説明

病虫害の治療又は予防のための方法

本発明は、菌類又は害虫による病虫害を制御するための方法及び組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2006年9月25日に出願された同時係属出願である米国仮出願第60/847,203号の一部継続出願であり、その全文を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の背景]
多くの植物は、菌類及び害虫を含む様々な病害虫(pest)に起因する病害の影響を受けやすい。そのような病害虫は、作物に著しい被害を与え、生産者にとっての経済的価値を低下させる。作物は、特に被害を受けやすく、病害にかかると、多大な損害となり得る。多くの従来の殺虫剤及び殺菌剤は、環境に対して有害な影響を及ぼし、人に対する毒性に関わっている。害虫及び作物の真菌病の抑制又は予防のための既存の方法は、不十分である。従って、害虫及び真菌病から植物を保護するための新たな方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
[発明の概要]
以下に示すように、本発明は、ホップ酸を含む組成物、及び植物の病虫害(infestation)を低減又は予防するための方法に関する。
【0004】
一態様では、本発明は、害虫(例:チョウ類(Lepidoptera)の幼虫)を抑制する方法を提供し、該方法は、植物又は害虫をホップ誘導体を含有する有効量の組成物と接触させ、それによって害虫を抑制する。一実施形態では、該接触は、害虫が植物(例:トマト、オオブドウホオズキ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、及びナスなどのナス科植物、並びに、ブロッコリー、メキャベツ、キャベツ、カリフラワー、コラードグリーン、ケール、コールラビ、マスタード、ルタバガ、カブラ、パクチョイ、ハクサイ、アルグラ(Arugula)、ホースラディッシュ、ラディッシュ、ワサビ、及びオランダガラシなどのアブラナ科植物)と接触中に行われる。別の実施形態では、害虫は、イラクサキンウワバ(cabbage looper)、コナガ幼虫(diamondback moth
larvae)、アルファルファルーパー(alfalfa looper)、アワヨトウ(armyworm)、シロイチモジヨトウ(beet armyworm)、アーティチョークプルームモス(artichoke plume moth)、キャベッジバドウォーム(cabbage
budworm)、イラクサキンウワバ(cabbage looper)、ハイマダラノメイガ(cabbage
webworm)、オオタバコガ(corn earworm)、セルリーリーフイーター(celery leafeater)、クロスストリップトキャベッジウォーム(cross‐striped
cabbageworm)、セイヨウアワノメイガ(european
corn borer)、グリーンクローバーウォーム(green cloverworm)、インポーティドキャベッジウォーム(imported cabbageworm)、メロンウォーム(melonworm)、オムニボラスリーフローラー(omnivorous leafroller)、ピックルウォーム(pickleworm)、リンドウォーム群(rindworm complex)、ソルトマーシュキャタピラー(saltmarsh
caterpillar)、ソイビーンルーパー(soybean looper)、タバコバドウォーム(tobacco budworm)、トマトフルーツウォーム(tomato
fruitworm)、トマトホーンウォーム(tomato hornworm)、トマトピンウォーム(tomato pinworm)、ベルベットビーンキャタピラー(velvetbean
caterpillar)、イエローストリップトアーミーウォーム(yellowstriped armyworm)、アップルトートリックスモス(apple tortrix moth)、フルーツツリートートリックスモス(fruit
tree tortrix moth)、アップルフルーツモス(apple fruit moth)、ガンマキンウワバ(silvery moth)、アップルピスモス(apple pith moth)、カクタスモス(cactus moth)、スポッティドストークボーラー(spotted stalk
borer)、トマトルーパー(tomato looper)、トーティックスモス(tortix moth)、クラウンベッチケースベアラーモス(crownvetch
casebearer moth)、レッドクローバーケースベアラーモス(red clover
casebearer moth)、クローバーケースベアラーモス(clover case‐bearer moth)、リークモス(leek moth)、リーフウォーム(leaf worm)、ノクチュアドモス(noctuid moth)、ナッツフルーツトートリクス(Nut fruit
tortrix)、チェストナッツトーティックス(chestnut tortix)、シベリアンシルクモス(Siberian silk moth)、パンプキンキャタピラー(pumpkin
caterpillar)、チェリーバークトーティックス(cherry bark tortix)、ステムボーラー(stem borer)、ナシヒメシンクイ(oriental fruit moth)、オピアンポプラシュートボーラー(opean poplar shoot borer)、オールドワールドボウルウォーム(old
world bollworm)、オオタバクガ(cotton bollworm)、マイマイガ(gypsy moth)、コナガ(cabbage moth)、マメノメイガ(bean pod borer)、ラージイエローアンダーウィグ(large yellow
underwig)、リーフローラー(leaf roller)、ワタアカミムシ(Pink bollworm)、エジプシャンコットンウォーム(Egyptian
cottonworm)、フォースコドリングモス(false codling moth)、及びリンゴスガ(apple ermine moth)のいずれか1つ以上である。
【0005】
別の態様では、本発明は、菌類を抑制する方法を提供し、該方法は、ボトリチス属(Botrytis)(例:ボトリチスシネレア(Botrytis cinerea)、ボトリチスパエオニアエ(Botrytis paeoniae)、ボトリチスツリパエ(Botrytis tulipae))、エリシフェ属(Erysiphe)(例:エリシフェシコラセアルム(E.cichoracearum)、エリシフェクルシフェラルム(E.cruciferarum)、エリシフェリコペルシシ(E.lycopersici)、エリシフェネカトル(E.necator)、エリシフェピシ(E.pisi)、エリシフェヘラクレイ(E.heraclei))、レベイルラ属(Leveillula)(例:レベイルラタウリカ(Leveillula taurica))、スファエロテカ属(Sphaerotheca)(例:スファエロテカフリジネア(Sphaerotheca fuliginea)又はスファエロテカマクラリス(Sphaerotheca macularis))、ラストリア属(Rasutoria)(例:ラストリアアビエチス(Rasutoria abietis))、ミクロスファエラ属(Microsphaera)(例:ミクロスファエラペニシラタ(Microsphaera penicillata)又はミクロスファエラアルフィトイデス(Microsphaera alphitoides))、ポドスファエラ属(Podosphaera)(例:ポドスファエラスピーシィーズクンゼ(Podosphaera spp.Kunze))、ペロノスポラ属(Peronospora)(ペロノスポラパラシチカ(Peronospora parasitica))、フィトフトラ属(Phytophthora)(例:フィトフトラインフェスタンス(Phytophthora infestans))、シュードペロノスポラ属(Pseudoperonospora)(例:シュードペロノスポラクベンシス(Pseudoperonospora cubensis))、及びプラスモパラ属(Plasmopara)(例:プラスモパラビチコラ(Plasmopara viticola))のいずれか1つ以上である菌類又は胞子をホップ誘導体を含有する有効量の組成物と接触させ、それによって菌類を抑制する。他の実施形態では、菌類は、アスパラガス、マメ、ビート、ニンジン、セロリ、チコリー、十字花植物、ウリ、ナス、エンダイブ、ブドウ、レタス、タマネギ、コショウ、ジャガイモ、ラズベリー、ダイオウ、ルタバガ、エシャロット、イチゴ、トマト、及びカブラのいずれか1つ以上に感染する。別の実施形態では、菌類は、アネモネ、ベゴニア、キンセンカ、キク、ダリア、ハナミズキ、フクシア、ゼラニウム、サンザシ、ヘザー、アジサイ、マリーゴールド、パンジー、シャクヤク、ツルニチニチソウ、ペチュニア、バラ、スナップドラゴン、ヒマワリ、スイートピー、チューリップ、スミレ、及びヒャクニチソウから成る群から選択される観賞用植物に感染する。
【0006】
さらに別の態様では、本発明は、菌類又は害虫による植物の病虫害を治療又は予防する方法に関し、該方法は、植物、植物生長物質(例:土、バーミキュライト、コンポスト)、又は植物用容器(例:ポット又はトレイ)を、ホップ誘導体を含有する有効量の組成物と接触させ、それによって菌類又は害虫による植物の病虫害を治療又は予防する。一実施形態では、該接触は、フィールド、温室、又は家庭で行われる。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、菌類若しくは害虫の幼虫による病虫害を治療又は予防するための組成物を提供し、該組成物は、農業的に適する媒体(vehicle)中の有効量のホップ誘導体を含有する。一実施形態では、ホップ誘導体は、アルファ酸、ベータ酸、又はアルファ酸とベータ酸の組み合わせである。別の実施形態では、組成物は、液体、粉末、コロイド、オイル、及びエマルジョンのいずれか1つ以上である。さらに別の実施形態では、組成物は、さらにセッケンなどの界面活性剤を含有する。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、前述の態様の組成物を含む殺虫剤又は殺菌剤の供給装置(例:スプレーガン、高容量フィールドスプレーヤー(high volume field sprayer)、噴霧缶(aerosol spray
canister)、噴霧器)を提供する。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、前述のいずれかの態様の組成物を含む植物を提供する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、前述のいずれかの態様の組成物を作製する方法を提供する。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、害虫の幼虫若しくは菌類による病虫害を治療又は予防するためのキットを提供し、該キットは、病虫害の場所への供給に適した形態の有効量のホップ誘導体を含む。一実施形態では、病虫害の場所は、植物、植物生長物質、植物容器、又は温室である。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、害虫を抑制するホップ誘導体を識別する方法を提供する。該方法は、害虫若しくは害虫の幼虫を、ホップ誘導体を含有する試験組成物と接触させ、未処理の害虫又は幼虫と比較して、幼虫の生物学的機能を低下させるホップ誘導体を識別する。種々の実施形態では、試験組成物は、害虫若しくは害虫の幼虫を死滅させ、幼虫の孵化、成長、若しくは摂食を低下させ、又は害虫若しくは害虫の幼虫を忌避する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、菌類を抑制するホップ誘導体を識別する方法を特徴とする。該方法は、菌類を、ホップ誘導体を含有する試験組成物と接触させ、未処理の菌類と比較して、菌類の成長又は生存率を低下させるホップ誘導体を識別する。別の実施形態では、試験化合物は、菌類の成長又は伝染を低下させる。さらに別の実施形態では、試験化合物は、植物の被害を減少させる、又は市場価値のある果実の収穫量を増加させる。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、害虫を忌避するホップ誘導体を識別する方法を特徴とする。該方法は、植物を、ホップ誘導体を含有する試験組成物と接触させ、該植物を、害虫と接触させ、未処理の植物と比較して、害虫がその植物と接触又は該食物を摂食する時間の長さを分析し、該処理植物との接触又は該処理食物の摂食の時間の長さの減少により、該ホップ誘導体が害虫を忌避すると識別する。
【0015】
