病状を治療するためのアンチセンス分子及び方法
選択された標的部位に結合してジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導可能である配列番号1〜59に記載のアンチセンス分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキソンスキッピングを促進するのに好適な新規アンチセンス化合物及び組成物に関する。また、新規アンチセンス化合物を用いてエキソンスキッピングを誘導する方法、及び本発明の方法において使用するのに適した治療用組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
背景技術に関する以下の議論は、本発明に関する理解を促進することのみを意図するものである。以下の議論は、言及される資料がいずれも本願の優先日の時点における一般的な知見の一部である又はあったことを承認又は容認するものではない。
【0003】
現在、遺伝子中の疾患を引き起こす突然変異を抑制又は補償する方法の研究に多大な労力が費やされている。様々な異なるレベル(転写、スプライシング、安定性、翻訳)で遺伝子の発現に影響を与える様々な化学作用を用いるアンチセンス技術が開発されている。このような研究の多くは、無数の異なる症状における異常な遺伝子又は疾患に関連する遺伝子を補正又は補償するためのアンチセンス化合物の使用に注力している。
【0004】
アンチセンス分子は、高度に特異的に遺伝子の発現を阻害することができるので、遺伝子発現の調節因子としてのオリゴヌクレオチドに関する多くの研究努力は、癌遺伝子又はウイルス遺伝子等の標的遺伝子の発現の阻害に焦点を当てている。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNA(センス鎖)又はDNAのいずれかを対象とし、これらと三重鎖構造を形成してRNAポリメラーゼIIによる転写を阻害する。
【0005】
特定の遺伝子のダウンレギュレーションにおいて望ましい効果を達成するために、前記オリゴヌクレオチドは、標的mRNAの崩壊を促進するか又は前記mRNAの翻訳をブロックして、望ましくない標的タンパク質のデノボ合成を有効に防がなければならない。
【0006】
ネイティブタンパク質の生成をアップレギュレートすることを目的とする場合、又はナンセンス突然変異若しくはフレームシフト突然変異等の翻訳の早期終結を誘導する突然変異を補償することを目的とする場合、かかる技術は有用ではない。
【0007】
更に、タンパク質中に存在する突然変異が原因で正常に機能するタンパク質が早期終結する場合、アンチセンス技術を用いて幾つかの機能的なタンパク質生成を修復するための手段が、スプライシングプロセス中の干渉を通して可能であることが示されている(非特許文献1〜3)。これらの場合、不完全な遺伝子転写産物が分解の標的となってはならないので、アンチセンスオリゴヌクレオチドの化学的性質によって標的mRNAの崩壊が促進されてはならない。
【0008】
様々な遺伝子疾患において、遺伝子の最終的な発現に対する突然変異の影響は、スプライシングプロセス中に標的とするエキソンをスキッピングするプロセスを通して調節することができる。スプライシングプロセスは、プレmRNA中の隣接するエキソン−イントロン接合を近接させる複合体多粒子機構により導かれ、イントロン末端のホスホジエステル結合を切断し、その後、共にスプライシングされるエキソン間を再編成する。この複雑且つ高度に正確なプロセスは、プレmRNA中の配列モチーフによって媒介され、前記配列モチーフは、後にスプライシング反応に関与する様々な核スプライシング因子に結合する比較的短い半保存的RNAセグメントである。プレmRNAに関与するモチーフをスプライシング機構が読み取る又は認識する方法を変化させることによって、様々にスプライシングされたmRNA分子を作製することが可能である。現在、ヒト遺伝子の大部分が、正常な遺伝子発現中にオルタナティブスプライシングされることが認められているが、それを引き起こす機序は同定されていない。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、コードされているmRNAにおけるエラー及び欠失をバイパスしたり、マチュアな遺伝子転写産物から除去したりできることが示されている。
【0009】
自然界では、スプライシングプロセスにおける遺伝子欠損、即ちエキソンスキッピングの程度は、完全には理解されていないが、一般的に非常に低いレベルで生じているという例が多く報告されている(非特許文献4)。しかし、疾患を引き起こす突然変異に関連しているエキソンが幾つかの遺伝子から特異的に欠損している場合、ネイティブなタンパク質と類似の生物学的性質を有するか、又は標的エキソンに関連する突然変異によって引き起こされる疾患を寛解させるのに十分な生物活性を有する短いタンパク質産物が生成される場合があることが認められている(非特許文献5及び6)。
【0010】
このターゲティングされたエキソンスキッピングプロセスは、多くのエキソン及びイントロンが存在するか、エキソンの遺伝子構成に重複性が存在するか、又はタンパク質が1以上の特定のエキソンなしでも機能することが可能である長い遺伝子において特に有用である可能性がある(例えば、79エキソンからなるジストロフィン遺伝子;恐らく、反復する配列ブロックをコードする幾つかのコラーゲン遺伝子、又はそれぞれ−80及び370超のエキソンからなる巨大なネブリン若しくはタイチン遺伝子)。
【0011】
様々な遺伝子における突然変異によって引き起こされる先端切断に関連する遺伝子疾患を治療するために遺伝子のプロセシングを再指示しようとする試みは、(1)スプライシングプロセスに関与するエレメントと完全に又は部分的に重複しているか;或いは(2)そのエレメントで生じる特定のスプライシング反応を正常に媒介するスプライシング因子の結合及び機能を破壊するためにエレメントに十分近接している位置でプレmRNAに結合する(例えば、ブロックされるエレメントから3、6、又は9ヌクレオチド以内の位置でプレmRNAに結合する)アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に焦点を当てている。
【0012】
例えば、突然変異型ジストロフィンのプレmRNAスプライシングのアンチセンスオリゴヌクレオチドによる調節は、インビトロ及びインビボの両方で報告されている。日本で報告されたジストロフィン突然変異のうちの1種では、52塩基対の欠失突然変異によって、隣接するイントロンと共にエキソン19がスプライシングプロセス中に除去される(非特許文献7)。インビトロにおけるミニ遺伝子のスプライシングシステムを用いて、ジストロフィン神戸のエキソン19における欠失配列のうち5’側の半分に対して相補的な31塩基の2’−O−メチルオリゴヌクレオチドが、野生型のプレmRNAのスプライシングを阻害することが示されている(非特許文献8)。同じヌクレオチドを用いて、ヒトのリンパ芽球様培養細胞におけるネイティブなジストロフィン遺伝子転写産物からエキソンスキッピングが誘導された。
【0013】
非特許文献9には、筋ジストロフィーのモデルであるmdxマウス突然変異体における突然変異型ジストロフィンのエキソン23の周囲で行われるスプライシングについて分析するためのインビトロコンストラクトについて記載されている。マウスのジストロフィンのエキソン23内又はそれに隣接する部位をスプライシングすることを標的とする2’修飾オリゴヌクレオチドを用いて、インビトロにおいてこれらコンストラクトを分析するための計画について検討したが、標的部位又は配列は得られなかった。
【0014】
その後、このグループから、2’−O−メチルオリゴリボヌクレオチドが、mdxマウスに由来する筋芽細胞におけるジストロフィン欠損を補正することが報告された。マウスのジストロフィンのイントロン22の3’スプライス部位を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドが突然変異型エキソン及び幾つかの隣接するエキソンのスキッピングを引き起こすことが報告され、新たな内部欠損を有する新規インフレームジストロフィン転写産物が作製された。この突然変異型ジストロフィンは、アンチセンスで処理されたmdx筋管の1%〜2%で発現した。2’−O−メトキシエチルホスホジエステル等の他のオリゴヌクレオチド修飾の使用も記載されている(非特許文献10)。
【0015】
したがって、アンチセンス分子は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)等の遺伝子疾患の治療におけるツールを提供することができる。しかし、アンチセンス分子を用いてエキソンスキッピングを誘導しようとする試みは、必ずしも成功している訳ではない。
【0016】
ジストロフィンプレmRNAからエキソン19をスキッピングすることに成功したジストロフィンのエキソン19に関する研究は、非特許文献11に記載されている通り、隣接するスプライス部位又はエキソンの定義に関与するエキソン内のモチーフを対象とする様々なアンチセンス分子を用いて達成された。
【0017】
エキソン19のスキッピングが一見容易であるのとは対照的に、非特許文献10によるmdxマウスにおけるエキソン23のスキッピングの最初の報告は、現在、真のアンチセンス活性ではなく、自然に生じる復帰突然変異転写産物又はアーティファクトを報告しただけであると考えられている。更に、エキソン23を欠く転写産物が一貫して生成される訳ではなく、非特許文献10は、誘導されたエキソンスキッピングの任意の経時変化、或いはエキソンスキッピングのレベルがアンチセンスオリゴヌクレオチドの量の増加又は減少に対応する用量依存的な効果を示すためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの用量設定さえも示していなかった。更に、この成果は、他の研究者によって再現することができなかった。
【0018】
mdxマウスモデルにおける特異的且つ再現可能なエキソンスキッピングの最初の例は、非特許文献2に報告されている。アンチセンス分子をドナースプライス部位に導くことによって、培養細胞の処理後6時間以内にジストロフィンmRNAにおいて一貫した効率的なエキソン23のスキッピングが誘導された。また、非特許文献2は、より長いアンチセンスオリゴヌクレオチドによるマウスのジストロフィンプレmRNAのアクセプター領域のターゲティングについて記載しており、非特許文献10に公開されている結果を再現することはできないと述べている。イントロン22のアクセプタースプライス部位を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの選択を用いて、エキソン23のみ又は幾つかの隣接するエキソンを複数除去するエキソンスキッピングを再現可能に検出することはできなかった。
【0019】
イントロン23のドナースプライス部位を対象とする第1のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、一次培養筋芽細胞において一貫してエキソンスキッピングを誘導したが、この化合物は、高レベルのジストロフィンを発現する不死化細胞培養物においてそれほど効率的ではないことが見出された。しかし、正確なターゲティング及びアンチセンスオリゴヌクレオチド設計を行うことにより、特定のエキソンを除去する効率が大幅に上昇した(非特許文献12を参照されたい)。
【0020】
したがって、標的ヌクレオチド配列に結合し、スプライシングを調節することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供することが必要とされている。スプライシングに重要であると推定されるモチーフにアンチセンスオリゴヌクレオチドを単に導くだけで、治療設定におけるその化合物の有効性が保証される訳ではない。
【0021】
本発明の背景に関する前述の議論は、本発明に関する理解を促進することのみを意図する。この議論は、言及される資料がいずれも本願の優先日の時点における一般的な知見の一部である又はあったことを承認又は容認するものではないことを理解すべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Sierakowska H,et al.,(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93,12840−12844
【非特許文献2】Wilton SD,et al.,(1999)Neuromusc Disorders 9,330−338
【非特許文献3】van Deutekom JC et al.,(2001)Human Mol Genet 10,1547−1554
【非特許文献4】Sherrat TG, et al.,(1993)Am J Hum Genet 53,1007−1015
【非特許文献5】Lu QL, et al.,(2003)Nature Medicine 9,1009−1014
【非特許文献6】Aartsma−Rus A et al.,(2004)Am J Hum Genet 74: 83−92
【非特許文献7】Matsuo et al.,(1991)J Clin Invest.87:2127−2131
【非特許文献8】Takeshima et al.(1995),J Clin. Invest.95:515−520
【非特許文献9】Dunckley et al.(1997)Nucleosides&Nucleotides,16,1665−1668
【非特許文献10】Dunckley et al.(1998)Human Mol.Genetics,5:1083−90
【非特許文献11】Errington et al.(2003)J Gen Med 5:518−527
【非特許文献12】Mann CJ et al.,(2002)J Gen Med 4,644−654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、プレmRNAのスプライシングに関与するRNAモチーフに結合するのに好適なアンチセンス分子化合物及び組成物であって、特異的且つ効率的にエキソンスキッピングを誘導可能であるアンチセンス分子化合物及び組成物、並びにその使用方法を提供する。
【0024】
標的の選択は、エキソンスキッピングの効率、延いては後に行われる可能性のある治療法への応用において重要な役割を果たす。スプライシングに関与すると推定されるプレmRNAの標的領域に対するアンチセンス分子を単に設計するだけでは、効率的且つ特異的なエキソンスキッピングを誘導するという保証は得られない。スプライシング干渉に関して最も明らか又は容易に定義される標的は、ドナー及びアクセプタースプライス部位であるが、例えばエキソンスプライシングエンハンサーエレメント、サイレンシングエレメント、及びブランチポイント等のそれほど明確に定義又は保存されていないモチーフも存在する。アクセプター及びドナースプライス部位は、それぞれ約16塩基及び約8塩基のコンセンサス配列を有する(エキソン認識、イントロン除去、及びスプライシングプロセスに関与するモチーフ及びドメインの概略については図1を参照されたい)。
【課題を解決するための手段】
【0025】
第1の態様によれば、本発明は、選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘導可能であるアンチセンス分子を提供する。
【0026】
例えば、ジストロフィン遺伝子転写産物においてエキソン5、12、17、21、22、24、43〜47、49、50、54〜64、66、67、70、及び72のエキソンスキッピングを誘導するためには、表1Aに列記される群からアンチセンス分子を選択することが好ましい。
【0027】
更なる例では、本発明の2以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを共に組み合わせて、エキソン3、4、8、10、26、36、48、60、66、及び68においてより効率的にエキソンスキッピングを誘導することが可能である。アンチセンスオリゴヌクレオチドの組み合わせ、即ち「カクテル」は、エキソンに導かれて、効率的にエキソンスキッピングを誘導する。
【0028】
第2の態様によれば、本発明は、遺伝子障害の予防的処置又は治療的処置に役立つように選択されるか又は前記処置に適するアンチセンス分子であって、患者に送達するのに好適な形態の少なくとも1つのアンチセンス分子を含むアンチセンス分子を提供する。
【0029】
第3の態様によれば、本発明は、特定のタンパク質をコードする遺伝子に突然変異が存在し、前記突然変異の作用をエキソンスキッピングにより取り消すことができる遺伝子疾患に罹患している患者を治療する方法であって、(a)本明細書に記載される方法に従ってアンチセンス分子を選択する工程と、(b)かかる治療を必要としている患者に前記分子を投与する工程とを含む方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、遺伝子疾患を治療する医薬を製造するための本発明の精製及び単離アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0031】
更に、本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに特徴的な症状を治療する方法であって、患者の特定の遺伝子病変に関連する適切に設計された治療に有効な量の本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、治療を必要としている患者に投与することを含む方法を提供する。更に、本発明は、患者を予防的に処置して、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを予防するか又は少なくとも最小化する方法であって、治療に有効な量のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はこれら生物学的な分子のうちの1以上を含む医薬組成物を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、遺伝子疾患を治療するためのキットであって、好適な容器に包装されている本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、その使用説明書とを少なくとも含むキットを提供する。
【0033】
本発明の他の態様及び利点は、以下の記載を吟味することにより当業者に明らかになるであろう。以下の図を参照して説明を進める。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、エキソン認識、イントロン除去、及びスプライシングプロセスに関与するモチーフ及びドメインの概略図である。
【図2】図2は、疾患を引き起こす突然変異をバイパスするためにエキソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの概念図である(縮尺は正確でない)。斜線付きボックスは、mRNAの残りがタンパク質に翻訳されるのを妨げる突然変異を有するエキソンを表す。黒いバーは、マチュアなmRNAにそのエキソンが含まれるのを妨げるアンチセンスオリゴヌクレオチドを表す。
【図3】図3は、正常なヒト筋肉培養細胞において10nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導するエキソン3を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図4】図4は、正常なヒト筋肉培養細胞において25nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導するエキソン4を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図5】図5は、エキソンスプライシングエンハンサーエレメントであると推定されるエキソン5の内部ドメインを対象とするアンチセンス分子[H5A(+35+65)]を用いる強力且つ効率的なヒトのエキソン5のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。この好ましい化合物は、ヒト筋肉培養細胞における25nMのトランスフェクション濃度で一貫してエキソンスキッピングを誘導する。
【図6】図6は、正常なヒト筋肉培養細胞において10nMのトランスフェクション濃度でエキソン8及びエキソン8/9の両方に対して強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導する、エキソン8を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図7】図7は、エキソン10及び周囲のエキソンのスキッピングを誘導する様々なカクテル及び単一のアンチセンス分子を示すゲル電気泳動像である。[H10A(−05+16)]及び[H10A(+98+119)]の組み合わせ又は[H10A(−05+16)]及び[H10A(+130+149)]の組み合わせは、エキソン10及びエキソン9〜12のスキッピングを誘導するが、[H10A(−05+16)]単独ではエキソン9〜14のスキッピングを誘導する。
【図8】図8は、エキソン14を対象とするアンチセンス分子H14A(+31+61)を用いるエキソン14のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図9】図9は、エキソン17を対象とするアンチセンス分子H17A(+10+35)を用いるエキソン17のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図10】図10は、エキソン26を対象とするアンチセンス分子の2つのカクテルを示すゲル電気泳動像である。[H26A(−07+19)]及び[H26A(+24+50)]のダブルカクテルは、エキソン26のスキッピングを良好に誘導し、前記カクテルに更にアンチセンス分子を添加してもスキッピング効率は影響を受けない。
【図11】図11は、正常なヒト筋肉培養細胞において25nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導する、エキソン36を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図12】図12は、アンチセンス分子H43A(+92+117)を用いて正常なヒト筋肉培養細胞における25nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソン43のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図13】図13は、アンチセンス分子H44A(+65+90)を用いる用量依存的なエキソン55のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図14】図14は、アンチセンス分子H45A(−09+25)を用いる強力且つ一貫したエキソン45のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図15】図15は、アンチセンス分子H46A(+81+109)を用いる強力且つ一貫したエキソン46のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図16】図16は、アンチセンス分子H47A(+01+29)を用いる強力且つ一貫したエキソン47のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図17】図17は、強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導するエキソン47を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図18】図18は、アンチセンス分子H49A(+45+70)を用いる強力且つ一貫したエキソン49のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図19】図19は、アンチセンス分子H50A(+48+74)を用いる強力且つ一貫したエキソン50のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図20】図20は、アンチセンス分子H51A(+66+95)を用いる強力且つ一貫したエキソン51のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図21】図21は、アンチセンス分子H54A(+67+97)を用いる強力且つ一貫したエキソン54のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図22】図22は、用量依存的にエキソン55のスキッピングを誘導するアンチセンス分子H55A(−10+20)を示すゲル電気泳動像である。
【図23】図23は、アンチセンス分子H56A(+92+121)を用いる強力且つ一貫したエキソン56のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図24】図24は、用量依存的にエキソン57のスキッピングを誘導するアンチセンス分子H57A(−10+20)を示すゲル電気泳動像である。
【図25】図25は、エキソン59を対象とするアンチセンス分子H59A(+96+120)を用いるエキソン59及びエキソン58/59のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図26】図26は、エキソン60のエキソンスキッピングを誘導する2つの異なるカクテルを示すゲル電気泳動像である。
【図27】図27は、アンチセンス分子H63A(+20+49)を用いるエキソン63のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図28】図28は、アンチセンス分子H64A(+34+62)を用いるエキソン64のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図29】図29は、用量依存的にエキソンスキッピングを誘導するエキソン66を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図30】図30は、アンチセンス分子H67A(+17+47)を用いるエキソン67のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図31】図31は、用量依存的にエキソンのスキッピングを誘導するエキソン68を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図32】図32は、25nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソン69/70のエキソンスキッピングを誘導するアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図33】図33は、様々なレベルのエキソン50のスキッピングを誘導するアンチセンス分子の様々な「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図34】図34は、エキソン50/51の効率的なスキッピングを誘導する3つのアンチセンス分子のカクテルを示すゲル電気泳動像である。
