説明

病室ユニット

【課題】
病室の増設が容易であり、患者の長期居住を快適すると共に、病室内からの細菌等の排出を抑制可能とした病室ユニットを提供すること。
【解決手段】
病室ユニットにおいて、屋根20、壁面5、及び床下面22を鋼板で形成すると共に各鋼板が全溶接された構造体と、該構造体により形成される室内の空気を浄化して循環する循環式換気手段13と、該室内の空気を外部に排気する排気手段16とを有し、該排気手段には細菌を吸着するフィルタを備えることを特徴とする。
好ましくは、該鋼板の外面の少なくとも一部には断熱塗料が塗布されると共に、該鋼板の内面の少なくとも一部には断熱材料が配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病室ユニットに関し、特に、室内の機密性を高めると共に、室内の細菌等の排出を抑制するために室内を陰圧状態に保持した病室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の病院においては、感染症の患者は、感染症専用の病院や病院内の隔離病棟に入院させ、必要な処置を施すことが行われていた。
しかしながら、2003年春にハノイ、香港等で多数の患者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)などのように、感染力が強く、一旦感染した後には重症を伴う新種の感染症に対しては、単に患者を一般患者から隔離するだけでなく、他の感染症患者からも隔離し、さらに、患者が生活する病室から感染源である新種ウイルスの流出をも防止することが、2次感染を防ぐ上で特に重要な事項である。
【0003】
このため、隔離病棟にSARSなどのような新種のウイルス感染患者を入院させた場合には、感染患者の病室から、患者の新種ウイルスが廊下や他の病室に漏れ出さないように、病室の空調設備や病室の建築構造を設計する必要がある。しかも、患者が利用する浴室・トイレに対しても、患者専用に設け、病室と同様な設備等を備えることが必要である。
このような設備等を十分備えた病室は、我が国では限られており、一旦患者が発生した場合には、患者を十分収容することが困難となるだけで無く、患者の近隣に設備を備えた病院が無い場合には、遠方まで患者を移送することが必要となり、2次感染の危険性が増大するという問題を生じている。
【0004】
このため、患者の隔離施設を有しない既存の病院などにおいては、患者のための病室を新たに設置するニーズが高まっている。しかし、既存の病室の改築や新たな病室を増築するには、コスト負担が大きい上、工期も数ヶ月を要する場合もあるため、このようなニーズを満足させることが難しい。
他方、災害などの緊急時に患者を収容するための病室を確保する方法として、以下の特許文献1のように病院内設備を備えるコンテナ車両を利用する方法や、特許文献2のように密閉テントに空調設備を付加したものを利用する方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2000−142211号公報
【特許文献2】特開平5−223272号公報
【0005】
上述のようなコンテナ車両では、病院の敷地内にコンテナ車両を入れるためのスペースを確保する必要があり、大きな車両が出入りできない場所にある病院では、特に利用が困難である。しかも、各コンテナは車両に積載されているため、病室を積み上げて配置することが困難である。
また、テントなどの簡易な設備では、患者が長期に渡り該設備内に居住するには快適性が劣り、しかも、長期間利用するには耐久性に問題がある。
さらに、これらの施設では、新種の感染症への対策に不可欠となる、該病室から新種のウイルスが流出しないよう空調設備や建築構造を備えることが全く考慮されておらず、SARSなどのような新種の感染患者の収容に利用するのは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した問題を解決し、病室の増設が容易であり、患者の長期居住を快適すると共に、病室内からの細菌等の排出を抑制可能とした病室ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、屋根、壁面、及び床下面を鋼板で形成すると共に各鋼板が全溶接された構造体と、該構造体により形成される室内の空気を浄化して循環する循環式換気手段