病原体の検出および分析のための方法および装置
【課題】微小流体の分析を実行するための方法および装置の提供。
【解決手段】統合された空気マニホルドに関連するモノリシックエラストマ膜により、流体を分離、経路指定、合流、分割、および貯蔵するための構造など、様々な流体制御構造の高密度の配列を、配置および作動させることが可能になる。流体制御構造は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびキャピラリ電気泳動(CE)分析など、統合的な免疫親和捕捉および分析を備える病原体検出および分析システムを実施するために用いることができる。被分析溶液は、デバイスに入力されると、細菌、ウィルス、および細菌胞子など、様々な種類の微生物有機体を対象とした抗体を有する微細加工されたチャンバ内の一連の免疫親和捕捉マトリクスを通してポンプによって送られてよい。免疫捕捉チャンバは、さらなる分析工程のために、ターゲットを捕捉、精製、および濃縮することができる。
【解決手段】統合された空気マニホルドに関連するモノリシックエラストマ膜により、流体を分離、経路指定、合流、分割、および貯蔵するための構造など、様々な流体制御構造の高密度の配列を、配置および作動させることが可能になる。流体制御構造は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびキャピラリ電気泳動(CE)分析など、統合的な免疫親和捕捉および分析を備える病原体検出および分析システムを実施するために用いることができる。被分析溶液は、デバイスに入力されると、細菌、ウィルス、および細菌胞子など、様々な種類の微生物有機体を対象とした抗体を有する微細加工されたチャンバ内の一連の免疫親和捕捉マトリクスを通してポンプによって送られてよい。免疫捕捉チャンバは、さらなる分析工程のために、ターゲットを捕捉、精製、および濃縮することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原体の検出および分析に関する。一例では、本発明は、微小流体制御構造を用いて実施される標本の準備、処理、検出、および分析のためのシステムを提供する。別の例では、本発明は、高スループット分析の用途のために、高密度配列の流体制御素子を製造するための頑強な技術を提供する。
【背景技術】
【0002】
微小流体分析のための従来の機構には限界がある。一部の利用可能な機構は、単一チャネルの分離デバイスと、複数チャネルの分離デバイスとを含む。他の機構は、いくつかの標本の準備および分析の工程を備える分析器を含む。しかしながら、流体制御が可能な多くの微小流体分析デバイスは、多くの化学的または生化学的分析と化学的または物理学的に互換性がない。さらに、多くの微小流体制御素子は、加工プロセス、頑健性、および/または、設計における制限のために、高密度配列で加工することが困難である。多くの従来のデバイスは、流体制御を維持するために持続的に作動させることが必要である。かかるバルブを用いる微小流体デバイスは、デバイスの流体の内容物の制御を失うことなしに制御システムから取り外すことができない。さらに、微小流体分析のための多くの技術および機構は、感度、特異性、または、定量的な分析の能力に欠けている。特に、従来の微小流体分析機構は、病原体の検出器および分析器などのシステムのために標本の準備を効率的に行う機能および能力に欠けている。
【0003】
したがって、バルブ、ポンプ、ルータ、反応炉など、微小流体制御機構を実施するための方法および装置を改良して、微小流体デバイスにおける標本の導入、準備処理、および分析能力の効果的な統合を実現することが望まれている。一例では、偽陽性が少なく高スループットかつ安価な連続監視を実現する病原体の検出器および分析器として用いることのできる単一チャネルシステムおよびアレイシステムの両方を実施するのに利用可能な微細加工の効率を有する微小流体デバイスを提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0004】
微小流体の分析を実行するための方法および装置が提供されている。統合されている空気マニホルドに関連するモノリシックエラストマ膜により、流体を分離、経路指定、合流、分割、および貯蔵するための構造など、様々な流体制御構造の高密度の配列を、配置および作動させることが可能になる。流体制御構造は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびキャピラリ電気泳動(CE)分析など、統合的な免疫親和捕捉および分析を備える病原体検出および分析システムを実施するために用いることができる。被分析溶液は、デバイスに入力されると、細菌、ウィルス、および細菌胞子など、様々な種類の微生物有機体を対象とした抗体を有する微細加工されたチャンバ内の一連の免疫親和捕捉マトリクスを通してポンプによって送られてよい。免疫捕捉チャンバは、さらなる分析工程のために、ターゲットを捕捉、精製、および濃縮することができる。
【0005】
一実施形態では、病原体検出システムが提供されている。そのシステムは、微小流体デバイスに統合されている免疫捕捉チャンバを備える。免疫捕捉チャンバは、微小流体チャネルを通して免疫捕捉チャンバに供給されるターゲットを捕捉することができる。そのシステムは、さらに、免疫捕捉チャンバに関連付けられているDNA分析機構を備える。DNA分析機構は、微小流体デバイスに統合されている。DNA分析機構は、ターゲットに対してDNA分析を実行できる。
【0006】
別の実施形態では、モノリシックデバイス上の病原体検出システムが提供されている。そのシステムは、モノリシックデバイスに統合されている複数の免疫捕捉チャンバを備える。免疫捕捉チャンバは、微小流体チャネルを通して免疫捕捉チャンバに供給されるターゲットを捕捉することができる。そのシステムは、さらに、免疫捕捉チャンバに関連付けられている複数のDNA分析機構を備える。複数のDNA分析機構は、モノリシックデバイスに統合されている。複数のDNA分析機構は、ターゲットに対してDNA分析を実行できる。
【0007】
別の実施形態では、病原体分析のための方法が提供されている。被分析流体が、モノリシックデバイスに統合されている複数の免疫捕捉チャンバに、微小流体チャネルを通じて供給される。免疫捕捉チャンバにおいて、被分析流体に関連するターゲットが捕捉される。複数の免疫捕捉チャンバと関連付けられている複数のDNA分析機構を用いて、ターゲットに対してDNA分析が実行される。複数のDNA分析機構は、モノリシックデバイスに統合されている。
本発明に関する上述およびその他の特徴と利点は、本発明の原理を例示的に説明する本発明の明細書および添付の図面を参照して詳細に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図1B】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図1C】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図1D】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図1E】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図2A】ダイヤフラムポンプを示す図。
【図2B】ダイヤフラムポンプを示す図。
【図3】流体ルータを示す平面図。
【図4】混合ループを示す平面図。
【図5A】流体容器を示す図。
【図5B】流体容器を示す図。
【図5C】流体容器を示す図。
【図5D】流体容器を示す図。
【図6】バスバルブを示す図。
【図7】病原体検出システムを示す図。
【図8】免疫親和捕捉バルブ機構を示す図。
【図9】免疫親和捕捉バルブ機構を示す図。
【図10A】被分析物の捕捉を示す図。
【図10B】免疫親和捕捉のための被分析物の経路指定を示す図。
【図11】免疫親和捕捉と統合可能なPCRおよびCEを示す図。
【図12】組み合わされた免疫捕捉およびPCRチャンバを示す図。
【図13A】病原体検出システムを示す図。
【図13B】微細加工の段階を示す図。
【図14】放射状配列の病原体検出システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明を実施するために発明者が考慮した最良の実施形態を含む本発明のいくつかの具体的な実施形態について説明する。これら具体的な実施形態の例は、添付の図面に示されている。本発明は、これら具体的な実施形態に関連して説明されているが、説明されている実施形態に本発明を限定する意図はない。逆に、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の趣旨および範囲に含まれうる代替物、変形物、および等価物を網羅するよう意図されている。例えば、本発明の技術は、ガラス製の微小流体デバイスに関連して説明されているが、プラスチック製のデバイスなど、他のデバイスを用いることも可能である。
【0010】
ガラス製の微小流体デバイスの利用に適した流体制御構造は、様々な微小流体デバイスに適用可能であることに注意されたい。流体制御構造が役立つ用途の好例としては、病原体検出システムが挙げられる。以下の説明では、本発明の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が記載されている。本発明は、これら具体的な詳細事項の一部あるいはすべてがなくとも実施可能である。また、本発明を不必要にわかりにくくすることを避けるために、周知の処理動作については、説明を省略した。
【0011】
微小流体分析技術の分野は、初期の単一チャネル分離デバイスから急速に発達してきた。一部のデバイスは、正弦標本準備および分析を1つのチップに統合した高スループットの分析および分析器のための複数チャネル分離デバイスを含む。複数チャネル分析と、統合された標本準備との両方を組み合わせたデバイスは、様々な分析を実行する際に必要な資源の量およびコストを低減することができる。その実例は、ゲノム学の分野に見いだすことができる。すなわち、配列決定のための標本の準備、精製、電気泳動分析を統合することにより、分析時間およびコストが低減され、分析の処理効率および頑健性が増大される。すべての場合において、微小流体デバイスの高度な統合を行うには、大量の流体を分離、経路指定、合流、分割、および貯蔵するためのチップ機構の頑健性が必要になる。
【0012】
シリコン、ガラスシリコン、ポリマ、およびエラストマの微小流体デバイスで用いられる一部のバルブ技術については、上述の要件を満たすには限界があった。しかしながら、これらの技術の多くは、多くの化学的または生化学的分析と化学的または物理学的に互換性がない。さらに、多くの技術は、ガラス製の微小流体デバイスで利用できる頑健な表面改質剤の多様性に欠けている。加えて、個々の微小流体バルブは、通例、個々の膜が通常時に開状態を保持されるように加工される。通常時に開状態のバルブを用いる場合には、流体制御を維持するために恒常的な作動を必要とする。かかるバルブを用いる微小流体デバイスは、デバイスの流体の内容物の制御を失うことなしに制御システムから取り外すことができない。さらに、一部の典型的なデバイスは、個々に配置されたラテックスの膜を用いる。個々に配置され空気圧で作動されるラテックスの膜が開発されたが、この加工方法は、複数チャネルの高スループット分析デバイスへの大規模集積の妨げとなる。
【0013】
別の微小流体デバイスは、陽極に接着されたシリコンとガラス製のウエハとを用いて加工され、圧電によって作動される。しかしながら、シリコンの導電性および化学的な互換性から、分析デバイスでの利用が困難である。シリコンに接着または蒸着された薄膜によって、導電性および化学的な互換性を部分的に軽減できるに過ぎない。
【0014】
エラストマ製のデバイスについても説明する。しかしながら、エラストマ材料の疎水性および多孔性により、エラストマ製のデバイスは、多くの化学的または生化学的分析と互換性がない。したがって、エラストマの表面との流体の接触を最小限にすることが望まれる。複雑な加工、化学的な互換性、信頼性のない流体操作などの問題から、既存の流体操作技術は、大規模かつ高スループットのラボオンチップ・デバイスへの組み込みには不十分である。
【0015】
したがって、本発明の技術および機構は、微小流体デバイスへの高密度集積に適したモノリシック膜バルブ構造を提供する。また、モノリシック膜バルブ構造に基づく様々な流体制御構造も提供されている。
【0016】
モノリシック膜を有する微小流体デバイスは、1つのチップに病原体検出システムを実装するのに特に適したデバイスの一例である。様々な実施形態によると、病原体検出システムは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびキャピラリ電気泳動(CE)機構など、免疫捕捉およびDNA分析機構を含む。一例では、病原体検出システムは、様々な流体制御構造を有するガラス製の微小流体デバイスに実装されてよい。
【0017】
図1Aないし1Eは、ガラス製の微小流体デバイスに実装可能なモノリシック膜バルブを示す図である。図1Aは、モノリシック膜バルブを示す上面図である。図1Bは、バルブを有する3層デバイスを示す側面図である。図1Cは、バルブを有する4層デバイスを示す側面図である。図1Dは、3層デバイスの開バルブを示す側面図である。図1Eは、開バルブの4層デバイスを示す側面図である。図1Aおよび1Bに示した様々な実施形態によると、3層ガラス製微小流体デバイスは、2つのガラスウエハ101と105の間に挟まれたエラストマ膜111を備える。一例では、エラストマ膜は、イリノイ州エルクグローブのBisco Siliconsから254μm厚のHT−6135およびHT−6240膜として入手可能なポリジメチルシロキサン(PDMS)の膜である。他の柔軟な膜を用いることも可能である。エラストマ膜111は、ウエハの間に可逆的であるが強固な接着を提供する。
【0018】
接着の前に、流体を運ぶための流体チャネル103が、ウエハ内にエッチングされる。同様に、加圧下または真空下で空気またはその他の作用流体を運んでバルブを作動させるためのマニホルドチャネル107およびバルブ領域109がエッチングされる。通例、空気チャネル107および109は、一方のウエハ105(以後、空気ウエハと呼ぶ)に配置され、流体チャネルは、第2のウエハ101(以後、流体ウエハと呼ぶ)にエッチングされる。これらのエッチングされたチャネル形状は、膜に対して直接的に接触して、図1Bに示すような複合型のガラス/エラストマチャネルを形成することができる。
【0019】
あるいは、膜は、図1Cの4層デバイス150に示すように、熱接着された完全ガラス製の流体ウエハサンドイッチ構造(XY)と、空気ウエハ159との間に配置されてもよい。完全ガラス製のチャネルを有することにより、ガラスの持つ好ましい物理的および化学的特性が、デバイスに役立つ。好ましい物理的および化学的特性を有する任意の層を、化学的に不活性な層と呼ぶこととする。化学的に不活性な層は、XYの加工に用いられてよい。一例では、XYを構成する151および155のサンドイッチ構造は、ガラスから形成される。
【0020】
4層デバイスの一例は、ビアウエハ155に熱接着された流体ウエハ151を備える。直径の小さいビアホールが、流体チャネル153内の断絶部分に配置される。エラストマ膜157は、流体/ビアウエハのサンドイッチ構造XZのビアウエハ155側に貼り付けられる。バルブたわみチャンバ161が、マニホルドウエハ159にエッチングされて、膜157に接着され、4層デバイス150が完成される。このように、流体チャネル153は、完全ガラス製の化学的に好ましい構成を保持すると共に、大規模集積の流体制御構造の実装を可能にする。一部の実施形態では、図1Cに示された4層デバイスは、標本とエラストマ膜との接触を最小限に抑えることから、3層デバイスを大幅に超える利点を提供する。
【0021】
様々な実施形態によると、モノリシック膜デバイス内の様々な流体制御構成要素は、空気ウエハの穴に圧力または真空を作用させることにより作動される。本明細書では、任意の単一の膜を、モノリシック膜と呼ぶこととする。また、本明細書では、モノリシック膜を備える任意の単一のデバイスを、モノリシックデバイスと呼ぶこととする。本明細書では、空気ウエハに関連するエッチングされたチャネルに圧力または真空を供給するための機構を、ポートまたは空気ポートと呼ぶこととする。3層デバイスでは、空気ウエハにエッチングされたチャネルは、エラストマ膜111のバルブ領域109に作動真空を分配する。図1Dに示すように、マニホルドチャネルを通してバルブ領域109に真空を作用させると、チャネル断絶部分から遠ざかるように膜が引っ張られて、断絶部分を流れる流路が提供され、バルブが開放される。本明細書では、空気圧を用いて開閉できるバルブを、開閉可能なバルブまたは空気開閉可能なバルブと呼ぶこととする。
【0022】
空気圧を作用させる工程は、圧力を作用させる工程と、真空を作用させる工程の両方を含む。したがって、膜157は、図1Dに示すように、隣接する流体チャネル内の流体の流れを調節することができる。図1Dにおいては、空気ウエハ105に関連するエッチングされたチャネルを通してバルブ領域109に真空が作用されて、流体チャネル103が開放されている。真空の圧力すなわち吸引力が、バルブ領域109に作用されなくなると、膜111は、図1Bに示すように、流体チャネル103を閉じる。図1Eは、4層デバイスを示している。4層デバイスは、チャネル層151と、チャネル153と、ビア層155と、膜層157と、空気層159とを備える。上述のように、4層デバイスは、一部の場合においては標本とエラストマ膜との接触をバルブ領域161のみに限定することから、3層デバイスを大幅に超える利点を提供する。
【0023】
図に示した構造は、任意の方向に配置されてよいことに注意されたい。一部の例では、バルブが、デバイスに関して反転されてもよい。空気層は、流体層の上側に配置されても下側に配置されてもよい。重力が、膜バルブに悪影響を与えないことから、本発明の技術は、様々な方向の配置を許容する。
【0024】
流体制御構造は、様々な利点を提供する。例えば、モノリシック膜バルブは、通常時には閉バルブであり、それは、デバイスが作動圧力源から取り外された際にもバルブが閉状態を保つことを意味する。通常時に開状態となる既存の微小流体バルブは、デバイスの流体内容物の制御を維持するために恒常的な作動を必要とする。さらに、形状記憶合金の構造と違って、バルブ構造の開閉温度が両方とも常温であるため、水を含む生体液での作業が容易になる。
【0025】
多くの典型的な実施例では、様々な流体制御機構を操作するために、微小流体デバイス間のインターフェースが数多く必要になる。しかしながら、本発明の様々な実施形態によると、膜における複数領域の空気制御チャネルを結合することによって、それら複数領域を並列に作動させることもできる。一例では、単一の空気ポートを用いて、一連のバルブを制御することができる。したがって、限られた数の外部インターフェースすなわち空気ポートを用いて、かなりの数のバルブを制御することができる。これにより、実装が簡単になり、デバイスとの接続の際の問題が最小限に抑えられる。様々な実施形態によると、このようにバルブを制御することにより、デバイス内のバルブ、ポンプ、貯蔵容器、ルータ、およびその他の流体制御構造を動作させるためのモノリシック膜の大規模並列の空気作動が可能になる。