【図35】図35は、様々な効率のエキソンスキッピングを示す濃度測定結果のグラフである。試験したアンチセンス分子は、エキソン3[H3A(+30+60)及びH3A(+61+85)];エキソン4[H4D(+14−11)及びH4A(+11+40)];エキソン14[H14A(+32+61)];エキソン17[H17A(+10+35)];エキソン26[H26A(−07+19)、H26A(+24+50)及びH26A(+68+92)];エキソン36[H36A(−16+09)及びH36A(+22+51)]であった。
【図36】図36は、様々な効率のエキソンスキッピングを示す濃度測定結果のグラフである。試験したアンチセンス分子は、エキソン46[H46A(+81+109)];エキソン47[H47A(+01+29)];エキソン48[H48A(+01+28)及びH48A(+40+67)];エキソン49[H49A(+45+70)]であった。
【図37】図37は、アンチセンス分子H11A(+50+79)を用いるエキソン11のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図38】図38は、アンチセンス分子H12A(+30+57)を用いるエキソン12のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図39】図39は、アンチセンス分子H44A(+59+85)を用いるエキソン44のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図40】図40は、アンチセンス分子H45A(−03+25)を用いるエキソン45のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図41】図41は、アンチセンス分子H51A(+71+100)を用いるエキソン51のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図42】図42は、アンチセンス分子H52A(+09+38)を用いるエキソン52のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図43】図43は、アンチセンス分子H53A(+33+65)を用いるエキソン53のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図44】図44は、アンチセンス分子H46A(+93+122)を用いるエキソン46のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図45】図45は、アンチセンス分子H73A(+02+26)を用いるエキソン73のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図46A】図46Aは、アンチセンス分子の配列を示す。
【図46B】図46Bは、アンチセンス分子の配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
配列表の簡単な説明
【表1】
【表2】
【0036】
総論
当業者は、本明細書に記載される発明において、具体的に記載されている発明以外の変形例及び変更例も可能であることを理解するであろう。本発明は、全てのかかる変形例及び変更例を含むことを理解されたい。また、本発明は、個々に又は集合的に明細書中に言及又は指示される工程、特徴、組成物、及び化合物の全て、並びに前記工程又は特徴のうちの任意の及び全ての組み合わせ又は任意の2以上を含む。
【0037】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲を限定されるものではなく、前記実施形態は、例証する目的のみを意図するものである。機能的に等価な生成物、組成物、及び方法は、明らかに本明細書に記載される本発明の範囲内である。
【0038】
本明細書に含まれるヌクレオチド及びアミノ酸の配列情報を含む配列特定番号(配列番号)は、記載の最後にまとめて記載する。これらは、プログラムPatentInバージョン3.0を用いて作成したものである。各ヌクレオチド又はアミノ酸配列は、数字見出し<210>とその後の配列特定子(例えば、<210>1、<210>2等)によって配列表中で識別される。各ヌクレオチド又はアミノ酸配列の長さ、配列の種類、及び起源生物は、それぞれ、数字見出し<211>、<212>、及び<213>に提供される情報によって示される。明細書中で言及されるヌクレオチド及びアミノ酸の配列は、数字見出し<400>とその後の配列特定子(例えば、<400>1、<400>2等)によって提供される情報によって定義される。
【0039】
様々なアンチセンス分子を識別するために、アンチセンス分子の命名システムが提案され、公開されている(Mann et al.,(2002)J Gen Med 4,644−654を参照されたい)。この命名法は、全て同じ標的領域を対象とする幾つかの僅かに異なるアンチセンス分子を試験したときに特に関連し、以下のように示される:
H#A/D(x:y)
最初の文字は、種を表す(例えば、H:ヒト、M:マウス、C:イヌ)。
「#」は、標的ジストロフィンエキソン番号を表す。
「A/D」は、それぞれ、エキソンの最初と最後のアクセプタースプライス部位又はドナースプライス部位を示す。
(x y)は、「−」又は「+」がそれぞれイントロン配列又はエキソン配列を示すアニーリング座標を表す。一例として、A(−6+18)は、標的エキソンの前のイントロンの最後の6塩基と、標的エキソンの最初の18塩基を示す。最も近接するスプライス部位は、アクセプターであるので、これら座標の前に「A」と記載する。ドナースプライス部位におけるアニーリング座標は、アンチセンス分子のアニーリング部位に対応する最後の2つのエキソン塩基と最初の18個のイントロン塩基を表すD(+2−18)と記載することができる。A(+65+85)によって表される全体がエキソンであるアニーリング座標は、即ち、そのエキソンの最初から65番目のヌクレオチドと85番目のヌクレオチドとの間の部位である。
【0040】
本明細書に引用される全ての刊行物(特許、特許出願、論文、研究室マニュアル、書籍、又は他の文書を含む)の全開示は、参照することによって本明細書に援用される。参照文献のいずれかが先行技術を構成したり、本発明が関連する分野における研究の一般的な知見の一部であったりすることを認めるものではない。
【0041】
本明細書で使用するとき、「由来」及び「由来する」という用語は、特定の対象(integer)が、特定の起源から必ずしも直接得られないとしても、前記起源から得ることが可能であることを示すものとする。
【0042】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味を必要としない限り、用語「含む(comprise)」又はその変形(「comprises」又は「comprising」等)は、指定の対象又は対象群を含むことを意味するが、任意の他の対象又は対象群を除くものではないと理解されるであろう。
【0043】
本明細書で用いられる選択された用語の他の定義は、本発明の詳細な記載中に見出すことができ、明細書全体に適用される。別段の定義がなされない限り、本明細書で用いられる全ての他の科学用語及び技術用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
【0044】
好ましい実施形態の説明
アンチセンス分子が、プレmRNA配列内のエキソンにおけるスプライシングに関与しているヌクレオチド配列を標的としている場合、エキソンの正常なスプライシングが阻害されて、スプライシング機構がマチュアなmRNAからマチュアなエキソン全体をバイパスしてしまうことがある。エキソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの概念を図2に示す。
【0045】
多くの遺伝子において、エキソン全体が欠損すると、重要な機能ドメインの喪失又はリーディングフレームの崩壊が生じ、非機能的タンパク質が生成される。しかし、一部のタンパク質では、リーディングフレームが崩壊することなしに、且つタンパク質の生物活性を著しく変化させることなしに、タンパク質内から1以上のエキソンを欠損させることによってタンパク質を短くすることが可能である。一般的に、かかるタンパク質は、構造的役割を有するか、末端に機能ドメインを有するか、又は構造的役割を有し且つ末端に機能ドメインを有する。本発明は、特定のジストロフィンプレmRNAに結合し、その遺伝子のプロセシングを再指示することができるアンチセンス分子について記載する。
【0046】
アンチセンス分子に基づく治療法の好ましい目的は、できる限り低濃度のアンチセンス分子によって最大のエキソンスキッピングを得ることにある。一般に、アンチセンス分子は、強くロバストなエキソンスキッピングを引き起こす場合もあり;弱く散在するエキソンスキッピングを引き起こす場合もあり;エキソンスキッピングを全く引き起こさない場合もある。低治療用量で強く、ロバストで、且つ一貫したエキソンスキッピングをもたらすことのできるアンチセンス分子(の単体又は組み合わせ)を開発することが好ましい。
【0047】
アンチセンス分子
本発明は第1の態様によれば、選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘導可能であるアンチセンス分子が提供される。ジストロフィン遺伝子転写産物のエキソンにおいてエキソンスキッピングを誘導するためには、表1Aに示す化合物の群からアンチセンス分子を選択することが好ましい。
【0048】
また、選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘導可能である2以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドの組み合わせ、即ち「カクテル」が提供される。ジストロフィン遺伝子転写産物のエキソンにおいてエキソンスキッピングを誘導するためには、表1Bに示す化合物の群から「カクテル」に含まれるアンチセンス分子を選択することが好ましい。
【0049】
アンチセンス分子がコンセンサススプライス部位を完全に網羅するように設計しても、必ずしも標的エキソンのスキッピングが生じる訳ではない。更に、本発明らは、アンチセンスオリゴヌクレオチド自体のサイズ、即ち長さが、常にアンチセンス分子を設計する際の主な要因である訳ではないことを見出した。エキソン19等の一部の標的では、12塩基の短いアンチセンスオリゴヌクレオチドがエキソンスキッピングを誘導可能であったにもかかわらず、より長い(20塩基〜31塩基)オリゴヌクレオチドはそれ程効率的ではなかった。マウスのジストロフィンエキソン23等の幾つかの他の標的では、17残基長しかないアンチセンスオリゴヌクレオチドが、25ヌクレオチドの別の重複する化合物よりも効率的にスキッピングを誘導することができた。しかし、本発明では、一般的に、より長いアンチセンス分子の方がより短い分子よりもエキソンスキッピングをより効率的に誘導する場合が多いことを見出した。したがって、本発明のアンチセンス分子は、長さ24核酸〜30核酸、好ましくは約28ヌクレオチドであることが好ましい。例えば、20塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチド(H16A(−07+13))は、エキソン16のエキソンスキッピングの誘導について効果がないが、前記20塩基のオリゴヌクレオチドを完全に含む31塩基のオリゴヌクレオチド(H16A(−06+25))は、スキッピングの誘導について有効であることが既に見出されている(Harding et al(2007)Mol Ther 15:157−166)。
【0050】
また、本発明者らは、スプライシングを再指示するためにアンチセンス分子によってブロック又はマスクされ得る任意の標準的なモチーフなど存在しないであろうことを見出した。マウスジストロフィンのエキソン23等の幾つかのエキソンでは、そのエキソンのスキッピングを再指示するための標的に最もなりやすいのはドナースプライス部位であった。ドナースプライス部位の重複領域にアニーリングする一連のエキソン23特異的アンチセンス分子の設計及び試験から、エキソンスキッピングの誘導効率には大きなばらつきがあることが示されたことに留意すべきである。Mannら(2002年)に報告されている通り、ナンセンス突然変異のバイパス効率は、アンチセンス分子のアニーリングに依存して大きく変動していた(“Improved antisense oligonucleotide induced exon skipping in the mdx mouse model of muscular dystrophy”.J Gen Med 4:644−654)。エキソン23又は幾つかの内部ドメインのアクセプター部位を標的とする任意の一貫したエキソン23のスキッピング誘導は見出されていない。
【0051】
除去の標的となる他のエキソンでは、ドナースプライス部位のマスキングは、エキソンスキッピングを全く誘導しなかった。しかし、アクセプタースプライス部位(以下に論じられるヒトのエキソン8)にアンチセンス分子を導くことにより、強力且つ持続性であるエキソンスキッピングが誘導された。ヒトエキソン8の除去は、エキソン9の同時除去と密接に関連していることに留意すべきである。エキソン8のアンチセンスオリゴヌクレオチドとエキソン9の対応する領域とは配列相同性が低いので、交差反応の問題であるとは考えられない。むしろ、これら2つのエキソンのスプライシングは、一般的に関連している。これが唯一の例ではなく、同様の作用がイヌ細胞でも観察されており、この場合もエキソン8を除去するためにターゲティングするとエキソン9もスキッピングされる。また、マウスのジストロフィンプレmRNAにおいてエキソン23を除去するためにターゲティングすると、エキソン22も除去されることが多い。この作用は、用量依存的に生じ、また、2つの隣接するエキソンが密接に協働してプロセシングされていることを示す。
【0052】
他の標的とされるエキソンでは、ドナー又はアクセプタースプライス部位を対象とするアンチセンス分子は、エキソンスキッピングを誘導しなかったか又は僅かしか誘導しなかったが、一方、アンチセンス分子のエキソン内領域(即ち、ヒトのジストロフィンエキソン4内のエキソンスプライシングエンハンサーエレメント)へのアニーリングは、エキソンスキッピングの誘導において最も効率的であった。幾つかのエキソン、例えばマウス及びヒトのエキソン19は、様々なモチーフを標的とするアンチセンス分子によって容易にスキッピングされる。即ち、ターゲティングされたエキソンスキッピングは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてドナー及びアクセプタースプライス部位、又はエキソンスプライシングエンハンサーエレメントをマスクした後に誘導される。
【0053】
また、どのアンチセンス分子のカクテルがエキソンスキッピングを誘導するかを予測することはできない。例えば、単独では所定のエキソンのスキッピング誘導について非常に優れている2つのアンチセンス分子を組み合わせても、カクテルとして組み合わせたときエキソンのスキッピングを引き起こすとは限らない。例えば、H50A(+02+30)及びH50A(+66+95)は、それぞれ単独ではエキソン50及び51のスキッピングを良好に誘導する。しかし、カクテルとして組み合わせると、前記2つのエキソンのスキッピングを僅かに誘導することしかできない。同様に、H50A(+02+30)とH51A(+66+90)との組み合わせ、又はH50A(+02+30)とH51A(+61+90)との組み合わせは、個々のアンチセンス分子が有効であったにもかかわらず、エキソン50及び51のスキッピングを効率的に引き起こさなかった。しかし、第3のアンチセンス分子(単独ではスキッピングを引き起こさない[H51D(+16−07)])を導入して、3つの要素のカクテル([H50A(+02+30)]、H51A(+66+90)、及び[H51D(+16−07)])を作製すると、エキソン50及び51を1nMまでスキッピングすることができた。
【0054】
或いは、単独では効果がない又は非常に低い効果しかない2つ又は3つのアンチセンス分子を組み合わせたとき、優れたスキッピングが生じる場合もある。例えば、H26A(−07+19)[配列番号39]、H26A(+24+50)[配列番号40]、及びH26A(+68+92)[配列番号41]は、個別にはエキソン26のスキッピングを非効率的にしか生じさせず、また複数のエキソンスキッピング(26〜29又は27〜30)を誘導する。しかし、3つのエキソンをカクテルとして組み合わせると、エキソン26が非常に効率的にスキッピングする。
【0055】
上記例及び議論から、ある組み合わせが機能するかどうかを正確に予測する方法が存在しないことは明らかである。
【0056】
アンチセンス分子は、「用量依存的に」又は「非用量依存的に」エキソンのスキッピングを引き起こす場合がある。用量依存的とは、より多い量のアンチセンス分子がより良好にエキソンをスキッピングすることを意味し、一方、非用量依存的アンチセンス分子は、非常に低用量でさえもスキッピングを誘導することができる。例えば、図15から、H46A(+81+109)[配列番号12]は、存在するアンチセンス分子の量(600nM〜25nM)にかかわらずエキソン46を等しく良好にスキッピングすることが分かる。対照的に、H57A(−10+20)[配列番号20](図24)は、100nMでエキソン57のスキッピングを強く誘導するが、50nMでは、スキッピングの程度が低下し、25nMでは更に大きく低下する。
【0057】
非用量依存的にスキッピングを誘導するアンチセンス分子を選択することが好ましい。その理由は、非常に低濃度でこれら分子を投与しても治療効果を得ることができるためである。しかし、用量依存的にスキッピングを誘導するアンチセンス分子、特に、低濃度で良好又は優れたスキッピングを誘導する分子を好ましい分子として選択することも許容可能である。本発明のアンチセンス分子は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは100nM、50nM、又は更には25nMもの低濃度で良好又は優れたエキソンスキッピングを誘導できることが好ましい。本発明のオリゴヌクレオチド分子は、100nMの濃度にて30%超のレベルでスキッピングを誘導することが最も好ましい。
【0058】
エキソンスキッピングの調節において用いるのに好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドを同定及び選択するために、機能を調節すべき核酸配列を先ず同定しなければならない。これは、例えば、発現が特定の障害又は疾患状態に関連している遺伝子(又はその遺伝子から転写されるmRNA)であってもよく、又は感染因子に由来する核酸分子であってもよい。本発明の状況において、好ましい標的部位は、mRNAのスプライシングに関与する部位(即ち、スプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位、又はエキソンスプライシングエンハンサーエレメント)である。スプライスブランチポイント及びエキソン認識配列又はスプライスエンハンサーエレメントも、mRNAのスプライシングを調節するための標的部位になり得る。
【0059】
好ましくは、本発明は、効率的且つ一貫したエキソンスキッピングを誘導するためにジストロフィンプレmRNAにおける選択された標的に結合可能なアンチセンス分子を提供することを目的とする。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンの機能的遺伝子産物の合成を妨げる突然変異から生じる。これらデュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子の欠陥は、一般的に、リーディングフレームを崩壊させる欠失、重複、微小欠失、又は挿入等のナンセンス突然変異又はゲノムの再構成である。ヒトのジストロフィン遺伝子は、大きく複雑な遺伝子であるので(79個のエキソンが共にスプライシングされて、約11,000塩基のオープンリーディングフレームを含むマチュアなmRNAを生成する)、これら突然変異が生じる可能性のある位置が多数存在する。結果として、ジストロフィン遺伝子における様々な疾患を引き起こす突然変異の多くを扱う包括的なアンチセンスオリゴヌクレオチドに基づく療法では、多くのエキソンがスプライシングプロセス中の除去の標的となり得ることが必要とされる。
【0060】
本発明の状況において、好ましい標的部位は、mRNAのスプライシングに関与する部位(即ち、スプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位、又はエキソンスプライシングエンハンサーエレメント)である。スプライスブランチポイント及びエキソン認識配列又はスプライスエンハンサーエレメントも、mRNAのスプライシングを調節するための標的部位となり得る。
【0061】
各分子における十分な数の対応位置が、互いに水素結合可能なヌクレオチドによって占有されている場合、オリゴヌクレオチドとDNA又はRNAとは互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズ可能」及び「相補的」という用語は、オリゴヌクレオチドとDNA又はRNAの標的との間で安定且つ特異的な結合が生じるように、十分な程度に相補的である、又は正確に対合することを示すために用いられる用語である。アンチセンス分子の配列は、特異的にハイブリダイズ可能な標的配列と100%相補的である必要はないということが、当技術分野では理解される。アンチセンス分子は、標的DNA又はRNAに対する化合物の結合が前記標的DNA又はRNAの正常な機能に干渉して有用性を喪失させ、且つ特異的に結合することが望ましい条件下で、即ち、インビボアッセイ又は治療的処置の場合は生理学的条件下で、インビトロアッセイの場合はアッセイが実施される条件下で、非標的配列に対するアンチセンス化合物の非特異的結合を妨げるのに十分な程度の相補性が存在する場合、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0062】
上記方法を用いて、その生物学的機能に影響を与えることなしに短くすることができるタンパク質内から任意のエキソンを欠損させることができるアンチセンス分子を選択することができるが、前記エキソンの欠損によって、短くなった転写mRNAにおけるリーディングフレームシフトが生じてはならない。したがって、3つのエキソンの直鎖配列において、第1のエキソンの最後にコドンにおける3つのヌクレオチドのうちの2つがコードされており、次のエキソンが欠損した場合、直鎖配列における第3のエキソンは、前記コドンのヌクレオチドトリプレットを完成させることができる1つのヌクレオチドで始まらなければならない。第3のエキソンが前記1つのヌクレオチドで始まらない場合、先端切断型又は非機能的なタンパク質の生成を導くリーディングフレームシフトが生じる。
【0063】
構造タンパク質におけるエキソンの最後におけるコドンの再構成は、常にコドンの最後で崩壊する訳ではないことが理解される。結果として、mRNAのインフレームリーディングを保証するために、プレmRNAから1超のエキソンを欠損させる必要がある場合もある。かかる状況では、複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、欠損させるエキソンにおけるスプライシングの誘導に関与する様々な領域を各々が対象とする本発明の方法によって選択される必要があるだろう。
【0064】
アンチセンス分子の長さは、プレmRNA分子内の意図する箇所に選択的に結合可能である限り変動してもよい。かかる配列の長さは、本明細書に記載される選択手順に従って決定することができる。一般的に、アンチセンス分子は、長さ約10ヌクレオチド〜長さ約50ヌクレオチドである。しかし、この範囲内の任意の長さのヌクレオチドを前記方法で用いてもよいことが理解される。アンチセンス分子の長さは、17ヌクレオチド〜30ヌクレオチドの長さであることが好ましい。驚くべきことに、より長いアンチセンス分子が、エキソンスキッピングの誘導についてより効率的であることが多いことが見出されている。したがって、アンチセンス分子は、24ヌクレオチド〜30ヌクレオチドの長さであることが最も好ましい。
【0065】
ジストロフィン遺伝子内でどのエキソンを接続可能であるのかを判定するために、エキソン境界マップを参照すべきである。あるエキソンと別のエキソンとの接続は、接続されるエキソンの5’境界に存在するのと同数を3’境界に有するエキソンに基づく。したがって、エキソン7が欠損した場合、エキソン6は、リーディングフレームを維持するためにエキソン12又は18と接続しなければならない。したがって、前者の場合はエキソン7〜11について、後者の場合はエキソン7〜17についてスプライシングを再指示するアンチセンスオリゴヌクレオチドを選択する必要がある。エキソン7の欠損の前後でリーディングフレームを回復させるための別の若干簡単なアプローチは、2つの隣接するエキソンを除去することである。エキソン6及び8のスキッピングの誘導は、エキソン5から9にスプライシングしてインフレーム転写産物を生じさせなければならない。しかし実際には、プレmRNAから除去するためにエキソン8をターゲティングすると、エキソン9も同時に除去されるので、得られる転写産物ではエキソン5とエキソン10とが接合している。エキソン9を含んでいても含んでいなくてもリーディングフレームは変化しない。
【0066】
試験されるアンチセンス分子が同定されれば、前記アンチセンス分子は、当技術分野において標準的な技術に従って調製される。アンチセンス分子を生成するための最も一般的な方法は、ヒドロキシリボースの2’位のメチル化及びホスホロチオエート骨格の導入である。これによって、表面的にはRNAに類似しているが、ヌクレアーゼ分解に対する耐性が遥かに高い分子が生成される。
【0067】
アンチセンス分子と二重鎖を形成している間にプレmRNAが分解されるのを防ぐために、前記方法で用いられるアンチセンス分子は、内因性RNaseHによる切断を最小化する又は避けるのに適応している場合がある。細胞内環境に存在するか又はRNaseHを含有する粗抽出物と接触している非メチル化RNAオリゴヌクレオチドの存在が、プレmRNA:アンチセンスオリゴヌクレオチド二重鎖の分解を導くので、この性質は非常に好ましい。かかる分解をバイパスできるか又は誘導しない任意の形態の修飾アンチセンス分子を本方法で用いることができる。このヌクレアーゼ耐性は、部分不飽和脂肪族炭化水素鎖と、カルボン酸基、エステル基、及びアルコール基を含む1以上の極性基又は荷電基とを含むように本発明のアンチセンス分子を修飾することによって達成することができる。
【0068】
RNAと二重鎖を形成するとき、細胞内RNaseHによって切断されないアンチセンス分子の例は、2’−O−メチル誘導体である。2’−O−メチル−オリゴリボヌクレオチドは、細胞内環境及び動物組織で非常に安定であり、RNAとの二重鎖は、リボ又はデオキシリボ対応物よりも高いTm値を有する。或いは、本発明のヌクレアーゼ耐性アンチセンス分子は、フッ化されている最後の3’末端のヌクレオチドのうちの少なくとも1つを有してもよい。或いは、本発明のヌクレアーゼ耐性アンチセンス分子は、最後の3’末端のヌクレオチド塩基のうちの少なくとも2つの間を連結するホスホロチオエート結合を有し、好ましくは、最後の4つの3’末端のヌクレオチド塩基間を連結するホスホロチオエート結合を有する。
【0069】
