説明

病原微生物を検出する呼気検査方法

本発明は、胃十二指腸内のヘリコバクター・ピロリ菌を検出及び診断するための尿素呼気検査に基づいた方法と、この方法を実施するためのキットとを提供する。本方法は、個体または患者から第1基礎呼気試料を採取し、この個体に炭素標識尿素溶液を与え、その直後の新規の独立工程において、口腔から残留尿素を除去するための十分な量の水を個体に与え、5分以上経過してから第2呼気試料を採取することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原微生物を検出するため、呼気試料の採取及び分析の方法に関する。具体的には、本発明は、呼気試料の採取に基づいた方法と、胃十二指腸内のヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)の検出及び診断を目的として前述の採取を実行するためのキットとを提供する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコバクター・ピロリ菌は、主に胃十二指腸疾患、例えば胃潰瘍、十二指腸潰瘍、消化障害、胃原発非ホジキンリンパ腫、胃癌と関連づけられている。更に、消化管におけるヘリコバクター・ピロリ菌の存在は、その他の疾患、例えば慢性蕁麻疹、鉄欠乏性貧血、特発性血小板減少性紫斑病等にも関連づけられている。ヘリコバクター・ピロリ菌と関連づけられる疾患の数は増え続ける一方である。
【0003】
尿素呼気検査は、ヘリコバクター・ピロリ菌の診断にあたって信頼性が高い方法である。
しかしながら、尿素呼気検査に関して現在ゴールドスタンダードであるプロトコルでは、クエン酸溶液の摂取が必要とされる(特許文献1)。加えて、このプロトコルでは、残留尿素と口腔内に定着している微生物のウレアーゼ活性により偽陰性となる場合がある。尿素呼気検査でのクエン酸溶液の摂取は、この溶液によって胃内容の排出に遅れが生じることから、ある程度容認されている。しかしながら、胃内容排出の遅れはクエン酸溶液の摂取と関係ないことが判明している(非特許文献1)。更に、尿素呼気検査中にクエン酸溶液を摂取する患者は、検査前には制酸薬を飲むのを一時的にやめなくてはいけないことや、酸性のものを飲むと症状が一層悪化するとの無理からぬ考えから、胃十二指腸の症状の悪化を恐れてクエン酸溶液の摂取を嫌がる。更に、多量のクエン酸の摂取は、特に小児の場合、悪心や嘔吐を引き起こす場合がある。クエン酸溶液の量の多さや味の悪さも患者に不評である。更に、クエン酸アレルギーの患者は、現在のゴールドスタンダードである尿素呼気検査を受けることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】De Bengoa Vallejo,A.の米国特許第6171811 B1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Shiotani,A.S.et al.,Aliment Pharmacol.Ther.,15:1763−1767,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、クエン酸溶液を必要とせず、かつ口腔内の残留尿素の存在も克服する尿素呼気検査に基づいた方法を提供する。本発明の方法は、患者が検査後数分で帰宅できる、副作用または胃疾患の症状の悪化を伴うことのないプロトコルを提供する。加えて、本発明の方法は、クエン酸溶液の摂取を必要とする現行の尿素呼気検査プロトコルと同程度またはそれ以上の信頼性があるものとする。
【0007】
本発明は、尿素呼気試料を採取するための簡単で信頼性の高い方法を提供する。尿素呼気試料を簡単に信頼性高く採取することにより、ヘリコバクター・ピロリ菌と、増え続ける関与が疑われる疾患とを検証するための大規模な疫学的調査が円滑に進む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、胃十二指腸内のヘリコバクター・ピロリ菌を検出及び診断するための尿素呼気検査に基づいた方法と、この方法を実行するためのキットとを提供する。
【0009】
