説明

疎水性薬剤トラップ剤

【課題】生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度よりも高い温度では疎水性となる温度応答性を有した疎水性薬剤トラップ剤を提供する。
【解決手段】
生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であるポリマー材料よりなる疎水性薬剤トラップ剤。ポリマー材料は、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これにエチルアクリレートなどのビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体よりなるホモポリマーに対し、N−イソプロピルアクリルアミドをブロック重合させたものである。このポリマー材料は、免疫抑制剤、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A還元酵素阻害薬又は抗血栓剤などの開存性向上改質剤を担持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開存性向上改質剤などを担持するのに好適な疎水性薬剤トラップ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
バイパス手術や人工血管置換術など血管縫合を行った箇所は、血管平滑筋細胞の過増殖により、縫合部位付近で内膜肥厚などによる血管狭窄が起こる可能性があるため、グラフトの開存性を向上させるには、抗凝固剤による抗血栓処理のほかに血管平滑筋細胞の形質転換を防ぐような処理も合わせて行うことでより大きな効果が期待できる。
平滑細胞の形質転換を抑制する技術として免疫抑制を利用する方法が公知である。例えば、下記文献1,2では、免疫抑制剤FK506をエマルジョン状態として飲み薬として使用する技術や有機溶媒に溶かした溶液を生体用の部材(例:ステント)に塗布して溶媒を揮発させて固定することで部材からの徐放性を与える技術を開示している。
【0003】
術後の生体組織やグラフトへこれら薬剤を作用させ効果を得るためには、溶液状態で薬剤を組織へ塗布し、組織表面へ固定する必要がある。しかしながら、FK506は水に極めて難溶であり、溶液状態で物体へ塗布するにはエマルジョン化するか有機溶媒へ溶解するしか方法がない。一般に、エマルジョンは孔径0.2μmの濾過膜を透過することができず、熱変化にも不安定である場合が多く、滅菌が困難である。また、組織表面に塗布しても固定されることはなく、術後に行われる組織表面の生理食塩水での洗浄や、体液などで流出してしまう。また、有機溶媒を生体に塗布することは細胞傷害性が強く、組織にダメージを与えるために有機溶媒溶液での塗布は不可能である。
【特許文献1】特開平5−9117号
【特許文献2】特開平6−183970号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度よりも高い温度では疎水性となる温度応答性を有しており、従って疎水性の薬を水溶性として扱うことができ(体内に害がなく扱うことができ)、且つ塗布した後は生体に固定することが可能である疎水性薬剤トラップ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の疎水性薬剤トラップ剤は、ポリマー材料よりなる疎水性薬剤トラップ剤において、該ポリマー材料は、生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であることを特徴とするものである。
【0006】
前記ポリマー材料は、疎水性ホモポリマーと、N−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミドとのブロック共重合体であることが好ましい。
【0007】
この疎水性ホモポリマーの分子量は、500〜300,000が好ましい。
【0008】
このブロック共重合体の分子量は、3,000〜500,000であることが好ましい。
【0009】
前記所定温度(T)は、10〜30℃特に22〜28℃とりわけ24〜26℃の間の温度であることが好ましい。
【0010】
前記疎水性ホモポリマーは、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これにビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体であることが好ましい。
【0011】
このN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物としては、ベンゼン環を核とし、この核に分岐鎖として3個以上の該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が結合しているものが好ましい。
【0012】
このビニル系モノマーは、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の疎水性薬剤トラップ剤は、上記所定温度よりも低い温度では親水性であり、水溶性である。これは、本発明の疎水性薬剤トラップ剤の一部を構成するN−イソプロピルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミドのポリマー鎖は、低温度では親水性になり高温度では疎水性になるという温度依存性を有していることに起因する。このため、本発明の疎水性薬剤トラップ剤を前記所定温度よりも低い温度で水に溶解させて生体あるいは医療用具に塗布し、その後、所定温度よりも高い温度とすることにより、疎水性(水不溶性)となり、例えばゼリー状になって生体あるいは医療用具に付着する。ゼリー状となった疎水性薬剤トラップ剤は、長期にわたって薬効を維持する。
【0014】
この疎水性薬剤トラップ剤は、有機溶媒を用いていないので、ハイブリッド材料やあるいは生体に対しても適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の疎水性薬剤トラップ剤は、生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であるポリマー材料よりなる。