RNaseHを活性化しないアンチセンス分子は、公知の技術に従って作製することができる(例えば、米国特許第5,149,797号明細書を参照されたい)。かかるアンチセンス分子は、デオキシリボヌクレオチド配列であってもよくリボヌクレオチド配列であってもよく、単に、オリゴヌクレオチドを含有する二重鎖分子に対するRNaseHの結合を立体障害するか又は防ぐ任意の構造的修飾をその配列の1つのメンバーとして含み、前記構造的修飾は、二重鎖の形成を実質的に妨げたり乱したりしない。二重鎖の形成に関与しているオリゴヌクレオチドの部分は、前記オリゴヌクレオチドに対するRNaseHの結合に関与している部分とは実質的に異なるので、RNaseHを活性化させない多くのアンチセンス分子が利用可能である。例えば、かかるアンチセンス分子は、ヌクレオチド間を架橋するホスフェート残基のうちの少なくとも1つ又は全てが、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、及びホルホロアミデート等の修飾ホスフェートであるオリゴヌクレオチドであってよい。例えば、ヌクレオチド間を架橋するホスフェート残基が一つ置きに上記の通り修飾されてもよい。別の非限定的な例では、かかるアンチセンス分子は、ヌクレオチドのうちの少なくとも1つ又は全てが2’低級アルキル部分(例えば、C1−C4、直鎖又は分枝、飽和又は不飽和アルキル、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1−プロペニル、2−プロペニル、及びイソプロピル)を含有する。例えば、ヌクレオチドが一つ置きに上記の通り修飾されてもよい。
【0070】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンス分子の好ましい形態であるが、本発明は、以下に記載するもの等のオリゴヌクレオチド擬似物質が挙げられるがこれらに限定されない他のオリゴマーアンチセンス分子を含む。
【0071】
本発明において有用である好ましいアンチセンス化合物の具体例としては、修飾骨格又は自然界には存在しないヌクレオシド間連結を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。本明細書に定義する通り、修飾骨格を有するオリゴヌクレオチドとしては、骨格中にリン原子を保持しているもの及び骨格中にリン原子を有しないものが挙げられる。本明細書の目的のために、また時に当技術分野において参照される通り、ヌクレオシド間骨格にリン原子を有しない修飾ヌクレオチドも、オリゴヌクレオシドであるとみなすことができる。
【0072】
他の好ましいオリゴヌクレオチド擬似物質では、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間連結、即ち骨格が、新規の基で置換されている。基本単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイズが維持されている。1つのかかるオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション性を有することが示されているオリゴヌクレオチド擬似物質は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格が、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換されている。ヌクレオ塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接又は間接的に結合する。
【0073】
また、修飾オリゴヌクレオチドは、1以上の置換糖部分を含有してもよい。また、オリゴヌクレオチドは、ヌクレオ塩基(当技術分野においては単に「塩基」と称することが多い)修飾又は置換を含んでいてもよい。特定のヌクレオ塩基は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに特に有用である。これらとしては、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、並びに例えば、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、及び5−プロピニルシトシンを含むN−2、N−6、及びO−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸の二重鎖安定性を0.6℃〜1.2℃上昇させることが示されており、本発明において好ましい塩基置換であり、更には2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせたときに特に好ましい塩基置換である。
【0074】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布、又は細胞内取り込みを高める1以上の部分又はコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学的に連結させることを含む。かかる部分としては、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖、或いはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、或いはオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分等の脂質部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
必ずしも所定の化合物における全ての位置が均一に修飾される必要はなく、実際に、前述の修飾のうちの1超を単一化合物に、又は更にはオリゴヌクレオチド内の単一ヌクレオシドに組み込んでもよい。また、本発明は、キメラ化合物であるアンチセンス化合物を含む。「キメラ」アンチセンス化合物、即ち「キメラ」は、本発明の状況において、2以上の化学的に異なる領域を含有し、その各々が少なくとも1つのモノマー単位、即ちオリゴヌクレオチド化合物の場合ヌクレオチドで構成されるアンチセンス分子、特にオリゴヌクレオチドである。これらオリゴヌクレオチドは、一般的に、ヌクレアーゼ分解に対する耐性を高め、細胞への取り込みを増加させるためにオリゴヌクレオチドが修飾される少なくとも1つの領域と、標的核酸に対する結合親和性を高めるための更なる領域とを含有する。
【0076】
アンチセンス分子の製造方法
本発明に従って用いられるアンチセンス分子は、固相合成の周知技術を通して簡便に且つルーチンに製造することができる。かかる合成を行うための設備は、例えば、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)を含む幾つかの供給元によって販売されている。修飾固体支持体においてオリゴヌクレオチドを合成するための1つの方法は、米国特許第4,458,066号明細書に記載されている。
【0077】
これに加えて又はこれに代えて、かかる合成のために当技術分野において公知である任意の他の手段を使用してもよい。ホスホロチオエート及びアルキル化誘導体等のオリゴヌクレオチドを調製するために類似の技術を用いることが周知である。1つのかかる自動化実施形態では、ジエチル−ホスホラミダイトが出発物質として用いられ、Beaucage,et al.,(1981)Tetrahedron Letters,22:1859−1862に記載の通り合成することができる。
【0078】
本発明のアンチセンス分子は、インビトロで合成され、生物学的起源のアンチセンス組成物、又はアンチセンス分子のインビボ合成を導くよう設計された遺伝子ベクターコンストラクトを含まない。また、取り込み、分布、及び/又は吸収を補助するために、例えば、リポソーム、受容体が標的とする分子、経口用、直腸用、局所用、又は他の製剤として、本発明の分子を他の分子、分子構造、又は化合物の混合物と共に混合、カプセル化、コンジュゲート化、又は結合物としてもよい。
【0079】
治療剤
また、本発明は、遺伝子疾患を治療する目的のために利用することができる予防剤又は治療剤として用いてもよい。
【0080】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と混合されている、治療に有効な量でジストロフィンプレmRNAにおける選択された標的に結合して本明細書に記載の効率的且つ一貫したエキソンスキッピングを誘導するアンチセンス分子を提供する。
【0081】
語句「薬学的に許容できる」とは、患者に投与したとき、生理学的に忍容性であり、且つ一般的に急性胃蠕動等のアレルギー性反応又は類似の有害な反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。用語「担体」は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。かかる医薬担体は、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等の石油、動物、植物、又は合成起源の油を含む油及び水等の不活性液体であってよい。水又は生理食塩水、並びに水性デキストロース及びグリセロール水溶液は、担体として、特に注射液として使用されることが好ましい。好適な医薬担体は、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,(1990)に記載されている。
【0082】
本発明のより具体的な形態では、薬学的に許容できる希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、及び/又は担体と共に治療に有効な量のアンチセンス分子を含む医薬組成物を提供する。かかる組成物は、様々なバッファ内容物(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の希釈剤、洗剤及び可溶化剤(例えば、Tween80、ポリソルベート80)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)、及びバルク物質(例えば、ラクトース、マンニトール)等の添加剤を含む。これら物質は、ポリ酢酸、ポリグリコール酸等のポリマー化合物の粒子状調製物、又はリポソームに配合してもよい。ヒアルロン酸を用いてもよい。かかる組成物は、本タンパク質及び誘導体の物理的状態、安定性、インビボにおける放出速度、及びインビボにおけるクリアランス速度に影響を与える場合がある。例えば、参照することによって本明細書に援用されるMartin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)pages 1435−1712を参照されたい。組成物は、液体形態で調製してもよく、凍結乾燥形態等の乾燥粉末であってもよい。
【0083】
本発明に従って提供される医薬組成物は、当技術分野において公知の任意の出願によって投与することができると認識される。投与するための医薬組成物は、注入、経口、肺、又は鼻経路によって投与されることが好ましい。アンチセンス分子は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、又は皮下投与経路によって送達されることがより好ましい。
【0084】
アンチセンス分子に基づく療法
また、遺伝子疾患を調節する医薬を製造するための本発明のアンチセンス分子の使用も本発明により扱われる。
【0085】
治療に有用な量のアンチセンス分子の送達は、既に公開されている方法によって行うことができる。例えば、アンチセンス分子の細胞内送達は、アンチセンス分子と有効な量のブロックコポリマーとの混合物を含む組成物を介して行うことができる。この方法の例は、米国特許出願公開第2004/0248833号明細書に記載されている。
【0086】
アンチセンス分子を核に送達する他の方法は、Mann CJ et al.,(2001)[“Antisense−induced exon skipping and the synthesis of dystrophin in the mdx mouse”.Proc.,Natl.Acad.Science,98(1)42−47]及びGebski et al.,(2003).Human Molecular Genetics,12(15):1801−1811に記載されている。
【0087】
ネイキッドDNA又は液体担体と複合体化されているDNAのいずれかとして発現ベクターを用いて細胞内に核酸分子を導入する方法は、米国特許第6,806,084号明細書に記載されている。
【0088】
コロイド分散系においてアンチセンス分子を送達することが望ましい場合がある。コロイド分散系としては、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ、及び水中油型エマルション、ミセル、混合ミセルを含む液体に基づく系、及びリポソーム又はリポソーム製剤が挙げられる。
【0089】
リポソームは、インビトロ及びインビボで送達小胞として有用である人工膜小胞である。これら製剤は、正味のカチオン電荷特性、アニオン電荷特性、又は中性電荷特性を有してもよく、インビトロ、インビボ、及びエキソビボにおける送達方法に有用な特性である。0.2PHI.m〜4.0PHI.mのサイズの大単ラメラ小胞(LUV)は、巨大分子を含有する水性バッファをかなりの割合封入することができる。RNA及びDNAは、水性の内部に封入されてもよく、生物学的活性型で細胞に送達されてもよい(Fraley,et al.,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981)。
【0090】
リポソームを有効な遺伝子輸送ビヒクルにするために、以下の特徴を有していなければならない:(1)高効率で対象アンチセンス分子を封入するが、前記アンチセンス分子の生物活性を低下させない;(2)非標的細胞に比べて、標的細胞に対して優先的且つ実質的に結合する;(3)高効率で標的細胞の細胞質に小胞の水性内容物を送達する;及び(4)遺伝情報を正確且つ有効に発現させる(Mannino,et al.,Biotechniques,6:682,1988)。
【0091】
リポソームの組成物は、通常、リン脂質の組み合わせ、特に相転移温度の高いリン脂質の組み合わせであり、通常、ステロイド類、特にコレステロールと併用される。他のリン脂質又は他の脂質を使用してもよい。リポソームの物性は、pH、イオン強度、及び二価カチオンの存在に依存する。
【0092】
或いは、アンチセンスコンストラクトは、他の薬学的に許容できる担体又は希釈剤と組み合わせて、医薬組成物を生成してもよい。好適な担体及び希釈剤としては、等張生理食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。組成物は、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口、又は経皮投与用に製剤化してもよい。
【0093】
記載されている投与経路は、指針として示すことのみを意図し、その理由は、当業者であれば、最適な投与経路、並びに任意の特定の動物及び症状に関する任意の投薬量を容易に決定できるためである。
【0094】
本発明のアンチセンス分子は、ヒトを含む動物に投与されたとき、(直接又は間接的に)生物学的に活性である代謝産物又はその残基を提供することができる任意の薬学的に許容できる塩、エステル、かかるエステルの塩、又は任意の他の化合物を含む。したがって、例えば、本発明の化合物のプロドラッグ及び薬学的に許容できる塩、かかるプロドラッグの薬学的に許容できる塩、及び他の生物学的等価物も開示に含まれる。
【0095】
「薬学的に許容できる塩」という用語は、本発明の化合物の生理学的且つ薬学的に許容できる塩;即ち、本化合物の望ましい生物活性を保持し、且つ本化合物に望ましくない毒性作用を付与しない塩を指す。
【0096】
オリゴヌクレオチドの場合、薬学的に許容できる塩の好ましい例としては、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン(例えばスペルミン及びスペルミジン等)等のカチオンと共に形成される塩;(b)例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸と共に形成される酸付加塩;(c)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等の有機酸と共に形成される塩;並びに(d)塩素、臭素、及びヨウ素等の元素アニオンから形成される塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、局所治療が望ましいか又は全身治療が望ましいか、及び治療される領域に依存して多数の方法で投与することができる。投与は、局所投与(眼及び直腸送達を含む粘膜への投与等)、例えば、粉末又はエアロゾルの吸入又は吹送による肺投与(例えばネブライザによる、気管内、鼻内、表皮、及び経皮)、経口投与又は非経口投与であってよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内への注射又は注入;或いは頭蓋内、例えば、髄腔内又は心室内投与が挙げられる。少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル修飾を有するオリゴヌクレオチドが、経口投与に特に有用であると考えられる。
【0097】
本発明の医薬製剤は、簡便な単位剤形で提示されてもよく、医薬業界で周知の慣用技術に従って調製することができる。かかる技術は、医薬担体又は賦形剤と活性成分とを関連付ける工程を含む。一般的に、製剤は、活性成分と、液体担体、微粉化固体担体、又はこれら両方とを均質且つ緊密に関連付け、次いで、必要に応じて製品を成形することによって調製される。
【0098】
本発明のキット
また、本発明は、遺伝子疾患を有する患者を治療するためのキットであって、好適な容器に包装されている少なくとも1つのアンチセンス分子と、その使用説明書とを含むキットを提供する。
【0099】
好ましい実施形態では、キットは、表1Aに示される少なくとも1つのアンチセンス分子、又は表1Bに示されるアンチセンス分子のカクテルを含む。また、キットは、バッファ、安定剤等の非必須試薬を含んでいてもよい。
【0100】
キットの内容物は、凍結乾燥されていてもよく、キットは、凍結乾燥されている成分を再構成するための好適な溶媒を更に含んでいてもよい。キットの個々の成分は、別々の容器に包装され、かかる容器と共に、医薬品又は生物学的製品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって定められている形態の通知であって、ヒトへの投与についての製造、使用、又は販売を規制する機関による認可を反映している通知を添付してもよい。
【0101】
キットの成分が1以上の液体溶液で提供されるとき、前記液体溶液は、水溶液、例えば無菌水溶液であってよい。インビボで使用する場合、発現コンストラクトを薬学的に許容できる注射用組成物に製剤化してもよい。この場合、容器手段は、単体で吸入器、注射器、ピペット、点眼器、又は他の同様の装置であってよく、これらから、肺等の動物の罹患領域に製剤を適用したり、動物に注射したり、更にはキットの他の成分に適用し、それと混合したりすることができる。
【0102】
また、キットの成分は、乾燥形態又は凍結乾燥形態で提供されてもよい。試薬又は成分が乾燥形態として提供されるとき、一般的に、好適な溶媒の添加によって再構成が行われる。また、溶媒は、別の容器手段で提供されてもよいことが想到される。容器の数又は種類にかかわらず、本発明のキットは、動物の体内に最終的な複雑な組成物を注射/投与又は配置するのを補助するための機器を含むか、又はこれらと共に包装されてもよい。かかる機器は、吸入器、注射器、ピペット、ピンセット、計量スプーン、点眼器、又は任意の医学的に認められている送達ビヒクルであってもよい。
【0103】
当業者は、上記方法の適用が、多くの他の疾患の治療において使用するのに好適なアンチセンス分子を同定するための幅広い用途を有することを認識すべきである。
【実施例】
【0104】
以下の実施例は、上記本発明を用いる手順を更に詳細に記載するものであり、本発明の様々な態様を実施するために考えられる最良の実施形態について記載するものである。これら実施例は、如何なる方法でも本発明の真の範囲を限定するものではなく、例証目的のために提示されるものであることを理解されたい。本明細書に引用する参照文献は、参照することによって明示的に本明細書に援用される。
【0105】
以下の実施例に明確には記載されていない分子のクローニング方法、免疫学的方法、及びタンパク質化学的方法は、文献に報告されており、当業者に公知である。当技術分野における従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術について記載している一般的な教科書としては、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989);Glover ed.,DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II,MRL Press,Ltd.,Oxford,U.K.(1985);及びAusubel,F.,Brent,R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Seidman,J.G.,Smith,J.A.,Struhl,K.Current Protocols in Molecular Biology.Greene Publishing Associates/Wiley Intersciences,New York(2002)が挙げられる。
【0106】
ヒト筋肉細胞において誘導されたエキソンスキッピングの判定
全てのエキソンに適用することができる一貫した傾向は存在しないと考えられるので、アンチセンス分子の設計における合理的なアプローチを開発するという本発明者らの試みは完全には成功しなかった。したがって、最も有効であり、したがって、最も治療に役立つアンチセンス分子化合物の同定が、経験的な研究の結果であった。
【0107】
これら経験的な研究は、スプライシングプロセスに関与している可能性のあるモチーフを同定するためにコンピュータプログラムを使用することを含んでいた。また、他のコンピュータプログラムを用いて、広範囲に及ぶ二次構造を有していない可能性があり、したがって、アンチセンス分子のアニーリング部位になる可能性があるプレmRNAの領域を同定した。これらアプローチのいずれも、信頼性が高く且つ効率的にエキソンスキッピングを誘導するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計において完全に信頼できるとは証明されなかった。
【0108】
先ず、スプライシングに関与する公知の又は予測されるモチーフ又は領域に基づいて、試験のためにヒトジストロフィンプレmRNAにおけるアニーリング部位を選択した。調査中の標的配列に対して相補的であるように2OMeアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計し、Expedite8909核酸合成機で合成した。合成が完了したら、オリゴヌクレオチドを支持カラムから切断し、水酸化アンモニウムで脱保護した後、脱塩した。オリゴヌクレオチド合成の品質は、合成ログで検出するとき、合成中の各脱保護工程におけるトリチルシグナルの強度によってモニターした。アンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は、希釈したアリコートの吸光度を260nmで測定することによって推定した。
【0109】
次いで、特定の量のアンチセンス分子を、下記の通りインビトロアッセイにおいてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【0110】
簡潔に述べると、正常な筋芽細胞の一次培養物を、インフォームドコンセント後に得たヒトの筋肉生検から調製した。標準的な培養技術を用いて細胞を増殖させ、筋管に分化させた。次いで、カチオン性リポプレックス、アンチセンス分子の混合物、又はカチオン性リポソーム調製物として細胞にオリゴヌクレオチドを送達することにより、アンチセンスオリゴヌクレオチドで前記細胞をトランスフェクトした。
【0111】
次いで、細胞を更に24時間増殖させた後、全RNAを抽出し、分子分析を開始した。逆転写酵素増幅(RT−PCR)を行って、ジストロフィンプレmRNAの標的となる領域又はエキソンの再構成の誘導について試験した。
【0112】
例えば、エキソン19のスキッピングを誘導するためのアンチセンス分子の試験においては、RT−PCR試験によって幾つかのエキソンを走査して、任意の隣接するエキソンの存在を検出した。例えば、エキソン19のスキッピングを誘導するとき、エキソン17から21に亘って増幅するプライマーを用いてRT−PCRを実施した。また、この領域における更に大きな生成物(即ち、エキソン13〜26)を増幅させて、より短い誘導及びスキッピングされた転写産物についての最小限の増幅バイアスしか存在しないことを保証した。より短い生成物又はエキソンスキッピングされた生成物は、より効率的に増幅される傾向があり、正常且つ誘導された転写産物の推定値にバイアスをかける可能性がある。
【0113】
増幅反応産物のサイズは、アガロースゲルにおいて推定し、適切なサイズ標準と比較した。これら産物のアイデンティティの最終的な確認は、直接DNAの配列を決定して、正確な又は予測されるエキソン接合が維持されていることを確認することにより実施した。
【0114】
1つのアンチセンス分子で効率的にエキソンスキッピングが誘導されたら、次の重複するアンチセンス分子を合成し、次いで、上記の通りのアッセイにおいて評価することができる。約300nM以下のトランスフェクション濃度で強力且つ持続的なエキソンスキッピングを誘導する分子を効率的なアンチセンス分子と定義した。本発明のオリゴヌクレオチド分子は、100nMの濃度にて30%超のレベルでスキッピングを誘導できることが最も好ましい。
【0115】
濃度測定方法
どのアンチセンス分子が望ましい効率を達成するかを判定するために、エキソンスキッピング手順の結果の濃度測定分析を実施した。増幅産物を2%アガロースゲルで分画し、エチジウムブロマイドで染色し、Chemi−Smart 3000ゲルドキュメンテーションシステム(Vilber Lourmat,Marne La Vallee)によって画像を取得した。次いで、製造業者の説明書に従ってゲルドキュメンテーションシステム(Bio−Profil,Bio−1Dバージョン11.9,Vilber Lourmat,Marne La Vallee)を用いてバンドを分析した。
【0116】
以下のアンチセンス分子について濃度測定を実施した。
【表3】
【0117】
エキソン17を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン17を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いて、ヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【0118】
