説明

病院寝具消毒装置および病院寝具消毒方法

【課題】連続洗濯機における消毒技術を改良して、病院寝具のように老廃物で汚損した洗濯物であっても完全に消毒できるようにする。
【解決手段】洗濯物は予洗槽1で予洗され、洗濯槽2,3,4,5で順次に洗濯され、すすぎ槽6,7ですすがれ、仕上槽8で仕上げ処理されて脱水機9へ送り込まれる。上記すすぎ槽7と仕上槽8との間に消毒槽13を設け、洗濯物はこの消毒槽を通過する。この消毒槽13には新水が注入(矢印c)されるとともに、次亜塩素酸が注入(矢印D)され、
濃度20〜50ppmに調製される。すすぎ終わった洗濯物は消毒槽13を通過する間に次亜塩素酸で消毒処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンターフロー型の連続式洗濯を適用の対象とし、例えば病院寝具などのごとく人体由来の老廃物が付着している布類を消毒するに好適なように改良した洗濯物の消毒装置および消毒方法に関するものである。ただし、病院寝具以外の洗濯物を消毒することもできる。
【背景技術】
【0002】
カウンターフロー型の連続式洗濯機に関しては、特開2001−137590号公報に記載された技術が公知である。
図4は従来例のカウンターフロー型連続式洗濯機を示し、水の流動方向を表す矢印を付記した系統図である。
この例の連続式洗濯機は、1個の予洗槽1と、4個の洗濯槽2〜5と、2個のすすぎ槽6,7とを備えている。符号8を付して示した仕上槽は、のりづけ等の仕上げ操作を行なう槽である。
【0003】
連続式洗濯機で一連の処理を終えた洗濯物は脱水機9に送り出され、脱水処理された後、図外の乾燥・プレス工程に送られる。
新水は、手動弁および自動弁を介してすすぎ槽7に給水される(矢印a)。
仕上槽8で使い終わった水は排水(矢印d)されるが、すすぎ槽7で使い終わった水はカウンターフローパイプを経てすすぎ槽6に送給され、すすぎ槽6で使い終わった水はすすぎ水回収タンク11に溜められる(矢印b)。
前記脱水機9の排水は脱水回収タンク10に溜められる(矢印e)。
洗濯物は予洗槽1に投入された後、洗濯槽2に送られ、洗濯槽3→洗濯槽4→洗濯槽5というように順次に図の右方へ送られて行く。
一方、洗濯用の水は図の右方から左方へ向かって流動する。すなわち、前記すすぎ水回収タンク11内の水がポンプに吸入・吐出され、手動弁を経て最終段の洗濯槽5に供給される(矢印f)。
【0004】
洗濯槽5で使われた水は、カウンターフローパイプを介して洗濯槽4へ、さらに洗濯槽3→洗濯槽2へと送られた後に排水(矢印j)される。
予洗槽1で使われた水は排水(矢印k)される。この予洗槽1で使われる水は、予洗水タンク12からポンプにより、自動弁および手動弁を介して供給される(矢印i)。
上記予洗水タンク12には、すすぎ槽で使い終わった水、および脱水回収タンク10に回収された水が再利用される。
すなわち、前記すすぎ水回収タンク11内に溜まっている水が予洗水タンク12に送られる(矢印g)とともに、脱水回収タンク10内に溜まっている水も予洗水タンク12に送られる(矢印h)。
以上に説明したように、予洗に必要な水は、すすぎ作業で使い終わった水や脱水作業で回収した水を循環させて再利用しているが、すすぎ作業や仕上作業に使用する水は新水を送給している。
【0005】
以上に説明したカウンターフロー型の連続式洗濯機を改良して使用水量を節約するとともに水温を制御するための発明が特開2006−141786号公報に開示されている。しかし上記の公知発明において、消毒に関しては何らの考慮も払われていない。
洗濯用の殺菌水を生成する技術として特開2003−251353号公報の「洗濯・洗浄殺菌水の生成方法とその装置」が提案されている。この発明は、各種の薬剤を電気分解するものであって、構造が複雑となり高価である。
洗濯機械用の簡単な消毒技術として特開平11−137888号公報、及び特開2001−204993号公報が公知であるが、家庭用電気洗濯機に適用するため、固形の薬剤を使用し、この薬剤に流通させた水を単一の水槽(予洗槽、兼洗濯槽、兼すすぎ槽、兼脱水槽)の中へ送給する構造であって間欠的に運転され、業務用として用いるには作業能率が低い。
【特許文献1】特開2001−137590号公報
【特許文献2】特開2006−141786号公報
【特許文献3】特開平11−137888号公報
【特許文献4】特開2001−204993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大量に発生する洗濯物は業務用の連続洗濯機によって処理される。その作業は、いうまでもなく清潔を旨とし、適宜に洗浄したり消毒したりしながら操業されている。
しかるところ最近、次の事情により更に強力な消毒処理が要望されている。すなわち、
入院患者が使用したいわゆる病院寝具は、汗や垢などの人体老廃物が大量に付着しているので、雑菌が繁殖し易い。病院において厳重に管理されているとはいえ、有害菌も無いとは言い切れない。