【0026】
膜バルブは、様々な流体制御機構の形成に用いられてよい。図2Aおよび2Bは、膜バルブを用いて形成されたポンプを示す図である。図2Aおよび2Bに示された様々な実施形態によると、直列に配置された3つのバルブが、ダイヤフラムポンプ210を形成している。5工程のサイクルに従ってバルブを作動させることにより、ポンプ動作が実現される。図2Aは、3層モノリシック膜ダイヤフラムポンプを示す上面図である。図2Bは、3層モノリシック膜ダイヤフラムポンプを示す側面図である。ダイヤフラムポンプは、入力バルブ201と、ダイヤフラムバルブ203と、出力バルブ205とを備える。ダイヤフラムポンプは両方向に動作可能であるため、入力バルブおよび出力バルブの指定は任意であることに注意されたい。ポンプは、エッチングされた流体チャネル211と、モノリシック膜207と、マニホルド層213とを有する流体層209を備える。バルブが有する気密性により、ポンプは、自吸式となるため、他の気体および流体に加えて空気にもポンプ動作を行うことができる。
【0027】
様々な実施形態によると、一連の段階で、ポンプ動作を実行することができる。第1の段階では、出力バルブ205が閉じられると共に、入力バルブ201が開かれる。第2の段階では、ダイヤフラムバルブ203が開かれる。第3の段階では、入力バルブ201が閉じられる。第4の段階では、出力バルブ205が開かれる。第5の段階では、ダイヤフラムバルブ203が閉じられ、開かれた出力バルブ205を通して被分析流体が送出される。
【0028】
1サイクル当たりのポンプの送出量は、開かれたダイヤフラムバルブ内に含まれる量、すなわち、ダイヤフラムバルブ内の空気チャンバのサイズによって決まる量によって決定される。したがって、ダイヤフラムバルブの空気チャンバのサイズを調節することにより、既知のナノリットルからマイクロリットルの尺度の量の流体を測定するために設計されたポンプを加工することができる。ダイヤフラムポンプは、自吸式であり、作動周期を逆転することにより順方向と逆方向に流体を送ることができる。また、膜がガラスシーリング面に接触するバルブ台は、膜とガラス面との接着を制御するための尾根またはその他の表面構造を有するようエッチングされてよいことに注意されたい。
【0029】
モノリシックバルブは、ルータ、合流手段、および分割手段を形成するために用いられてもよい。以下の構造は、3層構造に関して説明されているが、4以上の層を用いて実施してもよいことに注意されたい。図3は、ルータ300を示す図である。ルータは、バルブ301、303、305、および317と、空気チャネル331、333、335、337、および339と、流体チャネル321、323、325、および327と、ダイヤフラムバルブ309とを備える。ルータは、ポンプ動作サイクル中のどの時点でどの入力/出力バルブが作動されるかに応じて、任意の入力から任意の出力に流体を送る。2以上の入力バルブを同時に作動させることにより、いくつかの異なる流体の流れが、出力バルブにおいて1つの流れに合流される。逆に、2以上の出力バルブを同時に作動させることにより、1つの流体の流れが、出力バルブにおいていくつかの異なる流れに分割される。
【0030】
例えば、流体をチャネル327からチャネル321に送るには、バルブ301および305が閉状態に保たれる。これで、バルブ317、309、および303が、上述のように、ポンプとして用いられることが可能になる。ルータは、流体チャネルを合流および分割する機能を有する。流体をチャネル325および327からチャネル323に合流させるには、バルブ303が閉状態に保たれる。流体をチャネル321からチャネル323および327に分割するには、バルブ301が閉状態に保たれる。さらに別の例では、チャネル327を通して導入された流体をチャネル325に送るために、バルブ303および305が閉状態に保たれる。バルブ317および301の開放が可能となり、チャネル327を通してのチャネル325への流体の流れが実現する。なお、様々な構成が可能である。
【0031】
モノリシックバルブを用いて、混合ループが形成されてもよい。一例では、デバイスの2つの領域間で流体を移動させることにより、混合を実行することができる。混合は、すべての種類のオンチップ動作を実行するために用いられてよい。図4は、混合ループ400を示す図である。混合ループは、バルブ401、403、および405と、流体チャネル411、413、および415と、空気チャネル421、423、および425とを備える。さらなるバルブ付きのチャネルが、ループに接続し、混合器への流体の出入りを提供している。2種類以上の流体が、チャネル413および415を通して混合ループ内に流入され、それらの流体が拡散によって混合されるまで、上述のように周期的にポンプで送られる。次いで、混合物は、混合ループからポンプで送出されてよい。また、2つの容器の間で流体を往復移動させることにより、混合を実現してもよい。
【0032】
図5Aないし5Cは、容器500を示す図である。図5Aは、エッチングされた移動チャンバを備えた容器を示す上面図である。図5Bは、容器の側面図である。図5Cは、満たされた容器を示す側面図である。図5Dは、ドリルによって形成された移動チャンバと、自律的な流入/流出のためのポンプとを備えた大容量容器を示す側面図である。容器は、流体ウエハ511との間に膜505を挟む空気ウエハ513に備えられている。容器は、チャネル501を通して満たされたり空にされたりすることが可能である。様々な実施形態によると、バルブ領域503内の開かれたモノリシック膜バルブは、オンチップ流体貯蔵のための容器として機能する。空気ウエハ513内のチャンバのサイズは、容器内に貯蔵される流体の量を決定する。容器は、真空を作用させることにより満たされ、圧力を作用させることにより空になる。
【0033】
様々な実施形態によると、エッチングされた空気チャンバの代わりにドリルで空けられた穴を用いて、その穴に直接的に作動圧力または真空を作用させることにより、大量の流体を貯蔵するための容器を加工することができる。あるいは、容器をダイヤフラムポンプに接続することにより、直接的な空気の接続を持たない容器を加工してもよい。図5Dは、ポンプに接続された容器503を示す図である。容器は、ポンプ動作の方向によって充填または排出されるため、容量が可変であるという利点を有する。一例では、バルブ531、533、および535などのポンプは、容器503に対する流体の充填または排出のために用いられる。
【0034】
1以上の流体入力を備えたモノリシック膜容器は、オンチップ反応炉として機能する。容器と同様に、反応炉は、空気マニホルドウエハを通して加えられる直接的な圧力または真空を用いることにより、反応物質を吸い込み、生成物を放出することができる。あるいは、反応炉は、統合されたポンプ、混合器、および/またはルータ構造を間接的に用いて、反応物質を吸い込み、生成物を放出することができる。様々な実施形態によると、反応炉の容量は、空気ウエハ内のチャンバ503のサイズによって規定されるため、流体ウエハの構造の配置を大きく変えることなく、任意の容量を持つ反応炉を、デバイスの任意の点に設けることが可能である。また、反応炉は、可変量の反応物質を含むオンチップ反応の必要に応じて、部分的に満たされてもよい。
【0035】
ほとんどのエラストマ膜は、気体透過性を有し、この特性は、これまで、すべてのエラストマデバイスに対して流体の充填を簡単にするために用いられてきた。
【0036】
様々な実施形態によると、膜の気体透過性により、気泡およびエアポケットを排除できる。作動真空をモノリシック膜反応炉またはその他の流体構造に作用させると、気体を発生する反応による気泡を排除できる。例えば、気体透過性の膜は、PCRの反応物質のオンチップ温度サイクリングの間に生成されて反応混合物の閉じこめの失敗につながりうる気泡を低減することが可能である。
【0037】
複合微小流体デバイスは、流体バスに接続されているいくつかの独立したモジュールを備えてよい。一例では、そのデバイスは、複数の異なる流体チャネルに被分析流体を供給するのに有用である。別の例では、様々な試薬が、微小流体デバイスへ導入されてよい。図6は、被分析流体を分配するために利用可能なバスバルブ600を示す図である。バスバルブ600は、流体を流体バスチャネル611から流体チャネル621、623、625、および627に送るよう設計されたバルブ601、603、605、および607を備える。空気チャネル631、633、635、および637は、流体の分配を制御するためのバルブを管理する。典型的なバスバルブの実施例は、バス側にデッドボリュームを有する。デッドボリュームは、流体の経路指定動作の合間に完全にバスを洗浄することを困難にする。様々な実施形態によると、本発明の技術は、バス側にデッドボリュームをほとんどまたは全く持たないバスバルブを提供する。これにより、流体の経路指定動作の合間に完全にバスを洗浄することが可能になり、デバイスの動作中の異なる流体間での混合すなわち交差汚染が防止される。
【0038】
微小流体デバイスの機構は、様々な技術を用いて加工されてよい。様々な実施形態によると、チャネル形状は、例えば、標準的な湿式化学エッチングを用いて、ガラスウエハにエッチングされる。ガラスウエハ(厚さ1.1mm、直径100mm)は、LPCVD炉またはスパッタリングシステムを用いて、ピラニア洗浄され(20:1)、犠牲(200nm)ポリシリコンエッチングマスク層で被覆される。3層または4層設計のデバイスには、ボロフロートガラスウエハすなわちSchott D263ホウケイ酸ガラスウエハが用いられる。ポリシリコンの蒸着後、ウエハは、ポジティブフォトレジストでスピンコーティングされ、軽く焼成されて、接触式アライナでパターン化される。フォトレジストのUV露出領域は、Microposit現像液の中で除去される。ポリシリコンの露出領域は、SF6プラズマ内でのエッチングによって除去される。ウエハは、所望のエッチング深さに到達するまで、HF溶液(ボロフロートウエハに対しては49%のHF、D263ウエハに対してはHF:HCl:H2Oを1:1:2で混ぜた溶液)内で7μm/minで等方的にエッチングされる。
【0039】
様々な実施形態によると、流体チャネルウエハは、3層デバイスについては20μmの深さ、4層デバイスについては40μmの深さまでエッチングされる。マニホルドウエハは、3層デバイスについては70μmの深さまでエッチングされ、4層デバイスについてはバルブ位置にドリルで穴を空けられる。次いで、残りのフォトレジストおよびポリシリコンは、それぞれPRS−3000およびSFプラズマによって、ウエハから剥離される。流体およびマニホルドウエハを貫くアクセス穴がドリルによって空けられ、ウエハは、再びピラニア洗浄される。
【0040】
一部の例では、3層設計を用いるデバイスは、ドリルまたはエッチングによって形成された移動チャンバが、バルブ台からPDMS膜を隔てて、どの方向に配置された場合でも、流体チャネルウエハ内のエッチングされた形状の上にPDMS膜(254μm厚HT−6135およびHT−6240、イリノイ州エルクグローブのBisco Silicones)を貼り付け、バルブと共にマニホルド複合ガラス−PDMS流体チャネルを圧迫することにより、組み立てられる。4層設計を用いるデバイスは、まず、一対の直径254μmのドリルによるビアホールをチャネルのギャップの位置に対応するよう位置決めした状態で、流体チャネルウエハを210μm厚D263ビアウエハに熱接着することにより組み立てられる。流体チャネルおよびビアウエハは、真空炉(カリフォルニア州ユカイパのJ.M.Ney)内で3.5時間570℃で加熱することにより接着される。それにより形成された完全ガラス製のチャネルを含む2層構造は、次に、PDMS膜およびマニホルドウエハに接着される。このように形成されたガラス−PDMS間の接着は、可逆的であるが、デバイスに与えられる範囲の真空および圧力に耐えるほど十分に強い。必要に応じて、組み立ての前にUVオゾンクリーナ(カリフォルニア州アービンのJelight Company Inc.)でマニホルドウエハおよびPDMS膜を洗浄することにより、不可逆的なガラス−PDMS間の接着が得られる。
【0041】
上述の微小流体デバイスの機構は、様々なデバイスの実施に用いることができる。バルブおよびポンプを備える特徴は、標本の準備および分析の工程を1つのデバイスに統合できる複数チャネルのラボオンチップ機器を提供するために柔軟に構成されることが可能である。微小流体プラットフォームは、特に、統合病原体検出システムを実施できる単一のデバイスとして適切である。
【0042】
従来の高速病原体検出システムは、酵素免疫測定法(ELISA)または蛍光免疫測定法(FIA)を利用した検出を用いる。通例、検出は、分析される特定の抗体の固定化、標本溶液での培養、現像および検出の前の酵素または蛍光プローブに結合したサンドイッチ抗体での認識を含む。免疫蛍光検出法も用いられる。しかしながら、これらの検査の各々に関する制限は、比較的厳しい。
【0043】
PCRを利用した遺伝子検出および同定の様々なフォーマットも、高い特異性と増幅率のために一般的に利用されている。しかしながら、DNAを利用したPCRの方法は強力ではあるが、生存および非生存の病原体の両方に陽性の反応をすることから、偽陽性を引き起こす場合がある。そのため、急速に分解する性質のため、検出の際に生きたターゲットが必要なことから、RNAターゲットの検出が好まれる場合がある。
【0044】
様々な別の検出方法も提案されている。質量分析法は、中性脂質、極性脂質、および胞子に特有のバイオマーカの検出によって病原体、胞子、およびその他の生体を検出するために開発された。しかしながら、質量分析法の速度、スループット、および可搬性は明白ではなく、特異性は実証されていない。
【0045】
例えば、土壌、空気などからの炭疽菌のような胞子の検出は、感染性が高い(10胞子/Lで10分の場合、10,000胞子の空気感染量が起こりうる)ため困難である。最も進んだ検出の概念は、薄膜ヒータを備えたシリコンの微小反応炉内で実行されるPCR生成物のリアルタイム検出と、統合された蛍光励起および検出とを用いる。このシステムは、後に、10チャネルの先進核酸分析器(ANAA)と、携帯型とに拡張された。このシステムのバージョンは、軍事用や郵便局用も開発されている。リアルタイムPCR分析のために統合された(複数マイクロリットルの)標本処理を備えたGeneXpert標本準備システムも開発されている。
【0046】
自動化された複雑な最前線の化学反応の実行と、病原体濃度および抗生物質に対する耐性の定量化を迅速に実行する携帯型分析が開発されれば、大きな前進になるだろう。同様に、高スループットで非常に低い偽陽性で高速に多数の標本を検出および同定する(すなわち、複数標本をスクリーニングする用途での)能力も、多数の標本または感染の可能性のある個体がスクリーニングされる必要のある場合に有用であり、すなわち、自動臨床分析器への前進となった。一例では、基本的に一般の自動分析器の小型版である血液臨床分析用の複雑な微小流体回路システムが開発された。マイクロアレイでのHIV分析用の血液からの標本を準備するために用いられる完全統合分析器(マイクロリットルの尺度)も開発された。このシステムは、多数の核酸の工程を含む複雑な分析を実行し、以下で詳述する>100nLデッドボリュームの空気膜バルブを用いるものであった。
【0047】
単純な圧力除去システムで流体を制御して、小型携帯システムでの免疫検査の性能を向上させる6つの異なる免疫検査センサにわたって溶液の流れを制御するためのルーサイト製の微小流体キューブが開発された。このフォーマットは、統合フローシステムと光ファイバ製のバイオセンサキャピラリとを用いて、10分の動作で4つの異なる物質を分析するRaptor携帯型分析器として開発された。アドレス可能なアレイという独特の特徴が認識され、自動化された電界駆動免疫捕捉およびDNAハイブリダイゼーションアレイ解析を実行する統合型の積層微小ラボラトリが開発された。例えば、免疫捕捉に続いて、細菌は、鎖置換型増幅(SDA)のために放出され、次いで、増幅された志賀様毒素遺伝子のハイブリダイゼーション分析が実行される。しかしながら、多重標本分析は実行されず、検出の制限は研究されていない。
【0048】
従来の微細加工はシリコンでなされるが、化学および生化学の分析では、ガラス製の微小流体構造が、好ましい化学的および電気泳動の特性を示すことがわかっており、プラスチック構造への拡張が進んでいる。高スループットの用途では、本発明の技術は、96から384断片のサイズ決定または配列決定用の分離物の高速な並列分析を可能にする放射状のチャネル配置を提供する。PCRとCE分析とを1つのチップに直接的に統合すると、酵素によるDNAの分解と親和捕捉とが提供される。
【0049】
様々な実施形態によると、本発明の微小流体デバイス機構は、チャンバ、バルブ、CE分析チャネルの複雑な配列の形成を可能にする複雑なチャネル構造の形成を実現する。これらのCEチャネルのサイズの小ささと、交差した注入器の利用により、非常に高速で高解像度の電気泳動分離の性能が実現される。クロマトグラフのカラムまたはキャピラリで実行されていたほぼすべての動作が、1つのチップのフォーマットに組み込まれることで、必要な標本量が低減されると共に分析時間および感度が改善される。
【0050】
様々な実施形態によると、本発明の病原体検出システムは、感度と共に特異性および定量化の属性を有するため、特に有用な分析を提供する。多くの病原体は、>103の細菌の摂取で感染するが、V.choleraは、105未満が経口で摂取されても症状を引き起こさず、B.anthracisについては、はるかに低いレベルで影響があると考えられている。脅威となるものを同定して処置を決定するためには、病原性を持つものと持たないものとを区別できるように株を同定することと、特定の毒素または抗生物質耐性遺伝子の存在を特定することが重要である。さらに、細菌の濃度または分量を決定して、同定すると共にこれを量的に報告する能力は、背後の課題と重要な課題とを区別する。
【0051】
図7は、病原体検出システム700の一例を示す図である。被分析物は、チャネル701を通して免疫親和捕捉チャンバ703、713、および723に導入され、チャネル731で廃棄物が収集される。様々な実施形態によると、入力された細菌の混合物を捕捉、濃縮、および階層化して、一連の別個の免疫チャンバ703、713、および723に導入するために、免疫親和試薬が用いられる。この簡単なプロセスは、病原体検出を追跡する微小流体システムの用途での障害となっていた重要なマクロからマイクロへのインターフェースに対処するものである。免疫捕捉の第1段階は、分析の特異性を増大させるのに大きな役割を果たす。感度の増大を実現するために、次に、病原体検出システムのユーザは、PCRを用いて物質の存在の冗長な確認を行い、さらに、特定のプライマに基づく方法またはPCRなどのより一般的な遺伝子型特定方法を開発して、DNA分析機構705、715、および725により、特定の株、毒素遺伝子の存在、および抗生物質耐性マーカを特定する。一例では、DNA分析機構705、715、および725は、PCRおよびCEを含む。