以下の表2から、同部位(エキソン17のアクセプタースプライス部位)を対象とするアンチセンス分子の効果は、2つのアンチセンス分子の結合箇所が重複しているにもかかわらず、非常に異なる場合があることが分かる。イントロン16の最後の7塩基及びエキソン17の最初の23塩基にアニーリングするH17A(−07+23)[配列番号3]は、25nMの濃度で細胞に送達されたときエキソン17のスキッピングを誘導する。対照的に、イントロンの最後の12塩基及びエキソン17の最初の18塩基にアニーリングし、したがって、H17A(−07+23)の結合箇所と重複するアンチセンス分子H17A(−12+18)は、エキソンスキッピングを全く誘導することができなかった。更に、イントロン16の最後の7塩基及びエキソン17の最初の16塩基にアニーリングするH17A(−07+16)は、200nMでエキソン17及びエキソン18の両方をスキッピングした。エキソン17のエキソン内スプライシングエンハンサーエレメントモチーフにおいて結合するアンチセンス分子H17A(+61+86)[配列番号4]も、良好にスキッピングを誘導することができた。アンチセンス分子がエキソンスキッピングを誘導する能力は、結合箇所から単純に予測することはできず、厳密な試験を通して判定しなければならないことが分かる。
【表4】
【0119】
このデータは、一部の特定のアンチセンス分子は効率的にエキソンスキッピングを誘導するが、近傍又は重複する領域を標的とする別のアンチセンス分子は、誘導効率が遥かに低い場合があることを示す。力価測定研究は、ある分子は20nM〜25nMで標的とするエキソンスキッピングを誘導することができるが、効率の低いアンチセンス分子は、300nM以上の濃度でしかエキソンスキッピングを誘導することができなかったことを示す。したがって、スプライシングプロセスに関与しているモチーフに対するアンチセンス分子のターゲティングは、化合物の全体的な有効性において重要な役割を果たしていることが示された。
【0120】
有効性とは、標的エキソンの一貫したスキッピングを誘導する能力を示す。しかし、時に、標的エキソンのスキッピングは、隣接するエキソンに一貫して関連している。即ち、幾つかのエキソンのスプライシングが緊密に連携していることが見出された。例えば、エキソンのドナー部位を対象とするアンチセンス分子を用いて筋ジストロフィーのマウスモデルにおけるエキソン23を標的とした場合、エキソン22及び23が欠損しているジストロフィンが検出されることが多い。別の例として、ヒトジストロフィン遺伝子のエキソン8を対象とするアンチセンス分子を用いる場合、多くの誘導された転写産物は、エキソン8及び9の両方が欠損している。
【0121】
エキソン2を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン2を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表5】
【0122】
エキソン3を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン3を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【0123】
アンチセンス分子H3A(+30+60)[配列番号31]及びH3A(+61+85)[配列番号32]を各々単独で用いてもエキソン3のスキッピングを誘導するが、組み合わせると、2つの分子はスキッピングの誘導について更により有効であり(図3)、また、300nM及び600nMでエキソン4及び5のスキッピングを誘導することができる。この結果は、各アンチセンス分子を単独で使用した結果からは分からない、即ち推測できない。上記更なる生成物では、RT−PCRから持ち越した外側のプライマーによる増幅からエキソン3が欠損している転写産物が生じ、ヘテロ二重鎖が形成される。
【表6】
【0124】
エキソン4を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン4を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図4は、H4A(+11+40)[配列番号33]及びH4D(+14−11)[配列番号34]のカクテルを用いるエキソン4のスキッピングを示す。
【表7】
【0125】
エキソン5を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン5を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。H5D(+26−05)は、エキソン5の低レベルのスキッピングでさえも誘導することができなかったので、好ましくないアンチセンス分子とみなされる。しかし、エキソンスキッピングエンハンサーエレメントを標的とする可能性があるH5A(+35+65)[配列番号1]は、図5に示す標的エキソンのスキッピングの誘導について非常に効率的であることが見出されており、エキソン5のスキッピングを誘導するのに好ましい化合物であるとみなされる。
【表8】
【0126】
エキソン6を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン6を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表9】
【0127】
エキソン7を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン7を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表10】
【0128】
エキソン8を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン8を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図6を参照されたい。
【表11】
【0129】
エキソン9を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン9を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表12】
【0130】
エキソン10を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン10を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。エキソン10及び周囲のエキソンのスキッピングを誘導する単一アンチセンスオリゴヌクレオチド分子及びカクテルの例については図7を参照されたい。単一アンチセンスオリゴヌクレオチド分子H10A(−05+16)[配列番号37]は、エキソン9〜14のスキッピングを誘導することができ、一方、H10A(+98+119)[配列番号38]との組み合わせは、エキソン10単独及びエキソン9〜12のスキッピング(一部はエキソン10〜12のスキッピング)を誘導することができた。H10A(−05+16)とH10A(+130+149)との組み合わせは、エキソン10及びエキソン9〜12のスキッピングを誘導することができた。
【表13】
【0131】
エキソン11を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン11を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図37を参照されたい。
【表14】
【0132】
エキソン12を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン12を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図38を参照されたい。
【表15】
【0133】
エキソン13を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン13を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表16】
【0134】
エキソン14を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン14を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図8を参照されたい。
【表17】
【0135】
エキソン16を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン16を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表18】
【0136】
エキソン17を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン17を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表19】
【0137】
エキソン18を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン18を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図9を参照されたい。
【表20】
【0138】
エキソン19を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン19を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表21】
【0139】
エキソン20を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン20を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表22】
【0140】
エキソン23を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン23を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。エキソン23を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。H23(+69+98)−SNPは、既に文書化されている一塩基多型(SNP)を含有する。
【表23】
【0141】
エキソン24を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン24を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表24】
【0142】
エキソン25を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン25を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。オリゴヌクレオチドH25A(+95+119)−DupAは、患者特異的アンチセンス分子である。
【表25】
【0143】
エキソン26を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン26を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図10を参照されたい。
【表26】
【0144】
エキソン31を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン31を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表27】
【0145】
エキソン32を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン32を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表28】
【0146】
エキソン34を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン34を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表29】
【0147】
エキソン35を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン35を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表30】
【0148】
エキソン36を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン36を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図11を参照されたい。
【表31】
【0149】
エキソン38を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン38を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表32】
【0150】
エキソン39を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン39を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表33】
【0151】
エキソン41を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン41を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表34】
【0152】
エキソン42を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン42を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表35】
【0153】
エキソン43を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン43を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図12を参照されたい。
【表36】
【0154】
エキソン44を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン44を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図13及び39を参照されたい。
【表37】
【0155】
エキソン45を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン45を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図14及び40を参照されたい。
【表38】
【0156】
エキソン46を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン46を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図15及び44を参照されたい。
【表39】
【0157】
エキソン44〜46を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン44〜46を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表40】
【0158】
エキソン47を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン47を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図16を参照されたい。
【表41】
【0159】
エキソン48を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン48を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図17を参照されたい。
【表42】
【0160】
エキソン49を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン49を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図18を参照されたい。
【表43】
【0161】
エキソン50を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン50を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図19及び33を参照されたい。
【表44】
【0162】
エキソン51を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン51を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図20及び41を参照されたい。
【表45】
【0163】
エキソン52を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン52を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図42を参照されたい。
【表46】
【0164】
エキソン53を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン53を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図43を参照されたい。
【表47】
【0165】
エキソン54を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン54を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図21を参照されたい。
【表48】
【0166】
エキソン55を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン55を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図22を参照されたい。
【表49】
【0167】
エキソン56を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン56を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図23を参照されたい。
【表50】
【0168】
エキソン57を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン57を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図24を参照されたい。
【表51】
【0169】
エキソン59を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン59を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図25を参照されたい。
【表52】
【0170】
エキソン60を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン60を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図26を参照されたい。
【表53】
【0171】
エキソン61を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン61を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表54】
【0172】
エキソン62を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン62を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表55】
【0173】
エキソン63を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン63を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図27を参照されたい。
【表56】
【0174】
エキソン64を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン64を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図28を参照されたい。
【表57】
【0175】
エキソン65を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン65を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表58】
【0176】
エキソン66を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン66を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図29を参照されたい。
【表59】
【0177】
エキソン67を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン67を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図30を参照されたい。
【表60】
【0178】
エキソン68を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン68を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図31を参照されたい。
【表61】
【0179】
エキソン69を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン69を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。エキソン69及び70の両方を除去するためのH69A(+32+60)及びH70A(−06+18)のカクテルを示す図32を参照されたい。
【表62】
【0180】
エキソン70を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン70を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表63】
【0181】
エキソン71を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン71を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表64】
【0182】
エキソン72を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン72を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表65】
【0183】
エキソン73を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン73を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表66】
【0184】
エキソン74を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン74を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表67】
【0185】
エキソン76を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン76を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表68】
【0186】
本発明の様々な実施形態を実施する上記形態の変形例は、開示されている発明に関連する上記教示に基づいて当業者に明らかになるであろう。本発明の上記実施形態は、単なる例示であり、如何なる方法でも限定するものと解釈すべきではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキソンスキッピングを促進するのに好適な新規アンチセンス化合物及び組成物に関する。また、新規アンチセンス化合物を用いてエキソンスキッピングを誘導する方法、及び本発明の方法において使用するのに適した治療用組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
背景技術に関する以下の議論は、本発明に関する理解を促進することのみを意図するものである。以下の議論は、言及される資料がいずれも本願の優先日の時点における一般的な知見の一部である又はあったことを承認又は容認するものではない。
【0003】
現在、遺伝子中の疾患を引き起こす突然変異を抑制又は補償する方法の研究に多大な労力が費やされている。様々な異なるレベル(転写、スプライシング、安定性、翻訳)で遺伝子の発現に影響を与える様々な化学作用を用いるアンチセンス技術が開発されている。このような研究の多くは、無数の異なる症状における異常な遺伝子又は疾患に関連する遺伝子を補正又は補償するためのアンチセンス化合物の使用に注力している。
【0004】
アンチセンス分子は、高度に特異的に遺伝子の発現を阻害することができるので、遺伝子発現の調節因子としてのオリゴヌクレオチドに関する多くの研究努力は、癌遺伝子又はウイルス遺伝子等の標的遺伝子の発現の阻害に焦点を当てている。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNA(センス鎖)又はDNAのいずれかを対象とし、これらと三重鎖構造を形成してRNAポリメラーゼIIによる転写を阻害する。
【0005】
特定の遺伝子のダウンレギュレーションにおいて望ましい効果を達成するために、前記オリゴヌクレオチドは、標的mRNAの崩壊を促進するか又は前記mRNAの翻訳をブロックして、望ましくない標的タンパク質のデノボ合成を有効に防がなければならない。
【0006】
ネイティブタンパク質の生成をアップレギュレートすることを目的とする場合、又はナンセンス突然変異若しくはフレームシフト突然変異等の翻訳の早期終結を誘導する突然変異を補償することを目的とする場合、かかる技術は有用ではない。
【0007】
更に、タンパク質中に存在する突然変異が原因で正常に機能するタンパク質が早期終結する場合、アンチセンス技術を用いて幾つかの機能的なタンパク質生成を修復するための手段が、スプライシングプロセス中の干渉を通して可能であることが示されている(非特許文献1〜3)。これらの場合、不完全な遺伝子転写産物が分解の標的となってはならないので、アンチセンスオリゴヌクレオチドの化学的性質によって標的mRNAの崩壊が促進されてはならない。
【0008】
