説明

痔疾患用クッション

【課題】持ち運びが便利であるとともに着座する際に痔疾患用と悟られずに好適に使用することができるクッションを提供すること。
【解決手段】左右に並べて配置されることにより着座面を形成し、且つ、折り畳み自在の一対の左右面状着座部材40A、40Bを備える。これら左右面状着座部材40A、40Bは、着座面の中央部にそれぞれ配置され、互いに対向し、且つ前後方向に延在する緩衝層201、202と、緩衝層201、202のそれぞれに隣接して設けられ、着座面の左右両側に配置される左右の臀部受け部31、32とを有する。左右の臀部受け部31、32はそれぞれ、緩衝層201、202より比重が大きい支持コア層301、302と、緩衝層201、202と面一に配置されるとともに、緩衝層201、202よりも比重が大きく、且つ、支持コア層301、302よりも比重が小さい表面層303、304とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痔疾患を持つ使用者が着座する際に、臀部への刺激を緩和する痔疾患用のクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、痔疾患を持つ使用者が着座する際に、肛門及び肛門付近の患部への刺激を緩和させるために、中央に円形の開口部を設けた開口部付きクッションが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このような開口部付きクッションは、中央に形成された開口部に患部を位置させて使用者が椅子或いは床等に着座することにより、使用者の着座中における肛門や肛門付近の血液循環の悪化を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−336093号公報
【特許文献2】特開平7−222653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、痔は、男女を問わず日本人の3人に1人が持つ疾患であるとされているが、多くの人が痔疾患に羞恥心を感じる。このため、着座の際に患部に負担の少ないクッションを、周囲に極力知られずに使用したいという要望がある。
【0005】
しかしながら、中央に円形の開口部が形成されたクッションを使用する場合、その独特な形状のため、使用者が痔疾患を持っていることを周囲の人に知られてしまう。また、開口部付きクッションを痔疾患の予防のために使用したくても、痔疾患があると誤解される虞がある。
【0006】
また、この開口部付きクッションでは、着座中に姿勢を前後方向に変更すると、臀部も前後に移動して患部の位置が中央の開口部からずれることになり、これにより、患部に刺激を与えてしまうという問題がある。
【0007】
また、このようなクッションは、着座する臀部の形状に対応して座面を大きく形成する必要があり、移動先で用いる場合に持ち運びづらいという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、持ち運びが便利であるとともに着座する際に痔疾患用と悟られずに好適に使用することができるクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の痔疾患用クッションの一つの態様は、左右に並べて配置されることにより着座面を形成する一対の面状着座部材を備え、前記一対の面状着座部材は、前記着座面の中央部にそれぞれ配置され、互いに対向し、且つ前後方向に延在する緩衝層と、前記緩衝層のそれぞれに隣接して設けられ、前記着座面の左右両側に配置される左右の臀部受け部と、を有し、前記左右の臀部受け部はそれぞれ、前記緩衝層より比重が大きい支持コア層と、前記緩衝層と面一に配置されるとともに、前記緩衝層よりも比重が大きく、且つ、前記支持コア層よりも比重が小さい表面層と、を備え、前記一対の面状着座部材は、対向する前記緩衝層の間を中心に重ね合う状態に折り畳み自在である構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、持ち運びが便利であるとともに着座の際に痔疾患用と悟られずに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る痔疾患用クッションの概要を示す斜視図
【図2】同痔疾患用クッションの折り畳み状態を示す図
【図3】同痔疾患用クッションの要部構成を示す平面図
【図4】同痔疾患用クッションの要部構成を示す図1のA−A線矢視断面図
【図5】同痔疾患用クッションの面状着座部材を示す斜視図
【図6】同痔疾患用クッションをケースに収容した状態を示す図
【図7】同痔疾患用クッションを持ち運ぶ状態を示す図
【図8】同痔疾患用クッションを折り畳んだ状態の面状着座部材を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る痔疾患用クッションの概要を示す斜視図であり、痔疾患用クッションの使用状態を示す図である。
【0014】
図1に示す本実施の形態に係る痔疾患用クッション10は、使用者が着座する着座部12の中央で前後に延在する折り畳み部14を中心に矢印方向に折り畳むことによって、折り畳み自在に形成されている。同痔疾患用クッションの折り畳み状態を図2に示す。
【0015】
図3は、同痔疾患用クッションの要部構成を示す平面図であり、図4は、同痔疾患用クッションの要部構成を示す図1のA−A線矢視断面図である。なお、図3では、カバー部材50を便宜上破線で示している。
【0016】
図3及び図4に示す痔疾患用クッション10では、上面が着座面である着座部12の中央部に前後方向に亘って、使用者の肛門及び肛門周辺部(痔疾患部)を受ける疾患受け部20が設けられている。着座部12では、疾患受け部20の左側に、使用者の左の臀部を受ける臀部受け部31と、疾患受け部20の右側に、使用者の右の臀部を受ける臀部受け部32とが配置されている。