本方法は、個体または患者から第1基礎呼気試料を採取し、この個体に炭素標識尿素溶液を与え、その直後の新規の独立工程において、口腔から残留尿素を除去するための十分な量の水を個体に与え、5分以上経過してから第2呼気試料を採取することを含む。
【0010】
個体に十分な量の水を与えるこの独立工程には、口腔から残留している炭素標識尿素を除去し、胃腔を最適な水溶液環境にすることで炭素標識尿素を迅速に拡散させて胃内のヘリコバクター・ピロリ菌のウレアーゼで迅速に分解させるという2つの目的があり、これにより結果が偽陽性となる可能性が排除される。
【0011】
本発明の目的及び更なる利点は、図表の説明、本発明の詳細な説明及び請求項からより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の方法を実行するためのキット及びその構成要素を示す。
【図2】グラフ1:プロトコルI及びIIについての10分、20分、30分でのROC曲線の比較(Laboratorio Clinico Hematologico S.A.、メデリン、2006)。
【図3】グラフ2:プロトコルI及びIIでヘリコバクター・ピロリ菌陽性(positivo)及び陰性(negativo)の個体の10分、20分、30分でのDOB(Laboratorio Clinico Hematologico S.A.、メデリン、2006)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的は、呼気検査に基づいて病原微生物を検出する方法を提供することであり、本方法は、
A.個体の第1基礎呼気試料を採取し、
B.第1基礎呼気試料を採取したらすぐに、個体に炭素で標識した尿素溶液を経口で与え、
C.炭素で標識した尿素溶液を与えたらすぐに、個体に十分な量の水を経口で与え、
D.十分な量の水を与えてから所定の時間が経過した後に、第2呼気試料を採取し、
E.第1呼気試料及び第2呼気試料内に存在する炭素標識の量を測定及び分析することを含み、
検出または診断対象とする上記の病原微生物にヘリコバクター・ピロリ菌を用いることを特徴とする。
【0014】
本発明方法のある好ましい態様において、十分な量の水とは、100〜250mlである。本発明方法のこの態様の最も好ましい実施形態において、十分な量の水は200mlである。
【0015】
個体に十分な量の単なる水をタイミング良く与える(個体に炭素標識尿素溶液を与えた直後)新規で独立した工程により、口腔から残留している炭素標識尿素が除去され、この結果、口腔内に定着している微生物のウレアーゼのせいで偽陽性となる可能性が排除される。加えて、十分な量の水は、一旦胃腔に入ると、胃内で最適な水溶液となって炭素標識尿素が胃内に均一に分散するため、ヘリコバクター・ピロリ菌のウレアーゼによる炭素標識尿素の迅速な加水分解が行われる。
【0016】
本発明方法のその他の好ましい態様において、炭素で標識した尿素溶液は15〜50mlであり、炭素で標識した尿素は15〜50mgであり、尿素を標識する炭素は炭素13である。尿素溶液及び炭素で標識した尿素の両方についての上記範囲内での具体的な量は、呼気試料を採取する個体の体重に従って求める。小児の場合は上記の範囲の下限側の量を必要とし、成人の場合は上記の範囲の上限側の量を必要とする。
【0017】
炭素13で標識した尿素は、好ましくは粉末の形態であり、広く市販されているものが利用できる。
【0018】
本発明の目的上、個体を、その消化管におけるヘリコバクター・ピロリ菌の存在について検査する患者または人々と定義できる。
【0019】
本発明方法の更に別の態様において、第2呼気試料は、個体に十分な量の水を与えてから4分59秒を越える時間が経過してから採取される。本発明方法のこの態様の最も好ましい実施形態において、第2呼気試料は、十分な量の水を個体に与えてから10分後に採取される。
【0020】
本発明の第2の目的は、呼気検査により病原微生物を検出するためのキット(図1)を提供することであり、このキットは、
(a)水を入れた容器(1)(図1)と、
(b)炭素標識尿素を入れた容器(2)と、
(c)呼気検査開始時の炭素標識尿素を摂取する前に第1呼気試料を採取するための第1容器(3)と、
(d)呼気検査の最後の十分な量の水を摂取した後に第2呼気試料を採取するための第2容器(4)とを備え、