様々な遺伝子疾患において、遺伝子の最終的な発現に対する突然変異の影響は、スプライシングプロセス中に標的とするエキソンをスキッピングするプロセスを通して調節することができる。スプライシングプロセスは、プレmRNA中の隣接するエキソン−イントロン接合を近接させる複合体多粒子機構により導かれ、イントロン末端のホスホジエステル結合を切断し、その後、共にスプライシングされるエキソン間を再編成する。この複雑且つ高度に正確なプロセスは、プレmRNA中の配列モチーフによって媒介され、前記配列モチーフは、後にスプライシング反応に関与する様々な核スプライシング因子に結合する比較的短い半保存的RNAセグメントである。プレmRNAに関与するモチーフをスプライシング機構が読み取る又は認識する方法を変化させることによって、様々にスプライシングされたmRNA分子を作製することが可能である。現在、ヒト遺伝子の大部分が、正常な遺伝子発現中にオルタナティブスプライシングされることが認められているが、それを引き起こす機序は同定されていない。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、コードされているmRNAにおけるエラー及び欠失をバイパスしたり、マチュアな遺伝子転写産物から除去したりできることが示されている。
【0009】
自然界では、スプライシングプロセスにおける遺伝子欠損、即ちエキソンスキッピングの程度は、完全には理解されていないが、一般的に非常に低いレベルで生じているという例が多く報告されている(非特許文献4)。しかし、疾患を引き起こす突然変異に関連しているエキソンが幾つかの遺伝子から特異的に欠損している場合、ネイティブなタンパク質と類似の生物学的性質を有するか、又は標的エキソンに関連する突然変異によって引き起こされる疾患を寛解させるのに十分な生物活性を有する短いタンパク質産物が生成される場合があることが認められている(非特許文献5及び6)。
【0010】
このターゲティングされたエキソンスキッピングプロセスは、多くのエキソン及びイントロンが存在するか、エキソンの遺伝子構成に重複性が存在するか、又はタンパク質が1以上の特定のエキソンなしでも機能することが可能である長い遺伝子において特に有用である可能性がある(例えば、79エキソンからなるジストロフィン遺伝子;恐らく、反復する配列ブロックをコードする幾つかのコラーゲン遺伝子、又はそれぞれ−80及び370超のエキソンからなる巨大なネブリン若しくはタイチン遺伝子)。
【0011】
様々な遺伝子における突然変異によって引き起こされる先端切断に関連する遺伝子疾患を治療するために遺伝子のプロセシングを再指示しようとする試みは、(1)スプライシングプロセスに関与するエレメントと完全に又は部分的に重複しているか;或いは(2)そのエレメントで生じる特定のスプライシング反応を正常に媒介するスプライシング因子の結合及び機能を破壊するためにエレメントに十分近接している位置でプレmRNAに結合する(例えば、ブロックされるエレメントから3、6、又は9ヌクレオチド以内の位置でプレmRNAに結合する)アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に焦点を当てている。
【0012】
例えば、突然変異型ジストロフィンのプレmRNAスプライシングのアンチセンスオリゴヌクレオチドによる調節は、インビトロ及びインビボの両方で報告されている。日本で報告されたジストロフィン突然変異のうちの1種では、52塩基対の欠失突然変異によって、隣接するイントロンと共にエキソン19がスプライシングプロセス中に除去される(非特許文献7)。インビトロにおけるミニ遺伝子のスプライシングシステムを用いて、ジストロフィン神戸のエキソン19における欠失配列のうち5’側の半分に対して相補的な31塩基の2’−O−メチルオリゴヌクレオチドが、野生型のプレmRNAのスプライシングを阻害することが示されている(非特許文献8)。同じヌクレオチドを用いて、ヒトのリンパ芽球様培養細胞におけるネイティブなジストロフィン遺伝子転写産物からエキソンスキッピングが誘導された。
【0013】
非特許文献9には、筋ジストロフィーのモデルであるmdxマウス突然変異体における突然変異型ジストロフィンのエキソン23の周囲で行われるスプライシングについて分析するためのインビトロコンストラクトについて記載されている。マウスのジストロフィンのエキソン23内又はそれに隣接する部位をスプライシングすることを標的とする2’修飾オリゴヌクレオチドを用いて、インビトロにおいてこれらコンストラクトを分析するための計画について検討したが、標的部位又は配列は得られなかった。
【0014】
その後、このグループから、2’−O−メチルオリゴリボヌクレオチドが、mdxマウスに由来する筋芽細胞におけるジストロフィン欠損を補正することが報告された。マウスのジストロフィンのイントロン22の3’スプライス部位を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドが突然変異型エキソン及び幾つかの隣接するエキソンのスキッピングを引き起こすことが報告され、新たな内部欠損を有する新規インフレームジストロフィン転写産物が作製された。この突然変異型ジストロフィンは、アンチセンスで処理されたmdx筋管の1%〜2%で発現した。2’−O−メトキシエチルホスホジエステル等の他のオリゴヌクレオチド修飾の使用も記載されている(非特許文献10)。
【0015】
したがって、アンチセンス分子は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)等の遺伝子疾患の治療におけるツールを提供することができる。しかし、アンチセンス分子を用いてエキソンスキッピングを誘導しようとする試みは、必ずしも成功している訳ではない。
【0016】
ジストロフィンプレmRNAからエキソン19をスキッピングすることに成功したジストロフィンのエキソン19に関する研究は、非特許文献11に記載されている通り、隣接するスプライス部位又はエキソンの定義に関与するエキソン内のモチーフを対象とする様々なアンチセンス分子を用いて達成された。
【0017】
エキソン19のスキッピングが一見容易であるのとは対照的に、非特許文献10によるmdxマウスにおけるエキソン23のスキッピングの最初の報告は、現在、真のアンチセンス活性ではなく、自然に生じる復帰突然変異転写産物又はアーティファクトを報告しただけであると考えられている。更に、エキソン23を欠く転写産物が一貫して生成される訳ではなく、非特許文献10は、誘導されたエキソンスキッピングの任意の経時変化、或いはエキソンスキッピングのレベルがアンチセンスオリゴヌクレオチドの量の増加又は減少に対応する用量依存的な効果を示すためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの用量設定さえも示していなかった。更に、この成果は、他の研究者によって再現することができなかった。
【0018】
mdxマウスモデルにおける特異的且つ再現可能なエキソンスキッピングの最初の例は、非特許文献2に報告されている。アンチセンス分子をドナースプライス部位に導くことによって、培養細胞の処理後6時間以内にジストロフィンmRNAにおいて一貫した効率的なエキソン23のスキッピングが誘導された。また、非特許文献2は、より長いアンチセンスオリゴヌクレオチドによるマウスのジストロフィンプレmRNAのアクセプター領域のターゲティングについて記載しており、非特許文献10に公開されている結果を再現することはできないと述べている。イントロン22のアクセプタースプライス部位を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの選択を用いて、エキソン23のみ又は幾つかの隣接するエキソンを複数除去するエキソンスキッピングを再現可能に検出することはできなかった。
【0019】
イントロン23のドナースプライス部位を対象とする第1のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、一次培養筋芽細胞において一貫してエキソンスキッピングを誘導したが、この化合物は、高レベルのジストロフィンを発現する不死化細胞培養物においてそれほど効率的ではないことが見出された。しかし、正確なターゲティング及びアンチセンスオリゴヌクレオチド設計を行うことにより、特定のエキソンを除去する効率が大幅に上昇した(非特許文献12を参照されたい)。
【0020】
したがって、標的ヌクレオチド配列に結合し、スプライシングを調節することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供することが必要とされている。スプライシングに重要であると推定されるモチーフにアンチセンスオリゴヌクレオチドを単に導くだけで、治療設定におけるその化合物の有効性が保証される訳ではない。
【0021】
本発明の背景に関する前述の議論は、本発明に関する理解を促進することのみを意図する。この議論は、言及される資料がいずれも本願の優先日の時点における一般的な知見の一部である又はあったことを承認又は容認するものではないことを理解すべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Sierakowska H,et al.,(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93,12840−12844
【非特許文献2】Wilton SD,et al.,(1999)Neuromusc Disorders 9,330−338
【非特許文献3】van Deutekom JC et al.,(2001)Human Mol Genet 10,1547−1554
【非特許文献4】Sherrat TG, et al.,(1993)Am J Hum Genet 53,1007−1015
【非特許文献5】Lu QL, et al.,(2003)Nature Medicine 9,1009−1014
【非特許文献6】Aartsma−Rus A et al.,(2004)Am J Hum Genet 74: 83−92
【非特許文献7】Matsuo et al.,(1991)J Clin Invest.87:2127−2131
【非特許文献8】Takeshima et al.(1995),J Clin. Invest.95:515−520
【非特許文献9】Dunckley et al.(1997)Nucleosides&Nucleotides,16,1665−1668
【非特許文献10】Dunckley et al.(1998)Human Mol.Genetics,5:1083−90
【非特許文献11】Errington et al.(2003)J Gen Med 5:518−527
【非特許文献12】Mann CJ et al.,(2002)J Gen Med 4,644−654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、プレmRNAのスプライシングに関与するRNAモチーフに結合するのに好適なアンチセンス分子化合物及び組成物であって、特異的且つ効率的にエキソンスキッピングを誘導可能であるアンチセンス分子化合物及び組成物、並びにその使用方法を提供する。
【0024】
標的の選択は、エキソンスキッピングの効率、延いては後に行われる可能性のある治療法への応用において重要な役割を果たす。スプライシングに関与すると推定されるプレmRNAの標的領域に対するアンチセンス分子を単に設計するだけでは、効率的且つ特異的なエキソンスキッピングを誘導するという保証は得られない。スプライシング干渉に関して最も明らか又は容易に定義される標的は、ドナー及びアクセプタースプライス部位であるが、例えばエキソンスプライシングエンハンサーエレメント、サイレンシングエレメント、及びブランチポイント等のそれほど明確に定義又は保存されていないモチーフも存在する。アクセプター及びドナースプライス部位は、それぞれ約16塩基及び約8塩基のコンセンサス配列を有する(エキソン認識、イントロン除去、及びスプライシングプロセスに関与するモチーフ及びドメインの概略については図1を参照されたい)。
【課題を解決するための手段】
【0025】
第1の態様によれば、本発明は、選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘導可能であるアンチセンス分子を提供する。
【0026】
例えば、ジストロフィン遺伝子転写産物においてエキソン5、12、17、21、22、24、43〜47、49、50、54〜64、66、67、70、及び72のエキソンスキッピングを誘導するためには、表1Aに列記される群からアンチセンス分子を選択することが好ましい。
【0027】
更なる例では、本発明の2以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを共に組み合わせて、エキソン3、4、8、10、26、36、48、60、66、及び68においてより効率的にエキソンスキッピングを誘導することが可能である。アンチセンスオリゴヌクレオチドの組み合わせ、即ち「カクテル」は、エキソンに導かれて、効率的にエキソンスキッピングを誘導する。
【0028】
第2の態様によれば、本発明は、遺伝子障害の予防的処置又は治療的処置に役立つように選択されるか又は前記処置に適するアンチセンス分子であって、患者に送達するのに好適な形態の少なくとも1つのアンチセンス分子を含むアンチセンス分子を提供する。
【0029】
第3の態様によれば、本発明は、特定のタンパク質をコードする遺伝子に突然変異が存在し、前記突然変異の作用をエキソンスキッピングにより取り消すことができる遺伝子疾患に罹患している患者を治療する方法であって、(a)本明細書に記載される方法に従ってアンチセンス分子を選択する工程と、(b)かかる治療を必要としている患者に前記分子を投与する工程とを含む方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、遺伝子疾患を治療する医薬を製造するための本発明の精製及び単離アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0031】
更に、本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに特徴的な症状を治療する方法であって、患者の特定の遺伝子病変に関連する適切に設計された治療に有効な量の本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、治療を必要としている患者に投与することを含む方法を提供する。更に、本発明は、患者を予防的に処置して、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを予防するか又は少なくとも最小化する方法であって、治療に有効な量のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はこれら生物学的な分子のうちの1以上を含む医薬組成物を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、遺伝子疾患を治療するためのキットであって、好適な容器に包装されている本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、その使用説明書とを少なくとも含むキットを提供する。
【0033】
本発明の他の態様及び利点は、以下の記載を吟味することにより当業者に明らかになるであろう。以下の図を参照して説明を進める。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、エキソン認識、イントロン除去、及びスプライシングプロセスに関与するモチーフ及びドメインの概略図である。
【図2】図2は、疾患を引き起こす突然変異をバイパスするためにエキソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの概念図である(縮尺は正確でない)。斜線付きボックスは、mRNAの残りがタンパク質に翻訳されるのを妨げる突然変異を有するエキソンを表す。黒いバーは、マチュアなmRNAにそのエキソンが含まれるのを妨げるアンチセンスオリゴヌクレオチドを表す。
【図3】図3は、正常なヒト筋肉培養細胞において10nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導するエキソン3を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図4】図4は、正常なヒト筋肉培養細胞において25nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導するエキソン4を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図5】図5は、エキソンスプライシングエンハンサーエレメントであると推定されるエキソン5の内部ドメインを対象とするアンチセンス分子[H5A(+35+65)]を用いる強力且つ効率的なヒトのエキソン5のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。この好ましい化合物は、ヒト筋肉培養細胞における25nMのトランスフェクション濃度で一貫してエキソンスキッピングを誘導する。
【図6】図6は、正常なヒト筋肉培養細胞において10nMのトランスフェクション濃度でエキソン8及びエキソン8/9の両方に対して強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導する、エキソン8を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図7】図7は、エキソン10及び周囲のエキソンのスキッピングを誘導する様々なカクテル及び単一のアンチセンス分子を示すゲル電気泳動像である。[H10A(−05+16)]及び[H10A(+98+119)]の組み合わせ又は[H10A(−05+16)]及び[H10A(+130+149)]の組み合わせは、エキソン10及びエキソン9〜12のスキッピングを誘導するが、[H10A(−05+16)]単独ではエキソン9〜14のスキッピングを誘導する。
【図8】図8は、エキソン14を対象とするアンチセンス分子H14A(+31+61)を用いるエキソン14のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図9】図9は、エキソン17を対象とするアンチセンス分子H17A(+10+35)を用いるエキソン17のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図10】図10は、エキソン26を対象とするアンチセンス分子の2つのカクテルを示すゲル電気泳動像である。[H26A(−07+19)]及び[H26A(+24+50)]のダブルカクテルは、エキソン26のスキッピングを良好に誘導し、前記カクテルに更にアンチセンス分子を添加してもスキッピング効率は影響を受けない。
【図11】図11は、正常なヒト筋肉培養細胞において25nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導する、エキソン36を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図12】図12は、アンチセンス分子H43A(+92+117)を用いて正常なヒト筋肉培養細胞における25nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソン43のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図13】図13は、アンチセンス分子H44A(+65+90)を用いる用量依存的なエキソン55のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図14】図14は、アンチセンス分子H45A(−09+25)を用いる強力且つ一貫したエキソン45のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図15】図15は、アンチセンス分子H46A(+81+109)を用いる強力且つ一貫したエキソン46のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図16】図16は、アンチセンス分子H47A(+01+29)を用いる強力且つ一貫したエキソン47のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図17】図17は、強力且つ一貫してエキソンスキッピングを誘導するエキソン47を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図18】図18は、アンチセンス分子H49A(+45+70)を用いる強力且つ一貫したエキソン49のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図19】図19は、アンチセンス分子H50A(+48+74)を用いる強力且つ一貫したエキソン50のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図20】図20は、アンチセンス分子H51A(+66+95)を用いる強力且つ一貫したエキソン51のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図21】図21は、アンチセンス分子H54A(+67+97)を用いる強力且つ一貫したエキソン54のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図22】図22は、用量依存的にエキソン55のスキッピングを誘導するアンチセンス分子H55A(−10+20)を示すゲル電気泳動像である。
【図23】図23は、アンチセンス分子H56A(+92+121)を用いる強力且つ一貫したエキソン56のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図24】図24は、用量依存的にエキソン57のスキッピングを誘導するアンチセンス分子H57A(−10+20)を示すゲル電気泳動像である。
【図25】図25は、エキソン59を対象とするアンチセンス分子H59A(+96+120)を用いるエキソン59及びエキソン58/59のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図26】図26は、エキソン60のエキソンスキッピングを誘導する2つの異なるカクテルを示すゲル電気泳動像である。
【図27】図27は、アンチセンス分子H63A(+20+49)を用いるエキソン63のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図28】図28は、アンチセンス分子H64A(+34+62)を用いるエキソン64のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図29】図29は、用量依存的にエキソンスキッピングを誘導するエキソン66を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図30】図30は、アンチセンス分子H67A(+17+47)を用いるエキソン67のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図31】図31は、用量依存的にエキソンのスキッピングを誘導するエキソン68を対象とするアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図32】図32は、25nMのトランスフェクション濃度で強力且つ一貫してエキソン69/70のエキソンスキッピングを誘導するアンチセンス分子の「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図33】図33は、様々なレベルのエキソン50のスキッピングを誘導するアンチセンス分子の様々な「カクテル」を示すゲル電気泳動像である。
【図34】図34は、エキソン50/51の効率的なスキッピングを誘導する3つのアンチセンス分子のカクテルを示すゲル電気泳動像である。
【図35】図35は、様々な効率のエキソンスキッピングを示す濃度測定結果のグラフである。試験したアンチセンス分子は、エキソン3[H3A(+30+60)及びH3A(+61+85)];エキソン4[H4D(+14−11)及びH4A(+11+40)];エキソン14[H14A(+32+61)];エキソン17[H17A(+10+35)];エキソン26[H26A(−07+19)、H26A(+24+50)及びH26A(+68+92)];エキソン36[H36A(−16+09)及びH36A(+22+51)]であった。
【図36】図36は、様々な効率のエキソンスキッピングを示す濃度測定結果のグラフである。試験したアンチセンス分子は、エキソン46[H46A(+81+109)];エキソン47[H47A(+01+29)];エキソン48[H48A(+01+28)及びH48A(+40+67)];エキソン49[H49A(+45+70)]であった。
【図37】図37は、アンチセンス分子H11A(+50+79)を用いるエキソン11のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図38】図38は、アンチセンス分子H12A(+30+57)を用いるエキソン12のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図39】図39は、アンチセンス分子H44A(+59+85)を用いるエキソン44のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図40】図40は、アンチセンス分子H45A(−03+25)を用いるエキソン45のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図41】図41は、アンチセンス分子H51A(+71+100)を用いるエキソン51のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図42】図42は、アンチセンス分子H52A(+09+38)を用いるエキソン52のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図43】図43は、アンチセンス分子H53A(+33+65)を用いるエキソン53のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図44】図44は、アンチセンス分子H46A(+93+122)を用いるエキソン46のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図45】図45は、アンチセンス分子H73A(+02+26)を用いるエキソン73のスキッピングを示すゲル電気泳動像である。
【図46A】図46Aは、アンチセンス分子の配列を示す。
【図46B】図46Bは、アンチセンス分子の配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
配列表の簡単な説明
【表1】
【表2】
【0036】
総論
当業者は、本明細書に記載される発明において、具体的に記載されている発明以外の変形例及び変更例も可能であることを理解するであろう。本発明は、全てのかかる変形例及び変更例を含むことを理解されたい。また、本発明は、個々に又は集合的に明細書中に言及又は指示される工程、特徴、組成物、及び化合物の全て、並びに前記工程又は特徴のうちの任意の及び全ての組み合わせ又は任意の2以上を含む。