【0016】
このポリマー材料としては、疎水性ホモポリマーと、N−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミドとのブロック共重合体が好ましい。
【0017】
この疎水性ホモポリマーは、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これにビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体が好適である。
【0018】
なお、本明細書において、イニファターとは、光照射によりラジカルを発生させる重合開始剤、連鎖移動剤としての機能と共に、成長末端と結合して成長を停止する機能、さらに光照射が停止すると重合を停止させる重合開始・重合停止剤として機能する分子のことである。
【0019】
N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物としては、ベンゼン環に該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が3個以上分岐鎖として結合しているものが好適であり、具体的には次が例示される。即ち、3分岐鎖としては、1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジチオカルバミル酸ナトリウム(ナトリウムN,N−ジチオカルバメート)とをエタノール中で付加反応させて得られる1,3,5−トリス(N,N−ジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、4分岐鎖としては、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジチオカルバミル酸ナトリウムとをエタノール中で付加反応させて得られる1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、6分岐鎖としては、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼンとナトリウムN,N−ジチオカルバメートとをエタノール中で付加反応させて得られるヘキサキス(N,N−ジチオカルバミルメチル)ベンゼンである。
【0020】
上記のイニファターは、アルコール等の極性溶媒に対しては殆ど不溶であるが、非極性溶媒には易溶である。この非極性溶媒としては炭化水素、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルキレンが好適であり、特にベンゼン、トルエン、クロロホルム又は塩化メチレン特にトルエンが好適である。
【0021】
このイニファターに重合させるモノマーとしては、ビニル系モノマーが好適であり、特に炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートすなわちアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートが好適であり、とりわけエチルアクリレート(アクリル酸エチル)が好ましい。
【0022】
イニファターと上記モノマーとを反応させるには、イニファター及びモノマーを含んでなる原料溶液を調製し、これに光照射することによって、イニファターに対しモノマーが結合した反応生成物を生成させる。
【0023】
このモノマーの該原料溶液中の濃度は70重量%以上、例えば70〜99重量%が好適である。
【0024】
イニファターの濃度は10〜1000mM程度が好適である。
【0025】
照射する光の波長は240〜400nmが好適であり、とりわけ300〜400nmが好適である。光の照射時間は照射強度にも依存するが、1〜60分程度が好適であり、1μW/cm〜1mW/cm程度の低い照射強度で1分〜30分程度が特に好適である。
【0026】
この光照射により、反応液中に目的とする分岐型スター型重合体が生成するので、必要に応じ精製してスター型重合体よりなる疎水性ホモポリマーを得る。
【0027】
このスター型重合体の分子量は分岐鎖の鎖数によるが、1,000〜500,000、特に2,000〜100,000、とりわけ3,000〜60,000程度が好ましい。
【0028】
このようにして生成したスター型重合体よりなる疎水性ホモポリマーに対し、N−アルキルアクリルアミドをブロック共重合させて目的とするポリマー材料とするが、このポリマー材料の合成の際には、N−アルキルアクリルアミドを先にイニファターに重合させ、その後で、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレートなどのアクリル酸やメタクリル酸などのビニル系モノマーを重合させてもブロック重合体を得ることが可能である。
【0029】
このN−アルキルアクリルアミドのポリマー鎖は、低温度では親水性、高温では疎水性となる温度依存性を有し、これにより上記ポリマー材料が上記温度応答性を具備するようになる。
【0030】
N−アルキルアクリルアミドのアルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、N−アルキルアクリルアミドとしては特にN−イソプロピルアクリルアミドが好適である。
【0031】
N−イソプロピルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミドをブロック共重合させるには、上記のようにして合成したスター型重合体ホモポリマーをクロロホルム等の溶媒に溶解させ、これにN−アルキルアクリルアミドを混合し、光を照射して重合させればよい。この重合反応を開始する際の溶液中におけるスター型ホモポリマーの濃度は0.01〜10重量%程度程度が好適であり、N−アルキルアクリルアミドの濃度は0.3〜30重量%程度が好適である。光の照射条件は、光波長300〜400nm、照射時間1〜60分、照射強度1μW〜10mW/cm程度が好適である。
【0032】
このブロック共重合体(ポリマー材料)の分子量は3,000〜500,000、特に10,000〜100,000であることが好ましい。
【0033】