と、該室内の空気を外部に排気する排気手段とを有し、該排気手段には細菌を吸着するフィルタを備えることを特徴とする病室ユニットである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の病室ユニットにおいて、該鋼板の外面の少なくとも一部には断熱塗料が塗布されると共に、該鋼板の内面の少なくとも一部には断熱材料が配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の病室ユニットにおいて、該フィルタには、殺菌酵素フィルタを用いたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の病室ユニットにおいて、該循環式換気手段で浄化された空気の一部を該排気手段に導入することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の病室ユニットにおいて、該室内を病室及び前室とに仕切ると共に、該仕切りの一部には、自動扉を配置することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の病室ユニットにおいて、該室内で使用された水の排出は、該構造体の外部に設置されるタンク内に該水を一旦貯蔵し、紫外線殺菌処理又は薬品処理を施した後、放出されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の病室ユニットにおいて、該室内で排出された汚物又は汚水は、該構造体の外部に設置される燃焼手段により、加熱殺菌処理又は燃焼処理を施した後、放出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明により、屋根、壁面、及び床下面を鋼板で形成すると共に各鋼板が全溶接されているため、機械的強度に優れ、かつ気密性が高いため、長期利用に対しても耐久性が確保されると共に、室内の細菌が外部に漏出することを防止することも可能となる。
本発明における「全溶接」とは、鉄骨及び鋼板の接合する部分を全て溶接構造とすることを意味する。
また、室内の空気を浄化して循環する循環式換気手段を有しているため、室内の急激な温度変化を防止しながら、室内の空気を浄化すると共に、室内に空気の流れを生み出し、密閉空間を感じさせない快適な居住空間を生み出すことが可能となる。
また、室内の空気を外部に排気する排気手段により、室内の気圧を外部に対して陰圧状態に保持し、室内空気が、直接外部に漏出することを防止すると共に、該排気手段に設けられる細菌を吸着するフィルタにより、外部への細菌の排出を確実に防止することが可能となる。
【0015】
請求項2に係る発明により、病室ユニットを鋼板で構成すると共に気密性の高い状態に保持した場合でも、鋼板の外面の少なくとも一部には断熱塗料を塗布し、該鋼板の内面の少なくとも一部には断熱材料を配置しているため、断熱性が向上し、外部環境の変化による室内の急激な温度変化を緩和し、室内の冷暖房器具などの空調設備の負担を軽減すると共に、快適な居住空間を提供することが可能となる。
【0016】
請求項3に係る発明により、排気手段に設けられるフィルタを殺菌酵素フィルタとすることにより、室内の細菌を吸着するだけでなく、吸着した細菌を死滅させることが可能となるため、外部への細菌の漏出をより効果的に防止することが可能となる。
【0017】
請求項4に係る発明により、循環式換気手段で浄化された空気の一部を排気手段に導入するため、排気手段の排気能力に掛かる負担を軽減すると共に、排気手段に設けられたフィルタに関する細菌等の吸着能力の負担も軽減することが可能となる。
【0018】
請求項5に係る発明により、室内を病室及び前室とに仕切ることにより、前室では、医者や看護士等の検査・治療・介助を行う者(以下、「医者等」という)が病室の患者と接触する際に、着衣、手等の洗浄、検査・処置のための器具の準備・片付けなどを行う空間を確保すると共に、病室とは別室とすることで、医者等への細菌への感染を極力少なくすることが可能となる。
また、病室と前室との間の仕切りに、自動扉を配置することにより、病室から前室に流出する空気の量を最小限に抑制することも可能となる。好ましくは、該自動扉は気密性の高いものを利用することが好ましい。
さらに、病室内の気圧を前室より更に陰圧となるようにすることで、より、病室内からの細菌の流出を抑制することが可能となる。