【0052】
様々な実施形態によると、免疫親和捕捉チャンバ703、713、および723は、PCRチャンバと統合されるが、CE機構は別個のままである。免疫捕捉および核酸分析を組み合わせると、個々の分析の感度および特異性が劇的に向上される。
【0053】
病原性を持つものと持たないものとを遺伝的に区別する能力は、多くの用途で重要である。前工程としての免疫捕捉とPCR分析とを組み合わせると、入力された細菌のポピュレーションに対して有効な精製が実現されるため、不純で複雑な「実世界の」標本でしばしば見られるPCR阻害物の存在に関する不安に対処できる。様々な実施形態によると、病原体検出システムは、入力されたターゲットポピュレーションの定量化が維持および報告されるように、低サイクル数の(漸近的ではない)レジメでPCRを実行するよう設定される。多くの例で、次に、処理された標本に対してCE分析を施すことができる。現代の微小流体技術を利用することで、小さい携帯型で、動作に必要な電力、資源、および技量が最小限の安価、高速、および頑丈な分析システムが提供される。
【0054】
病原体分析器には、統合された免疫親和捕捉チャンバが備えられている。フリット、ビーズ、ゲル、モノリス、およびポリマなど、様々な捕捉機構を用いることができる。図8および9は、シリカのフリットまたはビーズを用いて実装された免疫捕捉チャンバを示す図である。様々な実施形態によると、免疫捕捉チャンバは、シリカの粉末とケイ酸ナトリウムの結合剤との混合物でウエハの穴を満たすことにより加工された一連のシリカフリットを備える。脱水および洗浄されると、ケイ酸塩がシリカゲルに濃縮され、不溶性のシリカフリットが、801、803、805、および807において形成される。
【0055】
様々な実施形態によると、1.1mmの厚さのガラスウエハに形成された各シリカフリットは、1mmの直径を有する。免疫捕捉チャンバは、被分析物を導入および排出するためにチャネル821と結合されている。ウエハ内のフリットは、膜811および813とバルブとポンプ構造とを含むデバイス内に、容易に統合されることが可能である。図8において、4つのシリカフリット801、803、805、および807は、膜811および813によってシーリングされている。各フリットの大きいシリカ表面は、様々な有機シラン試薬による化学的な誘導体化に適切である。デバイスの加工をさらに簡単にするために、モノリスウエハは、PDMSとデバイスの残り部分との非加熱的な接着の前に、化学的に誘導体化されてもよい。
【0056】
一例では、1.5μmのフリットまたはビーズのような機構が、捕捉チャンバ内に設けられることにより、胞子および細菌などの多くのマクロ種の捕捉が可能になる。多くのマクロ種の固相捕捉は、当業者に周知であり、Weimer,B.C.、M.K.Walsh、C.Beer、R.Koka、およびX.Wangの2001、「Solid Phase Capture Of Proteins, Spores, and Bacteria」、Appl Environ. Microbiology、67:1300−1307でよく特徴付けられている。一部の例では、補足にビーズ試薬を用いるために、チャンバは、ビーズ止めを提供するための堰構造とビーズ導入チャネルとを備えるよう変形される。動電学的なビーズベッド包装や堰ビーズ捕獲が、当業者に周知である。あるいは、免疫機能を持たせた磁性ビーズが、堰を設けずにチャンバ内に導入されてもよい。
【0057】
図9は、モノリスがシーリングされていない状態の開バルブを示す図である。様々な実施形態によると、領域901、903、905、907、および909において減圧がなされると、チャネル921に沿ってフリット931、933、935、および937を通して、被分析物が流れることが可能になる。加工されるデバイスには、任意の数のフリットが備えられてよい。
【0058】
図10Aは、被分析物の補足を示す図である。様々な実施形態によると、一連の免疫捕捉チャンバを通して、オリゴヌクレオチド、タンパク質、細胞などを含む被分析溶液を送るために、3つの膜バルブ1001、1003、および1005を備えるポンプ1000が用いられる。
【0059】
チャンバは、対象となるターゲットを補足するために様々な機構を用いることができる。免疫捕捉チャンバで捕捉されるよう構成された任意の対象物を、本明細書ではターゲットと呼ぶこととする。ターゲットを運ぶ流体または物質については、本明細書では被分析物と呼ぶこととする。一例では、ターゲットは、被分析流体に運ばれるサルモネラ菌またはリステリア菌である。
【0060】
他の例では、各捕捉チャンバは、ターゲット分子を選択的に捕らえるために、オリゴヌクレオチドプローブを含む粘性ポリママトリクスで満たされる。DNA分析の場合には、プライマや高塩分濃度のポリメラーゼ試薬を含むサンガー法のDNA配列決定の伸張産物が、電子対を共有するオリゴヌクレオチドプローブを含む固定されたアクリルアミドマトリクスを含む免疫捕捉チャンバを通して電気泳動される。捕捉体の配列は、DNA増幅産物のみがプローブによって補足されて、プライマおよびポリメラーゼ試薬は、塩と共にデバイスを通り抜けるように選択される。これは、注意深い分析という点で直面する複雑で汚れた混合物からターゲットの分子を精製する必要性と異なるものではない。
【0061】
機能化されたポリマ捕捉マトリクスを備えた微小捕捉チャンバの準備のための別の方法は、10−20μmの範囲の孔を有するモノリスの準備と、機能ポリマの薄い架橋された層によって改質された大きい微細加工素子(約100μm)表面を有するチャンバの準備とを含む。この方法は、ビーズを捕捉チャンバ内にパッキングすることが時に困難であることと、通常の動作に対するビーズベッドの機械的な安定性がしばしば不十分であることから有用である。様々な実施形態によると、多孔質(10−20μm)の表面で機能化されたポリマモノリスの成型ブロックは、モノマと多孔化剤とを含む前駆体混合物の光重合によって、捕捉チャンバ内に直接形成される。
【0062】
重合プロセスはUV光を用いて実現されるので、多孔質のポリマは、フォトリソグラフィを用いて微小流体デバイスの任意の所望の領域に形成可能である。前駆体混合物で満たされたガラスチップを用いるこのような「微小リソグラフィック」重合プロセスの動力学については、Yu,C.、F.Svec、およびJ.M.J.Frechetの2000、「Towards stationary phases for chromatography on a microchip Molded porous polymer monoliths prepared in capillaries by photoinitiated in situ polymerization as separation media for electrochromatography」、Electrophoresis、21:120−127、および、Yu,C.、M.Xu、F.Svec、およびJ.M.J.Frechetの2002、「Preparation of monolithic polymers with controlled porous properties for microfluidic chip applications using photoinitated free radial polymerization」、J. Polymer Sci.、40:755、に示されているように、すでに特徴付けられ、当業者に周知である。同様に、デバイスにおけるモノリシック材料の正確な位置や、その表面の化学的性質は、Rohr,T.C、C.Yu、H.M.Davey、F. Svec、およびJ.M.J.Frechetの2001、「Simple and efficient mixers prepared by direct polymerization in the channels of microfluidic chips」、Electrophoresis,22:3959、に示されている通り、当業者に周知のように、制御可能である。モノリシックポリマの多孔質の特性の制御は、多孔化剤の組成を調整することによって実現可能である。
【0063】
微細加工された素子を有するモノリスもしくは表面のいずれが用いられる場合でも、所望の結合素子を導入するために、同一の接合方法を用いることができる。目標は、これらのモノリスの多孔の表面に抗体を固定することなので、接合される化学物質は、容易にバイオポリマと反応するように指定される。一例では、表面の接合体に組み込まれた2−ビニル−4、4−ジメチルアズラクトンの単位は、迅速にタンパク質と反応できる。かかる機構は、Peterson,D.S.、T.Rohr、F.Svec、およびJ.M.J.Frechetの2002、「Enzymatic microreactor−on−a−chip protein: Mapping using trypsin immobilized on porous polymer monoliths molded in channels of microfluidic devices」、Anal.Chem.、74:4081:4088、に示すように、当業者に周知である。改質すべき表面(多孔質のモノリス、または微細加工素子)は、モノマ溶液に浸されることが可能であり、デバイスは、事前に選択された領域での接合を実現するためにUV光を照射されることが可能である。表面の機能化の程度は、反応溶液におけるモノマの濃度、UV光の照射時間および強度によって制御される。
【0064】
別の実施形態では、2−ビニル−4、4−ジメチルアズラクトン、エチレンジメタクリレート、およびアクリルアミドまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる多孔質のポリマモノリスに、トリプシンが固定される。アズラクトンの機能は、酵素のアミンまたはチオール基と容易に反応し、安定した共有結合を形成する。一部の例では、モノリスの多孔質の特性が最適化されると、背圧が非常に低くなり、単純な機械的なポンプ動作を利用して、溶液からの酵素の固定と、基質溶液の次の分析との両方を実行することが可能になる。反応炉のミカエリス・メンテン動力学特性は、N−a−ベンゾイル−L−アルギニンエチルエステルなど、低分子量の基質を用いて調べることができる。
【0065】
溶液中のトリプシンの濃度やモノリスにおけるアズラクトンの機能の割合など、固定動作の変量の影響、酵素活性への反応時間の影響、および、反応炉内での基質の流速や滞留時間など、プロセス変量の影響が、詳細に研究された。オンチップの酵素微小反応炉のタンパク質分解作用は、基質として用いられる蛍光標識されたカゼインの分解に関して、様々な流速で示された。また、モノリシック微小反応炉の優れた性能は、0.5μL/分の速い流速(すなわち、わずか11.7秒の滞留時間)でのミオグロビンの消化によっても示された。次いで、消化産物は、MALDI−TOFMSを用いて特徴付けられ、可能性のある153のペプチド断片の内の102が同定されたため、配列決定の可能範囲は67%となった。
【0066】
微小総合分析システム(Ptas)を創出するために、新しい微細加工分析デバイスの開発および統合に多大な努力が注がれてきた。これらのシステムは、フルサイズの設備に比べて、スループットの増大、サンプルおよび試薬の消費量の低下、小型化、および動作コストの低減を実現する。微小流体デバイスの様々な用途の中では、電気泳動、電気クロマトグラフィ、酵素を用いた分析、および免疫分析などの分析技術については、このフォーマットですでに実証されている。微小流体チップ技術の疑いのない成功にも関わらず、いくつかの問題が残っている。例えば、微小流体チップの大部分は、開チャネル構造を特徴とする。したがって、これらのチャネルは、比較的小さい表面対容量の比を示す。それらは、クロマトグラフィによる分離、固相抽出、および不均一触媒作用など、固体の表面との相互作用に依存する用途において深刻な問題になりうる。所望の相互作用を提供するために利用できるのはチャネルの壁だけなので、微小デバイスが取り扱うことのできるのは、微量な化合物だけである。
【0067】
図10Bは、二次元分析システムの利用を示す図である。モノリス1027が、バルブ1001、1003、および1005を備えたポンプによって提供されるターゲットを補足すると、モノリス1027はシーリングされる。一例では、次に、各チャンバが加熱され、二本鎖DNAを溶かして一本鎖DNA生成物を送り出す。様々な実施形態によると、精製は120秒実行され、最初の量3μLから、わずか20nLまで、200倍の濃縮が実現可能である。各ライン1011、1013、1015、1017、1019、および1021は、さらなる分析工程に向けて、捕捉されたターゲットを制御またはポンプ送出するためのバルブを備える。
【0068】
一例では、捕捉されたターゲットは、試験デバイスにおいてPCRおよびCE分析を施される。捕捉されたターゲットは、加熱またはpHの変更などの機構を用いるDNA分析を施されてもよい。かかる統合試験デバイスの基本的な特徴は、以下の通りである。1)微細加工されたヒータと温度センサとを備えるよう、ガラス基板にエッチングされた免疫捕捉チャンバ、2)対象となる細胞の溶解で得られたDNAの増幅のための100 300nLのポリメラーゼ連鎖反応チャンバ、および、3)PCR増幅産物の分離および検出のためにガラス基板にエッチングされたキャピラリ電気泳動用の微小チャネル。
【0069】
必要であれば、放出された病原体ゲノムDNAを精製するため、または、CE微小チャネルへの注入の前に、増幅されたDNAを脱塩および事前濃縮するために、随意的な4番目の構成要素、すなわち、統合DNA事前濃縮/浄化チャンバがデバイスに追加されてもよい。分析を成功させるためにCE微小チャネルに直接的にPCR増幅産物を注入して、上述のように複雑さを増す必要性を避けることが可能であると以前の研究から示されているが、質の高い電気泳動像を得るためには、かかる精製が必要になりうる。この増幅産物の精製は、オリゴヌクレオチド捕捉マトリクス薬剤を用いることにより可能になる。ゲノムDNAを精製する必要がある場合には、浄化チャンバは、カルボン酸シリカビーズで満たされ、PCRの前の細菌DNAのための一般的な捕捉マトリクスとして用いられてよい。
【0070】
統合の1つの方法は、免疫捕捉、テンプレート精製、PCR、増幅産物の浄化、およびCEを、ガラスチップ上に別個のモジュールとして単に加工する方法である。次に、それらのモジュールは、微小チャネルおよび様々なPDMSバルブ構造を用いて互いに接続される。別個の免疫捕捉およびPCR反応炉を備えるよう構成された病原体分析チップの図が、図11に示されている。統合された病原体検出システムは、免疫親和捕捉チャンバ1101を備える。検体が、免疫捕捉チャンバ1101を通して病原体検出システム内に導入される。PCRチャンバ1103が、免疫親和捕捉チャンバ1101に接続され、免疫親和捕捉チャンバ1101によって捕捉されたターゲットを受け入れる。さらなる分析のために、PCRチャンバ1103に、CEチャネル1105が接続される。微細加工された電極1113は、電位差を提供するよう動作可能である。さらに、免疫捕捉チャンバおよび/またはPCRチャンバに接続されたヒータ(図示せず)が提供される。様々なバルブが、統合システムを通る被分析物の流れを制御する。様々な実施形態によると、それらのバルブは、モノリシックバルブである。
【0071】
免疫捕捉、PCR、CE、および浄化を、1つのデバイス上に別個のモジュールとして提供することは、妥当な方法であるが、様々な実施形態に従って促進されるDNA断片の捕捉効率、PCR効率、および高感度の分離と検出によると、比較的複雑でないデバイスを用いることも可能であることが示唆される。免疫捕捉およびPCRは、別個のチャンバで実行することも可能であるが、一例では、デバイスおよびプロセスを簡略化するために、それらを組み合わせることもできる。この例では、固体の基質と、固相の免疫捕捉試薬から、PCRを良好に実行できる。一例では、免疫標識されたビーズを用いて、PCRを実行できる。
【0072】
図12は、組み合わされた免疫捕捉およびPCRチャンバ1201を示す図である。様々な実施形態によると、組み合わされたチャンバは、ナノリットルチャンバ内に加工された統合抵抗加熱機構(図示せず)と抵抗温度検出器(RTD)1205とを有する。一部の例では、被分析物は、入力1211と膜バルブ1221とを通して導入される。対象となる病原体は、圧力による流れを用いてチャンバ1201内に固定され、廃棄物は、バルブ1223を通して出力1213において収集される。病原体が固定されると、チャンバ1201は、緩衝液で流され、緩やかに固着した細胞や非特異的に結合した物質が除去される。
【0073】
PCR緩衝液は、元々の標本注入口1211または別個の専用注入口を通して導入される。チャンバ1201内の対象となる病原体に応じて、化学的な溶解剤が、PCR緩衝液に直接導入されることが可能である。溶解試薬および/またはPCR緩衝液の導入後、捕捉/PCRチャンバの統合ヒータ1203は、複数の病原体が、捕捉マトリクスから同時に放出され、薬剤の種類に応じて溶解される温度まで、標本の温度を上昇させるために用いられる。
【0074】
最も簡単で、しばしば最も効果的な溶解方法は、加熱/冷却のサイクルを単純に繰り返す方法である。グラム陰性菌および一部の真核細胞は、比較的薄い外膜を持っており、加熱のみ、または、低濃度の化学的な溶解溶液を伴った加熱による溶解の影響を比較的受けやすい。胞子またはグラム陽性菌など、一部の場合には、PCRを妨げるほどの比較的強力な溶解剤が必要になる場合もある。例えば、一部の処理しにくいグラム陽性のブドウ球菌および連鎖球菌の株を溶解するためには、一般に、リゾチーム、プロテイナーゼK、リソスタフィン、およびムタノリシンを別個または組み合わせて用いる必要がある。これらの場合には、別個の免疫捕捉チャンバを用いると共に、浄化/事前濃縮チャンバを追加することで、細胞の溶解後、PCRの増幅前に、DNAを途中で捕捉することが可能になる。
【0075】
このシナリオでは、捕捉および溶解に続いて、カルボキシルビーズに吸着させることにより貯蔵するために、抽出されたDNAを、電気泳動によって浄化チャンバ内に移動させることができる。精製されたDNAは、熱またはイオン強度のばらつきを用いて浄化チャンバから放出され、増幅のために電気泳動的にPCRチャンバ内に移動されることが可能である。溶解された細胞に由来するDNAが、PCR緩衝液を有するチャンバに供給されると、微細加工されたヒータおよび温度センサを用いて、放出された遺伝物質に対して、直接的にPCRを実行することができる。
【0076】