このポリマー材料に担持される開存性向上改質剤としては、免疫抑制剤、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A還元酵素阻害薬又は抗血栓剤が好適である。免疫抑制剤としては、シクロホスファミド、シクロスポリン又はタクロリムス(FK506)が好適であり、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A還元酵素阻害薬としては、プラバスタチン、アトルバスタチン又はシンバスタチンが好適であり、抗血栓剤としてはアルガトロバンが好適である。
【0034】
このポリマー材料に開存性向上改質剤を担持させるには、ポリマー材料の低温の水溶液に開存性向上改質剤を添加し、混合すればよい。
【0035】
1,2,4,5−テトラキス(N−Nジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンをイニファターとし、これに(メタ)クリル酸メチル、(メタ)クリル酸エチル又は(メタ)クリル酸ブチルを重合させて分子量500〜100,000程度の疎水性ホモポリマーとし、さらにこれにN−イソプロピルアクリルアミドをブロック重合させて分子量3,000〜500,000としたポリマーは、22〜28℃例えば約25℃よりも高い温度で水不溶性であり、それよりも低い温度で水溶性である。
【0036】
従って、開存性向上改質剤を担持した25℃よりも低い温度例えば4〜20℃程度の疎水性薬剤トラップ剤の水溶液(濃度は好ましくは、0.01g/dL〜50g/dL程度)を生体あるいは医療用具に塗布などにより付着させ、25℃よりも高い例えば30〜37℃の温度に昇温させ、必要に応じ乾燥させることにより、水不溶性の、開存性向上改質剤担持体が形成される。生体の場合、この際の昇温は生体の体温によって行うことも可能である。
【0037】
この医療用具としては、人工心臓、人工心臓弁、人工血管、血管カテーテル、カニューレ、人工心肺、血管バイパスチューブ、大動脈バルーンポンピング、輸血用具及び体外循環回路などの血液と接触する部位に使用される医療用具などが例示される。
【0038】
なお、上記の分岐鎖の数が多いほど、ポリマー材料の生体等(生体や医療用具など)への付着性が向上する。
【0039】
この理由としては、分岐鎖中におけるN−アルキルアクリルアミドのポリマー鎖が生体等への親和性を有していること;疎水性薬剤トラップ剤は、このN−アルキルアクリルアミドのポリマー鎖を介して生体等に付着すること;従って、分岐鎖が多いほど、疎水性薬剤トラップ剤の生体等への付着性が向上すること;仮に1本の分岐鎖が生体等から剥離しても、他の分岐鎖によって疎水性薬剤トラップ剤の生体等への付着が保たれ、この間に、剥離した分岐鎖が再び生体等に付着すること;が考えられる。
【0040】
また、スター型ポリマー材料のベンゼン核から上記分岐鎖が放射方向に延出している。このベンゼン核は生体等への付着性が乏しく、放射方向に延出した分岐鎖の数が多いほど、ベンゼン核付近の生体等からの離反方向の動きが抑制される。従って、この理由によっても、分岐鎖の数が多いほど、疎水性薬剤トラップ剤の生体等への付着性が向上すると考えられる。
【実施例】
【0041】
実施例1
i)イニファターの合成
下記反応式に従って、1,2,4,5−テトラキス(N−Nジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを次のようにして合成した。
【0042】
1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチルベンゼン)2.0gとN,N−ジエチルジチオカルバミル酸ナトリウム12.0gをエタノール10mL中へ加え、遮光下で室温で4日間攪拌した。沈殿物を濾過し、減圧乾燥後、クロロホルム40mLへ溶解し、50mLの水を加えて抽出分離し、臭化ナトリウムを除去した。この操作を3回繰り返した後、クロロホルム層を約10gの硫酸マグネシウムで24時間乾燥させて、濾過後、n−ヘキサンを加え、再結晶を行って精製し、微かに淡青色を帯びた1,2,4,5−テトラサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンの白色結晶を得た(収率90%)。
【0043】
H NMR(in CDCl)の測定結果はσ7.48(s,2H,Ar−H),σ4.57(s,2H×4,Ar−CHS−),σ4.03(q,2H×4,N−CH−,J=10.7Hz),σ3.72(q,2H×4,N−CH−,J=10.7Hz),σ1.26−1.31(t,3H×8,−CH−CH,J=6.6Hz)となった。
【0044】
【化1】

【0045】
ii)光重合による4分岐型スター型重合体よりなる疎水性ホモポリマーの合成
下記反応式に従い、次のようにして、1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミル(ポリエチルアクリレート)(以下、pEAと記載することがある。)よりなる疎水性ホモポリマーの合成を行った。
【0046】
即ち、上記i)により合成した1,2,4,5−テトラサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼン0.43gを10mLのクロロホルムへ溶解し、エチルアクリレート5gを加えて混合し、全量をクロロホルムで20mLに調整した。石英セル中で激しく攪拌しながら高純度窒素ガスで5分間パージした後に、200W高圧水銀灯で紫外光を30分間照射した。照射強度は照度計(UVR−1,TOPCON,Tokyo,Japan)を使用して1mW/cm(250nm)に調整した。
【0047】
重合溶液をエバポレーターで濃縮し、ジエチルエーテルで重合物を再沈殿させて精製し、少量の水へ溶解し、0.2μmフィルターで濾過してから凍結乾燥させて4分岐型スター型ホモポリマー1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミル(ポリエチルアクリレート)(pEA)よりなるカチオン性ポリマーを得た(重合率40%)。分子量はGPCにより5000と測定された。
【0048】
【化2】

【0049】
iii)疎水性ホモポリマーへのN−イソプロピルアクリルアミドのブロック共重合によるポリマー材料(4分岐型pEA−b−pNIPAM)の合成