【0037】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲を限定されるものではなく、前記実施形態は、例証する目的のみを意図するものである。機能的に等価な生成物、組成物、及び方法は、明らかに本明細書に記載される本発明の範囲内である。
【0038】
本明細書に含まれるヌクレオチド及びアミノ酸の配列情報を含む配列特定番号(配列番号)は、記載の最後にまとめて記載する。これらは、プログラムPatentInバージョン3.0を用いて作成したものである。各ヌクレオチド又はアミノ酸配列は、数字見出し<210>とその後の配列特定子(例えば、<210>1、<210>2等)によって配列表中で識別される。各ヌクレオチド又はアミノ酸配列の長さ、配列の種類、及び起源生物は、それぞれ、数字見出し<211>、<212>、及び<213>に提供される情報によって示される。明細書中で言及されるヌクレオチド及びアミノ酸の配列は、数字見出し<400>とその後の配列特定子(例えば、<400>1、<400>2等)によって提供される情報によって定義される。
【0039】
様々なアンチセンス分子を識別するために、アンチセンス分子の命名システムが提案され、公開されている(Mann et al.,(2002)J Gen Med 4,644−654を参照されたい)。この命名法は、全て同じ標的領域を対象とする幾つかの僅かに異なるアンチセンス分子を試験したときに特に関連し、以下のように示される:
H#A/D(x:y)
最初の文字は、種を表す(例えば、H:ヒト、M:マウス、C:イヌ)。
「#」は、標的ジストロフィンエキソン番号を表す。
「A/D」は、それぞれ、エキソンの最初と最後のアクセプタースプライス部位又はドナースプライス部位を示す。
(x y)は、「−」又は「+」がそれぞれイントロン配列又はエキソン配列を示すアニーリング座標を表す。一例として、A(−6+18)は、標的エキソンの前のイントロンの最後の6塩基と、標的エキソンの最初の18塩基を示す。最も近接するスプライス部位は、アクセプターであるので、これら座標の前に「A」と記載する。ドナースプライス部位におけるアニーリング座標は、アンチセンス分子のアニーリング部位に対応する最後の2つのエキソン塩基と最初の18個のイントロン塩基を表すD(+2−18)と記載することができる。A(+65+85)によって表される全体がエキソンであるアニーリング座標は、即ち、そのエキソンの最初から65番目のヌクレオチドと85番目のヌクレオチドとの間の部位である。
【0040】
本明細書に引用される全ての刊行物(特許、特許出願、論文、研究室マニュアル、書籍、又は他の文書を含む)の全開示は、参照することによって本明細書に援用される。参照文献のいずれかが先行技術を構成したり、本発明が関連する分野における研究の一般的な知見の一部であったりすることを認めるものではない。
【0041】
本明細書で使用するとき、「由来」及び「由来する」という用語は、特定の対象(integer)が、特定の起源から必ずしも直接得られないとしても、前記起源から得ることが可能であることを示すものとする。
【0042】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味を必要としない限り、用語「含む(comprise)」又はその変形(「comprises」又は「comprising」等)は、指定の対象又は対象群を含むことを意味するが、任意の他の対象又は対象群を除くものではないと理解されるであろう。
【0043】
本明細書で用いられる選択された用語の他の定義は、本発明の詳細な記載中に見出すことができ、明細書全体に適用される。別段の定義がなされない限り、本明細書で用いられる全ての他の科学用語及び技術用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
【0044】
好ましい実施形態の説明
アンチセンス分子が、プレmRNA配列内のエキソンにおけるスプライシングに関与しているヌクレオチド配列を標的としている場合、エキソンの正常なスプライシングが阻害されて、スプライシング機構がマチュアなmRNAからマチュアなエキソン全体をバイパスしてしまうことがある。エキソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの概念を図2に示す。
【0045】
多くの遺伝子において、エキソン全体が欠損すると、重要な機能ドメインの喪失又はリーディングフレームの崩壊が生じ、非機能的タンパク質が生成される。しかし、一部のタンパク質では、リーディングフレームが崩壊することなしに、且つタンパク質の生物活性を著しく変化させることなしに、タンパク質内から1以上のエキソンを欠損させることによってタンパク質を短くすることが可能である。一般的に、かかるタンパク質は、構造的役割を有するか、末端に機能ドメインを有するか、又は構造的役割を有し且つ末端に機能ドメインを有する。本発明は、特定のジストロフィンプレmRNAに結合し、その遺伝子のプロセシングを再指示することができるアンチセンス分子について記載する。
【0046】
アンチセンス分子に基づく治療法の好ましい目的は、できる限り低濃度のアンチセンス分子によって最大のエキソンスキッピングを得ることにある。一般に、アンチセンス分子は、強くロバストなエキソンスキッピングを引き起こす場合もあり;弱く散在するエキソンスキッピングを引き起こす場合もあり;エキソンスキッピングを全く引き起こさない場合もある。低治療用量で強く、ロバストで、且つ一貫したエキソンスキッピングをもたらすことのできるアンチセンス分子(の単体又は組み合わせ)を開発することが好ましい。
【0047】
アンチセンス分子
本発明は第1の態様によれば、選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘導可能であるアンチセンス分子が提供される。ジストロフィン遺伝子転写産物のエキソンにおいてエキソンスキッピングを誘導するためには、表1Aに示す化合物の群からアンチセンス分子を選択することが好ましい。
【0048】
また、選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘導可能である2以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドの組み合わせ、即ち「カクテル」が提供される。ジストロフィン遺伝子転写産物のエキソンにおいてエキソンスキッピングを誘導するためには、表1Bに示す化合物の群から「カクテル」に含まれるアンチセンス分子を選択することが好ましい。
【0049】
アンチセンス分子がコンセンサススプライス部位を完全に網羅するように設計しても、必ずしも標的エキソンのスキッピングが生じる訳ではない。更に、本発明らは、アンチセンスオリゴヌクレオチド自体のサイズ、即ち長さが、常にアンチセンス分子を設計する際の主な要因である訳ではないことを見出した。エキソン19等の一部の標的では、12塩基の短いアンチセンスオリゴヌクレオチドがエキソンスキッピングを誘導可能であったにもかかわらず、より長い(20塩基〜31塩基)オリゴヌクレオチドはそれ程効率的ではなかった。マウスのジストロフィンエキソン23等の幾つかの他の標的では、17残基長しかないアンチセンスオリゴヌクレオチドが、25ヌクレオチドの別の重複する化合物よりも効率的にスキッピングを誘導することができた。しかし、本発明では、一般的に、より長いアンチセンス分子の方がより短い分子よりもエキソンスキッピングをより効率的に誘導する場合が多いことを見出した。したがって、本発明のアンチセンス分子は、長さ24核酸〜30核酸、好ましくは約28ヌクレオチドであることが好ましい。例えば、20塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチド(H16A(−07+13))は、エキソン16のエキソンスキッピングの誘導について効果がないが、前記20塩基のオリゴヌクレオチドを完全に含む31塩基のオリゴヌクレオチド(H16A(−06+25))は、スキッピングの誘導について有効であることが既に見出されている(Harding et al(2007)Mol Ther 15:157−166)。
【0050】
また、本発明者らは、スプライシングを再指示するためにアンチセンス分子によってブロック又はマスクされ得る任意の標準的なモチーフなど存在しないであろうことを見出した。マウスジストロフィンのエキソン23等の幾つかのエキソンでは、そのエキソンのスキッピングを再指示するための標的に最もなりやすいのはドナースプライス部位であった。ドナースプライス部位の重複領域にアニーリングする一連のエキソン23特異的アンチセンス分子の設計及び試験から、エキソンスキッピングの誘導効率には大きなばらつきがあることが示されたことに留意すべきである。Mannら(2002年)に報告されている通り、ナンセンス突然変異のバイパス効率は、アンチセンス分子のアニーリングに依存して大きく変動していた(“Improved antisense oligonucleotide induced exon skipping in the mdx mouse model of muscular dystrophy”.J Gen Med 4:644−654)。エキソン23又は幾つかの内部ドメインのアクセプター部位を標的とする任意の一貫したエキソン23のスキッピング誘導は見出されていない。
【0051】
除去の標的となる他のエキソンでは、ドナースプライス部位のマスキングは、エキソンスキッピングを全く誘導しなかった。しかし、アクセプタースプライス部位(以下に論じられるヒトのエキソン8)にアンチセンス分子を導くことにより、強力且つ持続性であるエキソンスキッピングが誘導された。ヒトエキソン8の除去は、エキソン9の同時除去と密接に関連していることに留意すべきである。エキソン8のアンチセンスオリゴヌクレオチドとエキソン9の対応する領域とは配列相同性が低いので、交差反応の問題であるとは考えられない。むしろ、これら2つのエキソンのスプライシングは、一般的に関連している。これが唯一の例ではなく、同様の作用がイヌ細胞でも観察されており、この場合もエキソン8を除去するためにターゲティングするとエキソン9もスキッピングされる。また、マウスのジストロフィンプレmRNAにおいてエキソン23を除去するためにターゲティングすると、エキソン22も除去されることが多い。この作用は、用量依存的に生じ、また、2つの隣接するエキソンが密接に協働してプロセシングされていることを示す。
【0052】
他の標的とされるエキソンでは、ドナー又はアクセプタースプライス部位を対象とするアンチセンス分子は、エキソンスキッピングを誘導しなかったか又は僅かしか誘導しなかったが、一方、アンチセンス分子のエキソン内領域(即ち、ヒトのジストロフィンエキソン4内のエキソンスプライシングエンハンサーエレメント)へのアニーリングは、エキソンスキッピングの誘導において最も効率的であった。幾つかのエキソン、例えばマウス及びヒトのエキソン19は、様々なモチーフを標的とするアンチセンス分子によって容易にスキッピングされる。即ち、ターゲティングされたエキソンスキッピングは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてドナー及びアクセプタースプライス部位、又はエキソンスプライシングエンハンサーエレメントをマスクした後に誘導される。
【0053】
また、どのアンチセンス分子のカクテルがエキソンスキッピングを誘導するかを予測することはできない。例えば、単独では所定のエキソンのスキッピング誘導について非常に優れている2つのアンチセンス分子を組み合わせても、カクテルとして組み合わせたときエキソンのスキッピングを引き起こすとは限らない。例えば、H50A(+02+30)及びH50A(+66+95)は、それぞれ単独ではエキソン50及び51のスキッピングを良好に誘導する。しかし、カクテルとして組み合わせると、前記2つのエキソンのスキッピングを僅かに誘導することしかできない。同様に、H50A(+02+30)とH51A(+66+90)との組み合わせ、又はH50A(+02+30)とH51A(+61+90)との組み合わせは、個々のアンチセンス分子が有効であったにもかかわらず、エキソン50及び51のスキッピングを効率的に引き起こさなかった。しかし、第3のアンチセンス分子(単独ではスキッピングを引き起こさない[H51D(+16−07)])を導入して、3つの要素のカクテル([H50A(+02+30)]、H51A(+66+90)、及び[H51D(+16−07)])を作製すると、エキソン50及び51を1nMまでスキッピングすることができた。
【0054】
或いは、単独では効果がない又は非常に低い効果しかない2つ又は3つのアンチセンス分子を組み合わせたとき、優れたスキッピングが生じる場合もある。例えば、H26A(−07+19)[配列番号39]、H26A(+24+50)[配列番号40]、及びH26A(+68+92)[配列番号41]は、個別にはエキソン26のスキッピングを非効率的にしか生じさせず、また複数のエキソンスキッピング(26〜29又は27〜30)を誘導する。しかし、3つのエキソンをカクテルとして組み合わせると、エキソン26が非常に効率的にスキッピングする。
【0055】
上記例及び議論から、ある組み合わせが機能するかどうかを正確に予測する方法が存在しないことは明らかである。
【0056】
アンチセンス分子は、「用量依存的に」又は「非用量依存的に」エキソンのスキッピングを引き起こす場合がある。用量依存的とは、より多い量のアンチセンス分子がより良好にエキソンをスキッピングすることを意味し、一方、非用量依存的アンチセンス分子は、非常に低用量でさえもスキッピングを誘導することができる。例えば、図15から、H46A(+81+109)[配列番号12]は、存在するアンチセンス分子の量(600nM〜25nM)にかかわらずエキソン46を等しく良好にスキッピングすることが分かる。対照的に、H57A(−10+20)[配列番号20](図24)は、100nMでエキソン57のスキッピングを強く誘導するが、50nMでは、スキッピングの程度が低下し、25nMでは更に大きく低下する。
【0057】
非用量依存的にスキッピングを誘導するアンチセンス分子を選択することが好ましい。その理由は、非常に低濃度でこれら分子を投与しても治療効果を得ることができるためである。しかし、用量依存的にスキッピングを誘導するアンチセンス分子、特に、低濃度で良好又は優れたスキッピングを誘導する分子を好ましい分子として選択することも許容可能である。本発明のアンチセンス分子は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは100nM、50nM、又は更には25nMもの低濃度で良好又は優れたエキソンスキッピングを誘導できることが好ましい。本発明のオリゴヌクレオチド分子は、100nMの濃度にて30%超のレベルでスキッピングを誘導することが最も好ましい。
【0058】
エキソンスキッピングの調節において用いるのに好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドを同定及び選択するために、機能を調節すべき核酸配列を先ず同定しなければならない。これは、例えば、発現が特定の障害又は疾患状態に関連している遺伝子(又はその遺伝子から転写されるmRNA)であってもよく、又は感染因子に由来する核酸分子であってもよい。本発明の状況において、好ましい標的部位は、mRNAのスプライシングに関与する部位(即ち、スプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位、又はエキソンスプライシングエンハンサーエレメント)である。スプライスブランチポイント及びエキソン認識配列又はスプライスエンハンサーエレメントも、mRNAのスプライシングを調節するための標的部位になり得る。
【0059】
好ましくは、本発明は、効率的且つ一貫したエキソンスキッピングを誘導するためにジストロフィンプレmRNAにおける選択された標的に結合可能なアンチセンス分子を提供することを目的とする。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンの機能的遺伝子産物の合成を妨げる突然変異から生じる。これらデュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子の欠陥は、一般的に、リーディングフレームを崩壊させる欠失、重複、微小欠失、又は挿入等のナンセンス突然変異又はゲノムの再構成である。ヒトのジストロフィン遺伝子は、大きく複雑な遺伝子であるので(79個のエキソンが共にスプライシングされて、約11,000塩基のオープンリーディングフレームを含むマチュアなmRNAを生成する)、これら突然変異が生じる可能性のある位置が多数存在する。結果として、ジストロフィン遺伝子における様々な疾患を引き起こす突然変異の多くを扱う包括的なアンチセンスオリゴヌクレオチドに基づく療法では、多くのエキソンがスプライシングプロセス中の除去の標的となり得ることが必要とされる。
【0060】
本発明の状況において、好ましい標的部位は、mRNAのスプライシングに関与する部位(即ち、スプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位、又はエキソンスプライシングエンハンサーエレメント)である。スプライスブランチポイント及びエキソン認識配列又はスプライスエンハンサーエレメントも、mRNAのスプライシングを調節するための標的部位となり得る。
【0061】
各分子における十分な数の対応位置が、互いに水素結合可能なヌクレオチドによって占有されている場合、オリゴヌクレオチドとDNA又はRNAとは互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズ可能」及び「相補的」という用語は、オリゴヌクレオチドとDNA又はRNAの標的との間で安定且つ特異的な結合が生じるように、十分な程度に相補的である、又は正確に対合することを示すために用いられる用語である。アンチセンス分子の配列は、特異的にハイブリダイズ可能な標的配列と100%相補的である必要はないということが、当技術分野では理解される。アンチセンス分子は、標的DNA又はRNAに対する化合物の結合が前記標的DNA又はRNAの正常な機能に干渉して有用性を喪失させ、且つ特異的に結合することが望ましい条件下で、即ち、インビボアッセイ又は治療的処置の場合は生理学的条件下で、インビトロアッセイの場合はアッセイが実施される条件下で、非標的配列に対するアンチセンス化合物の非特異的結合を妨げるのに十分な程度の相補性が存在する場合、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0062】
上記方法を用いて、その生物学的機能に影響を与えることなしに短くすることができるタンパク質内から任意のエキソンを欠損させることができるアンチセンス分子を選択することができるが、前記エキソンの欠損によって、短くなった転写mRNAにおけるリーディングフレームシフトが生じてはならない。したがって、3つのエキソンの直鎖配列において、第1のエキソンの最後にコドンにおける3つのヌクレオチドのうちの2つがコードされており、次のエキソンが欠損した場合、直鎖配列における第3のエキソンは、前記コドンのヌクレオチドトリプレットを完成させることができる1つのヌクレオチドで始まらなければならない。第3のエキソンが前記1つのヌクレオチドで始まらない場合、先端切断型又は非機能的なタンパク質の生成を導くリーディングフレームシフトが生じる。
【0063】
構造タンパク質におけるエキソンの最後におけるコドンの再構成は、常にコドンの最後で崩壊する訳ではないことが理解される。結果として、mRNAのインフレームリーディングを保証するために、プレmRNAから1超のエキソンを欠損させる必要がある場合もある。かかる状況では、複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、欠損させるエキソンにおけるスプライシングの誘導に関与する様々な領域を各々が対象とする本発明の方法によって選択される必要があるだろう。
【0064】
アンチセンス分子の長さは、プレmRNA分子内の意図する箇所に選択的に結合可能である限り変動してもよい。かかる配列の長さは、本明細書に記載される選択手順に従って決定することができる。一般的に、アンチセンス分子は、長さ約10ヌクレオチド〜長さ約50ヌクレオチドである。しかし、この範囲内の任意の長さのヌクレオチドを前記方法で用いてもよいことが理解される。アンチセンス分子の長さは、17ヌクレオチド〜30ヌクレオチドの長さであることが好ましい。驚くべきことに、より長いアンチセンス分子が、エキソンスキッピングの誘導についてより効率的であることが多いことが見出されている。したがって、アンチセンス分子は、24ヌクレオチド〜30ヌクレオチドの長さであることが最も好ましい。
【0065】
ジストロフィン遺伝子内でどのエキソンを接続可能であるのかを判定するために、エキソン境界マップを参照すべきである。あるエキソンと別のエキソンとの接続は、接続されるエキソンの5’境界に存在するのと同数を3’境界に有するエキソンに基づく。したがって、エキソン7が欠損した場合、エキソン6は、リーディングフレームを維持するためにエキソン12又は18と接続しなければならない。したがって、前者の場合はエキソン7〜11について、後者の場合はエキソン7〜17についてスプライシングを再指示するアンチセンスオリゴヌクレオチドを選択する必要がある。エキソン7の欠損の前後でリーディングフレームを回復させるための別の若干簡単なアプローチは、2つの隣接するエキソンを除去することである。エキソン6及び8のスキッピングの誘導は、エキソン5から9にスプライシングしてインフレーム転写産物を生じさせなければならない。しかし実際には、プレmRNAから除去するためにエキソン8をターゲティングすると、エキソン9も同時に除去されるので、得られる転写産物ではエキソン5とエキソン10とが接合している。エキソン9を含んでいても含んでいなくてもリーディングフレームは変化しない。
【0066】
試験されるアンチセンス分子が同定されれば、前記アンチセンス分子は、当技術分野において標準的な技術に従って調製される。アンチセンス分子を生成するための最も一般的な方法は、ヒドロキシリボースの2’位のメチル化及びホスホロチオエート骨格の導入である。これによって、表面的にはRNAに類似しているが、ヌクレアーゼ分解に対する耐性が遥かに高い分子が生成される。
【0067】
アンチセンス分子と二重鎖を形成している間にプレmRNAが分解されるのを防ぐために、前記方法で用いられるアンチセンス分子は、内因性RNaseHによる切断を最小化する又は避けるのに適応している場合がある。細胞内環境に存在するか又はRNaseHを含有する粗抽出物と接触している非メチル化RNAオリゴヌクレオチドの存在が、プレmRNA:アンチセンスオリゴヌクレオチド二重鎖の分解を導くので、この性質は非常に好ましい。かかる分解をバイパスできるか又は誘導しない任意の形態の修飾アンチセンス分子を本方法で用いることができる。このヌクレアーゼ耐性は、部分不飽和脂肪族炭化水素鎖と、カルボン酸基、エステル基、及びアルコール基を含む1以上の極性基又は荷電基とを含むように本発明のアンチセンス分子を修飾することによって達成することができる。
【0068】
RNAと二重鎖を形成するとき、細胞内RNaseHによって切断されないアンチセンス分子の例は、2’−O−メチル誘導体である。2’−O−メチル−オリゴリボヌクレオチドは、細胞内環境及び動物組織で非常に安定であり、RNAとの二重鎖は、リボ又はデオキシリボ対応物よりも高いTm値を有する。或いは、本発明のヌクレアーゼ耐性アンチセンス分子は、フッ化されている最後の3’末端のヌクレオチドのうちの少なくとも1つを有してもよい。或いは、本発明のヌクレアーゼ耐性アンチセンス分子は、最後の3’末端のヌクレオチド塩基のうちの少なくとも2つの間を連結するホスホロチオエート結合を有し、好ましくは、最後の4つの3’末端のヌクレオチド塩基間を連結するホスホロチオエート結合を有する。
【0069】
RNaseHを活性化しないアンチセンス分子は、公知の技術に従って作製することができる(例えば、米国特許第5,149,797号明細書を参照されたい)。かかるアンチセンス分子は、デオキシリボヌクレオチド配列であってもよくリボヌクレオチド配列であってもよく、単に、オリゴヌクレオチドを含有する二重鎖分子に対するRNaseHの結合を立体障害するか又は防ぐ任意の構造的修飾をその配列の1つのメンバーとして含み、前記構造的修飾は、二重鎖の形成を実質的に妨げたり乱したりしない。二重鎖の形成に関与しているオリゴヌクレオチドの部分は、前記オリゴヌクレオチドに対するRNaseHの結合に関与している部分とは実質的に異なるので、RNaseHを活性化させない多くのアンチセンス分子が利用可能である。例えば、かかるアンチセンス分子は、ヌクレオチド間を架橋するホスフェート残基のうちの少なくとも1つ又は全てが、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、及びホルホロアミデート等の修飾ホスフェートであるオリゴヌクレオチドであってよい。例えば、ヌクレオチド間を架橋するホスフェート残基が一つ置きに上記の通り修飾されてもよい。別の非限定的な例では、かかるアンチセンス分子は、ヌクレオチドのうちの少なくとも1つ又は全てが2’低級アルキル部分(例えば、C1−C4、直鎖又は分枝、飽和又は不飽和アルキル、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1−プロペニル、2−プロペニル、及びイソプロピル)を含有する。例えば、ヌクレオチドが一つ置きに上記の通り修飾されてもよい。
【0070】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンス分子の好ましい形態であるが、本発明は、以下に記載するもの等のオリゴヌクレオチド擬似物質が挙げられるがこれらに限定されない他のオリゴマーアンチセンス分子を含む。
【0071】
本発明において有用である好ましいアンチセンス化合物の具体例としては、修飾骨格又は自然界には存在しないヌクレオシド間連結を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。本明細書に定義する通り、修飾骨格を有するオリゴヌクレオチドとしては、骨格中にリン原子を保持しているもの及び骨格中にリン原子を有しないものが挙げられる。本明細書の目的のために、また時に当技術分野において参照される通り、ヌクレオシド間骨格にリン原子を有しない修飾ヌクレオチドも、オリゴヌクレオシドであるとみなすことができる。
【0072】
他の好ましいオリゴヌクレオチド擬似物質では、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間連結、即ち骨格が、新規の基で置換されている。基本単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイズが維持されている。1つのかかるオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション性を有することが示されているオリゴヌクレオチド擬似物質は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格が、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換されている。ヌクレオ塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接又は間接的に結合する。
【0073】