上述のいずれの態様の種々の実施形態においても、組成物は、イラクサキンウワバ、コナガ幼虫、アルファルファルーパー、アワヨトウ、シロイチモジヨトウ、アーティチョークプルームモス、キャベッジバドウォーム、イラクサキンウワバ、ハイマダラノメイガ、オオタバコガ、セルリーリーフイーター、クロスストリップトキャベッジウォーム、セイヨウアワノメイガ、グリーンクローバーウォーム、インポーティドキャベッジウォーム、メロンウォーム、オムニボラスリーフローラー、ピックルウォーム、リンドウォーム群、ソルトマーシュキャタピラー、ソイビーンルーパー、タバコバドウォーム、トマトフルーツウォーム、トマトホーンウォーム、トマトピンウォーム、ベルベットビーンキャタピラー、イエローストリップトアーミーウォーム、アップルトートリックスモス、フルーツツリートートリックスモス、アップルフルーツモス、ガンマキンウワバ、アップルピスモス、カクタスモス、スポッティドストークボーラー、トマトルーパー、トーティックスモス、クラウンベッチケースベアラーモス、レッドクローバーケースベアラーモス、クローバーケースベアラーモス、リークモス、リーフウォーム、ノクチュアドモス、ナッツフルーツトートリクス、チェストナッツトーティックス、シベリアンシルクモス、パンプキンキャタピラー、チェリーバークトーティックス、ステムボーラー、ナシヒメシンクイ、オピアンポプラシュートボーラー、オールドワールドボウルウォーム、オオタバクガ、マイマイガ、コナガ、マメノメイガ、ラージイエローアンダーウィグ、リーフローラー、ワタアカミムシ、エジプシャンコットンウォーム、フォースコドリングモス、及びリンゴスガのいずれか1つ以上である害虫による病虫害を低減する。さらに他の実施形態では、ボトリチス属、エリシフェ属、レベイルラ属、スファエロテカ属、ラストリア属、ミクロスファエラ属、ポドスファエラ属、ペロノスポラ属、シュードペロノスポラ属、及びプラスモパラ属のいずれか1つ以上である菌類又は胞子による病虫害を低減する。上述の態様のいずれの他の実施形態においても、本発明は、菌類を抑制する方法を提供し、該方法は、ボトリチス属(例:ボトリチスシネレア、ボトリチスパエオニアエ、ボトリチスツリパエ)、エリシフェ属(例:エリシフェシコラセアルム、エリシフェクルシフェラルム、エリシフェリコペルシシ、エリシフェネカトル、エリシフェピシ、及びエリシフェヘラクレイ)、レベイルラ属(例:レベイルラタウリカ)、スファエロテカ属(例:スファエロテカフリジネア又はスファエロテカマクラリス)、ラストリア属(例:ラストリアアビエチス)、ミクロスファエラ属(例:ミクロスファエラペニシラタ又はミクロスファエラアルフィトイデス)、ポドスファエラ属(例:ポドスファエラスピーシィーズクンゼ)、ペロノスポラ属(ペロノスポラパラシチカ)、フィトフトラ属(例:フィトフトラインフェスタンス)、シュードペロノスポラ属(例:シュードペロノスポラクベンシス)、及びプラスモパラ属(例:プラスモパラビチコラ)のいずれか1つ以上である菌類又は胞子を、ホップ誘導体を含有する有効量の組成物と接触させ、それによって菌類を抑制する。上述の態様の他の実施形態では、ホップ誘導体は、単離されたアルファ酸、ベータ酸、又はアルファ酸及びベータ酸の組み合わせである。上述の態様のさらに他の実施形態では、組成物は、0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、20%、25%、50%、75%、若しくはそれ以上のアルファ酸、ベータ酸、又はこれらの組み合わせを含有する。
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、詳細な説明及び特許請求の範囲より明らかであろう。
【0017】
<定義>
「殺虫剤」とは、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、さらには70%、80%、90%、95%、若しくは99%の割合で、害虫の幼虫の孵化、成長、生存、脱皮、又は繁殖を遅くする、遅らせる、阻害する、又は停止させるいかなる薬剤、化合物、又は分子をも意味する。
【0018】
「単離されたホップ誘導体」とは、天然に共存する成分から分離されたホップ成分(例:アルファ酸又はベータ酸)を意味する。通常は、ホップ誘導体は、天然に共存するタンパク質及び天然の有機分子を除いて少なくとも60重量%である場合に単離される。好ましくは、この製剤は、本発明の組成物の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、そして最も好ましくは少なくとも99重量%である。本発明の単離されたホップ誘導体は、例えば、天然源からの抽出により、又はその誘導体を化学合成することにより得ることができる。純度は、どのような適切な方法によっても、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、あるいはHPLC分析、によって測定することができる。
【0019】
「農業用媒体(agricultural
vehicle)」とは、植物適合性賦形剤を意味する。そのような媒体は、植物毒性がないか、植物毒性を低減させている。
【0020】
「アルファ酸」とは、フムロン、アドフムロン、コフムロン、又はこれらの類似体若しくは誘導体と構造的な相同性を有する植物のホップ(フムルスルプルス(Humulus lupulus))由来の有機酸である。フムロン、アドフムロン、及びコフムロンは、最も豊富に存在する3種類のアルファ酸類似体である。アルファ酸の他の典型的な誘導体としては、これらに限定されないが、イソアルファ酸、ローイソアルファ酸(rhoisoalpha acid)、テトラヒドロイソアルファ酸、及びヘキサヒドロイソアルファ酸が挙げられる。
【0021】
「ベータ酸」とは、ルプロン、アドルプロン、コルプロン、又はこれらの類似体若しくは誘導体と構造的な相同性を有する植物のホップ(フムルスルプルス)由来の有機酸である。ルプロン、アドルプロン、及びコルプロンは、最も豊富に存在する3種類のベータ酸類似体である。ベータ酸の他の典型的な誘導体としては、これらに限定されないが、フルポン、ヘキサヒドロベータ酸、及びヘキサヒドロフルポンが挙げられる。
【0022】
「生物学的機能」とは、生物のいかなる生理的な又は行動上の活動をも意味する。
【0023】
「接触」とは、組成物と接すること、これと共存すること、又はこれに近接することを意味する。例えば、ホップ誘導体は、ミツバチの巣にその構造の内側又は外側にて接触することができる。
【0024】
「害虫の忌避」とは、未処理の植物(例:コントロール植物)と比較して、害虫が処理植物と接触するか、それを摂食するか、又はその近傍に存在する時間の長さを短縮することを意味する。例えば、忌避剤は、本発明の組成物で処理した領域内に害虫が存在する時間の長さを短縮する。
【0025】
「徐放」とは、数時間、数日間、数週間、あるいは数ヶ月にわたって放出されることを意味する。
【0026】
「害虫の幼虫の抑制」とは、害虫の幼虫(例:チョウ類)の生存の阻害、又は害虫群の成長の低下、遅延、若しくは一定化を意味する。好ましくは、生存率は、少なくとも5%、10%、20%、若しくは25%の割合で、より好ましくは30%、50%、75%、85%、さらには95%若しくは100%の割合で低下させられる。
【0027】
「菌類の抑制」とは、菌類の生存の阻害、又は菌類の成長の低下、遅延、若しくは一定化を意味する。好ましくは、菌類は、少なくとも5%、10%、20%、若しくは25%の割合で、より好ましくは30%、50%、75%、85%、さらには95%若しくは100%の割合で減少させられる。
【0028】
「害虫による被害」とは、害虫の活動に関連する植物組織へのいかなる被害をも意味する。
【0029】
「有効量の殺虫剤」とは、害虫の生物学的機能を破壊するのに有効な量を意味する。
【0030】
「有効量の殺菌剤」とは、菌類の成長若しくは増殖を防止、低下、又は遅延させるのに有効な量を意味する。
【0031】
「ホップ酸」とは、アルファ酸又はベータ酸を意味する。
【0032】
「ホップ誘導体」とは、ホップ(フムルスルプルス)内に天然に存在するいかなる分子、及びその化学的誘導体を意味する。ホップ誘導体(例:アルファ酸、ベータ酸)は、ホップから精製してもよく、又は化学的に合成してもよい。
【0033】
「病虫害」とは、病害虫(例:害虫、又は菌類などの植物病原体)によるある場所のコロニー化、又は植物の消耗を意味する。好適な実施形態では、病虫害は、コントロール植物と比較して、少なくとも20%(好ましくは30%又は40%)の割合で減少する。他の好適な実施形態では、病虫害は、コントロール植物と比較して、50%、60%、より好ましくは、さらに75%若しくは90%、さらには100%までの割合で減少する。病虫害のレベルの測定は、当業者に公知であって本明細書で述べる従来の手段を用いて行われる。例えば、病虫害のレベルは、物理的な特徴及び特性(例えば、市場価値のある果実の量、植物の高さ及び重さ)を比較することによって、又は病虫害の症状(例えば、病変部の進行、病変部の大きさ、葉のしおれ及び巻き、水浸状斑点、害虫又は菌類の成長量、害虫による摂食跡、害虫又はその卵の数、菌類の存在、並びに細胞の変色)を比較することによって測定することができる。
【0034】
「殺虫活性」とは、害虫の成長、繁殖、又は生存を阻害するいかなる活性をも意味する。
【0035】
「殺菌活性」とは、菌類の成長、繁殖、又は生存を阻害するいかなる活性をも意味する。
【0036】
「病害虫による病虫害の予防」とは、植物に病虫害が発生する可能性を低減することを意味する。
【0037】
「植物の病虫害の治療」とは、植物組織における害虫若しくは菌類の増殖を、低下、一定化、又は遅延させることを意味する。
【0038】
「植物の病原体」とは、生存に適した植物組織への感染がその植物組織に病害反応を引き起こす生物を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ブームスプレーヤーの概略図である。ブームスプレーヤーは、ブームと呼ばれる長いパイプまたはその他の構造に沿って、複数のノズル(四角形で図示)より農薬溶液を計量する。
【図2】ボトリチスシネレア病の発生率を区画あたりのパーセントで示すグラフである。これらの図のうち、「UTC」は、未処理コントロールを表す。
【図3】ボトリチス属に感染した植物の面積のパーセントを表す、ボトリチス病の重症度を示すグラフである。
【図4】区画あたりの市場価値のある果実の数を示すグラフである。
【図5】ボトリチスシネレアに感染した果実を示すグラフである(適用「G」の20日後における区画あたりの%、ここで、Gは適用した日)。
【図6】ブームの概略図である。ノズルは四角形で図示する。
【図7】区画あたりの害虫の摂食被害のパーセントを示す。
【図8】植物あたりの一齢から二齢のコナガ幼虫の数を示す。
【図9】植物あたりの三齢から四齢のコナガ幼虫の数を示す。
【図10】植物あたりのコナガ幼虫の総数を示す。
【図11】植物あたりの一齢から二齢のイラクサキンウワバの数を示す。
【図12】植物あたりの三齢から五齢のイラクサキンウワバの数を示す。
【図13】植物あたりのイラクサキンウワバの総数を示す。
【図14】病虫害による摂食被害を区画あたりのパーセントで示す。
【図15】被害を受けた植物のパーセントとして評価した、摂食被害の重症度を示す。
【図16】収穫時における、区画あたりの市場価値のある果実の数を示す。
【図17】収穫時における、区画あたりの摂食被害のパーセントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に述べるように、本発明は、ホップ酸及びその誘導体を含む殺虫剤及び殺菌剤組成物、並びに、害虫若しくは菌類による植物の感染又は病虫害を低減又は予防する方法に関する。本発明は、一部、ホップの天然成分がボトリチス、ウドンコ病菌、及びベト病菌などの植物の菌類病の予防又は治療、並びにチョウ類の幼虫を含む害虫による植物の病虫害の予防又は治療に有用であるという発見に基づいている。
【0041】
[ウドンコ病菌]
ウドンコ病菌は、下層組織に侵入することなく植物表面で増殖する菌糸体(菌類の糸状物)を産生する。この菌は、吸収管又は根状構造体を植物の表皮(最上部)細胞中へ伸ばして養分を吸収する。この菌は、植物の残骸上で越冬し、春になると胞子を産生し、これが、雨滴のはね、風、又は虫への寄生により、感染しやすい宿主組織へと運ばれる。ウドンコ病菌は、白色タルカムパウダー状の増殖部の斑点を特徴とする。この病害は、葉の表側で最も一般的に観察されるが、葉の裏側、幼茎、蕾、花、及び果実も被害を受ける場合がある。感染した葉は、変形し、緑色の小斑点を残して黄変し、早期に落葉することがある。感染した蕾は、開花しないことがある。
【0042】
ウドンコ病菌は、宿主特異的である。この菌は、適切な宿主植物でないと生存できない。特定のウドンコ病菌種を表1(下表)に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
[ボトリチス]
ボトリチスは、経済的に重要なさまざまな作物及び観賞用植物に感染して菌類病を引き起こす日和見性病原体である。胴枯れ病(blight)を引き起こす可能性のある菌類であるボトリチスにはいくつかの種があり、最も一般的なものがボトリチスシネレアである。ボトリチスは、植物のキャノピーの葉と茎の両方、並びに生育中の果実にもコロニーを形成する能力があるため、フィールド条件下にてフレッシュマーケットトマト(fresh market tomato)の抑制が特に難しい。さらに、ボトリチスは、土の高さでの茎基部の病変部として現れて植物を帯状に取り囲む場合があり、それによって植物が完全に枯れてしまい、果実の収穫量が減少させる。このような特徴のため、散布型の殺菌剤による抑制は非常に難しい。野菜及び果物の中で、ボトリチスシネレアが感染するものとしては、アスパラガス、マメ、ビート、ニンジン、セロリ、チコリー、十字花植物、ウリ、ナス、エンダイブ、ブドウ、レタス、タマネギ、コショウ、ジャガイモ、ラズベリー、ダイオウ、ルタバガ、エシャロット、イチゴ、トマト、及びカブラなどがある。ボトリチスシネレアは、多くの観賞用植物にも感染することができ、その中には、アネモネ、ベゴニア、キンセンカ、キク、ダリア、ハナミズキ、フクシア、ゼラニウム、サンザシ、ヘザー、アジサイ、マリーゴールド、パンジー、ツルニチニチソウ、ペチュニア、バラ、スナップドラゴン、ヒマワリ、スィートピー、スミレ、ヒャクニチソウなどが含まれる。他の2種類の有害なボトリチス属の胴枯れ病菌は、厳密な宿主植物の選択性を有しており、ボトリチスパエオニアエはシャクヤクに感染し、ボトリチスツリパエはチューリップに感染して、チューリップファイヤ(tulip fire)として知られる病害を引き起こす。
【0045】
[害虫]
ほぼすべての農作物、植物、及び商業用農業地域は、1種類以上の害虫からの攻撃を受けやすい。そのような害虫は、ホップ酸を含有する殺虫剤の標的とすることができる。ホップ酸を含有する組成物を投与することにより、害虫による植物の病虫害を低減することができるだけでなく、害虫の活動に付随する病原体への植物の感染も低減することができる。特定の実施形態においては、本発明の殺虫剤組成物は、例えば、本明細書で定義されるいずれのものをも含め、農作物、植物、及び商業用農業地域の、害虫又は害虫の幼虫(例:チョウ類の幼虫)による病虫害の消滅、忌避、又は低減のために特に有用である。