【0017】
疾患受け部20は、左右に並べて互いに対向して配置された緩衝層201、202により形成される。
【0018】
これら緩衝層201、202は、それぞれ着座部12を形成する一対の面状着座部材40A、40Bに設けられている。
【0019】
面状着座部材40A、40Bは、左右に並べて配置されて、着座部12を構成するものであり、これら一対の面状着座部材40A、40Bは、布カバー(カバー部材)50によって重ね合う状態に折り折り畳み自在に被覆されている。
【0020】
詳細には、一対の面状着座部材40A、40Bは、布カバー50の袋部51A、51Bにそれぞれ被覆されるとともに、袋部51A、51Bを連結する折り畳み部14を介して折り畳んで重ね合わせ自在となっている。
【0021】
面状着座部材40A、40B(以下、「左面状着座部材40A」、「右面状着座部材40B」という)は、それぞれ正面視して左右対称に形成された板状をなしている。
【0022】
左面状着座部材40Aは、ベース層41の上面に配設された臀部受け部31と緩衝層201とを有し、右面状着座部材40Bは、ベース層42の上面に配設された臀部受け部32と緩衝層202とを有する。
【0023】
図5は、同痔疾患用クッションの面状着座部材である右面状着座部材40Bを示す斜視図である。
【0024】
右面状着座部材40Bでは、ベース層42上に、緩衝層202が、隣り合う面状着座部材(左面状着座部材)40A(図3及び図4参照)の側壁面に対向して、前後方向で延在して設けられている。
【0025】
この緩衝層202に隣接して臀部受け部32が配設されている。
【0026】
臀部受け部32は、ベース層42上に配置される支持コア層302と、緩衝層202と面一に配置されるとともに、支持コア層302よりも比重が小さい表面層304と、支持コア層302と表面層304との間に配設された中間層306と、を備える。
【0027】
支持コア層302は、痔疾患用クッションの着座部12を構成する各層の中で最も比重が大きい。表面層304は、支持コア層302の比重よりも小さい比重であり、且つ、ベース層42の比重よりも大きい比重である。ベース層42は、支持コア層302、緩衝層202、表面層304、中間層306(つまり着座部12を構成する各層)の中で、最も小さい比重の層である。
【0028】
中間層306は、ここでは、ベース層42と同じ材料で形成されており、ベース層42と同じ比重である。中間層306は、支持コア層302の比重よりも小さく且つ表面層304の比重より大きい比重である。
【0029】
ここで、緩衝層202は、着座部12を構成する各層の中でもっとも比重が小さく、隣り合う面状着座部材(左面状着座部材40A)の緩衝層201とともに疾患受け部20を構成する。
【0030】
なお、緩衝層202、201により形成される疾患受け部20の横幅は、70cm〜80cmであることが好ましい。疾患受け部20の横幅が60cm以下であれば、使用者が着座した際に、痔疾患部を受けることができず、90cm以上で有れば、疾患受け部20自体で、臀部も受けることになる。
【0031】
臀部受け部32を構成するベース層42、支持コア層302、表面層304、中間層306の各層と、緩衝層202とは、それぞれウレタンフォームにより形成されており、これら各層は、中カバー49により破損しないように被覆されている。
【0032】
なお、左面状着座部材40Aは、着座部12の鉛直中心面を中心に、右面状着座部材40Bに対して左右対称に構成されるため、右面状着座部材40Bと同様の構成であり、同名称を付して詳細な説明は省略する。
【0033】
すなわち、左面状着座部材40Aでは、図4に示すように、ベース層41上に、臀部受け部31、緩衝層201が隣接して設けられている。そして、臀部受け部31は、ベース層41上の支持コア層301と、支持コア層301上の中間層305と、中間層305上の表面層303とから構成されている。これらベース層41、臀部受け部31(支持コア層301、中間層305、表面層303の各層)は、ベース層42、臀部受け部32(支持コア層302、中間層306、表面層304の各層)と形状のみ異なるものである。つまり、左面状着座部材40Aは、ここでは、右面状着座部材40Bにおけるベース層42、臀部受け部32、支持コア層302、中間層306、表面層304と同様の部材を、これら部材の表裏面を逆にして用いることで構成されている。
【0034】
このように、中カバー49(図4参照)によりそれぞれ被覆された一対の面状着座部材40A、40Bは、布カバー(カバー部材)50の袋部51A、51Bによってそれぞれ被覆されるとともに、互いに対向する緩衝層201、202の上面間で、袋部51A、51Bとを連結する折り畳み部14で、折り畳み自在に連結されている。
【0035】
この布カバー(カバー部材)50によって、痔疾患用クッション10は外観上、疾患受け部20を臀部受け部31、32と区別して視認されることがない。これにより、痔疾患持ちの使用者に、羞恥心を喚起させることなく、使用させることができる。
【0036】