また、修飾オリゴヌクレオチドは、1以上の置換糖部分を含有してもよい。また、オリゴヌクレオチドは、ヌクレオ塩基(当技術分野においては単に「塩基」と称することが多い)修飾又は置換を含んでいてもよい。特定のヌクレオ塩基は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに特に有用である。これらとしては、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、並びに例えば、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、及び5−プロピニルシトシンを含むN−2、N−6、及びO−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸の二重鎖安定性を0.6℃〜1.2℃上昇させることが示されており、本発明において好ましい塩基置換であり、更には2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせたときに特に好ましい塩基置換である。
【0074】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布、又は細胞内取り込みを高める1以上の部分又はコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学的に連結させることを含む。かかる部分としては、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖、或いはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、或いはオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分等の脂質部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
必ずしも所定の化合物における全ての位置が均一に修飾される必要はなく、実際に、前述の修飾のうちの1超を単一化合物に、又は更にはオリゴヌクレオチド内の単一ヌクレオシドに組み込んでもよい。また、本発明は、キメラ化合物であるアンチセンス化合物を含む。「キメラ」アンチセンス化合物、即ち「キメラ」は、本発明の状況において、2以上の化学的に異なる領域を含有し、その各々が少なくとも1つのモノマー単位、即ちオリゴヌクレオチド化合物の場合ヌクレオチドで構成されるアンチセンス分子、特にオリゴヌクレオチドである。これらオリゴヌクレオチドは、一般的に、ヌクレアーゼ分解に対する耐性を高め、細胞への取り込みを増加させるためにオリゴヌクレオチドが修飾される少なくとも1つの領域と、標的核酸に対する結合親和性を高めるための更なる領域とを含有する。
【0076】
アンチセンス分子の製造方法
本発明に従って用いられるアンチセンス分子は、固相合成の周知技術を通して簡便に且つルーチンに製造することができる。かかる合成を行うための設備は、例えば、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)を含む幾つかの供給元によって販売されている。修飾固体支持体においてオリゴヌクレオチドを合成するための1つの方法は、米国特許第4,458,066号明細書に記載されている。
【0077】
これに加えて又はこれに代えて、かかる合成のために当技術分野において公知である任意の他の手段を使用してもよい。ホスホロチオエート及びアルキル化誘導体等のオリゴヌクレオチドを調製するために類似の技術を用いることが周知である。1つのかかる自動化実施形態では、ジエチル−ホスホラミダイトが出発物質として用いられ、Beaucage,et al.,(1981)Tetrahedron Letters,22:1859−1862に記載の通り合成することができる。
【0078】
本発明のアンチセンス分子は、インビトロで合成され、生物学的起源のアンチセンス組成物、又はアンチセンス分子のインビボ合成を導くよう設計された遺伝子ベクターコンストラクトを含まない。また、取り込み、分布、及び/又は吸収を補助するために、例えば、リポソーム、受容体が標的とする分子、経口用、直腸用、局所用、又は他の製剤として、本発明の分子を他の分子、分子構造、又は化合物の混合物と共に混合、カプセル化、コンジュゲート化、又は結合物としてもよい。
【0079】
治療剤
また、本発明は、遺伝子疾患を治療する目的のために利用することができる予防剤又は治療剤として用いてもよい。
【0080】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と混合されている、治療に有効な量でジストロフィンプレmRNAにおける選択された標的に結合して本明細書に記載の効率的且つ一貫したエキソンスキッピングを誘導するアンチセンス分子を提供する。
【0081】
語句「薬学的に許容できる」とは、患者に投与したとき、生理学的に忍容性であり、且つ一般的に急性胃蠕動等のアレルギー性反応又は類似の有害な反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。用語「担体」は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。かかる医薬担体は、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等の石油、動物、植物、又は合成起源の油を含む油及び水等の不活性液体であってよい。水又は生理食塩水、並びに水性デキストロース及びグリセロール水溶液は、担体として、特に注射液として使用されることが好ましい。好適な医薬担体は、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,(1990)に記載されている。
【0082】
本発明のより具体的な形態では、薬学的に許容できる希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、及び/又は担体と共に治療に有効な量のアンチセンス分子を含む医薬組成物を提供する。かかる組成物は、様々なバッファ内容物(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の希釈剤、洗剤及び可溶化剤(例えば、Tween80、ポリソルベート80)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)、及びバルク物質(例えば、ラクトース、マンニトール)等の添加剤を含む。これら物質は、ポリ酢酸、ポリグリコール酸等のポリマー化合物の粒子状調製物、又はリポソームに配合してもよい。ヒアルロン酸を用いてもよい。かかる組成物は、本タンパク質及び誘導体の物理的状態、安定性、インビボにおける放出速度、及びインビボにおけるクリアランス速度に影響を与える場合がある。例えば、参照することによって本明細書に援用されるMartin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)pages 1435−1712を参照されたい。組成物は、液体形態で調製してもよく、凍結乾燥形態等の乾燥粉末であってもよい。
【0083】
本発明に従って提供される医薬組成物は、当技術分野において公知の任意の出願によって投与することができると認識される。投与するための医薬組成物は、注入、経口、肺、又は鼻経路によって投与されることが好ましい。アンチセンス分子は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、又は皮下投与経路によって送達されることがより好ましい。
【0084】
アンチセンス分子に基づく療法
また、遺伝子疾患を調節する医薬を製造するための本発明のアンチセンス分子の使用も本発明により扱われる。
【0085】
治療に有用な量のアンチセンス分子の送達は、既に公開されている方法によって行うことができる。例えば、アンチセンス分子の細胞内送達は、アンチセンス分子と有効な量のブロックコポリマーとの混合物を含む組成物を介して行うことができる。この方法の例は、米国特許出願公開第2004/0248833号明細書に記載されている。
【0086】
アンチセンス分子を核に送達する他の方法は、Mann CJ et al.,(2001)[“Antisense−induced exon skipping and the synthesis of dystrophin in the mdx mouse”.Proc.,Natl.Acad.Science,98(1)42−47]及びGebski et al.,(2003).Human Molecular Genetics,12(15):1801−1811に記載されている。
【0087】
ネイキッドDNA又は液体担体と複合体化されているDNAのいずれかとして発現ベクターを用いて細胞内に核酸分子を導入する方法は、米国特許第6,806,084号明細書に記載されている。
【0088】
コロイド分散系においてアンチセンス分子を送達することが望ましい場合がある。コロイド分散系としては、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ、及び水中油型エマルション、ミセル、混合ミセルを含む液体に基づく系、及びリポソーム又はリポソーム製剤が挙げられる。
【0089】
リポソームは、インビトロ及びインビボで送達小胞として有用である人工膜小胞である。これら製剤は、正味のカチオン電荷特性、アニオン電荷特性、又は中性電荷特性を有してもよく、インビトロ、インビボ、及びエキソビボにおける送達方法に有用な特性である。0.2PHI.m〜4.0PHI.mのサイズの大単ラメラ小胞(LUV)は、巨大分子を含有する水性バッファをかなりの割合封入することができる。RNA及びDNAは、水性の内部に封入されてもよく、生物学的活性型で細胞に送達されてもよい(Fraley,et al.,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981)。
【0090】
リポソームを有効な遺伝子輸送ビヒクルにするために、以下の特徴を有していなければならない:(1)高効率で対象アンチセンス分子を封入するが、前記アンチセンス分子の生物活性を低下させない;(2)非標的細胞に比べて、標的細胞に対して優先的且つ実質的に結合する;(3)高効率で標的細胞の細胞質に小胞の水性内容物を送達する;及び(4)遺伝情報を正確且つ有効に発現させる(Mannino,et al.,Biotechniques,6:682,1988)。
【0091】
リポソームの組成物は、通常、リン脂質の組み合わせ、特に相転移温度の高いリン脂質の組み合わせであり、通常、ステロイド類、特にコレステロールと併用される。他のリン脂質又は他の脂質を使用してもよい。リポソームの物性は、pH、イオン強度、及び二価カチオンの存在に依存する。
【0092】
或いは、アンチセンスコンストラクトは、他の薬学的に許容できる担体又は希釈剤と組み合わせて、医薬組成物を生成してもよい。好適な担体及び希釈剤としては、等張生理食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。組成物は、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口、又は経皮投与用に製剤化してもよい。
【0093】
記載されている投与経路は、指針として示すことのみを意図し、その理由は、当業者であれば、最適な投与経路、並びに任意の特定の動物及び症状に関する任意の投薬量を容易に決定できるためである。
【0094】
本発明のアンチセンス分子は、ヒトを含む動物に投与されたとき、(直接又は間接的に)生物学的に活性である代謝産物又はその残基を提供することができる任意の薬学的に許容できる塩、エステル、かかるエステルの塩、又は任意の他の化合物を含む。したがって、例えば、本発明の化合物のプロドラッグ及び薬学的に許容できる塩、かかるプロドラッグの薬学的に許容できる塩、及び他の生物学的等価物も開示に含まれる。
【0095】
「薬学的に許容できる塩」という用語は、本発明の化合物の生理学的且つ薬学的に許容できる塩;即ち、本化合物の望ましい生物活性を保持し、且つ本化合物に望ましくない毒性作用を付与しない塩を指す。
【0096】
オリゴヌクレオチドの場合、薬学的に許容できる塩の好ましい例としては、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン(例えばスペルミン及びスペルミジン等)等のカチオンと共に形成される塩;(b)例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸と共に形成される酸付加塩;(c)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等の有機酸と共に形成される塩;並びに(d)塩素、臭素、及びヨウ素等の元素アニオンから形成される塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、局所治療が望ましいか又は全身治療が望ましいか、及び治療される領域に依存して多数の方法で投与することができる。投与は、局所投与(眼及び直腸送達を含む粘膜への投与等)、例えば、粉末又はエアロゾルの吸入又は吹送による肺投与(例えばネブライザによる、気管内、鼻内、表皮、及び経皮)、経口投与又は非経口投与であってよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内への注射又は注入;或いは頭蓋内、例えば、髄腔内又は心室内投与が挙げられる。少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル修飾を有するオリゴヌクレオチドが、経口投与に特に有用であると考えられる。
【0097】
本発明の医薬製剤は、簡便な単位剤形で提示されてもよく、医薬業界で周知の慣用技術に従って調製することができる。かかる技術は、医薬担体又は賦形剤と活性成分とを関連付ける工程を含む。一般的に、製剤は、活性成分と、液体担体、微粉化固体担体、又はこれら両方とを均質且つ緊密に関連付け、次いで、必要に応じて製品を成形することによって調製される。
【0098】
本発明のキット
また、本発明は、遺伝子疾患を有する患者を治療するためのキットであって、好適な容器に包装されている少なくとも1つのアンチセンス分子と、その使用説明書とを含むキットを提供する。
【0099】
好ましい実施形態では、キットは、表1Aに示される少なくとも1つのアンチセンス分子、又は表1Bに示されるアンチセンス分子のカクテルを含む。また、キットは、バッファ、安定剤等の非必須試薬を含んでいてもよい。
【0100】
キットの内容物は、凍結乾燥されていてもよく、キットは、凍結乾燥されている成分を再構成するための好適な溶媒を更に含んでいてもよい。キットの個々の成分は、別々の容器に包装され、かかる容器と共に、医薬品又は生物学的製品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって定められている形態の通知であって、ヒトへの投与についての製造、使用、又は販売を規制する機関による認可を反映している通知を添付してもよい。
【0101】
キットの成分が1以上の液体溶液で提供されるとき、前記液体溶液は、水溶液、例えば無菌水溶液であってよい。インビボで使用する場合、発現コンストラクトを薬学的に許容できる注射用組成物に製剤化してもよい。この場合、容器手段は、単体で吸入器、注射器、ピペット、点眼器、又は他の同様の装置であってよく、これらから、肺等の動物の罹患領域に製剤を適用したり、動物に注射したり、更にはキットの他の成分に適用し、それと混合したりすることができる。
【0102】
また、キットの成分は、乾燥形態又は凍結乾燥形態で提供されてもよい。試薬又は成分が乾燥形態として提供されるとき、一般的に、好適な溶媒の添加によって再構成が行われる。また、溶媒は、別の容器手段で提供されてもよいことが想到される。容器の数又は種類にかかわらず、本発明のキットは、動物の体内に最終的な複雑な組成物を注射/投与又は配置するのを補助するための機器を含むか、又はこれらと共に包装されてもよい。かかる機器は、吸入器、注射器、ピペット、ピンセット、計量スプーン、点眼器、又は任意の医学的に認められている送達ビヒクルであってもよい。
【0103】
当業者は、上記方法の適用が、多くの他の疾患の治療において使用するのに好適なアンチセンス分子を同定するための幅広い用途を有することを認識すべきである。
【実施例】
【0104】
以下の実施例は、上記本発明を用いる手順を更に詳細に記載するものであり、本発明の様々な態様を実施するために考えられる最良の実施形態について記載するものである。これら実施例は、如何なる方法でも本発明の真の範囲を限定するものではなく、例証目的のために提示されるものであることを理解されたい。本明細書に引用する参照文献は、参照することによって明示的に本明細書に援用される。
【0105】
以下の実施例に明確には記載されていない分子のクローニング方法、免疫学的方法、及びタンパク質化学的方法は、文献に報告されており、当業者に公知である。当技術分野における従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術について記載している一般的な教科書としては、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989);Glover ed.,DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II,MRL Press,Ltd.,Oxford,U.K.(1985);及びAusubel,F.,Brent,R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Seidman,J.G.,Smith,J.A.,Struhl,K.Current Protocols in Molecular Biology.Greene Publishing Associates/Wiley Intersciences,New York(2002)が挙げられる。
【0106】
ヒト筋肉細胞において誘導されたエキソンスキッピングの判定
全てのエキソンに適用することができる一貫した傾向は存在しないと考えられるので、アンチセンス分子の設計における合理的なアプローチを開発するという本発明者らの試みは完全には成功しなかった。したがって、最も有効であり、したがって、最も治療に役立つアンチセンス分子化合物の同定が、経験的な研究の結果であった。
【0107】
これら経験的な研究は、スプライシングプロセスに関与している可能性のあるモチーフを同定するためにコンピュータプログラムを使用することを含んでいた。また、他のコンピュータプログラムを用いて、広範囲に及ぶ二次構造を有していない可能性があり、したがって、アンチセンス分子のアニーリング部位になる可能性があるプレmRNAの領域を同定した。これらアプローチのいずれも、信頼性が高く且つ効率的にエキソンスキッピングを誘導するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計において完全に信頼できるとは証明されなかった。
【0108】
先ず、スプライシングに関与する公知の又は予測されるモチーフ又は領域に基づいて、試験のためにヒトジストロフィンプレmRNAにおけるアニーリング部位を選択した。調査中の標的配列に対して相補的であるように2OMeアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計し、Expedite8909核酸合成機で合成した。合成が完了したら、オリゴヌクレオチドを支持カラムから切断し、水酸化アンモニウムで脱保護した後、脱塩した。オリゴヌクレオチド合成の品質は、合成ログで検出するとき、合成中の各脱保護工程におけるトリチルシグナルの強度によってモニターした。アンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は、希釈したアリコートの吸光度を260nmで測定することによって推定した。
【0109】
次いで、特定の量のアンチセンス分子を、下記の通りインビトロアッセイにおいてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【0110】
簡潔に述べると、正常な筋芽細胞の一次培養物を、インフォームドコンセント後に得たヒトの筋肉生検から調製した。標準的な培養技術を用いて細胞を増殖させ、筋管に分化させた。次いで、カチオン性リポプレックス、アンチセンス分子の混合物、又はカチオン性リポソーム調製物として細胞にオリゴヌクレオチドを送達することにより、アンチセンスオリゴヌクレオチドで前記細胞をトランスフェクトした。
【0111】
次いで、細胞を更に24時間増殖させた後、全RNAを抽出し、分子分析を開始した。逆転写酵素増幅(RT−PCR)を行って、ジストロフィンプレmRNAの標的となる領域又はエキソンの再構成の誘導について試験した。
【0112】
例えば、エキソン19のスキッピングを誘導するためのアンチセンス分子の試験においては、RT−PCR試験によって幾つかのエキソンを走査して、任意の隣接するエキソンの存在を検出した。例えば、エキソン19のスキッピングを誘導するとき、エキソン17から21に亘って増幅するプライマーを用いてRT−PCRを実施した。また、この領域における更に大きな生成物(即ち、エキソン13〜26)を増幅させて、より短い誘導及びスキッピングされた転写産物についての最小限の増幅バイアスしか存在しないことを保証した。より短い生成物又はエキソンスキッピングされた生成物は、より効率的に増幅される傾向があり、正常且つ誘導された転写産物の推定値にバイアスをかける可能性がある。
【0113】
増幅反応産物のサイズは、アガロースゲルにおいて推定し、適切なサイズ標準と比較した。これら産物のアイデンティティの最終的な確認は、直接DNAの配列を決定して、正確な又は予測されるエキソン接合が維持されていることを確認することにより実施した。
【0114】
1つのアンチセンス分子で効率的にエキソンスキッピングが誘導されたら、次の重複するアンチセンス分子を合成し、次いで、上記の通りのアッセイにおいて評価することができる。約300nM以下のトランスフェクション濃度で強力且つ持続的なエキソンスキッピングを誘導する分子を効率的なアンチセンス分子と定義した。本発明のオリゴヌクレオチド分子は、100nMの濃度にて30%超のレベルでスキッピングを誘導できることが最も好ましい。
【0115】
濃度測定方法
どのアンチセンス分子が望ましい効率を達成するかを判定するために、エキソンスキッピング手順の結果の濃度測定分析を実施した。増幅産物を2%アガロースゲルで分画し、エチジウムブロマイドで染色し、Chemi−Smart 3000ゲルドキュメンテーションシステム(Vilber Lourmat,Marne La Vallee)によって画像を取得した。次いで、製造業者の説明書に従ってゲルドキュメンテーションシステム(Bio−Profil,Bio−1Dバージョン11.9,Vilber Lourmat,Marne La Vallee)を用いてバンドを分析した。
【0116】
以下のアンチセンス分子について濃度測定を実施した。
【表3】
【0117】
エキソン17を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン17を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いて、ヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【0118】
以下の表2から、同部位(エキソン17のアクセプタースプライス部位)を対象とするアンチセンス分子の効果は、2つのアンチセンス分子の結合箇所が重複しているにもかかわらず、非常に異なる場合があることが分かる。イントロン16の最後の7塩基及びエキソン17の最初の23塩基にアニーリングするH17A(−07+23)[配列番号3]は、25nMの濃度で細胞に送達されたときエキソン17のスキッピングを誘導する。対照的に、イントロンの最後の12塩基及びエキソン17の最初の18塩基にアニーリングし、したがって、H17A(−07+23)の結合箇所と重複するアンチセンス分子H17A(−12+18)は、エキソンスキッピングを全く誘導することができなかった。更に、イントロン16の最後の7塩基及びエキソン17の最初の16塩基にアニーリングするH17A(−07+16)は、200nMでエキソン17及びエキソン18の両方をスキッピングした。エキソン17のエキソン内スプライシングエンハンサーエレメントモチーフにおいて結合するアンチセンス分子H17A(+61+86)[配列番号4]も、良好にスキッピングを誘導することができた。アンチセンス分子がエキソンスキッピングを誘導する能力は、結合箇所から単純に予測することはできず、厳密な試験を通して判定しなければならないことが分かる。
【表4】
【0119】
このデータは、一部の特定のアンチセンス分子は効率的にエキソンスキッピングを誘導するが、近傍又は重複する領域を標的とする別のアンチセンス分子は、誘導効率が遥かに低い場合があることを示す。力価測定研究は、ある分子は20nM〜25nMで標的とするエキソンスキッピングを誘導することができるが、効率の低いアンチセンス分子は、300nM以上の濃度でしかエキソンスキッピングを誘導することができなかったことを示す。したがって、スプライシングプロセスに関与しているモチーフに対するアンチセンス分子のターゲティングは、化合物の全体的な有効性において重要な役割を果たしていることが示された。
【0120】
有効性とは、標的エキソンの一貫したスキッピングを誘導する能力を示す。しかし、時に、標的エキソンのスキッピングは、隣接するエキソンに一貫して関連している。即ち、幾つかのエキソンのスプライシングが緊密に連携していることが見出された。例えば、エキソンのドナー部位を対象とするアンチセンス分子を用いて筋ジストロフィーのマウスモデルにおけるエキソン23を標的とした場合、エキソン22及び23が欠損しているジストロフィンが検出されることが多い。別の例として、ヒトジストロフィン遺伝子のエキソン8を対象とするアンチセンス分子を用いる場合、多くの誘導された転写産物は、エキソン8及び9の両方が欠損している。
【0121】
エキソン2を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン2を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表5】
【0122】
エキソン3を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン3を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【0123】
アンチセンス分子H3A(+30+60)[配列番号31]及びH3A(+61+85)[配列番号32]を各々単独で用いてもエキソン3のスキッピングを誘導するが、組み合わせると、2つの分子はスキッピングの誘導について更により有効であり(図3)、また、300nM及び600nMでエキソン4及び5のスキッピングを誘導することができる。この結果は、各アンチセンス分子を単独で使用した結果からは分からない、即ち推測できない。上記更なる生成物では、RT−PCRから持ち越した外側のプライマーによる増幅からエキソン3が欠損している転写産物が生じ、ヘテロ二重鎖が形成される。
【表6】
【0124】