【0046】
アーティチョーク、コールラビ、アルグラ、リーキ、アスパラガス、レンズマメ、マメ、レタス、(例:ヘッドレタス、リーフレタス、ロメインレタス)、ビート、パクチョイ、ヤウテア、ブロッコリー、メロン(例:マスクメロン、スイカ、クレンショーメロン、ハネデューメロン、カンタループメロン)、メキャベツ、キャベツ、カルドニ(cardoni)、ニンジン、ハクサイ(napa)、カリフラワー、オクラ、タマネギ、セロリ、パセリ、ヒヨコマメ、パースニップ、チコリー、エンドウ、ハクサイ、コショウ、コラード、ジャガイモ、キュウリ、カボチャ、ウリ、ラディッシュ、ドライバルブオニオン(dry bulb onion)、ルタバガ、ナス、バラモンジン、エスカロール(escarole)、エシャロット、エンダイブ、ダイズ、ニンニク、ホウレンソウ、アオタマネギ、ウリ類(squash)、グリーン(green)、テンサイ、サツマイモ、カブラ、フダンソウ、セイヨウワサビ、トマト、ケール、カブラ、及び様々な香辛料などの野菜及びアブラナ科アブラナ属の作物が、アルファルファルーパー、アワヨトウ、シロイチモジヨトウ、アーティチョークプルームモス、キャベッジバドウォーム、イラクサキンウワバ、ハイマダラノメイガ、オオタバコガ、セルリーリーフイーター、クロスストリップトキャベッジウォーム、セイヨウアワノメイガ、コナガ、グリーンクローバーウォーム、インポーティドキャベッジウォーム、メロンウォーム、オムニボラスリーフローラー、ピックルウォーム、リンドウォーム群、ソルトマーシュキャタピラー、ソイビーンルーパー、タバコバドウォーム、トマトフルーツウォーム、トマトホーンウォーム、トマトピンウォーム、ベルベットビーンキャタピラー、及びイエローストリップトアーミーウォーム、といった害虫の1種類以上による病虫害の影響を受けやすい。
【0047】
同様に、アルファルファ、牧草、及びサイレージなどの牧草や干草作物は、アワヨトウ、ビーフアーミーウォーム(beef armyworm)、アルファルファキャタピラー(alfalfa
caterpillar)、ヨーロピアンスキッパー(European skipper)、種々のシャクトリムシ類(looper)及びイモムシ類(webworm)、並びにイエローストライプトアーミーウォーム(yellowstriped armyworm)などの害虫の攻撃を受けることが多い。
【0048】
リンゴ、アンズ、サクランボ、ネクタリン、モモ、ナシ、プラム、プルーン、マルメロ、アーモンド、クリ、ハシバミ、ペカン、ピタチオ、クルミ、カンキツ類、ブラックベリー、ブルーベリー、ボイゼンベリー、クランベリー、カラント、ローガンベリー、ラズベリー、イチゴ、ブドウ、アボカド、バナナ、キウイ、カキ、ザクロ、パイナップル、熱帯果樹などの果樹及びつる性植物(vine)の作物は、アケマスフィンクスモス(achema sphinx moth)、アモルビア(amorbia)、アワヨトウ、シトラスカットウォーム(citrus cutworm)、バナナセセリ(banana skipper)、ブラックヘッディドファイヤーウォーム(blackheaded
fireworm)、ブルーベリーリーフローラー(blueberry leafroller)、カンカーウォーム(cankerworm)、チェリーフルーツウォーム(cherry fruitworm)、シトラスカットウォーム(citrus cutworm)、クランベリーガードラー(cranberry
girdler)、イースタンテントキャタピラー(eastern tent caterpillar)、アメリカシロヒトリ(fall webworm)、フィルバートリーフローラー(filbert
leafroller)、フィルバートウェブウォーム(filbert webworm)、フルーツツリーリーフローラー(fruit tree leafroller)、ブドウホソハマキ(grape berry
moth)、グレープリーフフォールダー(grape leaffolder)、グレープリーフスケルトナイザー(grapeleaf skeletonizer)、グリーンフルーツウォーム(green
fruitworm)、ガモソスバトラチェドラコモサエ(gummosos‐batrachedra
commosae)、マイマイガ、ヒッコリーシュックウォーム(hickory shuckworm)、ホーンウォーム(hornworm)、シャクトリムシ類、ネーベルオレンジウォーム(navel
orangeworm)、オブリークバンディドリーフローラー(obliquebanded leafroller)、オムニボラスリーフローラー、オムニボラスル−パー(omnivorous looper)、オレンジトートリックス(orange
tortrix)、オレンジドッグ(orangedog)、ナシヒメシンクイ、パンデミスリーフローラー(pandemis leafroller)、ピーチトゥイグボーラー(peach twig borer)、ピカンナットケースベアラー(pecan nut
casebearer)、レッドバンディドリーフローラー(redbanded leafroller)、レッドハンプトキャタピラー(redhumped caterpillar)、ルーグリスキンドカットウォーム(rougliskinned
cutworm)、ソルトマーシュキャタピラー、スパンウォーム(spanworm)、オビカレハ(tent caterpillar)、テクラテクラバシリデス(thecla‐thecla
basilides)、タバコバドウォーム、トートリックスモス(tortrix moth)、タフティドアップルバドモス(tufted apple budmoth)、バリアゲイティドリーフローラー(variegated
leafroller)、ウォルナットキャタピラー(walnut caterpillar)、ウェスタンテントキャタピラー(western tent caterpillar)、及びイエローストライプトアーミーウォームによる攻撃及び立ち枯れ(defoliation)の影響を受けやすい場合が多い。
【0049】
セイヨウアブラナ/アブラナ、マツヨイグサ、メドウフォーム、トウモロコシ(飼料用トウモロコシ、スイートコーン、ポップコーン)、ワタ、ホップ、ホウホウバ、ピーナッツ、イネ、ベニバナ、小粒穀物(オオムギ、オートムギ、ライムギ、コムギなど)、モロコシ、ダイズ、ヒマワリ、及びタバコなどの作物は、アワヨトウ、アジアンコーンボーラー(asian corn borer)及び他のコーンボーラー、バンディドサンフラワーモス(banded
sunflower moth)、シロイチモジヨトウ、ボールウォーム(bollworm)、イラクサキンウワバ、コーンルートウォーム(corn rootworm)(サザン種及びウエスタン種を含む)、コットンリーフパーフォレイター(cotton leaf perforator)、コナガ、セイヨウアワノメイガ、グリーンクローバーウォーム、ヘッドモス(headmoth)、ヘッドウォーム(headworm)、インポーティドキャベッジウォーム、シャクトリムシ類(アナカンプトデススピーシーズ(Anacamptodes spp.)を含む)、オブリークバンディドリーフローラー、オムニボラスリーフタイヤー(omnivorous leaftier)、ポッドウォーム(podworm)、ポッドウォーム、ソルトマーシュキャタピラー、サウスウエスタンコーンボーラー(southwestern corn borer)、ソイビーンルーパー、スポッティドカットウォーム(spotted cutworm)、サンフラワーモス(sunflower moth)、タバコバドウォーム、タバコホーンウォーム(tobacco hornworm)、ベルベットビーンキャタピラー(velvetbean
caterpillar)を含む害虫による病虫害の標的となる場合が多い。
【0050】
花壇用植物、花、観賞植物、野菜、及びコンテナ苗(container stock)は、アワヨトウ、アザレアモス(azalea moth)、シロイチモジヨトウ、コナガ、エロモス(ello moth)(ホーンウォーム)、フロリダファーンキャタピラー(Florida
fern caterpillar)、イオメダマヤママユ(Io moth)、シャクトリムシ類、オレアンダーモス(oleander moth)、オムニボラスリーフローラー、オムニボラスル−パー、及びタバコバドウォームなどの多数の害虫の餌とされる場合が多い。
【0051】
林木、果樹、観賞用樹木、及び実のなっている樹木(nut‐bearing tree)、並びに低木類、及びその他の苗木は、ミノムシ類(bagworm)、ブラックへディドバドウォーム(blackheaded budworm)、シロバネドクガ(browntail moth)、カリフォルニアオークウォーム(California oakworm)、ダグラスファータソックモス(douglas
fir tussock moth)、エルムスパンウォーム(elm spanworm)、アメリカシロヒトリ、フルーツツリーリーフローラー、グリーンストライプトメイプルウォーム(greenstriped mapleworm)、マイマイガ、ジャックパインバドウォーム(jack
pine budworm)、ミモサウェブウォーム(mimosa webworm)、パインバタフライ(pine butterfly)、レッドハンプトキャタピラー、サドルバックキャタピラー(saddleback
caterpillar)、サドルプロミネントキャタピラー(saddle prominent
caterpillar)、スプリングカンカーウォーム及びフォールカンカーウォーム(spring and
fall cankerworm)、スプルースバドウォーム(spruce budworm)、テントキャタピラー(tent caterpillar)、トートリックス、並びにウェスタンタソックモス(western
tussock moth)などの種々の害虫からの攻撃を受けやすい場合が多い。同様に、芝草は、アワヨトウ、ソドウェブウォーム(sod webworm)、及びトロピカルソドウェブウォーム(tropical sod
webworm)などの害虫による攻撃を受ける場合が多い。
【0052】
[有害菌類]
多くの商業的に重要な作物及び観賞用植物は、菌類による病虫害の影響を受けやすく、それによって多くの植物病害が引き起こされる。ホップ組成物は、農作物、観賞用植物、又は商業的農業地域の菌類による病虫害を予防又は治療するのに有用である。菌類又は菌類病を引き起こす病原体の例としては、これらに限定されないが、ニンジン及びテンサイに葉枯れ病(leaf blight)を引き起こすアルテルナリア属(Alternaria)(例えば、アルテルナリアブラシコラ(A.brassicola)、及びアルテルナリアソラニ(A.solani))、エンドウ、ヒヨコマメ、及び芝草にアスコチタ菌胴枯れ病(Ascochyta blight)を引き起こすアスコチタ属(Ascochyta)(例えば、アスコチタピシ(A.pisi))、ボトリチス属(例えば、ボトリチスシネレア)、マメ科及びニンジンに葉枯れ病を引き起こすセルコスポラ属(Cercospora)(例えば、セルコスポラキクチイ(C.kikuchii)、及びセルコスポラザエアマイディス(C.zaea‐maydis))、コショウ、マメ、トマトに炭疽病を引き起こすコレトトリクムスピーシーズ(Colletotrichum sp.)(例えば、コレトトリカムリンデムチアヌム(C.lindemuthianum))、ディプロディア菌穂腐れ(Diplodia ear rot)及び針葉樹の胴枯れ病(conifer blight)を引き起こすディプロディア属(例えば、ディプロディアマイディス)、ウドンコ病を引き起こすエリシフェ属(例えば、エリシフェグラミニス分化型グラミニス(E.graminis f.sp.graminis)、エリシフェネカター(E.necator)、及びエリシフェグラミニス分化型ホルデイ(E.graminis f.sp.hordei))、フザリウム菌根腐れ病(Fusarium root rot)、立ち枯れ病、及び胴枯れ病を引き起こす場合があるフザリウム属(Fusarium)(例えば、フザリウムニバレ(F.nivale)、フザリウムオキシスポルム(F.oxysporum)、フザリウムグラミネアルム(F.graminearum)、フザリウムソラニ(F.solani)、フザリウムモニルホルメ(F.monilforme)、及びフザリウムロセウム(F.roseum))、穀草類の立ち枯れ病(take‐all disease)を引き起こすガエウマノミセス属(Gaeumanomyces)(例えば、ガエウマノミセスグラミニス分化型トリチシ(G.graminis f.sp.tritici))、ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)(例えば、ヘルミントスポリウムツルシクム(H.turcicum)、ヘルミントスポリウムカルボヌム(H.carbonum)、及びヘルミントスポリウムマイディス(H.maydis))、炭腐病を引き起こすマクロホミナ属(Macrophomina)(例えば、マクロホミナファセオリナ(M.phaseolina)及びマガナポルテグリセア(Maganaporthe
grisea))、種々の樹木に癌腫病を引き起こすネクトリア属(Nectria)(例えば、ネクトリアヘアマトカッカ(N.heamatocacca))、ベト病を引き起こすペロノスポラ属(例えば、ペロノスポラマンシュリカ(P.manshurica)、ペロノスポラタバシナ(P.tabacina))、フォマ菌葉斑病(Phoma