第1容器及び第2容器は、針状のセンサの導入が可能な機構を備えたキャップ(3A及び4A)を有し、検出または診断対象の病原微生物にヘリコバクター・ピロリ菌を用いることを特徴とする。
【0021】
適切に区別をつけた第1容器及び第2容器にそれぞれ採取された第1試料及び第2試料を、ガスクロマトグラフィ及びガス分光計により分析して炭素13の量を求める。
【0022】
本発明キットのある態様において、炭素標識尿素を入れた容器は15〜50mgの炭素標識尿素を収容し、炭素標識尿素は水に溶解させてあり、炭素標識尿素を溶解させるための水の量は15〜50mlであり、尿素を標識する炭素は炭素13である。最も好ましい実施形態において、炭素標識尿素の量は50mgである。
【0023】
本発明キットの別の好ましい態様において、水を入れた容器は、200〜250mlの水を収容する。本発明キットのこの態様の最も好ましい実施形態において、十分な量の水は200mlである。
【0024】
本発明キットの更に別の態様において、キットは、第1呼気試料及び第2呼気試料を第1容器及び第2容器に採取するための一対の手段を備えている。本発明キットのこの態様の好ましい実施形態において、第1呼気試料及び第2呼気試料を第1容器及び第2容器に採取するための手段は、一対のストロー(6)である。
【0025】
本発明の目的上、容器は、気密封止可能な全ての入れ物として定義される。本発明の好ましい実施形態において、容器は、筒状の入れ物である。
【0026】
本発明のキットのもう1つの態様において、カートリッジ(7)は、水を入れた容器と、炭素標識尿素を入れた容器と、第1容器と、第2容器と、一対のストローとを収容する。
【0027】
本明細書では本発明の好ましい実施形態を例示するが、請求項に含まれる基本的な概念及び趣旨から逸脱することなく、部品の形態や配置に更なる変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0028】
材料及び方法;
患者:調査集団は、胃腸に症候が見られない70人の健康な志願者から構成された。ヘルシンキ宣言及びコロンビア保健省の1993年の決議8430に従って、研究は、生物学的、生理学的、心理学的または社会的リスクがない研究と分類される。
【0029】
炭素標識尿素呼気検査;
プロトコル1:少なくとも8時間の絶食後、第1基礎呼気試料を採取した(t0 )。その直後に、患者に、15mlの水に溶解させた50mgの13C標識尿素を1杯の飲料として経口投与した。その直後に、患者に、200mlの水を経口投与した。次に、10分後(t10)、20分後(t20)、30分後(t30)に、呼気試料を採取した。
【0030】
プロトコル2:少なくとも8時間の絶食後、第1基礎呼気試料を採取した(t0)。その直後に、患者に、15mlの水に溶解させた50mgの13C標識尿素を1杯の飲料として経口投与した。その直後に、患者に、4.2gの無水クエン酸を含む200mlの水を与えた。次に、10分後(t10)、20分後(t20)、30分後(t30)に、呼気試料を採取した。
【0031】
基準となる標準プロトコル:コロンビアの環境に合わせて標準化したヨーロッパ・プロトコルを、100%に近い敏感度及び特異度であると広く検証された基準プロトコルとして用いた。侵襲的な検査、例えば生検、培養、内視鏡検査を行うのは倫理的ではないと見なされた。基準プロトコルは、以下のようにして行われた。少なくとも8時間の絶食後、100mlの水に溶解させた4.2のクエン酸を患者に与えた。10分後、基礎呼気試料を2本採取した(t0 )。その直後に、30mlの水に溶解させた100mgの13C標識尿素を患者に与えた。次に、30分後、尿素摂取後の呼気試料を2本採取した。
【0032】
ヘリコバクター・ピロリ菌への感染の定義:ヘリコバクター・ピロリ菌への感染状況は、基準プロトコルに従って市販のキット(TAU−KIT(登録商標)、isomed S.L.社、マドリッド、スペイン)を用いた13C標識尿素呼気検査によって定義した。試料の分析は、Laboratorio Clinico Hematologico S.A.(メデリン、コロンビア)で分光計(ABCA、Europa Scientific社、チェシャー、英国)を用いて、この検査について国際的に検証された判定基準に従って行われた。陽性の結果とは、13C標識尿素呼気検査の値が2.513CO2 デルタ(δ13CO2 )以上であった。結果は、DOB(delta over baseline)として表された。各プロトコルについてのカットオフポイントは、時間間隔(10、20、30分)によって0.5〜5.5と異なっていた。各プロトコルの有効性は、ROC曲線により評価した。