一部の場合では、捕捉およびPCRために単一のチャンバを併用することは、複雑さやPCRの妨害となるために問題があることに注意されたい。これら特定の場合には、2つの段階を簡単に分離することができる。一部の例では、これは、捕捉マトリクスすなわちビーズの存在がPCR反応を妨害する場合、または、入力された標本が、洗浄または中和のできないPCRの阻害物をもたらす場合に実行されてよい。この場合、放出されたDNAは、捕捉チャンバ内の溶解された細菌から、分析のための別個のPCR反応炉に、ポンプまたは電気泳動によって送られてよい。
【0077】
PCRが完了すると、分離マトリクス内の挿入色素または蛍光標識されたプライマと、所望の解像度に応じた変性分離マトリクスとを用いて、分離および検出するために、直接的にCE微小チャネルに増幅産物を注入できる。一部の場合には、CE微小チャネルに注入する前に、増幅されたDNAを脱塩および濃縮するために、DNA浄化チャンバが導入される。浄化は、増幅されたDNAを電気泳動によって浄化チャンバ内に移動させ、そこで、カルボキシル化されたビーズまたはオリゴヌクレオチド捕捉マトリクス(所望のターゲットと相補的な捕捉用のオリゴ)に結合させることにより実現される。結合後には、洗浄と、微小ヒータによる温度依存の放出とが続き、次いで、分離および検出のために、CE微小チャネルの注入クロスを通して、濃縮および脱塩されたPCR増幅産物の電気泳動が実行される。
【0078】
モノリシック膜バルブを用いて病原体検出および分析システムを構築するためのデバイス構成は、大幅に変更されてもよい。図13Aは、病原体検出および分析システムのための設計の一例を示す図である。その設計は、チャネル層1303と、ビア層1305と、マニホルド層1309とを含む3つのガラス層を備える。ビア層1305とマニホルド層1309との間には、PDMS膜層が設けられる。マニホルド層1309は、膜1307に真空圧を作用させて、バルブ機構の制御を実現する機構を備える。
【0079】
層1301には、電気的な接続が提供され、層1311には、マニホルドチャック層が備えられる。チャネル層1303は、免疫捕捉/PCR/浄化チャンバおよびCE微小チャネルと、ウエハの上面のヒータとを備える。様々な実施形態によると、チャネル層1303は、バルブのビアとして機能するドリルで空けられたガラスの穴を含む薄いガラスウエハ1305に熱接着される。PDMSバルブ/ポンプ膜1307は、この複数の層の積層体に対して、可逆的または不可逆的に接着される。底面をエッチングされたマニホルド層1309は、真空または圧力を、デバイス上のバルブおよびポンプに伝える。
【0080】
既存の薄膜技術を用いて、温度制御素子を形成することで、試験デバイスを構築するための実行可能な第1の方法を提供できる。しかしながら、インジウムスズ酸化物(ITO)のヒータを用いることにより、デバイスの加工の複雑さを低減できる。ITOヒータは、低い抵抗率、光透過性、およびガラス物質との適合性に定評がある。これらのヒータは、温度センサと同じウエハ上に蒸着されることが可能であるため、ヒータを形成するための背面の加工や電気メッキの必要性がなくなる。ヒータは、最適な熱伝導のためにチャンバ内に直接配置されてもよいし、ガラスウエハを介して熱エネルギを伝えるためにチャンバに向かって配置されてもよい。ITOの光透過性は、標本またはPCR増幅産物の視覚化または検出を妨害することなしに、流体微小チャネルの上に電気ヒータのリード線を引くことを可能にする。
【0081】
図13Bは、様々な実施形態に従って、微細加工プロセスを示す図である。図の1381および1383に、微細加工プロセスが示されている。一部の例では、カリフォルニア州サンノゼのUHV Sputteingから入手可能なDCマグネトロンスパッタリングによって片面に2000Åのアモルファスシリコン層をスパッタ蒸着する前に、ガラスウエハ(ニューヨーク州ヨンカーズのSchottから入手可能な550μm厚のD263)を洗浄する。マサチューセッツ州マールボロのShipley 1818から入手可能なフォトレジストがスピンコーティングされて、バーモント州ウォーターベリーセンターのKarl Sussから入手可能な接触式アライナを用いてフォトリソグラフィでパターン化され、下層のシリコンエッチングマスクは、フロリダ州セントピーターズバーグのPlasma Thermから入手可能な平行板反応性イオンエッチング(RIE)システム内でSF6を用いて選択的に除去される。
【0082】
一部の例では、流体チャネル、電気泳動チャネル、およびPCRチャンバが、49%のフッ化水素酸の中で36μmの深さまでエッチングされる。容器アクセス穴(直径1.5mm)と、PDMSバルブ用の流体ビアホール(直径0.02”)が、カリフォルニア州メンロパークのFlashcut CNCから入手可能なCNCミル(先端がダイヤモンドになったドリル用ビットを備える)を用いて空けられる。次いで、ウエハは、ウエハダイシング装置を用いてダイシングされ、2つの20mm×75mmのスライドが形成される。
【0083】
RTDおよび電極を形成するために、最初に、200ÅのTiおよび2000ÅのPt(UHV)で、550μm厚のD263ウエハをスパッタコーティングすることができる。マサチューセッツ州マールボロのShipley(SJR5740)から入手可能な厚いフォトレジストがスピンコーティングされ、バーモント州ウォーターベリーセンターのKarl Sussから入手可能な接触式アライナを用いてパターン化される。様々な実施形態によると、フォトレジストは、70℃で2時間、強く焼成される。RTD素子を形成するために、高温の王水(HCl:HNO3の比が3:1で、90℃)を用いて、金属をエッチングすることが可能である。統合ヒータは、まず、マサチューセッツ州ウェルズリーのPerkin Elmerから入手可能なRFスパッタリングを用いて、複数層の薄膜すなわち200ÅのTiおよび2000ÅのPtを、RTDウエハの背面に蒸着することにより形成される。その面に、厚いフォトレジストがスピンコーティングされ、ウエハは、背面接触式アライナ(Suss)を用いてパターン化され、強く焼成される。Ti/Ptシード層の上には、カリフォルニア州アナハイムのTechnic(TG25E)から入手可能な亜硫酸金メッキ溶液を用いて、4.3mA/cm2で23分間、5μmの厚さまで電気蒸着され、ヒータのリード線が形成される。
【0084】
様々な実施形態によると、フォトレジストは除去されて、背面は、厚いフォトレジストを用いて再びパターン化される。加熱素子は、ニューヨーク州プレインビューのVeeco Instrumentsから入手可能なイオンビームエッチングシステムを用いて、Ti/Ptシード層にエッチングされる。RTD/ヒータウエハは、2つの25mm×75mmスライドにダイシングされる(Disco)。一部の例では、ドリルで穴を空けられたチャネルウエハは、カリフォルニア州ユカイパのCenturion VPM,J.M.Neyから入手できるプログラム可能な真空炉を用いて、RTD/ヒータウエハに熱接着される。
【0085】
1つの基板に、免疫捕捉、PCR、およびCEのための1つのシステムを備えてもよいが、本発明の技術によると、臨床検査で利用するためには、免疫捕捉、PCR、およびCEのための並列システムを開発することが効率的である可能性が認識されている。一例では、携帯型の病原体分析器は、標本内の3つの異なる病原体を対象とする3つの直列の免疫捕捉/PCRシステムを備える。3つのシステムのための流体制御システム、ヒータ用の電気回路、温度センサ、および電気泳動の並列化は容易であり、1つの顕微鏡用スライドの有する表面積でも十分に、3つの完全な並列システムを加工できる。
【0086】
別の例では、臨床検査で利用するための大規模並列の免疫捕捉/PCRシステムが提供されている。複数の人物または複数グループの人物にわたって、複数の異なる感染体を分析できることから、感染体を同定して疫学的に追跡するための強力な方法となる。図14は、放射状に並列された免疫捕捉/PCRデバイス1400の一部を示す図である。本明細書では、円の軸の周りに配列された複数の免疫捕捉およびDNA分析の機構を有する任意のシステムまたはデバイスを、放射状の並列デバイスと呼ぶこととする。
【0087】
様々な実施形態によると、この設計は、CE分析器と一体化された独自の免疫捕捉/PCRチャンバ1423をそれぞれ備える複数の対の分析器の配列を備える。標本は、そのデバイスの所与のサブセット内のすべてのチャンバを順次通過するため、複数の感染体が順次捕捉される。そのデバイスの備える個々のサブセット1401、1403、1405、1407、1409、1411は、異なる物質を並列で分析することができる。容器1447および1445は、ビーズ入力およびビーズ廃棄を実現する。容器1443および1441は、それぞれ、共通のキャピラリ電気泳動の陰極の容器および廃棄の容器となる。
【0088】
チャンバは、カスケード式の免疫親和捕捉を行うために相互接続される。バルブ1431および1433は、カスケードループ上のチャンバをシーリングする。バルブ1435および1437は、ビーズ導入および廃棄のためのチャネルから、チャンバをシーリングする。CE微小チャネルは、周知の回転式共焦点蛍光スキャナ(図示せず)を用いて検出を行うために、共通の中央陽極に接続される。捕捉チャンバ1423と、リード線1451を有するヒータとの組み合わせの平行配列が提供され、バルブおよびポンプの頑丈な配列が構築されている。チャンバ1423に関連するヒータおよび温度センサは、分析チャネルにおいて並列で動作するため、単純なリング状のヒータを用いれば十分である。そのため、個々のヒータおよび温度センサは、効率的かつ効果的な並列病原体検出システムを提供するためには、もはや必要ない。
【0089】
構成要素およびプロセスの多くは、便宜上、単数で記述したが、本発明の技術を実施するために、複数の構成要素やプロセスの反復を用いてもよいことは、当業者にとって明らかなことである。
【0090】
本発明は、具体的な実施形態を参照して詳細に図示および記載されているが、本発明の趣旨や範囲から逸脱せずに、開示された実施形態の形態および詳細事項を変更することができることも、当業者にとって明らかなことである。例えば、上述の実施形態は、様々な材料を用いて実施されてよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原体の検出および分析に関する。一例では、本発明は、微小流体制御構造を用いて実施される標本の準備、処理、検出、および分析のためのシステムを提供する。別の例では、本発明は、高スループット分析の用途のために、高密度配列の流体制御素子を製造するための頑強な技術を提供する。
【背景技術】
【0002】
微小流体分析のための従来の機構には限界がある。一部の利用可能な機構は、単一チャネルの分離デバイスと、複数チャネルの分離デバイスとを含む。他の機構は、いくつかの標本の準備および分析の工程を備える分析器を含む。しかしながら、流体制御が可能な多くの微小流体分析デバイスは、多くの化学的または生化学的分析と化学的または物理学的に互換性がない。さらに、多くの微小流体制御素子は、加工プロセス、頑健性、および/または、設計における制限のために、高密度配列で加工することが困難である。多くの従来のデバイスは、流体制御を維持するために持続的に作動させることが必要である。かかるバルブを用いる微小流体デバイスは、デバイスの流体の内容物の制御を失うことなしに制御システムから取り外すことができない。さらに、微小流体分析のための多くの技術および機構は、感度、特異性、または、定量的な分析の能力に欠けている。特に、従来の微小流体分析機構は、病原体の検出器および分析器などのシステムのために標本の準備を効率的に行う機能および能力に欠けている。
【0003】
したがって、バルブ、ポンプ、ルータ、反応炉など、微小流体制御機構を実施するための方法および装置を改良して、微小流体デバイスにおける標本の導入、準備処理、および分析能力の効果的な統合を実現することが望まれている。一例では、偽陽性が少なく高スループットかつ安価な連続監視を実現する病原体の検出器および分析器として用いることのできる単一チャネルシステムおよびアレイシステムの両方を実施するのに利用可能な微細加工の効率を有する微小流体デバイスを提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0004】
微小流体の分析を実行するための方法および装置が提供されている。統合されている空気マニホルドに関連するモノリシックエラストマ膜により、流体を分離、経路指定、合流、分割、および貯蔵するための構造など、様々な流体制御構造の高密度の配列を、配置および作動させることが可能になる。流体制御構造は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびキャピラリ電気泳動(CE)分析など、統合的な免疫親和捕捉および分析を備える病原体検出および分析システムを実施するために用いることができる。被分析溶液は、デバイスに入力されると、細菌、ウィルス、および細菌胞子など、様々な種類の微生物有機体を対象とした抗体を有する微細加工されたチャンバ内の一連の免疫親和捕捉マトリクスを通してポンプによって送られてよい。免疫捕捉チャンバは、さらなる分析工程のために、ターゲットを捕捉、精製、および濃縮することができる。
【0005】
一実施形態では、病原体検出システムが提供されている。そのシステムは、微小流体デバイスに統合されている免疫捕捉チャンバを備える。免疫捕捉チャンバは、微小流体チャネルを通して免疫捕捉チャンバに供給されるターゲットを捕捉することができる。そのシステムは、さらに、免疫捕捉チャンバに関連付けられているDNA分析機構を備える。DNA分析機構は、微小流体デバイスに統合されている。DNA分析機構は、ターゲットに対してDNA分析を実行できる。
【0006】
別の実施形態では、モノリシックデバイス上の病原体検出システムが提供されている。そのシステムは、モノリシックデバイスに統合されている複数の免疫捕捉チャンバを備える。免疫捕捉チャンバは、微小流体チャネルを通して免疫捕捉チャンバに供給されるターゲットを捕捉することができる。そのシステムは、さらに、免疫捕捉チャンバに関連付けられている複数のDNA分析機構を備える。複数のDNA分析機構は、モノリシックデバイスに統合されている。複数のDNA分析機構は、ターゲットに対してDNA分析を実行できる。
【0007】
別の実施形態では、病原体分析のための方法が提供されている。被分析流体が、モノリシックデバイスに統合されている複数の免疫捕捉チャンバに、微小流体チャネルを通じて供給される。免疫捕捉チャンバにおいて、被分析流体に関連するターゲットが捕捉される。複数の免疫捕捉チャンバと関連付けられている複数のDNA分析機構を用いて、ターゲットに対してDNA分析が実行される。複数のDNA分析機構は、モノリシックデバイスに統合されている。
本発明に関する上述およびその他の特徴と利点は、本発明の原理を例示的に説明する本発明の明細書および添付の図面を参照して詳細に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図1B】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図1C】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図1D】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図1E】本発明の技術の実施に適した微小流体デバイス上の機構を示す図。
【図2A】ダイヤフラムポンプを示す図。
【図2B】ダイヤフラムポンプを示す図。
【図3】流体ルータを示す平面図。
【図4】混合ループを示す平面図。
【図5A】流体容器を示す図。
【図5B】流体容器を示す図。
【図5C】流体容器を示す図。
【図5D】流体容器を示す図。
【図6】バスバルブを示す図。
【図7】病原体検出システムを示す図。
【図8】免疫親和捕捉バルブ機構を示す図。
【図9】免疫親和捕捉バルブ機構を示す図。
【図10A】被分析物の捕捉を示す図。
【図10B】免疫親和捕捉のための被分析物の経路指定を示す図。
【図11】免疫親和捕捉と統合可能なPCRおよびCEを示す図。
【図12】組み合わされた免疫捕捉およびPCRチャンバを示す図。
【図13A】病原体検出システムを示す図。
【図13B】微細加工の段階を示す図。
【図14】放射状配列の病原体検出システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明を実施するために発明者が考慮した最良の実施形態を含む本発明のいくつかの具体的な実施形態について説明する。これら具体的な実施形態の例は、添付の図面に示されている。本発明は、これら具体的な実施形態に関連して説明されているが、説明されている実施形態に本発明を限定する意図はない。逆に、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の趣旨および範囲に含まれうる代替物、変形物、および等価物を網羅するよう意図されている。例えば、本発明の技術は、ガラス製の微小流体デバイスに関連して説明されているが、プラスチック製のデバイスなど、他のデバイスを用いることも可能である。
【0010】
ガラス製の微小流体デバイスの利用に適した流体制御構造は、様々な微小流体デバイスに適用可能であることに注意されたい。流体制御構造が役立つ用途の好例としては、病原体検出システムが挙げられる。以下の説明では、本発明の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が記載されている。本発明は、これら具体的な詳細事項の一部あるいはすべてがなくとも実施可能である。また、本発明を不必要にわかりにくくすることを避けるために、周知の処理動作については、説明を省略した。
【0011】
微小流体分析技術の分野は、初期の単一チャネル分離デバイスから急速に発達してきた。一部のデバイスは、正弦標本準備および分析を1つのチップに統合した高スループットの分析および分析器のための複数チャネル分離デバイスを含む。複数チャネル分析と、統合された標本準備との両方を組み合わせたデバイスは、様々な分析を実行する際に必要な資源の量およびコストを低減することができる。その実例は、ゲノム学の分野に見いだすことができる。すなわち、配列決定のための標本の準備、精製、電気泳動分析を統合することにより、分析時間およびコストが低減され、分析の処理効率および頑健性が増大される。すべての場合において、微小流体デバイスの高度な統合を行うには、大量の流体を分離、経路指定、合流、分割、および貯蔵するためのチップ機構の頑健性が必要になる。
【0012】
シリコン、ガラスシリコン、ポリマ、およびエラストマの微小流体デバイスで用いられる一部のバルブ技術については、上述の要件を満たすには限界があった。しかしながら、これらの技術の多くは、多くの化学的または生化学的分析と化学的または物理学的に互換性がない。さらに、多くの技術は、ガラス製の微小流体デバイスで利用できる頑健な表面改質剤の多様性に欠けている。加えて、個々の微小流体バルブは、通例、個々の膜が通常時に開状態を保持されるように加工される。通常時に開状態のバルブを用いる場合には、流体制御を維持するために恒常的な作動を必要とする。かかるバルブを用いる微小流体デバイスは、デバイスの流体の内容物の制御を失うことなしに制御システムから取り外すことができない。さらに、一部の典型的なデバイスは、個々に配置されたラテックスの膜を用いる。個々に配置され空気圧で作動されるラテックスの膜が開発されたが、この加工方法は、複数チャネルの高スループット分析デバイスへの大規模集積の妨げとなる。