このような病院寝具は、従来技術における消毒処理では無菌化を保証することが困難である。
【0007】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的は、病院寝具の消毒処理に必要なレベルの完全消毒を容易に行ない得る技術を提供して、国民大衆の衛生を守るという社会的要請に応えようとするものである。
本発明において病院寝具とは、汗や垢など人体老廃物が付着している可能性の有る繊維製品をいう。
実験室レベルで完全殺菌することは容易に可能であるが、本発明は業務用の連続式洗濯機を適用の対象とし、かつ、連続式洗濯機本来の基本的構造を変えることなく、しかも、本来の運転サイクルに変化を与えずに、簡単で安価な装置を付加して、安全,容易に完全消毒を可能ならしめる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明者は、
イ.使用すべき消毒薬の選定、及び、
ロ.連続洗濯の何れの工程で、如何なる態様で消毒薬を作用させるか、
について鋭意研究し、多年蓄積した経験知識を駆使して、次の基本的構成を創作した。
(a)従来、消毒および脱臭のため、次亜塩素酸ナトリウムが用いられていた。しかし、殺菌力,機械に対する腐食性,作業員に対する無害性、及び経済性を勘案して次亜塩素酸を採用する。この薬剤の分子式はHClOであり、常温では比重1.049の液体である。ただし、濃厚水溶液は不安定であるから、ppmオーダーの希薄溶液を使用する。
(参考) 従来用いられていた次亜塩素酸ナトリウムはアンチホルミンとも呼ばれ
分子式ClNaOの無色結晶である。
塩素臭を有し、水に対する溶解度は 29.3g/100mLであって、
水溶液の状態で比較的安定である。
次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムとは全く異なる化学物質であること
を御理解いただきたい。
(b)連続洗濯機におけるすすぎ工程よりも後に消毒工程を設ける(すすぎ工程において、すすぎ作業と併行しても良い)。
従来しばしば用いられていた次亜塩素酸ナトリウムはステンレス鋼を腐食する性質が有る。
本発明は次亜塩素酸水溶液を用い、次亜塩素酸分子の殺菌力を利用するので、金属部材に対する腐食性が少ない。
【0009】
上述の原理に基づいて創作した請求項1に係る発明の構成について、図1を参照しつつ説明すると下記のとおりである。この[課題を解決するための手段]の欄において、図面との照合を容易ならしめるため括弧書きで符号を付記するが、この付記は本発明の構成を図面どおりに限定するものではない。
請求項1の発明に係る病院寝具消毒装置の構成は、複数個の洗濯槽(2〜5)と、すすぎ槽(6,7)と、仕上槽(8)とを列設して成り、洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯し、次いですすぎ槽ですすぎ、更に仕上槽で仕上げ処理して脱水機へ送り出す方式の連続洗濯機において、
すすぎ槽(7)と仕上槽(8)との間に消毒槽(13)を設けるとともに、該消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加する手段(矢印D)を設けたことを特徴とする、。
ただし、前記複数個の洗濯槽の前段に予洗槽(1)を設けることもでき、その方が望ましい。また、仕上槽(8)を省略した場合はすすぎ槽(7)の後段に消毒槽(13)を設ければ良い。
【0010】
請求項2の発明に係る病院寝具消毒装置の構成は、
(図2参照)複数個の洗濯槽(2〜5)と、すすぎ槽(6,7)と、仕上槽(8)とを列設して成り、洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯し、次いですすぎ槽ですすぎ、更に仕上槽で仕上げ処理して脱水機へ送り出す方式の連続洗濯機において、
仕上槽(8)と脱水機(9)との間に消毒槽(13)を設けるとともに、該消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加する手段(矢印D)を設けたことを特徴とする。
ただし請求項1におけると同様に、前記複数個の洗濯槽の前段に予洗槽(1)を設けることもでき、その方が望ましい。また、仕上槽(8)を省略した場合は脱水機(9)の前段に消毒槽(13)を設ければ良い。
【0011】
請求項3の発明に係る病院寝具消毒装置の構成は、
(図3参照)複数個の洗濯槽(2〜5)と、すすぎ槽(6,7)と、仕上槽(8)とを列設して成り、洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯し、次いですすぎ槽ですすぎ、更に仕上槽で仕上げ処理して脱水機へ送り出す方式の連続洗濯機において、
前記すすぎ槽(7)または仕上槽(8)の少なくとも何れか片方に、次亜塩素酸を注加する手段(矢印E又は矢印F)を設けたことを特徴とする。