エキソン4を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン4を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図4は、H4A(+11+40)[配列番号33]及びH4D(+14−11)[配列番号34]のカクテルを用いるエキソン4のスキッピングを示す。
【表7】
【0125】
エキソン5を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン5を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。H5D(+26−05)は、エキソン5の低レベルのスキッピングでさえも誘導することができなかったので、好ましくないアンチセンス分子とみなされる。しかし、エキソンスキッピングエンハンサーエレメントを標的とする可能性があるH5A(+35+65)[配列番号1]は、図5に示す標的エキソンのスキッピングの誘導について非常に効率的であることが見出されており、エキソン5のスキッピングを誘導するのに好ましい化合物であるとみなされる。
【表8】
【0126】
エキソン6を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン6を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表9】
【0127】
エキソン7を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン7を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表10】
【0128】
エキソン8を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン8を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図6を参照されたい。
【表11】
【0129】
エキソン9を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン9を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表12】
【0130】
エキソン10を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン10を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。エキソン10及び周囲のエキソンのスキッピングを誘導する単一アンチセンスオリゴヌクレオチド分子及びカクテルの例については図7を参照されたい。単一アンチセンスオリゴヌクレオチド分子H10A(−05+16)[配列番号37]は、エキソン9〜14のスキッピングを誘導することができ、一方、H10A(+98+119)[配列番号38]との組み合わせは、エキソン10単独及びエキソン9〜12のスキッピング(一部はエキソン10〜12のスキッピング)を誘導することができた。H10A(−05+16)とH10A(+130+149)との組み合わせは、エキソン10及びエキソン9〜12のスキッピングを誘導することができた。
【表13】
【0131】
エキソン11を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン11を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図37を参照されたい。
【表14】
【0132】
エキソン12を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン12を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図38を参照されたい。
【表15】
【0133】
エキソン13を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン13を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表16】
【0134】
エキソン14を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン14を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図8を参照されたい。
【表17】
【0135】
エキソン16を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン16を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表18】
【0136】
エキソン17を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン17を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表19】
【0137】
エキソン18を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン18を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図9を参照されたい。
【表20】
【0138】
エキソン19を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン19を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表21】
【0139】
エキソン20を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン20を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表22】
【0140】
エキソン23を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン23を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。エキソン23を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。H23(+69+98)−SNPは、既に文書化されている一塩基多型(SNP)を含有する。
【表23】
【0141】
エキソン24を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン24を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表24】
【0142】
エキソン25を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン25を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。オリゴヌクレオチドH25A(+95+119)−DupAは、患者特異的アンチセンス分子である。
【表25】
【0143】
エキソン26を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン26を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図10を参照されたい。
【表26】
【0144】
エキソン31を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン31を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表27】
【0145】
エキソン32を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン32を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表28】
【0146】
エキソン34を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン34を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表29】
【0147】
エキソン35を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン35を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表30】
【0148】
エキソン36を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン36を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図11を参照されたい。
【表31】
【0149】
エキソン38を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン38を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表32】
【0150】
エキソン39を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン39を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表33】
【0151】
エキソン41を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン41を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表34】
【0152】
エキソン42を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン42を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表35】
【0153】
エキソン43を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン43を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図12を参照されたい。
【表36】
【0154】
エキソン44を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン44を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図13及び39を参照されたい。
【表37】
【0155】
エキソン45を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン45を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図14及び40を参照されたい。
【表38】
【0156】
エキソン46を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン46を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図15及び44を参照されたい。
【表39】
【0157】
エキソン44〜46を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン44〜46を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表40】
【0158】
エキソン47を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン47を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図16を参照されたい。
【表41】
【0159】
エキソン48を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン48を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図17を参照されたい。
【表42】
【0160】
エキソン49を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン49を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図18を参照されたい。
【表43】
【0161】
エキソン50を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン50を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図19及び33を参照されたい。
【表44】
【0162】
エキソン51を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン51を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図20及び41を参照されたい。
【表45】
【0163】
エキソン52を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン52を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図42を参照されたい。
【表46】
【0164】
エキソン53を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン53を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図43を参照されたい。
【表47】
【0165】
エキソン54を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン54を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図21を参照されたい。
【表48】
【0166】
エキソン55を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン55を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図22を参照されたい。
【表49】
【0167】
エキソン56を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン56を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図23を参照されたい。
【表50】
【0168】
エキソン57を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン57を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図24を参照されたい。
【表51】
【0169】
エキソン59を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン59を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図25を参照されたい。
【表52】
【0170】
エキソン60を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン60を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図26を参照されたい。
【表53】
【0171】
エキソン61を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン61を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表54】
【0172】
エキソン62を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン62を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表55】
【0173】
エキソン63を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン63を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図27を参照されたい。
【表56】
【0174】
エキソン64を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン64を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図28を参照されたい。
【表57】
【0175】
エキソン65を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン65を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表58】
【0176】
エキソン66を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン66を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図29を参照されたい。
【表59】
【0177】
エキソン67を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン67を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図30を参照されたい。
【表60】
【0178】
エキソン68を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン68を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。図31を参照されたい。
【表61】
【0179】
エキソン69を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン69を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。エキソン69及び70の両方を除去するためのH69A(+32+60)及びH70A(−06+18)のカクテルを示す図32を参照されたい。
【表62】
【0180】
エキソン70を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン70を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表63】
【0181】
エキソン71を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン71を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表64】
【0182】
エキソン72を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン72を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表65】
【0183】
エキソン73を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン73を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表66】
【0184】
エキソン74を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン74を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表67】
【0185】
エキソン76を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
エキソン76を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、上記方法と同様の方法を用いてヒト筋肉細胞においてエキソンスキッピングを誘導する能力について試験した。
【表68】
【0186】
本発明の様々な実施形態を実施する上記形態の変形例は、開示されている発明に関連する上記教示に基づいて当業者に明らかになるであろう。本発明の上記実施形態は、単なる例示であり、如何なる方法でも限定するものと解釈すべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された標的部位に結合してジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導可能であることを特徴とする配列番号1〜59に記載のアンチセンス分子。
【請求項2】
ジストロフィン遺伝子のエキソン5、11、12、17、21、22、24、43〜47、49〜64、66及び67におけるエキソンスキッピングを誘導可能である請求項1に記載のアンチセンス分子。
【請求項3】
選択された標的に結合してジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導可能である請求項1又は2に記載の2以上のアンチセンス分子の組み合わせ。
【請求項4】
表1Bから選択される請求項3に記載の2以上のアンチセンス分子の組み合わせ。
【請求項5】
選択された標的部位に結合可能であり、前記標的部位が、スプライサードナー部位、スプライスアクセプター部位、又はエキソンスプライシングエンハンサーエレメントから選択されるmRNAスプライシング部位である請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子を含む組成物を患者に投与することを含むことを特徴とする患者の筋ジストロフィーを治療する方法。
【請求項7】
(a)少なくとも請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子と、(b)1以上の薬学的に許容できる担体及び希釈剤の少なくともいずれかとを含むことを特徴とする患者の筋ジストロフィーを治療するための医薬組成物又は治療用組成物。
【請求項8】
約20nM〜約600nMのアンチセンス分子を含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
筋ジストロフィーを調節する医薬を製造するための請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子の使用。
【請求項10】
アンチセンス分子に基づく治療において使用するための請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子。
【請求項11】
実施例を参照して本明細書に既に記載されている請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子。
【請求項12】
請求項1から4のいずれかに記載の少なくとも1つのアンチセンス分子と、好適な担体と、使用説明書とを含むことを特徴とするキット。
【請求項1】
選択された標的部位に結合してジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導可能であることを特徴とする配列番号1〜59に記載のアンチセンス分子。
【請求項2】
ジストロフィン遺伝子のエキソン5、11、12、17、21、22、24、43〜47、49〜64、66及び67におけるエキソンスキッピングを誘導可能である請求項1に記載のアンチセンス分子。
【請求項3】
選択された標的に結合してジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導可能である請求項1又は2に記載の2以上のアンチセンス分子の組み合わせ。
【請求項4】
表1Bから選択される請求項3に記載の2以上のアンチセンス分子の組み合わせ。
【請求項5】
選択された標的部位に結合可能であり、前記標的部位が、スプライサードナー部位、スプライスアクセプター部位、又はエキソンスプライシングエンハンサーエレメントから選択されるmRNAスプライシング部位である請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子を含む組成物を患者に投与することを含むことを特徴とする患者の筋ジストロフィーを治療する方法。
【請求項7】
(a)少なくとも請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子と、(b)1以上の薬学的に許容できる担体及び希釈剤の少なくともいずれかとを含むことを特徴とする患者の筋ジストロフィーを治療するための医薬組成物又は治療用組成物。
【請求項8】
約20nM〜約600nMのアンチセンス分子を含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
筋ジストロフィーを調節する医薬を製造するための請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子の使用。
【請求項10】
アンチセンス分子に基づく治療において使用するための請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子。
【請求項11】
実施例を参照して本明細書に既に記載されている請求項1から4のいずれかに記載のアンチセンス分子。
【請求項12】
請求項1から4のいずれかに記載の少なくとも1つのアンチセンス分子と、好適な担体と、使用説明書とを含むことを特徴とするキット。
【図2】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46A】
【図46B】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46A】
【図46B】
【公表番号】特表2013−510561(P2013−510561A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538147(P2012−538147)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001520
【国際公開番号】WO2011/057350
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512123662)ジ ユニバーシティ オブ ウェスタン オーストラリア (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001520
【国際公開番号】WO2011/057350
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512123662)ジ ユニバーシティ オブ ウェスタン オーストラリア (1)
【Fターム(参考)】
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