【0013】
別の微小流体デバイスは、陽極に接着されたシリコンとガラス製のウエハとを用いて加工され、圧電によって作動される。しかしながら、シリコンの導電性および化学的な互換性から、分析デバイスでの利用が困難である。シリコンに接着または蒸着された薄膜によって、導電性および化学的な互換性を部分的に軽減できるに過ぎない。
【0014】
エラストマ製のデバイスについても説明する。しかしながら、エラストマ材料の疎水性および多孔性により、エラストマ製のデバイスは、多くの化学的または生化学的分析と互換性がない。したがって、エラストマの表面との流体の接触を最小限にすることが望まれる。複雑な加工、化学的な互換性、信頼性のない流体操作などの問題から、既存の流体操作技術は、大規模かつ高スループットのラボオンチップ・デバイスへの組み込みには不十分である。
【0015】
したがって、本発明の技術および機構は、微小流体デバイスへの高密度集積に適したモノリシック膜バルブ構造を提供する。また、モノリシック膜バルブ構造に基づく様々な流体制御構造も提供されている。
【0016】
モノリシック膜を有する微小流体デバイスは、1つのチップに病原体検出システムを実装するのに特に適したデバイスの一例である。様々な実施形態によると、病原体検出システムは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびキャピラリ電気泳動(CE)機構など、免疫捕捉およびDNA分析機構を含む。一例では、病原体検出システムは、様々な流体制御構造を有するガラス製の微小流体デバイスに実装されてよい。
【0017】
図1Aないし1Eは、ガラス製の微小流体デバイスに実装可能なモノリシック膜バルブを示す図である。図1Aは、モノリシック膜バルブを示す上面図である。図1Bは、バルブを有する3層デバイスを示す側面図である。図1Cは、バルブを有する4層デバイスを示す側面図である。図1Dは、3層デバイスの開バルブを示す側面図である。図1Eは、開バルブの4層デバイスを示す側面図である。図1Aおよび1Bに示した様々な実施形態によると、3層ガラス製微小流体デバイスは、2つのガラスウエハ101と105の間に挟まれたエラストマ膜111を備える。一例では、エラストマ膜は、イリノイ州エルクグローブのBisco Siliconsから254μm厚のHT−6135およびHT−6240膜として入手可能なポリジメチルシロキサン(PDMS)の膜である。他の柔軟な膜を用いることも可能である。エラストマ膜111は、ウエハの間に可逆的であるが強固な接着を提供する。
【0018】
接着の前に、流体を運ぶための流体チャネル103が、ウエハ内にエッチングされる。同様に、加圧下または真空下で空気またはその他の作用流体を運んでバルブを作動させるためのマニホルドチャネル107およびバルブ領域109がエッチングされる。通例、空気チャネル107および109は、一方のウエハ105(以後、空気ウエハと呼ぶ)に配置され、流体チャネルは、第2のウエハ101(以後、流体ウエハと呼ぶ)にエッチングされる。これらのエッチングされたチャネル形状は、膜に対して直接的に接触して、図1Bに示すような複合型のガラス/エラストマチャネルを形成することができる。
【0019】
あるいは、膜は、図1Cの4層デバイス150に示すように、熱接着された完全ガラス製の流体ウエハサンドイッチ構造(XY)と、空気ウエハ159との間に配置されてもよい。完全ガラス製のチャネルを有することにより、ガラスの持つ好ましい物理的および化学的特性が、デバイスに役立つ。好ましい物理的および化学的特性を有する任意の層を、化学的に不活性な層と呼ぶこととする。化学的に不活性な層は、XYの加工に用いられてよい。一例では、XYを構成する151および155のサンドイッチ構造は、ガラスから形成される。
【0020】
4層デバイスの一例は、ビアウエハ155に熱接着された流体ウエハ151を備える。直径の小さいビアホールが、流体チャネル153内の断絶部分に配置される。エラストマ膜157は、流体/ビアウエハのサンドイッチ構造XZのビアウエハ155側に貼り付けられる。バルブたわみチャンバ161が、マニホルドウエハ159にエッチングされて、膜157に接着され、4層デバイス150が完成される。このように、流体チャネル153は、完全ガラス製の化学的に好ましい構成を保持すると共に、大規模集積の流体制御構造の実装を可能にする。一部の実施形態では、図1Cに示された4層デバイスは、標本とエラストマ膜との接触を最小限に抑えることから、3層デバイスを大幅に超える利点を提供する。
【0021】
様々な実施形態によると、モノリシック膜デバイス内の様々な流体制御構成要素は、空気ウエハの穴に圧力または真空を作用させることにより作動される。本明細書では、任意の単一の膜を、モノリシック膜と呼ぶこととする。また、本明細書では、モノリシック膜を備える任意の単一のデバイスを、モノリシックデバイスと呼ぶこととする。本明細書では、空気ウエハに関連するエッチングされたチャネルに圧力または真空を供給するための機構を、ポートまたは空気ポートと呼ぶこととする。3層デバイスでは、空気ウエハにエッチングされたチャネルは、エラストマ膜111のバルブ領域109に作動真空を分配する。図1Dに示すように、マニホルドチャネルを通してバルブ領域109に真空を作用させると、チャネル断絶部分から遠ざかるように膜が引っ張られて、断絶部分を流れる流路が提供され、バルブが開放される。本明細書では、空気圧を用いて開閉できるバルブを、開閉可能なバルブまたは空気開閉可能なバルブと呼ぶこととする。
【0022】
空気圧を作用させる工程は、圧力を作用させる工程と、真空を作用させる工程の両方を含む。したがって、膜157は、図1Dに示すように、隣接する流体チャネル内の流体の流れを調節することができる。図1Dにおいては、空気ウエハ105に関連するエッチングされたチャネルを通してバルブ領域109に真空が作用されて、流体チャネル103が開放されている。真空の圧力すなわち吸引力が、バルブ領域109に作用されなくなると、膜111は、図1Bに示すように、流体チャネル103を閉じる。図1Eは、4層デバイスを示している。4層デバイスは、チャネル層151と、チャネル153と、ビア層155と、膜層157と、空気層159とを備える。上述のように、4層デバイスは、一部の場合においては標本とエラストマ膜との接触をバルブ領域161のみに限定することから、3層デバイスを大幅に超える利点を提供する。
【0023】
図に示した構造は、任意の方向に配置されてよいことに注意されたい。一部の例では、バルブが、デバイスに関して反転されてもよい。空気層は、流体層の上側に配置されても下側に配置されてもよい。重力が、膜バルブに悪影響を与えないことから、本発明の技術は、様々な方向の配置を許容する。
【0024】
流体制御構造は、様々な利点を提供する。例えば、モノリシック膜バルブは、通常時には閉バルブであり、それは、デバイスが作動圧力源から取り外された際にもバルブが閉状態を保つことを意味する。通常時に開状態となる既存の微小流体バルブは、デバイスの流体内容物の制御を維持するために恒常的な作動を必要とする。さらに、形状記憶合金の構造と違って、バルブ構造の開閉温度が両方とも常温であるため、水を含む生体液での作業が容易になる。
【0025】
多くの典型的な実施例では、様々な流体制御機構を操作するために、微小流体デバイス間のインターフェースが数多く必要になる。しかしながら、本発明の様々な実施形態によると、膜における複数領域の空気制御チャネルを結合することによって、それら複数領域を並列に作動させることもできる。一例では、単一の空気ポートを用いて、一連のバルブを制御することができる。したがって、限られた数の外部インターフェースすなわち空気ポートを用いて、かなりの数のバルブを制御することができる。これにより、実装が簡単になり、デバイスとの接続の際の問題が最小限に抑えられる。様々な実施形態によると、このようにバルブを制御することにより、デバイス内のバルブ、ポンプ、貯蔵容器、ルータ、およびその他の流体制御構造を動作させるためのモノリシック膜の大規模並列の空気作動が可能になる。
【0026】
膜バルブは、様々な流体制御機構の形成に用いられてよい。図2Aおよび2Bは、膜バルブを用いて形成されたポンプを示す図である。図2Aおよび2Bに示された様々な実施形態によると、直列に配置された3つのバルブが、ダイヤフラムポンプ210を形成している。5工程のサイクルに従ってバルブを作動させることにより、ポンプ動作が実現される。図2Aは、3層モノリシック膜ダイヤフラムポンプを示す上面図である。図2Bは、3層モノリシック膜ダイヤフラムポンプを示す側面図である。ダイヤフラムポンプは、入力バルブ201と、ダイヤフラムバルブ203と、出力バルブ205とを備える。ダイヤフラムポンプは両方向に動作可能であるため、入力バルブおよび出力バルブの指定は任意であることに注意されたい。ポンプは、エッチングされた流体チャネル211と、モノリシック膜207と、マニホルド層213とを有する流体層209を備える。バルブが有する気密性により、ポンプは、自吸式となるため、他の気体および流体に加えて空気にもポンプ動作を行うことができる。
【0027】
様々な実施形態によると、一連の段階で、ポンプ動作を実行することができる。第1の段階では、出力バルブ205が閉じられると共に、入力バルブ201が開かれる。第2の段階では、ダイヤフラムバルブ203が開かれる。第3の段階では、入力バルブ201が閉じられる。第4の段階では、出力バルブ205が開かれる。第5の段階では、ダイヤフラムバルブ203が閉じられ、開かれた出力バルブ205を通して被分析流体が送出される。
【0028】
1サイクル当たりのポンプの送出量は、開かれたダイヤフラムバルブ内に含まれる量、すなわち、ダイヤフラムバルブ内の空気チャンバのサイズによって決まる量によって決定される。したがって、ダイヤフラムバルブの空気チャンバのサイズを調節することにより、既知のナノリットルからマイクロリットルの尺度の量の流体を測定するために設計されたポンプを加工することができる。ダイヤフラムポンプは、自吸式であり、作動周期を逆転することにより順方向と逆方向に流体を送ることができる。また、膜がガラスシーリング面に接触するバルブ台は、膜とガラス面との接着を制御するための尾根またはその他の表面構造を有するようエッチングされてよいことに注意されたい。
【0029】
モノリシックバルブは、ルータ、合流手段、および分割手段を形成するために用いられてもよい。以下の構造は、3層構造に関して説明されているが、4以上の層を用いて実施してもよいことに注意されたい。図3は、ルータ300を示す図である。ルータは、バルブ301、303、305、および317と、空気チャネル331、333、335、337、および339と、流体チャネル321、323、325、および327と、ダイヤフラムバルブ309とを備える。ルータは、ポンプ動作サイクル中のどの時点でどの入力/出力バルブが作動されるかに応じて、任意の入力から任意の出力に流体を送る。2以上の入力バルブを同時に作動させることにより、いくつかの異なる流体の流れが、出力バルブにおいて1つの流れに合流される。逆に、2以上の出力バルブを同時に作動させることにより、1つの流体の流れが、出力バルブにおいていくつかの異なる流れに分割される。
【0030】
例えば、流体をチャネル327からチャネル321に送るには、バルブ301および305が閉状態に保たれる。これで、バルブ317、309、および303が、上述のように、ポンプとして用いられることが可能になる。ルータは、流体チャネルを合流および分割する機能を有する。流体をチャネル325および327からチャネル323に合流させるには、バルブ303が閉状態に保たれる。流体をチャネル321からチャネル323および327に分割するには、バルブ301が閉状態に保たれる。さらに別の例では、チャネル327を通して導入された流体をチャネル325に送るために、バルブ303および305が閉状態に保たれる。バルブ317および301の開放が可能となり、チャネル327を通してのチャネル325への流体の流れが実現する。なお、様々な構成が可能である。
【0031】
モノリシックバルブを用いて、混合ループが形成されてもよい。一例では、デバイスの2つの領域間で流体を移動させることにより、混合を実行することができる。混合は、すべての種類のオンチップ動作を実行するために用いられてよい。図4は、混合ループ400を示す図である。混合ループは、バルブ401、403、および405と、流体チャネル411、413、および415と、空気チャネル421、423、および425とを備える。さらなるバルブ付きのチャネルが、ループに接続し、混合器への流体の出入りを提供している。2種類以上の流体が、チャネル413および415を通して混合ループ内に流入され、それらの流体が拡散によって混合されるまで、上述のように周期的にポンプで送られる。次いで、混合物は、混合ループからポンプで送出されてよい。また、2つの容器の間で流体を往復移動させることにより、混合を実現してもよい。
【0032】
図5Aないし5Cは、容器500を示す図である。図5Aは、エッチングされた移動チャンバを備えた容器を示す上面図である。図5Bは、容器の側面図である。図5Cは、満たされた容器を示す側面図である。図5Dは、ドリルによって形成された移動チャンバと、自律的な流入/流出のためのポンプとを備えた大容量容器を示す側面図である。容器は、流体ウエハ511との間に膜505を挟む空気ウエハ513に備えられている。容器は、チャネル501を通して満たされたり空にされたりすることが可能である。様々な実施形態によると、バルブ領域503内の開かれたモノリシック膜バルブは、オンチップ流体貯蔵のための容器として機能する。空気ウエハ513内のチャンバのサイズは、容器内に貯蔵される流体の量を決定する。容器は、真空を作用させることにより満たされ、圧力を作用させることにより空になる。
【0033】
様々な実施形態によると、エッチングされた空気チャンバの代わりにドリルで空けられた穴を用いて、その穴に直接的に作動圧力または真空を作用させることにより、大量の流体を貯蔵するための容器を加工することができる。あるいは、容器をダイヤフラムポンプに接続することにより、直接的な空気の接続を持たない容器を加工してもよい。図5Dは、ポンプに接続された容器503を示す図である。容器は、ポンプ動作の方向によって充填または排出されるため、容量が可変であるという利点を有する。一例では、バルブ531、533、および535などのポンプは、容器503に対する流体の充填または排出のために用いられる。
【0034】
1以上の流体入力を備えたモノリシック膜容器は、オンチップ反応炉として機能する。容器と同様に、反応炉は、空気マニホルドウエハを通して加えられる直接的な圧力または真空を用いることにより、反応物質を吸い込み、生成物を放出することができる。あるいは、反応炉は、統合されたポンプ、混合器、および/またはルータ構造を間接的に用いて、反応物質を吸い込み、生成物を放出することができる。様々な実施形態によると、反応炉の容量は、空気ウエハ内のチャンバ503のサイズによって規定されるため、流体ウエハの構造の配置を大きく変えることなく、任意の容量を持つ反応炉を、デバイスの任意の点に設けることが可能である。また、反応炉は、可変量の反応物質を含むオンチップ反応の必要に応じて、部分的に満たされてもよい。
【0035】
ほとんどのエラストマ膜は、気体透過性を有し、この特性は、これまで、すべてのエラストマデバイスに対して流体の充填を簡単にするために用いられてきた。
【0036】
様々な実施形態によると、膜の気体透過性により、気泡およびエアポケットを排除できる。作動真空をモノリシック膜反応炉またはその他の流体構造に作用させると、気体を発生する反応による気泡を排除できる。例えば、気体透過性の膜は、PCRの反応物質のオンチップ温度サイクリングの間に生成されて反応混合物の閉じこめの失敗につながりうる気泡を低減することが可能である。
【0037】
複合微小流体デバイスは、流体バスに接続されているいくつかの独立したモジュールを備えてよい。一例では、そのデバイスは、複数の異なる流体チャネルに被分析流体を供給するのに有用である。別の例では、様々な試薬が、微小流体デバイスへ導入されてよい。図6は、被分析流体を分配するために利用可能なバスバルブ600を示す図である。バスバルブ600は、流体を流体バスチャネル611から流体チャネル621、623、625、および627に送るよう設計されたバルブ601、603、605、および607を備える。空気チャネル631、633、635、および637は、流体の分配を制御するためのバルブを管理する。典型的なバスバルブの実施例は、バス側にデッドボリュームを有する。デッドボリュームは、流体の経路指定動作の合間に完全にバスを洗浄することを困難にする。様々な実施形態によると、本発明の技術は、バス側にデッドボリュームをほとんどまたは全く持たないバスバルブを提供する。これにより、流体の経路指定動作の合間に完全にバスを洗浄することが可能になり、デバイスの動作中の異なる流体間での混合すなわち交差汚染が防止される。
【0038】
微小流体デバイスの機構は、様々な技術を用いて加工されてよい。様々な実施形態によると、チャネル形状は、例えば、標準的な湿式化学エッチングを用いて、ガラスウエハにエッチングされる。ガラスウエハ(厚さ1.1mm、直径100mm)は、LPCVD炉またはスパッタリングシステムを用いて、ピラニア洗浄され(20:1)、犠牲(200nm)ポリシリコンエッチングマスク層で被覆される。3層または4層設計のデバイスには、ボロフロートガラスウエハすなわちSchott D263ホウケイ酸ガラスウエハが用いられる。ポリシリコンの蒸着後、ウエハは、ポジティブフォトレジストでスピンコーティングされ、軽く焼成されて、接触式アライナでパターン化される。フォトレジストのUV露出領域は、Microposit現像液の中で除去される。ポリシリコンの露出領域は、SF6プラズマ内でのエッチングによって除去される。ウエハは、所望のエッチング深さに到達するまで、HF溶液(ボロフロートウエハに対しては49%のHF、D263ウエハに対してはHF:HCl:H2Oを1:1:2で混ぜた溶液)内で7μm/minで等方的にエッチングされる。
【0039】
様々な実施形態によると、流体チャネルウエハは、3層デバイスについては20μmの深さ、4層デバイスについては40μmの深さまでエッチングされる。マニホルドウエハは、3層デバイスについては70μmの深さまでエッチングされ、4層デバイスについてはバルブ位置にドリルで穴を空けられる。次いで、残りのフォトレジストおよびポリシリコンは、それぞれPRS−3000およびSFプラズマによって、ウエハから剥離される。流体およびマニホルドウエハを貫くアクセス穴がドリルによって空けられ、ウエハは、再びピラニア洗浄される。
【0040】