leaf spot)/茎潰瘍を引き起こすフォマ属(Phoma)(例えば、フォマベタエ(P.betae))、ワタ根腐れ病としても知られるフィマトトリチュム菌根腐れ病(Phymatotrichum root rot)を引き起こすフィマトトリチュム属(Phymatotrichum)(例えば、フィマトトリチュムオムニボルム(P.omnivorum))、コショウ、ウリ、ナス、及びトマトにフィトフトラ菌根腐れ病(Phytophthora root rot)、又はフィトフトラ菌胴枯れ病(Phytophthora blight)を引き起こすフィトフトラ属(例えば、フィトフトラシンナモミ(P.cinnamomi)、フィトフトラカクトルム(P.cactorum)、フィトフトラファセオリ(P.phaseoli)、フィトフトラパラシチカ(P.parasitica)、フィトフトラシトロフトラ(P.citrophthora)、フィトフトラメガスペルマ分化型ソジャエ(P.megasperma
f.sp.sojae)、及びフィトフトラインフェスタンス)、ベト病を引き起こすプラスモパラ属(例えば、プラスモパラビチコラ)、ベト病を引き起こすポドスファエラ属(例えば、ポドスファエラレウコトリチャ(P.leucotricha))、穀草類、芝草、及び観賞用芝にさび病を引き起こすプッチニア属(Puccinia)(例えば、プッチニアソルギ(P.sorghi)、プッチニアストリイホーミス(P.striiformis)、プッチニアグラミニス分化型トリチチ(P.graminis
f.sp.tritici)、プッチニアアスパラギ(P.asparagi)、プッチニアレコンジタ(P.recondita)、及びプッチニアアラチジス(P.arachidis))、プチウム菌根腐れ病(Puthium root rot)を引き起こすプチウム属(Puthium)(例えば、プチウムアファニデルマツム(P.aphanidermatum))、オオムギの壊死病菌であるピレノホラ属(Pyrenophora)(例えば、ピレノホラトリチチレペンテンス(P.tritici‐repentens))、イネイモチ病を引き起こすピリクラリア属(Pyricularia)(例えば、ピリクラリアオリゼア(P.oryzea))、ピチウム菌根腐れ病(Pythium root rot)、立ち枯れ病、及び胴枯れ病を引き起こすピチウム属(Pythium)(例えば、ピチウムウルチムム(P.ultimum))、ジャガイモの黒あざ病、及びテンサイの乾腐病を引き起こすリゾクトニア属(Rhizoctonia)(例えば、リゾクトニアソラニ(R.solani)及びリゾクトニアセレアリス(R.cerealis))、白絹病を引き起こすスセロチウム属(Scerotium)(例えば、スセロチウムロルフシイ(S.rolfsii))、白カビ病(white mold disease)を引き起こすスクレロチニア属(Sclerotinia)(例えば、スクレロチニアスクレロチオルム(S.sclerotiorum))、葉斑病及び黒点病を引き起こすセプトリア属(Septoria)(例えば、セプトリアリコペルシシ(S.lycopersici)、セプトリアグリシネス(S.glycines)、セプトリアノドルム(S.nodorum)、及びセプトリアトリチシ(S.tritici))、黒根病を引き起こすチエラビオプシス属(Thielaviopsis)(例えば、チエラビオプシスバシコラ(T.basicola))、ブドウのウドンコ病を引き起こすウンシヌラ属(Uncinula)(例えば、ウンシヌラネカトル(U.necator))、リンゴ黒星病(apple scab)を引き起こすベンツリア属(Venturia)(例えば、ベンツリアイナエクアリス(V.inaequalis))、トマト、ジャガイモ、コショウ、及びナスに立ち枯れ病を引き起こすベルチシリウム属(Verticillium)(例えば、ベルチシリウムダリアエ(V.dahliae)、ベルチシリウムアルボアトルム(V.albo‐atrum))、などが挙げられる。ホップ組成物は、植物の菌類病若しくは病虫害の予防又は治療に有用である。
【0053】
[殺虫剤又は殺菌剤の製剤]
説明した殺虫剤又は殺菌剤組成物は、単離されたホップ酸を所望の農業的に許容されるキャリアと製剤することによって作製することができる。好適な一実施形態では、本明細書で開示されるホップ酸組成物は、農作物、草、果実及び野菜、芝生、樹木、及び/又は観賞用植物への局所適用のための殺虫剤又は殺菌剤として有用である。あるいは、本明細書で開示されるホップ酸は、菌類(例:ボトリチス属、エリシフェ属、レベイルラ属、スファエロテカ属、ラストリア属、ミクロスファエラ属、ポドスファエラ属、ペロノスポラ属、シュードペロノスポラ属、及びプラスモパラ属)、並びに害虫の幼虫、特にチョウ類の幼虫を含む植物の病害虫を死滅、忌避、又は抑制するためのスプレー剤、微粉末(dust)、粉末、又は他の水性物、霧状物、若しくはエアロゾルとして製剤することができる。
【0054】
本明細書で開示されるホップ酸組成物は、これを用いて、植物、植物生長物質、若しくは温室を予防的に処理することができ、あるいは、処理されるべき特定の環境において、標的となる害虫の幼虫若しくは菌類が特定されれば、その環境へ投与することもできる。適用法に関係なく、活性ホップ成分の量は、有効量で適用され、それは、例えば、抑制されるべき標的となる特定の害虫の幼虫又は菌類、処理されるべき特定の環境、場所、植物、作物、又は農地、環境条件、及び殺虫剤として又は殺菌剤として活性な組成物の適用の方法、割合、濃度、安定性、及び量などの因子に応じて変動する。製剤は、気候条件、環境的配慮、及び/又は適用の頻度、及び/又は害虫若しくは菌類による病虫害の重症度によっても変わることがある。組成物は、凍結乾燥、フリーズドライ、乾燥などの適切な手段により、又は、食塩水若しくは他の緩衝液などの水性のキャリア、媒体、又は適切な希釈剤中で、投与前に製剤することができる。製剤された組成物は、微粉末若しくは顆粒物、油(植物油若しくは鉱油)の懸濁液、水の懸濁液、若しくは油/水エマルジョンの懸濁液の形態であればよく、又は水和剤粉末であってもよく、又は農業用途に適する他のいずれのキャリア物質との組み合わせであってもよい。適切な農業用キャリアは、固体であっても液体であってもよく、本技術分野で公知である。農業的に許容されるキャリアとしては、これらに限定されないが、例えば、補助剤、不活性成分、分散剤、界面活性剤、粘着性付与剤、及びバインダーが挙げられ、これらは、殺虫剤又は殺菌剤の製剤技術において通常用いられるものである。このようなキャリアは、殺虫剤又は殺菌剤製剤の当業者に公知である。この製剤は、1種類以上の固体又は液体の補助剤と混合して、例えば、殺虫剤又は殺菌剤組成物を適切な補助剤と共に、従来の製剤技術を用いて均一に混合、ブレンド、及び/又は粉砕するなど、種々の手段によって作製することができる。
【0055】
ホップ酸若しくはその誘導体を含有する殺虫剤又は殺菌剤組成物は、本発明の組成物を、無機化合物(フィロケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩など)又は植物性物質(粉末状のトウモロコシ穂軸、もみ殻、及びクルミ殻など)などの種々の不活性物質と混合することによって作製してもよい。製剤は、展着補助剤(spreader‐sticker adjuvant)、安定化剤、他の農薬添加剤、又は界面活性剤を含有してもよい。液体製剤は、水性であっても非水性であってもよく、フォーム(foam)、懸濁液、乳化用濃縮物、などとして用いることができる。構成成分としては、生物学的薬剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤、又はポリマーを含むことができる。
【0056】
あるいは、ホップ酸を含有する新規な殺虫剤又は殺菌剤組成物は、化学合成又はホップからの精製によって作製され、次に、その後のフィールドへの適用のために製剤される。そのような薬剤は、未精製の溶解物、懸濁液、コロイドなど、あるいは、活性殺生製剤(例:殺虫製剤又は殺菌製剤)として製剤する前に精製、純化、緩衝液処理、及び/若しくはさらなる処理を行ってもよい。好ましい製剤は、以下に示す殺虫剤又は殺菌剤組成物のいずれか1つ以上を含有する。
【0057】
[油性懸濁剤又は油性フロアブル懸濁剤(Oil‐flowable suspension)]
一アプローチとして、ホップ誘導体は、油性供給系として提供される。油性ホップ誘導体混合物は、植物上に付着し、その後、そこで菌類又はチョウ類の幼虫などの害虫と接触し、これらを死滅させる。あるいは、組成物は、害虫の幼虫(例:チョウ類)又は幼虫を忌避する。油性放出基剤(oil release substrate)としては、植物油及び/又は鉱物油が挙げられる。一実施形態では、この基剤は、組成物の水中への分散を容易にする界面活性剤も含有する。そのような界面活性剤として、湿潤剤、乳化剤、分散剤、などが挙げられる。一実施形態では、殺虫剤又は殺菌剤組成物は、ホップ酸を含む油性フロアブル懸濁剤を含有する。
【0058】
[水分散性顆粒]
他の重要な実施形態では、殺虫剤又は殺菌剤組成物は、水分散性顆粒を含有する。この顆粒は、ホップ酸又はその誘導体を含有する。
【0059】
[粉末、微粉末、コロイド、及びセッケン製剤]
用途によっては、殺虫剤又は殺菌剤組成物は、水和剤粉末、微粉末、結晶製剤、又はコロイド濃縮物を含有する。本発明の粉末又は微粉末は、ホップ酸又はその誘導体を含有する。殺虫剤又は殺菌剤組成物のそのような乾燥形態は、湿潤後直ちに溶解するか、あるいは、制御放出、持続放出、又は他の時間依存方法によって溶解するように製剤することができる。ホップ酸又はその誘導体を含有するコロイドは、1ナノメートルから1マイクロメートルの範囲内である。コロイド組成物は、コロイドエアロゾル、コロイドエマルジョン、コロイドフォーム、又はコロイド懸濁液若しくは分散液を含む。ホップ酸若しくはその誘導体を含有する殺虫又は殺菌セッケン剤も提供される。前述の組成物はいずれも、標的である害虫に付着させるか、又はこれに摂取させることができ、これを用いて害虫の数の抑制、又は所定の環境下での害虫の広がりを抑制することができる。あるいは、組成物は、標的である菌類若しくはその胞子に付着又は接触する。
【0060】
[水性懸濁液]
用途によっては、殺虫剤又は殺菌剤組成物は、ホップ酸若しくはその誘導体の水性懸濁液を含む。そのような水性懸濁液は、適用前に希釈される濃縮ストック液として、あるいは、すぐに適用可能な希釈溶液として提供することができる。
【0061】
[エマルジョン]
本発明の殺虫剤又は殺菌剤は、エマルジョンとして提供することもできる。エマルジョン製剤は、油中水型(w/o)又は水中油型(o/w)として得ることができる。液滴の大きさは、ナノメートルスケール(コロイド分散液)から数百ミクロンまで様々である。通常、種々の界面活性剤及び増粘剤を製剤に混ぜ込むことで、液滴の大きさの変更、エマルジョンの一定化、及び活性成分の放出の変更が行われる。
【0062】
[多機能性製剤]
実施形態によっては、複数の病害虫の抑制が所望される場合(例:複数のチョウ類種、又は菌種)、本明細書に記載の殺虫剤又は殺菌剤製剤は、1種類以上の化学農薬(化学農薬、殺線虫剤、殺菌剤、殺ウイルス剤、殺微生物剤、殺アメーバ剤(amoebicide)、殺虫剤など)、及び/又は、1種類以上のホップ酸又はその誘導体を含んでもよい。この殺虫剤又は殺菌剤はまた、肥料、除草剤、凍害防止剤、界面活性剤、洗浄剤、殺虫剤セッケン(insecticidal soap)、休眠油(dormant oil)、ポリマー、及び/又は、製剤の一回の適用後に標的区域の長期間にわたる薬剤供給を可能とする持続放出性若しくは生分解性キャリア製剤、などの他の処理剤と組み合わせて用いてもよい。さらに、製剤は、摂食可能な餌として作製するか、又は捕虫器に合わせて作製し、標的である害虫(例:チョウ類の幼虫などの害虫の幼虫)による殺虫剤製剤の摂食又は摂取を可能としてもよい。殺虫剤又は殺菌剤を適用するための他の装置としては、条片(strip)、及びマルチなどの他のキャリアが挙げられる。
【0063】
本発明の殺虫剤又は殺菌剤組成物は、単独で、又は、1種類以上のさらなる殺虫剤、農薬、化学薬品、肥料、又は他の化合物と組み合わせて、環境地域へ連続的に若しくは同時に用いてもよい。
【0064】
[適用の方法及び効果的な割合]
本発明の殺虫剤又は殺菌剤組成物は、標的である害虫(例:チョウ類)又は菌類の環境、通常は、保護すべき植物若しくは作物の葉へ、従来の方法、好ましくは散布によって適用される。適用の強さ及び期間は、特定の病害虫、処理される作物、及び特定の環境条件に特異的な条件に従って設定されることになる。キャリアに対する活性成分の比率は、通常、殺虫剤組成物の化学的性質、溶解度、及び安定性によって決まる。
【0065】
粉末散布(dusting)、少量散布(sprinkling)、土壌浸漬、土壌注入、種子コーティング、葉面散布、通気(aerating)、ミスティング(misting)、アトマイジング(atomizing)、燻蒸、及びエアロゾルなどの他の適用技術も使用可能であり、例えば、根又は幹への病虫害を引き起こす害虫などの特定の状況下や、被害を受けやすい植物若しくは観賞用植物へ適用する場合に必要となる場合もある。これらの適用手順も、当業者に公知である。
【0066】
環境的適用、全体的適用、局所的適用、又は葉面への適用に用いられる殺虫剤又は殺菌剤組成物の濃度は、特定の製剤の性質、適用の手段、環境条件、及び殺虫活性若しくは殺菌活性の度合いに応じて大きく変動することになる。通常は、ホップ酸(例:アルファ酸、ベータ酸、若しくはこれらの組み合わせ)を含む殺虫剤又は殺菌剤組成物は、適用された製剤中に、重量若しくは容量で、少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は99%の濃度で存在する。ホップ酸若しくはその誘導体の乾燥製剤の場合は、重量で、約1%から約99%、若しくはそれ以上の組成物(例:1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%)、又は重量でそれ以上の活性成分である。
【0067】
本明細書に記載の殺虫剤又は殺菌剤製剤は、特定の植物又は標的地域に対して、必要に応じて、1回以上の適用によって投与することができ、ヘクタールあたりのフィールドへの典型的な適用割合は、活性成分で約50、100、200、300、400、又は500g/ヘクタールの範囲であり、あるいは、600、700、800、900、又は1000g/ヘクタールを使用してもよい。特定の場合では、殺虫剤又は殺菌剤製剤の標的地域への適用は、活性成分で、約1000、2000、3000、4000、5000g/ヘクタール、さらには、7500、10000、若しくは15000g/ヘクタールの適用割合がより望ましい。