【0033】
統計解析:記述的分析において、絶対分布及び相対分布を質的変数に用いた。レジューム・インディケータ(resume indicator)を量的変数に用いた。データの正規性は、シャピロ・ウィルク(Shapiro−Wilk)検定により確立された。これに基づき、スチューデントのt検定及びウィルコクソンの符号順位検定を応用して、独立したメジアン間の差異を確立した。独立性X2 検定を用いて、質的変数間の関連性を分析した。p<0.05の値を、統計学的に有意とみなした。加えて、敏感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、妥当性指標(validity index)、ヨーデン指標(Youden index)、陽性尤度比(RV+)、陰性尤度比(RV−)を計算した。得られたデータの処理及び分析は、SPSS(サービス・ソリューションのための統計学的製品)バージョン12.0及びEPIDATEバージョン3.0を用いて行った。
【0034】
結果:調査において、70人の無症候の個体には24人の男性と46人の女性が含まれていた。個体の平均年齢は、男性が39.63歳(SD±12.58)、女性が34.33(SD±10.17)であった(95%信頼度)。男性と女性の平均年齢に有意な差異は見られなかった(スチューデントt検定=1.905、p=0.061)。
【0035】
基準プロトコルを用いると、46人(65.7%)がヘリコバクター・ピロリ菌について陽性であり、24人(34.3%)がヘリコバクター・ピロリ菌について陰性であった。性別では、17人(70.8%)の男性、29人(63%)の女性が、ヘリコバクター・ピロリ菌について陽性であった。男性と女性との間で統計学的に有意な差異は見られなかった(X2 =0.425、p=0.515)。プロトコルI及びIIについては、結果を表1に示す。
【0036】
表1:13C標識尿素呼気検査。プロトコルI及びIIの異なるカットオフポイント、10分、20分、30分での妥当性指標(Indice de validez)、ヨーデン指標(indice de Youden)、RV+及びRV−。Laboratorio Clinico Hematologico S.A.、メデリン、コロンビア、2006
* ≒0、**ф+ 、保菌率:65.71、分(Minuto)、δP.C.値(Valor δ P.C.)、プロトコル(Protocolo))
【0037】
【表1】

【0038】
プロトコルIについての最高性能カットオフポイントは、10分の場合は2.0及び2.5δ(共に100%)、20分の場合は1.5、2.0、2.5δ(3つ全てについて100%)、30分の場合は1.5δ(100%)と判明した。プロトコルIIについては、10分の場合は2.0δ(98.57%)、20分の場合は2.0δ(98.57%)、30分の場合は2.5δ(98.57%)であった。ヨーデン指標による13C標識尿素呼気検査の効率性の評価は、プロトコルIが、最高性能ポイントで完璧な診断試験であることを示す。有効性は、プロトコルI及びIIによりヘリコバクター・ピロリ菌に感染した個体が陽性であると分類される確率が高いことを示すRV+を参照することにより見て取れる。他方で、RV−は、プロトコルI及びIIがヘリコバクター・ピロリ菌に感染していない個体を陽性と分類する確率がゼロ(0)に近いことを示す。
【0039】
表2は、10分、20分、30分の場合の最高性能カットオフポイントにて、プロトコルIでの診断用13C標識尿素呼気検査が100%の敏感度を有することを示す。これとは対照的に、10分、20分、30分の場合の最高性能カットオフポイントで、プロトコルIIでの診断用13C標識尿素呼気検査は97.83%の敏感度を有する。プロトコルI及びプロトコルIIの両方についての特異度は100%であった。
【0040】