ただし請求項1,2におけると同様に、前記複数個の洗濯槽の前段に予洗槽(1)を設けることもでき、その方が望ましい。また、仕上槽(8)を省略した場合は、すすぎ槽(7)に次亜塩素酸を注加する手段(矢印E)を設ければ良い。
【0012】
請求項4の発明に係る病院寝具消毒方法の構成は、
複数個の洗濯槽(2〜5)と、すすぎ槽(6,7)と、仕上槽(8)とを列設して成る連続洗濯機を用い、洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯し、次いですすぎ槽ですすぎ、更に仕上槽で仕上げ処理して脱水機へ送り出す場合、
前記すすぎ槽もしくは仕上槽の中へ次亜塩素酸を注加し、又は、すすぎ槽もしくは仕上槽に隣接せしめて設けた消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加することを特徴とする。
前記の洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯する前工程として予洗することもでき、その方が望ましい。また、仕上槽(8)を省略した場合は、すすぎ槽の中へ次亜塩素酸を注加し、又は、すすぎ槽に隣接せしめて設けた消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加すれば良い。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明装置を適用すると、複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成る連続洗濯機において、すすぎ槽と仕上槽との間に消毒槽を設けるとともに、該消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加する手段が設けられているので、すすぎ槽ですすぎ処理を済ませた洗濯物を消毒槽に移して次亜塩素酸による消毒を行なうことができる。
次亜塩素酸は強力な滅菌性能を有しており、しかも作業員に無害であり、機械装置の腐食が少ない。
さらに、複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成る連続洗濯機における操業の基本パターンを変えることなく、かつ作動サイクルに影響を及ぼさずに消毒工程を挿入して、完全消毒された洗濯物を脱水機へ送り出すことができる。
【0014】
請求項2の発明装置を適用すると、複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成る連続洗濯機において、仕上槽と脱水機との間に消毒槽を設けるとともに、該消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加する手段が設けられているので、仕上槽で仕上げ処理を済ませた洗濯物を消毒槽に移して次亜塩素酸による消毒を行なうことができる。
次亜塩素酸は強力な滅菌性能を有しており、しかも作業員に無害であり、機械装置の腐食が少ない。
さらに、複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成る連続洗濯機における操業の基本パターンを変えることなく、かつ作動サイクルに影響を及ぼさずに消毒工程を挿入して、完全消毒された洗濯物を脱水機へ送り出すことができる。
【0015】
請求項3の発明装置を適用すると、複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成る連続洗濯機において、すすぎ槽または仕上槽の少なくとも何れか片方に、次亜塩素酸を注加する手段が設けられているので、このすすぎ槽または仕上槽を消毒槽に兼用させて、すすぎ処理を行ないながら、又は仕上げ処理を行ないながら次亜塩素酸による殺菌処理を併行することができる。
次亜塩素酸は強力な滅菌性能を有しており、しかも作業員に無害であり、機械装置の腐食が少ない。
さらに、複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成る連続洗濯機における操業の基本パターンを変えることなく、かつ作動サイクルに影響を及ぼさずに消毒工程を挿入して、完全消毒された洗濯物を脱水機へ送り出すことができる。
特に、この請求項3の発明装置は、専用の消毒槽を設けないので、連続洗濯機全体の形状,寸法、重量を増加させない。
同様の理由により、既設の連続洗濯機に対して本発明装置を追加設置することが容易であり、実用的価値が大きい。
【0016】
請求項4の発明方法を適用すると、洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成る連続洗濯機を用いて病院寝具を洗濯する場合、安全,安価,かつ容易に完全消毒処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[実施例1]