【0068】
[ホップ酸を含む殺虫剤及び殺菌剤のスクリーニング]
上述のように、ホップ酸又はその誘導体は、例えば、害虫(例:チョウ類)若しくは他の害虫の成長、繁殖、又は脱皮の阻害、又は、害虫の成虫若しくは幼虫(例:チョウ類)の忌避に有用である。そのようなホップ酸若しくはその誘導体は、例えば、害虫の植物への病虫害を阻害するのに十分なレベルで植物に異所的に適用することができる。ホップ酸若しくはその誘導体の適用又は投与によって植物にもたらされる害虫からの保護のレベルの評価は、従来の方法及びアッセイに従って決定される。
【0069】
一実施形態では、植物は、賦形剤中に存在するホップ酸若しくはその誘導体と接触させられ、ホップ酸若しくはその誘導体は、その植物内若しくは植物上(例:根、葉、茎、果実、花、若しくは栄養組織の内部又はその表面上)に存在する。チョウ類の幼虫などの寄生害虫を、制御条件下(例えば、標準レベルの温度、湿度、及び/又は土壌条件)にて植物に導入する。ホップ酸若しくはその誘導体と接触させられていないコントロール植物上にて害虫が成長し繁殖するのに十分な期間のインキュベーションの後、害虫又はその後代について、その成長、生存、又は繁殖のレベルを従来の実験方法に従って評価する。例えば、害虫又はその後代の数を、導入から7日間、14日間、21日間、若しくは28日間、又はそれより長い期間にわたって24時間ごとに記録する。このようなデータから、害虫の阻害レベルを判定する。害虫の孵化、成長、生存、又は繁殖を阻害するホップ酸が、本発明では有用と考える。別の実施形態では、植物の被害レベルを、ホップ酸若しくはその誘導体と接触させられた植物について、ホップ酸若しくはその誘導体と接触させられていないコントロール植物と比較した形で、標準的な方法に従って判定する。植物の被害を阻止する、又は市場価値のある果実若しくは野菜の量を増加させるホップ酸若しくはその誘導体が、本発明の方法では有用と考える。スクリーニング法を用いて、菌類の成長、増殖、生存、又は伝染を効果的に阻害するホップ酸若しくはその誘導体の濃度を識別する。
【0070】
[殺菌活性のスクリーニング]
ホップ酸若しくはその誘導体を含む産物を用いて、菌類による病虫害の抑制、植物若しくはフィールドにおける菌類群の成長の低下、一定化、若しくは遅延、又は菌類の成長、生存、繁殖、若しくはその他の生物学的機能の阻害を行う。病虫害を測定する方法は、本技術分野で公知である。数多くのパラメータを、植物若しくは植物群に存在する菌類による病虫害のレベルを示す指標とすることができ、すなわち、植物サンプルに存在する菌類による被害の量、菌類による病虫害を導入されたフィールドについて、コントロールフィールドと比較して、処理されたフィールドから得られた市場価値のある果実の量、であり、従って、果実の大きさ、重さ、若しくは損傷の存在を病虫害のもう一つの尺度として用いることができ、感染したフィールドで生産された果実の量は、健全なフィールドでの生産量よりも少ない場合があ、従って、果実の生産量が、病虫害のレベルの一つの尺度として使用できる場合もあり、そして、最後に、激しい病虫害は、市場価値のある果実を相当量失う結果となり得る。一つの実施形態では、本発明の殺菌剤は、植物、植物群、若しくはフィールドの病虫害のレベルを、少なくとも10%、25%、50%、75%、又はさらには100%の割合で低減する。別の実施形態では、本発明の殺菌剤は、菌類の成長を、少なくとも50%、60%、又は、さらには75%若しくは100%の割合で阻害又は妨害する。スクリーニング法を用いて、菌類の成長、増殖、生存、又は伝染を効果的に阻害するホップ酸若しくはその誘導体の濃度を識別する。
【0071】
[殺虫活性のスクリーニング]
害虫若しくは菌類による病虫害の抑制に現在用いられている市販の製品は、人及び環境に有害な影響を及ぼす場合がある。従来の殺虫剤又は殺菌剤とは対照的に、本発明の組成物は、ホップ由来の安全な天然の産物を含有している。一態様では、その化合物若しくは誘導体は、単離された化合物である(例:アルファ酸、ベータ酸、若しくはこれらの組み合わせ)。ホップは、ビールの風味付けに何世紀にもわたって使用されてきたものであり、従って、ホップ誘導体を含む製剤は一般に安全である。従来の殺虫剤又は殺菌剤とは対照的に、本発明の殺虫剤又は殺菌剤組成物は、人や環境に有害な影響を及ぼすことがなく、その残留物は、食用の農産物に存在する場合でも、毒性に関する懸念は生じさせない。
【0072】
本発明の殺虫剤組成物は、害虫の生物学的機能を停止又は破壊するのに効果的な濃度のホップ誘導体を含有する。一アプローチでは、害虫(例:チョウ類)の幼虫を種々の濃度のホップ誘導体に曝露し、前述の基準のいずれかを用いて植物の病虫害を低減する濃度を識別する。スクリーンニングアッセイを用いて、繁殖可能にまで成長する幼虫の数を減少させる本発明の組成物の濃度を決定する。好ましくは、その減少は、少なくとも25%、50%、75%、85%、95%、又は100%の割合である。あるいは、本発明の組成物は、成虫の害虫(例:チョウ類)又は幼虫の害虫を忌避することによって、病虫害を低減する。一実施形態では、本発明の組成物は、本発明の組成物で処理した植物上に卵を産み付けるチョウ類の成虫の数を減少させ、処理植物上で孵化する卵の数を減少させ、処理植物上での幼虫の成長を妨害し、チョウ類の幼虫若しくは成虫を忌避し、あるいはそれら以外にチョウ類に関連する処理植物への被害を低減する。
【0073】
[ホップ誘導体]
ホップ誘導体は、植物のホップ(フムルスルプルス)内に天然に存在する化合物か、又は化学的に誘導された(自然の生合成プロセス(例:生物の代謝(例:哺乳類、植物、細菌))あるいは人が介在する合成プロセス(例:化学合成)による)化合物である。本発明の組成物は、ホップ由来の1種類以上の化合物を含有している。特に重要であるのは、ホップ酸である。ホップは、2種類の主たる有機酸類である、アルファ酸とベータ酸を含有している。ホップ酸は、ビールの製造に用いられるホップの苦味酸成分である。アルファ酸には、フムロン、コフムロン、及びアドフムロンという三大類似体が、ベータ酸には、ルプロン、コルプロン、及びアドルプロンという主に三大類似体が存在する。アルファ酸及びベータ酸に存在する類似体の割合は、種類によって異なる。従って、ホップ誘導体及びホップ産物は、通常、これらの類似体の1種類又は混合物を含有する。類似体の存在割合は、誘導体又は産物の作製に用いられるホップの種類によって異なる。アルファ酸及びベータ酸は、天然のホップからの精製によっても、また従来の方法による化学合成によっても作製することができる。典型的なホップ誘導体としては、アルファ酸、ベータ酸、ヘキサヒドロベータ酸、ローイソアルファ酸、イソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸、ヘキサヒドロイソアルファ酸、ローイソアルファ酸のマグネシウム塩、及びベータ酸のマグネシウム塩が挙げられる。ホップ誘導体を含む組成物は、市販もされている。ホップ誘導体を含有するジョン・I・ハース社(John I.Haas,Inc.)の製品として、Betacide、Redihop(登録商標)、Isohop(登録商標)、Tetrahop Gold(登録商標)、Hexahop Gold(登録商標)、MgRIAA、及びMgBetaが挙げられる。これらの製品中の活性成分は、各々、アルファ酸、ベータ酸、ローイソアルファ酸(RIAA)、イソアルファ酸(IAA)、テトラヒドロイソアルファ酸(THIAA)、ヘキサヒドロイソアルファ酸(HHIAA)、ローイソアルファ酸のマグネシウム塩(MgRIAA)、及びベータ酸のマグネシウム塩(MgBA)である。これらの製品及び/又はホップ誘導体は、通常、所望の濃度に希釈して本発明の方法に用いられる。
【0074】
植物の抽出物は、植物(例:ホップ)からの化合物の精製によく用いられる。抽出物は、乾燥、及び、それに続くその乾燥物の切断又は粉砕によって作製することができる。「抽出物(extract)」という用語は、ホップなどの植物の重要成分の濃縮製剤を意味する。通常、抽出物は、植物を乾燥させ、粉末状にすることで作製される。任意に、植物、乾燥植物、又は粉末化植物を、溶液中で煮沸させる。抽出物は、液体状で用いてもよく、又は他の液体若しくは固体のハーブ抽出物と混合してもよい。あるいは、抽出物は、液体状からさらに固体抽出物を析出させることによって得ることができる。次に、適切に選択された溶媒、通常、エタノール/水混合物、メタノール、ブタノール、イソブタノール、アセトン、ヘキサン、石油エーテル、又は他の有機溶媒を利用して、浸漬法(maceration)、浸透法(percolation)、再浸透法(repercolation)、向流抽出法、タービン抽出法(turbo‐extraction)、又は二酸化炭素超臨界(温度/圧力)抽出法によって抽出プロセスを実施することができる。次に、抽出物をさらに、空気乾燥法、スプレー乾燥法、真空オーブン乾燥法、流動層乾燥法、又は凍結乾燥法によって蒸発させ、それによって濃縮することにより、抽出産物を得ることができる。
【0075】
粗抽出物は、本明細書で述べるように、殺虫活性又は殺菌活性についての試験に供される。観察された効果に関連する化学成分を単離するために、殺虫活性又は殺菌活性を有する陽性である主要な抽出物(positive lead extract)のさらなる分画が必要である。従って、抽出、分画、及び精製のプロセスの目的は、害虫(例:チョウ類)又は菌類の生物学的機能を破壊する粗抽出物内の化学的実体を注意深く同定、及び識別することである。そのような不均一な抽出物の分画及び精製の方法は、本技術分野で公知である。所望する場合は、殺虫剤又は殺菌剤として有用であることが示された化合物は、本技術分野で公知の方法に従って化学的に修飾される。
【0076】
候補となる化合物の化学合成には、多くの方法が使用可能である。そのような化合物は、容易に入手可能な出発物質から、当業者に公知の標準的な合成技術及び方法を用いて合成することができる。本明細書に記載の識別された化合物の合成に有用である、合成化学における転換及び保護基を用いる方法(保護及び脱保護)は、本技術分野で公知であり、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers
(1989)、 T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups
in Organic Synthesis, 2nd ed., John Wiley and Sons (1991)、 L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic
Synthesis, John Wiley and Sons (1994)、 L. Paquette, ed.,
Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)、及びM. Verzele and D. De Keukeleire, Chemistry and Analysis of Hop and
Beer Bitter Acids, Elsevier: Amsterdam
(1991) に記載のものなどが挙げられる。化学合成されたアルファ酸及びベータ酸は、反応混合物から分離し、カラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、又は再結晶などの方法によりさらに精製することができる。当業者であれば理解することができるように、本明細書の化合物を合成するさらなる方法は、当業者に明らかであろう。さらに、所望の化合物を得るために、種々の合成工程は、その配列又は順序を変えて実施してもよい。
【0077】
本発明の化合物は、1若しくは2個の不斉中心を有していてもよく、従って、ラセミ体及びラセミ体混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、並びにジアステレオマー混合物として存在してもよい。これらの化合物のこのような異性体の形態はすべて、明確に本発明に含まれる。本発明の化合物は、複数の互変異体の形態として表されることもあり、そのような場合は、本発明は、明確に、本明細書に記載の化合物のすべての互変異体の形態を含む(例:環系のアルキル化によって複数の部位がアルキル化される場合があり、本発明は、明確に、そのような反応生成物のすべてを含む)。そのような化合物のこれらの異性体の形態はすべて、明確に、本発明に含まれる。本明細書に記載の化合物の結晶の形態はすべて、明確に、本発明に含まれる。本明細書で用いるように、本明細書に記載の化学式の化合物を含む本発明の化合物は、誘導体を含むものとして定められる。誘導体には、所望の特性を高めるために適切な官能性を付与することによって修飾された本発明の化合物を含む。
【0078】
本発明の化合物の許容される塩としては、許容される無機及び有機の酸並びに塩基由来のものが含まれる。適切な酸の塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ドセシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2‐ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2‐ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3‐フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアネート、トシレート、及びウンデカン酸塩が挙げられる。シュウ酸などのその他の酸を、本発明の化合物及びその許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の作製に用いてもよい。適切な塩基から誘導される塩はとしては、アルカリ金属(例:ナトリウム)、アルカリ土類金属(例:マグネシウム)、アンモニウム、及びN‐(アルキル)塩が挙げられる。本発明は、本明細書に開示する化合物のいずれの塩基性窒素含有基の四級化も想定している。そのような四級化により、水若しくは油への溶解性又は分散性を持つ生成物を得ることができる。