【0019】
請求項6に係る発明により、室内で使用された水の細菌についても、排出の際には、紫外線殺菌処理又は薬品処理を施した後、放出されるため、外部への細菌の放出を抑制することが可能となる。
【0020】
請求項7に係る発明により、室内で排出された汚物又は汚水についても細菌が含まれる可能性が高いため、外部への放出の際には、燃焼手段により加熱殺菌処理又は燃焼処理を行い、外部への細菌の放出を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を好適例を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る病室ユニットの概略を示す平面図であり、図2は、該病室ユニットの断面図を示す。
図1及び2に示す病室ユニットでは、患者が居住する病室1と医者等が病室1に入室又は退出する際に利用する前室2、患者が主に利用するトイレ3及びシャワールーム4などから構成される。病室ユニットの構造は、図1及び2に示すものに限らず、例えば、病室1のみ、又は病室1とトイレ3のみ等のように、ユニット内を各種用途の空間に任意に区切り、利用することが可能であることは言うまでもない。
【0022】
病室ユニットの外壁を構成する屋根20、壁面5及び床下面22は、鉄骨溶接構造の構造体を、例えば、1.6mm厚のコルゲーション鉄板などの鋼板で全溶接し、室内の気密性を高めるよう構成されている。
鉄骨材料としては、一般建築用鋼材が利用可能であり、また、鋼板として、折板やシマ鋼板が利用可能である。これらの材料の特徴として重要なのは、病室ユニットの構造を維持するための十分な機械的強度を有し、溶接により高い気密性を実現できることであり、これらの条件を満たす材料であれば、本発明の外壁として利用が可能である。また、鉄骨、鋼板の熱膨張により溶接部分に亀裂等生じないようにするためには、これらの鉄骨や鋼板には、熱膨張係数が等しい材料を利用することが好ましい。
【0023】
屋根20の構造は、図3に示すように、2.3mmの鉄板31の外側に中空セラミックアクリルシリコン樹脂などの断熱塗料30が吹付けなどで塗布され、該鉄板31の内側には、硬質ウレタンフォーム32が取り付けられている。
また、吊り天井21として、鉄板31からは吊りボルト33により軽量鉄骨(LGS)34を保持すると共に、該軽量鉄骨34に、石膏ボード35を取り付け、該石膏ボード35の室内側にはクロス貼り又は珪藻土の仕上げ材36が施されている。
屋根と吊り天井との間には、断熱性を向上させるために、グラスウールなどの断熱性材料が充填あるいは配置されている。
【0024】
壁面の構造は、図4に示すように、1.6mmの鉄板41の外側に断熱塗料40を塗布し、該鉄板41の内側には軽量鉄骨43が取り付けられ、さらに断熱効果を高めるため該鉄板41には硬質ウレタンフォーム42に取り付けられている。
軽量鉄骨43は、石膏ボード44を保持し、該石膏ボード44の室内側には、クロス貼り又は珪藻土の仕上げ材45が施されている。
【0025】
床の構造としては、床下面22が鉄板54により構成され、該鉄板の外側には鉄骨55が配置されている。鉄板54及び鉄骨55の外側には、防水、防錆のためタール塗装56が施されている。
鉄板54の内側には、木材などの根太53が配置され、さらに、断熱効果を得るため硬質ウレタンフォーム52が配置されている。
根太53の上部には、ウレタン複合合板51を配置し、該合板51の内側には防菌シート50などが貼付けられている。
【0026】
本発明に係る病室ユニットと構造体としては、上述したように鉄板などの鋼板を全溶接して、気密性を高めると共に、鋼板に欠点である熱伝導性の問題を、鋼板の外側に断熱塗料を塗布し、内側に硬質ウレタンフォームなどの断熱材料を配置することにより、外部環境の変化による室内の急激な温度変化を緩和し、室内の冷暖房器具などの空調設備の負担を軽減すると共に、快適な居住空間を提供することが可能となる。
【0027】
病室ユニットの外壁の一部には、図1及び2に示すように、窓7、患者、面会者などが出入りするドア6、医者、看護婦など出入りするドア9などが配置されている。
ドアには、断熱性能を有する親子ドア、片開き戸、または片引き戸などの断熱アルミ建具を、また窓には、断熱性能を有するFIX(嵌め殺し)窓付きの片開窓のような、断熱サッシを利用し、断熱性及び気密性の高い材料及び構造を採用することが好ましい。