信頼度95%で、プロトコルIとプロトコルIIとの間に統計学的に有意な差異は見られなかった。10分の場合:X2 =0.9857、p=0.3208、20分の場合:X2 =0.9699、p=0.3247、30分の場合:X2 =0.9857、p=0.3208。10分及び30分での両方のプロトコルについての結果は、同様であった。
【0041】
表2:13C標識尿素呼気検査。プロトコルI及びIIの異なるカットオフポイント、10分、20分、30分での敏感度(Sensibilidad)、特異度(Especificidad)、陽性的中率(Valor Predictivo+)及び陰性的中率(Valor Predictivo −)。Laboratorio Clinico Hematologico S.A.、メデリン、コロンビア、2006
【0042】
【表2】

【0043】
ROC面積(グラフ1(図2))によると、プロトコルIの場合の13C標識尿素呼気検査は、敏感度、特異度共に1に等しく、完璧な検査である。
【0044】
表3及びグラフ2(図3)は、プロトコルI及びIIでヘリコバクター・ピロリ菌陽性及び陰性の個体についての10分、20分、30分でのカットオフポイント値[δ13CO2 ]の特性分析を示す。
【0045】
表3:プロトコルI及びIIでヘリコバクター・ピロリ菌陽性及び陰性の個体の10分、20分、30分でのδ13CO2 の分布(Laboratorio Clinico Hematologico S.A.、メデリン、2006)。
(陽性(Positivo)、陰性(Negativo)、平均(Media)、メジアン(Mediana)、標準偏差(Desviacion Estandar)、最小(Minimo)、最大(Maximo)、下側四分位値(Cuartel inferior)、上側四分位値(Cuartel Superior))
【0046】
【表3】

【0047】
表3及びグラフ2(図3)は、プロトコルIでの13C標識尿素呼気検査では、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染した個体の10分でのδ13CO2 メジアンが13.64であったのに対し、プロトコルIIの場合のδ13CO2 メジアンは12.02であったことも示す。これら2つの値に統計学的に有意な差異は見られなかった(ウィルコクソン、p=0.121)。これとは対照的に、20分及び30分の場合、統計学的に有意な差異が見られた(ウィルコクソン、それぞれp=0.006、p=0.001)。
【0048】
加えて、表3及びグラフ2(図3)は、プロトコルIでの13C標識尿素呼気検査の場合、感染していない個体の10分でのδ13CO2 メジアンは0.51であったのに対し、プロトコルIIの場合のδ13CO2 メジアンは0.32であったことを示す。10分、20分、30分の場合でこれらの値に統計学的に有意な差異は見られなかった(ウィルコクソン、それぞれp=0.710、p=0.440、p=0.346)。
【0049】
考察:これらの結果は、13C標識尿素呼気検査の一環としてのクエン酸の使用が不要である可能性を示唆している。プロトコルIの敏感度及び特異度は、被験者に十分な量の水を与える新規で独立した工程が、カプセルや内視鏡による胃内への滴注に代わる、残留13C標識尿素と口腔内に定着している可能性のある検査には関係のないウレアーゼ産生細菌との接触を回避するのに適当な代替法であることも示唆している。10分でのプロトコルIの場合の結果は、被験者に十分な量の水を与える新規で独立した工程により、胃腔内のヘリコバクター・ピロリ菌のウレアーゼによる13C標識尿素の迅速な分解にとって最適な状態が得られることも示唆している。この調査の結果は、表2に示されるように、敏感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率に関して最適な状態の検査にとって、用量50mgの13C標識尿素が十分であることも示唆している。
【0050】
13C標識尿素呼気検査からクエン酸を排除することにより、より苦痛の少ない検査となるが、これは13C標識尿素の水溶液が無色、無臭、無味、無害だからである。
【0051】