【0079】
害虫(例:チョウ類)の幼虫又は菌類を効果的に死滅するために、本明細書で述べたものよりも少ない又は多い投与量を必要とする場合がある。具体的な投与量及び処理計画は、本明細書で述べるように、実験的に決定される。本発明の組成物は、害虫(例:チョウ類)又は菌類による病虫害の発生の予防、害虫(例:チョウ類)又は菌類による既に発生した病虫害の治療、及び過去に病虫害に対する治療を行った植物群又はフィールドの健全性の維持にも有用である。
【0080】
[ホップ酸の水性組成物]
ホップ酸の安定な水溶液は、本明細書、並びに各々参照することで本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0220914号、同第2003/0129270号、及び同第2002/0051804号の各明細書に記載されているような適切な濃度及びpHを選択することにより作製することができる。
【0081】
ホップ酸製剤は、植物の病害虫に対する処理製剤として有用である。本発明は、安定した水性エマルジョンを作製するために、水で希釈された、1%、5%、10%、30%、50%、60%、75%、85%、及び95%のホップ酸溶液を提供する。ホップ酸の安定水性溶液は、ホップ酸の濃度及びpHを調節することによって作製することができる。さらに、これらの溶液を、長時間分離することのない安定な水性エマルジョン(すなわち、水中のコロイド懸濁液)へ変換することが可能であり、これは、病害虫抑制のための植物への散布用にエンドユーザーが必要に応じてエマルジョンを水で希釈することができるという追加利点がある。エマルジョンは安定しているが、硬質水で希釈した場合に、膜又は残渣を形成しやすいという面もある。このような膜形成は、散布器を詰まらせる場合がある。この問題は、処理溶液に、およそ0.1%、0.25%、0.5%、1%、2%、若しくはそれ以上の濃度で液体セッケンを添加することによって解消することができる。
【0082】
[キット]
本発明は、チョウ類又は菌類による病虫害の治療又は予防のためのキットを提供する。一実施形態では、キットには、病虫害の場所(例:植物又はフィールド)への供給に適する形態の有効量のホップ誘導体を含有する組成物が含まれる。実施形態によっては、キットには、殺虫剤又は殺菌剤を含む容器が含まれ、そのような容器は、箱、アンプル、ビン、バイアル、チューブ、袋、小袋、ブリスターパック、又は他の本技術分野で公知の適切な容器形態であってよい。これらの容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、又は殺ダニ剤の保持に適する他の材料から作製されるものであってよい。
【0083】
必要に応じて、本発明の殺菌剤又は殺虫剤は、病虫害の場所へ投与するための説明書と共に提供される。説明書には、一般に、チョウ類若しくは菌類による病虫害の治療又は予防のための組成物の使用についての情報が含まれる。他の実施形態では、説明書には、殺虫剤若しくは殺菌剤の説明、害虫若しくは菌類による病虫害の治療又は予防のための投与計画及び投与、注意事項、警告事項、調査研究の説明、及び/又は参考資料、のうち少なくとも一つが含まれる。説明書は、容器(存在する場合)に直接印刷してもよく、又は、容器に貼り付けられたラベルでもよく、又は容器内若しくは容器と共に提供される別のシート、パンフレット、カード、若しくはフォルダーであってもよい。
【実施例】
【0084】
本発明の組成物は、植物、植物群、又はフィールドにおける害虫による病虫害の予防又は治療に有用である。米国特許出願公開第2005/0220914号、同第2003/0129270号、及び同第2002/0051804号の各明細書に記載のように、ホップ酸組成物は、ポドスファエラマクラリス(Podosphaera macularis)により引き起こされるホップのフムルスルプルス上のウドンコ病、ジャガイモのソラヌムツベロスム(Solanum tuberosum)上のフィトフトラインフェスタンス、又はブドウのビチスビニフェラ(Vitis vinifera)上のウドンコ病微生物であるウンシヌラネカトル(Uncinula necator)の阻害に有用である。本明細書で報告するように、本発明の組成物は、一般に、経済的に重要である農業作物及び鑑賞用植物に被害を与える菌類微生物又は害虫の幼虫の抑制に有用である。
【0085】
<実施例1:ボトリチスの抑制>
ボトリチスは、植物のキャノピーの葉と茎の両方、並びに生育中の果実にもコロニーを形成する能力があるため、フィールド条件下におけるフレッシュマーケットトマトでの抑制が非常に難しい日和見性植物病原性菌である。さらに、ボトリチスは、土壌レベルで茎基部の病変部として現れて植物を帯状に取り囲む場合があり、それによって植物が完全に枯れてしまい、収穫量が減少する。ボトリチスは、このような特徴のため、散布型の殺菌剤による抑制は非常に難しく、実験条件下において、いくつかの中での評価を行うことはさらにより難しい場合もある。しかしながら、この実験により、ホップ酸及びその誘導体の適用を用いて、影響を受けやすいフレッシュマーケットトマト栽培へのボトリチスシネレアの病虫害を治療又は予防することができることが確立された。
【0086】
影響を受けやすいトマトの木に水を噴霧し、病害の発生を促進した。これらの研究は、通常の沿岸条件も胞子の生存を促進するカリフォルニア州サンルイスオビスポ(San Luis Obispo)にて行った。研究は、0.01エーカーで行った。区画の大きさは、6.67フィート×20フィート、列の間隔は、3.33フィート、植物の間隔は18インチである。植物は、BetaCide、及びポジティブコントロールであり、クロロタロニル(テトラクロロイソフタロニトリル82.5%)を含有する農薬用化学殺菌剤Bravo Ultrexによる処理を4回受けた。BetaCideは、10%v/vで、7日間のスケジュールで適用した。Bravo Ultrexは、1.4lb/a(ポンド/エーカー)で、7日間のスケジュールで適用した。2ヶ所の未処理コントロール区画の条件もモニタリングした。
【0087】
処理の適用は、CO2バックパックスプレーヤー(backpack sprayer)を用いて行った。このスプレーブームは、#25スピナーを有する6個のD4ノズルを搭載しており、40〜50psiの圧力で作動させた。処理は、80〜100GPA(ガロン/エーカー)の希釈度で適用した。ブームサイズは、確実に葉面全体がカバーされるように、トマトの成長段階に合わせて調節した。図1の図面は、使用したブームを示す。
【0088】
区画は、区画ごとの病害の発生率とその重症度を判定することで評価した。ボトリチスによる病虫害の発生率は、区画あたりのパーセントで評価した(図2)。
【0089】
発生率は、区画あたりの感染した植物のパーセントを反映している。重症度は、被害を受けた植物の面積のパーセントを示す(図3)。病害の発生率は、区画ごとに無作為に抽出した20個の果実のうちボトリチスシネレアが存在する果実の個数を計数することによっても評価した(図4)。収穫量の評価は、市場価値のある果実の計数と、ボトリチスに感染した果実のパーセントの算出とから構成した。植物毒性を研究全体にわたって評価した。表2〜5、及び図2〜5は、これらの研究結果を示す。
【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

【0094】
これらの条件下にて、10週間の研究の最後には、未処理のコントロールフィールドで、植物の58.75%がボトリチスシネレアに感染した。対照的に、BetaCideの処理により、ボトリチスの発生率が、未処理のコントロール区画と比較して、50%以上低下した。ホップ酸で処理した区画は、実験したその他の殺菌剤プログラムよりも、ボトリチス発生数が低かった。植物サンプルをおよそ週1回の間隔で採取し、各区画でのボトリチス感染植物の割合を調べた。ボトリチスによる病害は、BetaCideにより、全時点において減少した。BetaCide処理区画は、生産された市場価値のある果実数において、測定した他のすべての処理区画を上回った。BetaCideは、ボトリチスシネレアに対して効力を有し、ボトリチスの抑制に使用された場合、他の病害を抑制するという追加利点を有する可能性がある。
【0095】
<実施例2:チョウ類の抑制>
本研究は、フレッシュトマトのチョウ類害虫の抑制に対する10%の割合でのBetaCideの効力を判定するために、カリフォルニア州サンルイスオビスポにあるPacific Ag Researchの研究農場において2005年の夏に行った。Avaunt及びSuccessをポジティブコントロールとして用いた。BetaCide、Avaunt、及びSuccessによる結果を、2ヶ所の未処理コントロール区画と比較した。害虫による負荷は中程度であった。殺虫剤は、7〜15日ごとに、4回適用した。BetaCideは、10%(v/v)の水溶液として適用し、Avauntは、167g/haで適用し、Successは、208ml/haで適用した。処理の適用は、CO2バックパックスプレーヤーを用いて行った。スプレーブームは、#25スピナーを有する5個のD4ノズルを搭載しており、40〜50psiの圧力で作動させた。処理は、65~85GPAの希釈度で適用した。ブームサイズは、確実に葉面全体がカバーされるように、植物の成長段階に合わせて調節した。図6の図面は、使用したブームを示す。
【0096】
収穫時におけるトマト果実に対する摂食被害の割合を表6及び図7に示す。植物は、植物毒性についてもパーセントで評価した。
【0097】
【表6】

【0098】
表6及び図7に示すように、BetaCideは、未処理のコントロールと比較して、チョウ類の幼虫による被害を著しく低減した。実際、BetaCideは、使用した化学農薬と同程度の効果を示した。未処理の区画における摂食被害率は8〜9%であった。驚くべきことに、10%のBetaCideの処理により、摂食被害率がわずか2〜3%まで低減された。これらの結果は、BetaCideが、農業的に重要である作物上でのチョウ類害虫の抑制に効果的であったことを示している。これらの研究中、植物毒性は観察されなかった。
【0099】
<実施例3:ブロッコリーにおけるチョウ類の抑制>
BetaCideによるブロッコリーにおける複数のチョウ類害虫種の抑制について、カリフォルニア州サンタマリアにて、2005年の夏に評価を行った。このシーズン中、幼虫群が散発的に発生していた。従って、適用期間後に幼虫による葉の摂食を評価することによって、BetaCideがチョウ類の抑制に効果的であるかどうかを調べるという方法を用いた。殺虫剤は、4週間の間に15日間隔で2回ずつ、各区画に適用した。以下に示す製剤を用いた。Success 5fl.oz/a、 Crymax 2lb/a、 セッケン0.5% v/vを含むBetaCide 10% v/v、及びAvaunt 3.43oz/a。セッケンは、液体ハンドソープ(Renownはピンクハンドソープであった。イリノイ州ディアフィールド)を使用した。処理の適用は、CO2バックパックスプレーヤーを用いて行った。スプレーブームは、#25スピナーを有する6個のD4ノズルを搭載しており、40〜50psiの圧力で作動させた。処理は、75GPAの希釈度で適用した。ブームサイズは、確実に葉面全体がカバーされるように、植物の成長段階に合わせて調節した。評価は、区画ごとにランダムに選択した6本の植物上でのチョウ類害虫の識別と計数で構成した。区画のサイズは、3.33フィート×15フィート、列間隔は、3.33フィート、植物間隔は12インチであった。以下の害虫が識別された。コナガ(プルテラキシロステラ(Plutella xylostella))、イラクサキンウワバ(トリコプルシアニ(Trichoplusia ni))、及びインポーティドキャベッジウォーム(ピエリスラパエ(Pieris rapae))。植物は、区画あたりのパーセントで表される摂食被害の発生率についても評価した。摂食被害の重症度は、被害を受けた植物あたりのパーセントで評価した。結果は未処理のコントロール区画と比較した。これらの研究の結果を表7〜14及び図8〜15に示す。
【0100】
【表7】

【0101】
【表8】

【0102】
【表9】

【0103】
【表10】

【0104】
【表11】

【0105】
【表12】

【0106】
【表13】

【0107】
【表14】

【0108】
これらの結果は、広く用いられている代替農薬製品と比較して、BetaCideが害虫の抑制に優れていることを示している。BetaCide製品は、本実験で行った2回の適用で、植物の被害をおよそ50%抑制し、一方、Bacillus製品は、同期間に、23%の抑制しか得られなかった。標準的な化学処理であるSuccess及びAvauntでは、それぞれ、64%及び92%であった。
【0109】
<実施例4:市場価値のある果実への害虫被害の抑制>
本研究は、2005年の夏に、カリフォルニア州ファイヤボー(Firebaugh)に近いカリフォルニアのセントラルバレーで行った。以下の殺虫剤を、7〜10日の間隔で5回適用した。BetaCide 10%v/v、Avaunt 167g/ha、Avaunt 250g/ha、Success 208ml/ha、Success 417ml/ha、及び未処理のコントロール。処理の適用は、CO2バックパックスプレーヤーを用いて行った。スプレーブームは、#25スピナーを有する6個のD4ノズルを搭載しており、40psiの圧力で作動させた。処理は、80GPAの希釈度で適用した。ブームサイズは、確実に葉面全体がカバーされるように、植物の成長段階に合わせて調節した。使用したブームを図1に示す。植物は、害虫及び果実への摂食被害の存在について評価した。これらの実験の結果を表15及び表16に示す。収穫時に、市場価値のある果実を計数し、摂食被害のパーセントを評価した(図16及び図17)。
【0110】
【表15】

【0111】
【表16】