【0028】
病室1と前室2との間には高気密性の自動扉8が配置されている。
室内を病室及び前室とに仕切ることにより、前室では、医者や看護士等の検査・治療・介助を行う者などが病室の患者と接触する際に、着衣、手等の洗浄、検査・処置のための器具の準備・片付けなどを行う空間を確保すると共に、病室とは別室とすることで、医者等への細菌への感染を極力少なくすることが可能となる。
しかも、病室と前室との間の仕切りに、自動扉を配置することにより、病室から前室に流出する空気の量を最小限に抑制することも可能となる。より好ましくは、該自動扉は気密性の高いものを利用し、閉扉状態において、病室内の細菌等が前室に進入することを極力防止している。
【0029】
患者の長期居住に対応するため、トイレ室3やシャワールーム4を設けることが可能である。本発明に係る病室ユニットは、鉄骨や鋼板による構造体を利用しているため、防錆等の観点から、トイレやシャワールームなどの水周り部分から水・水蒸気が流出するのを極力防止することが好ましい。このため、例えば、トイレやシャワールームを一体化した浴室ユニットが利用可能である。しかも、このような一体化した浴室ユニットを利用することで、トイレ等の汚れやすい室内を清掃する際に水を利用することも可能となる。
12は浴室ユニットに出入りするためのドアであり、14はトイレ室とシャワールームを仕切る折り畳み式ドアを示す。
【0030】
病室1及び前室2には、それぞれ洗面台10,11が設置されており、患者や医者等が洗顔、手洗い等を行うことが可能である。これらの洗面台では、温水の利用も可能なように電気温水器を備えたものを利用することも可能であるが、シャワールーム4での温水の利用を考慮して、病室ユニットの内側又は外側に電気又はガス温水器を設置することもできる。
また、図1等には図示されていないが、シーリングライトなどの照明設備や非常灯、さらには、患者等が利用するベッド、机・椅子、ソファー、ロッカーなど必要な備品を配置することも可能である。
【0031】
次に、病室ユニット内を陰圧状態に保持するための空調設備について説明する。
空調設備は、図2に示すように、主に病室内の細菌等を含む空気を循環し浄化する循環式換気手段13と病室ユニットから空気を外部に排気するための排気手段16、さらに、不図示のエアコンなどで構成される。
循環式換気手段13から排出される空気は、病室内に戻されるだけでなく、排気ダクト15を介して排気手段16により外部に放出されるよう構成されている。また、排気手段16では、病室1の空気のみならず、トイレやシャワールームを配置した浴室ユニットあるいは前室の空気も、排気ダクト17,18を介して外部に排気する。
【0032】
図6は、循環式換気手段13の概略を示す図である。
ストレートシロッコファンなどの送風機63により、ベントキャップ60から取り込まれた空気はプレフィルタで塵芥が吸着され、ダクト62,64を通過して、殺菌酵素HEPAフィルタ65に送られる。該フィルタ65では、細菌などの微細な粒子を吸着すると共に、吸着した細菌を破壊する特性を有するものであり、フィルタ内での細菌の繁殖・生存を抑制する効果を有するものである。
該フィルタ65を通過し浄化した空気は、排気ダクト66により2方向に分岐され、一方はベントキャップ67を通過して室内に戻され、他方は排気手段16を利用して外部に排気される。
このように室内の空気を浄化して循環する循環式換気手段を有しているため、室内の急激な温度変化を防止しながら、室内の空気を浄化すると共に、室内に空気の流れを生み出し、密閉空間を感じさせない快適な居住空間を生み出すことが可能となる。
【0033】
図7は、排気手段16の概略を示す図である。
ストレートシロッコファンなどの送風機70により、排気ダクト74を介して集められた病室ユニット内の空気は、ダクト75を通過して殺菌酵素HEPAフィルタ71に送られ、細菌などの微細な粒子を吸着した後、浄化された空気をダクト76及び壁面73に設けられた排気用ベントキャップ72を通過して外部に排出される。
特に、この外部への排出手段により病室ユニット内の気圧は陰圧に保持され、しかも、フィルタ71により、外部への細菌の排出を確実に防止することが可能となる。
【0034】
図8に、循環式換気手段や排気手段などの空調設備の組み合わせ例を示す。