このように、痔疾患用クッション10は、左右に並べて配置されることにより着座面を形成し、且つ、折り畳み自在の一対の左右面状着座部材40A、40Bを備える。これら左右面状着座部材40A、40Bは、着座面の中央部にそれぞれ配置され、互いに対向し、且つ前後方向に延在する緩衝層201、202と、緩衝層201、202のそれぞれに隣接して設けられ、着座面の左右両側に配置される左右の臀部受け部31、32とを有する。臀部受け部31、32及び緩衝層201、202は、それぞれ左右のベース層41,42上に配設されている。左右の臀部受け部31、32はそれぞれ、緩衝層201、202より比重が大きい支持コア層301、302と、緩衝層201、202と面一に配置されるとともに、緩衝層201、202よりも比重が大きく、且つ、支持コア層301、302よりも比重が小さい表面層303、304とを備える。臀部受け部31、32は、支持コア層301、302と表面層303、304との間に、ベース層41、42と同じ材料の層であって、支持コア層の比重よりも小さく且つ表面層の比重より大きい比重の中間層305、306を備える。これら一対の左右面状着座部材40A、40Bは、対向する緩衝層201、202の間(折り畳み部14)を中心に重ね合う状態に折り畳み自在である。また、一対の左右面状着座部材40A、40Bを被覆する布カバー50は、一対の左右面状着座部材40A、40Bにおいて、互いに対向する緩衝層201、202の表面側で、一対の左右面状着座部材40A、40Bを重ね合う状態に折り畳み自在に連結している。
【0037】
また、この痔疾患用クッション10は、折り畳み自在であるため、不使用時にはコンパクト化をはかることができる。
【0038】
つまり、痔疾患用クッション10の面状着座部材を重ねるように折り畳む(図2参照)ことができ、図6に示す鞄80に収容できる。鞄80は、折り畳まれる痔疾患用クッション10の形状に対応した半円状の主要部82と、手提げ部84とを有する。
【0039】
これにより、図7に示すように、鞄80内に折り畳まれた痔疾患用クッション10に収容することによって、この鞄80を用いて、使用者に、羞恥心を喚起させることなく痔疾患用クッション10を容易に持ち運ばせて使用させることができる。
【0040】
また、図8に示すように、折り畳まれた一対の面状着座部材40A、40Bでは、最も比重の小さい緩衝層201、202は、側方に位置する臀部受け部31、32とともに、ベース層42、41によって上下で挟まれた状態となる。すなわち、緩衝層201、202は、緩衝層201、202よりも比重の大きい臀部受け部31、32とベース層41、42とによって三方を囲まれた状態となる。よって、折り畳み時において、ベース層41、42側、つまり、左右側面状着座部材40A、40Bにおいて外側に位置する面側から荷重が掛かる場合、その荷重をベース層41、42及び臀部受け部31、32が受ける。これにより、折り畳み時において、ベース層41、42側から掛かる荷重は、緩衝層201、202自体には掛かることがない。よって、緩衝層201、202は、不要な荷重により摩耗することが無い。
【0041】
なお、本実施の形態では、面状着座部材(左右側面状着座部材40A、40B)では、ベース層41(42)上に配設された臀部受け部31(32)を、3層により形成したが、支持コア層301(302)及び表面層303(304)の2層によって形成したり、また、4層以上で形成したりしても良い。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る痔疾患用クッションは、持ち運びが便利であるとともに着座の際に痔疾患用と悟られずに好適に使用できる効果を有し、特に、痔疾患持ちの患者、痔疾患予防の使用者、更には、出産後の婦人などに用いられるクッションとして有用である。
【符号の説明】
【0044】
12 着座部
14 折り畳み部
20 疾患受け部
31、32 臀部受け部
41、42 ベース層
50 布カバー(カバー部材)
51A、51B 袋部
201、202 緩衝層
301、302 支持コア層
303、304 表面層
305、306 中間層
40A 左面状着座部材(面状着座部材)
40B 右面状着座部材(面状着座部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に並べて配置されることにより着座面を形成する一対の面状着座部材を備え、
前記一対の面状着座部材は、前記着座面の中央部にそれぞれ配置され、互いに対向し、且つ前後方向に延在する緩衝層と、
前記緩衝層のそれぞれに隣接して設けられ、前記着座面の左右両側に配置される左右の臀部受け部と、
を有し、
前記左右の臀部受け部はそれぞれ、前記緩衝層より比重が大きい支持コア層と、
前記緩衝層と面一に配置されるとともに、前記緩衝層よりも比重が大きく、且つ、前記支持コア層よりも比重が小さい表面層と、
を備え、
前記一対の面状着座部材は、対向する前記緩衝層の間を中心に重ね合う状態に折り畳み自在である、
痔疾患用クッション。
【請求項2】
前記一対の面状着座部材を被覆するカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記一対の面状着座部材において互いに対向する前記緩衝層の表面側で、前記一対の面状着座部材を重ね合う状態に折り畳み自在に連結する、
請求項1記載の痔疾患用クッション。
【請求項3】
前記一対の面状着座部材は、それぞれ、上面に前記緩衝層及び前記臀部受け部が配設されるベース層を備え、
前記臀部受け部は、前記支持コア層と前記表面層との間に、前記ベース層と同じ材料の層であって、前記支持コア層の比重よりも小さく且つ前記表面層の比重より大きい比重の中間層を備える、
請求項1または2記載の痔疾患用クッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111369(P2013−111369A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262168(P2011−262168)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(591191181)横浜フォームラバー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】