【0112】
未処理区画では、全摂食被害は3%未満であり、害虫抑制について統計解析を行うのに必要な数よりも少なかった。本研究では、未処理区画及びその他の処理に対して、BetaCideの使用による市場価値のある果実の収穫量に測定可能な改善が見られた。
【0113】
<実施例5:水性ホップ酸組成物の作製>
ベータ画分を用いて、10%のベータ酸水溶液を作製した。「ベータ画分」という用語は、ホップ抽出物の油状、ワックス状、樹脂状の部分を意味し、ホップ抽出物を苛性水で洗浄して大部分のアルファ酸を除去することで得られる。ベータ画分が含有する大部分は、ベータ酸、樹脂分、油分、及びワックス分である。これは、ベータ酸油とも称される。ベータ画分は、そのまま用いてもよく、又は、苛性水で洗浄して、HPLC分析によるベータ酸に対するアルファ酸の比率を0.05以下となるようにベータ画分中のアルファ酸濃度を低下させてもよい。攪拌を続けながらベータ画分の温度を60℃まで上昇させ、KOHの形で苛性を添加してpHを10〜11とした。まずHPLC分析でベータ画分のベータ酸の容量を測定した後、水相中のベータ酸濃度が10%〜50%の間となるような体積の60℃の水を攪拌中に添加した。必要に応じて、60℃でpHを10〜11に調節した。算出した水の体積からpHの調節のために添加したKOHの体積を差し引く必要があった。また、60℃が最適であるが、55〜70℃の温度は許容範囲であった。攪拌を止め、混合物を少なくとも45分間静置させ、その間、溶液の温度を60℃に保った。次に、水性ベータ酸相を樹脂相から分離した。水性ベータ酸相を、HPLCで測定したベータ酸濃度10%まで希釈し、一方、温度は60℃に、pHは10〜11に保った。水相を1〜13℃まで冷却し(攪拌は任意)、少なくとも2時間静置させた。次に、溶液をデカント又はろ過した。
【0114】
[スモールスケール10%ベータ酸水溶液]
HPLCによる50%のベータ酸を含有するベータ画分500gを60℃まで加熱した。加熱により温度を60℃に維持して攪拌を行いながら、およそ250mLの20%KOHを添加してpHを10.7まで持っていった。攪拌を止め、混合物を一晩静置させた。翌朝、樹脂状の画分を除去し、水性画分を60℃まで加熱してHPLCで分析した。水及び20%KOHを添加してベータ酸濃度を10%、pHを10.7とした。このベータ酸水溶液を一晩5℃まで冷却し、翌朝ろ過した。
【0115】
[ラージスケール10%ベータ酸水溶液の例]
60℃のベータ画分1000kgを温水ジャケット付きタンクへ投入した。攪拌を続けながら、およそ120ガロンの20%KOHを、水相のpHが10.7に達するまで添加した。攪拌を停止したが、加熱は続けて60℃に維持し、この混合物を一晩静置させた。水層を、ステンレス製の加熱ジャケット付きタンクへ送液し、HPLCによるベータ酸濃度10%まで脱イオン水を用いて希釈した。温度及びpHを、それぞれ60℃及び10.7に維持した。タンクの加熱を止め、生成物を10℃まで冷却し、次に、一晩静置させた。混濁沈澱物を回収タンクへくみ出し、透明なベータ酸溶液をろ過した。
【0116】
[10%アルファ酸水溶液の作製]
超臨界CO2抽出物を用いて、10%アルファ酸水溶液を作製した。ホップ抽出物を、HPLCによる濃度3〜20%のアルファ酸水溶液を作製するように計算した体積の水へ投入した。アルファ酸濃度は8%未満が最適であった。この濃度では、ベータ酸の水相への溶解度が低下した。持続的に攪拌を行いながら、温度を50〜70℃まで上昇させ、pHを6〜8に調節した。pHは7〜8が最適であった。次に、抽出物溶液を少なくとも45分間静置させた。ベータ酸、油分、及びワックス分を含有する樹脂状の画分を除去し、アルファ酸水溶液をデカントした。温度を60℃まで、pHを7〜9まで上昇させた。この溶液をHPLCで分析した。アルファ酸濃度が10%以上になった場合は、水を添加して濃度を10%とした。この溶液を1〜19℃まで冷却し、ろ過又はデカントした。
【0117】
アルファ酸濃度が10%未満の場合は、水溶液を60℃で酸性化し(H2SO4又はH3PO4で十分であった)、アルファ酸を溶液から抽出した。アルファ酸を60℃の新しい水で洗浄し、少なくとも45分間静置させた。水を捨て、計算した体積の60℃の新しい水を添加した。体積は、HPLCによるアルファ酸の濃度10%を生成するように、pH調節に必要な苛性の体積も考慮して計算した。アルファ酸溶液を60℃まで加熱し、必要に応じて、KOH溶液でpHを7〜9まで上昇させた。この水溶液を1〜19℃まで冷却し、ろ過又はデカントした。
【0118】
[スモールスケール10%アルファ酸水溶液の例]
持続的に攪拌を行いながら、超臨界CO2抽出物800gを2700mLの脱イオン水に添加し、温度を60℃まで上昇させた。およそ300mLの20%KOHを添加してpHを7.7とした。この溶液を一晩静置させた。ベータ酸、油分、及びワックス分を含有する樹脂状の画分を除去し、アルファ酸水溶液をデカントして一晩7℃まで冷却した。次に、低温である間にこの水溶液をろ過し、結晶化したベータ画分をすべて除去し、60℃に戻し、攪拌を続けながらpHが2.5となるまで20%H2SO4を添加した。樹脂状のアルファ酸を分離し、60℃の新しい脱イオン水で洗浄した。アルファ酸を2000mLの脱イオン水に添加し、温度を60℃に持っていった。およそ300mLの20%KOHを添加してpHを8.0まで上昇させ、この溶液をHPLCで分析した。脱イオン水及び20%KOHを添加し、濃度及びpHをそれぞれ10%及び8.9とした。この溶液を一晩5℃まで冷却し、ろ過した。
【0119】
[10%ベータ酸及びアルファ酸水溶液からのエマルジョンの作製]
10%ベータ酸水溶液及び10%アルファ酸水溶液は、沈澱物がなく透明である。これらは、色、透明度、及び粘度(consistency)の点で、薄いアイスティーに類似している。これらの10%溶液を水道水又は井戸水で希釈すると、パイナップルジュースのような外観の安定した水性エマルジョンが形成され、これらは、数日間貯蔵後も全く分離しない。これらは非常に安定しており、1:16まで希釈しても沈澱物を形成しない。さらに、これらの溶液は水で希釈すると、pHが約0.5単位低下するが、沈澱を引き起こすほどではない。
【0120】
<その他の実施形態>
上記の説明から、本明細書に記載の発明に変更及び変形を行い、種々の使用法及び条件に適合させることが可能であることは明らかであろう。そのような実施形態も、以下の特許請求の範囲内である。
【0121】
本明細書での可変項目のいかなる定義においても、要素のリストの列挙は、列挙した要素のいかなる一要素又は組み合わせ(若しくはサブ組み合わせ)としてのその可変項目の定義をも含む。本明細書での実施形態の列挙は、いかなる一実施形態又は他のいかなる実施形態若しくはその一部分との組み合わせとしての実施形態をも含む。
【0122】
本明細書において言及したすべての特許及び出版物は、各個別の特許及び出版物が、参照により、明確かつ個別に組み込まれていると示されているかのごとく、参照により、本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫の幼虫を抑制する方法であって、該方法は、植物又は害虫を単離されたホップ誘導体を含む有効量の組成物と接触させ、それによって害虫の幼虫を抑制する方法。
【請求項2】
前記接触が、前記幼虫が植物と接触している間に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物が、ナス科植物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ナス科植物が、トマト、オオブドウホオズキ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、及びナスから成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記植物が、アブラナ科植物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アブラナ科植物が、ブロッコリー、メキャベツ、キャベツ、カリフラワー、コラードグリーン(collard green)、ケール、コールラビ、マスタード、ルタバガ、カブラ、パクチョイ、ハクサイ、アルグラ(Arugula)、セイヨウワサビ、ラディッシュ、ワサビ、及びオランダガラシから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の害虫の幼虫が、チョウ類の幼虫又は害虫の幼虫である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記チョウ類の幼虫又は害虫の幼虫が、イラクサキンウワバ(cabbage
looper)、コナガ幼虫(diamondback moth larvae)、アルファルファルーパー(alfalfa looper)、アワヨトウ(armyworm)、シロイチモジヨトウ(beet armyworm)、アーティチョークプルームモス(artichoke plume
moth)、キャベッジバドウォーム(cabbage budworm)、イラクサキンウワバ(cabbage
looper)、ハイマダラノメイガ(cabbage webworm)、オオタバコガ(corn earworm)、セルリーリーフイーター(celery leafeater)、クロスストライプトトキャベッジウォーム(cross‐striped cabbageworm)、セイヨウアワノメイガ(European corn borer)、グリーンクローバーウォーム(green
cloverworm)、インポーティドキャベッジウォーム(imported cabbageworm)、メロンウォーム(melonworm)、オムニボラスリーフローラー(omnivorous
leafroller)、ピックルウォーム(pickleworm)、リンドウォーム群(rindworm complex)、ソルトマーシュキャタピラー(saltmarsh
caterpillar)、ソイビーンルーパー(soybean looper)、タバコバドウォーム(tobacco budworm)、トマトフルーツウォーム(tomato fruitworm)、トマトホーンウォーム(tomato hornworm)、トマトピンウォーム(tomato pinworm)、ベルベットビーンキャタピラー(velvetbean caterpillar)、イエローストリップトアーミーウォーム(yellowstriped
armyworm)、アップルトートリックスモス(apple tortrix moth)、フルーツツリートートリックスモス(fruit tree tortrix moth)、アップルフルーツモス(apple fruit
moth)、ガンマキンウワバ(silvery moth)、アップルピスモス(apple pith moth)、カクタスモス(cactus moth)、スポッティドストークボーラー(spotted stalk borer)、トマトルーパー(tomato looper)、トーティックスモス(tortix moth)、クラウンベッチケースベアラーモス(crownvetch
casebearer moth)、レッドクローバーケースベアラーモス(red clover
casebearer moth)、クローバーケースベアラーモス(clover case‐bearer moth)、リークモス(leek moth)、リーフウォーム(leaf worm)、ノクチュアドモス(noctuid moth)、ナッツフルーツトートリクス(Nut fruit
tortrix)、チェストナッツトーティックス(chestnut tortix)、シベリアンシルクモス(Siberian silk moth)、パンプキンキャタピラー(pumpkin
caterpillar)、チェリーバークトーティックス(cherry bark tortix)、ステムボーラー(stem borer)、ナシヒメシンクイ(oriental fruit moth)、オピアンポプラシュートボーラー(opean
poplar shoot borer)、オールドワールドボウルウォーム(old world bollworm)、オオタバクガ(cotton bollworm)、マイマイガ(gypsy moth)、コナガ(cabbage moth)、マメノメイガ(bean pod borer)、ラージイエローアンダーウィグ(large yellow underwig)、リーフローラー(leaf roller)、ワタアカミムシ(Pink
bollworm)、エジプシャンコットンウォーム(Egyptian cottonworm)、フォースコドリングモス(false codling moth)、及びリンゴスガ(apple ermine
moth)から成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
菌類を抑制する方法であって、該方法は、ボトリチス属(Botrytis)、エリシフェ属(Erysiphe)、レベイルラ属(Leveillula)、スファエロテカ属(Sphaerotheca)、ラストリア属(Rasutoria)、ミクロスファエラ属(Microsphaera)、ポドスファエラ属(Podosphaera)、ペロノスポラ属(Peronospora)、フィトフトラ属(Phytophthora)、シュードペロノスポラ属(Pseudoperonospora)、及びプラスモパラ属(Plasmopara)から成る群から選択される菌類又は胞子を単離されたホップ誘導体を含む組成物の効果量と接触させ、それによって菌類を抑制する方法。
【請求項10】
前記菌類が、エリシフェシコラセアルム(E.cichoracearum)、エリシフェクルシフェラルム(E.cruciferarum)、エリシフェリコペルシシ(E.lycopersici)、エリシフェネカトル(E.necator)、エリシフェピシ(E.pisi)、及びエリシフェヘラクレイ(E.heraclei)から成る群から選択されるエリシフェ属である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記菌類が、レベイルラタウリカ(Leveillula taurica)又はフィトフトラインフェスタンス(Phytophthora