図8(a)では、病室1、浴室ユニット80、及び前室2の各空間に排気口を配置すると共に、病室1では、循環式換気手段13が浄化した空気を排出ダクトに導入するよう構成されている。そして、各空間から集められた室内空気は、ファン81により殺菌酵素HEPAフィルタ82を通過して、外部に排出される。85は排気用ベントキャップを示す。
上記室内空気の排出により病室ユニット内が陰圧状態となるため、給気用ベンドキャップ83,84から病室ユニット内に常に外気が導入され、病室内の細菌等が外部に流出することを防止している。
なお、室内の気圧が陽圧状態となった場合でも、室内の空気がフィルタ82を経ずに直接外部に流出するの防止するため、給気用ベントキャップ83,84に一方向弁を組み込むことも可能である。
【0035】
図8(a)のように、循環式換気手段が排出する空気をファン81を利用して外部に排出する場合、室内の空気容量が一番大きい病室1内の空気を、循環式換気手段のファンと排出手段のファンとが協働して排出するため、効率よく病室内の空気を排出することが可能となる。
しかも、病室内の空気は特に細菌等が多く存在しているが、循環式換気手段のフィルタと排出手段のフィルタとが協働して空気を浄化するため、より清浄な空気を外部に放出することが可能となる。
さらに、前室は、外部に繋がるドアを有しているため、前室の気圧が隣接する病室等の室内の気圧より低くなると、前室内に他室の空気が流入することとなる。これは、細菌等を含む空気を前室に寄せ集めることにもなり好ましくない。このため、前室の気圧は、隣接する室内の気圧より高く設定することが好ましく、例えば、ファン81の配置を病室1又は浴室ユニット80の上に配置し、前室2からファンまでの距離を長くすることも可能である。
【0036】
図8(b)は、前室の空気をファン81により直接排気するのではなく、病室1又は浴室ユニット80を介して排気する方法を図示したものである。これにより、前室内の空気の排気速度は減少するが、常時、前室の気圧を隣接する他の室内より高く維持することが可能となる。
また、図8(c)は、循環式換気手段を省略し、1つのファン81のみで、病室ユニット全体の空気を排気するよう構成したものである。ファン81の排気能力を高く設定することが求められるが、ファンが1つで済み、設置やメンテナンスの負担、また、コスト負担などを低減することが可能となる。
なお、ファン81に繋がる排気口の設置位置は、浴室ユニット80に限定されるものではなく、病室1に設置することも可能である。
【0037】
次に、下水等の処理について説明する。
図9は、室内から排出される水、汚水及び汚物等(以下、「下水等」という)の処理の概要を説明する図である。
病室1に設置された洗面台10、トイレ室3に設置された便器又は排水口、シャワールーム4に設置された排水口、及び前室2に設置された洗面台11などから排出される下水等は、共通の下水管91を介して、病室ユニットの外部に設置されたタンク92に蓄積される。タンク92においては、下水等の主な成分が水分である場合には、紫外線照射又は薬品処理を施し、下水等に含まれる細菌等を殺菌してから、一般の下水処理システムに排出される。また、下水等に固形成分が含まれる場合には、タンク92の替わりに燃焼手段を設け、加熱殺菌処理又は燃焼処理を施した後に、外部に放出される。なお、タンク92のような貯蔵手段は、燃焼手段の前後に、必要に応じて配置することも可能である。
また、下水等に固形成分が含まれる場合の他の処理方法としては、固形物と水分との分離手段を介して、固形物と水分とを別々のタンクに蓄え、固形物は上述のように燃焼手段により加熱殺菌処理又は燃焼処理を施し、他方の水分は上述のように紫外線照射又は薬品処理を行ない、処理後の固形物と水分とを一緒に、外部に放出するよう構成することも可能である。
調理等の流し台代わりに洗面台を利用する場合、あるいは、洗面台の代わりに流し台を設置する場合には、洗面台10等の配水口付近にディスポーザー90を設置し、ディスポーザー90で生ゴミを裁断し、水と同様に配水管より排出することも可能である。
【0038】
本発明に係る病室ユニットの外形を直方体状に形成することにより、必要に応じて複数の病室ユニットを積み重ねて設置することも可能となる。
また、図2に示すように、病室ユニットの底面にジャッキ19などを配置し、水平な平面でない地面に対しても、病室内を水平にことが可能となるよう、調整することも可能である。