一部の例では、3層設計を用いるデバイスは、ドリルまたはエッチングによって形成された移動チャンバが、バルブ台からPDMS膜を隔てて、どの方向に配置された場合でも、流体チャネルウエハ内のエッチングされた形状の上にPDMS膜(254μm厚HT−6135およびHT−6240、イリノイ州エルクグローブのBisco Silicones)を貼り付け、バルブと共にマニホルド複合ガラス−PDMS流体チャネルを圧迫することにより、組み立てられる。4層設計を用いるデバイスは、まず、一対の直径254μmのドリルによるビアホールをチャネルのギャップの位置に対応するよう位置決めした状態で、流体チャネルウエハを210μm厚D263ビアウエハに熱接着することにより組み立てられる。流体チャネルおよびビアウエハは、真空炉(カリフォルニア州ユカイパのJ.M.Ney)内で3.5時間570℃で加熱することにより接着される。それにより形成された完全ガラス製のチャネルを含む2層構造は、次に、PDMS膜およびマニホルドウエハに接着される。このように形成されたガラス−PDMS間の接着は、可逆的であるが、デバイスに与えられる範囲の真空および圧力に耐えるほど十分に強い。必要に応じて、組み立ての前にUVオゾンクリーナ(カリフォルニア州アービンのJelight Company Inc.)でマニホルドウエハおよびPDMS膜を洗浄することにより、不可逆的なガラス−PDMS間の接着が得られる。
【0041】
上述の微小流体デバイスの機構は、様々なデバイスの実施に用いることができる。バルブおよびポンプを備える特徴は、標本の準備および分析の工程を1つのデバイスに統合できる複数チャネルのラボオンチップ機器を提供するために柔軟に構成されることが可能である。微小流体プラットフォームは、特に、統合病原体検出システムを実施できる単一のデバイスとして適切である。
【0042】
従来の高速病原体検出システムは、酵素免疫測定法(ELISA)または蛍光免疫測定法(FIA)を利用した検出を用いる。通例、検出は、分析される特定の抗体の固定化、標本溶液での培養、現像および検出の前の酵素または蛍光プローブに結合したサンドイッチ抗体での認識を含む。免疫蛍光検出法も用いられる。しかしながら、これらの検査の各々に関する制限は、比較的厳しい。
【0043】
PCRを利用した遺伝子検出および同定の様々なフォーマットも、高い特異性と増幅率のために一般的に利用されている。しかしながら、DNAを利用したPCRの方法は強力ではあるが、生存および非生存の病原体の両方に陽性の反応をすることから、偽陽性を引き起こす場合がある。そのため、急速に分解する性質のため、検出の際に生きたターゲットが必要なことから、RNAターゲットの検出が好まれる場合がある。
【0044】
様々な別の検出方法も提案されている。質量分析法は、中性脂質、極性脂質、および胞子に特有のバイオマーカの検出によって病原体、胞子、およびその他の生体を検出するために開発された。しかしながら、質量分析法の速度、スループット、および可搬性は明白ではなく、特異性は実証されていない。
【0045】
例えば、土壌、空気などからの炭疽菌のような胞子の検出は、感染性が高い(10胞子/Lで10分の場合、10,000胞子の空気感染量が起こりうる)ため困難である。最も進んだ検出の概念は、薄膜ヒータを備えたシリコンの微小反応炉内で実行されるPCR生成物のリアルタイム検出と、統合された蛍光励起および検出とを用いる。このシステムは、後に、10チャネルの先進核酸分析器(ANAA)と、携帯型とに拡張された。このシステムのバージョンは、軍事用や郵便局用も開発されている。リアルタイムPCR分析のために統合された(複数マイクロリットルの)標本処理を備えたGeneXpert標本準備システムも開発されている。
【0046】
自動化された複雑な最前線の化学反応の実行と、病原体濃度および抗生物質に対する耐性の定量化を迅速に実行する携帯型分析が開発されれば、大きな前進になるだろう。同様に、高スループットで非常に低い偽陽性で高速に多数の標本を検出および同定する(すなわち、複数標本をスクリーニングする用途での)能力も、多数の標本または感染の可能性のある個体がスクリーニングされる必要のある場合に有用であり、すなわち、自動臨床分析器への前進となった。一例では、基本的に一般の自動分析器の小型版である血液臨床分析用の複雑な微小流体回路システムが開発された。マイクロアレイでのHIV分析用の血液からの標本を準備するために用いられる完全統合分析器(マイクロリットルの尺度)も開発された。このシステムは、多数の核酸の工程を含む複雑な分析を実行し、以下で詳述する>100nLデッドボリュームの空気膜バルブを用いるものであった。
【0047】
単純な圧力除去システムで流体を制御して、小型携帯システムでの免疫検査の性能を向上させる6つの異なる免疫検査センサにわたって溶液の流れを制御するためのルーサイト製の微小流体キューブが開発された。このフォーマットは、統合フローシステムと光ファイバ製のバイオセンサキャピラリとを用いて、10分の動作で4つの異なる物質を分析するRaptor携帯型分析器として開発された。アドレス可能なアレイという独特の特徴が認識され、自動化された電界駆動免疫捕捉およびDNAハイブリダイゼーションアレイ解析を実行する統合型の積層微小ラボラトリが開発された。例えば、免疫捕捉に続いて、細菌は、鎖置換型増幅(SDA)のために放出され、次いで、増幅された志賀様毒素遺伝子のハイブリダイゼーション分析が実行される。しかしながら、多重標本分析は実行されず、検出の制限は研究されていない。
【0048】
従来の微細加工はシリコンでなされるが、化学および生化学の分析では、ガラス製の微小流体構造が、好ましい化学的および電気泳動の特性を示すことがわかっており、プラスチック構造への拡張が進んでいる。高スループットの用途では、本発明の技術は、96から384断片のサイズ決定または配列決定用の分離物の高速な並列分析を可能にする放射状のチャネル配置を提供する。PCRとCE分析とを1つのチップに直接的に統合すると、酵素によるDNAの分解と親和捕捉とが提供される。
【0049】
様々な実施形態によると、本発明の微小流体デバイス機構は、チャンバ、バルブ、CE分析チャネルの複雑な配列の形成を可能にする複雑なチャネル構造の形成を実現する。これらのCEチャネルのサイズの小ささと、交差した注入器の利用により、非常に高速で高解像度の電気泳動分離の性能が実現される。クロマトグラフのカラムまたはキャピラリで実行されていたほぼすべての動作が、1つのチップのフォーマットに組み込まれることで、必要な標本量が低減されると共に分析時間および感度が改善される。
【0050】
様々な実施形態によると、本発明の病原体検出システムは、感度と共に特異性および定量化の属性を有するため、特に有用な分析を提供する。多くの病原体は、>103の細菌の摂取で感染するが、V.choleraは、105未満が経口で摂取されても症状を引き起こさず、B.anthracisについては、はるかに低いレベルで影響があると考えられている。脅威となるものを同定して処置を決定するためには、病原性を持つものと持たないものとを区別できるように株を同定することと、特定の毒素または抗生物質耐性遺伝子の存在を特定することが重要である。さらに、細菌の濃度または分量を決定して、同定すると共にこれを量的に報告する能力は、背後の課題と重要な課題とを区別する。
【0051】
図7は、病原体検出システム700の一例を示す図である。被分析物は、チャネル701を通して免疫親和捕捉チャンバ703、713、および723に導入され、チャネル731で廃棄物が収集される。様々な実施形態によると、入力された細菌の混合物を捕捉、濃縮、および階層化して、一連の別個の免疫チャンバ703、713、および723に導入するために、免疫親和試薬が用いられる。この簡単なプロセスは、病原体検出を追跡する微小流体システムの用途での障害となっていた重要なマクロからマイクロへのインターフェースに対処するものである。免疫捕捉の第1段階は、分析の特異性を増大させるのに大きな役割を果たす。感度の増大を実現するために、次に、病原体検出システムのユーザは、PCRを用いて物質の存在の冗長な確認を行い、さらに、特定のプライマに基づく方法またはPCRなどのより一般的な遺伝子型特定方法を開発して、DNA分析機構705、715、および725により、特定の株、毒素遺伝子の存在、および抗生物質耐性マーカを特定する。一例では、DNA分析機構705、715、および725は、PCRおよびCEを含む。
【0052】
様々な実施形態によると、免疫親和捕捉チャンバ703、713、および723は、PCRチャンバと統合されるが、CE機構は別個のままである。免疫捕捉および核酸分析を組み合わせると、個々の分析の感度および特異性が劇的に向上される。
【0053】
病原性を持つものと持たないものとを遺伝的に区別する能力は、多くの用途で重要である。前工程としての免疫捕捉とPCR分析とを組み合わせると、入力された細菌のポピュレーションに対して有効な精製が実現されるため、不純で複雑な「実世界の」標本でしばしば見られるPCR阻害物の存在に関する不安に対処できる。様々な実施形態によると、病原体検出システムは、入力されたターゲットポピュレーションの定量化が維持および報告されるように、低サイクル数の(漸近的ではない)レジメでPCRを実行するよう設定される。多くの例で、次に、処理された標本に対してCE分析を施すことができる。現代の微小流体技術を利用することで、小さい携帯型で、動作に必要な電力、資源、および技量が最小限の安価、高速、および頑丈な分析システムが提供される。
【0054】
病原体分析器には、統合された免疫親和捕捉チャンバが備えられている。フリット、ビーズ、ゲル、モノリス、およびポリマなど、様々な捕捉機構を用いることができる。図8および9は、シリカのフリットまたはビーズを用いて実装された免疫捕捉チャンバを示す図である。様々な実施形態によると、免疫捕捉チャンバは、シリカの粉末とケイ酸ナトリウムの結合剤との混合物でウエハの穴を満たすことにより加工された一連のシリカフリットを備える。脱水および洗浄されると、ケイ酸塩がシリカゲルに濃縮され、不溶性のシリカフリットが、801、803、805、および807において形成される。
【0055】
様々な実施形態によると、1.1mmの厚さのガラスウエハに形成された各シリカフリットは、1mmの直径を有する。免疫捕捉チャンバは、被分析物を導入および排出するためにチャネル821と結合されている。ウエハ内のフリットは、膜811および813とバルブとポンプ構造とを含むデバイス内に、容易に統合されることが可能である。図8において、4つのシリカフリット801、803、805、および807は、膜811および813によってシーリングされている。各フリットの大きいシリカ表面は、様々な有機シラン試薬による化学的な誘導体化に適切である。デバイスの加工をさらに簡単にするために、モノリスウエハは、PDMSとデバイスの残り部分との非加熱的な接着の前に、化学的に誘導体化されてもよい。
【0056】
一例では、1.5μmのフリットまたはビーズのような機構が、捕捉チャンバ内に設けられることにより、胞子および細菌などの多くのマクロ種の捕捉が可能になる。多くのマクロ種の固相捕捉は、当業者に周知であり、Weimer,B.C.、M.K.Walsh、C.Beer、R.Koka、およびX.Wangの2001、「Solid Phase Capture Of Proteins, Spores, and Bacteria」、Appl Environ. Microbiology、67:1300−1307でよく特徴付けられている。一部の例では、補足にビーズ試薬を用いるために、チャンバは、ビーズ止めを提供するための堰構造とビーズ導入チャネルとを備えるよう変形される。動電学的なビーズベッド包装や堰ビーズ捕獲が、当業者に周知である。あるいは、免疫機能を持たせた磁性ビーズが、堰を設けずにチャンバ内に導入されてもよい。
【0057】
図9は、モノリスがシーリングされていない状態の開バルブを示す図である。様々な実施形態によると、領域901、903、905、907、および909において減圧がなされると、チャネル921に沿ってフリット931、933、935、および937を通して、被分析物が流れることが可能になる。加工されるデバイスには、任意の数のフリットが備えられてよい。
【0058】
図10Aは、被分析物の補足を示す図である。様々な実施形態によると、一連の免疫捕捉チャンバを通して、オリゴヌクレオチド、タンパク質、細胞などを含む被分析溶液を送るために、3つの膜バルブ1001、1003、および1005を備えるポンプ1000が用いられる。
【0059】
チャンバは、対象となるターゲットを補足するために様々な機構を用いることができる。免疫捕捉チャンバで捕捉されるよう構成された任意の対象物を、本明細書ではターゲットと呼ぶこととする。ターゲットを運ぶ流体または物質については、本明細書では被分析物と呼ぶこととする。一例では、ターゲットは、被分析流体に運ばれるサルモネラ菌またはリステリア菌である。
【0060】
他の例では、各捕捉チャンバは、ターゲット分子を選択的に捕らえるために、オリゴヌクレオチドプローブを含む粘性ポリママトリクスで満たされる。DNA分析の場合には、プライマや高塩分濃度のポリメラーゼ試薬を含むサンガー法のDNA配列決定の伸張産物が、電子対を共有するオリゴヌクレオチドプローブを含む固定されたアクリルアミドマトリクスを含む免疫捕捉チャンバを通して電気泳動される。捕捉体の配列は、DNA増幅産物のみがプローブによって補足されて、プライマおよびポリメラーゼ試薬は、塩と共にデバイスを通り抜けるように選択される。これは、注意深い分析という点で直面する複雑で汚れた混合物からターゲットの分子を精製する必要性と異なるものではない。
【0061】
機能化されたポリマ捕捉マトリクスを備えた微小捕捉チャンバの準備のための別の方法は、10−20μmの範囲の孔を有するモノリスの準備と、機能ポリマの薄い架橋された層によって改質された大きい微細加工素子(約100μm)表面を有するチャンバの準備とを含む。この方法は、ビーズを捕捉チャンバ内にパッキングすることが時に困難であることと、通常の動作に対するビーズベッドの機械的な安定性がしばしば不十分であることから有用である。様々な実施形態によると、多孔質(10−20μm)の表面で機能化されたポリマモノリスの成型ブロックは、モノマと多孔化剤とを含む前駆体混合物の光重合によって、捕捉チャンバ内に直接形成される。
【0062】
重合プロセスはUV光を用いて実現されるので、多孔質のポリマは、フォトリソグラフィを用いて微小流体デバイスの任意の所望の領域に形成可能である。前駆体混合物で満たされたガラスチップを用いるこのような「微小リソグラフィック」重合プロセスの動力学については、Yu,C.、F.Svec、およびJ.M.J.Frechetの2000、「Towards stationary phases for chromatography on a microchip Molded porous polymer monoliths prepared in capillaries by photoinitiated in situ polymerization as separation media for electrochromatography」、Electrophoresis、21:120−127、および、Yu,C.、M.Xu、F.Svec、およびJ.M.J.Frechetの2002、「Preparation of monolithic polymers with controlled porous properties for microfluidic chip applications using photoinitated free radial polymerization」、J. Polymer Sci.、40:755、に示されているように、すでに特徴付けられ、当業者に周知である。同様に、デバイスにおけるモノリシック材料の正確な位置や、その表面の化学的性質は、Rohr,T.C、C.Yu、H.M.Davey、F. Svec、およびJ.M.J.Frechetの2001、「Simple and efficient mixers prepared by direct polymerization in the channels of microfluidic chips」、Electrophoresis,22:3959、に示されている通り、当業者に周知のように、制御可能である。モノリシックポリマの多孔質の特性の制御は、多孔化剤の組成を調整することによって実現可能である。
【0063】
微細加工された素子を有するモノリスもしくは表面のいずれが用いられる場合でも、所望の結合素子を導入するために、同一の接合方法を用いることができる。目標は、これらのモノリスの多孔の表面に抗体を固定することなので、接合される化学物質は、容易にバイオポリマと反応するように指定される。一例では、表面の接合体に組み込まれた2−ビニル−4、4−ジメチルアズラクトンの単位は、迅速にタンパク質と反応できる。かかる機構は、Peterson,D.S.、T.Rohr、F.Svec、およびJ.M.J.Frechetの2002、「Enzymatic microreactor−on−a−chip protein: Mapping using trypsin immobilized on porous polymer monoliths molded in channels of microfluidic devices」、Anal.Chem.、74:4081:4088、に示すように、当業者に周知である。改質すべき表面(多孔質のモノリス、または微細加工素子)は、モノマ溶液に浸されることが可能であり、デバイスは、事前に選択された領域での接合を実現するためにUV光を照射されることが可能である。表面の機能化の程度は、反応溶液におけるモノマの濃度、UV光の照射時間および強度によって制御される。
【0064】
別の実施形態では、2−ビニル−4、4−ジメチルアズラクトン、エチレンジメタクリレート、およびアクリルアミドまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる多孔質のポリマモノリスに、トリプシンが固定される。アズラクトンの機能は、酵素のアミンまたはチオール基と容易に反応し、安定した共有結合を形成する。一部の例では、モノリスの多孔質の特性が最適化されると、背圧が非常に低くなり、単純な機械的なポンプ動作を利用して、溶液からの酵素の固定と、基質溶液の次の分析との両方を実行することが可能になる。反応炉のミカエリス・メンテン動力学特性は、N−a−ベンゾイル−L−アルギニンエチルエステルなど、低分子量の基質を用いて調べることができる。
【0065】
溶液中のトリプシンの濃度やモノリスにおけるアズラクトンの機能の割合など、固定動作の変量の影響、酵素活性への反応時間の影響、および、反応炉内での基質の流速や滞留時間など、プロセス変量の影響が、詳細に研究された。オンチップの酵素微小反応炉のタンパク質分解作用は、基質として用いられる蛍光標識されたカゼインの分解に関して、様々な流速で示された。また、モノリシック微小反応炉の優れた性能は、0.5μL/分の速い流速(すなわち、わずか11.7秒の滞留時間)でのミオグロビンの消化によっても示された。次いで、消化産物は、MALDI−TOFMSを用いて特徴付けられ、可能性のある153のペプチド断片の内の102が同定されたため、配列決定の可能範囲は67%となった。