図1は第1の実施例を示し、請求項1に対応している。前掲の図4(従来例)に比して異なるところ、すなわち本発明を適用して改良した事項は次のとおりである。
すすぎ槽7と仕上槽8との間に消毒槽13を設けた。すすぎ槽7に送給されていた新水(矢印a)は、本例においては消毒槽13に送給される。
すすぎ槽7ですすぎ処理を終えた洗濯物は消毒槽13に送り込まれる。上記消毒槽13に対して矢印Dのように次亜塩素酸が注入される。
【0018】
以下に、消毒の効果を確認した試験を説明する。
図1は模式的に9槽の連続洗濯機を描いてあるが、試験は12槽の連続洗濯機を使用し、
10槽目と11槽目とをすすぎ槽として用い,前段の10槽目に11トン,後段の11槽目
に3トン、計14トンのすすぎ水を入れた。
上記11槽目すすぎ槽の中へ、次亜塩素酸の200ppm水溶液を注入して、次亜塩素酸濃度を20〜50ppmに調製した。
【0019】
上述した試験条件において、厚生省環境衛生局の規定に基づく「おしぼりの衛生確保試験」を行なった。
通常の作業条件(消毒しない場合)では、すすぎ終えた水の中に数千個/平方センチの菌が含まれている。
このすすぎ水を採取してサンプルとし、20ppmの次亜塩素酸水溶液によって2分間の消毒処理を行ったところ、菌数が1/100以下に減少した。
【0020】
上記の試験成績から容易に理解されるように本発明を適用すると、通常の連続洗濯機の運転サイクル時間内(例えば2分間)内に完全な消毒を行なうことができ、消毒待ち時間を生じることがない。
このため、本来の運転サイクルで予洗→洗濯→すすぎという一連の操作を進めながら、その途中に消毒操作を入れることができる。
このように、設備機械の配置についても本来の構造部分にほとんど変更を要せず、
連続洗濯の操業時間サイクルについても、本来の運転形態に影響を及ぼさずに、消毒手段を追加設置して消毒処理を併せて遂行できる。
【0021】
純次亜塩素酸は塩素のオキソ酸の1つであり、その化学的な性質は、カルキ臭と呼ばれる臭いを有し、薄い水溶液としては安定であるが、25%以上の水溶液では一酸化二塩素に変化する。
本実施例におけるがごとく濃度数十ppmの次亜塩素酸水溶液はほとんど臭気を感じないし、これによって消毒された洗濯物は通常人にとって全く無臭である。
【0022】
また、次亜塩素酸水溶液はpHの変化に伴って平衡が移動する。
pH7(中性)では80%が次亜塩素酸分子、20%が次亜塩素酸イオンとなり、この次亜塩素酸分子が消毒作用をする。
pH7.5(弱アルカリ性)では次亜塩素酸分子と次亜塩素酸イオンとがほぼ同数になって有効に消毒作用を発揮するが、
pH9(アルカリ性)では、ほぼ全部が次亜塩素酸イオンになるので消毒作用が弱い。
こうした化学的特性を勘案して本発明は、予洗→洗濯→すすぎという一連の操作中で、すすぎ工程の末期以降において次亜塩素酸を加えることにより、有効な消毒作用を発揮させる。
【0023】
[実施例2]
図2は第2の実施例を示し、請求項2に対応している。
前掲の図1(実施例1)においては、後段のすすぎ槽7と仕上槽8との間に消毒槽13を配置したが、本実施例2においては仕上槽8と脱水機9との間に消毒槽13を配置してある。上記の消毒槽に対し、電磁弁および手動弁を介して新水を送給(矢印n)するとともに、次亜塩素酸濃度が20〜50ppmとなるように、次亜塩素酸水溶液を注入(矢印D)する。
仕上槽8で仕上処理された洗濯物は消毒槽13に送り込まれて消毒処理される。
消毒処理を終えた後、消毒槽13内の水は排水しても良く、鎖線矢印mのようにすすぎ槽7へ返しても良い。また、仕上槽8に返すこともできる。何れを選ぶかは、使用している洗剤および仕上用薬剤の種類を勘案して判断する。
【0024】
以上に説明した実施例2によっても前記実施例1におけると同様に、設備機械の配置についても本来の構造部分にほとんど変更を要せず、連続洗濯の操業時間サイクルについても、本来の運転形態に影響を及ぼさずに、消毒手段を追加設置して消毒処理を併せて遂行できる。
【0025】
[実施例3]
図3は第3の実施例を示し、請求項3に対応している。
本例は、前掲の図1(実施例1)や図2(実施例2)のように専用の消毒槽13を設けることなく、本来的に設けられているすすぎ槽7の中へ次亜塩素酸を注入(矢印E)し、または仕上槽8の中へ次亜塩素酸を注入(矢印F)する。
次亜塩素酸をすすぎ槽7に注入する場合は、次亜塩素酸の濃度が下がらないようにするため、該すすぎ槽7へ注入する新水の水量を減らす。減らした分を補うため、新水をすすぎ槽6へ注入(矢印p)する管路を設けてある。
このように構成しても、前記請求項1や請求項2におけると同様に、通常の連続洗濯機の運転サイクル時間内に完全な消毒を行なうことができ、消毒待ち時間を生じることがない。このため、本来の運転サイクルで予洗→洗濯→すすぎという一連の操作を進めながら、その中に消毒操作を入れることができる。
