求項2記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記疎水性助剤が、脂肪酸、脂肪アルコール、C12−C28鎖長を有する炭化水素、又はそれらの混合物である、請求項2記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記ソフトハイドロゲルコンタクトレンズが、更に、非架橋性親水性ポリマーを浸出性の湿潤剤として含む、請求項2記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記非架橋性親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール;ポリエチレンオキシド;ポリエチレン−ポリプロピレン・ブロック共重合体;ポリアミド;ポリイミド;ポリラクトン;ポリビニルピロリドン;N−ビニルピロリドンと1種以上の親水性ビニルモノマーとの共重合体;アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー;アクリルアミド又はメタクリルアミドと1種以上の親水性ビニルモノマーとの共重合体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、又はN−ビニル−N−メチルアセトアミドのホモポリマー;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、又はN−ビニル−N−メチルアセトアミドと1種以上の親水性ビニルモノマーとの共重合体、ならびにそれらの混合物である、請求項1〜8のいずれか1項記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項10】
パッケージ溶液及び請求項1〜9のいずれか1項記載のソフトハイドロゲルコンタクトレンズを含む密閉容器を含む肉眼用製品であって、前記ソフトコンタクトレンズが、前記パッケージ溶液中に少なくとも約1ヶ月間貯蔵した後、少なくとも約4時間にわたり、装用中に前記疎水性助剤を徐々に放出する能力を有する肉眼用製品。
【請求項11】
前記パッケージ溶液が、増粘性ポリマーを約0.01重量%〜約5重量%含み、前記増粘性ポリマーが、水溶性セルロースエーテル、水溶性ポリビニルアルコール、約2000〜約10,000,000ダルトンの分子量を有するポリ(エチレンオキシド)、約30,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンの分子量を有するポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと1種以上の親水性モノマーとの共重合体、又はそれらの混合物である、請求項10記載の肉眼用製品。
【請求項12】
前記増粘性ポリマーが、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はそれらの混合物である、請求項11記載の肉眼用製品。
【請求項13】
前記増粘性ポリマーが、約30,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンの分子量を有するポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと1種以上の親水性モノマーとの共重合体、又はそれらの混合物である、請求項11記載の肉眼用製品。
【請求項14】
コンタクトレンズの装用中に疎水性助剤を徐々に送達することが可能なソフトコンタクトレンズの製造方法であって、
a)疎水性助剤及び水と混和性の有機溶媒を含む溶液に、ソフトハイドロゲルコンタクトレンズを浸漬する工程であって、前記ソフトハイドロゲルコンタクトレンズが、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマー及び/又は疎水性モノマーから誘導された疎水性単位と、親水性モノマー又はマクロマーから誘導された親水性単位と、を含むポリマーマトリックスを含み、前記疎水性助剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリピド、スフィンゴ糖脂質、リン脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、C12−C28鎖長を有する炭化水素、鉱物油、シリコーン油、又はそれらの混合物を含み、前記有機溶媒が、ソフトハイドロゲルコンタクトレンズを膨潤させて、前記疎水性助剤を前記ソフトハイドロゲルコンタクトレンズの前記ポリマーマトリックスに浸透させて組み込ませる工程と;
b)内部に分配された前記助剤を有する前記ソフトハイドロゲルコンタクトレンズを、水又は緩衝された水溶液で水和させる工程と;
c)前記水和させたソフトハイドロゲルコンタクトレンズを、レンズパッケージ溶液を含むレンズ容器内に入れて密閉する工程と、を含み、
前記ソフトコンタクトレンズが、装用中に前記疎水性助剤を前記ポリマーマトリックスから装用者の目に徐々に放出する能力を特徴とする方法。
【請求項15】
コンタクトレンズの装用中に疎水性助剤を徐々に送達することが可能なソフトコンタクトレンズを製造する方法であって、
a)第一の有機溶媒、化学線架橋性レンズ形成材料、及び疎水性助剤を含む流体プレポリマー組成物を得る工程であって、前記化学線架橋性レンズ形成材料が、化学線架橋基を含み、そして熱又は化学線により重合して前記ソフトコンタクトレンズのポリマーマトリックスを形成することができ、前記化学線架橋性レンズ形成材料が、モノマー、マクロマー、及び/又はプレポリマーを含み、前記疎水性助剤が、任意の化学線架橋性基を含まず、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリピド、スフィンゴ糖脂質、リン脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、C12−C28鎖長を有する炭化水素、鉱物油、シリコーン油、又はそれらの混合物を含む工程と;
b)一定量の前記流体プレポリマー組成物を、コンタクトレンズを製造するための金型に導入する工程と;
c)前記化学線架橋性プレポリマーを金型内で重合して、前記ポリマーマトリックスに共有結合しておらず実質的に均一な様式でその内部に分布している前記疎水性助剤を含むソフトハイドロゲルコンタクトレズを形成させる工程と;
d)得られた前記ソフトハイドロゲルコンタクトレンズを水又は水溶液で水和させて、第一の有機溶媒を水又はその水溶液と交換する工程と;
e)パッケージ溶液を含む容器内に、前記水和させたコンタクトレンズをパッケージする工程と;
f)前記ソフトコンタクトレンズを容器内で滅菌する工程であって、前記滅菌されたソフトコンタクトレンズが、装用中に前記疎水性助剤を徐々に放出することが可能な工程と、
を含むが、但し、第二の有機溶媒での任意の抽出工程を含まないこと条件とする方法。

【公表番号】特表2012−511180(P2012−511180A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539671(P2011−539671)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/066480
【国際公開番号】WO2010/065686
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】