infestans)である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記菌類が、スファエロテカフリジネア(Sphaerotheca fuliginea)又はスファエロテカマクラリス(Sphaerotheca
macularis)である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記菌類が、ラストリアアビエチス(Rasutoria abietis)又はブレミアラクツカエ(Bremia lactucae)である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記菌類が、ミクロスファエラペニシラタ(Microsphaera penicillata)又はミクロスファエラアルフィトイデス(Microsphaera
alphitoides)である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記菌類が、ポドスファエラスピーシィーズクンゼ(Podosphaera spp.Kunze)である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記菌類が、ペロノスポラパラシチカ(Peronospora parasitica)である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記菌類が、シュードペロノスポラクベンシス(Pseudoperonospora cubensis)である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記菌類が、プラスモパラビチコラ(Plasmopara viticola)である、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記菌類が、アスパラガス、マメ、ビート、ニンジン、セロリ、チコリー、十字花植物、ウリ、ナス、エンダイブ、ブドウ、レタス、タマネギ、コショウ、ジャガイモ、ラズベリー、ダイオウ、ルタバガ、エシャロット、イチゴ、トマト、及びカブラから成る群から選択される作物に感染する、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記菌類が、アネモネ、ベゴニア、キンセンカ、キク、ダリア、ハナミズキ、フクシア、ゼラニウム、サンザシ、ヘザー、アジサイ、マリーゴールド、パンジー、シャクヤク、ツルニチニチソウ、ペチュニア、バラ、スナップドラゴン、ヒマワリ、スィートピー、チューリップ、スミレ、及びヒャクニチソウから成る群より選択される観賞用植物に感染する、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記ボトリチス属が、ボトリチスシネレア(Botrytis
cinerea)、ボトリチスパエオニアエ(Botrytis paeoniae)、又はボトリチスツリパエ(Botrytis tulipae)である、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
菌類又は害虫による植物の病虫害を治療又は予防する方法であって、該方法は、植物、植物生長物質、又は植物用容器を単離されたホップ誘導体を含む有効量の組成物と接触させ、それによって植物の病虫害を治療又は予防する方法。
【請求項23】
前記接触が、フィールド、温室、又は家庭で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記植物生長物質が、土、バーミキュライト、及びコンポストである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記植物用容器が、ポット又はトレイである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記ホップ誘導体が、アルファ酸である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、少なくとも約5%のアルファ酸を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、少なくとも約10%のアルファ酸を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、少なくとも約15%のアルファ酸を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ホップ誘導体が、ベータ酸である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、少なくとも約0.5%のベータ酸を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、少なくとも約1%のベータ酸を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、少なくとも約5%のベータ酸を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、アルファ酸とベータ酸の組み合わせを含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、さらに洗浄剤を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記接触が、菌類又は害虫の生物学的機能を破壊する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記接触が、菌類又は害虫を死滅させる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記接触が、害虫を忌避する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、植物病原体による感染を予防又は低減する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
菌類若しくは害虫の幼虫による病虫害を治療又は予防するための組成物であって、該組成物は、農業用媒体(agricultural vehicle)中に有効量のホップ誘導体を含む組成物。
【請求項41】
前記ホップ誘導体が、アルファ酸、ベータ酸、又はアルファ酸とベータ酸の組み合わせである、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記組成物が、少なくとも5%のアルファ酸を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
前記組成物が、少なくとも10%のアルファ酸を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
前記組成物が、少なくとも15%のアルファ酸を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項45】
前記組成物が、少なくとも5%のベータ酸を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項46】
前記組成物が、少なくとも10%のベータ酸を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項47】
前記組成物が、少なくとも15%のベータ酸を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物が、アルファ酸とベータ酸の組み合わせを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物が、液体、粉末、コロイド、オイル、及びエマルジョンから成る群から選択される、請求項40に記載の組成物。
【請求項50】
前記組成物が、さらに界面活性剤を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項51】
前記組成物が、イラクサキンウワバ、コナガ幼虫、アルファルファルーパー、アワヨトウ、シロイチモジヨトウ、アーティチョークプルームモス、キャベッジバドウォーム、イラクサキンウワバ、ハイマダラノメイガ、オオタバコガ、セルリーリーフイーター、クロスストリップトキャベッジウォーム、セイヨウアワノメイガ、グリーンクローバーウォーム、インポーティドキャベッジウォーム、メロンウォーム、オムニボラスリーフローラー、ピックルウォーム、リンドウォーム群、ソルトマーシュキャタピラー、ソイビーンルーパー、タバコバドウォーム、トマトフルーツウォーム、トマトホーンウォーム、トマトピンウォーム、ベルベットビーンキャタピラー、イエローストリップトアーミーウォーム、アップルトートリックスモス、フルーツツリートートリックスモス、アップルフルーツモス、ガンマキンウワバ、アップルピスモス、カクタスモス、スポッティドストークボーラー、トマトルーパー、トーティックスモス、クラウンベッチケースベアラーモス、レッドクローバーケースベアラーモス、クローバーケースベアラーモス、リークモス、リーフウォーム、ノクチュアドモス、ナッツフルーツトートリクス、チェストナッツトーティックス、シベリアンシルクモス、パンプキンキャタピラー、チェリーバークトーティックス、ステムボーラー、ナシヒメシンクイ、オピアンポプラシュートボーラー、オールドワールドボウルウォーム、オオタバクガ、マイマイガ、コナガ、マメノメイガ、ラージイエローアンダーウィグ、リーフローラー、ワタアカミムシ、エジプシャンコットンウォーム、フォースコドリングモス、及びリンゴスガから成る群から選択されるチョウ類の幼虫又は害虫の幼虫による病虫害を低減する、請求項40に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物が、ボトリチス属、エリシフェ属、レベイルラ属、スファエロテカ属、ラストリア属、ミクロスファエラ属、ポドスファエラ属、ペロノスポラ属、シュードペロノスポラ属、及びプラスモパラ属から成る群から選択される菌類又は胞子による病虫害を低減する、請求項40に記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物が、さらにセッケンを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項54】
請求項40〜53のいずれか1項に記載の組成物を含む、殺虫剤供給装置。
【請求項55】
請求項40〜53のいずれか1項に記載の組成物を含む、殺菌剤供給装置。
【請求項56】
前記装置が、高容量フィールドスプレーヤー(high volume field sprayer)、スプレーガン、噴霧缶(aerosol
spray canister)、及び噴霧器である、請求項54又は55に記載の供給装置。
【請求項57】
請求項40〜52のいずれか1項に記載の組成物を含む植物。
【請求項58】
請求項40〜52のいずれか1項に記載の組成物を作製する方法。
【請求項59】
害虫の幼虫若しくは菌類による病虫害を治療又は予防するためのキットであって、該キットは、病虫害の場所への供給に適した形態の有効量のホップ誘導体を含むキット。
【請求項60】
前記病虫害の場所が、植物、植物生長物質、植物用容器、又は温室である、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
害虫を抑制するホップ誘導体を識別する方法であって、該方法は、
(a)害虫又は害虫の幼虫を、ホップ誘導体を含む試験組成物と接触させる工程と、
(b)未処理の害虫又は幼虫と比較して、幼虫の生物学的機能を低下させるホップ誘導体を識別する工程と、
を含む方法。
【請求項62】
試験化合物が、害虫又は害虫の幼虫を死滅させる、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
試験化合物が、幼虫の孵化、成長、又は摂食を低下させる、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
菌類を抑制するホップ誘導体を識別する方法であって、該方法は、
(a)菌類を、ホップ誘導体を含む試験組成物と接触させる工程と、
(b)未処理の菌類と比較して、菌類の成長又は生存を低下させるホップ誘導体を識別する工程と、
を含む方法。
【請求項65】
試験化合物が、菌類の成長又は伝染を低下させる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
試験化合物が、植物の被害を低減する、又は市場価値のある果実の収穫量を増加させる、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
害虫を忌避するホップ誘導体を識別する方法であって、該方法は、
(a)植物を、ホップ誘導体を含む試験組成物と接触させる工程と、
(b)前記植物を害虫と接触させる工程と、
(c)未処理の植物と比較して、害虫が前記植物と接触又は前記植物を摂食する時間の長さを分析する工程と、
を含み、前記処理植物との接触又は前記処理植物の摂食の時間の長さの減少により、害虫を忌避するホップ誘導体を識別する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−504335(P2010−504335A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529247(P2009−529247)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/020441
【国際公開番号】WO2008/039362
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509074173)
【Fターム(参考)】