さらに、本発明に係る病室ユニットに給電線や上水・下水管などを接続する場合において、病室ユニットを構成する鋼板等の構造体に開口を形成する場合は、配管等の周囲にシール材を設けるなど、病室ユニット内の気密性を損なわないように配慮することが好ましい。
本発明は、以上説明したものに限られるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲において、当該技術分野において公知の技術を付加したものも包含するものであることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上、説明したように、本発明によれば、病室の増設が容易であり、患者の長期居住を快適すると共に、病室内からの細菌等の排出を抑制可能とした病室ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る病室ユニットの概略を示す平面図である。
【図2】図1に示す病室ユニットの断面図である。
【図3】病室ユニットの屋根及び天井の構造を示す概略図である。
【図4】病室ユニットの壁面の構造を示す概略図である。
【図5】病室ユニットの床下面の構造を示す概略図である。
【図6】循環式換気手段の構造を示す概略図である。
【図7】排気手段の構造を示す概略図である。
【図8】空調設備の組み合わせ例を示す図である。
【図9】下水等の処理手段を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1 病室
2 前室
3 トイレ室
4 シャワールーム
5 壁面
13 循環式換気手段
16 排気手段
20 屋根
22 床下面
65,71,82 殺菌酵素HEPAフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根、壁面、及び床下面を鋼板で形成すると共に各鋼板が全溶接された構造体と、
該構造体により形成される室内の空気を浄化して循環する循環式換気手段と、
該室内の空気を外部に排気する排気手段とを有し、
該排気手段には細菌を吸着するフィルタを備えることを特徴とする病室ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の病室ユニットにおいて、該鋼板の外面の少なくとも一部には断熱塗料が塗布されると共に、該鋼板の内面の少なくとも一部には断熱材料が配置されていることを特徴とする病室ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の病室ユニットにおいて、該フィルタには、殺菌酵素フィルタを用いたことを特徴とする病室ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の病室ユニットにおいて、該循環式換気手段で浄化された空気の一部を該排気手段に導入することを特徴とする病室ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の病室ユニットにおいて、該室内を病室及び前室とに仕切ると共に、該仕切りの一部には、自動扉を配置することを特徴とする病室ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の病室ユニットにおいて、該室内で使用された水の排出は、該構造体の外部に設置されるタンク内に該水を一旦貯蔵し、紫外線殺菌処理又は薬品処理を施した後、放出されることを特徴とする病室ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の病室ユニットにおいて、該室内で排出された汚物又は汚水は、該構造体の外部に設置される燃焼手段により、加熱殺菌処理又は燃焼処理を施した後、放出されることを特徴とする病室ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−145(P2006−145A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176594(P2004−176594)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(504230017)
【出願人】(504230280)
【Fターム(参考)】