結論として、プロトコルIにより、苦痛の少ない、実行がより簡単で、より短時間の13C標識尿素呼気検査が得られ、この呼気検査において13C標識尿素の量は減少している。プロトコルIの検査のための試料採取を遠隔地で行い、採取した試料を郵便で送付することが可能であるが、これは採取した試料を、個体の呼気における13C含有量に悪影響を及ぼすことなく何ヶ月にも亘って室温で保存可能だからである。プロトコルIにより、ヘリコバクター・ピロリ菌の疫学的調査及び大掛かりな撲滅のために大量に用いることが可能な検査が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気検査に基づき病原微生物を検出する方法であって、
A.個体の第1基礎呼気試料を採取し、
B.第1基礎呼気試料を採取したらすぐに、個体に炭素で標識した尿素溶液を経口で与え、
C.炭素で標識した尿素溶液を与えたらすぐに、個体に十分な量の水を経口で与え、
D.水を与えてから所定の時間が経過した後に、第2呼気試料を採取し、
E.第1呼気試料及び第2呼気試料内に存在する炭素標識の量を測定及び分析することを含む
ことを特徴とする病原微生物の検出方法。
【請求項2】
十分な量の水が100〜250mlである
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭素で標識した尿素溶液が15〜50mlであり、炭素で標識した尿素が15〜50mgであり、尿素を標識する炭素が炭素13である
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2呼気試料が、個体に十分な量の水を与えてから4分59秒を越える時間が経過してから採取されるものである
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
病原微生物がヘリコバクター・ピロリ菌である
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
呼気検査により病原微生物を検出するキットであって、
(a)水を入れた容器と、
(b)炭素標識尿素を入れた容器と、
(c)呼気検査開始時の炭素標識尿素を摂取する前に、第1呼気試料を採取するための第1容器と、
(d)呼気検査の最後の十分な量の水を摂取した後に、第2呼気試料を採取するための第2容器とを備え、
第1容器及び第2容器が、針状のセンサの導入が可能な機構を備えたキャップを有している
ことを特徴とする病原微生物の検出キット。
【請求項7】
炭素標識尿素を入れた容器が15〜50mgの炭素標識尿素を収容し、炭素標識尿素が水に溶解させてあり、炭素標識尿素を溶解させるための水の量が15〜50mlである
請求項6に記載のキット。
【請求項8】
炭素標識尿素が炭素13で標識されている
請求項6に記載のキット。
【請求項9】
水を入れた容器が200〜250mlの水を収容する
請求項6に記載のキット。
【請求項10】
第1呼気試料及び第2呼気試料を第1容器及び第2容器にそれぞれ採取するための一対の手段を備える
請求項6に記載のキット。
【請求項11】
第1呼気試料及び第2呼気試料を採取するための手段が一対のストローである
請求項10に記載のキット。
【請求項12】
水を入れた容器と、炭素標識尿素を入れた容器と、第1容器と、第2容器と、一対のストローとがカートリッジ内に収容されている
請求項11に記載のキット。
【請求項13】
病原微生物がヘリコバクター・ピロリ菌である
請求項10に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−513904(P2010−513904A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542255(P2009−542255)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003923
【国際公開番号】WO2008/075171
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509171195)
【氏名又は名称原語表記】CAMPUZANO MAYA,German,Antonio
【住所又は居所原語表記】Carrera 43C No.5−33,1 Medellin−Antioquia COLOMBIA
【Fターム(参考)】