【0066】
微小総合分析システム(Ptas)を創出するために、新しい微細加工分析デバイスの開発および統合に多大な努力が注がれてきた。これらのシステムは、フルサイズの設備に比べて、スループットの増大、サンプルおよび試薬の消費量の低下、小型化、および動作コストの低減を実現する。微小流体デバイスの様々な用途の中では、電気泳動、電気クロマトグラフィ、酵素を用いた分析、および免疫分析などの分析技術については、このフォーマットですでに実証されている。微小流体チップ技術の疑いのない成功にも関わらず、いくつかの問題が残っている。例えば、微小流体チップの大部分は、開チャネル構造を特徴とする。したがって、これらのチャネルは、比較的小さい表面対容量の比を示す。それらは、クロマトグラフィによる分離、固相抽出、および不均一触媒作用など、固体の表面との相互作用に依存する用途において深刻な問題になりうる。所望の相互作用を提供するために利用できるのはチャネルの壁だけなので、微小デバイスが取り扱うことのできるのは、微量な化合物だけである。
【0067】
図10Bは、二次元分析システムの利用を示す図である。モノリス1027が、バルブ1001、1003、および1005を備えたポンプによって提供されるターゲットを補足すると、モノリス1027はシーリングされる。一例では、次に、各チャンバが加熱され、二本鎖DNAを溶かして一本鎖DNA生成物を送り出す。様々な実施形態によると、精製は120秒実行され、最初の量3μLから、わずか20nLまで、200倍の濃縮が実現可能である。各ライン1011、1013、1015、1017、1019、および1021は、さらなる分析工程に向けて、捕捉されたターゲットを制御またはポンプ送出するためのバルブを備える。
【0068】
一例では、捕捉されたターゲットは、試験デバイスにおいてPCRおよびCE分析を施される。捕捉されたターゲットは、加熱またはpHの変更などの機構を用いるDNA分析を施されてもよい。かかる統合試験デバイスの基本的な特徴は、以下の通りである。1)微細加工されたヒータと温度センサとを備えるよう、ガラス基板にエッチングされた免疫捕捉チャンバ、2)対象となる細胞の溶解で得られたDNAの増幅のための100 300nLのポリメラーゼ連鎖反応チャンバ、および、3)PCR増幅産物の分離および検出のためにガラス基板にエッチングされたキャピラリ電気泳動用の微小チャネル。
【0069】
必要であれば、放出された病原体ゲノムDNAを精製するため、または、CE微小チャネルへの注入の前に、増幅されたDNAを脱塩および事前濃縮するために、随意的な4番目の構成要素、すなわち、統合DNA事前濃縮/浄化チャンバがデバイスに追加されてもよい。分析を成功させるためにCE微小チャネルに直接的にPCR増幅産物を注入して、上述のように複雑さを増す必要性を避けることが可能であると以前の研究から示されているが、質の高い電気泳動像を得るためには、かかる精製が必要になりうる。この増幅産物の精製は、オリゴヌクレオチド捕捉マトリクス薬剤を用いることにより可能になる。ゲノムDNAを精製する必要がある場合には、浄化チャンバは、カルボン酸シリカビーズで満たされ、PCRの前の細菌DNAのための一般的な捕捉マトリクスとして用いられてよい。
【0070】
統合の1つの方法は、免疫捕捉、テンプレート精製、PCR、増幅産物の浄化、およびCEを、ガラスチップ上に別個のモジュールとして単に加工する方法である。次に、それらのモジュールは、微小チャネルおよび様々なPDMSバルブ構造を用いて互いに接続される。別個の免疫捕捉およびPCR反応炉を備えるよう構成された病原体分析チップの図が、図11に示されている。統合された病原体検出システムは、免疫親和捕捉チャンバ1101を備える。検体が、免疫捕捉チャンバ1101を通して病原体検出システム内に導入される。PCRチャンバ1103が、免疫親和捕捉チャンバ1101に接続され、免疫親和捕捉チャンバ1101によって捕捉されたターゲットを受け入れる。さらなる分析のために、PCRチャンバ1103に、CEチャネル1105が接続される。微細加工された電極1113は、電位差を提供するよう動作可能である。さらに、免疫捕捉チャンバおよび/またはPCRチャンバに接続されたヒータ(図示せず)が提供される。様々なバルブが、統合システムを通る被分析物の流れを制御する。様々な実施形態によると、それらのバルブは、モノリシックバルブである。
【0071】
免疫捕捉、PCR、CE、および浄化を、1つのデバイス上に別個のモジュールとして提供することは、妥当な方法であるが、様々な実施形態に従って促進されるDNA断片の捕捉効率、PCR効率、および高感度の分離と検出によると、比較的複雑でないデバイスを用いることも可能であることが示唆される。免疫捕捉およびPCRは、別個のチャンバで実行することも可能であるが、一例では、デバイスおよびプロセスを簡略化するために、それらを組み合わせることもできる。この例では、固体の基質と、固相の免疫捕捉試薬から、PCRを良好に実行できる。一例では、免疫標識されたビーズを用いて、PCRを実行できる。
【0072】
図12は、組み合わされた免疫捕捉およびPCRチャンバ1201を示す図である。様々な実施形態によると、組み合わされたチャンバは、ナノリットルチャンバ内に加工された統合抵抗加熱機構(図示せず)と抵抗温度検出器(RTD)1205とを有する。一部の例では、被分析物は、入力1211と膜バルブ1221とを通して導入される。対象となる病原体は、圧力による流れを用いてチャンバ1201内に固定され、廃棄物は、バルブ1223を通して出力1213において収集される。病原体が固定されると、チャンバ1201は、緩衝液で流され、緩やかに固着した細胞や非特異的に結合した物質が除去される。
【0073】
PCR緩衝液は、元々の標本注入口1211または別個の専用注入口を通して導入される。チャンバ1201内の対象となる病原体に応じて、化学的な溶解剤が、PCR緩衝液に直接導入されることが可能である。溶解試薬および/またはPCR緩衝液の導入後、捕捉/PCRチャンバの統合ヒータ1203は、複数の病原体が、捕捉マトリクスから同時に放出され、薬剤の種類に応じて溶解される温度まで、標本の温度を上昇させるために用いられる。
【0074】
最も簡単で、しばしば最も効果的な溶解方法は、加熱/冷却のサイクルを単純に繰り返す方法である。グラム陰性菌および一部の真核細胞は、比較的薄い外膜を持っており、加熱のみ、または、低濃度の化学的な溶解溶液を伴った加熱による溶解の影響を比較的受けやすい。胞子またはグラム陽性菌など、一部の場合には、PCRを妨げるほどの比較的強力な溶解剤が必要になる場合もある。例えば、一部の処理しにくいグラム陽性のブドウ球菌および連鎖球菌の株を溶解するためには、一般に、リゾチーム、プロテイナーゼK、リソスタフィン、およびムタノリシンを別個または組み合わせて用いる必要がある。これらの場合には、別個の免疫捕捉チャンバを用いると共に、浄化/事前濃縮チャンバを追加することで、細胞の溶解後、PCRの増幅前に、DNAを途中で捕捉することが可能になる。
【0075】
このシナリオでは、捕捉および溶解に続いて、カルボキシルビーズに吸着させることにより貯蔵するために、抽出されたDNAを、電気泳動によって浄化チャンバ内に移動させることができる。精製されたDNAは、熱またはイオン強度のばらつきを用いて浄化チャンバから放出され、増幅のために電気泳動的にPCRチャンバ内に移動されることが可能である。溶解された細胞に由来するDNAが、PCR緩衝液を有するチャンバに供給されると、微細加工されたヒータおよび温度センサを用いて、放出された遺伝物質に対して、直接的にPCRを実行することができる。
【0076】
一部の場合では、捕捉およびPCRために単一のチャンバを併用することは、複雑さやPCRの妨害となるために問題があることに注意されたい。これら特定の場合には、2つの段階を簡単に分離することができる。一部の例では、これは、捕捉マトリクスすなわちビーズの存在がPCR反応を妨害する場合、または、入力された標本が、洗浄または中和のできないPCRの阻害物をもたらす場合に実行されてよい。この場合、放出されたDNAは、捕捉チャンバ内の溶解された細菌から、分析のための別個のPCR反応炉に、ポンプまたは電気泳動によって送られてよい。
【0077】
PCRが完了すると、分離マトリクス内の挿入色素または蛍光標識されたプライマと、所望の解像度に応じた変性分離マトリクスとを用いて、分離および検出するために、直接的にCE微小チャネルに増幅産物を注入できる。一部の場合には、CE微小チャネルに注入する前に、増幅されたDNAを脱塩および濃縮するために、DNA浄化チャンバが導入される。浄化は、増幅されたDNAを電気泳動によって浄化チャンバ内に移動させ、そこで、カルボキシル化されたビーズまたはオリゴヌクレオチド捕捉マトリクス(所望のターゲットと相補的な捕捉用のオリゴ)に結合させることにより実現される。結合後には、洗浄と、微小ヒータによる温度依存の放出とが続き、次いで、分離および検出のために、CE微小チャネルの注入クロスを通して、濃縮および脱塩されたPCR増幅産物の電気泳動が実行される。
【0078】
モノリシック膜バルブを用いて病原体検出および分析システムを構築するためのデバイス構成は、大幅に変更されてもよい。図13Aは、病原体検出および分析システムのための設計の一例を示す図である。その設計は、チャネル層1303と、ビア層1305と、マニホルド層1309とを含む3つのガラス層を備える。ビア層1305とマニホルド層1309との間には、PDMS膜層が設けられる。マニホルド層1309は、膜1307に真空圧を作用させて、バルブ機構の制御を実現する機構を備える。
【0079】
層1301には、電気的な接続が提供され、層1311には、マニホルドチャック層が備えられる。チャネル層1303は、免疫捕捉/PCR/浄化チャンバおよびCE微小チャネルと、ウエハの上面のヒータとを備える。様々な実施形態によると、チャネル層1303は、バルブのビアとして機能するドリルで空けられたガラスの穴を含む薄いガラスウエハ1305に熱接着される。PDMSバルブ/ポンプ膜1307は、この複数の層の積層体に対して、可逆的または不可逆的に接着される。底面をエッチングされたマニホルド層1309は、真空または圧力を、デバイス上のバルブおよびポンプに伝える。
【0080】
既存の薄膜技術を用いて、温度制御素子を形成することで、試験デバイスを構築するための実行可能な第1の方法を提供できる。しかしながら、インジウムスズ酸化物(ITO)のヒータを用いることにより、デバイスの加工の複雑さを低減できる。ITOヒータは、低い抵抗率、光透過性、およびガラス物質との適合性に定評がある。これらのヒータは、温度センサと同じウエハ上に蒸着されることが可能であるため、ヒータを形成するための背面の加工や電気メッキの必要性がなくなる。ヒータは、最適な熱伝導のためにチャンバ内に直接配置されてもよいし、ガラスウエハを介して熱エネルギを伝えるためにチャンバに向かって配置されてもよい。ITOの光透過性は、標本またはPCR増幅産物の視覚化または検出を妨害することなしに、流体微小チャネルの上に電気ヒータのリード線を引くことを可能にする。
【0081】
図13Bは、様々な実施形態に従って、微細加工プロセスを示す図である。図の1381および1383に、微細加工プロセスが示されている。一部の例では、カリフォルニア州サンノゼのUHV Sputteingから入手可能なDCマグネトロンスパッタリングによって片面に2000Åのアモルファスシリコン層をスパッタ蒸着する前に、ガラスウエハ(ニューヨーク州ヨンカーズのSchottから入手可能な550μm厚のD263)を洗浄する。マサチューセッツ州マールボロのShipley 1818から入手可能なフォトレジストがスピンコーティングされて、バーモント州ウォーターベリーセンターのKarl Sussから入手可能な接触式アライナを用いてフォトリソグラフィでパターン化され、下層のシリコンエッチングマスクは、フロリダ州セントピーターズバーグのPlasma Thermから入手可能な平行板反応性イオンエッチング(RIE)システム内でSF6を用いて選択的に除去される。
【0082】
一部の例では、流体チャネル、電気泳動チャネル、およびPCRチャンバが、49%のフッ化水素酸の中で36μmの深さまでエッチングされる。容器アクセス穴(直径1.5mm)と、PDMSバルブ用の流体ビアホール(直径0.02”)が、カリフォルニア州メンロパークのFlashcut CNCから入手可能なCNCミル(先端がダイヤモンドになったドリル用ビットを備える)を用いて空けられる。次いで、ウエハは、ウエハダイシング装置を用いてダイシングされ、2つの20mm×75mmのスライドが形成される。
【0083】
RTDおよび電極を形成するために、最初に、200ÅのTiおよび2000ÅのPt(UHV)で、550μm厚のD263ウエハをスパッタコーティングすることができる。マサチューセッツ州マールボロのShipley(SJR5740)から入手可能な厚いフォトレジストがスピンコーティングされ、バーモント州ウォーターベリーセンターのKarl Sussから入手可能な接触式アライナを用いてパターン化される。様々な実施形態によると、フォトレジストは、70℃で2時間、強く焼成される。RTD素子を形成するために、高温の王水(HCl:HNO3の比が3:1で、90℃)を用いて、金属をエッチングすることが可能である。統合ヒータは、まず、マサチューセッツ州ウェルズリーのPerkin Elmerから入手可能なRFスパッタリングを用いて、複数層の薄膜すなわち200ÅのTiおよび2000ÅのPtを、RTDウエハの背面に蒸着することにより形成される。その面に、厚いフォトレジストがスピンコーティングされ、ウエハは、背面接触式アライナ(Suss)を用いてパターン化され、強く焼成される。Ti/Ptシード層の上には、カリフォルニア州アナハイムのTechnic(TG25E)から入手可能な亜硫酸金メッキ溶液を用いて、4.3mA/cm2で23分間、5μmの厚さまで電気蒸着され、ヒータのリード線が形成される。
【0084】
様々な実施形態によると、フォトレジストは除去されて、背面は、厚いフォトレジストを用いて再びパターン化される。加熱素子は、ニューヨーク州プレインビューのVeeco Instrumentsから入手可能なイオンビームエッチングシステムを用いて、Ti/Ptシード層にエッチングされる。RTD/ヒータウエハは、2つの25mm×75mmスライドにダイシングされる(Disco)。一部の例では、ドリルで穴を空けられたチャネルウエハは、カリフォルニア州ユカイパのCenturion VPM,J.M.Neyから入手できるプログラム可能な真空炉を用いて、RTD/ヒータウエハに熱接着される。
【0085】
1つの基板に、免疫捕捉、PCR、およびCEのための1つのシステムを備えてもよいが、本発明の技術によると、臨床検査で利用するためには、免疫捕捉、PCR、およびCEのための並列システムを開発することが効率的である可能性が認識されている。一例では、携帯型の病原体分析器は、標本内の3つの異なる病原体を対象とする3つの直列の免疫捕捉/PCRシステムを備える。3つのシステムのための流体制御システム、ヒータ用の電気回路、温度センサ、および電気泳動の並列化は容易であり、1つの顕微鏡用スライドの有する表面積でも十分に、3つの完全な並列システムを加工できる。
【0086】
別の例では、臨床検査で利用するための大規模並列の免疫捕捉/PCRシステムが提供されている。複数の人物または複数グループの人物にわたって、複数の異なる感染体を分析できることから、感染体を同定して疫学的に追跡するための強力な方法となる。図14は、放射状に並列された免疫捕捉/PCRデバイス1400の一部を示す図である。本明細書では、円の軸の周りに配列された複数の免疫捕捉およびDNA分析の機構を有する任意のシステムまたはデバイスを、放射状の並列デバイスと呼ぶこととする。
【0087】
様々な実施形態によると、この設計は、CE分析器と一体化された独自の免疫捕捉/PCRチャンバ1423をそれぞれ備える複数の対の分析器の配列を備える。標本は、そのデバイスの所与のサブセット内のすべてのチャンバを順次通過するため、複数の感染体が順次捕捉される。そのデバイスの備える個々のサブセット1401、1403、1405、1407、1409、1411は、異なる物質を並列で分析することができる。容器1447および1445は、ビーズ入力およびビーズ廃棄を実現する。容器1443および1441は、それぞれ、共通のキャピラリ電気泳動の陰極の容器および廃棄の容器となる。
【0088】
チャンバは、カスケード式の免疫親和捕捉を行うために相互接続される。バルブ1431および1433は、カスケードループ上のチャンバをシーリングする。バルブ1435および1437は、ビーズ導入および廃棄のためのチャネルから、チャンバをシーリングする。CE微小チャネルは、周知の回転式共焦点蛍光スキャナ(図示せず)を用いて検出を行うために、共通の中央陽極に接続される。捕捉チャンバ1423と、リード線1451を有するヒータとの組み合わせの平行配列が提供され、バルブおよびポンプの頑丈な配列が構築されている。チャンバ1423に関連するヒータおよび温度センサは、分析チャネルにおいて並列で動作するため、単純なリング状のヒータを用いれば十分である。そのため、個々のヒータおよび温度センサは、効率的かつ効果的な並列病原体検出システムを提供するためには、もはや必要ない。
【0089】
構成要素およびプロセスの多くは、便宜上、単数で記述したが、本発明の技術を実施するために、複数の構成要素やプロセスの反復を用いてもよいことは、当業者にとって明らかなことである。
【0090】
本発明は、具体的な実施形態を参照して詳細に図示および記載されているが、本発明の趣旨や範囲から逸脱せずに、開示された実施形態の形態および詳細事項を変更することができることも、当業者にとって明らかなことである。例えば、上述の実施形態は、様々な材料を用いて実施されてよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体検出システムであって、
微小流体デバイスに統合されている免疫捕捉チャンバであって、微小流体チャネルを通して前記免疫捕捉チャンバに供給されるターゲットを捕捉することができる免疫捕捉チャンバと、
前記免疫捕捉チャンバと関連付けられているDNA分析機構であって、前記微小流体デバイスに統合され、前記ターゲットに対してDNA分析を実行することができるDNA分析機構と、を備える、病原体検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の病原体検出システムであって、前記DNA分析機構は、PCRとCEとを備える、病原体検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載の病原体検出システムであって、前記免疫捕捉チャンバとは別のチャンバに、PCRが備えられている、病原体検出システム。
【請求項4】
請求項2に記載の病原体検出システムであって、前記免疫捕捉チャンバに、PCRが備えられている、病原体検出システム。