下記反応式に従い、次のようにして、テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミル(ポリエチルアクリレート)−ブロック−ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)(以下、pEA−b−pNIPAMと記すことがある。)の合成を行った。
【0050】
即ち、上記ii)で合成した4分岐型pDEAホモポリマー645mgを10mLのクロロホルムへ溶解し,N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)2.2gを混合して全量をクロロホルムで20mLに調整した。ii)と同様の条件で光照射重合を行って、クロロホルム/ジエチルエーテル系で精製を行って4分岐型pEAとポリN−イソプロピルアクリルアミド(pNIPAM)とのブロックポリマーよりなるポリマー材料を得た(重合率80%)。分子量はGPCにより12,000と測定された。
【0051】
【化3】

【0052】
iv)タクロリムスの担持
上記iii)で合成したポリマー材料(4分岐型pEA−b−pNIPAM)を20℃に温調した水に溶解させ、1.0%溶液を調製した。この溶液100mLとタクロリムス(FK506)の0.5%クロロホルム溶液30mLとを混合して激しく撹拌することで乳化させた。静置後、水相を回収し、痕跡の沈殿物(フリーのタクロリムス)を濾別した。37℃へ温調したプレート上へ乗せたナイロン6−10製フィルム(厚さ50μm)の上へ滴下し、37℃の生理食塩水で10時間洗浄し、風乾した。乾燥後、フィルムの熱分析を行うと、130℃付近にタクロリムスの融解によるピークが確認され、フィルム上にタクロリムスが固定(徐放)されたことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料よりなる疎水性薬剤トラップ剤において、
該ポリマー材料は、生体温度よりも低温の所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項2】
請求項1において、前記ポリマー材料は、疎水性ホモポリマーとN−アルキルアクリルアミドとのブロック共重合体であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項3】
請求項2において、N−アルキルアクリルアミドのアルキル基の炭素数は1〜10であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項4】
請求項3において、N−アルキルアクリルアミドはN−イソプロピルアクリルアミドであることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、疎水性ホモポリマーの分子量が500〜300,000であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項6】
請求項5において、該ブロック共重合体の分子量が3,000〜500,000であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項において、前記疎水性ホモポリマーは、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これにビニル系モノマーを光照射リビング重合させたスター型重合体であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項8】
請求項7において、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に3個以上有する化合物は、ベンゼン環を核とし、この核に分岐鎖として3個以上の該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が結合していることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項9】
請求項7又は8において、ビニル系モノマーがアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項10】
請求項9において、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数が1〜20であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項11】
請求項10において、アルキル(メタ)アクリレートがエチルアクリレートであることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項において、前記所定温度(T)は、10〜30℃の間の温度であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項において、疎水性薬剤は開存性向上改質剤であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項14】
請求項13において、開存性向上改質剤は、免疫抑制剤、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A還元酵素阻害薬又は抗血栓剤であることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。
【請求項15】
請求項14において、
免疫抑制剤は、シクロホスファミド、シクロスポリン又はタクロリムスであり、
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A還元酵素阻害薬はプラバスタチン、アトルバスタチン又はシンバスタチンであり、
抗血栓剤はアルガトロバンであることを特徴とする疎水性薬剤トラップ剤。

【公開番号】特開2008−13511(P2008−13511A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187977(P2006−187977)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】