その上、本実施例3においては専用の消毒槽13を設けなくても良いので、連続洗濯機の形状,寸法,コストをほとんど増加させることなく、完全な消毒機能を得ることができる。特に本実施例は、既設の連続洗濯機に追加して消毒効果を得るに好適である。
【0026】
以上に説明した実施例1、同2、及び同3の発明装置を、方法という観点から見ると、連続洗濯作業の最終工程付近、すなわち、すすぎ工程の後半以降において、槽内へ次亜塩素酸を注入するところに新規性,進歩性が有る。
従来、洗濯作業中に次亜塩素酸ナトリウムを注入する技術は公知であったが、使用の便を重んじて固体の薬剤を適用しており、液体である次亜塩素酸を用いることは考えられていなかった。
また、次亜塩素酸をパルプの消毒や脱臭に用いる技術は公知であったが、連続洗濯作業におけるすすぎ工程以降の洗濯水中に次亜塩素酸水溶液を注入することは考えられていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る病院寝具消毒装置の第1の実施例を示す系統図であって、請求項1に対応している。
【図2】本発明に係る病院寝具消毒装置の第2の実施例を示す系統図であって、請求項2に対応している。
【図3】本発明に係る病院寝具消毒装置の第3の実施例を示す系統図であって、請求項3に対応している。
【図4】従来例の連続洗濯機を示し、洗濯槽及び脱水機の模式的な正面図に水流管路を付記した系統図である。
【符号の説明】
【0028】
1…予洗槽
2,3,4,5…洗濯槽
6,7…すすぎ槽
8…仕上槽
9…脱水機
10…脱水回収タンク
11…すすぎ水回収タンク
12…予洗水タンク
13…消毒槽
D…消毒槽に対する次亜塩素酸の注入を表す矢印
E…すすぎ槽に対する次亜塩素酸の注入を表す矢印
F…脱水機に対する次亜塩素酸の注入を表す矢印
a…すすぎ槽または消毒槽に対する新水の注入を表す矢印
b…すすぎ水回収タンクに対するすすぎ排水の注入を表す矢印
c…仕上槽に対する新水の注入を表す矢印
d…仕上槽の排水を表す矢印
e…脱水機で発生した水を脱水回収タンクに注入する経路を表す矢印
f…すすぎ水回収タンク内の水を洗濯槽へ送給する経路を表す矢印
g…すすぎ水回収タンク内の水を予洗水タンクへ送給する経路を表す矢印
h…脱水回収タンク内の水を予洗水タンクへ送給する経路を表す矢印
i…予洗水タンク内の水を予洗槽へ送給する経路を表す矢印
j…洗濯槽の排水を表す矢印
k…予洗槽の排水を表す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成り、洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯し、次いですすぎ槽ですすぎ、更に仕上槽で仕上げ処理して脱水機へ送り出す連続洗濯機において、
すすぎ槽と仕上槽との間に消毒槽を設けるとともに、該消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加する手段を設けたことを特徴とする、病院寝具消毒装置。
【請求項2】
複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成り、洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯し、次いですすぎ槽ですすぎ、更に仕上槽で仕上げ処理して脱水機へ送り出す連続洗濯機において、
仕上槽と脱水機との間に消毒槽を設けるとともに、該消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加する手段を設けたことを特徴とする、病院寝具消毒装置。
【請求項3】
複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成り、洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯し、次いですすぎ槽ですすぎ、更に仕上槽で仕上げ処理して脱水機へ送り出す連続洗濯機において、
前記すすぎ槽または仕上槽の少なくとも何れか片方に、次亜塩素酸を注加する手段を設けたことを特徴とする、病院寝具消毒装置。
【請求項4】
複数個の洗濯槽と、すすぎ槽と、仕上槽とを列設して成る連続洗濯機を用い、
洗濯槽に投入された洗濯物を洗濯し、次いですすぎ槽ですすぎ、更に仕上槽で仕上げ処理して脱水機へ送り出す場合、
前記すすぎ槽もしくは仕上槽の中へ次亜塩素酸を注加し、
又は、すすぎ槽もしくは仕上槽に隣接せしめて設けた消毒槽の中へ次亜塩素酸を注加することを特徴とする、病院寝具消毒方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−119089(P2009−119089A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297383(P2007−297383)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】