【請求項5】
請求項2に記載の病原体検出システムであって、前記PCR用のチャンバは、対象となる前記ターゲットを溶解して得られるDNAを増幅するために用いられる、病原体検出システム。
【請求項6】
請求項3に記載の病原体検出システムであって、さらに、PCRの増幅産物を分離および検出するために、エッチングされているキャピラリ電気泳動微小チャネルを備える、病原体検出システム。
【請求項7】
請求項6に記載の病原体検出システムであって、さらに、放出されている病原体ゲノムDNAを精製するため、または、前記CE微小チャネルへの注入の前に、増幅されているDNAを脱塩および事前濃縮するために、DNA事前濃縮および浄化チャンバを備える、病原体検出システム。
【請求項8】
病原体検出システムであって、
微小流体デバイスに統合されている免疫捕捉手段であって、微小流体チャネルを通して供給されるターゲットを捕捉することができる免疫捕捉手段と、
前記免疫捕捉手段と関連付けられているDNA分析手段であって、前記微小流体デバイスに統合され、前記ターゲットに対してDNA分析を実行することができるDNA分析手段と、を備える、病原体検出システム。
【請求項9】
請求項8に記載の病原体検出システムであって、前記DNA分析手段は、前記免疫捕捉手段とは別のPCRチャンバを備える、病原体検出システム。
【請求項10】
請求項9に記載の病原体検出システムであって、前記PCRチャンバは、対象となる前記ターゲットを溶解して得られるDNAを増幅するために用いられる、病原体検出システム。
【請求項11】
モノリシックデバイス上の病原体検出システムであって、
前記モノリシックデバイスに統合されている複数の免疫捕捉チャンバであって、微小流体チャネルを通して前記免疫捕捉チャンバに供給されるターゲットを捕捉することができる複数の免疫捕捉チャンバと、
前記免疫捕捉チャンバと関連付けられている複数のDNA分析機構であって、前記モノリシックデバイスに統合され、前記ターゲットに対してDNA分析を実行することができる複数のDNA分析機構と、を備える、病原体検出システム。
【請求項12】
請求項11に記載の病原体検出システムであって、前記複数のDNA分析機構は、PCRとCEとを備える、病原体検出システム。
【請求項13】
請求項11に記載の病原体検出システムであって、前記複数の免疫捕捉チャンバとは別のチャンバで、PCRが実行される、病原体検出システム。
【請求項14】
請求項13に記載の病原体検出システムであって、さらに、PCRの増幅産物を分離および検出するために、複数のエッチングされているキャピラリ電気泳動微小チャネルを備える、病原体検出システム。
【請求項15】
請求項14に記載の病原体検出システムであって、さらに、放出されている病原体ゲノムDNAを精製するため、または、前記CE微小チャネルへの注入の前に、増幅されているDNAを脱塩および事前濃縮するために、複数の組み込みDNA事前濃縮および浄化チャンバを備える、病原体検出システム。
【請求項16】
請求項11に記載の病原体検出システムであって、前記免疫捕捉チャンバは、さらに、ターゲットを精製および濃縮することができる、病原体検出システム。
【請求項17】
請求項11に記載の病原体検出システムであって、前記複数の微細加工されている免疫捕捉チャンバは、選択されている抗体を保持するよう構成されている、病原体検出システム。
【請求項18】
請求項17に記載の病原体検出システムであって、前記選択されている抗体は、ビーズ、フリット、ゾル・ゲル、ゲル、またはポリマモノリスによって保持される、病原体検出システム。
【請求項19】
請求項17に記載の病原体検出システムであって、前記選択されている抗体は、前記捕捉チャンバ内に直接形成されている多孔質の表面で機能化されたポリマの成型ブロックによって保持される、病原体検出システム。
【請求項20】
請求項19に記載の病原体検出システムであって、前記成型ブロックは、モノマと多孔化剤とを含む前駆体混合物の光重合によって形成される、病原体検出システム。
【請求項21】
請求項17に記載の病原体検出システムであって、前記複数の免疫捕捉チャンバは、放射状に並列になるよう構成されている、病原体検出システム。
【請求項22】
請求項21に記載の病原体検出システムであって、さらに、前記複数の免疫捕捉チャンバに接続され、前記捕捉されたターゲットを放出するために前記複数の免疫捕捉チャンバを加熱することができるリング状のヒータを備える、病原体検出システム。
【請求項23】
請求項17に記載の病原体検出システムであって、前記複数の免疫捕捉チャンバは、ガラス層の上に構成されている、病原体検出システム。
【請求項24】
請求項23に記載の病原体検出システムであって、前記ガラス層は、モノリシック膜層に結合されている、病原体検出システム。
【請求項25】
請求項23に記載の病原体検出システムであって、前記ガラス層は、流体の流路を提供できる複数のエッチングされているチャネルを備える、病原体検出システム。
【請求項26】
請求項25に記載の病原体検出システムであって、前記ガラス層と空気層とが、前記膜層を挟んでいる、病原体検出システム。
【請求項27】
病原体分析のための方法であって、
モノリシックデバイスに統合されている複数の免疫捕捉チャンバに、微小流体チャネルを通じて被分析流体を供給する工程と、
前記免疫捕捉チャンバにおいて、前記被分析流体に関連するターゲットを捕捉する工程と、
前記複数の免疫捕捉チャンバと関連付けられている複数のDNA分析機構を用いて、前記ターゲットに対してDNA分析を実行する工程とを備え、前記複数のDNA分析機構は、前記モノリシックデバイスに統合されている、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記複数のDNA分析機構は、PCRとCEとを備える、方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、前記複数の免疫捕捉チャンバとは別のチャンバに、PCR機構が備えられている、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記複数のDNA分析機構は、対象となる前記ターゲットを溶解して得られるDNAを増幅するためのPCRチャンバを備える、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の病原体検出システムであって、さらに、PCRの増幅産物を分離および検出するために、複数のエッチングされているキャピラリ電気泳動微小チャネルを備える、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、さらに、放出されている病原体ゲノムDNAを精製するため、または、前記CE微小チャネルへの注入の前に、増幅されているDNAを脱塩および事前濃縮するために、複数の組み込みDNA事前濃縮および浄化チャンバを備える、方法。
【請求項33】
請求項27に記載の方法であって、前記免疫捕捉チャンバは、さらに、ターゲットを精製および濃縮することができる、方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、前記複数の微細加工されている免疫捕捉チャンバは、選択されている抗体を保持するよう構成されている、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記選択されている抗体は、ビーズ、ゾル・ゲル、ゲル、またはポリマモノリスによって保持される、方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、前記選択されている抗体は、前記捕捉チャンバ内に直接形成されている多孔質の表面で機能化されたポリマの成型ブロックによって保持される、方法。
【請求項37】
病原体を検出するための装置であって、
モノリシックデバイスに組み込まれている複数の免疫捕捉チャンバに、微小流体チャネルを通じて被分析流体を供給する手段と、
前記被分析流体に関連するターゲットを捕捉する手段と、
前記複数の免疫捕捉チャンバと関連付けられている複数のDNA分析機構を用いて、前記ターゲットに対してDNA分析を実行する手段とを備え、前記複数のDNA分析機構は、前記モノリシックデバイスに統合されている、装置。
【請求項1】
病原体検出システムであって、
微小流体デバイスに統合されている免疫捕捉チャンバであって、微小流体チャネルを通して前記免疫捕捉チャンバに供給されるターゲットを捕捉することができる免疫捕捉チャンバと、
前記免疫捕捉チャンバと関連付けられているDNA分析機構であって、前記微小流体デバイスに統合され、前記ターゲットに対してDNA分析を実行することができるDNA分析機構と、を備える、病原体検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の病原体検出システムであって、前記DNA分析機構は、PCRとCEとを備える、病原体検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載の病原体検出システムであって、前記免疫捕捉チャンバとは別のチャンバに、PCRが備えられている、病原体検出システム。
【請求項4】
請求項2に記載の病原体検出システムであって、前記免疫捕捉チャンバに、PCRが備えられている、病原体検出システム。
【請求項5】
請求項2に記載の病原体検出システムであって、前記PCR用のチャンバは、対象となる前記ターゲットを溶解して得られるDNAを増幅するために用いられる、病原体検出システム。
【請求項6】
請求項3に記載の病原体検出システムであって、さらに、PCRの増幅産物を分離および検出するために、エッチングされているキャピラリ電気泳動微小チャネルを備える、病原体検出システム。
【請求項7】
請求項6に記載の病原体検出システムであって、さらに、放出されている病原体ゲノムDNAを精製するため、または、前記CE微小チャネルへの注入の前に、増幅されているDNAを脱塩および事前濃縮するために、DNA事前濃縮および浄化チャンバを備える、病原体検出システム。
【請求項8】
病原体検出システムであって、
微小流体デバイスに統合されている免疫捕捉手段であって、微小流体チャネルを通して供給されるターゲットを捕捉することができる免疫捕捉手段と、
前記免疫捕捉手段と関連付けられているDNA分析手段であって、前記微小流体デバイスに統合され、前記ターゲットに対してDNA分析を実行することができるDNA分析手段と、を備える、病原体検出システム。
【請求項9】
請求項8に記載の病原体検出システムであって、前記DNA分析手段は、前記免疫捕捉手段とは別のPCRチャンバを備える、病原体検出システム。
【請求項10】
請求項9に記載の病原体検出システムであって、前記PCRチャンバは、対象となる前記ターゲットを溶解して得られるDNAを増幅するために用いられる、病原体検出システム。
【請求項11】
モノリシックデバイス上の病原体検出システムであって、
前記モノリシックデバイスに統合されている複数の免疫捕捉チャンバであって、微小流体チャネルを通して前記免疫捕捉チャンバに供給されるターゲットを捕捉することができる複数の免疫捕捉チャンバと、
前記免疫捕捉チャンバと関連付けられている複数のDNA分析機構であって、前記モノリシックデバイスに統合され、前記ターゲットに対してDNA分析を実行することができる複数のDNA分析機構と、を備える、病原体検出システム。
【請求項12】
請求項11に記載の病原体検出システムであって、前記複数のDNA分析機構は、PCRとCEとを備える、病原体検出システム。
【請求項13】
請求項11に記載の病原体検出システムであって、前記複数の免疫捕捉チャンバとは別のチャンバで、PCRが実行される、病原体検出システム。
【請求項14】
請求項13に記載の病原体検出システムであって、さらに、PCRの増幅産物を分離および検出するために、複数のエッチングされているキャピラリ電気泳動微小チャネルを備える、病原体検出システム。
【請求項15】
請求項14に記載の病原体検出システムであって、さらに、放出されている病原体ゲノムDNAを精製するため、または、前記CE微小チャネルへの注入の前に、増幅されているDNAを脱塩および事前濃縮するために、複数の組み込みDNA事前濃縮および浄化チャンバを備える、病原体検出システム。
【請求項16】
請求項11に記載の病原体検出システムであって、前記免疫捕捉チャンバは、さらに、ターゲットを精製および濃縮することができる、病原体検出システム。
【請求項17】
請求項11に記載の病原体検出システムであって、前記複数の微細加工されている免疫捕捉チャンバは、選択されている抗体を保持するよう構成されている、病原体検出システム。
【請求項18】
請求項17に記載の病原体検出システムであって、前記選択されている抗体は、ビーズ、フリット、ゾル・ゲル、ゲル、またはポリマモノリスによって保持される、病原体検出システム。
【請求項19】
請求項17に記載の病原体検出システムであって、前記選択されている抗体は、前記捕捉チャンバ内に直接形成されている多孔質の表面で機能化されたポリマの成型ブロックによって保持される、病原体検出システム。
【請求項20】
請求項19に記載の病原体検出システムであって、前記成型ブロックは、モノマと多孔化剤とを含む前駆体混合物の光重合によって形成される、病原体検出システム。
【請求項21】
請求項17に記載の病原体検出システムであって、前記複数の免疫捕捉チャンバは、放射状に並列になるよう構成されている、病原体検出システム。
【請求項22】
請求項21に記載の病原体検出システムであって、さらに、前記複数の免疫捕捉チャンバに接続され、前記捕捉されたターゲットを放出するために前記複数の免疫捕捉チャンバを加熱することができるリング状のヒータを備える、病原体検出システム。
【請求項23】
請求項17に記載の病原体検出システムであって、前記複数の免疫捕捉チャンバは、ガラス層の上に構成されている、病原体検出システム。
【請求項24】
請求項23に記載の病原体検出システムであって、前記ガラス層は、モノリシック膜層に結合されている、病原体検出システム。
【請求項25】
請求項23に記載の病原体検出システムであって、前記ガラス層は、流体の流路を提供できる複数のエッチングされているチャネルを備える、病原体検出システム。
【請求項26】
請求項25に記載の病原体検出システムであって、前記ガラス層と空気層とが、前記膜層を挟んでいる、病原体検出システム。
【請求項27】
病原体分析のための方法であって、
モノリシックデバイスに統合されている複数の免疫捕捉チャンバに、微小流体チャネルを通じて被分析流体を供給する工程と、
前記免疫捕捉チャンバにおいて、前記被分析流体に関連するターゲットを捕捉する工程と、
前記複数の免疫捕捉チャンバと関連付けられている複数のDNA分析機構を用いて、前記ターゲットに対してDNA分析を実行する工程とを備え、前記複数のDNA分析機構は、前記モノリシックデバイスに統合されている、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記複数のDNA分析機構は、PCRとCEとを備える、方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、前記複数の免疫捕捉チャンバとは別のチャンバに、PCR機構が備えられている、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記複数のDNA分析機構は、対象となる前記ターゲットを溶解して得られるDNAを増幅するためのPCRチャンバを備える、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の病原体検出システムであって、さらに、PCRの増幅産物を分離および検出するために、複数のエッチングされているキャピラリ電気泳動微小チャネルを備える、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、さらに、放出されている病原体ゲノムDNAを精製するため、または、前記CE微小チャネルへの注入の前に、増幅されているDNAを脱塩および事前濃縮するために、複数の組み込みDNA事前濃縮および浄化チャンバを備える、方法。
【請求項33】
請求項27に記載の方法であって、前記免疫捕捉チャンバは、さらに、ターゲットを精製および濃縮することができる、方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、前記複数の微細加工されている免疫捕捉チャンバは、選択されている抗体を保持するよう構成されている、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記選択されている抗体は、ビーズ、ゾル・ゲル、ゲル、またはポリマモノリスによって保持される、方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、前記選択されている抗体は、前記捕捉チャンバ内に直接形成されている多孔質の表面で機能化されたポリマの成型ブロックによって保持される、方法。
【請求項37】
病原体を検出するための装置であって、
モノリシックデバイスに組み込まれている複数の免疫捕捉チャンバに、微小流体チャネルを通じて被分析流体を供給する手段と、
前記被分析流体に関連するターゲットを捕捉する手段と、
前記複数の免疫捕捉チャンバと関連付けられている複数のDNA分析機構を用いて、前記ターゲットに対してDNA分析を実行する手段とを備え、前記複数のDNA分析機構は、前記モノリシックデバイスに統合されている、装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【公開番号】特開2011−234728(P2011−234728A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−155300(P2011−155300)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【分割の表示】特願2005−508628(P2005−508628)の分割
【原出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【出願人】(501035077)ザ・リージェンツ・オブ・ジ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155300(P2011−155300)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【分割の表示】特願2005−508628(P2005−508628)の分割
【原出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【出願人】(501035077)ザ・リージェンツ・オブ・ジ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
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